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何もかもが懐かしい。

2012.03.17 (Sat)
朽葉です。
そんなわけで、InnocentSwordの投稿を開始しました。
その内続きもUpしますが、リアル事情が色々忙しいので、定期的な更新とかは――無理かなぁ?
とりあえず、態々此方まで追いかけてくださる読者様も居られるようなので、暇を見てはちょびちょび続きを書いていくつもりです。
こんな感じですが、よろしくお願いします。


追伸
InnocentSword、態々書くと面倒くさいから略したいけど、略がISじゃ振動破砕と被る罠。

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10 天才と何とかは紙一重というかむしろ完全に向こう側。

2012.03.17 (Sat)
先ず扉を開く。目の前を通り過ぎる黒板消し。その向うに見える何か。原作知識からそれが何か大体把握していたので、後足を引いて半身になり、飛来した矢を回避。そのまま上から落ちてきたバケツ(水入り)をキャッチして着地させ、仕掛けが途切れたことを確認してから教室に入る。足元に仕掛けられていたバケツ2と罠紐はちゃんと回避した。

「と言うわけではじめましてコンニチハ。諏訪鋼一です。諏訪は諏訪。難しい漢字でゴメンね?まぁ慣れれば簡単だ。ごんべんをとるって書いて諏、ごんべんのほうって書いて訪、あとは簡単鋼の一。この2学期からこのクラスの副担任をすることになりました。年齢は10で皆さんより二つ年下になります。因みにちゃんと教員免許は持ってますよ。MInTの。あ、労働法ですが、ちゃんと例外として地元の警察に提出してる(筈な)んで問題ありませんのであしからず。出張の多い高畑先生に代わり、英語を教えることになりました。まぁ出身大学を見ても解ると想いますが、本分は理系の工学系です。まぁ中学校では出番は殆ど無いので英語教師(補佐)という事に成りました。何故中学の女子高に就職かと言うとぼくにも意味不明です。学園の謀略ですとしか言い様がありません。それとも先に備えての前フリなんですかね? おっと妄言を吐きました。と言うわけでこのたび1-Aの副担任をする事に成りました諏訪鋼一です。皆々様、以後のことよろしくお願いします」

どうだ、この完璧な挨拶は。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――――えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

全員話を聞いてなかったらしい。説明のしなおしだ。ガッデム。









と、言うわけで、朝のSHLと一時間目の英語の授業は、何故か俺と1-Aとの顔合わせ――レクリエーションと化す事と成った。
何故そんなことに成ったのかと言うと、大体原作と同じ流れなので割愛する。

「そうだね、それじゃ一時間目は諏訪君との質問タイムという事で~」
    ↓
「はいはい!! それじゃクラスを代表して、この朝倉和美が質問させてもらうよ!!」
    ↓
「最後に、このクラスで気になる人はいますか?」

とまぁ、こんな感じ。
因みに最後の質問には

「そうですね、麻帆良最強の頭脳と名高い超さんと、機械系グループにこの人ありといわれる葉加瀬さんですね。ロボ研とか是非見学してみたいです」

とか無難に答えておいた。
超と葉加瀬の瞳がギラリと光った気がするのは気のせいだと思っておきたい。

「因みに先生、ガン○ムと言えば?」
「ザ○でしょう。まぁ、FⅡ型も好きですが、FZ型とか正直たまりません。頭違いもイイデスネ」
「バケツ頭カ。渋いところつくネ――ソレじゃ、一番好きなシリーズはなんネ?」
「08小隊ですかね。ビームもいいですけど、空薬莢が飛び散るあの絵は堪らないと思います」
「ふむ、実弾派か。ではやはりレールガンとか?」
「当然大好きです。というか、個人で携行できるレベルのレールガンは開発を終えました。本体の総重量が10キロぐらいで、初速が1020m/sで、50cm厚のコンクリの粉砕に成功しました。電力供給の上限に余裕を持たせてあるので、外部電力を使えばもう少し威力が上がりますね。その場合は1810m/sで、25cmの鉄板を余裕で貫通。多分戦車の複合装甲にも多少通用するのではないか、と言う感じですね。まぁ、流石に実証は出来てません」
「ロマンあるネ。先生、うちと提携しないカ?」
「此方も責任ある立場なので、簡単には首を振れません。後で超さんのところを見学させてください」
「望むところヨ」

とまぁ、そんなマニアックな会話を超さんとぺちゃくちゃ。
気づけば周囲は呆然。頭の上でお花とか蝶々が舞っていた。
――いや、龍宮さん、そんなに目をキラキラさせて――もしかしてレールガン欲しいんだろうか。

「因みに、レールガンは売らないのカ?」
「流石に銃刀法に抵触しますしね。技術的ノウハウの蓄積のために作った、という事にしてます」
「本音は?」
「無論、うちの技術者達のロマンです」
「――その分では、人型機動ロボとか既に作ってそうネ」
「解ります?」
「本当に作ってるのカ!?」

実は作っていたりする。
俺のシュープリスを見た一般技術チームが、自分達もロボを作りたいと言い出したのだ。
で、俺は当然(?)許可を出した。
結果として出来上がったのは、ロボと言うのもおこがましい外見だけのハリボテ。
なにせシュープリスには魔導理論を搭載しているのだ。シュープリスを参考に作っても、出来上がるのは巨大な鉄のプラモデル、といったところか。

当然の失敗に歯噛みした開発チームは、其処からマジギレした。

「ダメなら最初から開発してやる!!」

と、驚いた事に連中、MTの開発に成功したのだ。
世間一般では2速歩行ロボがもてはやされているらしいが、今現在諏訪グループのロボ研では既に二足歩行のロボは既に開発が終わっている。
逆脚で野山を駆けるMTとか、普通に実装されているのだ。
で、現在の連中の課題はノーマルの開発。その内NEXTも開発しだすのかと思うと、空恐ろしい物がある。
まぁ、流石にコジマとかは無理だろう。そのあたりはこの世界の魔法に手を出さざるを得ないかもしれない。
うん、そうだ。なんだったか。魔法にある念話――つまり無線意思伝達を機械に組み込んでAMSの代替手段として――

「諏訪ボウズ、大丈夫カ?」
「おっと失礼しました。ついつい次の開発構想が思い浮かんでしまった物で」
「あぁ、ワカルよソレ。ワタシも偶にあるからネ」

などとぺちゃくちゃ。
宇宙開発のために必要なのは一体何か。マスドライバーの建設は本当に必要なのか、軌道エレベーターの建造で地上のエネルギー事情はどう変化するのか。軌道エレベーターの建造に必要な資財を何処から調達するのか。出資は如何するのか。軌道エレベーターを建造する為にはマスドライバーが必須か。であれば軌道エレベーター建設後のマスドライバーの有用性はどうなるのか。マスドライバーを軍事利用される恐れは、その対策は。軌道エレベーターを建造後、軌道環の建設は可能か。可能である場合の建造法は。などなど。

「ふむ、有意義な会話が出来たネ」
「ええ、面白い意見を得ることが出来ました」

さすが未来の火星人。此方が夢を模索するような意見である事に対して、彼女の意見は出来ることと出来ない事がはっきりと判別できており、更に其処にいたるためには、と言う前提で幾つかのパターンを想定している。
思考のスタート地点とゴール地点が、彼女と俺とでは大分違う様子だ。

さすがは未来火星人。着想点が我々とは違う。





因みに、大気圏内外への輸送手段の構想を話し合っているくらいの時点で、クラスメイトの大半が目を回してしまったのは……うむ。今度初心者入門向けSF座談会でも開こうかな。

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サブタイはデモベのBGMのタイトルを元ネタにして、少し弄っているのですが……。
このサブタイに関しては弄りようが……。

09 就労の準備を手短に。

2012.03.17 (Sat)

鋼一です。何の因果か1-Aの副担任をする羽目になりました。

いやね、確かに教師としてもぐりこめればいいなと思って大学で資格をとってはきましたよ。
でもね此処は日本ですよ。労働基本法に確か15歳未満の子供の就労を禁ずるってのがあったはずだ。

--うん? 原作の神楽坂アスナ、新聞配達のバイトやってなかったか?? というか、四葉五月――超一味ってバイトどころか屋台経営してなかったか?
中学生で就労ってアリなのか???

いやね、そもそも麻帆良には一般的な小学生として転校しようとか企んでたわけですよ。
いくら教員免許とったからといって、流石に伝手もなくいきなり麻帆良に就職できる筈もありませんので。
で、色々資料を用意してたんですが、いつの間にか無駄になりました。
うーん、いいのかそれで。俺日本国籍で、小学校中退か? しかも中学行ってないとか。
いや、もしかしてアッチの学校でスキップした扱いになってるのかも--

自分の学歴が把握しきれないとか、意味不明すぎる。

若干自重しつつ、引越しの準備を進める。
やはり麻帆良に移り住むにあたり、麻帆良学園内の教師寮に住むのは必須のようだ。
事実、俺が今住んでいるのは関西圏。関東圏まで通学するのは若干辛い。
まぁ、手段が無いわけではないのだが。

「と言うわけで家から出ます。俺のこと忘れないでよ、藍?」
「だー……」

うーん、コレは返事ととってもいいのだろうか。

因みに調べた所、15歳未満の就労に関しては少しの例外があり、その条件として
・児童の健康及び福祉に有害でない。
・労働が軽易なもの。
・所轄労働基準監督署長の許可を受ける。
・修学時間外に使用すること。
などの条件を満たした場合、例外的に就労が可能となるらしい。
普通こんな条件とれねぇよと言いたいところなのだが、何故かこの麻帆良では普通にまかり通ってしまった。

いや、教育者に未成年を使うなよという突っ込みは此処では普通にスルーされる。
だめだ此処、早くなんとかしないと。
公僕まで魔法使いに支配されているとか、ちょっと洒落にならない有様になっている。
とりあえずM∴Sを経由して報告書をあげておく。これで政府が対応してくれればいいんだけどさ。





と言うわけで、麻帆良に移住するに辺り、前もってある程度の準備をやっておこうと思う。

とりあえず麻帆良に行く前に、幾つか作っておきたいものがある。
一つは水素エンジンバイク。もう一つは、対魔防護服。
いくら俺が隠蔽系の魔術を扱えるからといって、麻帆良の内側にはいって何時までもそれが持つとは思わない。
いや、一般人相手になら何時までだって隠し通す自信はある。しかし、あそこは麻帆良。“立派な魔法使い”達の巣窟だ。
いくら相手を毛嫌いし馬鹿にしている俺とて、だからといって相手を見縊る愚はおかしたくない。

対魔防護服に持たせる機能は、自身の魔力の隠蔽と、外界からかかる魔的作用に対する|抵抗《レジスト》。
無効化することも不可能ではないのだが、その場合、魔法的知識の所有を疑われてしまう。出来ればそういう事態は回避したい。

今現在の俺の立ち位置は、過去に魔法に関する事件に巻き込まれた天才科学少年、というなんともおかしな立ち位置だ。
――うん? なにかこの経歴、西博士――わが師に似てない? あの人独学だけどさ。
脳裏によぎった嫌な妄想を振り払い、早速製造に取り掛かることにした。





先ず初めに製造に取り掛かったのは水素エンジンバイク。
これからの時代のエコロジーを考えた一品だ。

何故水素エンジンがエコロジーかと言うと、燃料に化石燃料を必要とせず、水さえあれば長時間行動が可能となるから、というものだ。

水はご存知の通り、H2O、水素1酸素2となっている。
本当に簡単な化学式で言うと、此処から

2H2O → 2H2 + O2

と言う化学式により水素と酸素が取り出せるのは至極当然の事。
まぁ実際には純水は電気を通さず、電気を通す為に若干触媒を混入する必要があったりするのだがそこは割愛。
取り出した水素と酸素は何を隠そう可燃性。つまり良く萌える。いや、燃える。
というか爆発する。

この電気分解により発生する気体を、いい具合に混合してエンジンに注入。イグニッションにより発火し、化石燃料の代替物の役目を果たす、と言うわけだ。

本当に簡単な説明だが、大体こんな感じ。水素の可逆反応から電力を取り出す方式とは大分違う。
単純に水と電気で動く自動車両だ。

まぁ、この電気分解するための電力を何処から持ってくるのか、とか、電気分解して燃料として使用された水素と酸素、火を使うわけだから当然CO2とか水蒸気が出てくるわけで、それで本当に温暖化対策になっているのかと問われて首をかしげるところだとか、実は問題は色々ある。
が、まぁ俺がほしいのは商品ではなく俺が乗るために必要な代物が一台あればいいのだ。
コストとか完全無視でなら、たぶん今のウチの技術力とノウハウがあれば完成する。
鬼械神作れて水素燃料自動車作れないとか、ギャグだし。

と言うわけで、適当に設計図を引いて開発部に送りつけておく。
スーパーウェスト無敵ロボ28号のバージョン忘れたのだが、なんだったかにデモンベインの機械的側面を突いて、電撃で攻めるというシステムを持った奴が居た。それに搭載されていた錬金術の成果たるバッテリー。アレならば、長時間バイクを稼動させることも夢ではないだろう。

因みに、スーパーウェスト無敵ロボ28Go~電撃姫、アン、ダメ、痺れちゃう…除夜に響く鈴の音Ver.E~(名前思い出した。下品)は、デモンベイン相手に善戦したものの、長距離からバルザイの偃月刀を投げ付けられ怯んだ隙に、アトランティスストライクでミスカトニック河に叩き落され、その影響で機関部に問題発生、浸水してそこから電力が漏電して河ごとシビシビ(その影響で河に進入してきていたCCD(邪神奉仕種族)が全滅したのは笑えた)。
で、痺れているところをレムリア・インパクト。博士は脱出した物の、河の真ん中で痺れていたスーパーウェスト無敵ロボ28Go~電撃姫、アン、ダメ、痺れちゃう…除夜に響く鈴の音Ver.E~と痺れていたCCD一群はそのままレムリア・インパクトの重力結界に飲み込まれて消滅した。
うん、荒れは本当に凄かった。

さて、話が逸れたが、そういうわけで水エンジンバイクの製作はスタートしたのだった。

免許? 個人の所有する敷地内なら、免許は絶対必要と言うわけではないのですよ。うん。





で、次。対魔力装備。
此方はもう、機械的に如何にかするしかない。
本当なら護符とかの製造法で魔術的防御を施したいところだが。ぶっちゃけ、ある程度の強靭性をもった衣類に防護呪紋を刻めばそれで十分対魔力装備としては機能するのだ。

