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44 Rebirth

2012.06.21 (Thu)
--Side Other



「が、はぁっ……」

ガラガラと音を立てて崩れ落ちる廃材の中。そんな声と共に、一本の腕が天に向けて突き出された。
いや、正確には天でも上でもない。何しろその場では、上下と言う概念が当てはまらないのだから。

「ち、くしょう……イレギュラーめ……」

飛び散った廃材は、まるで重力を感じさせない動きでフワフワと宙を舞う。それもそのはず、その場所は月に等しく地球から離れた宇宙の片隅に存在する人工物の中なのだから。
そうして這い出してきた少女。赤い髪の毛をショートで纏めた、嘗ては快活であっただろう少女。その眼は暗く淀み、一言で言うならば腐った魚のような目をしていた。

数十分前。少女はこの世界のイレギュラーである存在を圧倒的力を持って叩き潰す為、この基地に対して襲撃を掛けた。
少女の得た力はIS適性Sと、とあるアニメの技術体系知識。亡国機業に取り込まれたとはいえ、その圧倒的な実力と力は健在。それを持って、イレギュラーを斃し、それを持って自らが表舞台へと台頭する。
そのはずだったのだ。

「おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれ、おのれええええええええええええ!!!!!!」

少女の怒気に呼応するように、その右肩を覆うISが激しく明滅する。
けれども、顕現するのは身を守る最低限のみ。現在の彼女のIS、グレンは、既に先の戦闘でエネルギーを使い果たし、今は彼女が地上へ戻るまでの間、最低限のエネルギーバリアを張り、少しずつ帰還分のエネルギーを必死に溜めているのだ。

けれども少女の憎悪は止まらない。
少女は手早くグレンのコンソールを立ち上げると、即座に自らの機体の状況をチェックし始める。
エネルギーは最低限。機体は左腕及びスラスターの70%が大破。

(……これでは、エネルギーが回復したところで、あのイレギュラーを終えないじゃないか!!)

憎悪に歪む彼女の視線。そのとき、まるで何かに呼ばれたかのように少女が視線を動かした。

「――急速エネルギーチャージャー……ツイてるじゃないか!!」

それは、IS学園や軍などのIS関連施設には必ずおかれている、ISに対して急速にエネルギーをチャージする為の装置だ。
エネルギーチャージャーの使用はISコアに対して負担を掛ける。然し、軍などでは訓練とあわせて常にエネルギーに余裕がある状況であるとは限らない。
万が一の時に備えた装置。それが、エネルギーチャージャーだ。
そしてそれは、奇しくも彼女が突っ込んだ格納庫にも設置されていたのだ。

「エネルギーは……くふふふ、一機分はゆうに在るじゃないか!! コレこそオリ主のご都合主義ってやつじゃないか!!」

エネルギーチャージャーは、ISというトンデモ兵器に充電を行えるという、ある意味これもまたとんでもない装置だ。そんな装置が、何故この廃棄された基地でまだ生き残っていたのか。
それは、このチャージャーの特性上、一度このチャージャーのキャパシタに電力を取り込み、それをエネルギー変換するという必要があるのだが、これは要するに基地そのものの電力が落ち、徐々に抜けていくはずだったキャパシタ内のエネルギーが、彼女が突っ込んできたときには未だ完全に抜け切っていなかった、と言うことなのだろう。
即座にISをチャージャーに接続。そのまま急速にエネルギーを充電する少女。

(これでとりあえずエネルギー問題は解決した。後はイレギュラーに如何やって追いつくかだけども……)

彼女にあるチャンスはあまり多くない。彼女の目的であるイレギュラーの抹殺は、遅れれば遅れるだけ原作イベントが進行してしまうという不利点があるのだ。

(けど、IS学園に襲撃をかけるのは拙い)

幾ら彼女とて、一対多の状況で圧倒できると思うほどの自信家ではない。
まして、IS学園は彼女にとっても有用な場所だ。此処で襲撃を掛けるのは、後にも先にも愚行でしかない。
であれば、矢張り殺るなら今回、このタイミングこそが望ましいのだ。

(けれどももう――いやまて、此処にISの充電器があった? ッてことはつまり……)

キョロキョロと周囲を見回す少女の視線の先に、無重力にフワフワとたゆたうコンテナの姿が眼に入る。
そうして、其処に刻まれた文字は――。

「これは――運命だ」

取り付き、コンテナのハッチを開放する。
途端にあふれ出たのは、ISのパーツ、パーツ、パーツの山だ。
優に数機分以上はあろうかというIS用のパーツの山。彼女の知識を用いれば、このパーツで機体を再生――いや、昇華させるにはそれほどの時間も必要としないだろう。

「私は未だ戦える!!」









グレン改め、ソウエンと名付けられたその蒼と黒のツートンカラーの機体。
グレンはそもそも亡国企業で盗み出したISコアを用いて作られた機体だ。その際に考慮されたのは、亡国企業という背骨の弱く、かつ消耗の激しい組織でいかに整備メンテナンスを充実させるかと言う点。
その点で鑑みれば、世界有数の汎用ISを有するN&Tのパーツを使うというモノだった。
コア構想を有するN&Tのパーツは、その汎用性ゆえに世界各国で利用されている。流出品を使うにしろ、盗み出すにしろ、整備性の面も鑑みればこの技術を使うのは必然。
そうしてコアシステムに順ずる機能を有する彼女の機体と、ソロモンに残されていたパーツの相性がよかったのは、ある意味では必然であった。
コンテナには量産品のパーツしかなかったが、扱い辛い特化装備などあっても使いようが無い。量産品しかないという事は、彼女にしてみれば寧ろラッキーな事柄なのだ。

