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10 終わりの始まり

2012.07.16 (Mon)
「やぁやぁ。漸く見つけたよ。君たちだね、ボクの作った箱庭で勝手に遊んでいたのは」

それは突如、空間から滲み出すように、沸き立つ泡のようにして現れた。
見た目はスーツに実を纏ったキャリアウーマンの様で居て/その凶悪なる炎の三目は見る物全てを呪い愛する魔王の姿であった。

「よう、初にお目にかかるよ、混沌」
「――リアル(胸が)膨れ女」
「あははっ、この姿は九郎クンが喜ぶかなぁ、と思って取ってるんだよね」

そういって手を口に当てて笑う混沌。
厭違う。その姿形こそ笑って見せているが、その実は此方を興味深そうに観察していた。

「ふむ、何時気付いた?」
「さて、何時だったか。数億周前くらいだったかな。面白い存在がいて、折角だから物語に正式に組み込もうかな、なんて思ったのに、不思議な事にボクの意図/糸を意にも介せず自由に振舞う存在が居る、って気付いたのは」
「――ドクターの件か」

ドクター……ドクター・ウェスト。
彼の元で学んだ事は、間違いなく昨今の俺の糧となっている。
今の俺を形作る上で、彼の元で学んだ事はとても重要な部分だろう。

だがしかし、彼は原作キャラ。物語の重要なキーパーソンだ。普段はとてもそう思えないが。
悪では有れど、唾棄すべき邪悪でもない彼等。欲する物を求めて必死に足掻く彼は、ある意味最も尊敬すべき“人間”なのかも知れない。
しかし、彼に接触した事で、ナイアルラトホテップに勘付かれてしまったという点を鑑みれば――いや。
彼の元について、目立ちすぎた。俺の責任、か。

「んじゃ、どうして此処が解った?」
「簡単なことさ。キミは最後に白の王と黒の王の道を使い、次へと移動していた。だからこそ、此処で網を張っていたのさ」

予想以上に時間は掛かったけどね、と混沌。
成程。――過去転移ルート、次の周のスタートが楽に成るからと使いすぎたか。

そう、此処は門の中。門にして鍵たる神、ヨグ=ソトースの回廊の一角だ。
遠目に見えるのは魔を絶つ剣とリベル・レギス。
その戦いは若干デモンベイン不利で進んでいる。これは――駄目だな。

戦いはまだまだ続く。物語の終わりはまだまだ先が長そうだ。

「それで、俺に何の用だ、混沌」
「またまた、解ってるんだろう?」
「言葉による意思疎通は、人の重要なコミュニケーションツールだ。その姿をしているなら、ちゃんと言葉を使え」
「おやおや、中々厳しいねキミは。まぁいいさ。用件は単純に、退去勧告だ」

そう言ってニヤニヤと笑う混沌。ああ、俺にコイツを殺し切るだけの力が在ればなぁ。

「当然ながら、断る」
「だよねぇ。ま、そうなれば当然力尽く、って事に成るんだよね」

にこりと、ゾワリと。
まるで花が咲くように/沸き立つ死臭のように微笑む/微嗤む〔邪神〕。
虹色にして無色の狭間を染め上げる漆黒の混沌。
全てであるが故に何者でもない怪物が、此方に向けてワラッていた。

「は、大人しく倒されるほど俺は大人しくも無いぞ、混沌」
「どこぞの魔導師ではないですが、踏み潰すぞ、邪神」

「ハ、ハハ、ハハハハハ!! 懐かしいなぁ、彼を持ち出すなんて。ああ、懐かしいな。まさか人にして魔導に身を落とした『だけ』の分際で、ボクの黒き王を千日手にまで持ち込んだんだから。けど、まさかあれを観測して記憶していられるなんてね」

フンと鼻を鳴らしておく。ち、カリンには後でオシオキだな。敵に余計な情報を渡す必要は欠片も無いんだけど。
――まぁ、いいか。

「来い、クラースナヤ」

呟くと共に現れる深紅のデウス・マキナ。
何者でもないが故に此処にある深紅のそれ。
その内側に収まると共に、普段は押さえ込んでいる力を稼動させる。

「ほほぅ、コレは中々。中級神
ダゴン
くらいの力は在るんじゃないかい?」
「ふん、催しはまだ始まったばかりだぞ」「精々愉しめ、邪神」

言いつつ、右手に籠めるのはクトゥグアの魔力。
無作為に放つのではなく、只一点に凝縮する事で、その拳が持つのは無限の熱量へと変化する。
レムリアインパクトの極点、圧縮消滅するその直前の熱量にも等しいほどのそれ。それをむき出しのまま、邪神へ向けて殴りつけた。

ニャルラトホテップはといえば、それを余裕の笑みを浮かべて片手で受け止め――ようとして、思い切り叩き飛ばされていた。

このチャンスを十全に生かすべしと、即座に魔導師の杖を召喚。

「スペル・ヘリクス!!」

――大地はその偉大なる懐を母とする。
――大海はその広大なる海原に命を抱き。
――生まれ出でた風は空を走り。
――炎によりて世界は廻る。

「四門神獣形態っ!!」

土、水、風、炎、其々のエレメンタルを調和する形で配置し、“杖”により撃ち出す。
純粋な西洋魔術では相克しか起こさないコレを、東洋思想をもって制御する。
己が一撃必殺、命の審判。

最初の一撃で思わずか自らの本性をあらわにしていたナイアルラトホテップは、迫り来るその一撃をなんとか受け止め、然し受け止めきれずに咄嗟に身をかわすことでその直撃を防いで見せた。

『ば、ばかな!? たかが人間がこのボクに傷を付けただとっ!? いや、それよりも何故人の攻撃がボクに通じる!?』
「ざまぁ見晒せ!!」
「貴様はそうやって上から見下していろ。その間にお前は滅ぼす」

俺には物語の力なんて無い。

世界のバックアップなんて物も無い。

在るのはただ無限に繰り返される時間と、最高にして最愛の我が相棒。

そして俺にあるのは、只我武者羅にぶつかるという選択。

「コレで解ったとは思うが、此方にはお前を滅ぼし得る力が在る」
「そして、喧嘩を売られて無傷で返すほど易しくも無い」
『ば、馬鹿な。クトゥグアやシュブ=ニグラに、それにこれはハスターとクトゥルーの魔力!? なんであの2柱が一人の人間に、しかも同時に力を貸す!?』

力を籠めて、混沌を睨みつける。
流石の俺も、此処であの邪神を滅ぼしきれるとは考えていない。出来て精々力の半分を削ぐくらいだろう。

「あまり人間
ヒト
を無礼
ナメ
るなよ、混沌」
「言ってみたかったんですね解ります」

でも、それで十分だ。俺がこの世界に与えた影響と、俺が削れる邪心の影響は大体同等。
ならば、俺の成すべき事は只一つ。

「行くぞカリン」「ハイマスター!」

俺、カリン、クラースナヤ。今此処には揃いうる限り最高の三位一体がある。
今の俺達に、勝てない存在なんて在る筈が無い。

――カチリと、頭の奥で、その瞬間何かが繋がった。
瞬間、理解した。成程、これが俺の本当のチートか、と。
そうして同時に理解する。コレが原因でループしていたのか、と。

『なっ、馬鹿な!? 何だその力は!? ボクの知らない力!? ――いや、違う、ボクはそれを知っているぞ!! けれど、そんな、まさか――――穴か!?』

高まる余りの力の顕現。波打つそれは、俺/カリン/クラースナヤの境界を曖昧に――否、本当の意味での三位一体をその場に顕現させて居た。

『そんな、馬鹿な!? なんでこの、僕の管理するクラインの壺の中で、よりにもよって『穴』だとっ!!?? 人類の極地、此処ではない何処か、無限にして零!! たどり着いたというのか、よりにもよってこのクラインの壺の中で、僕の生み出した箱庭で!?』

