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46 RebirthⅢ

2012.07.16 (Mon)

『よくもまぁ、此処まで無茶をやらかした物だ』

目の前に立つドクターが、呆れ顔でそんな事を呟いた。

Subaru >でも、必要に駆られての話だよ?
『XG-70bに任せてしまえばよかったんだ。出力だけならばアレは十分ISを落せる』

そういえば、あれは一応小型の宇宙戦艦に分類されるのか。どちらかといえば駆逐艦のような気もするのだけれども、その破壊力はデブリベルトに一撃で大穴を空けられるほど。クウォーター級には敵わないが、それでも十分以上の戦闘能力を持っているのは事実。

Subaru >いや、それでも万一が在るし。現状、ISに確実に相対できるのは、未だISだけだよ。
『PS計画の自己否定じゃないか』
Subaru >今は、って言ってるでしょが。

いずれはPS――量産型パワードスーツでISに追いつける時代が来るだろう。PSでなくとも、他の何かがISを追い越す日が、何時か必ず来るだろう。

Subaru >諦めたらそこでゲームオーバーですよ、だよ。
『まぁ、それもそう何だけれどもね。……とりあえずスバル、キミは今回無茶したバツとして、暫くは調整槽だ』
Subaru >えーっ!!
『ドゥーエが本気で怒っていてね。今出てくると洩れなくお説教が突いてくるが?』
Subaru >……調整槽で結構です。
『いやぁ、あの時のドゥーエは怖かった。トーレが裸足で逃げ出したからね。文字通り』

ガチ武闘派のトーレ姉をビビらせるドゥーエ姉。うわぁ、桑原桑原。
まぁ、クアの馬鹿はきっとそんなドゥーエ姉を見てエロくクネクネしてるんだろうなぁ。



あの地球へ向う最中の戦闘の後、気絶した私は気付いたら何処かの研究所のポッドに入れられていた。
で、最初に見たのがあのにやけたドクターの顔なのだから、その驚愕は察して欲しい。

イノベげふん、電子の妖精達の活躍のおかげで、何とか私はXB-70bに回収され、そのままこの施設に運び込まれたらしいのだが。

『本当に危ない状況でした。強化内骨格が内蔵を圧迫して、ポッドの強化型回復機能でかろうじて一命を取り留めた、と言う状況です』

リーダー格の赤毛君の言である。
で、目覚めた私はポッドに入れられたまま搬送。月軌道上の低重力医療施設に担ぎこまれた私は、現在こうしてポッドの中で、喋る事もできず、ただほぼ全裸の状態でチャットをするだけの毎日を過している。
幸い胸元より下は見えないように配慮したつくりになっているのだけれども、うーん、水の中で常全裸とか、何か新しい境地に目覚めそう。

――いや、ジョークだからね?

Subaru> で、あの襲撃してきた子について何か分った?
「あぁ、色々と情報が入ったよ。見てみるかい?」
Subaru> 是非に。

ドクターから送られてきたデータが、ポッド内の投影ディスプレイに表示される。
さすが未来の医療用ベッド。ステータスモニターからテレビ、果にはインターネットまで搭載している万能ベッドを豪語するだけは在る。
因みにこのメディカルポッド、愛称メディポッド、現在日本円で一機6桁くらいで販売している。感染症患者とか、大火傷の患者なんかが利用するのにいいらしい。

閑話休題。

ディスプレイに表示されたデータを見るに、成程彼女は確かにイギリス国籍の元代表候補生という事に成っている。
名前は「ミレイヌ・サヴィル」。イギリスのそこそこな旧家の出身で、IS適性はAと高く、学問に関してはそこそこより上くらいだが、実機演習ではかなりの好成績を記録。BT適性もそこそこあり、同じ代表候補生セシリア・オルコットとしのぎを削る関係だったのだとか。
人格面の評価は思想に身をおく狂人。要するにすぐにトリップする不思議ちゃん、という評価だったらしい。
思わずあの狂暴な少女の様子を思い出して、報告書とのギャップに首を傾げる。
だって、私が出会ったときのあの子って、如何見ても厨二系転生者といった感じだった。間違っても不思議ちゃん評価はないと思うのだけど。

続けて報告書を読む。
ブルー・ティアーズの専任選択においてセシリア・オルコットと競合。
サヴィルは戦闘能力こそ高いものの、その能力はどちらかと言うと近接戦闘に向いていた。試合の結果は僅差でオルコットの勝利。また戦術適性としてもオルコットに軍配が上がった。

此処で彼女はならばとIS学園への入学を希望するのだが、それを止めたのはイギリス政府だった。
イギリス政府としては、ヨーロッパ圏で行われる次期主力ISの選定――イグニッション・プランにおける主力候補である第三世代機、ブルー・ティアーズの広報は急務だ。
IS学園には多くの国家から未来のIS乗りが訪れる。そんな場所で新型を見せるのはナンセンス。然しこの次期ブルーティアーズを見せるのは寧ろ宣伝の意味として重要な物があった。
であれば必然的に、ブルーティアーズのランナーたるセシリア・オルコットのIS学園入学は必須となる。

然し、セシリア・オルコットがIS学園へ行ってしまえば、必然的にブルーティアーズの開発は遅れる。治外法権であるIS学園での開発は政治的に不可能なのだ。
そこで政府は、IS学園で取られたBTのデータを、本国でBT2号機、サイレントゼフィルスを使い、当機の熟成を進めることにしたのだ。

そこで抜擢され(てしまっ)たのが、彼女ことミレイヌ・サヴィルだ。

結果として彼女はIS学園へ行く事も敵わず、サイレントゼフィルスのテストパイロットをする事に成ってしまったのだそうだ。

で、来る某日。
セシリア・オルコットから齎されるデータにより、順調に進んでいた2号機開発だったが、此処で我々転生者であれば、予備知識と合わせて予期すべき事態が発生する。つまり、BT2号機、サイレントゼフィルスの強奪事件である。
彼女はサイレントゼフィルスを駆り、襲い来るISと激突。圧倒的不利な状況にも拘らず、施設の研究員全員が撤退完了するまでの時間を稼ぎきった。
残念ながら彼女は2号機ごと亡国機業に誘拐され、その後は消息不明――という事に成っていた。

なんともまぁ、若干残念ではあるが、中々波乱万丈な。オリ主といっても良い程度には主人公してるよ。

ページをめくる。
友好関係について。
彼女はなんでもオルコット家に規模でこそ劣るものの、歴史としてはオルコット家に比肩するほどの旧い貴族の家の出自なのだとか。
友人はその伝手、つまりは中流以上のところが主で、彼女自身父親の伝手を使い、広い交友関係を気付いていたのだとか。まぁ、周囲からの評価は「メルヘンちゃん」だったらしいが。

