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14 闇の少女に優雅な安らぎを。

2012.07.04 (Wed)
さて、そんなわけで麻帆良にてマクダウェルの封印を解除したわけなのですが。

「とりあえず、封印が解けたって言うのは内緒で」
「ふん、まぁいいだろう」
「はい――では、契約内容の方に入りたいと想います」

と言うわけで、用意しておいた羊皮紙にラテン語でサラサラと文字を書き連ねる。
まぁ、結構読み辛いのだが、簡単に言うと以下のとおりとなる。

契約書
私、諏訪鋼一はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルにかけられた二種類の呪い(1.登校地獄 2.学園結界)を解除する事の対価として、以下の条件を求める。
1.現1―Aが卒業するまでの学園への在籍。
2.諏訪鋼一の企てる計画内容の秘匿
3.諏訪鋼一の企てる計画に対する妨害行為の禁止
4.お友達になってください

「おいちょっと待て最後のコレは何だ!」

渡してみたら、そんな反応が返ってきた。

「駄目?」
「阿呆か貴様、私は吸血鬼だぞ!? 何が悲しくてこんな阿呆みたいな契約内容で友達を作らねば為らんのだ!!」
「駄目? 友達なってくれない?」
「友達なんぞいらん!」
「マクダウェルがいらなくても俺は欲しい!!」
「貴様なら友達なんぞ幾らでもいるだろう!!――――――って、おい、どうした?」

……ふ、ふふ、ふふふふふ。
友達、一杯……ねぇ。
友達ってさ、貴重だよねぇ。うん。
俺ってさ、ほら、無限螺旋に捕らわれてたじゃない? あれの中に居るとさ、なんていうのかな、幾ら何度友情を育もうと、周が変わるたびにその友好度とか好感度は全部リセットされちゃうわけじゃない?
それがさ、何か一時期猛烈に空しくなって、周回が万を越えたあたりから友人を作らなくなったんだよね。そしたらさ、なんだかそのまま孤高の魔導師路線を突っ走っちゃって、そのままロンリーマギウスに成っちゃってさ、結局其の後友達を作るように成ったのは、無限螺旋末期の事。俺に対する大十字の評価なんて「一人で悟り開いた気に成ってるショタ魔導師」だぞ? なんじゃそりゃと思わずTrue(アーカムで探偵しつつミスカトニックに復帰、アル・アジフと再会)END行った大十字の頭を殴った俺は悪くないはず。

そして今生。
前世の影響で、最初っから飛ばしまくった結果。俺の現在の友人というと、ネットサークルの面々と会社の面々。いや、後半は部下だから、なんて野暮な突っ込み話。あれは共に機械で浪漫を夢見る同士だ。

「友達――居ないんですよ」
「……それは……」
「友達、駄目ですか?」
「――ぬ、く……」
「トモダチィ……」



30分くらい粘った結果、友達契約(っていうと何か厭だが)を結ぶ事に成功したのだった。





「さて、それじゃエヴァ」
「なっ!? なんだその腑抜けた呼び方はっ!!」
「んむ? 友達と言うのは、ニックネームで呼び合ってもいいものでは?」
「だからといってその様な――」
「駄目?」

じーっと見上げるように頼み込んでみる。マクダウェル――エヴァは基本善人なので、正面から誠意を籠めて頼み込めば、早々断られる事はない、と思う。

「……如何しても駄目なら、エヴァンジェリンって呼ぶけど……」
「――ち、契約を盾に取るか、恩を傘に着るかすれば蹴り飛ばしてやれた物を……」
「うん? 何か言った?」
「なんでもないわ戯け!!」

軽く頭を叩かれたが、なにやらよく解らない内にエヴァも納得してくれたらしい。

「――、それじゃ、エヴァ。コレを」
「何だこれは?」

そういって手に置かれたそれを見て首をかしげるエヴァ。
其の手に置いたそれ――魔刃鍛造の術式ででっち上げた、簡単なマジックアイテムで、鈴の形をしているのだが、エヴァが其の鈴を振っても、一向に音はならない。

「其の鈴には、エヴァに掛かっていたものと同じ、麻帆良大結界とのリンクが埋め込まれてます」
「――つまり、コレを身につけておけば、結界への侵入者を感知でき、また結界に拘束された状態に有ると擬装できる――と?」
「はい。魔力に関しては、擬装である為、その鈴自体に吸収されるようになっています。と言うのも、緊急時には、其の鈴から逆に魔力を引っ張る事が出来るようになってるんです。一種の蓄電池ですね」
「ほぅ、中々面白いマジックアイテムだな」

他に応用が出来そうな術式だとかなんとか呟くエヴァンジェリン。まぁ、事実そういう術式の応用だし。
因みに其の鈴だが、形としてはブレスレットと言う体裁にしてある。

「ふむ――」
「おぉ、良くお似合いです」
「ふん、世辞はいい」

言いつつ、満更でも無さそうなマクダウェル。
ふっふっふ、貴女が日本の古文化フェチだという事は既に調べがついているのですよ! 如何だその鈴! デザイン的には古きよき物と言うのを狙ってるからな! 開運の効果もあるよ!!

