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演算娘パニック 01

2013.04.18 (Thu)
本当は技術チートには制限をかける心算だったのだけれど、それをしていると間に合わない事象が一つだけ。
本来ならコレはズルすぎるし、第一やったとして後々の辻褄合わせが大変だ。
けれども、私はやると決めたのだ。
後に合金と自称する組織、その中で水中戦闘機とまで称されたとある潜水艦を偽造(細部にわたり使用されている技術が別物かつさらにオーバーテクノロジー)する。
時期は某日。かろうじて記憶に引っかかっていたデータ。それを頼りに、とある地点に仕掛けたセンサーに反応があったのだ。
こっそり作り出した小型潜水艇。近所の山の公園の奥、人が立ち入らないような林の中にドンと置いた潜水艇の操舵席にもぐりこむ。戦装までしたコレがもし見つかれば、大騒ぎではすまないな、何て考えつつ。

「――ジャンプ」




その後、とある飛行機のブラックボックスが航空安全会議に届けられた。
それまでのマスコミの報道が、飛行機のパイロットに対する余りにも酷な評価であった事に対し、ブラックボックスから検出された記録――機長堀田氏の英雄的な操縦が明らかになり、それまでのマスコミ批判に対して物議を醸し出したりするのだが、完全に余談である。







ウィスパードと言うのは、どうしてこうも中途半端なのか。
未来電波を受信した子供は、無垢なる心にその莫大な情報量を押し込まれ、けれどもそれを受け取れる子供達はそもそもそれを受けて変質する程度の存在ではない。
つまり、無垢なるまま莫大な情報を頭の中に仕舞いこんでしまっているのだ、彼等・彼女等は。

そんな無垢なる存在たち。彼等彼女等に、それら情報の重要性など、果たして理解できるのか。
事実として、それは不可能だろう。
私が活動を開始した時点で、世界中でかなりの数のウィスパードが行方不明になっていることを確認した。
と言うのも、ウィスパードと言うのは大抵の場合自我が育つ前に自らの知識を発露してしまう。知性が育つ前に知識が発露するのだ。何と言う矛盾だろうか。
結果、それを見つけたテレビ番組は、その不可思議な様子を面白おかしく世界に放映する。
そうして放映された結果、彼彼女等は家族ごと行方不明になっている、なんていうことが多々。いや、大半が行方不明になっていた。

流石に放置するのも後味が悪いので、とりあえず私はネット回線を通じて米国国籍を取得。方法については、某国防長官殿に彼自身の不正の証拠や、彼の政敵の不正の証拠、M6の改修案など色々送りつけて無理矢理認めさせた。相手に利を与え、此方に敵対する不利を示し、此方の利と相手の利を指し示す事で相手に納得しやすい状況を作る。
Win/Winの関係であると同時に、如何考えても自分の利が多く、さらに相手を敵に回す必要も利も無い。そんな状況に成れば、誰だって口をつぐむ事を選ぶ。

そうして米国国籍を手に入れた私は、次にその国籍を利用して米国にIT系企業を設立。私と言う演算装置を用いれば、プログラムの設計なんて物はチチンプイプイと言うものだ。何? それは死語だ?

……こほん。

まぁ、そういうわけで、米国名:キャロル・ドーリーの設立したIT系企業、ファントムタスク。
色々混ざってる? 別に意味は無い。強いて言えば、他に名前がパッと思い浮かばなかったからだ。
で、自慢の演算能力を駆使してプログラムの作成に株取引なんかを繰り返し、あっという間にある程度の資金を生み出す。

それを使って、北米、中米、南米、日本、南中国、ドイツの各所に小さな分社を建てる。といっても中にあるのは、居住性を完全に無視した大きなサーバーが一台立っているだけ。温度は常に最低に保たれ、他には監視カメラくらいしかついていない、各国のサーバー拠点。
それらを経由する事でさらに大量の情報をやり取りし、尻尾きり可能な根を世界に張り巡らせる。

で、上記と同時にもう一つやっている事がある。
プランB、ミスリルもどきの建設である。この時期ならば未だミスリルは出来ていないはずだ。国際救助隊という理想を掲げて、それに向けた下準備の最中、といったところか。
其処で私が行うのは、私と言う最上位権限を思考中枢とした完全な箒型組織。
私の目指す組織は、組織にして組織に在らず。軍部を持たない亡霊のような、名前の無い組織。

先ず、此方の人間に指定した子供を買い取らせる。大国ならまだしも、途上国なんてその辺りは適当だ。むしろ口減らし出来て、金も手に入るなんていうのは喜ぶ親さえいる。
次の手段に雇った傭兵に子供達を誘拐させる。此処はかなり心苦しいのだが、下手に放置すると一家郎党まとめてアマルガムに消されてしまうので、仕方ない物として諦める。
そうして回収した子供達を此方の用意した米国の某所でまとめて教育する。本当はこの時点で日本に引っ張り込みたいのだが、残念ながら日本の閉鎖的な環境は此処にきても変わらず、その点米国は多国籍・多民族国家である為融通がとても効く。
此処で(海兵隊的な意味で)エリート教育を施された彼等彼女等は、その後ファントムタスクと縁の深い各企業に流れていく。