が、今回はその手法を取ることはできない。
何故なら俺が今から行くのは、俺が魔導師であるという事を知らぬ敵陣。
的を騙くらかすには、呪紋防護ではダメだ。魔術的な防御では、どうしても穴が出来てしまう。

そこで、だ。今回用いるのは、科学的対魔力防御。

ふふふ、コレに用いられる技術もやはりDr.ウェストの技術的流用だ。
あの変態――じゃない、天才師匠は、錬金術こそ手を出したが、結局の所根本にあるのは超科学と超頭脳。
考えても見てほしい。あの時代にあの巨大ロボだ。デウスマキナって60m級の超巨大ロボなんだぜ?
デモンベインを上回る巨体のドラム缶――じゃなくて、えっとスーパーウェスト無敵ロボ。あの時代、プログラミング系の技術なんて高が知れているような時代。俺の知る限り、プログラミング分野で最先端を行っていたのは覇道財閥かドクターくらいだ。

それでも最先端は覇道。そんな時代、博士がいかにしてあのドラム缶を――もう面倒くさいから以下ドラム缶で――を操作したかと言うと、もう本当に意味不明なことにあのギターのセッションでやっていた様子だ。
お前は何処の熱気バサラだと小一時間問い詰めたくなったが、ドクターのソレは多分熱気バサラのソレを上回っているかもしれない。
なにせアレだけ妄言を吐きながら、平然とあの破壊ロボを操っているのだ。
思い出してほしい。破壊ロボって腕4本あるんだぜ……?
普通の(とは言っても意外とマッチョな)科学者が、あんなことを平然とする。場合によっては鬼械神にとて勝利しうる超科学。
俺が弟子入りしたくなるのも当然だった。

さて、そんなわけで開発したのが、この機械式背嚢、超西式超科学万能|機械腕《アーム》Ver.Ko。
ドクターのドラム缶を一回り小さくしてバックパックにしたような形をしているコレ。しかしその実、これはあのドラム缶の前身の一つだ。
ハーネスでガッチリと身体に固定するコレ。その内側に詰め込まれた機能は、4本の機械腕をはじめ、時空間歪曲計測器やら各種計器をはじめ電子端末機能、衛星通信端末、小型核融合炉、そして何を思ったか超電磁バリアまで備えているというステキ仕様である。
若き日のドクターは、コレ一つで数多のCCDと渡り合ってきたのだそうだ。マジ惚れそうだ。

で、そんなドクターの過去の作品の復刻レストア版。
対魔力防御の目的には合うが、今一機能が足りない気もする。

首をかしげて、ふと思い出したことがある。
そういえば、ドクターの着てた全身タイツみたいなあれ。あれも確か抗魔力作用のある一級の科学礼装だったような。

えっとなんだったか。何時だったかドクターが自慢してたんだよ。
あのタイツみたいな服も、錬金術で産み出したヒヒイロカネを極細に繊維化して、それを自分の体型に合わせてぴったりと編み上げた一級品だとか。

そうそう、あの時なにか散々自慢されて、その翌日だったかに同素材の抗魔処理の施された白衣を渡されたのだ。だからマッチョ科学者のツンデレは誰得にもならないと(ry

まぁ、流石にあの白衣は手元には無い。
その事にちょっぴり感傷を感じて、首を振って頭を切り替える。
そもそもあの白衣とて、ループの初期も初期、デモンベインよりアイオーンが活躍していたような時期の話、まだ魔導師としての錬度が低く、カリンの執筆にも入れず、魔術にかわる代替手段として科学に目を付けたような、本当に最初の頃の話。

まぁ、頭を切り替えよう。

とりあえず、ヒヒイロカネの錬金は今の俺には十二分に余裕で出来る。
然し、呪紋か。魔術的な知識に関して断った俺が、なのに魔術的知識を持っているという事を知られるのは避けたい。まして俺の呪紋はこの世界の物とは様式が大きく異なっている。

――いや、それゆえに逆に勘付かれにくくなるか?

うーん、父さん家の倉庫の中で拾った魔法書に書かれていたふるい防護呪紋という事にしておこうか。
そうと決まればパパッと実行。早速家に帰ってヒヒイロカネを練成して、ソレを繊維化して被服部門に服を作って――いや、自分で作ろう。こういう代物は手作りのほうが霊的価値上がる筈だし。

なんて事を頭の中で考えて、早速実行すべく、地下の魔導実験室へと足を運ぶのだった。

08 学園都市の朝はぬらりひょんに魅入られて。

2012.03.17 (Sat)

鋼一です。
帰国してたら本当に兄妹が出来ていた件について。
母さんのおなかが大きくなっていて、帰国直後くらいに出産。洒落にならないレベルでびっくりした。
で、照れる父さんに「報告しろよ」とマジ切れの一撃を叩き込んだ俺は悪く無い筈。
因みに妹でした。名前は藍。正直、麻帆良行くより家で藍の相手していたいです。
物凄く可愛いです。
まだ面識はありませんが、雪広あやか女史があそこまで傾倒するのもわかる気がします。
あぁ、もうちょっと此処に居ていたい。






と、言うわけでやってまいりました麻帆良学園。
此処に来るのは少し迷ったのですが、然しどちらにしろ事は此処を中心に巡るわけです。
此処を観測していれば、大まかな時間の流れを観測することも出来るだろうし、メリットとデメリットを考えた場合、俺は此処に留まったほうがいい、と感じた。

さて、この麻帆良だが、かの有名な学園結界に守られているのは周知の事実――かどうかは知らないが、俺が此処に訪れた際、先ず最初に気になったのがこの結界だった。

なんというか、こうでかい結界を堂々と張られていると、いかにも「何か有りますよ!」と宣伝しているようにしか見えないというか。

本来用事や許可の無い人間がここを訪れると、結界の作動により魔法先生やら番人やらが此方に殺到してくる仕掛けになっているのだが、今日の俺は極普通の転校生として、転校手続きに来た一般人なのだ。

因みに、俺に麻帆良への転校を勧めた魔法使い、ウィリアムさんの紹介状付きだ。
何かこの紹介状がフラグ臭くて、なんとしてもコレを断ろうと思っていたのだが。
何処からともなく俺が麻帆良へ転校しようとしていることを聞きつけたウィリアムさんが、いつの間にかこの紹介状を用意して、その上で「先方には話を通しておいた。安心してくれ(キラッ☆」という感じなのだ。
正直余計なお世話を通り越して、簀巻きにして溶鉱炉に放り込みたいレベルなのだが、向うは親切心でやってくれているので文句を言うわけにも行かない。

多分、俺が日常的に漏らしている余剰魔力から、俺を何とかして裏世界に引っ張り込みたいと考えているのだろう。まぁ、パッと見で見える魔力は、一般人にしては多い程度にしてある。
うーん、コレも善意なのだろうか。折角ある魔法の才能を開花させたいと。

因みに、この状況に父さんは頬を引きつらせていた。
何せ一度父さんと模擬戦もしたからなぁ。父さん、基本的に補助系の魔法を使う幻術師だったのだが、此方がニトクリスの鏡とか“我埋葬にあたうわず”乱射したりしたら簡単に勝てた。

因みにその後、M∴Sの見習い魔導師――階位にして3=8くらいの見習いとの模擬戦を見せたのだが、何か物凄く引かれてしまった。
まぁ、確かに此方の世界のファンシーな魔法と違い、俺達の使う魔術というのは、鋼を生み鋼を鍛え鋼を振るい、因果を生み因果を歪め因果を叩きつける、そういう、ある意味地味である意味派手な戦いなのだ。

相手をするプラクティカスも中々の物で、俺はMk.23一丁で相手をしていたのだが、俺の弾幕を増殖させたバルザイの偃月刀で防ぎ、一気に接近して斬りかかって来た。

増殖バルザイの偃月刀、その刀身には防護呪紋。かなりそれに力を入れて修練を積んだのだろう。驚いたことに、増殖バルザイの偃月刀は、一本に付き2~3発も俺の弾丸を防いで見せた。
後、ニトクリスの鏡とか修練して、擬装を覚えれば面白いんじゃないかな~、なんてアドバイスを入れておいた。
鏡で擬装され死角から襲い来るバルザイの偃月刀。――うん、面白そうだ。戦術に組み込んでみるかな?


「あはは、魔法使いの魔法って、鋼一の使ってる魔術に比べると、もう少し見た目がファンタジーだから……」
「どちらにしろ人を傷付けうる手段なのにね。むしろあんなファンタジーな魔法だからこそ、隠匿規制が緩かったりするんじゃない?」

例えば拳銃。こんなモノを日本で持っていれば、ソレが見つかった瞬間確実に大騒ぎになる。
「内緒にして置いてください!」
とかで誤魔化せるレベルでは、決してないだろう。

ソレに対して魔法はどうか。危険度でいえば拳銃に並ぶ――否、それ以上かもしれない。
だというのに、魔法に関して見つかった場合、記憶を消すか、内緒にすることを約束してもらうかという選択肢が与えられる。
正直、正気かと疑ってしまう。

何せ、選択肢を与えるというのは、目の前で拳銃をちらつかせながら「おう、記憶消されるか黙っとくことを約束するか選べ。もし喋ったら――ワカルダロウ?」的な事を言ってるのと大差ない。

魔法の隠匿と言うのは、魔法使いのためであると同時に、一般人のためでもある。その事を、この世界の魔法使い、特に西洋魔法使いと呼ばれる連中は、その事を忘れている。いや、理解していないのかもしれないが。

さて、話が逸れたが、そろそろ現実に目を向けようかと思う。





「えっと、源先生、お聞きしていいですか?」
「はい、どうしたの?」
「なんで女子中学エリアに学園長室があるんですか、って言うのはまぁ、学園長が[禁則事項です]って事で理解できるんですが」
「フォッ!? 何か物凄く失礼なことを言われた気が擦るんじゃが!?」
「大体あってますよ」
「源くんっ!!」

視界の端で悲鳴を上げるソレ。
うん、解ってる。多分コレがそうなんだとは思うんだけれども、でも実際に目の前にすると――違和感が凄いです。

「もしかしてこの妖怪が学園長さんですか?」
「はい。こんなのでも学園長です」
「こんなの!? それにわし妖怪とちがう!?」
「因みに、この妖か――学園長先生をみて、妖怪と判断しなかった人間って居ます?」
「――私の知るところでは、皆さん同じ反応しかしませんね。高畑先生はご存知ですか?」
「――あ、あはは、いやぁ、ボクも似たような反応しか知らないなぁ」

壁際に立つ老け顔の男性が、苦笑しながらそう話した。
因みに件の学園長は、なにやらしくしくと部屋の隅にうずくまっていたが。
妖怪ジジイがそんな事をしても気色悪いだけだというのだ。





「さて、と言うわけで、麻帆良へようこそ諏訪鋼一君。ワシが麻帆良学園学園長、近衛近右衛門じゃ」
「諏訪鋼一です。よろしくお願いします」

そうして仕切りなおし。極普通の挨拶の中で、不意に此方に対する干渉を感じた。
この感じからして思考盗撮だろう。舐めるなよ人間。こちとら邪神相手に心を読まれるなんて慣れっこだ。つまり、擬装の方法だっていくつかは用意してある!!

「フオッ!!」
「どうかしました?」
「いや、なんでもないぞい」

その一つ、マルチタスクの極地、同時に複数のことを、其々全く別の速度で、全く別の方向に思考する。
通称|混沌思考《カオス・タスク》。混沌とした思考はまさにカオス。
その全てが本物の志向で、けれどもどれ一つとして今必要な情報は記載されていない。
流石にコレでも邪神は此方の考えを読み解いてきたが、この中から本物の思考を探し出すのは、多分人間には不可能だろう。

少し戸惑ったような近右衛門だったが、さすがは老獪な妖怪と言うべきか、そんな内心の戸惑いを表に出すことなく、即座に好々爺とした老人を取り繕った。

「うむ。それで、君を呼んだのは麻帆良に来るに当たっての手続きに関して……だけではないのじゃ」
「ですか」

そりゃまぁ、転校の為だけに態々生徒を校長室に招待しているなんて事をしていれば、確実に校長としての業務は廻らなくなるだろう。

「本題はの、キミに魔法を学ぶ気があるかと言うのを問いたかったのじゃ」
「…………」

魔法、と言う単語が出た瞬間、部屋の温度が少し下がった気がした。
因みに源先生だが、話の切り替えをしたところで校長が退室を促した。正直ジジイとオッサンの三人でこの部屋とか勘弁してほしい。潤いがほしい。

「どうじゃね?」
「――そのお誘いは、前に別の方からも頂いたのですが、矢張りお断りさせていただきます」
「ふむ、そうかね。因みに理由を聞いても良いかね?」
「理由ですか?」
「うむ。キミぐらいの年代であれば、魔法と聞けば興味心身に知りたがるものじゃと思っておったのじゃが、何分キミの反応が予想以上にくればぁじゃったものでのう」

ふむ、まぁ確かに此処で魔法に関して全く興味がありません、という態度をとっているのも、聊か以上に不自然だったか。

「……ぼくは、ファンタジーよりはSF嗜好なので」

そういって、軽く左手を振ってみせる。
バチン! と響く音に、瞬間高畑先生が身構えた。

「ふむ、ソレは?」

言って此方の左腕、正確にはその先に漂う青白い光を指差して問い掛ける学園長。

「携行型の|低出力雷撃機《ショックブラスター》です。護身用に」

手首の先からパチパチと音を立てて放たれる青白い稲光。諏訪グループの中の防犯グッズ開発をしている部署で作られた最新作だ。
ベルトポーチに取り付けられた小型バッテリーから電源を引く必要があるが、それでも携行型の暗k――もとい、防犯グッズとしては破格の性能と携行性を持つ。

「そんなモノを……」
「魔法なんて危険物に比べれば可愛い物でしょう」
「ぬぅ。しかし、ソレの乱用は避けてほしいのじゃが?」
「あくまで護身用具です。身の危険がなければ使いませんよ」

左手首でバチバチ光っているコレ。見た目は派手だが、その実威力としてはスタンガンより若干強いかな、という程度の威力しかない。
見た目が派手なのは威嚇。有効範囲は調整可能で、使い方はグフB3型、通称グフカスのヒートワイヤー--って言ってもわからんか。
要するに、最長15メートルくらいまで伸ばせるワイヤーアンカー。コレの接触対象に対して電流を流せるという仕様だ。
バチバチ放電してるのは先端のアンカー部分。

「なるほどのぅ。科学の申し子か。そういうことなら、麻帆良にあるロボ研なんぞに顔を出すのもいいかもしれんのう。麻帆良の技術系は色々すごいからの」
「では、その内お邪魔させてもらおうと思います」
「うむ。では宜しくの、鋼一くん」
「はい、此方こそ」





「あぁ、そうそう。キミの担当教科なんじゃが、英語を頼もうと思っておる。いやよかった、タカミチ君が忙しくて、ちょうど変わりになる教師を探して居ったんじゃよ。何、本分は理工系かもしれんが、留学生のキミなら容易かろう?」







--------。







「は?」


07 我、就学にあたわず?