「誰が言ったか、この世は全て胡蝶の夢。貴様の敷いた悪夢の庭であれど、其処に生きるのは今日を生きる人々。為らば其処には希望の夢が響くは必然」
「其処に命の唄が響く限り、私たちに終わりは無い」

そのまま驚く混沌に、クラースナヤの右手の一撃を叩き込む。
混沌は咄嗟にそれを片手で受け止めようとするのだが――ガツン、といい音と共に混沌の化身は勢い佳く吹っ飛んだ。

『な、何故!? たかが神の影風情が!?』
「ブァーカ!! これを只の神の影
デウスマキナ
と同一視してるんじゃねぇよ!」

何せこの機体――というか俺は、旧支配者らから直接祝福やらを受け、それを取り込み進んだ俺の
・・
影だ。つまり、幾柱もの神の影と言葉を重ねて顕現しているこの機体は、下手な神よりも格上であり、同時にコイツは俺の写し身。例え神様だろうと消せはしない。

――で、あえてわざとらしく盛大に格好つけて混沌を見下してやった。

「要するに、イレギュラーザマァwww」
「邪神――NDK
ねぇどんなきもち
?www」

『――ふ、ふふふ、あははははは!! まさか、真逆
まさか
真逆
まさか
、こんな展開になるなんて』

頭痛を堪えるような、そんな姿が幻視出来そうな混沌の声。
ふふふ、流石の混沌といえど、この超展開に精神的ダメージは隠しきれまい。
混沌に精神攻撃は意味があるのかって? んな事趣味以上の意味は無い。



「さぁ、騙り逢おうか、混沌――主に暴力言語で!」
「SAN値直葬してやんよ!」
『じゃ、ボクはあえてこう言おう――こんなの絶対おかしいよ!!』

そうして、時空の片隅、ここではない何処かで。
方や黒き混沌が名伏し難き叫び声を上げ。
方や赤き喜劇の紡ぎ手が咆哮を上げた。

この死すら死せる時の狭間、その戦いが何時まで続くのかは、両雄そのどちらにも知れた事ではなかった。続きを読む
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09 魔術的錬金術と見えてきた終わり

2012.07.16 (Mon)

佳く解らない周目。



今回は色々錬金術の造詣を深めるべく、色々な実験を行う周とした。
もう、これがとても面白い。
この世界の錬金術のレベルはそう高いといえるほどの物でもなかったのだが、どうやら俺と相性がよかったらしく、気付けば手合わせ練成とか出来るようになっていた。作品が違う。

先ず、錬金術と言うのは、物質の形を操る、と言う技術ではない。
錬金術と言うのは、無から金を生み出し、不老不死を求めるという事を主題とした技術だ。

で、手合わせ錬金――まぁ、鋼な錬金術師の話。
アレの手合わせ錬金とはつまり、合わせた手と言うものを術円と過程し、その中で循環させた術理を手を当てる事により添付/起動させる、と言うものだ。
世界観が大分違う上、真理なるものに触っても居ない俺にそれが可能かと言うと――少し手間取ったが、なんとかこれを成立させることに成功した。

というのも、先ず手を合わせる、と言う工程。此処に目を付けた。
手を合わせるという事は、円を描くという事。此処に俺は、更に呪術的な意味合いを持たせるべく、何時ぞやアヌスと共同研究していた略式儀式魔術を応用してみたのだ。
手を合わせるという行為に、術理の円環という意味に加え、精神統一を初めとする各種呪術的ブースト作用をはじめとした色々を添付。モーションと結果さえ同じなら、過程に関する術理はべつに如何在ろうと問題あるまい。
そうして組み上げた術理を用いて、物質の素材構成/高質を変質させるという現象に成功したのだ。

まぁ、真理なるものは佳くわからないが、ある意味俺は生と死
それ
を何度も体験しているわけで。ある意味での極地の一つを何度も経験している所為か、感覚的には理解できているのだ、ソレも。

そうして錬金術を儀式化し、マニュアル化した辺りで今周の終わりが来た。
何となく最近破壊ロボの活躍頻度が減ってきたなー、と思っていたら、いつの間にか平然とデウスマキナが暴れまわる都市アーカム。そうこうしている内に夢幻心母が浮き上がり、大いなるCことクトゥルーさんの劣化版が召喚された。

いや、ほら。怪物版と直接顔を合わせてると――あの程度ではねぇ。一般人が直視しても、SAN値が若干削られる程度まで劣化したクトゥルーなんぞ見る影もない。

「いえ、普通は劣化版でも直視すれば狂気に捕らわれます」
「えええ、あの程度で?」
「はい。マスターはチートですから」

下手糞な顕現をさせられたクトゥルー御大を眺めていると、何かカリンにチート認定を受けた。
うわぁ、ちょっと嬉しい。
あの、歴史的知識しか持ち合わせていなかった頃。未だ俺がただただ転生を繰り返すただの人間だった頃から考えると、確かに今の俺はチートといって差し支えない。

「駄菓子菓子
だがしかし
! コレは覚えておいてくれ。俺のチートは長い時間を掛けて研鑽したもので、決してぽっとでの胡散臭い神様から貰ったチートではない!!」
「若干補正はあるみたいですけど?」
「それはアレだ。ご都合主義の神様
デウス・エクス・マキナ
ってヤツじゃないの」

ゲーム・マスターに対する免責権。ゲームに携わりながら、ゲームマスターからの直接的干渉の一切を無効化するなんていうチートスキル。
他の世界観の大半では無意味なスキルだが、このデモベ世界ではまさしくこの上ないチートスキルだ。
まぁ、俺が此処までの研鑽を積めたのも、有る意味このスキルのおかげかもしれない。

「第一、此処まで鍛えても、白の王にも黒の王にも届かないってのはねぇ」
「物語のバックアップを受けている存在に、正面から挑んで勝てる筈も無いかと」

直接彼等に挑んだわけではない。ただ、俺の頭の中、カリンの超演算を用いて、彼等との戦闘をシミュレートしてみたのだ。
そうするともう、ねぇ。
黒の王は未だいい。ある程度まともに戦ってくれるから。ただ、時間が長引くとニャルさんに勘付かれて時間を変動させられて戦闘中断、という結果が大半で、黒の王を倒すまでは絶対に行かない。まぁ、それはいい。この世界のシステムに挑んでいるようなものだ。勝てないのは悔しいにしても仕方が無い。諦めはしないが。

ただ、問題は白の王だ。アレは寧ろ積極的に挫折を経験して成長を促す為、ニャルさんは早々簡単に力を貸したりはしない。
だというのに。だというのにだ!! 何で俺の妄想なエミュレートの中出まで、早々ご都合主義ばっかり起こるんだよ!! 意味不明だよ!!
何だよデモンベインを倒したと思ったらみんなの祈りが力となってパワーアップ再生!? 何処のグリッターだよ!! 俺ぁガタノトーアか! 石化スンのかァアン!?