代表候補生の合宿においては、中心からはずれ、然し全体を俯瞰してバックアップするという立ち位置におり、貴族でありどうしても周囲を見下す傾向にあったセシリアや、何故か人格面で際立つ物のある高IS適性者達を、外側からサポートし、結果として合宿の前後での全体の成績向上率は例年を大きく上回ったのだとか。
個人の努力は当然だが、それを裏で支えていたのは間違いなく彼女であったのだろう、とは現地合宿所管理人のコメントだ。

また合宿所の面々――代表候補生達や貴族社会としての交友関係以外で、一つとても目立つ交友関係があったらしい。それが、インドの技術開発局に勤める鬼才、ラクシャータ・チャウラーとの交流だ。
一体何処で知り合ったのか、イギリス政府でも把握できては居ないのだが、ミレイヌ・サヴィルとラクシャータ・チャウラーは長く国を超えて交友を持った友人同士であり、ラクシャータ・チャウラーの発表した文献の幾つかには、ミレイヌ・サヴィルの名が残されているのだという。

つまりあのグレンは、ラクシャータ博士の開発ではなく、友好関係にあった彼女からの情報提供で建造された機体だ、と言うことか?
インドの機体って、ヴァジュラだったか、確かそんな名前だったように記憶している。

で、最後に彼女の現状。
地球回帰軌道において彼女との激戦の結果、Type-0-2の奮闘により撃破。装備する蒼い機体(サルベージしたデータからはソウエンと呼称)とともに回収。
簡易検査の結果、薬物による洗脳の疑いが出たため即座にメディカルポッドに入れ、入念な精密検査を実行。その結果、彼女の体内から大量のナノマシンと薬物を検出。
薬物は興奮剤、高揚剤、暗示剤――つまり催眠暗示に掛かりやすくなるような、麻薬系の物質が多量に検出され、そのほかにも肉体強化のためと思しき物などが検出された。
ナノマシンのほうはもっとえげつない。
主だった機能に、ナノマシン保持者の監視機能があり、このナノマシンを投与された物は、管理者に常に監視された状態に成る。そして最悪なのが、彼女の首に埋め込まれた小型の形成炸裂薬――つまり、爆弾。これを起爆させる為のシステムが組み込まれていたのだ。
機密保持、裏切り対策などを考えれば、成程中々のシステムだが。誘拐して洗脳した上こんなモノを仕込むとは。“らりるれろ”に切られてから、よほど余裕が無いと見える、亡国機業め。
幸いな事にウチの研究施設はその全てが狂った月兎対策に電波どころか量子の波、コアネットワークまで遮断する特別製だ。それが幸いして、彼女に対する自爆命令は遮断できたらしい。

現在彼女はウチの――つまり、N&Tの研究施設において、ナノマシンの排出と薬物の後遺症からの脱却の為の治療を受けているのだそうだ。
一応彼女の存命をイギリス政府に通達したらしく、即座に彼女の身柄返却要請が着たらしい。現在絶対安静が必要な上、亡国機業に狙われている可能性が高く、このまま秘匿して治療を優先させると宣告。
それでも強引に身柄を要求してきた為、ならばイギリスにN&Tの被った損害の補填を求めたところ、彼女が目覚め次第、サイレントゼフィルスと亡国機業の情報を可能な限り渡してくれれば、彼女の身柄をN&Tに完全譲渡する、とまでの言葉を貰ったのだとか。

N&Tの損害って、アレだよね。ソロモン。宇宙要塞の補填って如何よ。

TINAMIにだが、彼女の搭乗機、グレン改めソウエンは、現在N&Tの支社の何処かでオーバーホールと言う名の完全解体の憂き目にあっているらしい。
何せエナジーウィングに輻射波動砲と、中々愉快な技術が目白押しなのだ。ドクターも現地で顔芸しながら嬉々として解体に加わっていたのだとか。

Subaru> ありがとドクター。
「いやなに、私も今日見合って調べた事だ。満足したかね?」
Subaru> うん。
「そうか。なら、次はキミに関する話だ」
Subaru> へ?

そういって、次にメディポッド内のディスプレイに表示されたデータ。
何々、ファイル名「戦闘機人強化プラン」……っておい?!

Subaru> ちょ、何する気!?
「詳細はデータに纏めてあるんだが、まぁ要するにコレまで含め、今回の事でも分った戦闘機人全体の強化を行おうかと思ってね」
Subaru> 強化って。 具体的にはどうするの? 内部の骨格の構造材の変更?
「いいや、今回は根本的なところから改造しようと思ってね」

とりあえず見てご覧、といわれて送られたデータの中身を開封してみる。
そこにあったのは、いうなれば人と機械のより完全な融合。
現状、戦闘機人と言うのは、肉体の内部構造の主に骨格部分を機械化し、いうなれば人間を基にしたターミネーターのような構造をしている。

利点として、骨格が強化されているため、多少のダメージでは行動不能に成る事は無く、予め整備施設を整えておく事で、戦場で撃墜されても、回収・整備を行う事で即座に再出撃が可能である点だ。
つまり、軍事において最もコストが掛かるとされる人員の教育。
戦闘機人は、人的損失を軽減するとともに、高い回収率を期待できるのだ。
そのほかにも戦闘機人特有のデータの共有によりコストや時間を削減する事ができ、根本的に教育に掛かる時間をカットできたり、それどころか戦闘機人は『生産』出来るのだ。必要なときに必要なだけ戦闘機人を生産すればいいのだ。

まぁ、デメリットとして、一度壊れてしまうと専用の設備下でなければ修理は難しいし、設備が無ければただの人間を治すよりもコストが掛かってしまうのだが。

「なに、戦闘機人の初期プロットから既に15年以上経っているんだ。今やISは勿論、我々は宇宙に進出し、PS、紋章機、リジェネレイトと、この十数年であのときから大きく技術は進歩した。どちらにしろ、そろそろレストアの機会だと思っていたのだよ」

まぁ、確かに。私の提案する案や、N&Tで実際に開発された技術。それらは、私が生み出された当時には無かった技術だ。
それら最新技術を私の身体にフィードバックさせる……なるほど、レストアとは当にその通りか。

「具体的には、骨格系を特殊合金にし、更に全身にナノマシンを循環させる事で再生力を強化。骨格と企画をあわせることで、細胞に加え骨格の自己治癒まで可能に。更にナノマシンをIFSと連動させることで、生体情報端末たちにこそ及ばない物の、かなり高い情報操作能力を獲得! 無論神経系も強化するさ。とはいえ神経系のファイバー化は嫌がられたからね。また別の手段で、反応速度を倍以上に引き上げる事に成功したのさ。くくく、くふふふ、ふはははははは!!! 当に最強! さすがは私の作品。当に生命の神秘を手中に収めた所業!! 芸術的だとは思わないかね!!」
Subaru> 落ち着けドクター。
「あーっはっはっはっはっは!!!」

駄目だ、完全に暴走しだした。
顔芸までして完全にテンションがぶっ飛んでる。こうなっては、メディポッドの中に居る私ではドクターを正気に帰すことは無理だろう。

正直、カメラが寄ってる状態で顔芸されると、ポッドの中に居る私だとこう、逃げられないのだけれども。

Subaru> Plese come back Uno...