「何処だ、何処に居る、イレギュラー!!」

地上であれば音速などというモノを軽く超越した速度で宇宙を直進するソウエン。
背中には馬鹿でかいブースターが一つ。それは、ソロモンに残されていたランチやVOBを無理矢理改造して作られたIS用航宇宙装だった。

本来なら追いつけるはずの無いその宇宙で、彼女は得た知識をフルに活用し、全身全霊を以って今このとき、再びスバルに追いつこうとしていた。

「――其処か!!」

ソウエンのピックアップした拡大画像。けれどもそれは、ボロボロになって廃棄されたISの姿。
当然其処には搭乗者の姿は無く、ISコアもまた抜き出されているのだろう。

「――まさか」

少女は思う。そんなまさかと。
ISの機体というものは、作ってすぐに使えるというわけではない。
ISの機体を用意し、ISのコアを用意し、機体とコアのマッチングを行い、さらに搭乗者と機体とのフィッティング・マッチングを行う事で漸くISはまともに稼動させる事が出来るのだ。

現在、もし彼女の敵が持ち出してくるISがあるとすれば、それは間違いなく報告にあった織斑一夏に届けられる筈のISだろう。
けれどもそれは、未だ出来て間もない新品。赤子にも等しいだろう。
例えISコアを移植したところで、まともな戦力になるはずも無い。

(……だというのに、何故だ。何故こうも、私は不安をあおられている――っ!!)

途端、気配、としか言い表しようの無い何かを感じて、少女は宇宙のある一点を見つめる。

――其処に輝くのは、宇宙の無明に尚白く輝くノズル・フラッシュ。白い輝きは暗い宇宙に、小さなXを描き出す。



「――まさかっ!?」

『――スバル・スカリエッティ、RAYR2--マッハキャリバー!!。此処で、終わらせる!!』

「くぅっ!! この、イレギュラー如きがあああああああ!!!!!!」

宇宙に輝くのは滅びの光か、それとも輝く人の意思か。
此処に、再び二つの輝きがぶつかり合った。



Side Other End

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43 XG-70b・RX-0・to_be...