「あ、それとなんですけど」
「なんだ?」
「学園結界の術式をそれに移植する際、間違って登校地獄の術式も移植しちゃったんですよね」
「――って、なにぃ!?」
「あ、大丈夫ですよ。バグはちゃんと修正して、3年には卒業できるようになってます。勿論、修学旅行にもいけますよ」
「貴様、何て事を……!!」

これでも一応先生なのでね。サボり魔がサボりそうだと解っていて、何の手も打たないというわけにはいくまい。

「くっ――外れん!?」
「あぁ、登校地獄の呪詛ですね。まぁ、三年後には外れますよ。こうプチッと」
「今すぐ外せ!」
「そりゃ出来ません。それも契約内容から外れた事にはなりませんよ?」
「貴様、計ったな!!」
「キミはいい吸血鬼だったが、キミの保護責任者(学園長)がいけないのだよ――って、何をやらせるんですか」
「私が知るか!!」
「振ったのは貴女でしょうが!!」
「振っとらんわ馬鹿者!!」

まぁ、そんな感じで適当に話をはぐらかしたり誤魔化したりしつつ。
結局、鈴はそのままエヴァの左腕にくっついたままで行く事となったのだった。

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13 麻帆良学園 ―嗚呼、麗しき魔法の街よ。

2012.07.04 (Wed)
「率直に聞こう。貴様は何者だ?」

学校の校舎を出て、少し歩いた郊外の森近く。
そこにひっそりと立つログハウスこそが、この童姿の闇の魔王の現在の住居だそうだ。

「だから、新任の教師だと言ってるでしょ?」
「うむ? 先程は『新任の副担教師』といってなかったか?」
「同じでしょうが」

言うとマクダウェルは「ククク」と小さく笑って見せて、然しその鋭い目つきを尖らせて此方を睨みつけてきた。

「これ以上のお為ごかしは止せよ? 此処ならば外に情報は洩れん。私からの譲歩は此処までだと思え」
「闇の福音が譲歩ですか」
「魔法を使わず、私とあそこまで渡り合った事に対する敬意だよ」

言うマクダウェル。
――ふむ。

マクダウェルに対して、この場で出た話に対する秘匿をするならば、と言う条件を持ち出してみたところ、「無論」とだけ言葉が返ってきた。
まぁ、いいか。

「マクダウェルさん。一つ質問をいいですか?」
「何だ?」
「マクダウェルさん。貴女は、100を活かす為に10を斬り捨てるか、10を活かすが為100を殺すか。あなたならどちらを選びます?」
「なんだいきなり。えらく抽象的な話だが?」

突然何を言い出すのか。
そんな感情が、愉快そうなマクダウェルの表情には浮かんでいた。

「私なら、か――ふむ、私が選ぶのだとすれば、私の利となりうる1を選ぶのだろうな。それ以外など知った事か」
「――ええ、なんとも『らしい』答えだ」
「闇の福音らしい、と言うことか?」
「人間らしい、と言う意味です」
「はっ!! この私に向かって人間らしい!? この真祖の吸血鬼、闇の福音にむかって!?」

コレは驚いた、ここにいるのは気をやった若年性痴呆症の患者か――なんて大げさに驚いてみせるエヴァンジェリン。

「いや、無意味に世界平和を謳うよりは、大切な物を選ぶ、と言う答えはエゴ塗れで、なんとも人間らしいなと」
「――然し、それならば、正義という言葉に焦がれを感じるのもまた――」
「ソレもまた、『人間らしい』のでしょうね――まぁ、ソレは如何でもいいことなんですよ」

俺が何者なのか。ソレを語るために、少しだけ話を戻す。

「俺はね、教師でもあり、企業の経営陣の一人でもあり、とある組織のトップでもあり、思想家であり革命家でもあり、――何より、魔を断つ一刃だと思っています」

此処に来て得た教師という名前。諏訪グループの創立者としての存在。M∴S(銀色の月光団)のアデプタスとしての自分。魔法世界の影響を現実世界から排斥しようと言う革命家としての自ら。そして何より、絶対と言う名の理不尽を、憎悪で砕く刃の欠片。

「ふむ、矢張り貴様は物騒だな。で、その革命家で魔を断つ一刃が、この麻帆良にいったい何をしに来た? 私の抹殺か?」
「ご冗談を。被害者を嬲るなんてのは悪趣味な魔法使いであって、我々(・・)はそういう事はしませんよ」
「――ふん、色々突っ込みどころはあるんだが、突っ込んでいては話が進まん。結局の所、貴様は何なんだ? 魔法使いでない、と言うなら、その闇の気配は一体なんだ!?」
「魔導師、といいます」

さらっと答えてみた。

「魔導師? 魔法使いではないのか?」
「ええ、違います。魔法使いが“魔を担う者”であるなら、魔導師は“魔を帯び魔に抗う者”を自称しています」

そう前置きしてから、マクダウェルに対して少しだけ話す事にした。
魔法世界の影響からの脱却、魔法という無法に対する魔導というカウンターの存在。
そして、つい最近わかったことなのだが、この世界にも魔導は存在していたという事。嘗て、の話だが。

「元々、魔導というのは魔法ソレそのものより古い存在で、魔導は“魔”に対して抗う為、それだけを目的として産み出された術です」
「如何いうことだ?」
「簡単に言うと、退魔の魔法、と考えれば簡単でしょうか。人の世を守るため、なんて大層なお題目は掲げませんが、日々の生活を守るため、誰かが理不尽に泣かずにすむように、あらゆる“魔”と戦う為の存在。それが魔導師です」
「まるで、“正義の味方”だな」
「我々は、単純に理不尽に近い不可能に、子供の様にそんな物認められないと抗いたいだけですよ」

正義なんて如何でもいい、と言うと、マクダウェルは何処か少し虚ろに笑った。

「ふむ――で、為らば貴様は何をしにこの麻帆良へ?」
「簡単に言うと、革命のために」

ピクリと眉間にしわを寄せるマクダウェル。

「――言っておくが、この街の人間に危害を加えるようなら――」
「いえ、ソレは有りませんので安心を。我々の目的は、現実世界を幻想世界の支配から脱却させる事。この麻帆良は幻想世界の現実世界に対する、いわば橋頭堡。まず何をするにしても、ここを抑えなければ事は成りませんので」
「一般人に危害は出んのだろうな?」
「それは無論。というか、一般人に被害を出してしまうと、我々の理念に矛盾が出ますので」

――しかし、其処に拘るのはさすが“女子供は殺さない”という事で有名なエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。闇の福音の名は伊達ではないか。 それとも、麻帆良で丸くなったのか。

