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22 忍び寄る手

2012.10.24 (Wed)
麻帆良に入って早半年。最初に訪れたイベントは麻帆良祭。
アスナやエヴァが地味に食券を荒稼ぎし、千雨がコスプレイベントで最優秀賞をとったり。
UHBの面々も二度目の人生を満喫する最中、俺が何をしていたかと言うと、リインとお祭りを楽しみつつ、その背後で進行しつつある現実世界、国連を中心とした企みごと。
残すところ一年を切ったこの計画成就の為、最後の仕込みの為、ほどほどに遊んだ俺とリインは、来るべき年に備える為、早々に麻帆良の土地に対する小細工を開始した。

設置するのは、缶ジュース程度のサイズの小さな筒。
麻帆良全域、余すところ無く設置されたこの筒は、麻帆良と言う土地の魔力の層や分布を計測する為の計測装置だ。
此処から吸い上げられたデータを元に、来るべきイベントの足掛りとなるのだ。

「リイン」
「――はい。十分な量のデータ収集が完了しました」
「うん」

何故この時季にこんな計測を行うのか。それは、本番の時期を想定し、尚且つ麻帆良でこうした活動をするには、麻帆良と言う閉鎖環境が開かれ、尚且つ本番に近い条件での計測が必要な為。
要するに、本番――来年の麻帆良祭の時を想定している為だ。
この麻帆良を祭壇とした大規模儀式。
俺達UHBの計画第一段階にして根本。コレの成否こそがすべての鍵を握っているのだから。
「――それじゃ、そろそろ行くか」
「はい、我が主」
リインと手を繋いで、雑踏の中へと足を踏み出し、二人揃って静かに姿を消したのだった。


Side Lingyin

麻帆良最強の頭脳と呼ばれる彼女、超鈴音は、この半年でチェックした世界情勢のあまりの差異に、思わず頭を抱えて項垂れていた。
彼女にとっての21世紀とは、未だ魔法が秘匿され、その上で英雄・ネギスプリングフィールドがその「奇跡の軌跡を描き始めた時代」だった。

この時代のデータは十分に存在していた。
世界情勢、平均的な技術レベル、この先起こりうる大きな出来事。
更にネギ・スプリングフィールドの転機となった3-Aのクラス構成や、其々の簡単な背景など。

幾ら歴史に振れ幅があるとはいえ、それを考慮しても十分なレベルの技術と情報を持ち、この時代へと訪れた。
――その、筈だったのだが。

「……どうなってるネ、この世界」

彼女がこの世界に訪れて、まず最初に行ったのは戸籍の偽造。戸籍は麻帆良に潜入する為には必須の物であるし、偽造の容易い彼の国の国籍を取得した。
事前情報の通り、あの国は情報に対する処理がかなりザルだった。片手間に組んだ電脳侵攻プログラムでも、障壁突破を気付かれず、丸ごとごっそりと情報を書き換え、翌日には完成した国籍を手に入れられたほどだ。
そうして国籍を手に入れ、ある程度の地盤を築きつつ麻帆良へ訪れて。そこで更に地盤を強化し、漸く周囲に目を向けられる状況になって、先ず最初に気付いたのがUHBと呼ばれる大手企業の存在。
この時代、日本に名を残すグループといえば、雪広と那波の二つ。その筈だ。だと言うのに、何故かさまざまな分野で存在するUHBと呼ばれる企業。
そのときは気に掛けなかったのだが、次いで魔法業界側に目を向けて、目を剥いた。

『スプリングフィールドの五つ子』

「なんネソレは」
思わずそんな言葉を彼女が漏らしたのも仕方あるまい。何せ彼女の知識が正しければ、本来スプリングフィールドの子は一人、ネギ・スプリングフィールドのみ。
だというのに、五つ子? 歴史のブレだとかで、双子くらいまでなら理解できなくも無いのだが、五つ子?!
ご先祖様偉くがんばったネ、と思わず零しつつ、超鈴音は更に情報を調べた。

結果手に入ったのは、五つ子のうち2人が行方不明、残る3人はメルディアナで順調に飛び級を繰り返しているらしい。
細かい評価は自分の目で行うとして、手に入れた教師の評価(メルディアナからMMへ送られたものの電子情報)をチェックしたところ、何かご先祖様の評価は相当微妙な事に成っているらしい。

ネギ・スプリングフィールド。
彼こそが我がご先祖様であり、スプリングフィールド兄妹の長男である存在。
本来の歴史では、その胸のうちに大きな闇を抱え、それでも光を目指して歩いたとされる英雄だ。
だが、この教師からの評価を見ると、何か相当怪しいことになっている。
どうやらご先祖様は、スレネギになってしまっているらしい。
両親に対する尊敬は無く、知識こそ求めるが、周囲との関わりは殆ど求めず。
ただ己の未を守るために、魔法使い見習いの度を越えた魔法修練を行っているのだとか。

――これは……どう考えるべきカ……
彼女にとって、ネギ・スプリングフィールドは越えるべき壁である。
そんな彼が強くあるのは、ある一面では好ましいことだ。壁が大きければ大きいほど、ソレを乗り越える為に尽力する。それは彼女にとって望むべき事なのだ。

然しだ。歴史において、ネギ・スプリングフィールドの最も大きな特徴と言うのは、その単体戦力などではなく、周囲の――彼を支えたとされる、彼の生徒達との絆の力だったと語られている。
単体戦力の向上は望ましいのだが、人間関係を捨てているというのは……。

更に次の記述を見ていく。

ニーギ・スプリングフィールド。
病弱なピアニスト。男女問わずに人気があり、また反動さえ考えなければ魔法の才能も十分にあるのだとか。
なんでもメルディアナを襲った魔法生物襲撃事件――コレも彼女の知る歴史には存在しない――の祭、彼は血を吐きながら燃える天空を20連発。その大半を見事に薙ぎ払って見せたのだとか。
超は思う。燃える天空20連発して生きていられる人間と言うのは、果たして本当に病弱と言うのだろうか、と。
少なくとも自分は其処まで燃える天空を連発すれば、間違いなく反動で死に絶える。

ヌーク・スプリングフィールド。
子供ながら好色な少年で、常に女の子を周囲に侍らせているのだとか。この時代既にピンクい魔法具は結構有るし、多分常用者なのだろう。然し英雄色を好むとは言うが、英雄未満が色を好むのはどうにも好きになれない。
此方は戦闘スタイルなどがナギ・スプリングフィールドにとても類似していて、偶像としてはとても利用しやすいのではないか。女を宛がえばある程度操る事もできそうな、駒としてはかなり使い勝手の良さそうな存在、として評価されていた。
この教師MMの草(スパイ)カ、などと考えつつ、超は思わず頭を抱えた。

いや、コレは良い。ご先祖様に関しては、多少の性格の差くらいは麻帆良に来てから修正してやれば良い。
正しい教育を与えてやれば、人間と言うのは正しく成長する。というものらしい。

さて、そうして魔法世界の情報をある程度仕入れた超は、今度は麻帆良での戦争の準備を整える為、此方の世界での資金稼ぎを行うことに。
彼女にもまほネットを使うことは出来るのだが、下手にマホネットをつかって資材を集めた場合、如何足掻いても魔法使い側にその不審な物流を感知されてしまう可能性が高い。
であれば、魔法を可能な限り排除した、科学による戦力作成。これが今現在最も安定した戦力の補充になると、彼女はそう考えていたのだ。

……ところがだ。

量子力学研究会や情報制御開発団やらを巻き込んで開発した超高性能演算装置スーパーチャオりんを使った経済操作による資金捻出。
コレを使っての資金作成は、当初順調に資金を生み出していたかのように思われた。
ところが、システムの稼動が順調と見、超が少し管理画面から目を離したその隙。超の経済操作システムに抵抗するように世界が鳴動を開始し、気付いた頃には超の資産は元々の物からかろうじて若干増えたか、程度の物にまで戻ってしまっていたのだ。

システムのバグかと超は即座にSチャオりんを検査したが、問題どころかプログラムにミスの一つも存在しない。
一体何がと再び経済操作システムを稼動させるも、再びまるで何者かに妨害されるかのようにそれは失敗に終わる。
何か空恐ろしいものを感じた超は、為らばと為替、先物取引と、様々な手段での資金捻出を目論んだ。……のだが、結果としてそれらの大半は見事に失敗に終わる。

その時点で超は、自らを覆う不可視の手のようなものの存在を感じ、それを探るべく世界に対してハッキングを開始。遮二無二なって探れば、自分の頭脳を持ってすれば敵の痕跡くらい把握は出来るだろう、と。

ところが。何故か世界の現在のネットワーク強度は、彼女が想定していたソレよりも一回り以上強靭なものとなっていた。一般人の使うネットワークでも一回り以上、企業なら数倍。国家に至れば数十倍以上にもそのセキュリティーは予想を上回っていたのだ。
それらを何とかかいくぐり、漸く見つけた国連組織というコトバ。ルートは案の定セキュリティーの甘い、彼女が国籍を偽造した国家のネットワークから。
そうして彼女が侵入したサーバーにあったのは、国際魔法犯罪取締法という文字。
ギョッとしつつ、それら情報を入手する為データを手元にダウンロード。回線を閉じ、改めてそれらデータをチェックしようとしたところで、Sチャオりんが火を噴いた。
「なっ?! ウィルスカっ!!」
慌てて伏せた彼女の背後、Sチャオりんは轟音と共に四散。Sチャオりんの置かれた研究室は派手に吹き飛んだのだった。



コレは間違いなく彼女に対する警告だったのだろうと、彼女は後になってソレを理解した。
理解したが、それでも彼女はとまるわけには行かない。彼女を此処に送り出してくれた、未来の彼女の仲間達の為にも。
――だが、だがどうする?
研究の為、開発の為には資金が必要。だが、資金の捻出は如何足掻いても難しい。
一般的な研究成果の販売では足りないし、目的の時期に間に合わない可能性も高い。
「……ダが、コレしか方法が無いのモ事実カ」
口惜しげに呟いても、彼女は諦めない。
来るべきその日に備え、彼女は再び前へ進むべく、歩みを止めることは無かった。


side Lingyin end



side MAHORA

現在、麻帆良学園は危機的状況に陥っていた。
国家からの税務官の襲来、魔法世界側との連絡の不安定化、下部組織の喪失による収入の低下などなど。
物理的な意味では、麻帆良は平和そのもの。ただ、経済面で言えば麻帆良は既にボロボロの一言に尽きた。
麻帆良と言う土地は、外部に対してとても閉鎖的な土地といわれているが、実際のところ麻帆良ほど外部に依存した土地は存在しない。
その主だった収入源、物流、諸々は外部依存。麻帆良内部での経済流動など、精々資産の減衰に若干の歯止めを掛ける程度の能力しかない。

本来、麻帆良の目的とは、日本と言う土地における魔法業界の統括拠点としての役割が求められていた。
MMの意向を受け、日本に分散するネイティブ魔法使いを統べ、その対価として金銭を得る。
その金銭で麻帆良と言う都市を運営し、其処から得た収益を魔法世界側へと送る。
こうして魔法世界側が外貨を得、本国が潤うというシステムが構築されていたのだ。麻帆良の存在意義としては、他にも魔法世界崩壊後の橋頭堡という意味もあるらしいが、ソレは現在機能していないのでまたおいておく。
つまり麻帆良とは、魔法世界――いや、MMという組織が旧世界側から外貨を奪う為のパイプラインであった、と言うことだ。
何せMM、というか、魔法世界というところは未開にも程がある。人命救助の為という建前で奴隷法を施行するような馬鹿げた世界だ。とてもではないがまともな近代的経済網なぞ育ちはしないだろう。
故の現実世界側からの搾取であったのだが――現在、その搾取の為のラインが完全に破壊されていた。

「何故……」

近衛翁は一人、女子中学校校舎の奥に存在する学園長室で頭を抱えた。
麻帆良学園の運営。其処に発生する使途不明金。MMへ送られたそれらは、当然ながら公的な資料には記載できず、記載された資料は厳重な認識阻害と共に金庫の奥へと封印されていた。
ところがこの危機的状況に訪れた税務官は、非魔法使いであることは間違いないにも拘らず、一瞬でその金庫を見抜き、中から資料を没収していってしまったのだ。
咄嗟に記憶消去でソレを妨害しようとしたのだが、記憶消去は何故か発動する事は無く、近衛翁はただただソレを見送る事しかできなかった。