倒しても倒しても無限に復活し続けるデモンベイン(妄想)。当に無限ループなその妄想に、妄想の主である俺が思わず悲鳴を上げてシミュレートを中断したほどだ。

本当、あいつ等二組はマジチートだ。んで、その仕掛け人のニャルさんは鬼だ。

「――マスター」
「ん。ドクターが覇道に亡命したな」

こっそり破壊ロボの一部を駆逐しながら観測していた現状。うんうん、物語はちゃんと進行しているみたいだねぇ。
まぁ、俺の目的の為には、この物語を成立させる必要がある。つまり、ニャルさんと目的は被っているのだ。
今のところ邪魔をする心算も無いし、向うに過干渉する心算も無いのだが。

なんて事を考えながら数日。
いつの間にか死んでいたアル・アジフが復活し、何だかんだで逆十時を叩き潰し、転移するクトゥルーを追って件のポイントへ向けて走り出した。

然し、最近大十字の魔導師としての錬度が上がってきている気がする。
いや、今周に限っての話ではなく、基礎的な部分の霊的強度が、マスターテリオン並みにまで。
未だトラペゾヘドロンこそ使っては居ないが、それでもアンチクロスとの一対一なら、苦戦しつつもなんとか下せる程度にはなってきている。

これは、もしかしたら終わりが近いのかも。
振り返れば、長かったような短かったような。
――いや、長かった。うん。長かった。

一応俺の人生はイベントマップを記載して、場合にもよるが、ルートごとに要救済対象毎の救済プランが設計されている。
この救済プランは主人格が休眠している間に、ルート毎の人格が設計した物だから、後々データを煮詰め直さにゃならんのだけど。まぁ、応用は効くし。

「ま、成るようになるっしょ」
「です」

海面に沸き立つ石柱群。不出来な機械と肉の塊を生贄に捧げる祭壇と、それを対価に現れようとする巨大な外なる神。
その姿を、カリンと二人上空から眺めながら、近付いてきた終わりの予感に言葉を漏らしたのだった。

08 ホラーハント。

2012.07.16 (Mon)
デモベ世界――というか、ニトロ世界はマジヤバイ。
なんというか、リョナまでは行かずともエログロというか、エロいのがグロいというか。
デモンベインという作中でもエログロは幾つか有った。
あの死の眠りに~云々といいつつ、ルルイエ異本だとかエンネアだとかライカだとかを触手でぬっちょり頂いてるタコ神。アレなんてエロ? と言う話。
しかもグロいし。SAN値削るし。

ごほん。何故そんな話に成っているかと言うと、今回面白い事例に巻き込まれてしまったからだ。


嘗て俺が見つけた新たなルール。
大十字九郎と大導師マスターテリオンの二人の最終決戦、ヨグ=ソトースの門の中。其処を俺達が利用する事で、そのときの肉体を保持したまま、嘗ての世界へとループすることが出来る、と。

ただコレには幾つか問題点が存在し、ループして世界に落ちることが出来るのは、3つの時点に限られる。

一つ。 アル・アジフが舞い降りる730年代。
一つ。 デモンベインと大十字九郎が舞い降りる18世紀中盤
一つ。 大導師マスターテリオンが召喚される、ズアウィアの滅びの瞬間。原作の大体25年くらい前。

一つ目、二つ目はまだいい。

アル・アジフが落ちた時間など、まだまだ怪異がハバを効かせていた時代だ。
俺の個人的な意見としては、文明開化が途轍もなく待ち遠しかった、と言う点。せめて洋式便器をはやらせた俺は間違ってないと思う。

大十字九郎が落ちた時間は、とてもいい。
何せ原作の大体訳50年前。この時間軸に落ちた場合は、次の己のための蓄えが容易に用意できて、その周の俺はスタートダッシュがとても決めやすい。日本も発展させられるし。
凄いのは、民間の経済力を強化し続け、結果政治よりも企業が力を持つ日帝が出来た、という話。アレにはマジでビビッた。経済力で世界を支配し始めた日本。続きがとても気に成ったが、残念ながら寿命でぽっくりといってしまった。

大導師のに引っ張られたときは本気で焦った。
何せレムリアインパクト炸裂のど真ん中だ。最近化物染みて強くなってきているとはいえ、レムリアインパクトの直撃は流石に死ぬ。
いや、本当なら出現「時」点だけで、場所までは引っ張られない筈なのだが。うーん。



あれ?話が逸れた。
いや、違う違う。問題は、アル・アジフの出現に引っ張られたときの話。

大昔に落された魔導書アル・アジフ。彼女はその直前の戦闘で魔力を使い果たし、死んだ魔導書としてとある人物――狂人と揶揄される男に拾われる。
そうしてその人物はアル・アジフを読み、狂気の中で類稀なる力を発揮し、一つの真実にたどり着く。
この世界こそ、邪神の箱庭である、と。警戒せよ、世界は彼の謀略により傀儡と化している、と。

そうして狂人は一冊の書籍を生み出す。
狂人の見たこの世の闇、外なる暴虐、外道の知識をただ一冊の書物へと。

その男、アブドゥル・アルハズラッドの生み出した魔導書こそ、後にこの世の重要な鍵として扱われる事と成る魔導書なのだが――。




また話が逸れた。
問題は、この時代が文明開化も無い未開の時代である、と言う点だ。
日本では藤原氏がまだ中臣氏だったり天皇が政治の中心だったりする時代だ。勿論武士(?)が現存してる時代だ。
そんな時代、流石に日本に渡るのも如何かとおもうし。
正直な話、元ではあるが現代っ子な俺だ。ここまで歴史が無さすぎるのも流石に辛い。
原作の時代でも結構一杯一杯だったのだ。19世紀の日本とか、住みづらかった。
アーカムに移住してからは、覇道のお膝元と言うことも有って大分住みやすかったのだが。

で、如何しようかと考えたのもつかの間。この時代、まともな照明機器が存在せず、国と言う枠組みも何だかんだでかなり曖昧な時代。何が言いたいかと言うと闇が大きかった。

もう少し薄暗いだけで昼間から路上を闊歩する怪異に、死病として辺りを練り歩く怪異。
いや、巫撃というかホラーハンターというか、この時代にもそういう闇払いが存在しているし、最多勢力を誇る某宗教の神職も色々やっていた。まぁ、汚職のほうが酷かったが。
で、俺がやった事は簡単。フリーの悪魔祓いとしての活動を開始したのだ。

もう、来るわ来るわの依頼の数々。もういっそのことこの時代はデビ○メイクライでも開いてやろうかと何度思ったことか。それほどの数の怪異が表れたのだからもう。
ただ、当然ながら問題も多数あった。と言うのが、某宗教だ。

此方はあちらの神を否定もせず、係わり合いに成る気は無い、と此方から明言してやったというのに、連中何を血迷ったか聖堂騎士
パラディン
を団体でこちらに嗾けてきた。まぁ、騎士といっても皮鎧で、製鉄技術も無い時代だけど。

流石に頭にきて、バルザイの偃月刀片手に大暴れしてやったのだが。
凄いねこの時代。未来では殆ど現存していなかった信仰系の魔術を使ってきた。
神に対する祈りという一種の精神とリップにより、自らの精神力をブースとさせ、更に神の代行者を名乗る事により、控える信者の信仰=魔力を自らにプラスしてブーストさせやがった。

地力としてかなり人間から逸脱している俺だが、流石にこういう類の人間を相手にするのは怖い。
ほら、言うじゃない。化物を殺すのは何時だって人間だ、って。

俺はまだ人間の心算だが、「幾ら自称しようが正真正銘化物だ」なんて言われるのは流石に傷つくし。
とりあえず連中を叩き潰して、姿を晦ましたわけですよ。

そうしてヨーロッパを歩き回っている最中。

漸く本題に戻るのだが、此処で見つけた小さな村。コレ幸いとその町を訪れた俺なのだが――。





「ふむ、悪魔へのイケニエねぇ」

訪れた村。そこは、妙に闇の気配の濃い村だった。
人々は妙に疲れた様子で、必死に生きているであろうにその村の影は妙に濃かった。

訪れた時間は遅かったものの、運よく宿を一室取ることに成功。
大分金はぼられたが、この時代だ。多少は仕方あるまい。
そうして訪れた宿で、宿の女将に尋ねたのだ。どうしてまた此処まで空気が暗いのか、と。