彼を止められるのはあなただけです。切実に。

...早く帰ってきてウーノ姉ぇ!!!
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45 RebirthⅡ

2012.07.05 (Thu)

四機の追跡者を撃破し、機体の調子を確かめる。
この機体は、νGに比べると途轍もなくピーキーな機体だ。νGは汎用性、生産性共に最高値を指す、私の最高傑作といっても間違いない機体だった。
それに比べれば、この機体はνGには到底及ばないだろう。

――けれども、νGでは、絶対に届かない次元。そこに、今私は立っているのだと感じている。

「調子はどう?」
『――――――』
「そっか、そだよね。なにしろコッチが本分なんだから」

完全無欠の速度特化。徒早く、徒何処までも。それだけを追求して、一番最初に生み出された私の機体。
嘗てのそれは、技術不足からその情報処理の大半を搭乗者にゆだねるという、とても人の扱える物ではない欠陥機であった。
何時しかνGの台頭で姿を消した筈のその機体。けれどもどうやら、ドクターはコレをこっそりと回収し、再設計やらなにやらで作り直していたらしい。
――私はてっきり、何処かの格納庫で埃を被ってる物だとばかり思ってたんだけどね。
真逆ドクターが、そんな七面倒くさい手間を掛けてくれるなんて、そんな事考えても居なかった。

『――――』
「ん、承認」

四機のISとの経験値により、ISがファーストシフトを迎える。
黒と銀のツートンカラーに赤いラインが走るその姿。かつての物と見た目の趣こそ異なるが、それは間違いなく嘗て私が乗っていた機体だった。

「イメージインターフェイス接続良好――演算容量120%の余裕――すごい、サイコフレームにサブジェネレーター、QB、OB、PAも装備して、しかも親和性が最高値だなんて。流石ドクター、パーフェクトだ」

思わず感嘆の言葉を漏らす。
何せNEXTの基幹技術と、NMSSの基幹技術たるサイコフレームを併用し、その上で両者を完全に機能させ、尚且つ嘗てのこの機体の問題点であった演算能力には圧倒的な余裕があるのだ。
コレを地上の科学者(兎以外)が見たら、沫を吹いて倒れるのではないだろうか。何せこの機体、ブラックテクノロジーの塊だろうし。

「――ん?」

不意に何かを感じて視線を向ける。
越界の瞳にも、ハイパーセンサーにも、何も写らない。けれども、確かに其処に気配を感じる。
――憎悪、悪意、敵意、言葉にすればそんな感情か。

「……あの子か」

思い浮かぶのは、ソロモンにて戦った、赤い機体の姿。
今ソロモンの方向から此方に向かってくる敵意というと、まずあの子で間違いないだろう。あの状況から如何やって復帰したのかは不明だが、それでもこの気配は間違いないだろう。

一歩踏み出そうとして、不意に訪れた痛みに思わず脇腹に手を当てる。

『――――――』
「はは、ダイジョーブダイジョーブ。戦闘機人はこのくらいでへこたれない!」

心配してくれるこの子にはそう言うが、それが口先だけだというのは、私もこの子も理解しているだろう。
私の肋骨は、先ず間違いなく折れている。それだけならまだしも、多分他にも何箇所も折れている上に、それが内蔵を若干圧迫しているのだろう。間違いなく病院に搬送して緊急入院レベル。間違ってもISに搭乗する様な――しかも、こんなピーキーな機体――そんなコンディションではない。
何よりも最悪なのは、私が戦闘機人だという事。骨格が普通の骨ではなく、調整された人工物であるという点。普通の物よりも頑丈なそれは、当然ながら普通の骨に比べてとても重い。それは、この高機動機に搭乗する現状、途轍もない負荷を内蔵に与え続けている。

けれども、だからといって此処で立ち止まるほど、私は諦めが良くない。
此処であの子を停めなければ、あの子は間違いなくXG-70bに追いついてくるだろう。それは、私の大切な駒が潰される事に他ならない。

「――ふぅ。行くよ、νG……いや、」

小さく息を吐いて、覚悟を決める。
私は、私のために、私の前に現れる有象無象を踏み潰す。

「行くよ、RAY―R2―――マッハキャリバー!!」

手に入れたのは最初の心。

『―――――――――』

取り戻したのは不屈の翼。

「うん! スバル・スカリエッティ、――マッハキャリバー、此処で、終わらせる!!」
『くぅっ!! この、イレギュラー如きがあああああああ!!!!!!』

加速した機体が、背後から迫る光の塊――巨大なスラスターを背負ったISと激しくぶつかる。
――そうか、基地に残ってたVOBを無理矢理束ねて加速したのかっ!!

ガン!!! と機体と機体がぶつかりあう。
共に地球へ向けて加速する中の戦いは、モンド・グロッソというよりはキャノン・ボールに似た物がある高速戦闘。
――つまりは、これは私の土俵!!

ハイパーセンサーといえど使うのは所詮人。背後や頭上、真下にたいしては、如何しても反応が遅れる。
それは、純粋な人間には絶対に対応できない穴だ。

「ハジケロイレギュラアアアアアアアアアアア!!!!!!」

血を吐くような叫びと共に放たれる電子レンジ砲。即座にその範囲外を計算―回避する。
天蓋方向への回避により一瞬此方の姿を見失った蒼い機体。嘗ては単発のみを許された必殺の一撃。今のこの機体なら、連射も出来る――っ!!

「振動速射砲!!」

衝撃砲とIS:振動破砕の併用スキル、振動砲。
ISの処理能力が向上した現在、衝撃砲、振動拳共に連発が可能!
そうであるなら、当然振動砲も連射が出来る!!

ISを貫通し、搭乗者にダメージを与える事を狙った酷いその攻撃。蒼い機体の子はけれど、その不可視の攻撃を一撃喰らっただけで、後は機動とその巨大な右腕を盾に防いで見せた。

――不可視の攻撃を初見だけで防ぐかっ!!