あの資料が見つかった以上、MMと言う組織がなんであるかは知られずとも、大量の使途不明金を生み出していたと言う事実は周知の事実になるだろう。最早ソレを隠すことは不可能。
であればコレを誰かにかぶってもらい、自らは一刻も早く麻帆良の機能回復に努めなければ――。

そんな事を考えながら、即座に行動すべく手を回す。
――いや、手を回そうとしたところでふと気付く。今、自分の手元に、回せる『手』など存在しない事に。

現在、世界各地に置いたMMの支部、そこが吸収していた土着魔法使い達の組織は、次々と謎の失踪を遂げている。その結果、それまで土着の魔法使いたちが守っていた霊的治安維持がなされず、結果そのしわ寄せが『土地の管理者』を自称するMM系組織へと迫っているのだ。
世界各地で同時に起こったこの現象。最も豊富な人材を抱えていた麻帆良は、この事態に世界各地への職員の派遣を決定。特に嘗ての戦争の英雄と名高い高畑・T・タカミチなどは、本職が教師であったのは嘗ての事かのように、既に年単位で麻帆良に戻ってきていない。
しかもこの土着系の消失現象は着々と進み、徐々にだが麻帆良の人員を以ってしても対応が追いつかなくなってきている。
そんな魔法教師的にも人員が不足している現状、裏帳簿の罪を自分の代わりに被って潰れられる程の重役の魔法先生と言うのは存在しない。
いっその事、一般教師で矢鱈と口うるさい新田教諭辺りを生贄にしてしまうのもいいかもしれないが、残念ながら彼は都市経営部には関わっていない、純然たる教諭職員だ。
内心で小さくしたうちをしつつ、どうしたものかと悩む近衛翁。

この麻帆良と言う都市は、MMの外貨吸収ラインであるが故、そのオコボレを喰らうことで此処まで成長できた。とてもではないが、単一都市としてだけでの成長は見込めるものではない。
此処までこの町を育てたのは己であり、今このような場所でこの立場から降りることはあってはならない。
何とかしなければとは思うが、うまい手がすぐさまは思い浮かばない。
どうした物かとイラつく近衛翁は、そのまま延々と自室の中で管を巻いているのだった。


side MAHORA end







「おい聴いたかよ」
「おぅ。聞いた聞いた。ついに攻撃してきやがったんだろう」

現在、国連軍基地ファウンデーションでは、つい先日起こったサイバーテロの話題で沸騰していた。

「ああ。幸い擬装回線に気付かずにダミーサーバーからウィルスを持ってったらしいが……」
「それでも、つまりコレは……」
「事の始まりが近いって合図……」

そう、超の仕掛けたサイバーアタック。それは実のところ、完全に予期され、見事なまでに回避されてしまっていた。
超は知らないが、彼ら国連地球防衛軍のメインフレーム・マザーコンピューターは集積量子コンピュータ『オモイカネ』『ヤゴコロ』である。従来型のウィルスソフト、魔法による電子精霊問わず、それら全てを圧倒する超越的電脳存在である彼らの前には、その程度の物は最早通用し得ない。
言ってしまえば此処にある技術は300年後の技術相当。たかが100年後程度の技術でそれを知覚するのは到底不可能なのだ。

「――まぁ、それもギリギリだったんだけどな」

何画がかといえば、超の攻撃を受けるまでに最新式の物へグレードアップできるかどうかが、だ。
正直な話、従来型のオモイカネだけでは超の侵攻を防げるかは五分五分であった。嘗てのアレは、ガワこそ頑丈な作りの代物が多いが、中身に関しては俺とリインによって作られている為、偏った技術であったりピーキーであったりとする上に、ソレを改良したのがあのオタ丸出しな転生者達、その中でも頭脳チート持ちだ。
他人に理解させようと言う努力を放棄した元引きオタのような連中だ。他人が使うことなど考えず、何処まで文字分たちに使いやすいように仕上てしまっていたのだ。

便利だからと他人のパソコンの中に用途不明のアプリを仕込みまくるような物である。

で、気付いたときにはメインシステムはスパゲッティコード、操作は凡人お断りシステムという有様。正直コレは拙いかもしれない、何て考えていたところに、名乗りを上げたのは幾人かのUHBの人員。
彼らは自らを「多重トリップ・転生者」と名乗った。
曰く彼らは、このような転生・トリップを各々に何度か経験しており、その中で豊富な研鑽を積んでいるのだという。

先ず最初に問題点を提起したのが高谷理子。
正直何処かで聞いたことあるような名前だなぁ、何て感じつつ、彼女の提起する問題について質問したところ、上述の万人に扱えるかと言うとそうでもないファウンデーションのシステムに関する問題だった。
システムは万全に扱えてこその代物だ。それが万全に使えないというのであれば、この基地は正直な話欠陥機という事に成ってしまう。
そりゃ拙いと、提唱者の理子を主軸に改良計画班を立ち上げたのだが、コレが面子選びに難航。
頭脳チートは何人も存在するものの、その頭脳チートを万全に使いこなせている人間が少ないのだ。
かく言う俺もそうなのだが、回転が速くなりすぎた頭脳を持つと、如何しても「このくらいなら」「この程度なら」とついついオーバースペックに持っていってしまう上、従来の加減というモノが今一つつかめないのだ。

暫く混雑する面々の中で何とかやりくりしつつ、依然として結果の出ないそんな状況。
コレはもしかして拙いんでないか、とそんな不穏な雰囲気が浮き上がってきた最中。3人の人員が手を挙げた。



マサキ、フブキ、ノア、ガイと名乗る4名。――此処に理子を加え、後に武闘派技術班と呼ばれるようになる5人だ。

地味に多重トリッパーであったらしい理子は、ガイナ系世界で研鑽を積んだ『究極の一般人』。一般人として戦い、戦い抜き、その果てに逸般人を超えた一般人に至った凄まじい一般人である理子。
頭脳チートこそ持たないが、その凄まじい研鑽の能力は、『訓練さえ詰めば使える』システムの構築に重要な役割を果たした。

フブキ、本名桜庭吹雪(自称)。外見年齢は20ほどの胡散臭い無表情の女性。
この「ネギま世界の次元世界」に存在していた時点で相当胡散臭い。スカウトしたのは自分なのだが、ソレまで事務仕事において優秀という印象しかなかったのだが、後にこの女をカズのダモーレで調べた所とんでもない存在だという事が理解できた。
三つの特質のうち、二つが制限系・デメリットのみの特質だったのだ。
本人に聞いたところ、今回は転生ではなくトリップで、偶々この世界に訪れたのだとか。
ネギま系世界へのトリップ・転生は何度か経験しており、独自の問題解決法も編み出してはいるが、ソレを口にする心算は無い、との事。
「お前の解決法を楽しみにさせてもらう」とか目に愉悦を浮かべて呟く、なんとも腹立たしい美女である。因みに発言が一々厨二病臭いのは仕様だそうだ。

野亜。本名不明の白い少女。
ノアと呼称されるこの少女。彼女も多重トリッパーらしいのだが、細かいことは分らず、唯一の手がかりが吹雪とこの世界以外での既知だという点。ただ、吹雪が野亜を見た瞬間口元を引きつらせていたので、外見に似合わない怪物である可能性が提起された。
一応カズにダモーレで調べさせたところ、カズは沫を吹いて倒れた。
俺でもそのステータスを聞いた時点で引きつった笑みしか出なかった。うん、アレは忘れるべきだ。
頭脳系チートどころか、コイツもフブキと同じく特質の二つがデメリット・封印系であったのだが、その経験は間違いなく優れたものであるのは十分に予想が出来た為、彼女にも開発に参戦してもらった。

ガイ。紫藤劾。
彼は多重トリッパーではあるが、現在二つ目の世界としてこの世界にたどり着いたらしく、なんと前の世界は宇宙世紀。名前的に派コズミックイラ出身っぽいのだが。連邦軍で技術者兼MSパイロットをやっていたらしい。
カズがダモーレで調べた所、確かに頭脳・開発系の特質を保有していることを確認した。
前述二人に比べ、とてもまともなステータス画面だった為、ぞれを見ていた全員が安堵の息を吐いたのは愛嬌だろう。
MSはとにかく汎用性が重要となる為、彼の能力はとても有用であるだろう事が予想され、実際彼はこの技術班の中核的存在へとなっていった。

そして、最後に。多重転生でこそ無いものの、今すぐにでもトリッパーに成れると多重転生・トリップ組から太鼓判を押された男。――木原雅樹。
そう、木原マサキだ。
彼の特質、その一つに次元連結能力があったりして、更に頭脳チートまで持っているのだからもう手に負えない。
中身が厨二病と言うことも在り、奴と相対・敵対したときは、さすがに俺も死ぬかもしれないと腹を括ったものだ(まぁ、その直後ノアらに力尽くで押さえ込まれて、世界の広さを実感したが)。
しかもこの男、ふざけたことに研究者一族『木原一族』の出身らしく、実家は独自に超能力開発をしているのだとか。木原違いだろう! と思わず突っ込みを入れた俺は間違ってない。
そんな彼は、自らの一族をUHB社に誘い、表のUHBを一気に活性化させることに成功。一定の貢献を残してしまう。故に、後のことを叱れなくなってしまった。

――何を言おうか、この男、UHBの資材を勝手に使って天のゼオライマーを完成させてしまったのだ。
俺が気付いたときには何時の間にかセカンドベースに増設されたドッグの中、そこに佇む50メートル級の巨大ロボットが鎮座していたのだからもう。

ブチキレ掛けたものの、まぁ後々の働きで対価を払うというので、まぁ俺も嫌いでは無いと見逃すことに。
さすがにこれをグレート・ゼオライマーに改造すると抜かした時には殴ったが。
結局GZの開発資金を対価にシステムの改造計画に参加することを承諾させたのだが。


彼ら五人、武闘派技術班が、後にとんでもない成果を生み出すことになるのだが、この当時原作まで一年をきっていた現状、慌しく動いていた俺がその事に気付いたのは、また大分後になってからのことだった。
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21 麻帆良に咲き乱れる。

2012.10.22 (Mon)
そして春。
そう言うわけでUHBの4割が麻帆良への入学を果たした。
一応麻帆良は名門というか、登竜門というか、全国的にも中々人気がある。そのため校舎と一口に言っても、女子中学だけで相当数の校舎があったりする。
UHBから送り込んだ連中の大半は、どうやら近右衛門の勘か、A組周辺――B,C,Dの三組に分散して配置された。一応A組にはアスナやエヴァ、千雨といった此方のエージェントも含まれているが。

……あぁ、千雨は頭を抱えていた。何せ、UHBでも無いのに如何考えても一般人が少ない。というか、逸般人が多すぎる。いや、BCDの三組にUHBの面子が送り込まれて逸般人が増員されているのは理解できるのだが、なぜこのクラスはUHBのエージェントが自分達しか居ないのにこうも逸般人だらけなのか、と。

……まぁ、彼女も大分一般常識を捨てられてきているし、言っているうちに馴染むだろう。……二年の夏休み終わりまで。







で、俺はというと、問題なく麻帆良男子中学校への入学に成功した。
UHBからのエージェントは大半が入学に成功。まぁ、UHBのエージェントって俺達が厳選して選んだから、実際『○○さんじゅうさんさい』とかザラだし。
ただ、問題と言うかなんというか、そういうのが一つ。

「えーっと、それじゃ獅子堂くん」
「ふっ、我にその答えを問うか。良かろう」

そう、この俺の隣の席に座る厨二病……銀髪オッドアイの君だ。
いや、銀髪オッドアイの君と同じクラスになるのは、まぁ一歩譲っても問題ない。何せコイツはUHBに所属しない転生者だ。監視、という意味では同じクラスであるのは、まぁ俺の精神的な面を鑑みなければ悪くは無い。
ただ、いくつか問題がある。

先ず一つ目。
この銀髪オッドアイの君、本名は獅子堂・U・シドー。名前まで痛いのだが、彼こそが我が友エヴァ、アスナ、千雨の三人、いやそれどころか麻帆良の女子生徒を鬱陶しさの極地へと導いたツワモノである。
……のだが、コイツ何故か改心してる。意味が分らない。