「あちら側の支配を断ち切る――か。面白い事を考える」
「そうですか? 至極当然の考えだと思いますが」

魔法世界の人間は、やたらとこちら側を卑下する。その癖、こちら側に対する影響力は確保したいらしく、世界各地に自らの陣営の拠点を作り、こちら側に古来から存在する魔法組織を自らの傘下に加えたがる。
それはこちら側の世界の勢力にしてみればいい迷惑でしかない。
事実、関西呪術協会のように、あちら側の戦争には全く関係ないというのに、MMの意向とやらの所為で無理矢理向こう側の戦争に参加させられた現実世界側組織は多々ある。

「実際、多かったですよ? 向こう側の勢力を厭う現実世界勢力」

黄金○夜明け団とか、混○魔術とか。魔術結社ではないが、魔法の存在を知る秘密結社にフリ○メイソンとか。

「――ふん、MMの老害が、有る意味で実を結んだという事か」
「そうなりますね。向こう側からの過剰な干渉。そして現実世界に対する悪影響の拡大。その結果として、魔導師と言う存在が復活した――とまぁ、少し間は飛んでいるんですが、大まかな流れはそんなところです」

チグハグかつ拙い説明に、思わず申し訳なくなる。
演説用の原稿とかなら簡単なのだが、こういう冷静な場所で静かに解説をする、とか言うのは案外難しいのだ。

「要するに、貴様等――魔導師だったか? は、魔法使い達に戦争を仕掛ける、と。その前段階として、この麻帆良で諜報活動をしている、と?」
「諜報活動――まぁ、そんな感じです。予言によると、時代が動くのはこの麻帆良だと言われているので」
「予言?」

ピクリと動くマクダウェルの眉毛。うーん、もしかして彼女、結構わかりやすい?

「ええ。英雄の子による改革の伝説。麻帆良の土地から始まるとされる、長い英雄譚の予言です」
「それは――英雄の子というのは」
「ええ、ナギ・スプリングフィールドの息子、ネギ・スプリングフィールドだと我々は考えています」

其処からまた少しだけ話し出す。
マクダウェルはネギ・スプリングフィールドという名前が出たとき、少しだけ悲しそうな表情を浮かべていた。うむ、乙女の涙は見ないふりをするのが紳士というものだ。

「――然し、魔法世界からの脱却な。どうする心算だ?」
「ゲートを潰します」
「……まさか、少し前にあった現実世界側ゲートポート襲撃事件は……」
「さて」

にっこり、敢て意味有り気に微笑んでみせる。
明言はしない。が、その態度でマクダウェルは大筋を理解したようだ。

「――しかし、それは……」
「幻想世界の崩壊、ですか?」
「ぬ、貴様……」

矢張り気づいていたか。
マクダウェルは卓越した魔法技術の持ち主だ。その技術は、当然現実世界だけではなく、魔法世界でも運用されたものなのだろう。

そして何よりも、ジオラマ魔法球。魔法に卓越し、尚且つアレの所有者であるならば。
そんな彼女であれば、幻想世界の違和感に関しては何処かで気づいているはずだ。

「知ってるのか?」
「大凡の想像は」
「なら、ゲートポートの破壊が何を引き起こすか、それも理解しているのか?」
「ずれた時限に存在する幻想世界を、地球に結びつける楔、ですね」

要するに、ゲートポートというのは、門としての役割を持った錨だ。
ゲートポートを全て破壊するとどうなるのか。明確には解らないが、多分、魔法世界は途端に消滅するか、はたまた完全な異次元に墜ちるか。
少なくとも、全てを破壊してしまえば、地球と行き来は完全に阻止できる。

「しかしそれは」
「向こうは此方を他所と判断してるんです。なのに、向うの争いに此方を巻き込もうとし、あまつさえその保険にこんな都市を作ったりする。いい面の皮ですが、当然それを厭う人間は出て当たり前でしょう」
「しかし、全ての人間がそうと言うわけではないだろう?」
「それこそ、知った事ではありません。火星と地球、どちらを守りたいかと問われれば、俺が守りたいのはこの地球なので」

正直、幻想世界というのはこの地球にとってあまり利にならない。

「そもそも、魔の隠匿は、一般人を魔の害から守るために定められたものです」
「ふむ、古来魔法に巻き込まれた人間で、その後まともな人生を遅れた人間と言うのは……皆無とは言わんが、少ないのだろう」

実際、私などと言う前例も要るし――なんて、小さくボソッと呟いたマクダウェル。
いや、聞こえてますよ? 言いませんけど。

「ところが。現状ではそのもとの理由はただの建前となり、その実は魔法と言う技能を持つ人間を貴族のように扱い、それを持たない人間を卑賤の身と蔑み、あまつさえそれが隠匿された現実世界で、それが隠匿されているという事を言い事に、魔法で好き勝手する」
「――魔法犯罪か」
「然り。正義の魔法使い? 何を笑わせる。そもそも争いの火種である魔法を持ち込んだのは連中だろうに。正義の行い? 紛争地帯に悪戯に介入し、主義も理想も無く力技で意志を押さえつける。確かに戦争は憎むべきですけど、其処に意味はあるのか?」

持論ではあるが、争いと言うのは生命に許された権利だと思う。自らの種の存続のために戦うのは、全ての生命に許された特権だ。
そして人間は、種の為だけではなく、自らの思想のために戦う事が出来る、地上で唯一の存在だ。
それを、「戦争は悪だ、悪い事だ」という客観的な意見だけで強制的に鎮圧する。
それは本当に意味があるのか。

「一言で言うと、魔法は邪魔なんです。この科学の社会では。存在するなとは言いませんが、もう少し分を弁えろ、と」
「――ふむ」

それを駆逐する為に、現代に蘇った魔導。
なんとも過激な意見ではある、というのは自覚している。
けれども、その意見を曲げたいというのなら、代替案なり何かを用意してから出なければ我々は耳を貸さない。

「まぁ、いいのではないか?」
「――えらくあっさりしてますね」
「ふん、魔法使い共が滅ぼうが駆逐されようが、私の知った事ではない。それこそ弱肉強食、因果応報と言うものなんだろうさ」