「薙ぎ払うっ!!」

途端に赤い閃光が宇宙空間を両断する。咄嗟に回避して、即座に周囲で起こった爆発に眼を見開く。
周囲にあったデブリ帯が、赤く融解し、一部では派手な爆発すら起こっているのだ。慌ててハイパーセンサーでXG-70bを確認――幸い射線からは外れていたようだが――それでも驚く事に、あの一撃はXG-70bを有効射程範囲に捉えているらしい。
FCSまで有効範囲に入っては居ないだろうが、攻撃が十分な威力を持って届くというだけで十分以上の脅威なのだ。

「くぅっ!!」
「自分の武器で、滅びろイレギュラー!!」

途端、蒼い機体の繋がったブースターの各所、其処に繋がれたコンテナのような物が開く。
いや違う、あれは――ウチのマイクロミサイル!!

衝撃砲で迎撃しながら、ミサイルに向かって吶喊する。確かあのタイプのマイクロミサイルは、目標に対して最速で着弾する為、旋回性能が低くなってしまっている。そのため、正面から突っ切ってしまえばそれ以上の追跡は出来ないのだ。
とはいえ現状は高機動戦闘。正面といっても負荷はかなり大きい。
鈍痛が激痛に変わるのを感じながら、ミサイルの弾幕を潜り抜ける。

……どうやら、近接信管のミサイルは混ざってなかったらしい。セーフ。

「くっ、ならもう一度この収束砲で!!」
「やらせるかっ!!」

蒼い機体に近接し、背後からその巨大なブースターになんとか一撃を叩き込む。急造品であろうその巨大なブースターは、その一撃で火を噴いて機能を低下させ、ついで二発、三発と叩き込むごとにその機能を落していく。

「お、おのれおのれおのれえ! イレギュラー風情が!!」

ガコンと、ブースターから蒼い機体が分離して――その一瞬、完全に蒼い機体が動きを止めた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」

大きく振りかぶる一撃。スラスターを全力噴射。最短距離で最強の一撃を叩き込む事だけを意識して。
――その瞬間だけ、間違い無く私は徒一発の弾丸であったのかもしれない。
遅れて此方に向き直ろうとする蒼い機体。けれどもその搭乗者の表情は、驚愕に見開かれていて。
それでも尚勝利への渇望があるのだろう。動いていない機体を無理矢理動かし、その右手の鋭い爪を此方に向けて突き出してきた。
それと同時に、此方も覚悟を決めた。

――――ッ!!

「な、なんだこれは!? 私の知らないシステム!?」
「 戦争を遊びにしているお前にはわかるまい! この俺の体を通してでる力がっ!」
「ふざけた事を!!」

Ray-Ⅱ……マッハキャリバーに搭載されているサイコフレーム。いや、この場合はサイコミュといったほうが言いか。
サイコミュは、人の意思を表す装置。マッハキャリバーは、その力を表現してくれるマシーンなのだから。

「イレギュラーーーー!!!」
「一撃必斃!!」

――――ゴガンッ!!

手に伝わる衝撃。音にすれば、そんなものだっただろうか。
弾くわけではなく、貫通する拳。必殺の威力を籠めたその右拳は、ギリギリ相手の爪が届く前に、向うの脇腹を深く抉っていた。

……いや、違う。相手のISこそ抉っていたが、搭乗者のほうには傷一つついていない。振動拳の影響で内蔵は拙いだろうが、それでもISスーツ、いや半透明なエロ水着っぽい宇宙服? 自体には、傷一つとしてついていない。
――運のいい。もしスーツが破れていれば、ISが機能停止した現在致命的だったろうに。

「…………っ」

考えている内に、漸く痛みが思考に追いついたらしい。
激しく激痛を放つ脇腹。同時に腕や脚なんかも激痛を放ち始めた。鎮痛剤も既に効果を切らしたらしい。
肋骨が折れてるっぽい現状で高機動戦闘――後が怖い。

「……はぁ」

小さく息を吐いて、一瞬悩んでから意識を失っている蒼いISの搭乗者を片手で掴み、そのままXG-70bへ向けて加速する。
どうやら向うも此方の戦闘が終了したのを察知したらしく、此方と合流する為に少し速度を落したらしい。相対速度的に見て、あと10分もすれば合流できる筈。

――っ!?

と、気を抜いたのが拙かったのだろう。途端に視界が黒く染まりだしたのに気付いた。
宇宙空間自体暗いものなのだが、星の光が徐々に消えていくその光景に、とっさに自分の意識が落ちかけているのだと自覚して。

「まず……MC(マッハキャリバー)、頼む……」

それだけ小さく呟いて、意識は完全に闇に飲まれる。
最後に聞こえたのは、何処か慌てたような少女のコエだった。


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44 Rebirth

2012.06.21 (Thu)
--Side Other



「が、はぁっ……」

ガラガラと音を立てて崩れ落ちる廃材の中。そんな声と共に、一本の腕が天に向けて突き出された。
いや、正確には天でも上でもない。何しろその場では、上下と言う概念が当てはまらないのだから。

「ち、くしょう……イレギュラーめ……」

飛び散った廃材は、まるで重力を感じさせない動きでフワフワと宙を舞う。それもそのはず、その場所は月に等しく地球から離れた宇宙の片隅に存在する人工物の中なのだから。
そうして這い出してきた少女。赤い髪の毛をショートで纏めた、嘗ては快活であっただろう少女。その眼は暗く淀み、一言で言うならば腐った魚のような目をしていた。

数十分前。少女はこの世界のイレギュラーである存在を圧倒的力を持って叩き潰す為、この基地に対して襲撃を掛けた。
少女の得た力はIS適性Sと、とあるアニメの技術体系知識。亡国機業に取り込まれたとはいえ、その圧倒的な実力と力は健在。それを持って、イレギュラーを斃し、それを持って自らが表舞台へと台頭する。
そのはずだったのだ。

「おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれ、おのれええええええええええええ!!!!!!」

少女の怒気に呼応するように、その右肩を覆うISが激しく明滅する。
けれども、顕現するのは身を守る最低限のみ。現在の彼女のIS、グレンは、既に先の戦闘でエネルギーを使い果たし、今は彼女が地上へ戻るまでの間、最低限のエネルギーバリアを張り、少しずつ帰還分のエネルギーを必死に溜めているのだ。

けれども少女の憎悪は止まらない。
少女は手早くグレンのコンソールを立ち上げると、即座に自らの機体の状況をチェックし始める。
エネルギーは最低限。機体は左腕及びスラスターの70%が大破。

(……これでは、エネルギーが回復したところで、あのイレギュラーを終えないじゃないか!!)