2012.06.16 (Sat)
(……スサノオか)
艦橋にたどり着いて、一番最初に教えられたもの。それはこの機体の名前だった。
「このXG-70b、通称凄乃皇(スサノオ)弐型は、本来であればデブリベルトや流星破壊の為の装備として、荷電粒子砲を装備しています。今回はそれを牽制に用いました。ミサイルやレールガンは――正直ドクターの趣味ですね」
「まぁ、矢鱈と武装させたがるからね、あの人……」
「ええ。――仕様ですが、出力は二次元核融合炉が三機、MLEが一機、それらをドクター謹製の波形融合増幅機関により増幅させ、IS30機分程度の出力を持っており、主な移動システムは重力
・慣性制御による物と、ブースターイオンジェットです」
「――そりゃまた。凄い、って言っていいのかな?」
「ええ。但し、キルレンシオとしてみればスサノオと第三世代ISで1:10程度です。これは、あくまで個人の装備する兵装であるISに対して、高い汎用性を重視し、尚且つ複数人数で運用する事を想定した兵器であるスサノオとの差、でしょう」
要するに、「人が使う事で限りなく汎用性が広がるIS」に対して、スサノオは「誰が使っても十全に性能を発揮できる代わりに十全以上は存在しない」のだ。うん、まさしく兵器なのだな。
「――で、あの連中からは逃げ切れるの?」
「難しいかと」
言って、言葉と共に表示される投影型ディスプレイ。
「現在、ソロモンを廃棄した我々は、地球へ向けて高速移動中です。が、背後から迫る敵機――仮にボギー1からボギー4とします。これらは相変らず一定速度で着かず離れずの距離を維持。現在は重力障壁によりその攻撃を無効化していますが、この機体も未調整の代物です。地球圏到達までは保障できますが、それ以降は……」
「敵の目的は? 何だと思う?」
「高い確率で、RX-0かと」
「――はぁ。やっぱアレか」
RX-0。
私がNMSS計画をスタートさせた理由。ある意味、私のNMSSはこれを作る為にスタートしたといっても過言ではない。
νGが――サイコフレーム実装機の臨床データがある程度以上溜まった時点で、コレの製造は既にスタートしていた。
スタートして、完成したコレは、今や私でも使う事をためらうほどのバケモノとして完成してしまった。
現在ISコアを搭載していないアレのテストは、私が直々に勤めた。コアバイパスシステムを使い、νGのコア・エネルギーを擬似的にアレに供給できるようにして、その上でアレを起動させたのだ。
結果、サイコフレームのオーバーロードを起こし、危うく死掛けた。
発動してしまったあのモードも、おかげでフレームの全損という事態に陥り、急遽内部フレームを一新する羽目にまで陥ったのだから。おかげ、と言うのもへんだが、結局私自身のバージョンアップにまで繋がってしまったし。
まぁ、いい。結局の所、私は今でもコイツを十全に使いこなせるとは言い切れない。つまり、事実上振るスペックのこいつを扱える人類(じんるい)は存在しないという事に成る。
彼等生体情報端末ほどではないが、私も生まれながらに調整を施されているアドバンス・コーディネイターの類だ。これでただの人間に乗りこなされてしまうのは、流石に不に落ちない。そんな欠陥兵器を、今現在織斑一夏のところに運んでいるのは、あくまでもリミッターをつけた状態であるからだ。
――まぁ、イチカなら主人公補正とかで普通に乗りこなしそうだけど。
「でも、何処から情報が?」
「最有力候補として日本政府に話を通した際、スイーパーから情報が洩れたというもの、第二候補として、災厄の兎からの妨害、第三候補として、IS学園内からの情報漏洩となります」
「――確率比は?」
「4:4:2となります」
日本政府がヴァーカだったか、兎が「いっくんのISは私が作るんだよ。有象無象がわりこんでんじゃねーよ」と邪魔に入ったか、それともイチカの無自覚な情報漏洩か。
まぁ、どれであろうと現在攻撃を受けているという事実が変わるわけでもなし。
「結局、地球に逃げ込むことは出来る、と?」
「それなのですが――」
そういう赤毛の言葉と共に、メインモニターに表示される解説図。
「現状ではこの着かず離れずを維持することで精一杯です。もしこのまま地球圏へたどり着いたとしても、規定の通りの手続きを通すのは困難です」
「なるほど、それでこの図か」
「ええ、スサノオを大気圏表層まで降下させ、そこからスバル様にアレと一緒に降下していただきます」
其処に表示されているのは、VHSと呼ばれる大気圏降下用のポッドだ。
主に宇宙開発素材を地上へ下ろす際などに用いられるもので、特にN&Tの代物は、宇宙戦艦の脱出用ポッドとして採用しても十分以上に通用するほどの代物に仕上がっている。
「なるほど、IS学園に逃げ込んでしまえば、あそこならばギン姉もいるしね。――でも」
「無論、懸念されるIS学園へ逃げ込んでも――と言う可能性もあります。然し、理性的に考え、専用機の多数在籍するIS学園への襲撃は、確率としてもそれほど高くは無いかと」
「うーん……」
確かに、ISに関する知識を欠片でも持っている人間であれば、IS学園に攻め込む危険性と言うものは十二分に理解しているだろう。
何せあそこは、最新型のISの見本市。さらに言うと、織斑一夏の台頭により、あそこは現在おかしな具合に戦力が集中しだしているのだ。
只でさえ、更科楯無なんてのが頭を張っている組織なのだ。私だってあそこに単機で攻め込むとかやりたくない。出来ないとは思わないけど。
「他の、ウチの基地は近くには?」
「現在、リジェネレイトはアクシズに接舷していますが、現在両基地はデブリベルトのファウンデーションにてリジェネレイトの最終調整に入っています。デブリ内では小回りの効くISが有利ですし、此処からでは到達前に敵機群に追いつかれてしまいます」
「そう、か。……それじゃ、しかたないね」
まぁ、所詮IS学園だ。戦力的には脅威に値するが、管理運営は日本政府。政治家に献金でもしておけば、大抵の問題は有耶無耶にしてくれる蝶☆放置こkk――もとい、法治国家だし。
「とりあえず、そうなると先に私のνGの修理もやっとかないとね」
「それですが……」
そういって、再びモニターの映像が切り替わる。コレは格納庫かな?
真ん中に鎮座するのは、一切の武装を外され、骨格フレームがむき出しになったνGの姿だ。
「現時点でνGの修復率は74%、このまま修理を続ければ、80%までは修復できます。ただ、それ以上となると現状では資源が足りていません」
「資源が足りないって――νGはああ見えて汎用機として設計されてるんだよ? 汎用資材でも十分修理できるって前提で設計されてる筈なんだけど……」
「Yes.今回はそれが仇になりました」
そういってピックアップされる骨格フレーム。横に表示される数値を見るに――骨格フレームにゆがみが発生している?
「生産性を考えて作られたνGですが、それ故にエースクラスのスバル様の機動に耐え切れなかったようです。いえ、今まで溜まっていた疲労が、多対一という極限下で顕在化してしまった、というのが正しいでしょうか」
そもそも、私のフルスペックは、並みのIS程度ならば辛うじて撃墜できるほどの物なのだ。只でさえオーバースペックな私の能力に、そもそも量産機がまともに耐え切れるはずが無い、という事らしい。
「――そりゃ、命がけの戦闘なんてそうそうやんないよ……」
「それも無重力下での危険度の高い戦闘でしたからね。然し問題は、今このタイミングでは、νGを使えない、と言うことです」
それは、困る。今νGを使えないという事は、地球降下に際しても、敵に無防備な背中を見せたままでいなければ成らないという事だ。
大気圏突入時と言うのは、それはもう危ない。ちょっとバランスを崩すだけで着地ポイントはずれるし、少し断熱材がはがれてしまえばポッドは熱膨張でボンッ! だ。
「なんとか――ならないかな?」
「少なくとも、νGに関しては不可能です――しかし」
思わず声を上げそうになったところで、赤毛が顔の前に手の平を突き出して言葉を遮る。
「然し、為らば他の手段を用意しました。νGが駄目なら、別の物を使えばいいのです」
そう赤毛が言うと同時に、パッと画面が切り替わる。
それは格納庫の一角らしき場所で、どうもバラされたパーツを今現在大急ぎで組み立てなおしている最中らしかった。
「これは――IS?」
「ええ、脱出の間際になんとか積み込むことが出来ました」
「んー? 見た目ちょっと旧式に見えるけど?」
「ええ、コレは少し旧い機体です。然し、旧くても機体剛性は最新の第三世代機、下手をするとNEXT以上ですし、レストアして実験機として使われていた為、信頼性も十分にあります」
「ふーん……?」
頷きつつ、何か妙な感覚に首を傾げる。なんだろうかこのIS。何処かで見たことがあるような気がするのだ。この、妙に剣のように尖った、それでいて第二世代臭い第三世代というか――って、ええっ!?
「お気づきになりましたか?」
「ちょ、まさかこれ――!?」
「ええ、その通りです」
思わず、唖然とそれを見上げてしまう。何しろ、コレがソロモンに在っただなんていうのは、当に寝耳に水なのだから。
「後は、スバル様の許可次第です。アナタがコレを使えるというのであれば、直ちにコアの移植作業に入ります」
そういう赤毛に、思わず胡乱な眼を向けてしまう。
「私に、「コレを使えるか」って問うの?」
「ええ、判断は貴女にお任せします」
なんていう赤毛。なんと小憎らしい。私にコレが扱えない筈がないのに。いや、例え扱えずとも、意地でも使って見せようじゃないか。
「では、直ちに処置に取り掛かります」
「うん、お願いね」
言うと同時に、赤毛がどこかに連絡を取る。多分格納庫の面子に指示を送っているのだろう。
そんな様子を眺めながら、モニターに移るその機体を眺める。
鈍い銀色に輝くその機体を見ながら、小さくと息を吐いて、椅子に腰を下ろした。