「ふふふふふ、如何だ、我の答えは!」
「……その……間違ってる……」
「…………」

カチリ、と固まる空気。
どうも彼、厨二病というか、前世が厨二病で終わってる子らしく、吹っ切れた痛い大人とかではなく、ガチでガキだったというだけらしい。其処までは間近で行動を見ていればなんとか分る。

「……ふ、良くぞ気付いたな。コレは我からの試しよ」
「そか。なら、此処は此方が生徒を試す場所だから、次からはちゃんと答えような」
「フクク、貴様がそう言うのであれば、そうしよう」

サラッ、と髪を掻き揚げながらそんな事を言うシシドー。
まぁ、なんだろうか。女子と違い此方には被害も薄い。こうして第三者的な視点から見ていると、こう、鳥肌が立つというか、背筋がかゆくてたまらないというか。寧ろ自らのうちに眠る黒い何か(歴史)が目覚めそうでヤヴァイというか。

「ふ、王者の気遣いと言うのも苦労する……」
「はいはい、王者ワロス」
「なんだソーマ、庶民の嫉妬は見苦しいぞ?」
「いいから前向いておけ。またセンセに怒られるぞ」
「ふ、常に余裕を持ってこその王者よ」
「いや、授業中の余所見を余裕って」

で、何故か俺はコイツに気に入られてしまった。何故だろうか。
もしかしてアレか? 麻帆良に潜入して、いきなりUHBの面々をかち合わないように考えて、いつの間にか昼休み一人で居たから、同じくボッチだったコイツに同族意識をもたれたか?
それともアレか? 友人作る為の小道具(携帯ゲーム機)の協力プレイに数合わせと言う口実で様子見する為に誘った所為か?
他にも幾つか軽い接触はあったのだが、その程度で気に入られるというのも。

「獅子堂君」
「ふむ、我を呼んだか」
「うん、リベンジのチャンスをあげよう」
「…………」

チラリと奴の首筋を伝う冷や汗は、きっと見間違いではないだろう。
因みに黒板には、コレはペンですか? いいえコレは私の靴です、なんて和文が書かれており、これを英文にするのが問題だ。
Is This a Pencil? No,It's My Shoos
俺も英語は嫌いだが、多分こんなところではないだろうか。
この、何時何処でこんなペンと靴を間違えるのかと言うのは、教科書英語らしいといえばらしいのだが。

因みにシシドーの答えは
[this is Pen? no, it is a syuuz]
だった。色々残念だ。
……いや、ここはもう疑問詞が付いているだけマシなのかもしれない。


さて、シシドーの二つ目の問題点。それは、その能力にある。
許可を得て和弘から蒐集したドラクエの魔法スキル。精霊魔法に近いドラクエの魔法とは、俺の性質上相性が悪い。メラの消費魔力が10と言えばどれ程相性が悪いか理解できるだろうか。その上呪文のレベルが上がるにつれて消費魔力も更に上がっていくのだ。
正直使い物にならない。多分俺の聖王の魔力補正とカズの転生者補正が二重にかかってこうなったんじゃないかと俺は判断してる。そうとでも考えないと口惜しすぎる。ホイミって美肌効果あるんだぞ! リインに連発JK。
げふん。

さて、カズがドラクエの魔法、その中の一つであるダモーレでコイツの性能を調べた所、俺並にチートな存在であることが分った。
奴の特質はこうだ。
1.皇帝特権――本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
※自己暗示のブーストにより、効果時間上昇、使用後の再使用待ち時間が延長される。
※狂化化により作用効果が上昇。再使用待ち時間が延長される。また特殊能力の再現をも可能とする。
2.自己暗示――自らに対する暗示。思い込むことで完治の難しい傷をも無視することも可能。ラカンと同等。
3.厨二病――思い込みによる狂化。思い込みが尚悪化する。ステータスがランクアップ。

もう、俺並、いや俺以上に狙ったとしか思えないほどの特化型チートコンボ。
先ず皇帝特権。コレ自体相当なチートだ。いや、使い方を誤れば雑魚にしかならないのだが、逆に言えば使い方さえ正しく使えば世界がヌルゲーになるレベルのスキル。
で、自己暗示。自分の能力以上のことは出来ない様だが、逆を言えば自分の能力を完全に発揮するスキルだ。しかも「自分の能力以上」を引っ張り出す皇帝特権と組み合わせると考えると、下手をすると素人が湖光の騎士並の剣術を扱える可能性さえ出てくる。
更に更に、厨二病。この名称はどうかと思うが、要は狂化。つまりコレもまた精神を奮起させるスキルなのだ。
ステータスがランクアップし、此方からは読み取り辛いスキルによって多様な戦場に対応する。正直洒落になりません。

……奴の能力をたとえるなら。
例えば奴がいきなりナデポ(ナデてポッ)能力を取得し、厨二病で邪気眼、更に自己暗示で能力がフルスペックで運用されるわけだ。如何だろうか、この恐怖が伝わるだろうか。
つまり、奴の場合邪気眼が本気で邪悪な魔眼になりかねない。一種の爆弾野郎なのだ。

まぁ、幸いと言っていいのか、皇帝特権には使用制限がある。それに対処法も存在するし、発動さえさせなければなんとでもなるはず。その事を思えば、まぁ、うん。

「お疲れ」
「ふっ、我にかかればああの程度容易いものよ」

と言う割には英文一つに結構時間取られてたが。
どうもこの学校でも、小学校の頃から名を馳せていたコイツは嫌な意味で有名人らしく、教師各員もコイツをある意味で好いているらしく、皆が皆コイツを好き好んで問題を当てたりするのだ。
ある意味人気者、ある意味ご苦労様と言うやつである。

「ほれ、多分ここら辺でまたお前当てられると思うぞ」
「おぉ、貴様のノートか。感謝するぞソーマ!」
「ばっ、小声で喋れ!」

哀れに思ってこいつに勉強を教えたり、ノートを貸したりしたのも、コイツに気に入られてしまった一因かもしれない。

さて、そろそろ目を逸らすのはやめて、最大の問題を、如何対処するか考えなければならない。
その最大の問題と言うのは――。

ヴーーーッ……

不意にそんな音が耳朶に響く。咄嗟に隣の席のシシドーの腹を抜き手で突く。
途端に「ゴフォッ」と悶絶して倒れこむシシドーを横目に、勢い良く手を真上に突き上げた。

「センセー、シシドーが調子悪そうなんで、保健室連れて行きます」
「ん? 本当だ、少し顔色が悪いな。よし、それじゃ頼んだぞ、遠藤」
「アイアイサー」

言いつつ、獅子堂の腕を肩に担いで、引きずるようにして獅子堂を保健室へと引っ張っていく。

「……ソーマ、貴様、何を……」
「あれ、気付いた? まぁ、ああでもしないとお前、携帯電話没収されてたぞ?」

今の授業の担当、英語担当の藤咲は地味に耳が良く、携帯のバイブレーターの振動音でも聞こえてしまえば没収すると言う中々に厳しい先生だ。
まぁ、鞄の中にしまっていれば別なのだが、コイツはどうやら先ほどの休み時間にポケットに入れたままにしていたらしく、その音が聞こえてきていたのだ。

「やりかたというものがあるだろう……」
「悪いな、俺は不器用なもんで。……それよりもいいのか? メール読まないで」
「……そうだな。保健室で読む心算だが、件名だけ……む」
「ん? 彼女か?」
「ああ」

ほんのりと朱のさすシシドー。銀髪オッドアイのイケメンのこんな顔、何も知らない女子が見れば悶絶ものだろう。まぁ、コイツは悪い意味でかなり有名だから、エレベーター組みは気にしないだろうが。
そして、最大の問題とはコレ。

――コイツ、彼女が出来てしまったのだ。

最初にその事を知ったとき、俺は先ずパニックに陥った。そしてパニックから回復した直後、UHBに連絡を入れたのだが、そうしたら次はUHBがパニックに陥った。
「悪質な洗脳!」「恐喝」「詐欺」「脅迫」「相手側の精神的疾患」「薬物」「身内が人質に取られている可能性は!」などなど。
このウン十倍の可能性が提起され、言い合っている場合ではないと即座にシシドーの彼女(?)についての調査が行われた。

その結果、『白』。

驚いた事に、ニコポもナデポも一切使われず、底抜けに驚いたことに、完全に自然なオツキアイだったのだ。

しかも更に驚く事が。獅子堂の付き合い始めた彼女というのが、柿崎美砂。そう、未来のA組少女、柿崎美砂なのだ。これにはUHBがひっくり返った。いや、冗談ではなくファーストベースを火星衛星軌道上へ航行させている最中そんなが放送されたもので、舵の操舵を誤って、宇宙空間でベースがぐるっとひっくり返ったのだ。
幸いベースの中は物資のブロック化がなされているので整理はすぐに出来るのだが、あの時は悲惨だった。

「美砂からのようだ。今日買い物に付き合えと」
「ほぉ、デートか」
「全く、気安く我を呼び居って。我をそこらの易い男と一緒くたにされては困る」

そう言いつつも、傍目には浮かれているのが丸分り。何処かほほえましい雰囲気を醸し出している獅子堂。言葉と表情が一切合致していない凄さである。
今年の夏前だったか。何故か獅子堂と仲良くなってしまった俺は、もうどうせだからとついでに獅子堂が何故柿崎と付き合うことになったのか、その切欠というモノを聞いてみたのだ。

「それは――何時ぞやの春先のことだ。夜のコンビの帰りで、不埒者に襲われておった美砂を見つけてな。其処を救ってやった縁だ」

とのこと。
コレは更に後に聞いた話なのだが、何でもそのその不埒者と言うのが、麻帆良の地下ゲートを潜り抜けてきた向こう側の魔獣――いや、魔蟲の一種だったらしい。
あやうく蟲姦という超マニアックプレイを強要されるところだった柿崎女子はそこで獅子堂と知り合ったのだとか。

まぁ、其処からオツキアイに至るまでには更に多々の苦難が在り、その苦難(というか彼女の調教)の結果、今のコイツは大分マシな人材に成長する事ができたのだ。

今のコイツであれば、UHBについても少し話してもいいのではないか、とも思うのだが、何分コイツは視野狭窄の気が異様に強い。下手に情報公開して、それが麻帆良側にバレでもしたらと思うと……。

――本当、どうしたものか。

UHBで議題に提案したところ、「お前に任せる」という結論。
エヴァやアスナ、千雨などの(この世界本来の)住人組にも意見を聞いたところ、「最近マシになってきた様だ」「前ほど声を掛けられなくなった」「馬鹿のままだが救えない馬鹿じゃなくなったな」とのこと。
肝心のUHBのことについては、やっぱりオレに任せるとのこと。
というかそれ、押し付けてるだけじゃね?