言うとゆったりとソファに腰掛けるマクダウェル。
――ふむ、為らば一つ、交渉を持ちかけてみようか。

「マクダウェルさん。一つ交渉しませんか?」
「私と交渉だと? まぁ、聞くだけ聞かんでもないが――安くは無いぞ?」
「貴女にかけられた呪いの解除を対価に、私の計画妨害を止める、と言うものです」

――がたんっ!
視線を上げれば、ソファから勢い良く立ち上がったマクダウェルが此方を睨みつけていて。

「貴様、私の呪いを解けるのかっ!?」
「まぁ、容易く」
「解け!! 今すぐに!!」
「契約は……」
「そんな物幾らでも結んでやる!!」

いいながらガクガクと此方の首を前後左右に振り回すマクダウェル。
慌てて宥めて、なんとかマクダウェルを落ち着かせる。どれだけ解呪したいんだか。

「とりあえず、学園側に察知されるのは避けたいんで、何処か魔術的に断絶した空間を用意しなけりゃならんのですが……」
「魔術的断絶――ふむ、要するに魔力的な接続が遮断されている空間という事か。ならばアレが使えるな」

そういってマクダウェルに腕をつかまれ、強制的に部屋を移動する。
隠れるように儲けられた地下室への階段。それを引きずられるように降りると、その地下の部屋の一室に、台座の上に載せられた薄らと輝く玉が載せられていた。

「これは……ジオラマ魔法球?」
「ダイオラマ魔法球だ」
「意味としては同じでしょうが」

なんだか同じような会話を、逆の立場でついさっきやったような。
TINAMIに、ダイオラマというのは、ジオラマの英語読みだったはず。ジオラマはフランス語だそうだ。






※※※※    ※※※※    ※※※※    ※※※※    ※※※※


然し、コレがかの有名なダイオラマ魔法球、通称『別荘』か。
確かに一時間を一日と言うのは、有る意味他より早く成長できるという利点はある。――が、それは他より早く“老ける”と言うことだ。女性――普通の人間には、あまり連続して使用すべき代物ではないだろう。

「さて、どうだ?」
「確かに、此処ならばばれないですね」
「ふむ――では、貴様の言う魔術とやら、じっくりと見せて貰うとしよう」

然り、と頷いて、手を空に掲げる。

「――カリン」
『Yes’Master.』

空間を割って現れたのは、我が魔導書ネクロノミコン再編本のカリン。
割れたガラスの様に穴を開けた空間は、すぐさま時計を巻き戻すようにしてその姿を元に戻す。
そうして現れたカリンは、即座にページの束となり、俺の身を包み込む。

『|魔導戦闘形態《マギウス・スタイル》』
《肯定。魔導戦闘形態実行》
「ヴーアの無敵の印において、力を与えよ。力を与えよ。力を与えよ」
《バルザイの偃月刀――鍛造》

魔力により生まれた炎。その中から生み出された、魔導師の杖たる魔刃。
マクダウェルはコレだけでも良く驚いてくれたようだ。
ふむ、少し気分がいい。ついでに派手に魅せようか。


「霊燃機関、全力稼動――超攻勢術式防御結界」
『顕現せよ、霊験あらたかなる刃よ』

そうして、己の身を囲うようにして増殖する幾多の偃月刀。

「術式添付」
『対呪詛破壊術式』

言霊と共に放たれる呪術的情報により、無数のバルザイの偃月刀に青い光が宿る。
字祷子として伝播したした呪詛感染によって刻まれた刻印。それは、文字通り呪詛を断つ為だけに編み出した術式だ。

「――往け」

そうして放たれた刃は、マクダウェルを囲うようにして地面に突き立ち――

――ガギィンッ!!

派手な音を立てて、マクダウェルのその身を雁字搦めにしていた、呪の鎖その事如くを須らく断ち切ったのだった。

「おめでとう、マクダウェル。コレで君は自由の身だ」
「――ああ、そうだな。コレで漸く私は、自由になったんだな」

そうして、呆然とした表情で呟くマクダウェル。
その表情は、何処か切なそうで、俺はその瞳から零れた小さな雫を見なかった事にしたのだった。


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12 奇人砲吼 ―交錯する機刃と魔刃。

2012.07.04 (Wed)
と言うわけで反撃の時間です。

「おらおらおらおら!!!! 突撃ハイカー!!」

ガツンガツンガツンと機械腕のドリルが校舎に穴を穿ち、その穴を利用して器用に身体をズンズン上らせる。
視線の先には、此方を見下ろしてなにやら呆れたような顔をする金髪ロリの姿が。

校舎を上っている最中に攻撃される事は無さそうだと、内心で安堵しつつ、即座に機械式背嚢と左腕のマルチブラウザの接続状況を確認。
各部に異常が無い事を確認しつつ、そのまま屋上の大地を再び踏みしめた。

「……分けの判らん人間だな、貴様」
「いや、いきなり一般人を攻撃するマクダウェルも意味不明です。例えるならば東京の下町でF1するぐらい意味不明です」
「その非一般人からの攻撃を往なし、尚且つ逃走した後で舞い戻ってくる人間を一般人とは呼ばん!!」
「えっ、嘘」

逃走も交戦も状況次第。
機械式背嚢が此方に到着した時点で、戦況は此方に有利。少し距離を開いた程度では戦場からの離脱とも言えず、故に自らの戦いやすいフィールドを選ぶのは、スポーツも競争も戦争も同じだ。

「まぁ、それはな。然し貴様の異常は決して一般人とは呼ばん!」

どうやら口に出ていたらしい。

「然し……ふん、そんな鉄くず一つで自分が有利に――この悪の魔法使い、闇の福音、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに勝利しうると判断したのか?」
「――えっと、マクダウェル? 厨二病にはまだ1年ほど早いと思うんだけど?」
「厨二病ではないわ痴れ者がっ!!」