42 撤退戦

2012.06.16 (Sat)
「くっ、そぉっ!!」

そんな罵声を漏らしながら、なんとかとった回避機動。けれども放たれたその黄色の光は、手元を掠り最後の頼みの綱であったビームライフルを融解させてしまった。

赤い機体を落とし、向かってきた残る四機のIS。
第二世代型と見えたそれらは、けれどもこと攻撃力と言う点において、此方の予想をはるかに上回っていた。

両手にビームライフルを持ち、大量のミサイルコンテナを積載、両腕のサブにはレーザーブレードで、その上四機揃った見事なコンビネーションを仕掛けてくるのだ。
正直、只でさえ4対1なんていう無理ゲーを押し付けられているのに、此処まで相手側のコンビネーションが整っていると言うのは致命的だ。
しかも更に難解な事に、回避で肝心な直感が、何故か上手く働かずに居た。いや、理由はわかる。あの四機のISの動きは、妙に気配が薄いのだ。だから、此方の直感に相手の殺意が引っかかり辛い。

「く、ぬっ!! どうなってるんだよぅ!!」
――――。
「パターン? の割には変幻自在に動いてるみたいだけど」
―――。
「……むぅ。行動パターンはランダムだけど、攻撃のモーションパターンが一定とな?」

回避を繰り返しながら、何とかバルカンの牽制を入れて斬りかかるが、機動力で勝る此方の追撃は、必ず他の三機に妨害されてしまう。
思わず歯軋りしながら、ハイパーセンサーの視界で相手を睨みつける。

――相手の気配を感じ取れない理由として、可能性は幾つかある。
前提条件として、
行動パターンがランダムな為、無人機である可能性は低い。
攻撃モーションパターンが揃っている為、無人機である可能性はある。
殺意が完全に感じられないわけではないので、有人機である可能性はある。

要するに、ロボットっぽい相手、と言うことに成るのだろうか。

有人である、という物の補助意見としては、確かに人の意志らしきものは、かすかでは有るが感じる、という事。かすかにでは有るが、人特有の生々しい殺意は確かに感じている。

で、無人機であると言う可能性に関しては、相手の攻撃モーションが一定だ、と言う点。
行動自体は人特有の其々に癖のあるモーションで、コンビネーションの錬度の高さをうかがわせるソレだ。然し、攻撃モーションに関しては、まるでVTシステムを相手にしているかのような、機械的な、それで居て鋭く隙の無い一撃が飛んでくるのだ。

――いや、VTシステム?

降り注ぐミサイルをバルカンで迎撃しつつ、爆炎を盾で突っ切りながら思考を続ける。

VTシステムはあくま織斑千冬の動きを模倣するという、根本的な部分で役に立たないソフトだ。行動パターンが織斑千冬の行動パターンの模倣である為、搭乗者の意志が完全に無視されてしまうと言う、兵器としては欠陥品どころの騒ぎではない代物だ。織斑千冬の最も恐ろしいところは、何よりもその卓越した直感と其処から導き出される判断力という、機械での再現が難しい分野なのだから。
まぁ、アレはあくまで同人ゲームだからいいらしいけど。
が、コレは違う。そう、たとえるならばISと言うゲームキャラを、リモコンで操っているかのような、そういう動きなのだ。

――だとすれば、とんでもない事だ。

「っ、死ぬ気!?」

もしその予想が正解だとすれば、ソレは文字通り身を削るものだ。
ISはあくまでパワードスーツの延長。人の挙動を補佐するのが本分だ。
然しこの予想が正しければ、やっているのは「人の挙動の延長」ではなく「人の乗ったISの操作」なのだ。