まぁ結局はオレが選ぶハメになるのだと思考を切り替え、改めて悩み続け、結局今日に至っているのだが。

「……よし、オレもリインに逢いに行こう」

現在リインはこの地球上にはいない。
彼女は現在、国連軍のIS部隊の教導の他、捕らえた違法魔法使いの更迭、及びこちら側に参画した土着系の魔法使いの組織再編集などの統括をやってもらっている。
俺達麻帆良潜入組の中でも、事務系の人間は麻帆良からデバイスの通信を使った情報交換で手伝いをしているのだが、それでもやはり現地にいる彼女ほどの働きは出来ない。

――うん。リインに逢いに行って、そのついでにちょっと仕事の手伝いもしてこよう。

どうせなら、今日行くときにお土産でも持っていってやろう。
甘いものでも沢山持っていけば、たぶんリインは喜んでくれるだろう。

そんな事を考えて、結局獅子堂のことは後回しにして、その日は日のある内はリインへのお土産を求め、麻帆良を一人ぶらぶらと歩いて回ったのだった。

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20 閑話7 1.安価「麻帆良にいくかいかないか」 >>4。

2012.08.21 (Tue)
4.行かない



「と言うわけで、俺は麻帆良に行きません」
「「「「「「「「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」」」」」」」」
「だって男子校なんて行きたくないんだもん!!」


……何言ってるんだろうあいつ。
クラン・F・マクレミッツのそんなコメディーを遠目に眺めながら、書類をさっさと書上げる。
男性版ダメッ――げふん、バゼッ――いや、ダメットでいいのか。――なイケメン、クラン。宝具まで実用化してるチートなのに、なんでああもコメディーマンなんだろうか。ノリとしてはランサーっぽいし。
因みに生活能力は一般的なレベル。残念ながらダメではない。

「はーい、書上げた人から封筒に入れて、ご両親に提出する事ー」

幽香の声に、はーいと声を上げるPXのメンバー。
何処の小学生だと突っ込みを入れようかと思ったのだが、よく考えたら俺らって小学校6年生だし。

さて、今回こうして書上げている書類なのだが、コレは要するにUHBに所属する人間が麻帆良へと潜入する為の資金的支援を行う為の補助を出す為の書類だ。
UHBに所属し、俺と同年代――つまり原作ヒロインたちと同年代の我々は、麻帆良へ潜入するという選択肢が存在する。いや、年上の場合でも高校大学に入学するという選択肢がある連中もいるのだが。
でまぁ、我々UHBに所属する面子というのは、大半が麻帆良へ入学することを希望した。
入学しなくとも仕事はあるし、別に入学を強制しているわけではない。
ただ、我々の目指すイベントの成立には、麻帆良に在籍している事が有利に繋がる。
――それに、折角ネギまに着たんだから、どうせなら麻帆良に所属してみたい、なんて連中も多々いるわけで。

ただそうなると、問題はUHBに所属する低年齢層――中学に入学する年代の人間と言うのが、要するに小学生で、更に所在地が麻帆良に限らず、日本全国、それどころか世界を超えて、魔法世界在住の人間なんてのもザラにいるのだ。

そこで使うのが、UHB社の権力と言うものだ。
最初は単純に、デバイスの再現の為だけに立ち上げた会社だったんだけど、いつの間にかソコソコの規模の会社になってたからなぁ。折角なので利用できる権力は利用する。
つまり、社員割り――いや、まぁ、正式には社員と言うわけではないのだが、UHB社の補助と言う形で麻帆良入りを支援する、ということだ。

先ず、ウチでスカウトした人間の身元を明確にする。
地球、現実世界に戸籍がある人間はいいのだが、魔法世界にしか戸籍のない存在というのもウチに所属している。そうした場合どうするかと言うと、主には伝手を利用した戸籍の容易だ。
例えば国連だとか、某大国だとか。ISの販売で各国にはある程度のパイプが出来ている。此方に貸しを作ると思えば、割と安いものだと大半がそれを受け入れた。
そうそう、戸籍関連で調べたときに気付いた居のだが、超鈴音は既に戸籍を用意したようで、既に麻帆良に渡っている事が確認された。
エヴァからも報告が上がってきているし、魔導師としての技術意外、魔法使いとしての技術開示は許可しておいた。さすがに魔導技術を導入したガイノノイドとか、相手をするのは辛すぎる。

……あぁ、そうか。超鈴音についても調べなければ。彼女がどのような未来から、どのような目的を持って此処に着たのか。
原作の通りであるならば、彼女は未来の平行世界からの来訪者であり、もし我々の存在を知っているのであれば、この未来からの来訪者という事に成る。
まぁ我々にコンタクトを取って来ないという時点で、平行未来の彼女――つまり、原作沿いである可能性は高いのだが。
であれば、きっと彼女はスプリングフィールドについても調べているのだろうか。
情報規制でそう簡単に情報は手に入れられないだろうが、それでも五つ子と知れば……。
くくく。

げふん、話が逸れた。
要するに、そうして戸籍を用意し、ついでに入学の為の補助を会社として行うというのだ。
細かい所は政務部が何とかしてくれるらしいので俺は知らないが、この書類を出す事で、寮生活におけるかなりの負担が軽減されるのだそうだ。
まぁ、その代わり将来はUHBへの所属が求められるが、そもそもUHB所属だし。
こうしてUHBの補助を受けることで、結果として各員の家庭に麻帆良への留学を許可させる、と言うのが最終目標。
此処に所属している連中はある程度融通が効く連中が多いので、大抵は上手くいくと思うのだが。

「クラン、お前は麻帆良が何故嫌なんだ?」
「だって、男子校だぜ!? 出会いが少ないだろう!!」
「その認識は間違っている」

そう、その認識は間違っているのだ――っ!!

「そう、例えば此処に男子校がある。男子校では女子がいない。それは事実だ」
「う、うん」
「が、それ故に男子校の連中は女子に対して活発にアピールを行う。まぁ、たまには衆道に入っちゃう連中もいるらしいが」
「シュウドウ?」
「知らなくていい。検索もするな。さて、そうして男子校の人間と言うのは異性に飢えるわけだ。此処まではいいな?」
「お、おう」
「宜しい。では、その逆が無い筈が無いとは思わないかね?」
「???」

首を傾げるクラン。そしてそれは、周囲の男子連中も――あぁ、女子連中は苦笑している。まぁ、此処に居る女子連中って中身は「ピ―」だからなぁ。

「……相馬?」
「ひっ、な、何だケント」
「何か不快なことを考えなかった?」
「滅相も無い」

なんでこう、女子連中は異様に勘が鋭いのか。
きっと普段からそういう事を言われないかと思考が陰険な方向に……

「相馬」
「はっ、問題ありません」

殺気を含む視線が増えた。これ以上は拙いので、話題を元に戻そう。

「さて、つまり俺が言いたいのは、女子校の連中も、異性に対して飢えているのではないか、と言うことだ」
「「「「「「「「「「お、ぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」」」
「だ、だが俺達が行くのは男子校だぞ!?」
「そう、麻帆良学園都市に存在する、男子校だ。そして麻帆良学園都市には、男子校と並んで女子校も存在する。この意味が、分るか?」
「「「「「「「「「「ゴクッ」」」」」」」」」」
「麻帆良学園都市は、ある意味それ一つで一つの街として成立している。つまり、放課後土日休日なんかは、殆どが学園都市内で用事を済ます。……さて、それでは男子校、女子校の生徒は別の場所で生活するのか? 否! 断じて否である!」

反義語表現。演出参考文献は「はじめてのコロニー落し」から。著者? 野暮な事聞くなよ。
因みに勿論握り拳は握っている。

「「「「「「「「「「お、おぉ!!」」」」」」」」」」
「確かに男子女子校に分かれた麻帆良では、学園内においての出会いは少ないといわざるを得まい。然し、然しだ! その外、麻帆良学園と言う限定された土地において活動することになるその実! ある意味では、ただの同級生同士よりもアピールポイントは高くなる!」

期待値の加算による、カリスマ値の一時ブースト。
簡単に言うと、女子校という閉鎖社会において、外、つまり男子という異性に対する興味、これを期待値として現実に加算することで、一時的に彼女等の視界に映る自分をよりよく見せるというモノ。
もっと簡単に言うと、恋に恋する乙女を釣るという事
まさにげどうである。


「「「「「「「「「「お、おぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」」」」
「と言うわけだ。まぁ、如何してもお前が嫌だというなら強制は「書けたぞ! コレで頼む!!」しない……いや、それを親に出して捺印を貰って来い」

さっさと意見を翻したクラン。なんとも現金な奴だが、まぁこういう奴も居て楽しい。
因みに周囲を見回せば、何故か先程よりも書類記入に熱が入っているように感じる。
……あぁ、周囲の女性陣の視線が冷たい。

「そんじゃ、俺これを親に出してくるわ」「あ、俺も」「俺も」

と、ある程度書き進んだのだろう。誰かがそう言うのを皮切りに、俺も俺もと次々と転送ポートへと男たちは去って行った。

「――因みに聞くのだけれど、今の話って本気?」
「無論、半分程度だ」

そっと聞いてきた幽香に、苦笑しながらそう漏らす。
だって、正直に考えてみて、中学生程度の小娘が異性に対して其処まで飢えているだろうか?
確かに興味は持っているだろう。が、あくまで興味程度。
恋だの愛だのというよりは、恋に憧れるというレベルの代物だろう。いや、少女共の恋愛観を否定するわけではないのだが。
正直、あの連中なら麻帆良の少女達よりも此処の年齢詐欺連中のほうが話題とか合うと思うし。
――っ、睨まれた。思考すら除かれるのだから此処は恐い。桑原桑原。

「……アンタも中々下種よね?」
「酷い言われようだ。否定は出来無いが。ただ、完全な嘘と言うわけでもない。『恋に恋する少女達』はいるわけだし、色恋沙汰は無理でも、恋愛ごっこくらいは行くだろうよ。まぁ、縁があればそのまま――と言うことも無きにしも非ず」
「ふふふ、でも、もし私たちの計画が成就すれば……」
「まぁ、一般人に被害が出ない様には注意するが」

一般人以外には相当厳しい事になるだろうが。

「まぁ、大丈夫なんじゃないか?」
「………………」

まぁ、問題が起これば起こったで、ちゃんと我々としてもケアは行う心算だ。
何せ俺達が目指すのは、悲劇の回避。大きな悲劇の回避のために、小さな悲劇を生み出すようでは本末転倒でしかない。

「まぁ、アンタがそういうなら、私は何も問題ないわ」
「そうか……」
「って、何処行くのよ?」
「ん、少しゼロベースの様子を見にな。あそこもある程度チェックをしておかないと」
「ゼロベース?」

ゼロベースは、要するに一番最初に作った、0番目のベースのことだ。
因みに此処はファーストベース。
ゼロは現在折れ個人の所有となり、ファーストはUHBの転生者組み及び上級幹部のみ。セカンドはUHB所属で、ある程度以上身分証明が出来ている人間のみの入場が可能となっている。
因みにゼロベースの存在を知っているのは、UHB内でも始まりの四人とそれに連なる少人数くらいだけだ。

更に付け加えておくと、現在俺の相方であるリインはセカンドベースにて国連軍との折衷補助を行っている。
俺以上に事務能力が高く、しかも可愛らしい女の子だ。UHB社側ではとても人気だそうだ。因みにリインにチョッカイを出そうとした馬鹿は俺が始末しているのは余談。

「あぁ、あそこの事……」
「前々から改修してたんだけど、漸くそれが終わってな。ついでに新兵器だとか色々作ってたら完成が今になったわけだ」
「へぇ、改修ってなんでまたアレを? 確かアレって、色々問題が出たって……」
「その問題ってのがチョット面倒でな」

つまり、ゼロベースは開放するには少し性能が良すぎた。
もし万が一、俺の手を離れてアレが暴走した場合、相当規模の次元真が発生する。そうでなくてもアレ一機、使い方を誤らなければ世界征服も容易いのだから。

「……それは、また」
「改修ってのは、まぁ汎用性を下げて俺とリイン専用にして、少人数で運航可能にしつつ、ファーストとセカンドのデータからフィードバックして、な」

現状のアレは、ファーストやセカンドに比べればサイズとしては一回り小さい。が、その性能は延々と俺が改造し続けているだけ有って、かなりの代物に仕上がっているのだ。
一応ミズチには報告しているが、あいつも俺の趣味を知っているだけあって黙認してくれている。
俺の趣味――つまりは、灰スペックの追求、ネタ装備の開発だ。

「興味があるなら見に来るか?」
「いいのかしら?」
「あぁ、問題ない……って、レンもくるのか?」
「(コクリ)」

と、幽香と会話していたらいつの間にか近寄ってきていたレン。
その手に持つのは、彼女のアームドデバイス、白猫偃月刀。AIはツンデレの白猫だとか。

「……さ、さっさと行きましょうか」
「………」

何故か仕方ないわね、という表情の幽香と、幽香のその腕にくっ付いて、なんとも言い難い表情をしているレン。
まぁ、良く分らないがとりあえずさっさと行く事にしよう。

「んじゃ、ゼロベースへ」

言いながらゲートをくぐる。白い光に包まれて、ゲートを通過するとき、何か小さな声が聞こえたような気がした。













「で、こうしてゼロベースを改造したわけなんだけど」

具体的な改造はというと、コレまではある程度の規模を用意しておいた生活スペースを狭め、精々屋敷が一つ入るくらいまでにした。
そうして出来たスペースの大半をドローンやリアニメーターの格納庫にし、作業力の増強に努めた。
また元々造船所としての機能を持っていたゼロベースだが、このドッグを改良し、更に扱いやすく、尚且つ作業効率が高まるように改修したのだ。