そんな罵声と共に放たれる魔法の矢。
けれども今度は、ソレを回避する事もなく、ただにやりと笑い、泰然とその場に立って見せる。
瞬間、俺の正面に張られる四角く黄色に輝く光の壁が現れる。

「なっ、魔法――いや、違う!? なんだこれは!!」
「コレこそ超西式超電磁障壁!! 核爆発も何のそののこの障壁、魔法の矢の一本や二本で砕けるほどヤワではないわ!!(ただし100本以上とかムリポ) そして、これが、必殺の!!!」

シャキン! と音を立てて飛び出すのは、機械腕がドリルの変わりに装備する4つの|熱線機関銃《ブラストガトリング》。

「ジェノサイド・クロスファイヤァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
「え、なっ!? きゃっ!!」

放たれる4条の熱線。それらは一点で折り重なると、じりじりとマクダウェルの障壁を削り始める。
本来は砲弾とかビームとかレールガンとか、色々乱射する必殺技なのだが、残念ながらこの世界には銃刀法が存在している。いや、平然と無視してモデルガンだと言い張っているやつもいるらしいが。嘗ての世界だって銃刀法は存在してたのだが(平然と無視されていたが)。と言うわけで、今回のジェノサイド・クロスファイヤは熱線のみだ。
然し――うむ、科学的熱線は魔法障壁で防げるのか。障壁、普通に光を通してるくせに熱線だけ通さないとか、物理法則舐めてるな。

まぁ、俺も出来るけどさ。敵意だけから身を守るのとか。

「ちっ、舐めるな!!」
「えぇい、大人しく薄らコンガリレアに成るが良い!!」

瞬動で此方に急接近してくるマクダウェル。
けれどもその動きは一度見ている。あえて瞬動の出の予測地点から距離をとり、一呼吸置いてドリルで殴りかかる。

「ぬっ!?」
「そこっ!!」

一瞬の間に魔法障壁を張り巡らせるマクダウェル。
――かかった!

「我輩のドリルは|天《てぇん》を突くドォリル!! 貴様如きの軟弱な魔法障壁で防げるほど、やわなドリルでは無いのであぁぁぁる!!!!!!」

その瞬間、何かに取り付かれたかのように体が動いた。
ドラム缶のバーニア全開。スラスターも全力噴出。

「ぬ、ぐううう!!!」

ガリガリと火花を立てて障壁を削るドリル。先端が障壁を着きぬけ、そのままマクダウェルに殴りかかろうとしたところで、マクダウェルは咄嗟に背後に向かって飛び退った。

「ち、――ぬ?」
「く……ふん、中々やる――しかし此処までのようだな。私の糸に掛かった以上、貴様程度ではそこから抜け出せは――」
「アマァァァアアアアアアアアアアアイ!!!! 砂糖を煮詰めてソレを飴にして、更に飴を煮詰めて今度はキャラメルにした後更に煮詰めて真っ黒に成ったは寧ろ苦いその何かより甘い!!」

というわけで。

「――ぽちっとな」

途端、耳に残る甲高く不快な音が周囲に響く。

「なっ!? 貴様、何をしたっ!!」
「所謂超音波カッターである!! そしてこれが、今、必殺の!!」

KIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII―――

甲高い悲鳴のような音を上げて回転するドリル。
その表面には、刻印された術式が周辺の魔素をかき集め、ドリルの強度を霊的に上昇させていく。

そうして、そのドリルを見て青ざめるマクダウェル。彼女も気づいたのだろう。このドリルが、真祖であろうがドラゴンであろうが、寧ろ邪神すら貫きうる程の凶悪な一撃であると。

「突撃ぃ――ドリラアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

再び編みなおされる魔法障壁。
けれどもドリルアームは、ソレをまるで薄いガラスでも叩き割るかのごとく容易く叩き砕いて。




その瞬間、真横から加えられた何等かの衝撃に、此方の躯はひとたまりも無くすっ転がった。

「ったた……何事!?」
「ゴメンね、諏訪先生。でも、其処まででとめさせてもらうよ」
「――タカミチ、貴様っ!!」

何時の間に其処に立っていたのか。
屋上の端、昇降口のその影に、無精ひげを生やした眼鏡の男――高畑・T・タカミチが、まるで其処に居るのが当たり前カのように其処に立っていた。

「これ以上は止めておくことを勧めるよ」
「――っ、く!!」

と、高畑氏の顔を見た途端、マクダウェルは苦虫を噛み潰したかのような表情で、然し戦闘態勢は解かずにその場に仁王立ちした。
ふんっ、気に喰わん。
ドリルは臨戦態勢のまま、然し何処かでこの戦いは此処までだと直感で判断した。
何か憑いていたものが落ちたかのように、急速に思考が開けてゆく。

「やっぱり……いたんなら、最初から止めてくださいよ」
「いや、悪いね。此処に来たのは今さっきなんだ」
「そんな都合のいい展開は、ヒーローの特権だ。アンタ如何見ても主人公の親友キャラとかそのあたたりでしょうが。此処は僕に任せて先に行くんだ! とかな台詞が似合いそうですもんね!」

――グサッ

「プッ」
「うぐ――っ」

あれ? 何か高畑先生ダメージ受けてるみたいだ。マクダウェルも笑ってるっぽいし。

「どうせアレですよね妖怪の仕業ですよね。マクダウェルさん、一つお聞きしても?」
「ぬ?」
「学園長にそそのかされましたか?」
「む――ああ」
「エヴァッ!!」

さらっと答えてしまったマクダウェルに、高畑先生が思わずといった様子で声を上げた。
うーん、やっぱりこの人、|腹芸が出来ない《おばかせんし》タイプなんだろうなぁ。

「タカミチ、貴様馬鹿だろう。いや、そういえばお前馬鹿だったな。このガキは貴様の反応で確信を持ったみたいだぞ?」
「あっ」
「まぁ、ソレが美徳なんでしょうね。嘘がつけなくて虚実に惑わされやすい。なるほど、あの姦計タイプのご老人のいい駒になるわけだ」