2012.03.17 (Sat)

と、言うわけで、諏訪家万全の状態で、いざ商業界に革命を――!!
というところで、不意に待ったがかかった。

「は、学校? ――あ」
「そういえば、こーちゃん学校に言ってるとこ最近見てないわね」
「いやいや、それ問題だから」

そう、よくよく考えれば、俺こと諏訪鋼一は、まだ小学生。今現在の年齢が――ええと、確か、9歳だっけ?

「えっと……そうそう。こうちゃんは今年九歳よ」
「息子の年くらい覚えておこうよ瑠璃さん……」
「んふふ、でもね、こーちゃんって何だか我が子ながら年下に思えなくて」

まぁ、精神的には、人間なら既に磨耗寸前まで行くぐらいの年月は重ねている。
マキリ=ゾヴォルケン? あんなのまだ若い若い。背徳の獣はもっと凄かったぞ。

「まぁ、とりあえず、だ」
「学校行けと?」
「そう。キミはまだ子供なんだから、ちゃんと学校行って学んできなさい」

うむぅ、この真面目くんめ。
母さんはぽわぽわな人だけど、割と乗りはいい。
俺が既にある程度の学を持っているのを何となくで見抜いたらしく、学校に関しては一言二言言った程度で、後は寧ろ会社経営の方に積極的になっている。
おかげで肩書社長の母さんは、実質秘書兼ご意見番みたいな感じになっている。

「学校……ねぇ」
「そそ、学校」

言う父さんだが、今さら学校に行くのもぞっとしない。
だって考えても見て欲しい。アレだぞ。小学生。それこそ何時だったかに行った入学式のときは酷かった。もう阿鼻叫喚。ガキしかいない、ガキが纏まらない、親はガキを御しきれない、俺は俺で七五三みたいなブカブカの服を着せられたし。
特にあの服がイヤだった。

「――まぁ、仕方ないか」
「学校、行く気になってくれた?」
「|学校《・・》に行けばいいんだよね?」

さらっと。本当にさらっと言葉を吐いてみた。
――母さんは気づいたみたいだ。「あらあら」なんて此方をみて微笑んでいる。
ばれたみたいだけれども、とめる心算は無いみたいだから安心した。

「うん、そう。学校にさえ行ってくれれば、此方としては安心何だよ」

父さんのそれは、本当に此方を心から心配しての言葉だったのだろう。
けれども、最早俺は目的を決めてしまっていた。
嘗ての、今生こそ一般人として生きようと思っていた俺なら別だったかもしれない。
けれども。立派な魔法使い達の暴虐を目の当たりにしてしまった俺には、もう嘗てのように、無知の如く振舞うことは無理だろう。

目的は、表と裏の完全分離。そして地球から魔法世界の影響を撤廃すること。

「んじゃ、学校に行くことにしよう」

そういって、早速一本の電話を書けることにした。
これから俺が行うのは一種の裏技行為。しかし、バグやチート、イカサマに比べて、コレは本当に正しい正規の手段。

「あ、Hellow,Professor.Is this a good time to talk with you?」

ギタギタな英語で、早速WMM(WorldMilitaryManiacs)で知り合った知人に連絡を取ったのだった。




Side Other

其処からの鋼一の行動は、まさに神速といって違い無いほどの速度だった。
父銀二が気づいたときには、既に小学校に対して休学届けを出し、かと思えばいつの間にか一人でパスポートを取り、これまたいつの間にか飛行機のチケットを取り渡米の準備を終えていた。

「兵は拙速を尊ぶというので」
「いや、君はただの子供でしょう」
「――ぼくを只の子供扱いしてくれるのは、父さんくらいです」

あっという間に身の回りの整理を整えた鋼一は、そのまま成田から米国へと渡米する。
目的は原作介入の為の手段。つまりは教員免許だ。

日本ではスキップ制度は無い。然し、アメリカ含む諸外国では、教育制度が日本のものとは所々違ってくる。
鋼一はその制度の隙間を利用し、正当な手段で教員免許を取り、正規のルートで麻帆良にもぐりこもうと考えたのだった。

ただ、麻帆良にアポを取る方法を考えていなかったのは完全な間抜けではあったが。

「とりあえず、ぼくが渡米してる間にぼくの兄妹でも作って置いてください。あ、妹希望で」
「ば、馬鹿!!」
「あらあら、こうちゃんお兄ちゃんになりたいの?」
「はい。可愛い妹とか凄く欲しい」
「あらあら、なら頑張らなきゃね、銀二さん」
「ちょ、瑠璃さん!!」

真っ赤になって慌てる銀二を満足げに眺め、鋼一はそのまま渡米する。
WMMのミリオタ仲間にコンタクトを取った鋼一は、その知人の伝手を使って大学試験を受講、そのまま入学を果たす。当然入学費用はちゃんと払う。

大学に入学したは良いが、正直4年も米国に滞在する心算は無い。
3年……いや、もう正直1年で教員免許だけもぎ取って帰国してやろうかと、鋼一はそんな事を考えていた。

Side Other Out



ふむ。やはり百年単位で大学生をやっていると、小学校のあの有象無象としたカオスよりは、此方のロウに傾いた混沌のがすごし易い。
ミスカトニックの隠秘学科。あぁ、懐かしき|混沌《カオス》の|法《ロウ》。

まぁ、それほど長居する心算は無いのだけれども。

とりあえず、さっさと教員免許を手に入れるために、パパッと解りやすい成果を出してしまおうと思う。
正直、ネタのストックは幾つでも有るのだ。
一般教養? 一体何年アメリカで暮らしていたと(ry




Other Side

そういうわけで鋼一が手を出したのは、諏訪グループで次に開発しようかなと考えていた「自立多脚高機動車両」の開発だった。

この自立多脚高機動車両と言うのは、要するに自動車のタイヤの部分が本体から自立している車両、と言うことだ。
イメージとしては、4輪バギーのタイヤ部分に腕をつけて、その地面に面する部分に幾つかタイヤをつけたイメージだ。要するにタチ○マ。

試しにパパッと引いた設計図。それを電子メールで本社に送り、パーツを日本で製作して輸送する。
そうしてアメリカに引っ張った金属部品を組み上げて、現地で更にプログラミングを施す。
幸いにして鋼一にはプログラミングの適性はある程度あったらしく、本職の情報系の学生に協力を仰ぎつつ、鋼一はあっというまにソレを完成させてしまったのだった。

曰く「術式の型式がプログラミング――とは言わないが、コッチの字祷子も情報構造だし」とのこと。


そうして完成した自立多脚高機動車両――面倒くさいのでOrtMovableManeuverCarでOMMCとした――を、早速教授の研究室に持ち込んだ。

……ら、後論文を仕上げて来れば、卒業させてくれるとか言われた。

この時点で9ヶ月。鋼一本人は「割と時間かかっちゃったな~」とか考えていたが、周囲にしてみれば、異例どころか脅威のペースでの研究開発なのだ。
正直、嫉妬とか羨望を通り越して、既に恐怖以外の感情は何処からも消え去っていた。

のだが、その感情を向けられる当の鋼一は、そんなことは関係ないとばかりに早速執筆に取り組んでいた。

最初に自動車の歴史について語り、その有用性について語った。
次に自動車の有用性に対する、自動車の持ちうる弱点――つまりは不整地での機動力低下を語る。
例えば災害地。例えば事故現場。
如何に素早く行動するかが重要な昨今で、しかし陸からの交通手段はどうしても限られがちであること。
空があればいいと思うかもしれないが、空は天候に左右されやすく、ソレはそれで危ない。
故に、「雨にも負けず風にも負けぬ」、強靭かつ高機動な陸上機はいまこそ必須。
そこで考案したのが、このOMMC。
どんな不整地でもどれだけ傾斜があろうと、崩れやすかろうがぬかるんでいようが、空と水の中以外ならどんなところでも自由自在に走り回る。
機動力では従来車両を圧倒的に上回り、機動に慣れれば三次元的な挙動すら可能になる。
まさに新世代の車両。OMMC。

まぁ、あくまで理論だけ。
正直俺が作ったOMMCなんていうのも、鉄くずをつなぎ合わせてなんとか壊れることなく動いている、と言うだけのメカだ。
廃棄された自動車からのスプリングとか普通に流用しているので、ジャンプとかしたら多分二三回で潰れる。
シュープリスとか魔導理論を用いた機体に比べて、それ以前に現状のOMMCでは既存の自動車にすら劣る。
俺が提示したのはあくまで可能性。コレを如何生かすかは、ランナー次……後続の開発者次第。

「そのうち、日本の諏訪グループから発売するかもしれません。ご贔屓に~」

で、最後は結局宣伝になる。

が、この論文が大いに論争の場を荒らした。
次期機動力として考案されていたインセクト・マニューバ。要するに、蟲の多足構造を真似した万能陸戦装備計画。ソレに対するOMMCは、如何考えてもIM計画の一歩先を行った代物だった。
コレに政治経済と揺れに揺れた。

とにかく優れて信頼性のある物を取りたい派閥。外国製品を国に採用したくない経済界。もうとにかく荒れに荒れ、大荒れた。

因みに、中立だったり此方を押してくれたりしているのは、主に政治とか軍とか。
M∴Sと取引のある相手様たちだ。鋼一は自分の事がばれているのかと首をひねったのだが、実質はM∴Sが日本発の欧米魔術という事で、日系の存在はCISとかに注目されていて、利用できるならじゃんじゃん利用しようという風潮になっていた、と言うだけの話。
ある意味で、OMMCは利用価値を認められていたのだった。



Side Other Out

「コーイチ、キミはうち卒業していいよ」
「教員免許と卒業資格は?」
「勿論ちゃんと用意してるさ。ほら」

ある日突如としてWMMの同好の士であるクラウドに呼び出され、何事かと思っていたら教員免許と卒業資格を渡された。

「MInT卒業資格と教員免許――うん、確かに」
「ぶっちゃけ、これ以上此処にいられても教える物もないし、と言うか正直君がここにいると毎日が忙しすぎてしんどいよ」
「ブッチャケたなこのミリオタめ」
「キミも同類だろう? 然し恐ろしい物だ。キミはまだ10才だろう? そんなに生き急いで、何が目的なんだい?」

クラウドの言葉に、思わず苦笑する。
どうせその内10歳の教師なんて溢れかえ――りはしないが、どうせ10歳の教師なんて俺以外にも沸く。まぁ、無免許の上色々な法律に反した教師だろうが。

「別に生き急いでる心算はないんだよ。出来ることを出来る状態値にしておきたいだけ」
「ふん? 良くわからんな」
「日本語って魔術的だろ。言葉が|混沌《カオス》なんだ。コッチの言葉使ってると妙に実感するよ」
「ほほぅ、そうかキミはオカルティストなのか」
「――理の機械系に向かって言う台詞では無いな」
「違いないだろうが、なら先に君の発言を撤回すべきでは?」
「実感のある言葉だからね。そう簡単に取り下げると、言葉の価値が下がる」
「――矢張り君の言葉は分けがわからん。コレがキミの言う魔術的って事なのかな」

クラウドの言葉に苦笑で返す。

「で、キミはこれから如何するんだい? 色々な企業からスカウトが着てるみたいだけど」
「当然、日本に帰る」
「勿体無い。どこかに就職してしまえば、即座に重宝されるだろうに」
「ふふん、残念だが、俺は既に就職済みなのだよ」

そういってクラウドに名紙を渡す。
そういえばの話、クラウドには大学入試にていろいろ世話になった割りに、コッチの名紙は渡してなかったな。諏訪グループの。

「――これって、最近日本で有名になってきたところ?」
「そそ。親の名前で企業した会社」
「――前々から凄いとは思ってたけど――。うん、コーイチ」
「うん?」
「キミ、化物だ」

言われて、思わず驚いて。

――ニヤリ。
「褒め言葉として受け取っておくよ」

けれども直後、思わず口が歪む。
そして、あえて如何にもと言うような笑顔でわらって見せたのだった。



そうして準備は整った。
俺の年齢とネギの年齢は3歳差。原作開始まで予想であと3年。
正直、1年で卒業は予想外だ。
時間も余るが、取り敢えずは帰国しよう。

「もしかしたら、もう着てるかもだし」

そろそろ見に行こうかな、なんて考えているのだ。

ついに、ついについに。
行ってみようかと思う。

――麻帆良学園へ。

06 帰還と涙と酒乱ども。

2012.03.17 (Sat)
Side Other

「誰じゃっ!!」

誰も居ない筈の地下室。厳重な秘匿がされ、封印されていた筈のその部屋から洩れ出た魔力反応。
隠蔽されたその気配に、しかしこのメルディアナで只一人だけ気づいた人間が居た。
他の誰でもない、このメルディアナ魔法学園の最高責任者。メルディアナ学園長だった。

即座に杖を構え地下室に突入した彼は、即座に威嚇の声をあげ――そうして、その光景に思わず唾を嚥下した。

室内を満たすのは、何処までも優しさを感じさせるライトグリーンの輝き。
けれどもその規模は決して人に出しうる物ではなく、それは嘗て英雄と呼ばれた彼の息子であるナギ・スプリングフィールドのそれすら上回るほどのモノだと、かの翁は即座に感じ取っていた。
その中心にいるのは、如何やって作ったのか小さなスペースに銀色の台座を載せ、その傍で魔力を感じさせる分厚い魔法書らしきものを構える魔法使いらしき人間の姿。