「それはね、またこの村の若い子供が、ヤルダバオトのイケニエにささげられたからさ」

曰く、この村は少し前までは、極普通の漁村であった。
然しある日を境に、徐々に村の海はアレ続けるようになった。
で、ある日突然ふらりと現れた男がこう言い放ったのだ。「この村の海は呪われている」と。
実際、少し離れた海はそれほど荒れても居らず、この村の近隣の海だけが酷く荒れているのだ。
その男曰く、この海の嵐を抑えるには、ヤルダバオトにイケニエをささげ、その怒りを静めてもらうほか無い、と。

で、村では月に一人、村の子供を一人ずつ生贄に出す事になったのだ、と。

うーわー。また古典的な。
しかもヤルダバオトって偽神の名前だっけ? なんとも適当な。もうちょっと名前凝れよと。

で、折角なのでその晩、こっそりとその村の生贄の祭壇なる場所に足を踏み入れたのだ。
ジメジメとした、いかにもクトゥルー系の祭壇らしい雰囲気を放つその場所。
闇の臭いの濃いほうへと脚を進めて、そうして見つけた一つの小さな祭壇。
どうやら其処は海底近くと繋がる地底湖らしく、祭壇の周囲を囲うように水が満たしていた。

で、問題はその祭壇の中心。
生贄と思しき少女が、四方八方を触手に囲まれ、ニュッチャニュッチャと卑猥な音を立てる触手に嬲られていたのだ。


《おっと詳細な描写はしないぜ。これ以上は検閲対象だ》

――何故か唐突に突っ込みを入れるべきだと、俺の全本能が叫んでいるが、流石に此処でそれをすると奇襲をかけられない。
こっそりとある程度近付いて、バルザイの偃月刀を連続鍛造。宙に浮かべて投げ付けたそれは、見事に触手をバラバラに引き裂いた。

「ひ、ひいいいいいい!!??? や、ヤルダバオトがああああ!!!???」

突如響き渡るヒステリックな叫び。何事かとそちらを見ると、其処に居たのはローブに身を纏った「いかにも」邪悪な魔導師のすがた。
もう少し凝ってくれよ、と色々ゲンナリしつつ、この時代ではまだアレは流行の最先端なんだろう、と無理矢理自分を納得させて。

とりあえず、粘液まみれでレイプ目の少女を回収し、如何したものかと考えていると、カリンが擬人化して手早く少女に手当てをしてくれた。

「マスターに任せては、結局被害が大きくなるだけですし」
「チョイ待て。如何いう意味だこら」
「ペドフィリア」
「此方を指差すな!」

とりあえず、少女の事はカリンに任せて、バルザイの偃月刀一つ手に魔導師に向き直る。

「よう、連続幼児レイプ魔」
「ぐ、きさまああああああああ、私が神へといたる神性な儀式をおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「あ、そういう手合いなわけ」

まぁ、佳くある話だ。
神に生贄をささげる事でその力を分け与えられ、最下級の神の力を得る、と言うもの。
まぁ、最下級とはいえ人間のレベルで図れば破格だからなぁ。

「はいはいわろすわろす」
「貴様あああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

そんな叫びと共に魔導師から放たれる青い波動。あー、水妖の気配が滅茶苦茶濃い。
クトゥルー系かと思ったら、少し違うのかな?

ぱしん、と音を立ててはじけ飛ぶ青い魔力の固まり。

「ぬあっ!?」
「俺に四属性は通じんよ」

どちらにしろ、何等かの属性系の魔術だったらしく、俺に届く前に加護の守りに弾き飛ばされてしまった。

因みに、この世界で最も多く出回り、ホラーハントに利用されているのが、儀式魔術。
何等かの武器を呪具に見立て、儀式と言う過程を通して怪異を払う物だ。例えば銀の弾丸やイブン・ガズイの霊薬を用いた兵装などがコレに該当する。
利点としては少ない魔力でも運用が出来る点。不利点は消耗品であるため戦闘継続に限りがある事か。

次に多いのが、属性魔術。俗に言う精霊魔術とは少し違うのだが、大体似ている。
これは自らの魔力を用いてマナを集め、集めたマナを属性変換――つまり既存の法則に存在する攻撃的なエネルギーとして利用する、と言うものだ。
魔力はエネルギーではあるが、物理干渉が難しい。そこで、魔力を既存のエネルギーないし現象に変換することで、わかりやすい“威力”として扱う事が出来るのだ。

今回の相手、件の魔導師の扱う物は、どうやらこの俗世威魔術だったらしく、物理的干渉といえど属性に縛られている限りは俺に技が届くことはありえない。

「さて、それじゃ、お前は早々に滅びろ」
「な、何故邪魔をするうううううううう!!!!! 貴様も魔術師ならばわかるだろう!! これさえなせれば、俺は至高の存在に至れる!! その娘を最後の生贄にささげる事で!!」
「理屈は理解できる。――が、興味が無い。第一俺が気に食わない。以上、抗弁終了」
「きざまあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

さてと呟いて、右手にバルザイの偃月刀を鍛造する。
これこそが魔術、魔導師として目指すべき場所。あるべき世界を捻じ曲げ、己の望む世界をその上に描き塗りつぶす。外道の知識を用いた“魔”の術。

此処には何も無い。いや、無かった。が、事実としてバルザイの偃月刀は此処にある。
いまこの瞬間、バルザイの偃月刀は此処にあった事に成ったのだ。

「炎熱術式添付――炎に抱かれ眠れよ邪悪!!」
「おのおおおおおおおおれえええええええええええええええええ!!!!!!!!」

何処の銀河南無だよ、等とおもいつつ。魔導師は此方の放った“燃やす”という概念の炎に焼かれ、徐々にその姿を失い――

「-----aaa----------Iaaaa----------IA! Ia! Basatannnnnnnnnnnんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!」
「な、しまっ――!!

咄嗟にその場を飛び退き、カリンと少女を回収してもう一歩飛び退く。
祭壇を中心とした円形の湖を囲うように、更に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

「ちょ、これは!?」
「神の召喚術式――但し魔力の不足による一部召喚かと」
「それでも十分脅威だ!!」

見れば件の魔導師は、先ほど放った炎により完全に消滅したらしかった。――くそ、最悪な置き土産だ。

「逃げるぞカリン」
「了解」

即座にカリンを身に纏い、マギウススタイルへと姿を変え、ページの翼を用いて洞窟の中を滑空する。
大慌てで洞窟を抜け出したその背後。近寄る触手を咄嗟に鍛造した偃月刀で叩ききって――。

「ち、何だよコイツは!!」
「バサタン、と呼ばれていたようですが、詳細不明!」

それは、今まで見たことの無いタイプのグロい触手だった。内蔵の継ぎ接ぎで出来たような触手に、蟹の甲羅のような装甲が所々に見えている。
アレで殴られれば相当痛いだろう、等と考えつつ、アレを吹き飛ばすにはこの状態では不利と判断。

「カリン、やるぞ」
「了解!」

頷きあって、魔力を高める。滅ぼす力が足りないならば、滅ぼす力を呼び出せば良い。

「――機神召喚!!」

天に浮き上がる魔法陣と、其処から呼び出される一機の赤い機体。
全長60メートルもありそうなその機体。クラースナヤ。腕を組んで現れたその機体は、伏せた目を突如その触手へ向けてギロリとにらみつけた。
即座にクラースナヤへ乗り込み、機内から触手を睨みつける。少女はとりあえず機内に運び込んだのだが――どうも、あの触手はこの少女を狙っているらしく、此方に向けてその触手を徐々に伸ばしていた。