彼等自身には、自分達の存在に対する危険性を確りと教え込んでいる為、余り目立つ行動をしようとはしない。
それでも接触してくるミスリルやアマルガムには、寧ろ積極的に協力をすることで内部情報を流してくれると嬉しいとだけ言付けてはいるが。
因みに教育施設を出た時点で、彼等彼女等は親元に帰還することが許される。一定以上の戦闘訓練を積ませた彼等なら、二流程度の相手は逃げ切るだけなら何とかなる。

さて、それとは別にあるのが、強襲部隊。
これはウィスパード同士の感応能力を利用し、捕らわれのウィスパードを救出する為の部隊だ。
ウィスパード同士には共感……いや、共振だったか? そういった互いに互いを感じ取る能力がある。
相手に渡れば厄介でしかないが、此方に一定数がある以上、それをセンサーにしない手は無い。
各施設を強襲しては、個人情報を抹消し、此方の施設で新たな個人情報と共に保護・治療を施す。
ヤク中にすることで脳みその中のブラックボックスから情報を取り出す、という手法らしいのだが、なんともスマートではない。
こんなことを態々せずとも、ウチならばテスタメント辺りを使えば一発で脳内情報のやり取りなんて出来るのだけれども。


14歳、中学一年生になった。
M6を初め、様々なオーバーテクノロジーの影響が顕在化しだし、歴史との技術的乖離が進行してきている。
そろそろミスリルも本格的に活動するようになってきたはずだ。
テスタロッサ一家の悲劇は、何とか干渉しようとしたのだが、干渉しようとした途端に各地でなぞの停電やら自身による断線、突然の竜巻などにより失敗してしまった。

相変らず世界の修正力は滅茶苦茶だ。

現状、ファントムタスクはかなりの大企業になってきている。
いや、ファントムタスク自体はとても小さな会社なのだ。世界各地に支社があるとはいえ、結局の所社員は俺一人のワンマン運営。ただ、ファントムタスクの共産企業が多く、それらを纏めるファントムタスクグループは大企業の一角と認識されているのだ。

で、最近米国においた本社(ガワだけの無人ビル)に調査官だか何だかがやってきた。此方の余りにも的確すぎる株のやり取りに、インサイダー取引の疑いが持ち上がったのだとか。
まぁ、ウチは実質有限会社。個人経営の下町の雑貨屋――いや、出店みたいな規模でありながら、同時に世界に根を張る大企業と言う、自由経済主義の支配層からしてみればなんとも悪夢のような存在なのだ。
一応しっかりと税金は納めているものの、業付くの阿呆共は一度此方の資産を差し押さえようとしてきた事が会った。

即座に各所の資金を引き上げ、各地に存在するダミー会社に分散。それと同時に情報による報復攻撃を行ったのは懐かしい思い出だ。

まぁ、そんなトラブルはあったものの、現在の米国は史実よりも若干ながら技術の発展速度が速い。
全てが自分の成果とは言わないが、少なからず自分の介入の成果だと誇るところはある。





さて、そんな米国とは別に、実はソ国にも触手を伸ばしていたりする。
ソ国は社会主義なので、米国のように経済から食い込むというのはとても難しい。然しあの国の面々は、外貨や技術に対して酷く貪欲な面がある。
ネットスラングで表現するなら、クレクレ君なのだ。

まぁ、其処はさしたる問題ではない。
此方では国籍は取得せず、情報のやり取りだけに留める。
といっても、此方から提供するのはリーヴェニ……サベージの改良案や、OSを実際に改良したり。
因みに接触したのは政府側ではなく軍側、その中でもグルーとか呼ばれてるセクションだ。
連中はあの国の所属ではあるものの、やはり軍人らしい面が強い。おかげで何とか交渉が纏まっているのだかありがたいことではあるのだが、選民思想というか、そういう思想に被れた政府側に比べてなんとも気の抜けない交渉が続く。まぁ、悪くは無いのだけれども。

そうそう、ソ国の軍部と交渉している間に、なにやら変なあだ名がついた。私の呼称だと思うのだが、Ведьма Cyberという記述が議事録に記されていたのだ。
何の事かと調べてみて、思わず笑ってしまった。そういえば今回は名乗っていなかったのだが……。
まさか、昔の綽名とこんな所で再開するとは思わず、実体で苦笑してしまったのだった。

さて、そんなわけでソ国にまで手を伸ばしたわけだが、この状況で一つ布石を打っておく。そう、何時か来る日の為に。




「ただいまー」
「おかえりなさい」「おかえりー」
「いやぁ、疲れた。新人共の研修の為とはいえ、この年で滑走路50週とか死ねるね。表情には出さなかったけど」
「お父さんお疲れ」
「ありがとうさっちゃん。――うん? サッちゃんは何してるの?」