そうして一瞬の硬直を経て、翁はすぐに体勢を立て直し、そして再び驚愕に目をむくことになる。

「なっ――石像が!?」

あふれ出すライトグリーンの光が石像を包み込むと同時。ピシリと音を立てて石像の表面にひび割れが入る。

「止めい!! それは只の石像ではないのじゃぞ!!」
「手を止めるのは其方だよ、御老体。なに、悪いようにはせんよ」

翁の声に、魔法書を構えた魔法使いはそんな言葉を返して。
そうして翁は再び目を見張ることになる。

ひび割れ、零れ落ちた石像の表面。その下からのぞく、肌色の柔らかなそれ。
ざらついた石の肌ではなく、血の通いを感じさせる人肌が、その崩れ落ちた岩の下からのぞいていた。

「馬鹿な、爵位持ちの悪魔の石化を、我々が為し得なかったディスペルを――」
「御老体、世は広い。人の限界は科学が補う。それは魔法も然り。魔法が正しく使われていれば、今頃は科学と競合し、より進んだ世界になっていたかも知れんがな」

その黒ローブは、何処か言い難い感情を、まるで噛み締めるかのようにそう呟いた。

「――貴殿は、一体……」
「御老体、頼みがある。村人の開放をMMに伝えるな」
「な、何故じゃ!? 貴君の行いは本国で正式に表彰され――いや、まさか、そういう事なのか――!?」

そうして翁は、彼の言葉から大まかな経緯を推察してしまう。
それは考えうる可能性。可能性の一つとして考え、しかし戯言と斬り捨てて――違ってほしいと願っていた考え。
然し、この黒ローブの言葉で、老人は一つの確信を得てしまった。

「話が早い。後は頼んでもいいかな?」
「――請け負おう。然し、貴殿は一体……」
「伝えるべきは伝えた。ではな御老体、精々孫が政治の駒にされぬよう気をつけることだ」

黒ローブはそういうと、タンッ――と小さく、けれどもよく響くステップを鳴り響かせた。

そうして翁は、再び目を見開くことと成る。
少年と銀色の舞台装置のようなそれを囲うように、黄金の五芒星。
再び現れる桁違いの魔力に思わず目を回していると、まるで突然地面に穴でも開いたかのように、黒ローブと銀色の舞台装置が魔法陣の中心へと墜ちて行った。

慌てて魔法陣へと近寄る翁であったが、然したどり着いたその場所には何の変哲も無い地面しかなく。

「――取り敢えずは、彼等の手当てじゃな」

四方八方で目覚めた村人達。彼等は数年前の村襲撃事件から、突如として数年後の、メルディアナの秘密地下室に転移したようなものだ。
中にはいまだ戦闘中であったもの、怪我をした所を石化していたものと、それらが一同にパニックになりかけていた。

「やれやれ、しんどい仕事になりそうじゃわい」

小さく呟いた老人は、しかし何処か嬉しそうに面々を見つめ、声を出す為に大きく息を吸い込んだ。
翁の仕事は多い。
彼等に事情を説明し、信用の置けるMMの息の掛かっていない人間に彼等を此処から脱出させ――。
翁の仕事は多い。
けれどもそれは、彼等懐かしき村人達が帰ってきたからこそのものだ。
だからだろうか。翁の口元には、小さな笑みが浮かんでいた。

Side Other End







さて、そういう訳で村人達を開放しました。
何か物凄く厨二病臭い喋り方をしてしまった気がする。うーん、ダメだな。顔を隠して暗躍とかやるとどうしてもテンション上がって厨二病が再発する。シニタクナルネ。
因みに、多分アーチャーさんじゃないかな?

父さん? あの場で父さんだけ連れ帰ったりした場合、確実に疑われるので止めておきました。
まぁ、うちは関東と関西の間――どちらかと言えば関西よりなので、多分普通に帰ってこれるでしょう。
何せ電力も60Hzですし。

とか考えていたら、その数日後に父さんが家に帰ってきた。
もう、あのぽわぽわしてる母さんがポロポロ涙を流しているところを見てしまうともう、此方まで泣けてきてしまった。
うん、ゴメン母さん。もうちょっと頑張って、一刻も早く父さんを解放すべきでした。
――シュープリスの製造に夢中になって、もう少し早くディスペル出来たとか、もう言えません。

で、家に帰ってきた父さんなんだけど、色々勝手が変わってしまっていて相当驚いたようだ。
まぁ、何せ家に帰ってみれば、いつの間にか近所に名も知らぬ大企業の本社が出来ていて、それが自分の家族の起した企業だというのだから驚く。

しかも起業してからも、家自体は前と変わらず引越しも増築も改装もしていないのだ。
防犯? 大丈夫。トイ・リアニメーターが一晩で頑張ってくれました。不法侵入者にはこの「イカ臭くてぬるぬるで白濁していて、しかも浴びると即座に対象の動きを止めるイヤーな拘束液ミサイル」が発射されることになる。
因みにコレ、分解液で即座に分解でき、臭いも浴びた人間以外には全く匂わないというステキ仕様。
デザイナー部門がアイデアを出して、開発部が頑張ってくれました。
但し卑猥すぎるとかで、商品には出来ませんでした。あくまで家と本社の防衛に使われてます。

さて、何か話が逸れた。そう、父さんが帰ってきたという話だ。

前述したとおり、帰ってきた父さんに、あのぽやぽやした母さんがポロポロ泣いてしまったのがことの始まり。
その帰ってきた場所と言うのが、偶々本社に出社していた最中で、家の近所(本社は家の裏手)でうろついていた父さんと、本社の前でばったり。
母さんのポロポロは本社の真正面で行われたのだ。

つまり、母さんと父さんの感動のシーンは、本社社員の全員の目にするところであった。

先ず言うところ、うちの企業は大手ではないものの、中小の新参の中ではかなりの大手に入る。
で、取引規模は大きくても、会社の規模は小さい。何が言いたいかと言うと、社員同士は割りとアットホームな雰囲気なのだ。
要するに、社員の殆どはぽやぽやな母さんと家族のように密な付き合いをしていた。

社員で見ていたやつは、その全員が貰い泣きを喰らったのだ。

で、その日は臨時休業。
俺が面接して雇っておきながら、後から後悔してしまいそうになるほど優秀で堅物な社長秘書の花袋女史ですら貰い泣きし、此方が何か言う前に本社を臨時休業にし、あまつさえ社長の旦那様帰還パーティーをいつの間にか社員一同に広め、気づいたときには本社でパーティーという流れに持ち込まれていた。

あまりの手際のよさに、一歩引いたところで見ていた俺がもう一歩引いてしまうほどの物だった。






「社長の旦那様の帰還を祝って――――――乾杯!!」
「「「「「「「「「「カンパイ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

とまぁ、何故か酒盛りになった父さんの帰還パーティー。
皆々様が酔いつぶれて、母さんもほんのり酔いつぶれたその後のことだ。

普段ののんびりした雰囲気からは似合わない気もするのだが、父さんは実は避けに強いらしい。
余談だが、血筋的にヨーロッパ系のクオーターらしく、その影響か父さんはザルなのだそうだ。

「つまり、鋼一はローカルな魔法を継いだ、その系統唯一の使い手だと」
「んー、唯一ってわけじゃないよ。今現在頑張って後進を育ててる最中だから」

皆が酔いつぶれたその頃合を見計らって、父さんから話しかけられた内容。それは、此方の纏う奇妙な術式を察知してのものだったのだろう。
上手く隠蔽していた心算なのだが、さすがは父さん。母さんに劣るとはいえ、その直感は侮り難い。
さらっと此方が魔に手を伸ばしていることを看破した父さんは、此方を鋭い目つきで――心配そうな表情で訪ねて来た。

うん、母さんもそうなんだけど、普段のんびりしている父さんの真剣な、心配そうな顔と言うのはとても心臓に悪い。しかも数年ぶりに見る顔だ。やばいぐらい精神に来た。

と言うわけで、父さんには要約した話をしておいた。
異世界の魔術だ転生だというのは余りにも胡散臭い。そこで、魔導というローカルな――例えば日本土着の陰陽道や修験道のような――魔法として、魔導を習ったという事にした。
習得方法は魔導書からの独学。流石に不審な顔をされたが。

「いいかい鋼一。この世には“立派な魔法使い”を目指す――」
「ストップ父さん。MMのイデオロギーは|現実世界《ここ》では通用しないよ」

言いかけた父さんの言葉を、静止の言葉で上塗りする。

「魔導の本懐は魔に抗う術。人の世を魔の邪悪から守り抜く守りの戦いだよ。正義とか悪とかそんなお題目は、僕らにはどうでもいいんだ」
「如何でもいいって――でも、立派な魔法使いは……」
「その立派な魔法使いに、何の罪も無い幾多の人間が石にされたわけなんだけれども」

言いながら、父さんにことの顛末を|情報源《ソース》をぼかして語る。
……さすがは父さん。立派な魔法使いというMMのお題目、心底信じているというわけではないようだ。

「――そうか。ボクの知らない間に大きくなったんだね」
「4年も過ぎれば至極当然に」
「そっか。……MMの欺瞞たっぷりの“立派な魔法使い”は確かに語る価値も無い。でもね鋼一。皆が目指す“立派な魔法使い”は、決して悪いものではない。誇り高く、誰かを助けられる魔法使いを目指すことは、決して悪いことではないんだ。それだけは知っておいてほしい」
「うん。そも、魔導師の魔術は、守りの戦いにこそあるものだから」

魔法は生活の一部として、その果に戦争の武器と成り果てた存在。
対して魔術は、思考の知識にいたろうとして、其処から魔と戦う為の武器として研ぎ澄まされたもの。

「ふ……そうか。僕の教えられることなんて無いのかもね」
「魔法の教えなんて如何でもいい。――ただ、普通に父さんがいてくれれば、それでいいよ」

父さんに求めるものは、魔法の師ではない。
父さんに求めるものは、あくまで父さんなのだから。

「そっか――」
「そうだよ」

そういって、どちらともなく破顔する。
小難しい話は如何でもいい。大切なのは、父さんが漸く家に帰ってきたという事。

「お帰り父さん」
「ああ、ただいま」


05 無限の心臓。

2012.03.17 (Sat)


と、言うわけで、シュープリスが完成しました。
駆動方式は電力と魔力のハーフ。制御方法は魔力制御。勿論機械制御も可能ではあるが、機材がかさばるので基本的に魔力制御。
主機は無限の心臓。うん、そうなんだ。無限の心臓なんだ。

マナウス神像が無いし、獅子の心臓とか作るの無理臭いかな~とか思っていたのだが、幸いにして俺の手元にはカリンが存在する。
カリンは基本ネクロノミコンではあるが、編纂するときに様々な魔導書を参考にしている。

――例えば、エイボンの書とか。



無限の心臓の記述から作り上げた獅子の心臓。
獅子の心臓から沸き上がる無限の熱量を、魔術的変換により電力化。これによりシュープリスは無限のエネルギーを手に入れることになった。
ただ、なんというかまぁ、やはり魔導書の存在は必須。
獅子の心臓の起動と制御には、一定以上の魔術的情報量――つまりは字祷子が必要となる。
人間の持つ魔術的情報量はどうしても一定以上に足りず、コレを単身で動かしうるのは、それこそ魔人の類。

そしてシュープリスを動かせるほどの魔力を持つ魔導書など、この世界に存在するのはカリン一冊。
魔法書ではダメなのだ。あくまで魔導書でなければ。
つまり、実質この世界でシュープリスを動かせるのは俺一人という事に成る。

うん、準備はこんなところか。
戦の準備は十全。
では次に、組織の方に力を入れていこうと思う。





組織、と言うと妙な響きだが、要するに俺はこの世界で独自の魔術基盤を持つことになる。
この魔術基盤を俺一人で独占するのは良くない。と言うわけで、才能のありそうな人間を拾っては教育したりしていたのだが、いつの間にか規模が大きくなっていた。
と言うか、俺が拾う以上に俺の元に勝手に集まってくる人間が多かった。
それも、俺が教える前から、どうも魔導に知識のある臭い人間が妙に多かった。
俺以外に魔導を扱う人間がいるという事なのだろうか。

試しに知識の元を尋ねてみたのだが、彼等は軟らかく笑って黙秘した。
悪い気配もしなかったので、問題は無いと判断。そのまま放置しておくことにした。
内側の毒? 悪意の2~3飲み干せずして何が経営者かっ!!
ではなく。

俺の記憶が正しければ、ネギま本編が始まるまで、あと数年しかない。
それまでにある程度、組織としての形を整える必要がある。

現在我々の組織に加入しているのは、先進国各国政府、地域土着の魔法組織など。
関西呪術協会とも提携を結んでいる。




「社長、AMF搭載型スタンロッド、漸く完成しました!!」
「あー、お疲れ様。漸くだねぇ」

アンチ・マギリング・フィールド搭載型スタンロッド。
要するに魔法を弾く機能を備えた電撃ロッドだ。

「因みに持続時間は?」
「連続稼動で30分が限界です……」
「そんなところか。まぁ、魔法使い相手に最低限の武装で立ち向かう場合、30分以上対峙するのは自殺行為だし。いっか」

我等が組織、名前をM∴S(銀色の月光団)だ。
因みに命名はかなり適当。

M∴Sの構成員は各組織から技術提供の代わりに派遣された構成員だ。
M∴Sの主立った組織目的。それは魔術結社にありながら、表と裏の分離にある。

昨今、『魔法は隠匿されるべき物』とされながらも、西洋魔術師達は平然と一般人の前で魔法を行使する。そうして魔法がばれた場合、連中は目撃者の記憶を好き勝手に弄繰り回す。
そもそも連中は、魔法を隠匿すべき物として扱っていない節がある。ソレを建前にして、一般人を魔法の――裏社会へと引きずりこむ口実にすらしているように感じられる。

そんな現状だ。連中は自分達こそ正義と妄信し、その勢力は拡大の一途を辿っている。

故に。今こそ我等は初心に帰るべきではないのか?
魔法の隠匿。その当然を、当然としてなすべきではないのか?