「でも、此処を改築して何か在るの? 此処の目的って、そもそも次元航行艦の造船の為でしょ?」

幽香の言う通り、このゼロベース――初代ベースは、そもそもL級時空航行艦の建造のために用意した施設だ。
時空基地と言うよりは、時空航行艦造船所と言う面が大きいこの施設なのだが、後続機であるファースト、セカンドはその機能を一応程度にしか継承しておらず、アレはどちらかと言うとドッグ艦といった意味合いに近い。
L級艦の格納及び修復は可能だが、開発は厳しい、といったかんじか。
それにあそこは既に秘密基地というよりは、秘密組織の駄弁り場になってしまっている。
いや、セカンドベースは一応重要な、UHBのメインフレームやら色々重要なものがおいてあるし、社員さんや国電軍側の上級士官なんかも入ってきて一緒に共同研究をやっていたりとかなり重要な拠点なのだが。
……ファーストはなぁ。駄弁り場だしなぁ。

「んー……まぁ、百聞は一見にしかずというか」


言いながら、奥の格納庫へ移動。そうして認証を通り抜け、一番奥に存在している格納庫へとたどり着く。

「また、えらく奥にあるのね」
「??」
「あぁ、だって考えても見なさい、此処にこれるのは基本的にUHBの人間だけ。秘匿のために守りを固めるっていう考え方は理解できるんだけど、そもそも此処にある時点で守りは十分なわけよ」
「……此処は、実は大昔、俺が此処を作ったときから存在しててな。此処の内容は他の三人にすら隠してたからなぁ」

故に外側に置く、というのも特に問題は無い。……無い、のだが、それでもコレの守りだけは有る程度気をつけておかねば成らないのだ。
最後の扉、其処に敷かれたタッチパネルに手をおき、最後の文言を唱えた。

「I am providence」
「ちょっ!?」

声を上げる幽香の前、静かに、ゆっくりと、目の前の扉が開いていく。

「その文言に、扉の獅子の記号……冗談よね……?」
「いや、割と本気で作ってみた」

開かれた扉の中。其処にあるのは、機械の残骸の群だ。
先ず一番最初に目に付くのが、未知のど真ん中に鎮座する銀色の台座。
五芒星と獅子の描かれたそれは、まるで儀式の祭壇のような奇妙な威圧感を放っている。そしてその周囲に漂う同様の祭壇、その残骸。どうやら開発中に壊れたか何かで、中から銀色の柱が飛び出したままその稼動をとめてしまっていた。

そして次に目に付くのが、巨大な盾のようなもの。その表面にはクリアな物質が張り巡らされており、仄かに漂う魔力の気配からそれが魔法物質であることは創造に易いだろう。そしてその透明な物質の中を輝く文字が漂っている。見るものが見れば、それが魔法式であることに気付くものも居るかも知れない。

更に奥に行くと、次に目に入ったのはコンピュータの塊だ。
水銀のようなものの入ったポッドを中心に、まるで人の形を取ったかのように繋がれたコンピュータの群。
稼動はしていないらしく、まるで機械でできた躯のようにも見えなくは無い。

更に奥に行く。そこにあったのは、人が着込むことでその動作を延長するパワードスーツ。
ISが存在するというのに、何故こんなモノがと首を傾げる幽香は、更に奥へと脚を勧め、その後を何時ものようにレンが追いかけていく。

次に現れたのが、ヒトガタのロボット。
無骨な角ばったそれは、然し如何見てもロボットと呼称されてしかるべきものだ。
全長は大体8~9メートル弱。

「……これは……」
「セミ・マスター・スレイブ方式の……まぁ、アサルト・スーツ……略してASだな」
「私は突っ込まないわよ!!」
「…………」

何かレンが物凄くキラキラした目でASを見ていた。何かツボに来るものがあったのだろうか。


そうして、更に奥へと進む。
ゴロゴロと転がる大小さまざまな金属の塊。元素変換による新素材開発の名残であり、同時に魔法的物質の開発でもあるそれらは、所々から魔力の残滓を発生させている。

更に奥へ。
其処にあるのは大小さまざまなエンジンだ。ISでも補助として用いられている魔力スラスタ。それを大型化・高出力化した代物で、それこそ時空航行艦くらいにしか用途の無さそうな代物だが、そもそも時空航行艦はスラスタ制御ではなくベクトル制御による代物だ。
故にコレの存在は、知らない人間にしてみれば一層のなぞでしかない。

更に奥にいこう。其処にあるのは、この近隣の次元世界を巡り集めたロストロギア。
どうやらこのネギま世界の周辺にも他の世界と言うのは一応存在しているらしく、そうした世界の中でも人の反応が無い世界を巡って物資蒐集を行っていた際に発掘した代物などが納められている。

奥へ、奥へ、奥へ奥へおくへえおく奥奥奥奥!!!

次々と現れる異形の魔法、機械の群に、どんどんと幽香とレンの顔色は悪くなっていく。
それはそうだ。此処は、モデルとなった彼の施設ほどではないが、内側にいろいろな物を溜め込んでいる。

その多種多様な魔力はこの最奥の結界の中で混ざり合い、ある種の瘴気に近いものを醸し出している。彼女等が此処に違和感を感じても仕方あるまい。
まして、この瘴気と言うのは人を汚染する。相性がいいものなど特にだ。
防護を施していた俺やリインでさえ、この瘴気の影響で若干ではあるが変質しつつあるのだ。
ある程度変質してしまえば、此処の空気から受ける影響は減るのだが……まぁ、もともとの性質が光寄りの彼女達なら影響は少なかろう。

「さて、そしてコレがこの秘密格納庫の目玉だ」

そうして紹介するのは、鋼の躯。
此処に至るまでのすべての技術を集結させ、じっくりと形を築き上げている、未だ生まれぬ鋼の躯だ。

「これは……まさか、本当に?」
「ああ、そうだ。これは……」
「――デモン、ベイン?」

ゴゥ――――――

珍しくレンが声に出して小さく呟いたその途端、世界が震える。
目には見えず、風すら揺らさず、ただ世界だけが静かに揺れる。

「――っ、な、今のは……!?」
「名前を呼ばれたから呼応した、んだろうな」
「そんな馬鹿な!? 出来る筈がない!? ありえないでしょう!!」

鬼のような形相で、怒りに溢れたその声。まぁ、俺とて気持ちは分る。
コレが存在しえる筈は無い。俺だって、コレを作るつもりなんて欠片もなかったのだ。

「……如何いうことよ」
「事の始まりは、来るべき戦いにおける、魔法触媒の研究だった」

俺達の起こすイベント。それは、とあるイベントを乗っ取る形でなしえる事を計画している。
然しそのイベントにおいて、現状の計画では『乗っ取る』という部分の比重が大きく、いざという時、此方から持ち込むシステムによるサブプランの計画が必要ではないか、という考えが浮かんだのだ。
が、これには通常の魔法触媒では力が足りない。デバイスをその触媒とするには神秘が足りず、魔法使い連中の“杖”でさえ神秘が足りなかったのだ。
このこと事態は他の三人も承知しており、コレにより俺の魔法触媒の研究がスタートした。

が、当初研究は上手く行かない。それも当然だろう、我々が扱うのはミッド・ベルカの魔法式を基準としたシステムだ。其処には神秘の介在する隙間など無く、ただ無常なまでの哲理があるだけだ。

……そう、其処までは確かに俺の意志があった。
ただ、其処からが分らない。本当にそれが俺の意志だったのか、それとも何か外からの干渉を受けたのか。



先ず最初に思いついたのが、過去次元世界で物資蒐集を行っていた際に発見したロストロギアによるもの。
一言にロストロギアと言ってはいるが、実際のところこのロストロギアというのは科学以外の、それこそ呪物のようなものまで入る。要するに、現代の自分達の技術では解析不能な力、と言う部類なのだ。
そうして見つけた幾つかのロストロギアのうち、何とか解析可能なものを分解再構成したのが、あの銀の祭壇だ。
機械式のあの祭壇は莫大な魔力/術式の制御基盤となると共に、そこに凄まじいまでの神秘を付与する。これは『祭壇』と言う属性を受けてのものだというのが俺の見解だが、多分にオカルトが入っているため信憑性は薄い。

更に集め続けたロストロギア。その中に、ロボットのようなものを見たときにひらめいた。
日本にはヒトガタという、人形を人に見立てることで、それを触媒として呪を行う見立て呪詛というモノが存在する。またそのほかにも、東西問わず『人形には魂が宿る』とされることが多いのは事実。
であれば、もしかするとヒトガタには神秘が宿るかもしれない。
其処から、ロストロギアから引き出した技術を元に、ロボット工学の研究が始まった。とは言え、俺の手本としたものはロストロギア、魔法……いや、神秘の再現を最終目標とする魔術寄りの代物を手本としたものだ。どちらかと言うと魔導工学になるのだが、実際完成したのは多量の魔力を動力とする機械式のゴーレムのようなものだ。

この『銀の祭壇』と『機械式ゴーレム』の二つが揃った時点で、計算上では相当の神秘が得られることが分かり、俺はそのままそれらを組み合わせた機体の設計に入ったのだ。
……この、秘密ドッグで。

まるで狂ったように進む自らの腕。それを不思議ともなんとも思わずに、俺の腕はただ設計図を書上げていく。
俺と言う無限機関を銀の祭壇で制御し、その神秘を機体にめぐらせ、更に俺とリインの二人で機体を制御する。

「最初は、俺とリインの二人乗り……精々全長18メートルとか、そんなサイズの機体を作るはずだったんだ」
「何を……現に此処にあるアレは、未だ未完成でも60メートルはあるじゃない!!」
「そう、そうなんだよ。何時の間にああなったのか。俺にもわからん」

気付いたときには、俺が最初に想定していた設計図は何処にも無く。
それどころか何時の間にか魔力式のスラスターの設計図や、呪術的な仕組みの施された演算装置とやらや、他にも呪詛伝導物質やら、一体何処からそんな構想が浮かんだのかと言うような設計図やら構造図なんてものがいつの間にか俺の端末に溜まっていった。
そしてそれはありえないことだ。確かに現在の俺は、人を半ば辞めてしまっている為、頭脳の演算能力と言う部分では常人のそれを軽く圧倒している。
だがしかし、果たして俺は此処まで突飛な発想を出来るような、そんな脳のつくりをしていただろうか?

そんな疑問は後から浮かぶだけで、その当時俺は何の違和感も無くその研究開発を継続。そうして研究開発がスタートし、様々な試行錯誤を繰り返したその結果、いつの間にか此処は魔窟へと変貌を遂げていた。

「……」「………」

顔色の悪い二人を連れて、この秘密ドッグを後にする。一応このゼロベースにも生活スペースは存在しているので、其処に連れ込み、俺の唯一飲むハーブティーを出し、それを飲んで落ち着かせた。

「……まぁ、多分大丈夫だと思うんだけどな」
「なんでよ!? だって、アレがあるって事は、あの神話だって……!!」
「いや、それは否定は仕切れないが、とりあえず此処には関係ないと思うぞ」

幽香の理屈としては、此処にデモンベインがある。それは、デモンベインが必要とされる事態が起こりうるというもの。
その中で彼女が最も恐れているのは、かの機械仕掛けの神が生まれる物語。其処に存在する邪悪な神性と、それにまつわる魔術と呼ばれる世界を捻じ曲げる力。
我々転生者の能力を見るに、確かにこの世界では図抜けたチート具合ではある。が、あの世界観の魔術って、そういうチートをいかに騙し後ろから汚染するか、見たいな部分があるからなぁ。しかも公式がチート。希望は少なく、大半が絶望なのだから。

でも、これは俺の直感なのだが、多分そういった事態には陥らないと思う。

「アレはデモンベインかもしれないけど、でもデモンベインではないだろう」
「……でも、あれは確かに……」
「『見立て』の影響か、もしくは俺の特質……虚数から引っ張り挙げた可能性の顕現、ということもありえる」

あまりネガティブに考えるよりは、そういう風にポジティブに考えておいたほうがいいだろう。

「あぁ、そうそう、見立てといえば何だけど……」
「何よ、もう私たちお腹いっぱいよ?」
「(こくこく)」

そんな二人に苦笑しつつ、とあるデータを二人に見せた。
途端表情が引きつる二人。

デバイスの投影ディスプレイに映し出される三次元グラフィックス。
其処に映し出されていたのは、黄金に輝く三角形。

「な、コレ見たらそんな緊張するのも馬鹿らしくなってくるだろう」
「……まぁ、ねぇ?」「……」

思わず、と言った様子で脱力する二人に小さく苦笑しつつ。

まぁ、事実なんでこんな設計図まで俺は書いたのかと首をかしげながら。
そのドリル付きドラム缶の設計図に視線を落としたのだった。

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19 閑話6 ベースで小休止。

2012.08.16 (Thu)
「………………………………………orz」

眉間に手を当てて項垂れる。
いや、確かに衣装もオルタっぽくきめて、そういう口調を意識したのも俺だけどさ。
然しまさか、思わずSEKKYOUをきめてしまうとか。確かに俺はテンプレチート寄りの転生者だけど、SEKKYOUだけはやらない心算だったのに。
いや、勝ったというか、寧ろ狩ったけどね。あのデスメガネ。
だってあの男って攻撃手段が一直線しか無い上に機動力もソコソコだし、遠距離から大規模範囲砲撃を打ち込むとか、虚実入り混ぜた撹乱で体力を消耗させて、全方位からの砲撃とか。
アレを狩ること事態は、まぁ今の俺のスペックから言うと力押しでも勝ててしまうヌルゲー。だってラカンに比べれば雑魚とは言わないまでも、バグでもチートでも無いし。
いわばG級装備で上位の狩りに行った気分。いや、G級☆1かな?