父が覗き込む画面に映るのは、なにやらゴチャゴチャとした線が書かれた画像データ。
漸く普及しだしたパーソナルコンピューターと呼ばれる代物だが、初期型ではあるものの、登場と時期を同じくし、父にねだって一台購入してもらったのだ。
残念なことに、父や母はアナクロな人間で、PCの操作と言うものは出来ないらしいが。
その画面に映し出されるこのデータファイル。……うん、父が興味を引くとは。これも何かの因果かな?
「うん、ネットに何かデータが流出してたみたい」
「流出って――穏やかじゃないね。何のデータなんだい?」
「うん、ASの基礎設計データだって」
「――はっ!?」
言った途端に絶句する父に、思わず苦笑する。まぁ、いきなりそんなことを言われれば驚きもするか。
この時代、日本はASという技術に対して未だ何処か不信感を持っていた。何せ人型兵器だ。確かに浪漫では在るが、それが実際本当に役に立つのか、と。
まぁ、私も確かにASは環境に左右される兵器だとは思うが、アレは治安維持や災害出動なんかと、兵器としてではなく、作業機として多々使える場面は多いと思うのだけれども。
「ほら、これ」
「こ、これは――見たことの無い形だけど?」
「うん。ASの技術をフィードバックした作業用パワードスーツ、じゃなくて、パワードスレイブ? だって。しかもこれ、流出したんじゃなくて、もしかしてそれに見せかけてネットにわざと流したんじゃないかな?」
ほら、とそう言ってみせるのは、データの頭に記された小松製作所とCarroll Dollyのサイン。
――そう、実は自作自演である。

「こ、これはまた」
「駆動系は油圧式、操縦系はASのそれを流用、サイズと出力を抑えて、軽トラ二~三台分のコストで、汎用的な性能……だって」
言いつつ、添付されていた画像データを開いてみせる。
其処に移されていたのは、試作機と思しき黄色と黒にペイントされた、設計図を実物にすればこんな姿になるのではないかという予想通りの機体が映し出されていた。
隣に移された人影と比較して、サイズは4.5メートルくらいだろうか。
「こ、これは……まさか陸の連中かっ!!」
と、なにやら父は呟くと、脱いだ制服を肩に担ぎ、大慌てで玄関まで走っていこうとする。
「あ、お父さん!」
慌ててデータをまとめ、入れっぱなしにしておいたフロッピーに焼いておく。フロッピーではある程度の情報量しか入れて置けないが、URLのメモを添付しておいた。此処から引っ張れば、同じデータを手に入れることが出来る筈……というか、そういうようにしてある。
用意したフロッピーを父に向けて投げると、父はニカッと笑い、「さんきゅー!」と下手糞な英語で礼を言って、そのまま何処かへ向けて駆け出して言ってしまった。
「あらあら、お父さんは?」
「んー、何か火がついたみたい」
「あらあらまぁまぁ」

PS――パワードスレイヴは、現時点から換算して、大体20年後くらいに流行する筈の技術だったりする。ASの技術を流用した作業用重機。後の世で、ASには劣るものの、それまでの重機に比べ途轍もない汎用性を示したそれ。
といっても、この程度は十分に現行技術でも再現できる。要は発想の問題と言うだけだし。
因みに名称はオッコト。形状は丸みを帯びた、東側よりも西側のそれに近い。構造もシンプル極まりないそれは、けれどもそれ故に耐久度はとても高い。

ロボットマニアの父がこんなモノを見れば、そりゃ興奮もするだろう。
何せ父は何時も言っているのだ。何で日本は未だにASを組織に組み込まないのか、なんて。
きっと父が自衛隊に入隊する前にASが存在していたら、父は空ではなく陸に行っていたことだろう。
いいのだろうかそれで。
「さっちゃーん、先にご飯にしましょーか」
「はーい」
まぁ、とりあえず私達は食事だ。――おぉ、今日は鶏肉のスパイシー丸焼きか。
各種香辛料でスパイシーに味付けされた鶏肉を丸ごと焼いた、豪快な料理。
とても母子二人だけで食べるような食事ではないが、美味しい物は美味しいのだ。
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演算娘パニック 00

2012.04.21 (Sat)
――『座』にて。

「ゲェハハハハ!! 今回はお前の嫌う原作キャラ転生だ!!」
「ちょ、何だと貴様っ!!」

漸く今回の派遣から帰還して、座にて一服入れていたところ。
不意に現れた代行は、突如としてそんなことを言い出した。
咄嗟に手に持った湯飲みを投げ付けるも、湯飲みは狙いをはずれ、ガシャンと音を立て砕け落ちる。

「くくく、原作キャラに憑依して、自らのキャラを放棄してストーリーに徹するか、それとも自らを貫くか、悩み続けてしまえぇい!!」
「なっ!?」

途端に現れる光の檻。咄嗟に破ろうとするのだけれども、私は魔法系に対して相性が悪いのだ。

「くそぉっ、ヤメロ代行、ぶっ飛ばすぞぉ!!」
「ほれ、お約束の落とし穴だぁ!!」

――スポーン
宣言どおり地面に開く黒い穴。
感覚としては重力に引かれるそれそのものなのだが、反重力やベクトル制御、時空艦歪曲までつかって離脱できない物は重力とは呼ばない。

「ぬぁっ、代行貴様、覚えてろよっ!!」

だから、精一杯の罵声を残して、私の身体は黒い穴の中に落ちていくのだった。





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