例えば高名な武術家と、運動の苦手なサラリーマンが居たとする。
もしサラリーマンが武術家の動きを完全にトレースする事ができたとして、それだけで彼が武術家と同じレベルの高みにいたれるかと言うと、決してそんなことは無い。
何せ、技を使うには先ず肉体が必要だ。技を使える肉体があって初めて技は使えるのだ。
もしソレを無視して、体無く技を扱えば如何なるか――当然、身体を壊す。それも、完全に。
身体を鍛えると言うのは、ただ強くなるだけではなく、自らの肉体を守る為でもあるのだから。

今あの連中――4機のISがやっている事が、もし本当に私の予想通りだとすれば、アレは文字通り身を削って戦っているのだろう。

確かに手ごわい。が、ソレは狂気の技術。N&T(ウチ)にこそ相応しいだろうに。

「がっ、っあ!?」

そんな、考え事をしながらの戦いが拙かったのだろう。
不意に放たれたビーム。咄嗟に回避するも、反応が遅れたか、機体をかすってしまう。途端に現れる警告表示。咄嗟に了承を押して回避機動。

――ゴッ!!!

そんな衝撃と共に、突如として背後から巻き起こった爆発。
衝撃に身を揉まれながら、なんとか姿勢を立て直す。

――拙い。只でさえ消耗しきっていたシールドエネルギーが限界値に近い。その上、さっきの衝撃で機体にガタが来てる。

爆発は、敵性攻撃ではない。HWSの一環として搭載していた、航宇宙用の追加スラスターが、ビームライフルを受けて誘爆したのだ。

――さすがはN&T製品。みごとな爆発。
散り際も美しく、とはウチの標語の一つなのだけれども、ダメージまででかいのは勘弁して欲しい。

「エネルギー残量11%、機体稼働率40%……。スラスターが落されたのが痛いね」

この機体の機動力は、イナーシャルコントロールとスラスターによるものだ。イナーシャルコントロールは確かに地上宇宙と万能な推進力ではあるが、NT独特の過敏な反応機動には向いていない。其処を補う為のスラスターだったのだが、コレが破壊されてしまったため、もう機敏な回避は無理のようだ。
残された防衛手段は、νG用の盾。ミサイルとダミーバルーンが搭載されていたのだが、それらは既に使い切ってしまった。この盾、一応アンチビームコートはしてあるのだが、流石に直撃を何度も防げるほどの代物でもない。あくまでビームを逸らす事が目的の代物なのだから、今の状況ではなんとも頼りが無かった。

それでも何とか、地球へ向かって全力でバックしつつ、追いかけてくる四機のISの弾幕を回避する。
攻撃手段が残っていれば「引き撃ち」するのだけれども、残念ながら今の私に残された攻撃手段はビームサーベルとバルカンのみとなんとも頼りない。
いや、衝撃砲が有るにはあるのだけれども、今のエネルギー残量での運用は自殺行為でしかない。

回避、回避、回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避。

繰り返す中でも、少しずつ被弾量は増えていく。
盾は徐々に削り取られ、牽制用のバルカンの弾は底を付き、それでもやまないミサイルの雨。

拙い、ジェネレーターが止まった。もうシールドエネルギーも無い。
背筋に奔るゾッとした感覚を感じながら、最早此処までかと躯が硬くなるのを感じ――

『回避を!!』
「――っ!!」

咄嗟に背後へ向けてクイックブースト。途端目の前に現れたのは、一機の巨大な鉄の塊。
何事かとνGのハイパー・センサーとペリスコープC(カスタム)が捉えたそれ。カラーリングは、N&Tの製品のカラーリングに似ているが、その形状は私が見たことのないものだ。
先ず、そのサイズが宇宙戦艦の一歩手前。巡洋艦クラスは優に超えている。それなのに、その形状は戦艦と言うよりも、ウチで昔研究していたMTに似ている。
先ずスタイリッシュな宇宙戦艦のようなものの上に『腰』があり、腰を通じて胴体らしきものがくっ付いている。
その天辺には頭のような何かが取り付けられ、両肩には長いブレードがまるで腕の様に聳えている。
何よりも恐ろしいのは、それが凄まじくでかく、同時にハイパーセンサー群から齎されるデータが、その機体の保有するエネルギーがISなぞ軽く一蹴し得るほどのものだという点。

「こ、これは――」
『スバル様、後部ハッチへ!!』

通信から聞こえた赤毛の声に、咄嗟にその巨大な機体の後を追うように加速する。
残りの全エネルギーを、残されたスラスターにつぎ込む事で、何とか相対速度ギリギリ上までの加速に成功。然しそれは向こう側の四機のISにとっても同じで、寧ろ向こう側は破損が此方よりも軽微である所為か、徐々に追いつかれているようにも感じる。

「――ちっ」
『牽制は此方で行います。スバル様はそのままハッチに入ることだけを考えてください』

振り返り、牽制に残りのビームサーベルでも投げ付けてやろうかと考えたところで、赤毛からそんな通信が入った。
途端、ハイパーセンサーが正面の鉄塊に動きを検知。視れば、鉄塊の所々に設置された砲台が、其々生々しい生き物のような動きで此方――いや、私の後ろに狙いを定めていた。

「っ」

思わず唾を飲む。
音の伝わらない宇宙の海で、それでも伝わる悪寒。
ハイパーセンサーを通して伝わる、傍を通り抜けた超高速飛翔物体。
青白く輝く稲光と、小さく光るマズルフラッシュ。――あれは、レールガン……いや、レールキャノンかな?
視れば、背後で上がる一つの炎の華。
――ISはISでしか斃せないなんて、やはりIS至上主義者の妄言だね。
あまりの――荒唐無稽な光景に、思わず苦笑のような失笑のような、そんなわらいが零れた。