「自らにささげられた供物を求めているのかと推定」
「ふん、悪食め」

右手に表すのは、何時も使い慣れたカリンの記述“魔導師の杖”だ。

「一気に焼き払う!! 呪文螺旋
スペル・ヘリクス
!!」
「いあ・くとぅぐあ!!」

螺旋状に放たれる字祷子術式。二つの螺旋は絡み合い、その中央に無限の熱量を生み出していく。

「――神獣形態!!」

轟音と共に放たれる白い光。獣の咆哮にも感じられたソレは、問答無用で触手を焼き飛ばすと、そのまま洞窟のあったであろう地形へと直撃し、その埠頭の在った場所を消し飛ばし、海底に小さなクレーターをあけていった。





「ベネベネ。清掃完了」
『埠頭ごと消飛ばすとは。まさにダイナミック清掃』
「ハハハハ、こやつめ」

久々に全力を出した所為か、少しテンションが高い。
何せ今まで、まともに大技を出せるような展開が無かったからなぁ。
クラースナヤを扱うようになってからは、本編中では破壊ロボを使っていたし、それ以外の場面ではクラースナヤを必要とする程火力を求めもしなかったし。

「――ゥゥッ」
「っと、そうそう忘れてた」

コックピットの中に響くその声。先ほど助けた祭壇にささげられていた生贄の少女。
慌ててクラースナヤを地上に降ろし、少女を抱えて地上へ降りる。

「カリン、問題は?」
「ありません。強いて言うなら、この子は才能が有りそうです」
「才能?」

言われて、改めて少女に視線を向ける。但し、今度はただ見るだけではなく、確りと根性を入れて。

「――成程」

薄らと香る闇の気配。オカルトという分野において、この上なく好まれる資質。
成程成程。あの魔導師がこの少女を最後の生贄にと望んだのも理解できる。
この少女の持つ闇の素質、言ってしまえばC計画における“月の子”にこそ及ばないが、一般的な魔導師のソレと比べても、なんら遜色のないほどの物を持っているように感じる。

「これは――事情を説明して、アーカム送りだな」
「はい。――田舎漁村哀れ」
「だな。どちらにしろ村の若い子は居なくなるわけだし」

とりあえず俺がすべきは、この子に対する事情説明、この子を村につれて帰る、村の人間に事情説明、この子をアーカムへと連れて行く、と。そんなところだろう。

「やったから、といって大局が変化するわけでもありませんが――」
「それでも、やらぬ善よりやる偽善、ってね」
「Yes,Master」

苦笑するようににこりと笑ったカリン。
そんなカリンを引き連れて、回収した少女を背負い、とりあえず村へと向かうのだった。

07 つまり、胎動とか強襲とか

2012.07.16 (Mon)
もうよく解らない周目。

最近、面白い現象が発覚した。
俺は基本的に、死亡転生によるループ移動を行っていたのだが、どうもそれ以外にループ移動の方法があった様だ。

というのは、デモンベインとリベルレギスの最終決戦直前。クトゥルーを生贄にヨグ=ソトースを召喚し、海洋上にゲートを開いたあのシーン。
あそこで、偶々ドクターの協力者をやっていた俺は、何時ものダンボールにのって覇道の艦隊を援護していた。
あまり派手な活動をしてしまうと、ニャルさんに目を付けられるので、精々ダゴンを散す程度にしか活躍しないが。
幸い俺にはクトゥルーの加護なんてものもある。直接召喚されたクトゥルーの支配力には流石に劣るが、それでも向こう側からの積極的な攻撃は嘗てに比べると大分減っている。

然しそんな中、ダゴンを散している内に、いつの間にかダンボールは周囲の艦隊から徐々に孤立していた。気付いたときには、いつの間にか石柱群のすぐ近くへと引き寄せられていた。

これは拙いと慌てて反転したところ、丁度ダンボールを門に押し込むような形でダゴンに体当たりを食らった。
慌てたのもつかの間、今度はダメージを受けた機体が盛大に暴走を始めた。

強い打撃を受けた影響か、ダンボール内部に設置された魔力コンデンサが逆流し、機体の要でもある魔力収集タービンが逆回転を始めたのだ。
タービンはつまりプロペラ。それも、ダゴンにより防護幕が壊され、むき出しになり、その上で逆回転。
つまり、タービンが、何の因果かスクリューに化けたのだ。

「にぎゃああああああああああ!!!???」

大慌てで機関停止を命じるも、ぶっ壊れた魔力コンデンサはジェネレーターまで巻き込んだらしく、どうも焦げ付いた回路が変な具合で接触、魔力収集用タービンと逆向きに直結してしまったらしい。
最早今回はコレまでかと早速諦めていると、機体はそのまますっと門の中へと突入してしまったのだ。

「ちょ、何処行く気ロボよ」
「知らん、あの世かもしれん。とりあえずあばよエルザ、ついでにドクター!!」

言いつつ、門の中に入りきった時点でダンボールが吹っ飛んだ。
まぁ、最早通常火力の爆発程度では死にはしないのだが。最低でも魔力を纏った攻撃でないと。

「で、なんだけど――カリン」
「Yes,Master 御前に」
「エセルドレーダごっこか」
「格好良かった」

マスターテリオンの走狗、愛犬などと揶揄される魔導書「ナコト写本」ことエセルドレーダ。彼女のその妄信ぶりは、同じく仕える魔導書であるカリンにも何か感じ入るところが有ったのかもしれない。

「アル・アジフの真似はしないのか?」
「――あれは萌えキャラ失格」

あー……うん。まぁ、言ってやるな。


「じゃなくて、だな」
「話を逸らしたのはマスター」
「……機神召喚!!」

話を逸らすように術式を走らせる。あふれ出す莫大な魔力に導かれ、赤いデウスマキナがその姿を表した。

うーん。
外観
ガワ
はアイオーンを魔改造した、という感じなのに、感じる魔力は完全に別物。無名祭祀書とか下手すると流血祈祷書の影響でも受けたかな?
一番似ているのはナコト写本の気配なのだが――いや、やっぱり無名祭祀書かも。

とりあえずその赤い機体――クラースナヤととりあえず名付けたその機体に身を躍らせ、即座にシャンタクを召喚する。
別に無くても飛べるのだが、シャンタクが有ったほうが安定するので。

「然し、そういえば何度も周回を繰り返しておいて、ヨグ=ソトースに突入するのは初めてだよな」
「Yes、いっつも此処に来る手前におっちんでました」
「――た、たまには生き延びただろ!」
「その場合は、世界各国で生産された破壊ロボモドキ相手に俺つえー無双してました」
「………」

デモンベインが立ち去ったその後の世界、それは、科学が台頭する魔境の時代だ。
ブラックロッジが残した、ドクターウェストの作品、破壊ロボ。各国はそれらを回収し、独自に開発を進めた。その結果訪れたのが、破壊ロボモドキが戦いあい、更には破壊ロボ対邪神なんていう場面がゴロゴロ転がる魔境な世界だった。

ま、まぁいいさ。
召喚後即座に発動させた隠匿術式。直接戦闘よりも忍んで逃げる事に定評の有る俺だ。例えこの門の内側にあろうと、逃げおおせる事に関しては外なる邪神すら欺いてみせる!!