ではそれを成す為に先ず必要なことは何か。
各国の政治にもぐりこみ、内側で好き勝手を行う|魔法使い《ウミ》達の排出。
各地に伝わる土着の魔法を異端と蔑み、自分達こそ世界の正義とする傲慢な魔法使い達から自らの土地を奪い返す。

……とまぁ、なんとも過激なお題目を前に、M∴Sは徐々に規模を拡大させた。
いや、規模を拡大させたと言うよりは、分断されていた土着の組織達をまとめ、一つの巨大な組織に下と言うほうが正しいか。

表政府に対してはAMF装置とマギリングセンサーの販売により政治社会からの魔法使いの追い出しを。
裏世界では、我が物顔で土地を侵略する魔法使い達に対する攻撃を。




結果から言うと、俺が動く必要は本当にあったのだろうか、と言うほどあっという間に西洋魔法使い達の勢力を削ることは出来た。


と言うのも、先ず最初に世界各地に点在するゲートポートを襲撃したというのが大きいだろう。
月に一度しか開かないゲートポートだ。逆に言えば、その月一以外は警戒が極端に緩んでいるのだ。

何時か起こるであろう完全なる世界によるゲートポート襲撃事件。
けれども、我々にはそれを待つだけの余裕が無い。西洋魔法使い達と表立って敵対する以上、敵の増援が来る事がわかりきっているのだ。その補給ルートを潰すのは当然の事だと言える。

と言うわけで、世界各国の主要なゲートポートの破壊を慣行。

世界各国で同時に破壊されたゲートポート。とはいえ、活動休眠期間で、人的被害は殆ど無し。破壊も旧世界側からのみで、魔法世界側のゲートはまだ残っている。
破壊できたのは大国の支配する地域に存在する物。アメリカやロシア、中国あたりのゲートは破壊できたものの、ヨーロッパのほうのゲートは破壊し損ねてしまった。
しかし、それだけでも今は絶大なチャンスなのだ。






「此処か」

召喚したシャンタク鳥の記述により空に留まる俺の眼下。
世界各地で起こった同時ゲートテロ事件。その処理のため、現在稼動しうるゲートのすぐ傍にあるメルディアナは、こんな時間だと言うのにまだまだ人の活気が満ちている。

――ひと気が多いのはデメリットだが、人の出入りが多いのはメリットだ。

魔術の気配を隠蔽し、そのままゆっくりとメルディアナの敷地のすぐ傍へ。

集中すると共に感じる魔力の結界。侵入者探知の初歩的且つそれゆえに頑丈な結界。
然し初歩的という事は、付け入る隙も十分にあるという事だ。

この結界は、単純に内側と外側を出入りする存在が、出入りに関して許可を持っているかの有無を確認するだけ。
確かにMMの庇護下にある、それも魔法使いが大量に要るこの拠点に特攻をかけようと言う馬鹿は居まいが、だからといってこの現状でこの結界しか張っていないと言うのは油断に過ぎる。

ヨグ=ソトースは門にして鍵の存在。
結界の外側から内側に門を開くことくらいは、お茶の子済々というやつだ。

そうして敷地の内側に入ってしまえば後は楽勝だ。
魔法使いと言うやつは、それに固執する余り、科学に対してどうにも惰弱と言うか警戒が薄いというか。
予め身に纏っていたスニーキングスーツの上から、更に黒色のローブを身にまとう。
こうして夜景に紛れてしまえば、魔法使い達に感知されることは先ず無い。
魔法を使わず科学を使う。まさに科学の勝利。

そうしてこそこそとメルディアナの中を徘徊し、漸く見つけた地下への入り口。
漸くだ。漸くこのときが訪れた。

こっそりと進入した地下階段。
折りきった先の扉を開いた先。奥まで光が行き渡らないほどの広大な空間に収められているのはその広大な空間を所狭しと埋め尽くすほどの石像。

必要なのはこの中の一体。けれども、術式はこの全てにかける。
本当は父さんだけ助けられれば俺はそれでいいのだけれども、多分父さんのことだ。自分だけ助かったと知ればそれはそれで悲しむだろう。

ならば、俺は父さんに義理を返すため、また共に遊んだネギとアーニャに対する義理として。

瞬時に身を覆う魔導書。マギウススタイルと化した瞬間、全身を巡る魔力が活性化し、その活性化した魔力を更に意図的に奮起させる。


「――術種選択、解析術式」
《対象捕捉、石化術式》
「――術種選択、解呪術式」
《ナアカル表による呪詛解読。術式置換。人を呪う悪しき願いよ、我が前にその戒めを解き放たれん》
「――ディスペル」

放たれるのは薄緑色の輝き。
魔力が大気に触れたその反応。輝く緑は、徐々に暗い地下室を覆いつくしていくが――。

「ち、やはり出力が足りんか」
《銀鍵守護機関の使用を提案》
「あれ単独でか?」
《肯定。銀鍵守護機関の使用は、解呪後の退却時にも有効》
「ふむ……」

まぁ、銀鍵守護機関はシュープリスのほかに、もう一つほどテスト機が作られている。
其方をこの場に転送させれば……いけるな。

「では、その案で」
《準備を開始します》

そういうわけで、大慌てで地下室の石像を少し詰めて、小さいながらスペースを用意する。
このスペースに上手く召喚出来ればいいのだが。

「――虚数展開カタパルト作動」


Side other

その瞬間、人の踏み入る事の無い、完全な静寂に満たされていた地底の空間に、突如として火が入る。

何処からともなく送信された字祷子信号。
基地に設置された自動演算装置はその字祷子信号を読み取ると、即座に基地内の動力を全力で稼動させる。

――――――Pi

そうして起動する虚数展開カタパルト。
それに連なる貨車の一つが、自動的に発信位地へと移動しく。
その上に載せられているのは、銀の円盤。巨大なその円盤は、実に直径1メートルはあり、分厚さも相当なものがある。

――――|~=)(’&%$#”!

貨車が到着したのは、巨大な瞳の真正面。
機械とは思えぬ、ギョロギョロと動くその瞳。それが貨車の上のそれを捉えた瞬間、周囲を黄金の光が包み込み――。
そうしてそれは、無限に続く奈落の虚空へと落下していったのだった。

Side Other End


ズンという威圧感と共に空間に描き出される魔法陣。
その中から墜ちるように召喚されたそれに、対衝撃緩和術式を投げて軟着陸させる。

「よし、それじゃ行くぞ」
《再演》

そうして、再び先ほどと同じ術式を構成していく。
但し今回は一工程だけ違う工程が含まれる。

カシャンと音を立てて、円盤の内側からせり出してくる。
それら石柱は高速で回転を開始すると共に。その中心に現れた空間の歪から無限の熱量/無限の魔力を引き出す。
其処から生み出される莫大な魔力を元に、再び、今一度解呪の法を――。


あふれ出す緑色の光が、地下の広い空間を塗りつぶし、地下室一杯に、それどころか更に力の与え所を求めて四方八方へと荒れ狂う。


《ナアカル表による呪詛解読。術式置換。人を呪う悪しき願いよ、我が前にその戒めを解き放たれん》
「――ディスペルッ!!」

そうして、光が爆ぜた。

04 鋼の刃は未だ在ら不。

2012.03.17 (Sat)

用意された2丁のMk.23。
取り敢えず一丁術式兵装を作ってしまえば、後は銃を依代とすればいいだけなのだが。

嘗て大十字九郎が使用した暴君の魔銃。あれは別に、クトゥグアとイタクァを制御する為だけに存在したわけではない。
アレはそもそも対霊狙撃砲と同じで、魔法使いの杖なのだ。

であるならば、あの銃2丁を差別したものとは一体なんなのか。

俺が見るところ、アレは要するに、対霊狙撃砲より小さい分、機能を限定したが故に2丁になったのではないかと考える。

要するに、制御の方向性だろう。
威力を依り一点に向けて集中させるか、威力の収束先に方向を定めるか。
何を言ってるのか自分でも判らなくなってきた。
とりあえず何を言いたいのかと言うと、俺の術式兵装は同じMk.23だが、どれでもイタクァとクトゥグアどころか、ハスターの力だって借りられる程度には上物に仕上げた、という事。

当然、デウスマキナがあれば、それ用の術式兵装として召喚も出来る。

「……デウスマキナ……なぁ」

そう、デウスマキナ。ロボット分が足りない。
嘗ての世界、俺は何度かデモンベインに搭乗した事がある。と言うのも、アレは大十字が別件で動いている最中に、大十字の下までデモンベインを運ぶ為だったり、とりあえず代役の囮として乗っていたりと。
そのほかにも、西博士の下に付いたとき、デモンペインだとかアイオーンのパチモンのアエオーンだとかに搭乗した事もある。

何が言いたいかと言うと、要するにロボットに乗りたいのだ。

現在ド田舎のど真ん中にある諏訪グループ本社。その地下に広がる大規模秘密基地。
かなりの深さに儲けられたその基地の中、錬金術で作った素材で、現在10数メートル級のロボットを建造中だったりする。


因みに、俺は鬼神召喚の術式を使うことは出来る。
ただし、カリンの元となったのはネクロノミコンラテン語版からの再訳。色々混ざってしまってはいるが、召喚されるデウスマキナはつまり……アイオーンっぽい何か。

何故それをアイオーンっぽい何かと言うかというと、何かアイオーンの形が妙にネクストっぽいのだ。
別にコジマ粒子とかを発しているわけではないし、背中に武装がついているわけでもない。

だというのに、何故だろうか。俺の召喚するアイオーンは、妙にアーリヤ臭いのだ。
考えても見てほしい。60メートル級のNextアーリヤ。物凄く……格好いいです。

やっぱりアレだろうか。無銘祭祀書を取りこんだ影響と、ラテン語版再編のときにセラエノ断章とかエイボンの書とか色々参考にした所為だろうか。
それとも単純に俺がアーリヤ好きなだけだろうか。
まぁ、とりあえず色が赤かったのでクラースナヤって呼んでた。ロシア語で赤って意味。そのまんま。

ただ、俺としてはあまりあれをそのまま使う気には成らない。何故なら、クラースナヤはあくまでクラースナヤ。アレは一つの完成形なのだ。

俺の望は一つ。
無骨で、頑丈で、その場に実在する物質としてのデウスマキナ。
いや、デウスマキナに拘る心算は無い。
別に脳量子波で動こうが、AMS接続で動こうが、魔導コックピットで動こうがなんでもいいのだ。

現在建造中のデウスマキナは、デウスマキナ・クラースナヤを参考に、機械的に人の手で作り上げたデウスマキナ。つまりはデモンベインと同じ構想で、ダウンサイズしたAARIYAHを作っているのだ。
開発コードはシュープリス。
10数メートル級。まぁ、オリジナルのサイズも確かそれくらいだったはずだし。

因みに鬼神召喚がよくよく考えればスケールダウンしての召喚も可能だと気づいたのは、シュープリスが殆ど完成したその数日後のことだった。




03 社会の沙汰は金次第

2012.03.17 (Sat)

先ずすべきことは何かと言うと、資産作りが最優先だろう。
と言うわけで先ず作ったのが、トイ・リアニメーター。
コレはデモンベイン世界で生み出された浮遊半自動作業ロボット。元々はDr.ウェストの発明であり、ループの最中で覇道財閥所有の品とされてしまった曰く付きの一品だ。

トイ・リアニメーターは原作中では覇道財閥のデモンベイン修復装置として登場していたが、どうにもアレだけ他に比べて異端臭かった。
何せ、デモンベインの建造には数多の魔導師と数多の技術者が心血を注いで建造したのだ。だというのに、その維持が機械任せ?
機械の系統的にも、エイダ覇道婦人の蒸気式とも違い、覇道の魔導機械式でもない。
あれは、あれだけは純電気式。そう、Dr.ウェストの技術系等に並ぶ代物なのだ。

確かにデモンベインは人が携わらなくても動くオートメーション化が進められていた。
然しそれはあくまでデモンベイン本体の稼動に関すること。
トイ・リアニメーターに関しては周囲の技術レベルを明らかに数段ぶっ飛ばしている。
というか、魔導機械を整備できるロボットと言う時点で、もう覇道ではありえないのはお分かりだろう。

まぁ、実際博士がトイ・リアニメーター作る所にも何度か立ち会ってるし。

性能はどうなっているかと言うと、凄まじい。
流石に重量物質を持ち上げたりと言う出力に限界はあるが、それでも人の手の届き辛い高所での活動や、人を圧倒的に上回る作業効率。
何より少人数で秘密裏に作業を進めたいとき、こいつほど頼りになるマシンは存在しない。

と言うわけで、とりあえず一機トイ・リアニメーターを手で製作。
そしたら次はトイ・リアニメーターにプログラミングし、トイ・リアニメーターがトイ・リアニメーターを作り出す。完成したヤツには次のトイ・リアニメーター製造作業に入らせて――とやっているうちに、鼠算式にトイ・リアニメーターが増えた。

と言うわけで、コイツラを使って商売をすることにした。
但し、俺の名前で商売をするわけにはいかないので、母さんに色々権利を肩代わりしてもらうことに。

先ず最初に製造したのが、超軽量自転車。
俺の錬金術で生み出した特殊素材と、トイ・リアニメーターのとんでも加工技術が合わさり生み出されたこの自転車は、なんと8キログラムという超軽量を実現させた。

コレが主婦に馬鹿受けした。軽くて丈夫な自転車だ。主婦の味方として大活躍した。
当然他企業がコレの製造法を探ろうとした。いや、連中はちゃんとたどり着いたのだろう。
しかし此処で企業は唖然とした筈だ。何せ、パイプ構造の一体形成。素材は外見的には普通のアルミの類と変わらない。然し魔術的な反応が出るかといわれれば否と答える。

アレは錬金術の産物。いわばアルミの皮を被った何かなのだ。

そういうわけでうちの自転車は馬鹿受けした。




と言うわけで次に移る。
次は母さんの依頼で車を作ろうという事に成った。

母さんが希望するのは、可愛らしいミニ。近所へのお買い物に使えるようなミニだ。

此処で俺は相当悩んだ。
何せ俺のデザインは、基本的に無骨なものを好む。
機能的な丸み、角ばってゴツゴツした無骨なデザイン。そういうのが好みなのだ。

いままでの自転車なんて、素材レベルでごり押し下だけの代物だ。デザインなんていうのはそのあたりにある十把一絡げと大差ない。

しかし車。デザインに自由度がありすぎて困る。

と言うわけで、今回会社を少し大きくしてみた。
今までは有限会社の類で、株とか発行していなかったのだが、今回はデザイン系の人間と、事務系の人員を何人か雇うことにした。
因みにデザイン系の人の中には、大手メーカーからの転職者もいた。なんでも向うでは中々自由なデザインをさせてもらえなかったのだとか。