背後からの追撃を振り切り、漸くの事で鉄塊の後部ハッチにνGを突っ込ませる。
予め用意してくれていたらしい着艦用ベルトに機体を突っ込ませ、ほぼ不時着と言った形で着艦する。
それと同時に、まるで淡雪が解けるように光の粉となって消えうせるνG。
バングルを一撫でし、感謝の意を伝えながら、そのまま再び立ち上がろうとして、慌てたかのように周囲の連中――最終脱出組みのイノベイド達に取り押さえられた。

「担架で医務室まで運びます。どうかご自愛を」
「大丈夫だよ、戦闘機人は軟じゃない。まだまだ動ける」

実際には右脇腹と左脚が骨折、左腕の筋肉が切れてる。その上背筋が引きつるような感覚。鞭打ちにでもなったか。
正直なところ、今すぐにでもドクターのラボで調整槽に入って寝たい。でも、現状で寝てしまうという事は、この状況からの逃避以外のなんでもない。
今は、戦争の季節だ。

「――ならば、管制室までご案内します」
「うん、よろしく頼むよ」
「それと、νGはお預かりします」

横から現れた別のイノベイドが、そんなことを言いながら手を差し出してきた。
まぁ、どちらにしろダメージレベルはD以上。自己修復だけに押し付けるよりは、簡易でも整備施設でメンテナンスを受けさせてやったほうが良いに決まっている。
お疲れ様とバングルを一撫でして、腕から取り外したそれを、イノベイドの少女に渡した。

「――それじゃ、案内ヨロシクね?」

そうして、並ぶイノベイド達に声を掛けて歩き出す。
取り敢えずは、この機体についてを尋ねる為に。

41 終焉の始り

2012.06.16 (Sat)
《エマージェンシー! エマージェンシー! 現在当基地は敵性勢力からの攻撃を受けています。全ての職員は直ちに脱出艇による退避を。繰り返します……》

「まさか、こうも直接的な手にでるとは」

響き渡るエマージェンシーコール。ソレを聞きながらおもわずポツリと零れた言葉。

『アハハハハハハ!!!! 消えちゃえイレギュラー!!!』

頭痛ぁ。
オープンチャンネルで響き渡る無数の声。どうやらコレが敵性体の声らしいのだけれども。

放たれるのは幾重もの大型ミサイル。
何処から手に入れてきたのか、如何見ても旧式の第二世代ISだと言うのに、強引に取り付けられたミサイルや、何処から持ってきたのかわからないVOBで此方の基地を襲撃してくるIS群。

「亡国機業? でもなんでさ」

思わず何処かの某錬鉄の英雄の如く呟いて、首を振って意識を居れ直す。
現在の状況は、ソロモンに突如現れたIS群が突如として此方を攻撃。幸い宇宙要塞として設計されていたソロモンだ。鎧袖にIS用ミサイルを数発受けたくらいでは如何という事は無い。
のだけれども、ソロモンは最初期に設計した宇宙基地だ。正直、脆い。あくまでも宇宙進出の為の足がかり的な基地なのだ。
幸い研究者チームは既にリジェネレイトに移住が済んでいたからいいものの、現在この基地に残されている戦力はとても少ない。
この基地に残されている戦力とはつまり……。

「……アタシ一人にIS五機ってどんな鬼ゲーよぉ……」

暴れまくるIS群。コレをとめられる戦力は、現在手元に一つ。つまり、私のνG一つなのだ。
……いや、無理ではないと思う。たかが旧式の第二世代、赤子の手を捻るよりも軽い。

「んだけど……ええい、ままよっ!!」

メインフレームのターミナルを操作する。予め用意しておいた関係者用LANを使いメールを送る。
現在このソロモンに残るのは、施設を最低限稼動させる為のイノベイドと、引越しの準備をしている研究者が数名。引越し準備をしていた面々は既にイノベイドのPS(パワードスーツ)に護衛されてこの場を脱出したし、後は残りのイノベイド達が逃げる時間を稼ぐだけだ。

手首に填められたバングル。白のそれを確認して、即座にνGを展開する。
幸いソロモンの通路はバカみたいに広い。ISが自由に……とまではいえないけれども、滑空して余裕がある程度のスペースはある。

『――スバル様、我々には構わず、どうか脱出を』
「馬鹿、お前達は大切なアタシの道具なんだ。潰れるまで確り使ってやるんだから、こんな所で捨てたりするもんか!」

と、νGでの移動中、突如として開かれた通信。この基地のイノベイド……赤毛の代表からの通信に、思わず檄を飛ばす。
イノベイドは――彼等は、全て私の謀略の元に生み出された、私の大切な道具だ。こういう言い方は失礼かもしれないけれども、それは事実。だから其処は否定しない。
けれども、だからこそ私は大切にする。例え使い捨ての道具であろうとも、使える限りは使い切る。ソレが、せめてもの私の矜持。