と、そんなことを内心で考えつつ、如何したものかと機体を飛ばす。
何せ此処からの脱出は基本的に不可能。更に言うと、出口も何処にあるのやら解らない。
うーん、如何しようか。

「ダウジングを利用してみては?」
「おぉ、それだ」

カリンの提案を即座に承認。続いてバルザイの偃月刀を召喚する。
このバルザイの偃月刀って凄いよね。浮かべて回転させると、ダウジングの針にもなるんだよコイツ。
浮かべたダウジングの針に従って幾何学模様の回廊を進むと、いつの間にか何処かの宇宙空間へと降りていた。
ふむ、どうやら太陽系の内側ではある様子なのだけれども――。

「星の配置が予測と正しければ、火星と地球の間と判断」
「うげ」

火星と地球の間。確か、アイオーンのシャンタクを使っても50時間近く掛かる距離だったとか。
その半分――25時間としても、とてもではないが俺の集中力が持たない。

「ハスターの記述を使えば?」
「あ、そっか」

そうか、そうだ。シャンタクの記述に頼らずとも、より早いハスターの記述を持ってたんだっけ。いっつも軽い移動補助か牽制にしか使わないから若干忘れてた。

ハスターの記述を使う前に、懐から取り出したソレ。
黄金色に輝き、試験管の中にたゆたう液体。
コレこそ魔術的ドラッグ。術者の魔力を一時的にブーストさせる秘薬。
黄金の蜂蜜酒!!

あっま。




そうして何とかたどり着いた地球。魔力的消耗は許容量的にはまだまだ余裕なのだが、何分途轍もなく眠い。疲れると眠くなる。これは真理だ。
で、とりあえず地上に降りて、何処か宿を取りたいなー、などと考えていたら。
視線の先で、争う二つの影。いや、此処宇宙空間だし~、などと思っていたら、地上に落ちていくそれら二つの影。

「――なぁ」
「Yes、デモンベインとリベルレギスです」
「――聞く前に答えるなよぅ」
「つーん」

べ、ベタだが可愛いじゃねーか。じゃなくて。
うーん、この光景があるという事は、つまりあれは魔を断ち切れなかった魔を絶つ剣?
という事は、この後デモンベインはアリゾナへ、マスターテリオンはどこぞに消える、と?

つまり、何か。
死以外の方法で、ループした、と。

――ふーむ。

「カリン、全力で隠密を。全魔力をそれにまわせ」
「Yes,マスター」

何も聞かずに此方にあわせてくれるカリン。デウスマキナすら消して、マギウススタイルで宇宙を漂う。
アレがあるという事は、近くに――うわ、マジでいた!!

燃える三眼。這い寄る混沌。
心底楽しそうに嘲笑するそれ。如何見てもどっか逝ってるねーちゃんです。関わりたくありません。
幸い、これが最終週と言うわけでも無さそうだ。こっそりとその場を離れ、地味に背中から地球へ向けて降下開始した。

なに、幸い此方にはクトゥグアの加護がある。
更にその上からマギウス・スタイルを身に纏い、身の回りの防備はまさに完璧。

「うーし、じゃ、行こうか」
「何処に行きます?」
「うーん、折角原作の数十年前に来たんだし、折角だから何か面白いものでも探しに行こうか」

なんて、そんなことを嘯きながら、俺達は日本へ向けて降下を開始したのだった。







正直な話、ナイアルラトホテップが「幾星霜」って数えたのは、数字を読むのが面倒だったからじゃないかなと思う周目。



面白い。実に面白い。
完全攻略したと思って積んでおいたゲームを、気分転換にやったら実は更に裏ルートが存在していたとかそういう様な気分だ。
まさか、過去にジャンプして攻略を進めるなんてルートが存在していたとは。
思わず日本経済に背後から介入して、日本と言う国の国力を急成長させてしまった。
覇道財閥がナンボの物かと言わんばかりの成長。まぁ、覇道とはあまり競合しない所為で、あまり本編には関わらないのだが。

で、俺の話。
経済に介入した後で気づいたのだが、下手したらコレ、俺が生まれる下地まで変革しかねないか、と。
うわ、やべぇと焦ったときには既に遅く、仕方が無いので開き直って更に改革を進めてみた。

で、それから数十年。俺も年をとった。
驚いたことと言うかご都合主義と言うか、この世界で俺が生活するのは中々に疲れる。
多分基盤が違うものを使っているからだろうと考えていたのだが。
その所為かは知らないが、久々に老衰で死んだ。若いんだけど老衰て。



で、転生したわけなのだが。転生したのに世界が変化していない、というのも中々面白い経験だ。

「カリン」
「Yes,マスター」

転生して、6歳くらい。ある程度自分ひとりでの行動が可能になった時点で、即座にカリンを呼び出した。
まだ幼い俺とカリンでは、流石にカリンのほうが年上に見える。うーん、頬を染めるなカリン。

早速“嘗て”の俺が用意しておいた資金の情報などを調べようとして、思わず何かに引っかかった。

首をかしげて、次いで己のステータスをチェックして、思わず頬が引きつるのがわかった。
鑑定眼によるスキル表示には表示されていないが、それでも俺にはわかる。
俺の魂が、若干ではあるが、今までに類を見ないほどに急激に変質しているのだ。

「……これは……。カリン、この状態でよく気付けたな」
「Yes,何せ、私はマスターとダイレクトに接続していますから」
「ふむ――原因はわかるか?」
「予想です。前回の魂がこの世界に来訪した事による影響かと」
「――おぉ」

成程、と理解する。

本来あるべきループとは、大十字九郎とマスターテリオン、両者が生まれた世界を飛び立ち、過去に近い平行宇宙を訪れる、と言うものだ。
大十字九郎と言う存在がループにより過去を訪れる事で、全く同じ魂が二つ存在する、という矛盾が発生する。
世界はこの矛盾を解消すべく、新たな大十字九郎の魂を若干変質させる。――より、魔の属性に高い親和性を持たせて。
ニャルラトテップはこの性質を利用し、人工的――いや、神造的に、白き王を生み出そうとしている。

今回の俺の急激な成長。もしかして、このループによる変異が俺にも適用された――?

「……面白いじゃないか」
「Yes,私も、コレまでに無いほど快調です」

ニヤリ、と笑みを浮かべる。
これは、色々挑むチャンスだ――!!

06 色々キャラ崩壊する話

2012.07.16 (Mon)

億と三千少し。


シュブ=ニグラ傘下の魔術結社と、トカゲっぽい化物を操る魔術結社が争っていた。
どうにもトカゲ側の狙いはシュブ=ニグラ側の保有する魔導書らしく、シュブ=ニグラ側は撤退戦の最中、と言う様子だった。

まぁ、基本的にシュブ=ニグラスって地属性の邪神の中ではそれほど有害というわけでもないし。
黒い豊穣の女神、と呼ばれるだけあって、奉っていれば農業の収穫率がアップしたりする。
但しその野菜を食うと若干SAN値が下がるが。それでも美味いのだ。

如何考えてもトカゲ側が害悪。そう判断して、即座にクトゥグアの炎をトカゲに叩き込んだ。
最近になると、クトゥグアの炎もかなりの精度を持って制御できるようになってきた。
適当に暴れていると、今度はシュブ=ニグラス傘下の側が反撃に移った。
いや、市街地で黒い子山羊の大群を嗾けるのはどうかと思う。耐性無い人間が――あーあー、窓に向かって叫び始めた。「窓に! 窓に!」って。
まぁ、シュブ=ニグラス側はある程度良識があったのか、撤退完了と共に黒き子山羊を召還していた。
俺はと言うと、とりあえずあのトカゲ人間を殲滅して、その中央に居た魔導書を持ったアラブ系の女性を燃やしておいた。
何か不気味な魔導書を持っていたっぽいが、俺が如何こうする前にカリンが食べてしまった。
行儀も躾けるべきだろうか……?