憎悪に歪む彼女の視線。そのとき、まるで何かに呼ばれたかのように少女が視線を動かした。

「――急速エネルギーチャージャー……ツイてるじゃないか!!」

それは、IS学園や軍などのIS関連施設には必ずおかれている、ISに対して急速にエネルギーをチャージする為の装置だ。
エネルギーチャージャーの使用はISコアに対して負担を掛ける。然し、軍などでは訓練とあわせて常にエネルギーに余裕がある状況であるとは限らない。
万が一の時に備えた装置。それが、エネルギーチャージャーだ。
そしてそれは、奇しくも彼女が突っ込んだ格納庫にも設置されていたのだ。

「エネルギーは……くふふふ、一機分はゆうに在るじゃないか!! コレこそオリ主のご都合主義ってやつじゃないか!!」

エネルギーチャージャーは、ISというトンデモ兵器に充電を行えるという、ある意味これもまたとんでもない装置だ。そんな装置が、何故この廃棄された基地でまだ生き残っていたのか。
それは、このチャージャーの特性上、一度このチャージャーのキャパシタに電力を取り込み、それをエネルギー変換するという必要があるのだが、これは要するに基地そのものの電力が落ち、徐々に抜けていくはずだったキャパシタ内のエネルギーが、彼女が突っ込んできたときには未だ完全に抜け切っていなかった、と言うことなのだろう。
即座にISをチャージャーに接続。そのまま急速にエネルギーを充電する少女。

(これでとりあえずエネルギー問題は解決した。後はイレギュラーに如何やって追いつくかだけども……)

彼女にあるチャンスはあまり多くない。彼女の目的であるイレギュラーの抹殺は、遅れれば遅れるだけ原作イベントが進行してしまうという不利点があるのだ。

(けど、IS学園に襲撃をかけるのは拙い)

幾ら彼女とて、一対多の状況で圧倒できると思うほどの自信家ではない。
まして、IS学園は彼女にとっても有用な場所だ。此処で襲撃を掛けるのは、後にも先にも愚行でしかない。
であれば、矢張り殺るなら今回、このタイミングこそが望ましいのだ。

(けれどももう――いやまて、此処にISの充電器があった? ッてことはつまり……)

キョロキョロと周囲を見回す少女の視線の先に、無重力にフワフワとたゆたうコンテナの姿が眼に入る。
そうして、其処に刻まれた文字は――。

「これは――運命だ」

取り付き、コンテナのハッチを開放する。
途端にあふれ出たのは、ISのパーツ、パーツ、パーツの山だ。
優に数機分以上はあろうかというIS用のパーツの山。彼女の知識を用いれば、このパーツで機体を再生――いや、昇華させるにはそれほどの時間も必要としないだろう。

「私は未だ戦える!!」









グレン改め、ソウエンと名付けられたその蒼と黒のツートンカラーの機体。
グレンはそもそも亡国企業で盗み出したISコアを用いて作られた機体だ。その際に考慮されたのは、亡国企業という背骨の弱く、かつ消耗の激しい組織でいかに整備メンテナンスを充実させるかと言う点。
その点で鑑みれば、世界有数の汎用ISを有するN&Tのパーツを使うというモノだった。
コア構想を有するN&Tのパーツは、その汎用性ゆえに世界各国で利用されている。流出品を使うにしろ、盗み出すにしろ、整備性の面も鑑みればこの技術を使うのは必然。
そうしてコアシステムに順ずる機能を有する彼女の機体と、ソロモンに残されていたパーツの相性がよかったのは、ある意味では必然であった。
コンテナには量産品のパーツしかなかったが、扱い辛い特化装備などあっても使いようが無い。量産品しかないという事は、彼女にしてみれば寧ろラッキーな事柄なのだ。

「何処だ、何処に居る、イレギュラー!!」

地上であれば音速などというモノを軽く超越した速度で宇宙を直進するソウエン。
背中には馬鹿でかいブースターが一つ。それは、ソロモンに残されていたランチやVOBを無理矢理改造して作られたIS用航宇宙装だった。

本来なら追いつけるはずの無いその宇宙で、彼女は得た知識をフルに活用し、全身全霊を以って今このとき、再びスバルに追いつこうとしていた。

「――其処か!!」

ソウエンのピックアップした拡大画像。けれどもそれは、ボロボロになって廃棄されたISの姿。
当然其処には搭乗者の姿は無く、ISコアもまた抜き出されているのだろう。

「――まさか」

少女は思う。そんなまさかと。
ISの機体というものは、作ってすぐに使えるというわけではない。
ISの機体を用意し、ISのコアを用意し、機体とコアのマッチングを行い、さらに搭乗者と機体とのフィッティング・マッチングを行う事で漸くISはまともに稼動させる事が出来るのだ。

現在、もし彼女の敵が持ち出してくるISがあるとすれば、それは間違いなく報告にあった織斑一夏に届けられる筈のISだろう。
けれどもそれは、未だ出来て間もない新品。赤子にも等しいだろう。
例えISコアを移植したところで、まともな戦力になるはずも無い。

(……だというのに、何故だ。何故こうも、私は不安をあおられている――っ!!)

途端、気配、としか言い表しようの無い何かを感じて、少女は宇宙のある一点を見つめる。

――其処に輝くのは、宇宙の無明に尚白く輝くノズル・フラッシュ。白い輝きは暗い宇宙に、小さなXを描き出す。



「――まさかっ!?」

『――スバル・スカリエッティ、RAYR2--マッハキャリバー!!。此処で、終わらせる!!』

「くぅっ!! この、イレギュラー如きがあああああああ!!!!!!」

宇宙に輝くのは滅びの光か、それとも輝く人の意思か。
此処に、再び二つの輝きがぶつかり合った。



Side Other End

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43 XG-70b・RX-0・to_be...