「第一、残ってるシャトルを放棄するのも勿体無いの!」
『然し』
「ゴチャゴチャ言ってないで早く脱出しろ!!」

そう怒鳴って通信をカットする。

―――?
「問題ないよ。ソレよりも、行くよ!」

小さく呟いて、目の前のハッチを開く。
本来の開放シークエンスを無視した所為で、勢い良く抜け出す空気。その流れに乗って、一気に宇宙へと飛び出した。






「ああ、それとこのソロモンは放棄するよ」

事の始まりは、ソロモンへと帰省していた際、ドクターが言い放ったそんな一言から始まった。

「は? 何故に?」
「うん。リジェネレイトやアクシズが完成しただろう? アレに比べると此処は、少々手狭に成ってきてね。施設的にも既に旧式になってきたし」

あくまで此処は橋頭堡だとするドクター。確かに此処は、宇宙進出するに当たって、確りとした拠点を設けるまでの仮の拠点として建設された。それゆえに所々補強されていない部分とかも残っている。原作のソレと違って、核なんてぶつけられれば一発で砕けかねない。

「と言うわけで、私たちは移動するよ。スバルのほうも、あと少しすればアレのサイコフレームの調整は終わるから、ソレが終わり次第持って行ってくれ」
「ドクターは?」
「私はリジェネレイトに。まぁ、アレも完成したし、デブリベルトからアクシズの元に移動するのだけれどもね」

そういって気軽に手を振ると、ドクターはそのままスティグロに乗り込みリジェネレイトへと移動していった。

事が起こったのは、その数時間後。
漸くアレの自動整備が完了し、地上への移送を開始しようとしだしたその矢先の事だった。









『落ちろ落ちろ落ちろぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!』
「お前が落ちろぉぉぉぉおおおお!!!!」

派手に暴れまわっているISたちの中心。一機だけ妙に派手に暴れまわるそのISに向けて、背後から可能な限りの火力を一気に叩き込んだ。
――赤い翼を背負った赤い機体。妙に大きな右腕をつけたソレは、何処かで見た事があるような気もするのだけれども……。
不意打ちでは成った幾重のビーム。然しその赤い機体は、背負ったエネルギーの翼を盾に、此方の放った全てのビームを遮断して見せた。

「なっ!?」
『フフフ、私のエナジーウィングの前にはお前なんてエエエエエエエエエ!!!!!!!!』
「エナジーウィング?」

そうして、今度はそのエネルギーで出来た翼から放たれる幾重もの光の矢。スラスターを吹かせて回避する。どうやら追尾性能は無い様子だけど……。

「シルヴァリオ・ゴスペル?」
『私を、あんな噛ませ犬と並べるなっ!!』
「はぁ?」
『虐殺です!』

えっと、えっと、……まさか、ギ○スぅ!?
でも、いやいや、んな馬鹿な。いや、でも……あぁ、紅蓮聖天八極式だっけ?! いや、紅蓮だとぉ!?
でもなんで? いや、確かにイギリスに口イド伯とか居たし、スカウトうちでISの基礎工学の研究とかやってるけどさ。
ナニ、インドからラクシャータさん探さなかったからフラグたったの!?

「何処から紛れ込んだ!」
『ソレは手前だろおおぉぉぉおぉおぉおおおぉおぉぉぉおイレギュラアアアアアアアアアアアア!!!! 私が真のオリ主で、ひんぬーチャイナっ子とかひんぬードイツ娘とイチャイチャラブラブぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ロリロリロリィィぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!』

ぞっとした。背中につめたいものが奔った。
――コイツはやべぇ。変態だ。

『私は神に選ばれた転生者だというのにぃ!! イギリス選抜ではチョロイのに敗北して日本へは行けず!! その上テロで誘拐されて亡国機業で洗脳の上インプラントボムだよ!! 何だよコレ!!IS適性Aなのにステータスの幸運値はD-とかか!! ふざけんな転生者補正はどうなってんだチクショウ責任者出て来いヒャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!』

……えー……。
ナニ、つまり、アレは私以外の転生者、と?
なんだかなー。折角謎っぽいのが登場したのに、コッチの推理の前に全部自供してくれたし。
なんだかなー……。

『だからっ!! 私は真のオリ主として、貴様を倒すっ!!』
「いや、意味が解らない」

なんだか知らないけどこいつが不幸な人生をたどってきたと言うのは、勢いから何となく理解した。
けど、何故そこで私に敵対すると言う選択肢になるのかが意味不明すぎる。
……いや、本人の自供通りなら、洗脳されてるって事?

「つまり、洗脳されてアッパラパー?」
『誰がアッパラパーだっ!! 寧ろサイコーにクールだっ!!』

そんな言葉と共に放たれる赤い気円斬っぽいの。咄嗟にシールドで弾くが、エネルギーを大いに削られた。

『落ちろ白兜ぉ!!』
「いや、確かに白いし兜だけど……早っ!!」

直感にしたがって咄嗟に回避。スラスターでの微細機動によって全ての攻撃を回避するのだけれども、……くぅっ!!

『ははははは!! 遅い遅い遅すぎるぅ!!貴様に足りない物!!それは、情熱思想理念頭脳、気品優雅さ勤勉さ!! そして何よりもオオオオオ!!!はy「言わせるかあああっ!!!」ちょ、おまwww』

アニキの口上こそ防いだものの(ってーかそれは言わせない。そりゃアタシの台詞だ!!)、肝心の戦闘では未だ押され気味だ。何せ機動力が違う。此方がイナーシャルコントロールとエネルギースラスターの複合式であるのに対して、あちらはイナーシャルコントロールと、多分エナジーウィングの複合式なのだろう。
ちくせう、意地張らずに“光り輝ける運び手”くらい搭載しとくんだった。幾ら「種」系技術嫌いだからって……!!