億と三千と少しから一周
何故かシュブ=ニグラスの教団に誘われた。
俺はフリーのホラーハンター気取りなので、お誘いは丁重にお断りしたのだが。
そしたら、何故かシュブ=ニグラスとの親和性が友好的にまで上昇していた。いや、意味が解らない。




億と3千終盤

何か寝ていたら、魂が突然どこかに引っ張られた。
何事かと慌てると、星の海を渡って宇宙の彼方に。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「あ、あわわ」

で、目の前に現れたのは、無限の熱量で形作られた獣。
いや、その正体は流石に理解できる。何せ俺、この存在の力は一番よく利用させてもらっているしい。
――という事は、此処、フォマルハウトか。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「え、あう、はい」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「あ、そですか」

意訳すると、「お前、なんか知らんけどニャルラトテップの庭で暗躍しとるらしいな。シュブちゃんから聞いたえ?」「面白いやん。ウチもあのド腐れは好かんからなぁ」
といったところか。
いや、本当にそういうニュアンスだったんだって。

で――嗚呼もう面倒い。

『いやな、今日呼んだんは、お前にちょっとサービスをやろうかな、って』
「え、ええっ!?」
『言うても、そんなでかい事は出来んよ。派手な事したらよわっちい無敵の頑固馬鹿が怒るからの』

と、炎の獣から放たれた炎が、俺の躯を覆いつくす。彼女(彼?)の炎に燃やされてしまっては、流石に致命傷になるな、と背筋を冷しつつ、然し訪れたのは予想していたような痛みではなく。

『ウチの加護や。ウチの配下は須らくアンタに力を貸す。でも、調子乗ったらあかんえ? それと、絶対あのド腐れにきつい一撃かます事。約束やで』

言われて、理解する。これ、クトゥグアの祝福か!?
もし俺にスキル欄がアレば、間違いなく「クトゥグアの加護」って出るだろうな。効果は――炎に対する親和性ってところか??

『ほんじゃーの』
「て、ちょ、あざーっす!!」

ベチン、と彼女(?)の尻尾に叩かれて、俺の身体はマッハどころか概念を超越した速度という意味不明な結果によって、地球のほうへ向かって叩き飛ばされたのだった。


「はっ!?」

目が冷めて、慌てて身体をチェックする。
何か、若干神性が強化されてるよ――。クトゥグアの加護、間違いなく稼動してる。
何せ、ちょっと睨んだだけで部屋の花瓶の造花が燃えたし。何処のパイロキネシストだよと。

――って、ちょ、ああっSAN値が!? 窓に! 窓に!
猛烈に脳裏に沸き上がる邪神の姿。こ、これは発狂してる!?
机に向い、ガリガリと手が紙に勝手に何かを書き記していく。ちょ、これ拙い!?
カリンは――何を暢気に俺の手稿を食ってるんだお前はっ!!!




結果、発狂して死亡。
其処から魂が安定するまで実に10周ほど不安定な人生を過す。




億と4千周くらい。

久々にホラーハンターとして活躍していた今周。何故か再びあの感覚に襲われた。
何事かと警戒していると、今度は何か佳くわからない神性に牽引されて宇宙を進んでいた。
――これ、ビヤーキー?
まさか、とは思いつつも、覚悟だけは決めておく。

※以下『』神性
『よ』
「――どうも」

其処に居たのは、黄色いマントと派手な王冠を被った、何処かチャラい印象の成人男性の外見をした存在だった。
う、うーん、いいのかコレ?

「大体予想は付きますけど、貴方様は――」
『んー、予想付くならいいだろ?』

予想は当ってるのねー、と胃痛を感じた。

「で、御身はこの度私に何の誤用で?」
『うん、いやな、この間偶々放火魔とシュブに連絡するよう字が有って』
「放火魔て」
『他所の住居に放火して、森一つ延焼させるヤツだぞ?』
「――御身らにしてみれば、そんな感覚なのか――」

流石に感覚のスケールが違う。ガリガリSAN値が削られてるのが解るぜ!!

『でな、二人曰く、面白い人間がいて、加護を与えてみた、って』
「あー、いやー、俺、そんなに面白いでしょうか?」
『んー、若干外れてはいるが、たかが人間があの若作りの庭で、若作りに気付かれないように潜んでいる、って状況は中々面白いとおもうけど?』
「え、まだ気づかれてないの!?」

と、思わず声を上げていた。
何せあの演出好きの邪神の事だ。俺のことはとっくにお見通しで、あえて俺を見逃しているのかと思ってた。何せ俺、基本的に大十字とテリオンの戦いには干渉しない方針だったし。

俺の方針は、合理的な被害の削減。

『んー、お前のステータスがなー』
「え、ナニソレ。ステータスなんて見れるの!?」
『んー。――あ、人間はこういうの見れないんだっけ? んじゃ、ほら』
「え、なにその「神様では常識です」みたいな対応。って、ええっ!?」

諏訪 鋼一 属性:中立・中庸
筋力 C (D)
耐久力 B(C+)
魔力 A++(A)
幸運 A
俊敏 B
宝具 ???

保有スキル
・イレギュラー EX
観測世界への堕落の印。EXにも成ると、物語の根本をも揺るがしかねない。また、物語に内在しながら『物語』のあらゆる強制干渉を受け付けない。(検閲の不可能化)
・狂気の飼い主 EX
心を犯す知識に汚染されながら、尚その狂気を飼いならす者。字祷子を扱う魔導師には必須スキル。
無限の輪廻に磨耗する魂は至玉の如く。あらゆる精神干渉から魂を守る。
・半神 C (B)
神性を現すスキル。魂が若干神格化している。魔力、精神面に影響があり、幼い身体での全力行使は自滅の元。
汚染率としては高い神性を持つのだが、人としての自意識により神格を押さえ込んでいる。そのため寿命も人間レベル。
・魔術 A
魔術の巧みさ。無限螺旋で鍛えられたもの。大体の魔術をワンアクションで行使できる。
・対魔力 B++(B)
魔力を使用した現象に対する抵抗力。半神化、および加護により向上している。
・千里眼 EX
身体的な視力のよさ。派生して透視や未来視など。二次対象に対する影響力を持つ放出系以外の『目』『眼』の名前を持つスキルの大半を使用可能となる。
・心眼(偽)A
魔導からの派生。元々持つ野生の直感。魔導師として鍛え上げられた事で、危機察知に対しては抜群の精度を誇る。
・鑑定眼 B--New!!(_from Hastur)
視認対象のステータスを確認できる。
Bは一見で相手の名前、体力、魔力を見抜き、見て得たスキル情報などは別口での閲覧が可能。
精度は高め。技術などは実際の使用する姿を確認する事で確実な情報へと更新される。
・シュブ=ニグラスの加護 A
黒き豊穣の女神からの加護。彼女を崇拝する魔術結社を助けたことから。
地に対する親和性と、怪我や病気に対する回復力、また呪に対する抵抗力の向上、耐久力の向上。
農業をすると大体豊作かつ良質になる。ただし作物はSAN値を削る。
・クトゥグアの加護 A
炎の化身の加護。シュブ=ニグラスの紹介(?)であり、まだ憎きあんチクショウに対する嫌がらせとして。よくクトゥグアの炎を利用するがためにサービスとして得た。
クトゥグアの眷属に対する優位性、炎との親和性などを得る。