「……はぁ」
「ソーマ……」

結局あの後、適当に高畑を叩きのめし、ほぼ行動不能状態にまで叩いて麻帆良へと送り返しておいた。
赤き翼のタカミチ・T・高畑。しかしその実力はたいしたものではない。
普段からレンの相手をしていれば、たかが20年前のロートル相手程度には梃子摺らない。無音拳? せめて射線を曲げられるようになってから来いというのだ。
所詮はストレートしか打てない相手なんぞ、高レベル同士の戦いとなればあまり役には立たない。
ので、精々精神を叩き追ってやろうと言葉責めにしながらなぶりものにしてやったのだが。

……思い返せば、それってOSEKKYOUなんだよね。

「ぐああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「ああああああああ主!?」

やっちまった!! やっちまったよ畜生!!

「五月蝿いわよ」

と、ソファーでゴロゴロと転がっていたところ、不意にそんな声が聞こえてきたかと思えば、そのまま緑色の光の壁が目の前に――

「ゆ、幽香?! 我が主ににゃにを!?」
「ふん、人の集まるPXで暴れるほうがわるいのよ――っていうか、今噛んだかしら?」
「……///」

あぁ、リインは可愛いなぁ……。
じゃなくて。

「ゆ、幽香、いきなり何する」
「此処はPX、フリースペースよ。ある程度は許容されるけど、あんまり五月蝿くされると鬱陶しいのよ」
「うぅ……」

言われて思わず声が窄まる。
まぁ、確かに。こんな場所で唸ってるのではなく、唸るなら自室ででもやってればいいのだし。

「……ん、申し訳ない。でも、なんで幽香が此処に?」
「私はあの子達の案内よ。UHB側から此処に関して説明できて、彼女たちに対応できる女性が私くらいしか居ない、のだそうよ」
「彼女達って……あぁ」

チラリと動いた幽香の視線の先。其処には、つい先日俺が派遣され、UHBに引き込む事となった二人の少女が居た。

「……今度はリインフォース……」
「あっちのは……闇の福音と神楽坂明日菜、長谷川千雨?!」
「――アレって、遠野士貴?」
「あっちは小ギル……一体此処はどうなってるのよ!!」

なにやらPX内で屯っていた面々を見て、ブチ切れた様子で叫ぶアリサ。うーん、バーニング。
でも、この程度未だ未だ序の口だと知ったら、彼女は一体どんな反応をするのだろう。
魔法世界で拾った人材って、大半がとんでもない連中ばっかりだし。こう、月の姫君のパチ猫とか。

「まぁ、気持ちはわかりますよ」
「うんうん、ボクも最初此処にスカウトされたときは唖然としたものです」

そういう士貴っぽいのと小ギルっぽいの。
因みに士貴っぽいのはどちらかと言うと黒桐らしく、町で不良君達に人気の情報屋をやっていた。戦闘系の能力は皆無で、ただしその人の良さから女の子にはもてているらしい。
小ギルのほうは、完全に小ギル。但し本来は極普通の黒目黒髪だ。彼が今金髪赤目になっているのは、どうせなら完全再現したいという彼の要望にあわせ、疑似ユニゾンデバイスによる色彩変化による物だ。
因みに小ギルも戦闘能力は低い。魔法も使えるし、王の宝物庫の中身は無い変わりにミサイルとか魔力炉とか詰め込んでとんでもないことになってるけど、それでもウチのストライカー級からすると戦闘力は低め。まぁ、準前線には数えられているんだけど。

……それを考えると、ウチの前線メンバーって如何考えてもおかしいのばっかりだよなぁ。俺含め。

「因みに、ネギま世界のメンバーは全員この世界由来の子だから」
「……オリジナル!? 勧誘したの!?」
「んー……勧誘と言うか、救助というか……」

君の兄貴たちの同類、というと、二人は突然憔悴した表情に。
とはいえ彼女達の兄とあの銀髪オッドアイの君の相違点は、あのスプリングフィールドの転生兄弟がナンパに成功して銀河にばら撒く勢いで種を飛ばしているのに対し、銀髪オッドアイの君は未だに童の帝(ワラベノミカド)であるらしい、と言う点だろう。
その原因としては主に環境の違いが挙げられ、方やスプリングフィールドの種を求める少女たち、方や麻帆良という土地の影響で存分に才能を開花させ、ちょっとやそっとの美形程度には靡きもしない少女たち。
……きっと、銀髪オッドアイの君は魔法世界ならモテモテだっただろうに。感知される魔力だけは大きかったから。


そんな事を考えつつ、銀髪オッドアイの君に関する情報を少女たちに話していく。

「その、三つの特質っていうのは?」
「んー、今まで見た転生者に共通する奴でね?」

生まれながらにして持ちえた、異端的かつ超常的能力。
例えば訓練も無く咸卦法を扱えるだとか、ダウジング能力があるだとか、超能力者第五位ほどの電撃があやつれるだとか、生まれながらに頭が居様に回るとか、妙に運がいいとか。

「それ、私達にもあるのかしら?」
「多分あると思うよ」
「それって、分る?」
「……まぁ、うん。分るらしいよ」

言いつつ、丁度話題に上げようと思っていた馬鹿が入室したのを何となく感じ取って振り向く。
其処には、地上から運び込んだのか、大量の超印の肉まんを担いだ馬鹿……もとい、カズの姿があった。

「ありゃ、皆さんおそろいで」
「あぁ、丁度良かった。チョット用があるんだけど……ナニソレ」
「ん、頼まれたから」

そういって視線を投げるのは、麻帆良組み三人が要るスペース。そうそう、コイツ麻帆良組みと妙に仲がいいんだよな。案外こいつオリ主なんじゃね? というレベルで。
――うぅん? いや、案外本気でそんな気がしてきたぞ!? 実際現状で最も麻帆良内部に縁を持ってるのって、間違いなくコイツだし!!


まて、ブレイク! 落ち着け俺。
コイツが主人公属性持ちだろうと俺には関係ない。俺にはリインという可愛い相棒がいるじゃないか。第一同い年とはいえあそこの連中は妹分みたいなものだろう。

「まぁ、とりあえずそれを届けてからちょっと用がある」
「んー、りょうかい」

そういってトレーを運んでいったカズを見送りながら、ちょっと待ってくれとスプリングフィールド姉妹を制する。


「あの人は?」
「ん? ウチの幹部」
「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!???????」」」」」」」」

言った途端に物凄い驚かれた。しかもスプリングフィールド姉妹だけではなく、その他俺達の会話を効いていたと思しき全員が。
……あれ?

「姉妹はともかく、なんでお前等まで」
「いや、聞いてねぇ!?」
「初期メンバーだとは聞いてたけど、幹部って如何いうこと!?」

小ギルやらその他面々に詰め寄られる。あれぇ? そういや俺、此処の連中に組織構成の話とか全然した事無かったっけ。というかそういうのって、こっち側に良く入り浸っているカズに任せていたような。

「あー……始まりの四人って自称してる初期メンバーが居るってのは知ってる?」

ガヤガヤ、という雑音に紛れて聞こえてくるのは、「知ってた?」「知らない」という否定の声。
いやいや、そこらへんの教育どうなってる!! まさか本当に知ってるのは上位メンバーだけなのか!?

「あー、その四人って言うのが、俺、カズ、リュウ、ミズチの四人で、俺が特殊兵装及び拠点開拓、ミズチが量産兵装及び裏側の外交、リュウがご存知表側のUHB社の舵取りで、カズは麻帆良の情報収集とベースの主みたいなことに成ってる」

その情報に、唖然とした様子の周囲。

「……一応聞いておくと、あいつってどの程度の存在だと思ってた?」
「パシリかと」
「いや、一応古参であることは聞いてたけど」
「でも、見たのって女の子の使いッパシリにされてるところばっかりだし……」
「……そういえば、“よく”女の子に使いっパシリにされてるよね」
「……あれ? 本当だそういえば」

――ザワ……ザワ……

「いや、よくパシられてるのは事実だけどね。なんなら代わるか?」

何か妙な雰囲気に成り出した男性陣営。そんなところに、相変らずの気楽さで、飄々と戻ってきたカズ。
地味に周囲に喧嘩を売っているのだが、コイツはその事を自覚しているのだろうか。
まぁ、コイツって実はエヴァの直弟子な上に汎用性の馬鹿高いドラクエ呪文の使い手だから、ただのチートに胡坐を欠いているだけの人間では絶対に勝てないんだけど。

「んで、お仕事って?」
「ん、彼女等のステータスを調べて欲しい」
「……あぁ、なるほど」

そう言ってブラックロッドを待機状態から通常状態へと移行させるカズ。

「如何やってステータスを調べるのかしら?」
「ん、あぁ……コイツの特質って知ってる?」
「あたし等が知るわけ無いでしょが!」

エリカの質問に答えたら、アリサのツッコミが入った。
いやぁ、こういう見事な突っ込みは新鮮でいい。此処に引き込んだ連中って、常識はあるけどそれとこれとは別、って連中が意外に多いから。

「コイツの特質の一つが、ドラクエの呪文なんだよ」
「……それはまた、ピンポイントね」

アリサの言葉に思わず頷く。まぁ、俺の聖王の特質もある意味ピンポイントではあるが。

「まぁ、昔やりあったFFの呪文使いも相当チートだったがな。メテオを喰らったときはさすがに死んだと思ったし」
「ちょ!? FFの呪文使い!?」
「幸い召喚術は使えなかったから何とかなったが……さて、それでコイツドラクエの呪文使えるんだが」

目線で合図すると、頷いて見せるカズ。

「ダモーレ」

カズはブラックロッドを軽く振るうと、それにあわせて呪文を放った。
その無色透明な力の波動は、軟らかくスプリングフィールド姉妹を包んだ。
そう、ダモーレである。
モンスターで色々するほうのドラクエ、その中で、3ターンの間、相手のステータスやら装備品やらを覗き見することが出来るという呪文だ。
ソッチには手を出していなかった俺だ。全く気付かず、結局気付いたのは、件のFFの呪文使いを倒して仲間にした後、そいつの突っ込みを受けて初めて知ったのだ。

「……うわ、凄い。と言うかコレはまた」
「自分だけ納得してないで、さっさと説明しろ」
「あー、うん、悪い」
「と、ちょっとまて」

言いつつ、アルクを使い小さく結界を起動させる。
結界の存在は確認できるが、内面は曇りガラスのように不透明、音は遮断され、プライバシー保護は完璧。
俺がモザイク空間と名付けた結界だ。
誰だエロいとか言った奴! きっと友達になれると思う!!