まぁ、自由にデザインしてくれればいいさね。


と言うわけで生み出された諏訪社初の軽自動車、タンポポ。
軽くて硬くて頑丈でよく走る。まさに最強の車となった。
車の機能にしても、エコだとか電気だとか余計なシステムは搭載せず、純然たる普通燃料車とした。
その代わり燃費効率は普通の車の数倍はある。

そしてこれまた他企業に内容を調べられた。
が、結局連中は真似することもできないだろう。何せこれまた一体形成だ。
エンジンの一体形成。真に意味不明な製造法である。



で、これもある程度売れたので、田舎にでかい土地を買って、其処に大きな工場を建てた。
周辺に住人の居ないこの田舎だ。何を作ろうが誰にも咎められない。いや、やりすぎた場合国に文句を言われるかもだが。

と言うわけで、地下にでかく、地上にこじんまりと工場を建てた。
この秘密基地の建設過程で、更なるトイ・リアニメーターが増産されたのは言うまでも無い。




さて、そんな感じに会社を作っていく最中、俺は俺として別口で、戦いの準備を始めなければいけない。
本編に介入するにせよしないにしろ、俺は既に原作ブレイクを目的としている。
そのための種も既に各国にばら撒いた。
後は実行する為の手段を用意する必要があるのだが。

「カリン、欠落した記述は無いんだな?」
《肯定。状況は前世から完全な引継ぎを確認》

という事らしい。つまり、魔術の行使に関しては、少なくとも魔導書に関しては完全だ。
後は俺が身体を鍛えて、実際に魔術を運用し、その反動に耐えられるようになればいい。

然し、ソレとは別に、矢張り魔術を補助するための術式兵装は新たに編みたい。
前回――というかループ時、俺は大抵ネクロノミコンに記載されていた対霊狙撃砲を使用していたのだが、どうにもアレは取り回しが悪かった。

対霊狙撃砲は如何考えても中距離~遠距離の、名前の通り狙撃を目的とした代物だろう。
大して俺の特異戦闘範囲は近距離~遠距離の万能型。確かに遠距離戦では使えるが、近距離~中距離では取り回し辛い。

嘗ての無限螺旋では、魔導師としての錬度も足りず、魔導師として一定以上の階位に達したときには既に武器の性能に左右されるような無様を晒すレベルは卒業していて、結局最後まで対霊狙撃砲で戦い続けたのだ。
が、現状は違う。身体は幼く、術の反動を全開で受け続けると、幾ら俺とは言えど戦闘継続時間はどうしても短くなってしまうだろう。
と言うわけで、反動を抑えるため、新しく術式兵装を用意することになった。
決して、格好いい武器を使いたいからとか、それだけの理由ではない。うん。


「モデルになる銃ですか?」
「そう。ハンドガンで、格好イイのがいい」

デザインを担当している社員の青年一人に尋ねてみた。
何せこの拳銃のデザインと言うのが途轍もない数存在している。
俺が見ただけでも、ソーコムピストルだとかいろんな種類が存在した。

因みに、スプリングフィールドって銃があったのは驚いたしワロタ。

「それじゃ、オート9とか如何ですか?」
「えっと……ロボ|警官《コップ》が装備してたアレ?」
「自分で言っててなんなんですが、良くわかりますね……」

まぁ、10歳未満のガキがオート9で即座に反応すればそりゃ違和感か。

「でも、アレって架空銃っしょ?」
「あれはベレッタですよ。設定上はM92なんですけど、実際の設計にはM93Rを使用されてるとかで。俺の友人にプロップガンで作ってみたって自慢してきたやつが居たんですけど、そいつもM93Rを下敷きにやってましたし」
「ふーん」

なるほど。ロボ警察の銃ねぇ。
でもベレッタってことはつまり9パラ。イブン=ガズィの霊薬の封入量が減る気がするのは俺だけだろうか。
だってほら、大十字とか50AE弾とか普通にぶっぱなしてたじゃん。
でかい魔物相手にするなら、段数が――いや、相手は人間の魔法使いの可能性もあるのか。

とりあえずオート9は候補の一つにストック。

「他には何か候補ない?」
「小型でスタイリッシュならワルサー、無骨な兵器ならばH&Kですかね」

多分社長ならH&KのUSPマッチとか絶対好きですよ~とか言われて、実際にネットで見て惚れた。
然しコイツを下敷きにするには、限定生産と言う壁が存在する。手に入れるのは難しいだろう。
――いや、いっそトイ・リアニメーターに削りださせるか?

案の一つだな。


「威力でいくなら、S&WのM500とかですかね。俺はあんまり好きじゃないんですけど」
「なんで?」
「だってほら、弾丸を矢鱈とでかくしすぎです。でかけりゃいいって物じゃないと思うんですけどね」

うん、大十字に是非その言葉を言ってやりたい。
シモも弾丸もでかけりゃいいってモンじゃネーんだぞ!!
ニトロ砲の大十字。侮り難し。

「M1911も良いんですけど、流石に古過ぎるし……」
「流石に100年前の銃はねぇ」

で、結局如何したかと言うと、とりあえず色々と手に入れて、実際に弄ってみることにした。
因みに密輸である。





「ふーむ。Mark23が予想以上に手に馴染む」

H&K社のMark23.つまりはソーコムピストルだ。
もっと簡単に言うと、ダンボール好きな蛇の愛銃だ。

「まぁ、格好いい銃ですね。ちょっと食傷気味な気もしますが、それだけ名銃ってことですし」

連射性能とかはベレッタに劣るが、45口径で耐久性も高く、汎用性も高い。
凄く……俺好みです。

と言うわけで、早速術式兵装化を開始する。

一応だが、大十字九郎の持っていたあの二丁の「暴君の魔銃」のデータは記録させてもらっている。
共に優れた魔術理論で余れた武装で、アレがあれば素人でもある程度戦えてしまうというような、とんでもない一品だ。

聊か便利すぎるアイテムではあるが、こちらは幼少の身体。あまり拘っていられるような状況でもない。
と言うわけで、Mk.23をガリガリ改造していくことにした。

基本的なところは同じままで、要するに魔導師の杖としての性能を上書きし、ソレを更に術式として再構成しなおすわけだ。
要するに俺が必要とするのはこのMk.23の影。実体の影を取り込み、それに術式を描き完成した一つの術とする。

「と、言うわけで俺は暫く作業に篭ります。素材は用意したし、リアニメーターにも指示は入れといたから、後頼むね」
「ちょ、社長!」

悲鳴を上げる新人さんを尻目に、地下の魔導実験室へと足を運ぶ。
何よりも、新しい玩具にわくわくしていた。

02 戦士は道を選びて……。

2012.03.17 (Sat)

結局の所、あの村の惨劇は、魔法使い達によって完全に隠蔽されてしまった。

「――人の頭勝手に弄りやがって……」

ウェールズの病院の一室。目覚めた途端、記憶の欠如に気付いた俺は、即座にカリンを装身。カリンの呪力により即座に消された記憶を補填し、更にいざという時のためにカリンに記述しておいた原作知識を再読した。

2ch用語により暗号化された原作知識群は、即座に俺の頭に馴染む。
そうして気づいた。この世界が、ネギまであると。

……デモンベインの次がネギま。意味が解らない組み合わせである。
まぁ、ニトロつながりで沙耶の唄とか、ニトロの親しい型月世界に飛ばされたりせずに良かった、と考えるべきか。

さて、話がそれたが、俺の起すべきアクションは幾つあるのか。
先ず母さんに父さんのことを話さねばなるまい。母さんからは闇の気配はしなかったものの、父さんの配偶者である以上、少しなりとも魔法についての知識は所有していると見るべきであろう。
――あの父さんのことだし、もしかすると言っていない可能性もあるが。

次。ネギま世界だとわかった以上、この世界には「正義の魔法使い」なる存在が跋扈していることになる。
あんな邪悪な連中に地上が犯されているのかと考えると、ちょっとドコロではなく憂鬱になる。

と、なれば。

「門を砕くか」

MMの暗躍を許す旧世界。
魔法世界が滅ぶ? 旧世界への移住計画? 魔法世界の人間を救う?

知ったことではない。魔法世界は魔法世界、旧世界は旧世界として独立すべきだ。
他者に頼り、他者を食い物にする。それは間違いなく邪悪。討つべき対象だ。
未来も大切だろう。けれども、今を大切にしないやつに未来は無い。

MM、許すまじ

石化した村人は父のついでに助ける。が、その場合考えられるのはMMの再犯だ。
それを回避する為には何が必要か。
MMの干渉の除去。つまりは門の破壊。

なんとも簡単なお仕事。

では、ソレをする前に先ず一仕事。

「おぉ、おきたかねコーイチくん」
「あの……貴方はどちら様ですか? 此処は?」

病室の扉から現れた、いかにも魔法使い然とした白髭の老人。
俺の知識が正しければ、現メルディアナ魔法学園校長。ネギ・スプリングフィールドの祖父にして英雄の父。

とりあえず魔力やらその他諸々は隠蔽してある。精神にも擬装を施しているので、そう容易く見抜かれることは無いと思うが。
最初のお仕事は、惚けること。うむ、ハズい。





と言うわけで何とか日本へと帰還しました。
付き添いに付いてきた魔法使いらしき人物が、母に事情説明を行っているらしい。
正直ありがたい。事情を知る筈の無い俺が語るよりも、関係者が語ってくれたほうが楽だ。

――ただし、あまりハッチャケたことをしたら許さんが。

うん、最悪母さんの記憶を弄られるかもしれないと警戒していたのだが、どうやら其処まで悪辣な魔法使いではなかったようだ。MMの人間は大抵悪辣というのが俺の頭に入っている知識だし。

さて、そういうわけで母さんに呼び出された。父さんに関する事情説明をするらしい。
ついでに何故か傍に居る魔法使い。何時までこの家に居座る心算なのか。さっさと帰れ。

「こうちゃん。大切なお話があります」

そう前置きして話されたのは、『魔法』の存在と、父親がソレに携わっていたこと。
――っておいおい、ソレ俺に話すのかよ。
で、何故に俺にそんな事を話すのかと言うと、どうやらこの俺を送ってきた説明の魔法柄い。こいつが俺のことを育てたいとか言い出したのだそうだ。

「どうだ。キミに学ぶ気が有るのであれば、俺が師と成るが」

ゴメン、物凄く怪しいです。

「その前にお聞きしていいですか?」
「なんだ?」
「何故僕を弟子にしようと?」

問うと、白人系の男性である魔法使いは、少し悩んだような様子で口を開いた。

「ワタシは、キミの父と友人だった。本来ならあの事件の翌日、一緒に集まって酒を飲むはずだった」

そう口惜しそうに言う男性。なんでも、(何処とは言わない)本国の下請けとして働いており、遅れて合流する手はずになっていたのだとか。

「ギンジの息子だ。本当ならヤツが手ずから育てたかったのだろうが」

なるほど。父さんの代役をやりたいと。
精神のほうにも擬装は感じられず、本心を語っている様子だ。別にこの人についていっても問題は無さそうだ。

「一ついいですか?」
「なんだい?」
「その場合、ぼくは何処に住むんですか?」
「うむ。イギリスのメルディアナに行こうかと考えている」

メルディアナには魔法書の蔵書も多く、勉強には適している~とか云々。
なるほどコレはネギ寄りルートなわけだ。
此処で頷けば、ネギに近く、メルディアナで学び魔法を習得する王道ルートに行く。
大して此処で首を振れば、一般人として過すノーマルルートに行くのだろう。

ルートで物事を語る俺乙。

「止めときます。ぼくは母さんと一緒にいます」

ちょっとだけ悩んで、結局そう答えた。
何せ父がいなくなった今、俺までこの家から居なくなってしまえば、後に残るのは母一人。それは拙いだろう。

第一、俺が魔法を習得するメリットはあまり無い。
ファンタジー系世界の中で、最も融通が利くニトロ類クトゥルフ系魔術をかなり高い階位で修めた俺だ。今現在は十全に使えるというわけではないが、コレが完全に使いこなせれば、あの石化とて解くことは可能だろう。

寧ろ魔法なんていう脇道に逸れて解呪が遅れるほうが問題だ。

「――そう、か。ふ、さすがはヤツの息子。流されないな」
「ですか」
「だが然し、キミには何時か麻帆良学園に行って欲しいんだけどね」

なんだろうか。俺を本編に巻き込む心算なのか?
まぁ、時が来ればそれも一つの選択肢かとは思うが、残念ながら俺にはやるべきことが――いや。

「んじゃ、麻帆良に入学します」
「――いいのかい? そんなにあっさり」
「母さんがなんていうかわかりませんけど」

問うた瞬間OKが帰ってきた。さすがは母さん。

「うん。ならこれ以上俺に出来ることは無いだろう。そろそろ失礼させていただく」
「はい。お世話になりました」

母さんが魔法使い氏を見送りに行くのを尻目に、色々と考えるべきことが出来た。

この世界で俺が何をすべきか。
ソレをなす為には如何いう手段を用いるべきか。
そして、保険の製造。

考えるにつれて、大体の構想は即座に纏まってきた。
でも、そのためには資金を作らなければならない。

資金――くくく、そうか資金か。
ソレを得る手段は既に手の内に。思い浮かぶのは緑の髪のわが師、変態科学者。

考えが纏まった時点で、とりあえずアレを作るために近所のホームセンターに行くことにした。

勝利の鍵はトイ・リアニメーター。

さて、作ってみようか。
俺の、魔を断つ剣を。

01 無垢なる一刃、異界に降りん。

2012.03.17 (Sat)

燃える炎と、襲い来る偉業の化物。
常軌を逸したその光景は、漸く手に入れた平穏がまたまがい物であったのだと確信するには十分すぎる光景だった。

「馬鹿な……」

けれども、ふざけているのはそれだけではなかった。
敵対し、此方に対して攻撃を仕掛けてくる異形。異形達はその魔の力で村に火を放ち、逃げ惑う人々を石へと変貌させていく。
けれども、けれどもだ。
村人達も仰々しく呪文を唱え、あの異形達に光の矢を撃ち、酷い有様ではあるものの、確かに抵抗を返しながら撤退している。

一体如何いうことだと、自分の中の常識が崩れ去るような、そんな感覚に襲われた。





――俺の名前は諏訪鋼一。しがない日本の一般家庭に生まれた転生者だ。
いや、転生者であったのは、たぶん過去の話なのだと思う。
俺が生まれたこの日本は、もう既に過去に俺が生まれたあの世界とは大分様相が違う。