思わず口に出してしまう。
ああもう、何か苛立っている所為で無駄に挑発してしまう。

「ぼ、ボクは駒じゃ――」
「うむ、まぁ然し世の中の大半はこういう自分で考えられない馬鹿だからな。大目に見てやれ」
「ちょ、エヴァっ!!」
「十把一絡が力を持つのは厄介なんですよ。力相応に頭も廻ってくれないと」
「じ、十把……」
「然し、それは此処では無理だろう。此処の認識阻害の結界は人を若干阿呆にする。特にタカミチのような警戒の緩いヤツや、雑魚なんかは簡単にひっかかる」
「あぁ、なるほど。警戒の緩い雑魚なんですね。いや、力はあるから一概に雑魚とも言えない――ふむ――|Int《ノーミソ》の足りてない戦士か。解り易っ」
「orz」

あ、高畑先生がダウンした。

「ふむ――マクダウェルさん、まだやる気あります?」
「ふん、興がそがれた」
「そうですか。では、場所を変えて少しお話しません? 覗き見してる人間もいるみたいですし」

そういって、天壌のほうを睨みつけてやる。
途端、慌てたように途切れる第三者の視線。

「ほぅ、ジジイの盗撮を察知できるのか」
「母譲りで勘はいいほうなので」

そう。コレに関しては魔法とか関係なく使える。
嘗ての世界の魔法は、魔術の行使にも直感とかがわりと重要視された。その影響もあって俺は割りと第六感が研ぎ澄まされているのだが、今生になってからその直感は更に強化された。
多分だが、母さんの影響が多分にあるのだろうとおもう。

「ふむ、まぁ御呼ばれしてやろうか。場所は此方が指定するぞ」
「ええ、ソレは当然」
「では付いて来い。コーヒーの美味い店を紹介してやるよ、セ・ン・セ・イ」

ニヤリと愉しそうに笑みを浮かべるマクダウェル。
そうして俺達は、二人揃って学校の屋上を後にしたのだった。



 「orz」した高畑先生を放置して。
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11 屋上の放課後は魔性に魅入られて。

2012.07.04 (Wed)
「答えろ。貴様は一体何者だ」

とある日の放課後。ロボっ子に呼び出されて女史中学校舎の屋上に訪れた俺は、金髪合法ロリ――じゃない、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルに、そんな問いをぶつけられていた。

「新任の副担教師の諏訪鋼一です。――前にも言ったと思うんですけど」
「巫山戯るな。貴様、魔法関係者だろう」
「魔法の知識はありますね。魔法は使えませんが」

さらりと答えてみる。途端少し詰ったような合法――マクダウェル。

「ふん、それは嘘だな。巧妙に隠している様だが、私には解るぞ。貴様の内から匂う闇の気配が」

そういって手の平に魔力を溜めるマクダウェル。
なんだろうか。見ていて哀れになるほど貧弱な魔力なのだが、それでも魔法の矢一本分くらいは十分に賄える魔力だ。

何の心算だろうかとぼっと見ていると、不意にマクダウェルがその手を此方に向けた。
「『闇の精霊1柱、魔法の射手・闇の1矢』」
「ちょ、うおわっ!?」

咄嗟に回避するが、その魔法の矢はバッサリと俺の副の裾を削り取って。

「――わぉ、父さんの魔法の矢とはえらい違いだ」
「ふん、貴様の父親が何者かは知らんがな。600年の研鑽の成果だ。魔法の矢一矢しか使えん今の私とて、そこらの十把一絡程度に後れを取る事は無いぞ」

そういって、再び手の平に魔力を集めていくマクダウェル。
うーん、なるほどなるほど。要するにこの合法ロリ、魔力が足りないからと魔力を圧縮して瞬間的な出力を高めているわけか。
要するにコンデンサの増幅装置みたいなものだ。
その為、魔法の矢一矢を行使するには十分な魔力を得て、その上彼女は600年を生きる吸血鬼だ。術式の構成からして、内の父親(魔法使いとしては三流)とは、まるで別物扱いだ。

「因みに、攻撃してきたという事は、反撃しても言いという事ですかね?」
「ふん、反撃できる物なら、な」

そういって再び魔力を高めるマクダウェル。
ちくせう、意味が解らん。コレはもしかしてあれか。学園長のジジイの陰謀かっ!!

とりあえずピンチと感じて素早く右手を左腕に伸ばす。
スーツの袖に隠され、腕に貼り付けるようにして取り付けられたソレ。貼り付けられたキーボードを、右手で素早くカチカチとキーボードをタイプする。
拙い拙い、今装備している武器なんて、左手のヒートワイヤーしかないのだ。
早く機械式背嚢を――っ!!

咄嗟に飛び退いたその一瞬。寸前まで立っていた空間に、一瞬だけ白い繭のような物が現れ、次の瞬間再び虚空に消えた。

「ほぅ、今のを避けるか」
「――因みにマクダウェルさん、今の何?」
「答えると思うか?」
「ですよねー」

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
この世界では、600年前から存在を確認されている真祖の吸血鬼だ。
太陽を克服し、古くから知識を蓄え続ける脅威の象徴。いわばナマハゲ。

そして俺の昔の記憶を検索する。
此方に転生して以来、最初の記憶はほぼ喪失してしまっていた俺だが、その問題はカリンと合流した時点で解決されている。

カリン――というか、あの世界の魔導書と言うものは、その多くが魔術的に多重幾何学構造的に情報を含んでいる。つまり、たったの一文に数百近い読み解き方がある。
簡単に言うと、一文に情報が圧縮されているのだが。

俺は、繰り返す無限螺旋の中、自分の記憶が無為に削られていくことを恐怖した。恐怖し、次へ持ち込むために、外部ストレージに記憶を保存する、という方法を考えた。
それが、カリン――ネクロノミコン再編再訳版だ。
コレには俺の記憶のほぼ全てが記録されている。始まりの記憶は勿論、コイツが作られるまでの全ての記憶、カリンが生まれてからの全ても記述されている。