2012.06.16 (Sat)
(……スサノオか)
艦橋にたどり着いて、一番最初に教えられたもの。それはこの機体の名前だった。
「このXG-70b、通称凄乃皇(スサノオ)弐型は、本来であればデブリベルトや流星破壊の為の装備として、荷電粒子砲を装備しています。今回はそれを牽制に用いました。ミサイルやレールガンは――正直ドクターの趣味ですね」
「まぁ、矢鱈と武装させたがるからね、あの人……」
「ええ。――仕様ですが、出力は二次元核融合炉が三機、MLEが一機、それらをドクター謹製の波形融合増幅機関により増幅させ、IS30機分程度の出力を持っており、主な移動システムは重力
・慣性制御による物と、ブースターイオンジェットです」
「――そりゃまた。凄い、って言っていいのかな?」
「ええ。但し、キルレンシオとしてみればスサノオと第三世代ISで1:10程度です。これは、あくまで個人の装備する兵装であるISに対して、高い汎用性を重視し、尚且つ複数人数で運用する事を想定した兵器であるスサノオとの差、でしょう」
要するに、「人が使う事で限りなく汎用性が広がるIS」に対して、スサノオは「誰が使っても十全に性能を発揮できる代わりに十全以上は存在しない」のだ。うん、まさしく兵器なのだな。
「――で、あの連中からは逃げ切れるの?」
「難しいかと」
言って、言葉と共に表示される投影型ディスプレイ。
「現在、ソロモンを廃棄した我々は、地球へ向けて高速移動中です。が、背後から迫る敵機――仮にボギー1からボギー4とします。これらは相変らず一定速度で着かず離れずの距離を維持。現在は重力障壁によりその攻撃を無効化していますが、この機体も未調整の代物です。地球圏到達までは保障できますが、それ以降は……」
「敵の目的は? 何だと思う?」
「高い確率で、RX-0かと」
「――はぁ。やっぱアレか」
RX-0。
私がNMSS計画をスタートさせた理由。ある意味、私のNMSSはこれを作る為にスタートしたといっても過言ではない。
νGが――サイコフレーム実装機の臨床データがある程度以上溜まった時点で、コレの製造は既にスタートしていた。
スタートして、完成したコレは、今や私でも使う事をためらうほどのバケモノとして完成してしまった。
現在ISコアを搭載していないアレのテストは、私が直々に勤めた。コアバイパスシステムを使い、νGのコア・エネルギーを擬似的にアレに供給できるようにして、その上でアレを起動させたのだ。
結果、サイコフレームのオーバーロードを起こし、危うく死掛けた。
発動してしまったあのモードも、おかげでフレームの全損という事態に陥り、急遽内部フレームを一新する羽目にまで陥ったのだから。おかげ、と言うのもへんだが、結局私自身のバージョンアップにまで繋がってしまったし。
まぁ、いい。結局の所、私は今でもコイツを十全に使いこなせるとは言い切れない。つまり、事実上振るスペックのこいつを扱える人類(じんるい)は存在しないという事に成る。
彼等生体情報端末ほどではないが、私も生まれながらに調整を施されているアドバンス・コーディネイターの類だ。これでただの人間に乗りこなされてしまうのは、流石に不に落ちない。そんな欠陥兵器を、今現在織斑一夏のところに運んでいるのは、あくまでもリミッターをつけた状態であるからだ。
――まぁ、イチカなら主人公補正とかで普通に乗りこなしそうだけど。
「でも、何処から情報が?」
「最有力候補として日本政府に話を通した際、スイーパーから情報が洩れたというもの、第二候補として、災厄の兎からの妨害、第三候補として、IS学園内からの情報漏洩となります」
「――確率比は?」
「4:4:2となります」
日本政府がヴァーカだったか、兎が「いっくんのISは私が作るんだよ。有象無象がわりこんでんじゃねーよ」と邪魔に入ったか、それともイチカの無自覚な情報漏洩か。
まぁ、どれであろうと現在攻撃を受けているという事実が変わるわけでもなし。
「結局、地球に逃げ込むことは出来る、と?」
「それなのですが――」
そういう赤毛の言葉と共に、メインモニターに表示される解説図。
「現状ではこの着かず離れずを維持することで精一杯です。もしこのまま地球圏へたどり着いたとしても、規定の通りの手続きを通すのは困難です」
「なるほど、それでこの図か」
「ええ、スサノオを大気圏表層まで降下させ、そこからスバル様にアレと一緒に降下していただきます」
其処に表示されているのは、VHSと呼ばれる大気圏降下用のポッドだ。
主に宇宙開発素材を地上へ下ろす際などに用いられるもので、特にN&Tの代物は、宇宙戦艦の脱出用ポッドとして採用しても十分以上に通用するほどの代物に仕上がっている。
「なるほど、IS学園に逃げ込んでしまえば、あそこならばギン姉もいるしね。――でも」
「無論、懸念されるIS学園へ逃げ込んでも――と言う可能性もあります。然し、理性的に考え、専用機の多数在籍するIS学園への襲撃は、確率としてもそれほど高くは無いかと」
「うーん……」
確かに、ISに関する知識を欠片でも持っている人間であれば、IS学園に攻め込む危険性と言うものは十二分に理解しているだろう。
何せあそこは、最新型のISの見本市。さらに言うと、織斑一夏の台頭により、あそこは現在おかしな具合に戦力が集中しだしているのだ。
只でさえ、更科楯無なんてのが頭を張っている組織なのだ。私だってあそこに単機で攻め込むとかやりたくない。出来ないとは思わないけど。
「他の、ウチの基地は近くには?」
「現在、リジェネレイトはアクシズに接舷していますが、現在両基地はデブリベルトのファウンデーションにてリジェネレイトの最終調整に入っています。デブリ内では小回りの効くISが有利ですし、此処からでは到達前に敵機群に追いつかれてしまいます」
「そう、か。……それじゃ、しかたないね」
まぁ、所詮IS学園だ。戦力的には脅威に値するが、管理運営は日本政府。政治家に献金でもしておけば、大抵の問題は有耶無耶にしてくれる蝶☆放置こkk――もとい、法治国家だし。
「とりあえず、そうなると先に私のνGの修理もやっとかないとね」
「それですが……」
そういって、再びモニターの映像が切り替わる。コレは格納庫かな?
真ん中に鎮座するのは、一切の武装を外され、骨格フレームがむき出しになったνGの姿だ。
「現時点でνGの修復率は74%、このまま修理を続ければ、80%までは修復できます。ただ、それ以上となると現状では資源が足りていません」
「資源が足りないって――νGはああ見えて汎用機として設計されてるんだよ? 汎用資材でも十分修理できるって前提で設計されてる筈なんだけど……」
「Yes.今回はそれが仇になりました」
そういってピックアップされる骨格フレーム。横に表示される数値を見るに――骨格フレームにゆがみが発生している?
「生産性を考えて作られたνGですが、それ故にエースクラスのスバル様の機動に耐え切れなかったようです。いえ、今まで溜まっていた疲労が、多対一という極限下で顕在化してしまった、というのが正しいでしょうか」
そもそも、私のフルスペックは、並みのIS程度ならば辛うじて撃墜できるほどの物なのだ。只でさえオーバースペックな私の能力に、そもそも量産機がまともに耐え切れるはずが無い、という事らしい。
「――そりゃ、命がけの戦闘なんてそうそうやんないよ……」
「それも無重力下での危険度の高い戦闘でしたからね。然し問題は、今このタイミングでは、νGを使えない、と言うことです」
それは、困る。今νGを使えないという事は、地球降下に際しても、敵に無防備な背中を見せたままでいなければ成らないという事だ。
大気圏突入時と言うのは、それはもう危ない。ちょっとバランスを崩すだけで着地ポイントはずれるし、少し断熱材がはがれてしまえばポッドは熱膨張でボンッ! だ。
「なんとか――ならないかな?」
「少なくとも、νGに関しては不可能です――しかし」
思わず声を上げそうになったところで、赤毛が顔の前に手の平を突き出して言葉を遮る。
「然し、為らば他の手段を用意しました。νGが駄目なら、別の物を使えばいいのです」
そう赤毛が言うと同時に、パッと画面が切り替わる。
それは格納庫の一角らしき場所で、どうもバラされたパーツを今現在大急ぎで組み立てなおしている最中らしかった。
「これは――IS?」
「ええ、脱出の間際になんとか積み込むことが出来ました」
「んー? 見た目ちょっと旧式に見えるけど?」
「ええ、コレは少し旧い機体です。然し、旧くても機体剛性は最新の第三世代機、下手をするとNEXT以上ですし、レストアして実験機として使われていた為、信頼性も十分にあります」
「ふーん……?」
頷きつつ、何か妙な感覚に首を傾げる。なんだろうかこのIS。何処かで見たことがあるような気がするのだ。この、妙に剣のように尖った、それでいて第二世代臭い第三世代というか――って、ええっ!?
「お気づきになりましたか?」
「ちょ、まさかこれ――!?」
「ええ、その通りです」
思わず、唖然とそれを見上げてしまう。何しろ、コレがソロモンに在っただなんていうのは、当に寝耳に水なのだから。
「後は、スバル様の許可次第です。アナタがコレを使えるというのであれば、直ちにコアの移植作業に入ります」
そういう赤毛に、思わず胡乱な眼を向けてしまう。
「私に、「コレを使えるか」って問うの?」
「ええ、判断は貴女にお任せします」
なんていう赤毛。なんと小憎らしい。私にコレが扱えない筈がないのに。いや、例え扱えずとも、意地でも使って見せようじゃないか。
「では、直ちに処置に取り掛かります」
「うん、お願いね」
言うと同時に、赤毛がどこかに連絡を取る。多分格納庫の面子に指示を送っているのだろう。
そんな様子を眺めながら、モニターに移るその機体を眺める。
鈍い銀色に輝くその機体を見ながら、小さくと息を吐いて、椅子に腰を下ろした。