「よし、んじゃ、頼む」
「うん。それで、二人のステータス何だけど……」

そう言いつつ、ブラックロッドの投影ディスプレイにデータを表示させていくカズ。
見たところ、基礎的なステータスは転生者としては平凡なレベルといった所か。
アリサは魔法関連のステータスは平凡で、何故か格闘系が異様に高い。
エリカは比較的魔法よりのステータスだが、戦闘に関するものとしては天性者の中では平凡なところか。
両者に共通するのは知力の高さだが、それよりも突っ込みどころがあるのは彼女等の資質だろう。

「先ずエリカ嬢の特質な。
1.王才
2.優等生
3.お金のニオイ
って表示されてる」
「あら、私らしい……のかな?」
「イヤイヤイヤ!? なんか聞こえ悪いわよ!? 否定しなさいよ!?」
「でもねアリサ、似合ってると思わない?」
「……………」

いや、否定できないのかよ。

「えっと、王才が軍略・政治的な物事に対する才能。頭脳チートというか、そういう類かな? 優等生は何事に対しても一定の成果を収められるとか。武芸百般の類似かな。お金のニオイは……金儲けの出来そうなニオイを嗅ぎ取る力だって」
「うーん、なんとも私らしいわね」
「もう、いいわ……」
「更に言うと、スプリングフィールドの血筋の特典として、魔法ダメージ50%減と、魔法資質がプラスされてるね。鍛えればネギレベルには行けるんじゃない?」

聞いていて思わずゲンナリする。
俺達転生者というのは、基本的に特質に頼った成長をする事に成る。というか、俺達転生者は、特質のほかにコレといった特徴をもたない場合が多いのだ。
俺なんかは聖王の魔力の影響で、単身では精霊魔法が使えない。レンなども、咸卦法のスキルによって気や魔法は上手く扱えないのだ。
そういう制限がある中で、特質外スキルとか。もうね、何か色々理不尽だ。

「次、アリサのほう。コッチはドチートだね。
1.覚醒。2.天啓。3.王才。
覚醒は限定的にステータスをブーストさせるスキル……まぁ、トラ○ザムかな。
天啓は非戦闘に関しても発動する直感系スキル。政治経済的なことにも発動するとかチートすぎる。
王才はエリカと一緒だね。
で、スプリングフィールドの血……というか、これってエンテオフュシアの血かな?」

――魔力完全無効化能力。

ブラックロッドにより表示されたディスプレイには、そんな文字が躍っていた。

「……はぁ。やっぱりそうなのね」
「自覚はあったんだ」
「そりゃね。私たちが山の村を逃げ出したのは、一つにはあの馬鹿二人から逃げるってのもあったんだけど、本当の目的はどっちかって言うとコレよ。魔力完全無効化資質、コレを『私が持ってる』ってのを下手に知られない為」

なるほどと、思わず頷いてしまう。
何せ、スプリングフィールドの、特にナギの子で魔力完全無効化能力を持つというのは、特定の人間にしてみればこの上ないお宝となる。
つまりは、行方不明と成った黄昏の姫巫女に代わる、新たな黄昏の姫巫女の誕生。

「生まれたときはそうでもなかったらしいんだけど、ある日ちょっと事故にあってね。その時、火事場の馬鹿力……みたいなのがあって、それと一緒に無効化能力が目覚めたのよ」
「多分それが『覚醒』だったんじゃないかな? 覚醒、今も使える?」
「使えるわよ。連続しては無理だけど、連続3時間の、クールタイム3時間。使いきりじゃなくて、休む都度クールタイムが入る感じね」
「それは……本当にトラン○ムだな」

魔力無効化能力持ちで、格闘系ステータス、直感も優れて、更に政治的センスも持つ。
……これは、まさか、俺達にヤレと誰かが指し示しているというのか。

チラリ、と視線を向けると、コクリと頷いてみせるカズ。
こういうネタばっかり見事に意思疎通するのは、やっぱり何か補正が働いているのだろうか。

「あれだな」
「うん、アレだ」
「そうね、アレよね」
「何よ、私以外で揃って頷いて?」

何の事か分らない、という様子のアリサに、此方はせーので声を揃えて。

「「「アリサ・バーニング」」」
「バーニング言うな!!!」

見事にバーニングしたアリサに、思わず笑が零れる。
然しコレで決まったな。デバイスはベルカのアームドで、『贄殿遮那』。これだろう。

「そうそう、魔法完全無効化能力に関しては、先達たるアスナがウチにいるから、あいつに教わればいい」
「そだね、後でアスナに紹介しようか」
「……そういえば、居るのよね、元祖黄昏の姫巫女」
「私たちにとっては、叔母上にあたるのよね」
「まぁ、そうなる。それとあんまりこの世界を物語として、人をキャラクターとしてみるなよ?」
「そんなことは分ってるわよ。私たちだってこの世界で生きてるんだから」

一応程度に注意したのだが、そんなことは当たり前だと逆にキレられた。
まぁ、そういう痛い系の人間はスカウトしないのだが、それでも一応注意はしておく。

「んじゃ、スキルも分った事だし、――カズ、もういいぞ」
「ん、んじゃ俺は行くわ」

結界を解除すると同時に、麻帆良三人組の元へと戻っていくカズ。

「そういえばあの三人、麻帆良に居なくても平気なの?」
「ん、スキルニルが居るから問題ない」
「……そんな物まであるのね……」

そういって何処か疲れたように呆れてみせるアリサ。そんなアリサの様子を、エリカと共に苦笑して眺めつつ、次に彼女等にどういった役職を宛がうかを相談する為、次の施設へ向けて歩みを進めるのだった。


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18 閑話5 魔法世界に吹く風。

2012.08.09 (Thu)
「作戦を説明する。計画立案は俺ことジョージ。目標は魔法世界に姿を晦ましたスプリングフィールド姉妹だ。
どうやら姉妹さん、俺達UHBの存在に勘付いたらしく、襲撃を受けてるってこともあって、此方に対して救援を求めてきた。
まぁ、助ける義理は無いんだが、助力を求めている以上、俺達の大義的に放置することも出来ん。
未確認だが、現地にてスプリングフィールド姉妹を狙う勢力が襲撃の準備をしているという情報もある。
もし事実だとすれば、高い確率で敵対する事になる。下手を打つなよ
――こんなところか」

「はいはい、JOワロスGA乙」
「まったく。もう少しノリが良くてもいいと思うぞ、俺は」

苦笑してみせるジョージに掌をフリフリ。とりあえず、今回の俺のミッションは件のスプリングフィールド姉妹の救援、と言うことでいいのだな?

「ああ。ウチは連合の範囲には拠点を置いてない――ってのは、お前さんのが詳しいわな?」
「まぁ、そりゃな」
ウチ――UHBは、どのタイミングになるかは不明だが、MMとは確実に敵対する。
その場合、ウチの支部をMMにおいておけば、その時確実に巻き込まれるだろう。
まぁ、MMの一般市民にそれほど罪はない――いや、国と民は本来同罪。国の罪は民の罪、民の罪は国の罪であるべきだ。
愚か者を主導者に選んだ自らの罪、と言うことで。
「ん。で、前々から調査は進めてたらしいんだが、それに際して此方が調査をする前に、向こう側から此方に対して接触してきたらしい。UHBの火星での看板――コンコードなんてあからさまな名前で支社を置いていれば、まぁある程度知識のある人間なら気付くか」
「それに、俺達の所属って事にもなってるからな」

コンコードは、魔法世界におけるPMCのような組織としての立ち位置にある。
かなり依頼内容を選ぶPMCで、MMからテロ指定組織として指名手配されること数十回。その全てを武力を持って撃退した事その数倍。
それほどまでに嫌われつつも何故コンコードが存在するかと言うと、その組織に所属する尖兵のネームバリューによるものだろう。
『虹色の魔王』『笑う斬魔』『蒼い雷光』『赤龍帝』『狂い咲く花園』、他にも『あいつ魔法効かないんですけど!?』や『サウザンドレイン』など、色々と、嘗てを知っている人間から見れば、明らかにネタとしか思えないような存在。それらが回帰するのが、このUHBという組織なのだ。
原作ハーレムを狙う人間なら先ず気付かず、原作にかかわり辛い苦境にあり、こまめに現地のローカル情報なんかに目を通す人間ならほぼ確実に気付ける存在。それが、このコンコードという組織だった。
一応他にも色々とネタっぽい名前の会社は多々作ってあるのだが、目立つのは間違いなく此処だろうなぁ。

因みに、俺もジョージもfA派で、2系等には詳しくない。せめてネストにしてくれりゃいいのに。

「因みに、目標地点は?」
「ヘカテスからアリアドネーの間のどこか、としか。どうもヘカテスでジャック・ラカンに接触しようと試みていたところをMMの尖兵に勘付かれたらしい。まぁ、情報収集は現地で行ってもらうしかないな」
「んー……了解。んじゃ、ソーマ、リインフォース、出撃する」

詳しいミッションデータを受け取りつつ、転移ゲートへと移動する。
魔法世界への転移は何処からでも可能。だが、転移ゲートを使ったほうが楽なのは事実。

「はいよ、お気をつけて少佐」
「……階級呼びされると、俺の黒歴史が……いや、なんでもない。行ってくるよ」

リインを引き連れてゲートへ。ジョージの苦笑を背後に聞きつつ、早々に目的地へ向かって転移するのだった。











時は過ぎ、俺の年齢は13歳。俺達UHBは、成長する国連との密接な関係を結ぶ事に成功した。
国連は得た巨大な力を持ち、自ら主導による急速な宇宙開発を進め、コレにより全世界に対し国連の力を見せ付けた。
それに際し、暗部で暗躍していた我々UHBは、その一部を国連直轄の特殊部隊とし、其処に所属する俺達には国連軍における階級を与えられることとなった。
促成教導も士官教育も受けていないとなんとか拒もうとしたのだが、何だかんだと理由を付けられ、気付けば少佐――正確には特務少佐。本来は曹長で、国連軍特務部隊に所属する限りは常に特務階級である――の階級を与えられてしまった。
他にもリュージが少将で、ミズチが大佐、カズが俺と同じ少佐だ。
まぁ、佐官以上は俺達4人だけで、後の特務部隊所属UHB構成員の階級は、殆どが尉官に留まる。
まぁそれでも国連軍としての給料はもらえるので、UHBの給料と特務部隊の給料で給料は倍! しかも特務部隊の給料はその性質上秘匿されたものとなるため、税金がかからないのだ!
まぁ、UHBから給料を貰ってる人間で戦闘員でもあるっていう人間って殆ど居ないし。

ではなくて。

そんなわけで少佐なんて位をおしつk……もとい、拝命して、何をしているかといえば、世界各国で見られる魔法テロの鎮圧、及び国際宇宙基地の開発指南だとか色々。
ISもソコソコ普及しだし、既にベテラン、エースと呼ばれるUN軍ランナーも現れている。
既に地球上で魔法使いの横暴は通用しない。
記憶操作や非正規活動により彼等が得ていた不当利益はその入手方法が陳腐化。此方の世界でまともに活動が出来ているのは、元々ある程度の政治基盤を持っていた、MMの現実世界各支部のみ、と言うのが現状だ。

さすがに麻帆良の妖怪は、自分たちが何がしかの組織に政治的攻撃を受けている、という事に気付いたらしい。
MMから増援を受け取り、それを以って自分たちに攻撃してくる何等かの組織に対し、情報収集を実行。電子精霊と物理的情報収集による二面作戦を敢行したが、その結果は散々。
電子精霊は麻帆良を抜けようとした途端に拡散。MMエージェントはその消息を完全にロストした。

完全に拙い状態に追い詰められていることに気付いた麻帆良は、然しその事態をMMに伝えるも『現状の戦力で状況を改善せよ』という上層部のムチャ振りに頭を痛めることに。
麻帆良の頭、近衛翁の伝手で関西呪術協会に増援を求めるも、関西呪術協会もその大半の勢力を喪失し、尚且つ先の大戦の影響で近衛翁に対して好意的な存在は皆無。
神鳴流の傭兵すら雇うことが出来ず、結局麻帆良は情報収集に手札を切れず、現状維持と言う緩やかな衰退に掛け金をベットしたのだった。






「……リイン、見えた?」
「いえ、然し12時方向に巨大な魔力反応があります。反応が接触目標である場合、接触予想時間は30分後となります」
「ふむ……何か、妙な反応がない?」
「大型の召喚獣と思しき反応があります。数12」
「……そりゃまた」

魔法世界の荒涼たる大地を、白い装甲の飛翔機が凄まじい勢いで滑空する。魔法世界で購入し、魔改造した結果異様なほど汎用性の高くなってしまったホワイトルーク(WR)。何時もの如くコレを運用し、件の姉妹を追いかける最中、ふと感じた違和感をリインに問い掛けると、そんな言葉が返ってきた。
12の大型召喚獣。俺にはさほどの脅威ではないが、大型の召喚獣ってそう簡単に呼び出せるものだったか?
原作で有名な召喚獣と言うと、完全なる世界が呼び出した、半影半人形のアレが有名だが、アレはあくまで造物主の鍵が合っての話。
第一、今回の場合完全なる世界が出張ってくる確立なんてほぼゼロ。だとすれば、スプリングフィールド姉妹を追っているのはそれ以外――まぁ、どうせまたMMの尖兵だろうけど。
だとすれば、如何やってそんな召喚を?