その中から、項目・ネギま!を検索。
情報項目、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの情報を選択。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの代表的戦術パターンを検索。ヒット。
闇と氷の魔法を使う「悪の魔法使い」。不死身に近い再生能力と真祖の莫大な魔力、そして600年の研鑽こそが真の脅威。
代表的戦闘手段――「|闇の魔法《マギア・エベレア》」「人形繰り」「操糸術(ただし人形繰りスキルの一部)」「大東流合気術」など多数に渡る。
※学園結界と登校地獄に封じられている現状、魔力は1割も無い。
※若干の魔法行使は可能。触媒による補助により、魔力の上がる夜間帯は更に魔法の行使が可能。
注意:めっちゃ強い。結界と封印が解けると本編最強。結界がなくても最強。公式チート。ただし味方にすると慢心スキルにより若干補正がかかる。



最後の注意書きは何だっ!! じゃなくて。

「――っ!!」

直感に従って左腕からヒートワイヤーを1メートルほど伸ばして振り回す。
途端、何かがワイヤーに当たり、ブスブスと音を立てて霧散した。

「ほぅ――これも躱すか。然し、なんだそれは。何かのアーティファクトか?」
「こ、答えるとでも?」
「――ふ、よかろう。ならばイヤでも喋らざるを得なくしてやる!!」

ちょ、マジこえぇ!!

気が付いたらすぐ傍まで近寄ってきているマクダウェル。なんだったか、歩法、縮地法のダウングレード――瞬動だったか、それか。
判断した瞬間に腕を取られ、投げ飛ばされると判断した瞬間に相手の腕を組み取って肘打ちをつきこむ。

「ぬ」
「くっ!!」

が、これほどの至近距離から打った裡門頂肘だというのに回避されるとか!!
そのまま腕を捻られそうなのを感じて、即座に大きく飛び上がる。マクダウェルの手を軸に回転。そのままマクダウェルの延髄に向かって蹴りを――

「あがっ!」
「ふむ。応用はまぁまぁだが、そもそも応用しなければならんような状況に陥る時点でマイナス。功夫が足りておらんな」
「き、厳しい事で……」

口元が引きつる。チクショウ、俺は開発者であり魔術師であって、格闘戦はオマケなんだぞコラ!!
どこぞの「赤いあくま」が護身術も必修科目とか言うから、色々手広く浅く格闘を学んだのだ。あくまでもオマケなのだ。クンフー足りずて当然だ。

……なんて、負け惜しみになるもんなぁ。だから言わん。

「ククッ、どうした。この程度か? だとすれば残念だが……」
「――そぉい!!」
「ここで――って、おぃぃ!!??」

思い切って空に踏み出す。
魔術も魔法も当然使わず、校舎の端、策を乗り越えて一気に。
屋上から飛び出した身体は、この世界にも当然ある物理法則、重力にしたがって真下へと加速していく。

「しかぁし、タイミングを見計らってきてこそヒーロー。俺はヒーローではないが、だとすれば此処でタイミングよく来た彼奴こそがヒーロー。でもあれ? 機械式背嚢って人か?寧ろロボか? あいや人格すらない背嚢はヒーローにあらず。寧ろヒーローの強化パーツ。いわばバターのような名前の女助手が「○○、新しい顔よ」と差し出す予備パーツ。然し新しい顔とかある意味シュール。つまり彼奴は整形し放題。人の第一印象とは顔で決まる物であるが故、顔が毎回変化する彼奴は一体如何やって周囲に自らを同一人物だと印象付けているのか。生む深遠なテーマで――って地面近ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

そうしていつの間にか近付いていた地面。
変なテンションで喋り続けているからいつの間にか地面が近くなる。けれども、コレはやらねば成らぬのだ。なさねば成らぬ。いわば一種のお呪い。自らを書き換える自己暗示。

「Camon Let's Play!!」

空の彼方に輝く一つの星。シャキーンとまぶしく輝くソレは、噴煙を吐出しながら空を翔け、やがて落下する俺の背後に並び立つ。

「!装☆着!」

飛来したのはねずみ色のドラム缶。
シャキーンと動体に撒きつくハーネス。
ドラム缶からニョキリと生え出る4本のアーム。
プシュシュと噴出すスラスターは、墜落する身体を180度回頭。
ドンッ、と音を立てて地面に着地。ショックアブソーバーにより着地の衝撃は大きく相殺される。
……それでも脚にジーンと来たが。

「超西式《スーパーウェストしき》機械式背嚢《メカニカルバックパック》、装着!! さぁ、よくもやってくれたな金髪ロリータ大きなお友達達の味方合法ロリめ。反撃の時間だ!」

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10 天才と何とかは紙一重というかむしろ完全に向こう側。

2012.03.17 (Sat)
先ず扉を開く。目の前を通り過ぎる黒板消し。その向うに見える何か。原作知識からそれが何か大体把握していたので、後足を引いて半身になり、飛来した矢を回避。そのまま上から落ちてきたバケツ(水入り)をキャッチして着地させ、仕掛けが途切れたことを確認してから教室に入る。足元に仕掛けられていたバケツ2と罠紐はちゃんと回避した。

「と言うわけではじめましてコンニチハ。諏訪鋼一です。諏訪は諏訪。難しい漢字でゴメンね?まぁ慣れれば簡単だ。ごんべんをとるって書いて諏、ごんべんのほうって書いて訪、あとは簡単鋼の一。この2学期からこのクラスの副担任をすることになりました。年齢は10で皆さんより二つ年下になります。因みにちゃんと教員免許は持ってますよ。MInTの。あ、労働法ですが、ちゃんと例外として地元の警察に提出してる(筈な)んで問題ありませんのであしからず。出張の多い高畑先生に代わり、英語を教えることになりました。まぁ出身大学を見ても解ると想いますが、本分は理系の工学系です。まぁ中学校では出番は殆ど無いので英語教師(補佐)という事に成りました。何故中学の女子高に就職かと言うとぼくにも意味不明です。学園の謀略ですとしか言い様がありません。それとも先に備えての前フリなんですかね? おっと妄言を吐きました。と言うわけでこのたび1-Aの副担任をする事に成りました諏訪鋼一です。皆々様、以後のことよろしくお願いします」