42 撤退戦

2012.06.16 (Sat)
「くっ、そぉっ!!」

そんな罵声を漏らしながら、なんとかとった回避機動。けれども放たれたその黄色の光は、手元を掠り最後の頼みの綱であったビームライフルを融解させてしまった。

赤い機体を落とし、向かってきた残る四機のIS。
第二世代型と見えたそれらは、けれどもこと攻撃力と言う点において、此方の予想をはるかに上回っていた。

両手にビームライフルを持ち、大量のミサイルコンテナを積載、両腕のサブにはレーザーブレードで、その上四機揃った見事なコンビネーションを仕掛けてくるのだ。
正直、只でさえ4対1なんていう無理ゲーを押し付けられているのに、此処まで相手側のコンビネーションが整っていると言うのは致命的だ。
しかも更に難解な事に、回避で肝心な直感が、何故か上手く働かずに居た。いや、理由はわかる。あの四機のISの動きは、妙に気配が薄いのだ。だから、此方の直感に相手の殺意が引っかかり辛い。

「く、ぬっ!! どうなってるんだよぅ!!」
――――。
「パターン? の割には変幻自在に動いてるみたいだけど」
―――。
「……むぅ。行動パターンはランダムだけど、攻撃のモーションパターンが一定とな?」

回避を繰り返しながら、何とかバルカンの牽制を入れて斬りかかるが、機動力で勝る此方の追撃は、必ず他の三機に妨害されてしまう。
思わず歯軋りしながら、ハイパーセンサーの視界で相手を睨みつける。

――相手の気配を感じ取れない理由として、可能性は幾つかある。
前提条件として、
行動パターンがランダムな為、無人機である可能性は低い。
攻撃モーションパターンが揃っている為、無人機である可能性はある。
殺意が完全に感じられないわけではないので、有人機である可能性はある。

要するに、ロボットっぽい相手、と言うことに成るのだろうか。

有人である、という物の補助意見としては、確かに人の意志らしきものは、かすかでは有るが感じる、という事。かすかにでは有るが、人特有の生々しい殺意は確かに感じている。

で、無人機であると言う可能性に関しては、相手の攻撃モーションが一定だ、と言う点。
行動自体は人特有の其々に癖のあるモーションで、コンビネーションの錬度の高さをうかがわせるソレだ。然し、攻撃モーションに関しては、まるでVTシステムを相手にしているかのような、機械的な、それで居て鋭く隙の無い一撃が飛んでくるのだ。

――いや、VTシステム?

降り注ぐミサイルをバルカンで迎撃しつつ、爆炎を盾で突っ切りながら思考を続ける。

VTシステムはあくま織斑千冬の動きを模倣するという、根本的な部分で役に立たないソフトだ。行動パターンが織斑千冬の行動パターンの模倣である為、搭乗者の意志が完全に無視されてしまうと言う、兵器としては欠陥品どころの騒ぎではない代物だ。織斑千冬の最も恐ろしいところは、何よりもその卓越した直感と其処から導き出される判断力という、機械での再現が難しい分野なのだから。
まぁ、アレはあくまで同人ゲームだからいいらしいけど。
が、コレは違う。そう、たとえるならばISと言うゲームキャラを、リモコンで操っているかのような、そういう動きなのだ。

――だとすれば、とんでもない事だ。

「っ、死ぬ気!?」

もしその予想が正解だとすれば、ソレは文字通り身を削るものだ。
ISはあくまでパワードスーツの延長。人の挙動を補佐するのが本分だ。
然しこの予想が正しければ、やっているのは「人の挙動の延長」ではなく「人の乗ったISの操作」なのだ。

例えば高名な武術家と、運動の苦手なサラリーマンが居たとする。
もしサラリーマンが武術家の動きを完全にトレースする事ができたとして、それだけで彼が武術家と同じレベルの高みにいたれるかと言うと、決してそんなことは無い。
何せ、技を使うには先ず肉体が必要だ。技を使える肉体があって初めて技は使えるのだ。
もしソレを無視して、体無く技を扱えば如何なるか――当然、身体を壊す。それも、完全に。
身体を鍛えると言うのは、ただ強くなるだけではなく、自らの肉体を守る為でもあるのだから。

今あの連中――4機のISがやっている事が、もし本当に私の予想通りだとすれば、アレは文字通り身を削って戦っているのだろう。

確かに手ごわい。が、ソレは狂気の技術。N&T(ウチ)にこそ相応しいだろうに。

「がっ、っあ!?」

そんな、考え事をしながらの戦いが拙かったのだろう。
不意に放たれたビーム。咄嗟に回避するも、反応が遅れたか、機体をかすってしまう。途端に現れる警告表示。咄嗟に了承を押して回避機動。

――ゴッ!!!