宝具
・ネクロノミコンラテン語版からの再編
ネクロノミコンラテン語版を元に、古今東西の魔導書の記述を取り込み独自改変した書物。
ネクロノミコンと言うより、内容的には寧ろナコト写本に近付いている。
黒髪青目の美幼女が化身。


「なんでサーヴァントのステータス表示式なんだ!? って、イレギュラー?」
『そりゃ、ほら、アレだ。ゼロがアニメ化したから――って、うん、そうそう。そのイレギュラーってスキルが原因だな』

闇の皇太子が何か馬鹿な事を言っているが、その辺りはさっくり無視して、と。
そう言うメタ発言は混沌さんのキャラでしょうに。

『そのイレギュラー、要するにこの“字祷子の庭”の外側から来た存在が持ってるスキル。外側から来た存在には、俺達そう簡単には干渉できないからさ』

何せ文字通り法則が違うんだから、と闇の皇太子様。
成程。何か、あるぇ? なんでこんな世界観ひっくり返しかねない状況になって、俺の事情として根本的ななぞが一つ解明されてるんだろう。

「あれ? でもそれにしては俺、偶に検閲されてるというか、勝手に加筆された痕跡みたいなのを感じたんだけど」
『あぁ、そりゃお前等の世界の神じゃね?』
「はぁ!?」
『何処の神も愉快犯ばっかりだからな』

なんじゃそりゃ、と思わず言葉が零れた。――何時か、魔を絶つ剣に近づければ、その神は叩き斬る。
とりあえず、せめて、もう少し緊張感のある展開でネタバレして欲しかったような。

『んで、お前俺の力も割と使ってるから。2柱の紹介も含めて、ほれ』

そういって魔風が俺を包み込む。
――うぁ、ステータスが追加されてるよ。しかもその影響か、若干全体のステータスが上昇してるし。俊敏が一番目立つ変化かな。
・ハスターの加護 A
闇の皇太子の加護。全ての魔風は我と共に。風との親和性向上。また風属性に対する強い影響力。
更に魔力を消費する事で機動力を向上させることが出来る。



「良いんですかね?」
『いいんだとも。所詮俺達は邪神だぜ?』
「いや、自分で言うのもどうかと」
『崇拝してくれるやつにはちゃんと力を貸すし、コレはソレとは別口。俺達の娯楽の一環なんだから』

成程、と頷く。
つまり、俺に力を与える事で、どの程度あの混沌の庭の引っ掻き回せるか、という事なのだろう。
うーん、俺、それほど暴れる心算は無かったんだけどなぁ。
クトゥグアと約束した、混沌に一撃入れる、っていうのは何とか達成するつもりだけど。

『字祷子の庭に住む邪神ってのは、大概娯楽に飢えてる。俺達がお前等知的生命体にちょっかいをかけるのって、実際娯楽だし』
「ちょ、ブッチャケた!?」
『だって、考えればわかると思うんだが、俺達がお前等に力を貸して、一体何になるよ?』
「し、信仰とか」
『人類なんぞよりよっぽど信仰してくれる奉仕種族は宇宙中に居るが? 第一、信仰ってナニソレ美味しいの?』
「邪神がそのネタ使うなや!!」

い、いかん!! ついつい突っ込みに走ってしまう!!
もうやだなにこれ。シリアスブレイクとかカリスマブレイクとか、そういうレベルの話じゃないぞ!?

『ま、そういうわけだ。俺からのサービス、有効に使えよ』





そうして目が覚めると、身体が静かに風を纏っているのを感じ取った。うへぇ、本当にアレの祝福っぽい。
何か鑑定眼スキルも実装されてるし、――って、んぎゃあああああああああ!!!!????

突如頭を襲うカオス。余りの痛みに発狂すら許されないそれ。そうして次に襲い掛かってきたのは、肉体の暴走。邪神を直視し、あまつさえ鑑定眼なんてスキルまで与えられてしまったのだ。
邪神を鑑定する――何その自殺行為。

「ぐ、お、おのれ邪神んんんん――」

頭の中の狂気を、頭から押し出すかのようにして、再び俺はペンを手に取る。
そうしてそのすぐ隣、ニコニコといつの間にか擬人化して待機するカリンの姿。心配して欲しいな、なんて思う俺は我侭なんだろうか。
ふぅ、と小さく息を吐く。

――さぁ、行くぞカリン。用紙の貯蔵は十分か――っ!!





・発狂して死亡。正確には食事を忘れて餓死。
半神化してるのに餓死て……。orz






億と4千周ちょっと。


あのセカンドインパクト(邪神という存在に対して)から数周。
邪神を生で見るという経験を人生で二度も経験したのは、そう多くは無いのではないだろうか。
まぁ、二度目と言うことも有って、数周で精神も復帰したが。

とか思っていたら、また引っ張られた。
今度は誰だよともう憂鬱としながら視線を上げると――。

「うげ」

思わず声が出た。目の前に居たそれ。タコのような緑のおどろおどろしく狂気を司った神である怪物であり旧支配者たるCCCCCCCCCcつうっつるうるううるるるるる―――再起動。
――精神防御網再構築。
――構成完了。

「――ぶはぁ!!」

慌てて、ソレから眼を逸らす。
危な。危うくSAN値を削りきって死ぬところだった。SAN値減少による死は周回を経て後を引くから厭なんだよなぁ。

「――眼を見ぬ失礼をお許しいただきたい。偉大なるCよ、卑賤な人間である俺に、一体何用か」
『――シュブ=ニグラス曰く。お前は面白い駒であるらしい』

眠たそうなニュアンスで、ぼそぼそとそんなことを言うタコの化物。
と、途端強烈な潮の香りが身を包んだ。何事かと慌てるが、身に沁みる神気に、真逆と慌てて己を鑑定する。
――うわ、クトゥルーの加護て。
水及び腐食を初めとする状態異常系に対する耐性、海というフィールドにおける適性向上などなど。
ステータスも、魔力がEXになって幸運が――マイナス補正付いた!?
ぐ、ぐぅぅ、さすが神話のタイトルに名を馳せる邪神。祝福でマイナス補正つけやがった。
と、俺に祝福を与えたクトゥルーは、何処か満足げな、それでいて眠そうな声で小さく頷いた。

『――金ピカには――負けんよ――――――』

金ピカって誰だ。英雄王でも居るのか、と思わず突っ込みそうに成ったが自重した。
どうせクトゥルーが敵対するって言うと、闇の皇太子だろうし。
確かあの二柱って、シュブ=ニグラスを挟んだ三角関係なんだっけ? くわしくしりません。



目が覚めて、何時も通り発狂。
今回はわかりやすい人型を取ってくれていなかった所為で、物凄くSAN値が削られた。
然しまだ慌てる時間じゃない。何せ俺は此処数回邪神に召されてSAN値をガリガリ削られていたのだ。
もう大分削られなれた。

「さて、カリン」
「はい。にー様」
「……それはバカンスの時だけ」
「じゃ、ダディー?」
「そりゃハヅキちゃんのだ」
「イエス、マスター」
「……あー、エセルドレイダか、リトルエイダ?」
「――最後のは普通だと思う」
「あ、うん。そだね」

あー、げふん。

「さてカリン。またSAN値直葬されかかってるのだが」
「ごはんTimeですね!!」
「――お前、何時から腹ペコキャラに……」

思わずガックリ膝を突きたくなったが、期待に瞳を輝かせるカリンを見ると、何かもう細かい事は如何でも良くなった。

「んじゃ、いくか」
「イタダキマス」

パチン、と手を合わせるカリンを横目に、狂気の吐出しにかかるのだった。続きを読む
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