どうだ、この完璧な挨拶は。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――――えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

全員話を聞いてなかったらしい。説明のしなおしだ。ガッデム。









と、言うわけで、朝のSHLと一時間目の英語の授業は、何故か俺と1-Aとの顔合わせ――レクリエーションと化す事と成った。
何故そんなことに成ったのかと言うと、大体原作と同じ流れなので割愛する。

「そうだね、それじゃ一時間目は諏訪君との質問タイムという事で~」
    ↓
「はいはい!! それじゃクラスを代表して、この朝倉和美が質問させてもらうよ!!」
    ↓
「最後に、このクラスで気になる人はいますか?」

とまぁ、こんな感じ。
因みに最後の質問には

「そうですね、麻帆良最強の頭脳と名高い超さんと、機械系グループにこの人ありといわれる葉加瀬さんですね。ロボ研とか是非見学してみたいです」

とか無難に答えておいた。
超と葉加瀬の瞳がギラリと光った気がするのは気のせいだと思っておきたい。

「因みに先生、ガン○ムと言えば?」
「ザ○でしょう。まぁ、FⅡ型も好きですが、FZ型とか正直たまりません。頭違いもイイデスネ」
「バケツ頭カ。渋いところつくネ――ソレじゃ、一番好きなシリーズはなんネ?」
「08小隊ですかね。ビームもいいですけど、空薬莢が飛び散るあの絵は堪らないと思います」
「ふむ、実弾派か。ではやはりレールガンとか?」
「当然大好きです。というか、個人で携行できるレベルのレールガンは開発を終えました。本体の総重量が10キロぐらいで、初速が1020m/sで、50cm厚のコンクリの粉砕に成功しました。電力供給の上限に余裕を持たせてあるので、外部電力を使えばもう少し威力が上がりますね。その場合は1810m/sで、25cmの鉄板を余裕で貫通。多分戦車の複合装甲にも多少通用するのではないか、と言う感じですね。まぁ、流石に実証は出来てません」
「ロマンあるネ。先生、うちと提携しないカ?」
「此方も責任ある立場なので、簡単には首を振れません。後で超さんのところを見学させてください」
「望むところヨ」

とまぁ、そんなマニアックな会話を超さんとぺちゃくちゃ。
気づけば周囲は呆然。頭の上でお花とか蝶々が舞っていた。
――いや、龍宮さん、そんなに目をキラキラさせて――もしかしてレールガン欲しいんだろうか。

「因みに、レールガンは売らないのカ?」
「流石に銃刀法に抵触しますしね。技術的ノウハウの蓄積のために作った、という事にしてます」
「本音は?」
「無論、うちの技術者達のロマンです」
「――その分では、人型機動ロボとか既に作ってそうネ」
「解ります?」
「本当に作ってるのカ!?」

実は作っていたりする。
俺のシュープリスを見た一般技術チームが、自分達もロボを作りたいと言い出したのだ。
で、俺は当然(?)許可を出した。
結果として出来上がったのは、ロボと言うのもおこがましい外見だけのハリボテ。
なにせシュープリスには魔導理論を搭載しているのだ。シュープリスを参考に作っても、出来上がるのは巨大な鉄のプラモデル、といったところか。

当然の失敗に歯噛みした開発チームは、其処からマジギレした。

「ダメなら最初から開発してやる!!」

と、驚いた事に連中、MTの開発に成功したのだ。
世間一般では2速歩行ロボがもてはやされているらしいが、今現在諏訪グループのロボ研では既に二足歩行のロボは既に開発が終わっている。
逆脚で野山を駆けるMTとか、普通に実装されているのだ。
で、現在の連中の課題はノーマルの開発。その内NEXTも開発しだすのかと思うと、空恐ろしい物がある。
まぁ、流石にコジマとかは無理だろう。そのあたりはこの世界の魔法に手を出さざるを得ないかもしれない。
うん、そうだ。なんだったか。魔法にある念話――つまり無線意思伝達を機械に組み込んでAMSの代替手段として――

「諏訪ボウズ、大丈夫カ?」
「おっと失礼しました。ついつい次の開発構想が思い浮かんでしまった物で」
「あぁ、ワカルよソレ。ワタシも偶にあるからネ」

などとぺちゃくちゃ。
宇宙開発のために必要なのは一体何か。マスドライバーの建設は本当に必要なのか、軌道エレベーターの建造で地上のエネルギー事情はどう変化するのか。軌道エレベーターの建造に必要な資財を何処から調達するのか。出資は如何するのか。軌道エレベーターを建造する為にはマスドライバーが必須か。であれば軌道エレベーター建設後のマスドライバーの有用性はどうなるのか。マスドライバーを軍事利用される恐れは、その対策は。軌道エレベーターを建造後、軌道環の建設は可能か。可能である場合の建造法は。などなど。

「ふむ、有意義な会話が出来たネ」
「ええ、面白い意見を得ることが出来ました」

さすが未来の火星人。此方が夢を模索するような意見である事に対して、彼女の意見は出来ることと出来ない事がはっきりと判別できており、更に其処にいたるためには、と言う前提で幾つかのパターンを想定している。
思考のスタート地点とゴール地点が、彼女と俺とでは大分違う様子だ。

さすがは未来火星人。着想点が我々とは違う。





因みに、大気圏内外への輸送手段の構想を話し合っているくらいの時点で、クラスメイトの大半が目を回してしまったのは……うむ。今度初心者入門向けSF座談会でも開こうかな。

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サブタイはデモベのBGMのタイトルを元ネタにして、少し弄っているのですが……。
このサブタイに関しては弄りようが……。
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