そんな衝撃と共に、突如として背後から巻き起こった爆発。
衝撃に身を揉まれながら、なんとか姿勢を立て直す。

――拙い。只でさえ消耗しきっていたシールドエネルギーが限界値に近い。その上、さっきの衝撃で機体にガタが来てる。

爆発は、敵性攻撃ではない。HWSの一環として搭載していた、航宇宙用の追加スラスターが、ビームライフルを受けて誘爆したのだ。

――さすがはN&T製品。みごとな爆発。
散り際も美しく、とはウチの標語の一つなのだけれども、ダメージまででかいのは勘弁して欲しい。

「エネルギー残量11%、機体稼働率40%……。スラスターが落されたのが痛いね」

この機体の機動力は、イナーシャルコントロールとスラスターによるものだ。イナーシャルコントロールは確かに地上宇宙と万能な推進力ではあるが、NT独特の過敏な反応機動には向いていない。其処を補う為のスラスターだったのだが、コレが破壊されてしまったため、もう機敏な回避は無理のようだ。
残された防衛手段は、νG用の盾。ミサイルとダミーバルーンが搭載されていたのだが、それらは既に使い切ってしまった。この盾、一応アンチビームコートはしてあるのだが、流石に直撃を何度も防げるほどの代物でもない。あくまでビームを逸らす事が目的の代物なのだから、今の状況ではなんとも頼りが無かった。

それでも何とか、地球へ向かって全力でバックしつつ、追いかけてくる四機のISの弾幕を回避する。
攻撃手段が残っていれば「引き撃ち」するのだけれども、残念ながら今の私に残された攻撃手段はビームサーベルとバルカンのみとなんとも頼りない。
いや、衝撃砲が有るにはあるのだけれども、今のエネルギー残量での運用は自殺行為でしかない。

回避、回避、回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避。

繰り返す中でも、少しずつ被弾量は増えていく。
盾は徐々に削り取られ、牽制用のバルカンの弾は底を付き、それでもやまないミサイルの雨。

拙い、ジェネレーターが止まった。もうシールドエネルギーも無い。
背筋に奔るゾッとした感覚を感じながら、最早此処までかと躯が硬くなるのを感じ――

『回避を!!』
「――っ!!」

咄嗟に背後へ向けてクイックブースト。途端目の前に現れたのは、一機の巨大な鉄の塊。
何事かとνGのハイパー・センサーとペリスコープC(カスタム)が捉えたそれ。カラーリングは、N&Tの製品のカラーリングに似ているが、その形状は私が見たことのないものだ。
先ず、そのサイズが宇宙戦艦の一歩手前。巡洋艦クラスは優に超えている。それなのに、その形状は戦艦と言うよりも、ウチで昔研究していたMTに似ている。
先ずスタイリッシュな宇宙戦艦のようなものの上に『腰』があり、腰を通じて胴体らしきものがくっ付いている。
その天辺には頭のような何かが取り付けられ、両肩には長いブレードがまるで腕の様に聳えている。
何よりも恐ろしいのは、それが凄まじくでかく、同時にハイパーセンサー群から齎されるデータが、その機体の保有するエネルギーがISなぞ軽く一蹴し得るほどのものだという点。

「こ、これは――」
『スバル様、後部ハッチへ!!』

通信から聞こえた赤毛の声に、咄嗟にその巨大な機体の後を追うように加速する。
残りの全エネルギーを、残されたスラスターにつぎ込む事で、何とか相対速度ギリギリ上までの加速に成功。然しそれは向こう側の四機のISにとっても同じで、寧ろ向こう側は破損が此方よりも軽微である所為か、徐々に追いつかれているようにも感じる。

「――ちっ」
『牽制は此方で行います。スバル様はそのままハッチに入ることだけを考えてください』

振り返り、牽制に残りのビームサーベルでも投げ付けてやろうかと考えたところで、赤毛からそんな通信が入った。
途端、ハイパーセンサーが正面の鉄塊に動きを検知。視れば、鉄塊の所々に設置された砲台が、其々生々しい生き物のような動きで此方――いや、私の後ろに狙いを定めていた。

「っ」

思わず唾を飲む。
音の伝わらない宇宙の海で、それでも伝わる悪寒。
ハイパーセンサーを通して伝わる、傍を通り抜けた超高速飛翔物体。
青白く輝く稲光と、小さく光るマズルフラッシュ。――あれは、レールガン……いや、レールキャノンかな?
視れば、背後で上がる一つの炎の華。
――ISはISでしか斃せないなんて、やはりIS至上主義者の妄言だね。
あまりの――荒唐無稽な光景に、思わず苦笑のような失笑のような、そんなわらいが零れた。








背後からの追撃を振り切り、漸くの事で鉄塊の後部ハッチにνGを突っ込ませる。
予め用意してくれていたらしい着艦用ベルトに機体を突っ込ませ、ほぼ不時着と言った形で着艦する。
それと同時に、まるで淡雪が解けるように光の粉となって消えうせるνG。
バングルを一撫でし、感謝の意を伝えながら、そのまま再び立ち上がろうとして、慌てたかのように周囲の連中――最終脱出組みのイノベイド達に取り押さえられた。

「担架で医務室まで運びます。どうかご自愛を」
「大丈夫だよ、戦闘機人は軟じゃない。まだまだ動ける」

実際には右脇腹と左脚が骨折、左腕の筋肉が切れてる。その上背筋が引きつるような感覚。鞭打ちにでもなったか。
正直なところ、今すぐにでもドクターのラボで調整槽に入って寝たい。でも、現状で寝てしまうという事は、この状況からの逃避以外のなんでもない。
今は、戦争の季節だ。

「――ならば、管制室までご案内します」
「うん、よろしく頼むよ」
「それと、νGはお預かりします」

横から現れた別のイノベイドが、そんなことを言いながら手を差し出してきた。
まぁ、どちらにしろダメージレベルはD以上。自己修復だけに押し付けるよりは、簡易でも整備施設でメンテナンスを受けさせてやったほうが良いに決まっている。
お疲れ様とバングルを一撫でして、腕から取り外したそれを、イノベイドの少女に渡した。

「――それじゃ、案内ヨロシクね?」

そうして、並ぶイノベイド達に声を掛けて歩き出す。
取り敢えずは、この機体についてを尋ねる為に。

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