「……ソーマ、そろそろ接敵します」
「了解。んじゃ、リインはバックアップを頼むな」
「はい、我が主」

リインにWRの操縦を任せ、俺はハッチへと移動する。
最近はリインとユニゾンすることも少ない。というか、リインとユニゾンするほどの強敵がいないと言うか、リインとユニゾンせずとも十分に無双出来てしまうレベルに俺が至ったというか。
更に言うと、おれ自身も何か虚数から吸い上げている関係か、存在が変質してきているのだ。
それほど悪い変化ではないので受け入れてはいるのだが、コレがリインにまで影響して、もしそれが悪影響になった場合を考えると、ユニゾンの回数は減らしておいたほうが無難。
まぁ、そんな事情はどうあれ。

「それじゃ、ソーマ、出撃する」
「御武運を」

リインの声を耳朶に、ハッチから飛び降りる。
使用デバイスはアルク。ISシリーズも使ってみたいのだが、生憎アレは国連軍で運用されている。一応UHBとして運用する分も用意しているのだが、さすがにあちらで神経質になって機密保持を行っている品を、俺達がばらしてしまうのは本末転倒だろう。

という事で、今回は地力の編纂精霊魔法で。
「……はぁ」
ただ、精霊魔法の面白い特性に、テンションが魔法に影響を及ぼす、というモノがある。
ジャック・ラカンなんかが馬鹿みたいに不死身なのは、あの男が本物の馬鹿だから、というのがアリアドネーで一つの仮説として提唱されている。らしい。

――極、簡単に言うと。厨二が強いのだ、この世界。

「――見敵。なるほど確かに大型召喚獣だ。プレーンキメラ7、キュプロクス5!」
『――確認。データ照合行います』
「いや、両方とも対処法は覚えてる」

言いつつ、先ず最初にキメラ種を始末するべく、アルクを思い切り振り落とした。ザンッ、と叩ききれるキメラの尻尾。
――本来、俺のアームドであるガンランス型のアルクは元が槍の形である為、斬撃には余り向かない。が、この数年の戦いの日々の中で、日々少しずつ改修を重ねたアルクは、既にその原型をなくし、ありとあらゆる戦況に対応できるアームドデバイスへと姿を変えていた。
具体的に言うと、サンでライトなハートがプラスとか。

GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!

絶叫を上げるキメラ。
このプレーンキメラは、大多数あるキメラ種の中でも最もシンプルな姿をしているとされる。
しかしそれでも、獅子、山羊、蛇の三つの要素からなるこれらは、一体如何いう進化を遂げればそうなるのか、蛇は毒を、山羊は魔法を、獅子はその強靭な体力を持って冒険者を苦しめる。
対処法としては、先ず毒を吐く蛇を切り落とし、胴体に組み付いて山羊を黙らせる。蛇も山羊も獅子に比べれば体力は少ないので、順番を間違えず適切に処理すればそれほど手間取る相手ではない。

ただし、俺はそんな手間を取るつもりも無いけれど。

ドンッ、という音と共に周囲に周囲にクレーターが出来る。組み上げるのは回転三角形――ベルカ式魔法陣。

「俺は呪文って性に合わないんで、略させてもらうぞ――ヴォオーテックス・レイジ!!」

途端魔力が爆発する。爆ぜる魔力は渦を巻き、そのまま赤銅の大地に黒い柱を表した。
これぞ精霊魔法を応用したベルカ広範囲殲滅魔法、ヴォーテックスレイジ!!
その魔風の竜巻はあらゆる物質を切裂き、また撓り獲物を狙う竜巻は、その内側から獲物をけして逃がしはしない!!
――ポーンを全員ソーサラーにしたらドラゴンとか秒殺です。
じゃなくて。
そうして一気に周囲の大型召喚獣を削り、残すは周囲から少し距離を置いていたキュプロクス。未だキメラが数匹存命だが、既に大ダメージで素早い行動は不能!
こうなってしまえば、目的を果たすにはキメラを捨て駒に、キュプロクスで姉妹を捕らえるのが定石。
――が、反射だけで生きているような脳筋生物――キュプロクスにそんな戦術的思考が出来る筈も無く。ましてキュプロクスの制御をしている筈の召喚氏など周囲に姿も見えず。
故に脳筋キュプロクス達は、一番手近にいた敵である俺にそろってその巨大な棍を振りかぶり――。

「さぁ、暗き深きその闇に落ちて眠れ」

――デアボリック・エミッション!

バチバチと周囲を飲み込みながら周囲を包み込む、地上に現れた黒い奈落。
啾啾と唸りを挙げた闇は、その一帯に存在した召喚獣たちをその中へと飲み込むと、闇自らをも奈落へ引き込むかのように一点へ収束し、そうして最後に闇すらも、この世から影も形も消えてなくなった。
周囲を警戒しつつ、先行し少し離れた場所に陣取っていた少女へと、両手を挙げて近寄っていく。


「――そこで止まりなさい!」

先に声を掛けたのは、二人の少女のうちのどちらだったのか。
資料から察するに、多分アレがアリサのほうだと思う。声もくぎゅってるし。

「お前がくぎゅ……げふん、アリサ・スプリングフィールドと、エリカ・スプリングフィールドか?」
「――そのネタを持って来るってことは、転生者ではあるようだけど……アンタがコンコードの使者?」
「ん、お二方を迎えに上がったエリクシルだ。本名は此処を離れてからで頼む」

言いつつ少女達に手を差し伸べる。
正直、火星の地表って暑苦しい上に乾燥していて落ち着くことが出来ないのだ。

「エリクシルって――まぁ、あそこの所属である以上ある程度予測はしてたけど、いきなり大物を寄越したわね」
「いえ、暇だったのが俺しか居なかったもんで」

そう、別に我々は彼女等を重要視しているわけではない。彼女等の価値など、我々にしてみればデメリットでこそあれ、メリットなどたいしたものは無いのだから。

「まぁ、とりあえず。救難要請を受けて助けに来たわけだ。ご同行願えるかな?」
「――アリサ」
「……ええ、それじゃ、よろしくお願いするわ」

悩んだような様子のアリサ・スプリングフィールドを、その背後にいたエリカ・スプリングフィールドが小さく促す。アリサもどちらにせよ選択肢はないという事は分っているのだろう。それでも、いま我々を信用すべきか悩む――うん、少なくとも流されるだけの転生者なんかよりはよほどいい。

「――っ!? 何か来る!!」

と、漸く少女達を此方に迎え入れようとしたところで、不意にエリカがそんな声を上げた。
咄嗟にバリアを展開。途端ガツンという衝撃と共にバリアが大きく揺れた。
――これは……無音拳!?

「――っ、リイン! 二人をWRへ!」
『ソーマは!?』
「俺はお客さんをもてなした後、適当にそちらに戻る」
『然しそれでは「足止めは要るだろう。なに、危なくなったら逃げるさ」……はい』
「……と、言うわけだ。お二人さんとの話は、もう少し後回しに成るよ」
「……迷惑を掛けるわ」

忌々しそうに言うアリサの足元に、ベルカ式の三角形魔法陣が展開される。
WRからの転送魔法――回収用にリインが発動させた物だ。

「それじゃ、また後で」

そういい残して、魔法陣の元にバリアを残しつつ、無音拳の放たれた方向へと陣取る。
今回はユニゾンもしていないので、正体を隠すために軽く幻術で年齢をごまかし、更にフェイスガードで顔を隠す。こうすると最早TSセイバーオルタ意外の何でもない。


――装飾も成した。では、コレ以降は厨二病の時間だ。



「――はぁ、間に合わなかった、かな」
「うむ、一歩遅かった――いや、強襲ではなく奇襲にしていれば、あるいは間に合ったかもしれんが。判断ミス、だろう」
「未だ未だボクも未熟って事か」

トンッ、という軽い音と共に、いつの間にか目の前に現れたダンディーメガネ。
彼は苦笑いを浮かべ、懐から取り出したタバコに火をつけると、美味そうに煙を吐き出して見せた。

「……あの二人は、何処へ?」
「我々の拠点へ招待した。というか、彼女等から要請があったからこそ迎えに来たのだが」
「我々? 彼女たちが? ……君は、彼女たちと如何いう関係なんだい?」
「悪いが答えかねる」
「………………」

しまった口が滑った。変なところに気の付く男、無音拳の使い手、デス・メガネ。
その正体は、嘗ての赤き翼に組した、少年探偵団が一人。タカミチ・T・高畑。
ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグの弟子にして、咸卦法、無音拳の継承者。
なるほど、ちょっと前まで現実世界で此方の末端をちょろちょろと嗅ぎ回っていたと思うのだが、どうやら今回スプリングフィールド姉妹発見に際し、現在動かせる最大戦力を持ち出してきたか。

「――彼女達を、此方に引き渡してもらえないかい?」
「断る。MM配下の人間に、スプリングフィールドの人間を渡せば悲惨なことになるのは目に見えている」
「いや、ボクらは……」
「例え近衛翁の配下であろうと、自ら考える事を放棄した英雄の残り滓には渡せんよ。彼女等は我々に救援を求めたのだから」
「何故ボクが学園長の……いや、考える事を放棄してなんて……!!」
「では何を考えていると? 自らが英雄になろうとするわけでもなく、嘗て見た英雄の像をその子供に求め押し付けるか? アンタは完全なる世界の後始末をしていると言うが、何故完全なる世界が存在したか考えたことがあるのか? そも、完全なる世界は完全に滅びたのか?」
「……何故そんな事を……君はまさか……!?」
「違う。問題は其処じゃないだろう脳筋め! そんなだからMMにいい様に利用された! そんなだから今こうして近衛翁にいい様に利用される!!」
「き、君は一体何を言っている! 一体何を知っているというんだっ!!」

……っと、揺さ振りはこんな所でいいかな?

俺が原作キャラで嫌いな奴の上位に入る人間――高畑・T・タカミチ。
コイツは赤き翼に所属し、ガトウからアスナを任されたにも関わらず、結局アスナをネギと関わらせ、魔法世界のイザコザに再び関わらせるわ、そもそも本人の命題である完全なる世界の始末は満了できてないわ、とにかく不満だらけ。駄目な大人そのものにしか見えない滓だ。
英雄が必要だというなら何故自分が成ろうとしない。何故何も知らない子供にその責務を押し付けようとする。

そんな想いが怨嗟交じりに口から零れ出たか。
敵意の確りと乗った言葉に、高畑氏は既に顔色を青く染めていた。
ふん、偽善者め。

「――少しだけ付き合ってやろう。今から五分だけ相手をしてやる。俺を捕まえたければ、その居間に俺を制圧して見せるんだな」

言いながら、アルクを構えて魔力を開放する。
吹き荒れる暴風雨のような魔力に、思わず、といった様子で一歩後ろへ後退る高畑。
……おいおい、この程度でビビッていては話に成らないんだが?
俺はこの最大出力を常時安定して放出していられるんだけど?

「……さぁ、英雄の残り香め。未だ輝けるというなら、貴様の力を魅せて見ろ!!」
「ボクは……ボクはああああっ!!!!!!!!!!」

そうして、轟音と共に激突する。
こうして再び、魔法世界での対原作キャラ戦、その二幕が、誰も知らない荒野の果てで開始されたのだった。








……後に、テンションが上がりすぎてのたまったこの厨二病台詞に悶絶するのだが。続きを読む
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