俺が過去に生まれた世界。魔と機械が跋扈する、妖幻の世界であり、敵対的邪神と魔導師達が世界をかけて戦い続けたアザトースの庭。
俺は、その世界に邪神の悪戯により産み落とされた、邪神の眷属でありながら人の側に立つ魔導師だった。

そう、あの最後の戦いも覚えている。
大導師と魔導探偵の最終決戦。邪神達の入り口。その中へと消えていった二人と二機と二冊。
そうして書き換えられていく世界。

外側からの干渉を断ち切ったあの世界で、俺は最後の最後まで生き抜いて、そうして死ねたのだ。
享年は……確か56くらいだったか。

そう、俺は確かに転生者として働きはした。
しかし、もう既に俺の任は解かれたはずだ。
だから、今回俺の記憶が転生後に目覚めてしまったのも、何等かの事故か手違いだと判断した。

なにせコレほどまでに平和な世界だ。俺が手を出す必要性なんて何処にも無いだろうと、そう思っていた。


事の始まりは、俺が六歳になり、嘗ての記憶を取り戻して丁度一年程たった頃だろうか。
その頃になると、俺も嘗ての知識をある程度会得しなおすことに成功して、基本的な魔導を幼い身体に馴染ませることが出来た、と言うくらいの頃だ。

それで気づいたのだ。父親の身体に残る、魔導の臭い。
魔に携わる物であれば、隠し様の無い、あの気配だ。

ただ、俺の知るソレとは少し違う。俺の知るのは邪神の力を借り受けるものだが、父親の身体に残るこの気配は、何処か風を感じさせる、暗い臭いとは遠い気配だった。

俺が知るのは字祷子の魔導。けれども、此処は高確率で字祷子の庭ではない。
何故なら邪神の気配が無い。過去の歴史を調べても、覇道財閥が存在せず、アーカムが存在せず、またプロヴィデンスが現存している。
此処はあの世界ではないのだと、そう納得していたのに。
だと言うのに現れた魔の気配。

まぁ、人の世だ。生きていれば魔の一つくらい出てもおかしくは無い。
そう納得していたのに。

「鋼一、ちょっと外国いこうか」

父にそう誘われて訪れたのはイギリス、ウェールズの山奥。
古い記憶が危険を叫ぶ。もしかすると、それは俺のオリジナルの知識だったのかもしれない。所謂原作知識と呼ばれるそれ。だが然し、そのときの俺には知識を思い出す術がなかった。
何せ無限螺旋で幾星霜に渡る時を過したのだ。邪神の加護がなければ、俺も確実に壊れていたと思える年月。
まぁ、途中で何度も未覚醒のままループが終わった世界も多々あったが。

そうして訪れたウェールズの山奥。
なんとも怪しげなその村。なにせこれほどの山奥に有ると言うのに、発電機もなければ移動手段の車も存在しない。
だと言うのに、何処の家にも街で手に入るような普通の家財道具が並んでいるのだ。
そして極めつけは、この村を囲うようにして張り巡らされた結界。
この村に入るときに見えた霧と感覚からして、多分外敵から身を隠す為の、認識を阻害する類の結界だろう。

――認識阻害?

なんだか聞いた事のある単語に、記憶が少し刺激される。
ああもう、カリンさえ手元にいれば少しは違うのに。

そんなことを考えながら、父と俺はその村に一泊することと成った。
何でもその村にいる父の友人に会いに来たとかで、数日ほどこの村に滞在することになった。
本来ならこの山の麓にある街に宿を取る筈だったのだが、父の友人に勧められ、この村に滞在することになったのだ。

確かに一々麓の町に帰るのは面倒ではあったが、此処で家に帰っていれば、後々の面倒はなかったのではないかと、後になって後悔している。





村に滞在している間に。俺は二人の子供と知り合った。
ネギとアーニャ。名前を聞いたとき、物凄い頭痛に襲われた。記憶の復旧は成らないが、このことから考えて、この二人は何等かのキーパーソンであることは間違いないだろう。

アーニャはまだマシだったが、ネギは山奥に住んでいると言うだけあって、途轍もなく田舎ものだった。正直アーニャもまだまだだとは思うが。まぁ、そういうわけで、二人は俺の(実質数百年分の)知識に目を輝かせて食いついてきた。

ジャパニーズ折り紙とあや取り、その他縄跳びやら色々で遊んだ。
此方の方が年上と言うこともあって、二人をリードして遊んでいたのだが。うん、アーニャめ。年上を全く敬わん。いいけど。

――言葉? ハハッ、数百年アーカム在住だった俺を舐めんな。

アーニャは麓の町の学校に通っており、学校の休日にこちらに帰ってきていたのだそうだ。
ネギとアーニャは、この村にいる数少ない子供だそうだ。解りやすい少子化。過疎が進み、子供が減っているのだろう。
然し、こんな不便なところに住んでいれば、過疎も進んで当然だとは思うが。

で、俺とアーニャとネギは散々遊びまくった。
数百年分の記憶があるとはいえ、今の俺は「今の俺」なのだ。要するに、精神年齢が退行していた。
ネギから魔の才能を感じたり、アーニャに炎の魔の――クトゥグアの好みそうな気配を感じたりしたが、まぁソレはおれの関わる部分ではない。
何となくそう割り切って、というか興味を持たず、ただ綺麗な緑の山肌を駆け抜け、釣りをして遊び、食べて遊んで遊びまくった。

途中、なにやらネギが自分の父親は偉大なマホ……とか口走って、アーニャに叱られていたのがとても印象的だった。う~ん、フラグ。
ネギの従姉妹のネカネさんが何時も後ろで微笑んでいたのが妙に印象に残った。



そうして数日。アーニャが一足先に山を下り、涙をボロボロ零すネギを何とか慰め、一緒に湖まで釣りに行ったその帰り。

「……なんだよ、これ」
「おねーちゃん!? みんな!?」
「あ、ちょ、止まれネギ!!」

悲鳴を上げたネギが此方の静止も聞かずに走り出す。
赤く染まる夜空と立ち上る熱気。何処からともなく響く悲鳴と爆音。

ネギに続いて村へと近付くにつれて、それははっきりと見えた。
千を越える異形の群れが、小さな村を飲み込もうとする光景。
その余りにも洒落にならない光景に、背筋に冷たい物が走る。

――逃げなければ。

幾ら無限螺旋を経験した俺とはいえ、今の俺は所詮6つの餓鬼だ。
確かに魔導はつかえる。然し、魔導書の無い現状では、精々基本的なところが限界。嘗ての術式兵装は当然使えず、また術式補助のための兵装も、この世界に着てから魔導を使うことなど考えていなかったため、当然所持どころか製作すらしていない。

出来るのなんて、レジストと術式防御、あとは肉体強化くらいか。

大慌てでその場から逃げ出そうと踵を返そうとして、ふと父親のことを考える。
――あの父親、もしかして村にいないか?

ゴクリとつばを飲み込んだ。
今生のとはいえ、父は父。俺は俺でもあり“俺”でもある。今生の俺は、また独立した俺なのだ。
だから、と言うわけではないとも思うが、俺は父が好きだ。母も好きだ。
そうして俺は知っている。父から漂う魔の気配は、とてもではないが強いとは言えず、アレが魔術なり魔に携わる者であるとすれば、寧ろ普通に雑魚の類だろうと。

その父を……見捨てる?

無理だ。無理無理。あの根性無しでヘタレで、でも弱者を見てみぬフリの出来ない心優しい馬鹿親。

俺が無力で有ればよかった。無力であれば、理不尽を理不尽と受け入れられたかもしれない。

……けれども俺は持っている。理不尽に抗う力を。魔を討ち滅ぼす力を。

「ああっ、チクショウっ!!!」

悪態をついて、意識を集中する。
大切なのは何時だって意志。闘争本能を奮い立たせ、それを意志を持って制御する。
封印していた魔力の蓋を開き、巡る魔力を整然と体内で循環させる。
最も初歩的な身体強化。しかし、それ故に強靭な身体の守り。

小さく一歩を踏み出して、そのまま一気に村に向かって走り出した。






村は酷い有様だった。
所々で火の手が上がり、転がる石像からは酷い闇の気配が立ち上っていた。
石化の呪。この世界では如何だか知らないが、古から存在する、かなり凶悪な魔術。
試しにレジストをかけてみる。時間さえあれば解呪も不可能ではないと判断して、即座にその場から移動する。

その最中で、見つけてしまったのだ。

「う――そ」

石像とかした一人の人間。杖らしきものを掲げて、その姿で石像と化した見慣れた顔。

「――ヌ、マダイキノコリガイタカ」

そうして、近付いてくる魔の気配。

「ガキダト? コノムラニイルガキハ、スプリングフィールドダケデハナイノカ?」
「ハナシガチガウ……ガ、契約ハ契約ダ」

けれども、魔の気配だとか、恐怖だとか、そんなものよりも先に来るものがあった。

「デハ……」
「ウム」

胸のうちに沸々と滾るこの感覚。
祈りであり願いであり切望であり希望である。

「――ヌ!?」
「コノ、ケハイハ――!?」
「イカン、殺セ!!」

ソレは永劫。裁きの刃。
ソレは憎悪。無垢なる怒り。
ソレは虚空。許されざる全。
ソレは魔風。無窮の刃。
ソレは刃。魔を断つ剣。

記憶が力を貸してくれる。

悪魔の手の平に集う魔光。けれどもそれは、内側から沸き上がる魔力の本流に掻き消され。
放たれたとび蹴りは、その一撃で悪魔の存在を砕く。

「グガアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「ナンダオトォ!?」

右手を振るい放たれる烈風と火炎。それは四方の悪魔を飲み込む。

怒り。怒り。怒り。
憎悪が身体を作り変える。
ただの人であることから、魔導師であるための身体に。
ソレまでに行った作り変えすら塗り替えて、その器は嘗ての物に勝るとも劣らぬものへと。

――魔導師、諏訪鋼一

外見は変わらずとも、その存在する意味は既に大きく異なる。
ここにいるのはこの世界唯一の魔導師であり、同時に魔を断つ願いを託された一欠片。

「ふむ、この村にこれほどの使い手が居ようとは。――それもまだ子供か」

身を包む火災旋風。その外側に現れたのは、外見人の姿を取った化物。
俺にその類の擬装は効かず。

「我が名はユリウス・ハンス・フォン・ハイエク。一手お相手願おう」

そんな悪魔の名乗りと共に、火災旋風の壁が突破される。
咄嗟に防護障壁を張ったものの、その上からでも通るほどの拳の一撃。身体を背後に飛ばして被害を軽減させるが、それでもその打撃は怒りに支配された俺を冷静にするには十分だった。

フォンを名乗る悪魔。なるほど爵位持ちか。
あの世界では悪魔よりも邪神の脅威が大きかったが、それでも悪魔と言う存在に関する知識は多少持ち合わせている。
確か悪魔にも爵位制が採用されていて、当然上位者のほうが強い。

だが、俺の知ったことではない。
追撃に何等かの魔導らしきものを放ってくる悪魔。
けれど、もう俺にはソレを回避するという選択肢すら取る必要を感じなかった。

「なっ!?」

完全覚醒した瞬間から感じていたもの。
時間すら、世界すら超えて、此方にいたろうとする意志の手。
契約と聖約により我等は滅びても、朽ちても、それでも尚共に有り続けることを誓った。

出でよ、現れよ、顕現せよ、我が手に、我が下に、戻れ!!


「カリィィィィィイイイイイイイイン!!!!!!!!!」


瞬間、天壌が砕けたガラスのように弾け散り、その中から一冊の本が降り落ちる。
革表紙に、金の留め金のなされた革表紙の冊子。

本が現れると同時、砕け散った天壌は、時間を巻き戻すかのごとく空へと舞い上がり、天壌に開いた虚空を何事もなかったかのごとく埋めなおす。

けれども何事もなかったわけではない。
確かに、此処に、我が手の内に。

「カリン」
《探しました、マスター》
「遠い場所まで、良く来てくれた」
《わが身、我が心、我が魂は常に主様と共に》

我が魔導書、カリン。魔導書ネクロノミコンラテン語版からの再編版。
原本とは異なり、ラテン語版を下にセラエノ断章や、エイボンの書などの記述を理解し編纂した知識が取り込まれている。
つまりコレは、ネクロノミコンの皮を被ったオリジナルの魔導書だ。
そしてカリンは、無銘祭祀書――黒の書を取りこんだ際に発現した書の精霊。
俺と無限螺旋を共に歩んだ、異界の魔導書である。

「|魔導戦闘形態《マギウススタイル》」
《肯定。魔導戦闘形態実行》

魔導書のページが風に舞い、同時に身を包み込む。
身を包む暖かさが、同時に身の内から更なる熱気を呼び覚ます。

「魔刃鍛造」
《バルザイの偃月刀》

右手に鍛造したソレを振りかぶる。
風に乗った偃月刀は、その刀身に刻まれた炎熱術式により刃を白熱させ、驚愕に立ちすくむ爵位持ち悪魔を腹から真っ二つに引き裂いた。

「――馬鹿、な……」

手元に戻った偃月刀を再び振りかぶり、地に沈む悪魔に止めを刺す。
人外の生命力は舐められない。確りと止めを刺す。これはホラーハンターの常識。

然し、これで状況は確認できた。
力の状態は万全。何故かこの世界には存在しない筈の旧支配者の力も行使できた。
そしてカリンの召喚方法からみて、ヨグ=ソトース……つまり外なる神の力もある程度は行使できると考えていいだろう。

本当に邪神の力を行使しているのか、それとも俺個人の異界法則が邪神の力をエミュレートしているのか。
現状、嘗ての自分に比べて、妙に力が増している現状、どうにも後者っぽい気がしてならないのだが、それは脇にのけておく。

とりあえずやるべきことは一つ。あの調子こいた悪魔どもを殲滅しなければなるまい。

「対霊狙撃砲」
《展開》

そうして瞬時に手に現れた魔導師の杖。

《イア・ハスター》
「狙い撃て!!」

放たれた凍風の魔光は空へと昇り、四方八方へ向けて無差別に降り注ぐのだった。

「――何っ!?」

そうして悪魔を殲滅する最中、何処からともなく強大な魔力が湧き上がった。
咄嗟に身を伏せると同時に空を覆う雷光。

その大半は丘に集う悪魔の群を穿ったが、狙いの逸れた幾つかが、村に向かって降り注いで。

「っ!!」
《呪紋障壁最大出力》

張り巡らされた障壁に直撃する雷光。
一つ一つが重いそれ。幾重にも打ち込まれた雷光に、思わず反撃を返そうとして、不意にめまいに襲われた。

「――っ、これは……まさか」
《急激な魔力行使による負荷です。マスター、ご自愛ください》
「しかし――ダメか」

意識が薄れるのを感じる。
咄嗟に身体を動かして、地殻の森の中へと飛ぶ。
何とかたどり着いた森の中、浮き上がり樹の上に身体を横たえて、漸く一息。

石化の呪をディスペルするにしても、現状の俺では力不足だろう。
とりあえず、一休みしなければ。

やることは多い。けれども、焦ってもいいことは少ない。
逸る己にそう言い聞かせて、一時の眠りに意識を沈めたのだった。

01 ギャルゲ世界に立つ(てしまったどうしよう)

2012.03.15 (Thu)
――勘弁して欲しい。

代行に依頼されて、久しぶりに平凡な世界へのトリップという事に成った。
多重転生トリッパーである私は、幾多の世界を繰り返す事で、徐々に力を蓄え続けるというタイプのトリッパーだ。
利点として、ご都合主義系の神から与えられた能力ではないため、割と自由が聞く。
不利点としては、スタート時には完全に一般人でしかない、と言う点か。
私の場合はとあるSF系世界でその世界の中枢とも言える力を手にして、物語を開放した後、その力を持って気ままなトリップを行っていたのだ。
が、そんな私に目を付けた存在がいた。それが、代行殿だ。
代行殿は文字通り、神(筆者)の代行。使徒とか天使とか、つまり作者代理と言うことだ。
――何かメタな電波が混じった。検閲されている。
なんでも、代行はその昔、ご都合主義系のトリッパーを大量生産しての枝世界介入を実行し、一部……というか一人の例外を除き、その大半を見事に破綻させてしまったらしい。
その結果代行はご都合主義系トリッパーの生産を取りやめ、スリッパー――偶発的転生、ないし偶発的迷い込み系の人格をスカウトし、それを枝世界に送り込む事で物語を開放するという手法に切り替えたのだとか。
私の場合はそのスカウトの一号なのだとか。
そもそも幾当ても無く各世界を放浪していた私にとって、一つ上の視点からの任務型式での介入というのは少し興味を引いた。
まぁ良かろうと容易く受け入れてしまったのだが――。
スカウト1号というのが災いした。
私はSF系出身だというのに、何故か連中は私をSF系ではなくジャンル問わず介入させた。
紅○の徒と殺し合いする羽目に陥ったときは本気で泣き掛けた。オル○ン・エクストラクターとゴーストをスイーパーする世界で目覚めた霊能力でなんとか撃退できたが……。
とりあえず、最近は一人後輩をスカウトしたので、私に割り当てられるタスクが減った。
おかげで今回、半ば休暇という扱いで、平和な世界にトリップすることとなったのだ。

……が。

「アツシくん、屋上で一緒にご飯食べない?」「あ、明日ちょっとアタシに付き合え!」「そんな、無理な笑顔なんてしなくていいんだよ?」「うん、タクヤくんは笑顔が似合うね!!」「会長、一人で無理しないでください。私も、皆もいます!」「私の前では本当の顔をしても大丈夫ですよ?」
とまぁ、こんな感じの会話と言うか、なんというか。フラグ建設に必死な自称ヒロイン達の泥沼合戦が繰り広げられているのだ。


事の起こりは、この世界が腐女子ゲーの世界に私が放り込まれた事から始まる。
私の送り込まれる世界と言うのは、大抵何等かのエラーが存在するか、暴虐を振るう転生者を粛清するだとか、むしろ私が原作を破壊せねばならないだとか、世界にもよるが色々な課題が存在する。
今回のような休暇トリップの場合はそういう課題は免除されるのだが、だからといって何の問題も無い世界にトリップ出来るわけではない。あくまで代行殿の裁量の範囲内でのトリップなのだ。
で、私が投げ込まれたこの腐女子ゲー世界。何がおかしいかというと、どうも多重オリ主トリッパーな世界らしい。
最初、用意された戸籍やらを確認して、指定された高校に入学して。
舞台の上で話す生徒会長が如何視ても耽美系とか言うやつだったのを確認し、「あ、腐女子ゲーか」と納得し。
そうして配属されたクラスで、思わず頭を抱えた。
何せ、クラスの7割が狙いすぎな美少女。残り三割は各種イケメンという有様だ。
それも七割の女子は、その6割が汎用茶髪美少女、2割がピンク髪、1割が青髪、残り一割がその他と言ったような有様だ。
さっと調べた所、コイツラ全員転生者だった。
つまり、リアル逆ハーな世界を望んだ多数の転生者が、一つの世界に押し込められたと、そんな世界なのだ此処は。
最初に気付いたのは誰だったのか。ヒロインたる自分が優遇される筈の世界で、自分に対する補正があまり効果を見せないという事に気付いたのは。
徐々にその事に気付いた彼女達の取った行動は、当に血で血を洗う醜い争奪戦。美形男子達に声を掛けては必死にフラグを立てようとし、次から次へと別人へ声を掛けていく。一人をしっかりと狙えば落とせそうな気もするのだが、彼女達はそうしない。猛禽類の如く瞠目する彼女達の瞳を視るに、こう、絶対にハーレムルートで色男を侍らせる!! という邪なオーラがムンムンと。気付いたときは思わず苦笑して、そのまま頬が引きつった。
何せ、このクラス、私と数人を除いた女子は全員同じ目をしているのだ。
そんな血なまぐさい戦場に足を突っ込みたくないと、前髪で顔を隠して一番後ろの窓際の席を陣取る。それが功を奏したのか、幸い私は彼女等の争奪戦には加わらずに済んだ。というか加わりたくない。

然し、可哀想なのは元々のこの世界の登場人物たちだ。
哀れ原作主人公と思しき少女。何せ周りが男を狙う腐女子ばかりだ。きっと原作で見せたのであろう快活な笑顔は、周りの腐女子にしてみれば男を狙う敵以外のなんでもない。早々に全体から攻撃を喰らいハブられ孤立した。余りにも哀れだったので思わず私が声を掛けてしまったほど、連中の手際の見事な事。さすが元OLだとかそんなのばっかりだけある。年下イジメンナヨカッコワルイ。
で、原作主人公の友人キャラと思しき少女。彼女は逆に周囲からの引く手数多。四方八方から声を掛けられているが、引きつるを通り越して顔面が痙攣している。
何せ痛々しい発言を繰り返す彼女等だが、その全てが美少女なのだ。多分特典だろうけど。連中にしてみれば、彼女は「友人キャラ」でしかなく、自らの引き立て役、利用価値の高いアクセサリーを手に入れようとしているだけなのだ。
洒落にならないレベルのストレスを受け続けた彼女は、結果心を病み、保健室の住人と化した。哀れ。
それでも彼女に声を掛けようとする腐女子トリッパーがいたので、流石に介入してしまったが。哀れ。
本来ならクラスの半数を占める大量のモブたちがいたはずなのだが、彼彼女らは一つ下のクラスへとずれ込み、平和な日常を送っている。何気に彼等が一番ラッキーだろう。
対する攻略キャラの男子諸君。
本来なら男子モブに囲まれて、ある程度は普通の学生生活をエンジョイできていた筈の彼等だが、このクラスに残された男子は全員が攻略キャラ。つまりは物凄く癖のあるキャラクターばかりなのだ。
そういった連中と言うのは、大抵の場合がソリが合わない。連中の場合も見事にソリが合わなかったらしい。
攻略男子諸君は其々に上手く交友を結べず、結果其々が各個人として逆ハー狙いの腐女子相手に奮戦する羽目となってしまっているのだ。哀れ。
でも、堪忍して欲しいのは私も同じだ。
私も女性暦は長いとは言え、オリジナルのパーソナリティーは男だったし、女としても曾孫の顔を拝んだこともあるようなある意味枯れた人間だ。
今さらこう、(性的な)欲望溢れる戦場に投げ込まれると言うのは、精神的に辛い。


まぁ、とりあえず。
そうした連中に囲まれて、「コレも青春か」なんて呟きながら、久々の高校生活を楽し――たのし――たの――っ!! た・の・し・ん・で!!
……なにか、休暇の筈なのに、ストレスばっかり溜まってる気がする。
げふん。この生活を続けていたのだが。どうも、周囲の(腐女子)連中、私の事を友人位置のモブだと認識したらしい。
私を原作ヒロインから引き離し、自分の陣営に引き込もうと行動しだしたのだ。
そうそう、最近になっての話だが、腐女子たちは幾つかの派閥に分かれた。ねらい目以外をわけあう、という名目で協力しているらしいが、アレは多分土壇場で普通に裏切る。
で、友人ポジションその2らしき存在である私を自陣に引き込む事で、自陣の優位性を少しでも確保しよう、と。
……く、話に関わらないように遠巻きに逃げていたのが裏目に出たか。
自分で言うのも何だが、私は結構美人だと思う。身長は170と少し高めだが、肩の辺りで束ねた長髪と黒髪、ある程度引き締まった筋肉と、巨とはいえないが、確りと自己主張する胸も持っている。どこぞのエロゲの攻略ヒロインその3くらいのレベルはある、と思う。
だからだろうか。周囲の腐女子は当初、私の事を同じく転生者の一人(クーデレ系)と認識していたらしい。攻略男子達に気がないと言う様子はポーズで、それを気にした彼等が声を掛けてくるのを待っているのだ……と。
正直、その話を聞いたとき、それを口にした腐女子を殴り殺したくなった私は間違ってないと思う。
とりあえず、当初は敵だと判断されていたのに、争奪戦に入ってもいまだに介入して来ず、転生者だとすれば如何考えても機を逸している……つまり転生者ではなくモブだ、という考えらしい。
気分は当に「ブチ殺すぞ人間」という有様であったが、此処で私が暴れるのも拙い。
物語など当の昔に破綻しているが、だからと言って世界を破綻させるのは拙い。
――ふぅ。
アクセサリーの如く私を周囲に侍らそうと考える腐女子ども。物凄く腹が立ったので、そいつらのヒロイン補正を無効化してやった。
私のような、ある程度の回数以上トリップを繰り返している人間であれば、こういうご都合主義系の補正は大抵無効化できる。特に、こういう超ご都合主義を狙うトリッパー共の補正と言うのは、かなり無理矢理になっている。強欲トリッパーと言うのは、原作ヒロインが出会い→イベント→イベント→イベント→フラグイベントと五工程かけて進むイベントを、出会い→フラグイベントと、二工程に無理矢理縮めるのだ。こんなもの、私が少し手を入れれば簡単に破綻させられるのは理解してもらえるだろう。
逆に、原作キャラの主人候補正とかは、この工程が確りしている所為で中々妨害しにくいのだが……。
とりあえず、そうして私を自陣営に引き込もうとした馬鹿どもは見事に自滅していった。
何せ相手は只でさえ補正の効き辛い原作の攻略男子なのだ。補正があれば可愛らしく見える魅せミスでも、補正が無ければ只の間抜け。もう無表情キャラをやっている私が思わず爆笑しかけたのだからたまらない。
ザマァ、というやつである。



さて、そんなで馬鹿どもを眺めながら、日常を送っている中でのことだ。
「一緒に生徒会はいらない?」
原作ヒロインこと二条綾乃が、突如としてそんなことを言い出した。
「――は?」
「生徒会。この前ちょっと生徒会のお手伝いしたんだけど、そうしたら生徒会の雑務にスカウトされちゃったんだ」
「――ほぅ」
所謂生徒会フラグと言うやつか。この腐女子たちの妨害の中、良くぞそんな王道フラグを建てられた物だと、思わず感心してしまった。
――いや、もしかして、腐女子共が足の引っ張り合いをしていたからこそ、するっと綾乃がフラグを立てられたのかもしれないが。
「でね、今生徒会の雑務の枠がもう少し空いてるんだって」
なんでも、書類整理なんかの雑用に綾乃がスカウトされ、同時に情報処理系の雑務も探しているのだとか。
で、スカウトされた綾乃だが、丁度私がPCに矢鱈と強いことを思い出したらしく、私の事を生徒会に提起、そのまま綾乃が私にスカウトをかけてきた、という話の流れらしい。
「ふむ――なるほど」
「うん、それで、どうせなら友達のほうがよかったし、それで、ね?」
そういって此方を見上げるようにして、親に媚びる子犬のような目でこちらを見上げる綾乃。流石はヒロイン格。母性本能を物凄く擽られる。
だが、駄菓子菓子。ここで綾乃の誘いに頷いてしまうと言うのは、つまり私が晴れて腐女子達の攻撃対象に登録されるという事だ。
折角の休暇だぞ? あんな馬鹿共の相手をして消費したくないよ私は。
「(ウルウルウルウルウル)」
「ぬ、ぅ」
思わず目元を顰めてしまう。そんな私を潤んだ眼で見つめてくる綾乃。
――結局、私が折れたのはそれから20分ほど後のことだ。
「然し――綾乃も成長したか」
「え、なんで?」
「教室ではなく、屋上でそれを話す――学んだな」
「――あ、あはははは」
教室で言えば、またあの腐れ女子どもの興味を引いて、また阿鼻叫喚の地獄が顕現するのは眼に見えている。その辺りを理解して、こうして私との屋上での食事にそれを話したのだろう。どうも原作では屋上で何等かのイベントが起こると言うのは殆ど無かったらしく、滅多にあの腐れどもが訪れることは無い。
学校生活開始直後の綾乃であれば、何処であろうと元気にさっきの様な相談をしてきていたのだろうが、流石に腐れどもに絡まれるのは厭だったのだろう。こうして屋上で私と二人のタイミングで話を持ち出した、という事は。
――あれ? もしかしてこれ、成長じゃなくて、汚れたって言わない?
「如何したの?」
「――否。なんでもない」
まぁ、腐れどもよりは、綾乃のほうがうん千倍マシだ。綾乃のヨゴレなんぞ、大人なら誰しも被る程度のヨゴレなのだから。
「それじゃ、今日の放課後は生徒会へゴーだよ!!」
「ん」
とりあえず、若干の憂鬱を胸のうちに抱えつつ、昼食として用意したお握りを平らげるのだった。


test

2012.03.15 (Thu)
ぶろーぐ?
試しに作ってみた。
上手く機能しているのやら…?
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