『アハハハハ!!! はじけろイレギュラー!!』

不意にガツンと機体を襲う振動。何事かと見れば、いつの間にか消えた赤い機体の右腕。そして、其処から伸びるラインと、その先に繋がれた鉤爪。

「がっ、い、インコム!?」
『スラッシュフィストってんだよおおおおお!!!!!!』

い、いけない!! 此方はほぼ全身装甲という硬めの機体だからまだ耐えられるが……。
反応速度こそ此方が上回っているおかげで、なんとか致命傷は避けている。のだけど、絶対的な速度が全くと言って良い程に追いつかない!!

「くっ!!」

何か、何か無いか!?
直感でなんとか回避と反撃は出来ているものの、速度が、全くと言って良い程に足りていない!!
あのチート兵装である輻射波動砲がある限り、一発でも直撃を食らえばアウト。肉を切らせて骨を絶つなんて戦法を取ろうものなら、その瞬間に文字通りはじけてしまう。

「くっ、いけ、フィンファンネル!!」
『甘い!!』

ガコン、と音を立てて変形する。って、まさかっ

「いいっ!?」
『吹き飛べ!!』

その瞬間に放たれた赤い光。拡散輻射波動(でんしれんじ)砲と言うやつかっ!!

咄嗟にフィンファンネルを下げるも、間に合わずに数機のファンネルがぶくぶくと不気味に膨れ上がり、そのまま爆散した。

「くぅうううう!!」
『ふはははははは!! このグレンに、その程度でええええ!!!』

拙い、本格的に拙い。
蓄積したダメージにより、そろそろ追加装甲がウェイトになってきている。HWSをパージして、素のνG、それもファンネルが削られて片羽になってしまっていた。
くぅ、何か、何か手は――って、ああっ!?

――有る。

まだ、奥の手が一つ。だが然し、アレは確実に諸刃の剣。使うタイミングを見誤ると、間違いなくこちらが討たれる。
タイミングを……。

『落ちろイレギュラーアアアアアア!!!』
「単一仕様! 『νGは伊達じゃない!(オーバーロード)』ォォォォオオオオオ!!!!」

バチリと、何かが嵌ったような感覚が響いた。
ガチリと、撃鉄が上がったような感覚がした。
赤い機体から放たれた赤い光は、νGの内側からあふれ出すライトグリーンの輝きに押し流されて。

『輻射波動砲弾を弾いた!? なっ、コレは』

唸りを上げて一歩轢く

「――全く。偶には全力で戦らないと、完全に鈍ってるよ……」
『さ、サイコフレームの過剰反応(オーバーロード)だとおおおおお!!?? イレギュラー、キサマァアアア!!!』
「さぁ、終わらせてやる!!」

感覚の信じるまま腕を振るう。
まるで識者に従う大楽団のように、ミドリのうねりは意のままに動く。

『そんな虚仮脅しが――』
「いいから黙って落ちろっ!!」

うねる緑色の瀑布は、そのまま赤い機体を飲み込むと、そのままソロモンのハッチの一つへと叩き込んだ。あの威力ならば、シールドエネルギーも切れて行動不能だろう。
本来なら、シールドエネルギーが切れた時点でISの展開は解除される。つまり、ISスーツしか身に纏わぬ軟な生身が宇宙と言う苛酷な環境に露呈することになるのだ。
――が、どうやら都合よく、あの赤いのの着弾の衝撃で緊急シャッターが作動したらしい。ふん、運が悪いとかほざいて居た割りに、確り補正は効いてるじゃんか。……ご都合主義だなぁ。

「さて、ちゃっちゃと残りの機体もかたしちゃいましょうか」
――。
「……は? コレってそんなに燃費悪いの?」
――――――。
「そか。んじゃ、やっぱりちゃっちゃと終わらせちゃいましょか!」

頷いて、再び機体を加速させる。
正面から地価ずくノズルフラッシュは、4機の機影を現している。どうやら赤いのが撃墜されたのに気付いたほかの四機がこちらに向かってきているらしい。
寧ろ好都合!!

「行くよνG、お前の力、もう少し借りるよ!!」

鼓舞するように声を上げて、再びνGは気炎を吐くのだった。

どうでもいい閑話 演習島の惨劇。

2012.06.16 (Sat)
「遅いですね」
「はっ、にげちゃったんじゃないの?」
とある野戦フィールド。此処はIS学園の所有する課外授業用の小さな小島だ。
IS学園から船で15分ほどの場所にあるこの島は、ISの野戦実習や、IS操縦者のサバイバル訓練などに用いられる施設だ。
とはいえ実際のところ、IS操縦者というのはアイドル的な扱いを受ける。こういうサバイバルというのは怪我を負う確率が高いため、各国の政府は自国の広告塔であるIS操縦者に傷がつく事を厭い、その結果この施設は殆ど放置されていたのだ。
そんな場所に集まっているのは、1-1の生徒達。
ただし其処には専用機持ちの姿は無く、一般生徒たちがくつわを並べて時間を気にしていた。
――1-1二所属する彼女達は、本日この訓練島で、1-3の生徒達と模擬戦をすることになっていたのだ。

事の始まりは、1-1の生徒が、1-3の生徒達の訓練風景を覗いて零した、とある暴言がきっかけだ。
「うわー、大変だねぇ」
完全に人事のように放ったその言葉。1-3の生徒達はその時こそ気にも留めなかったが、その事で1-1の少女達は、少し、口を滑らせたのだ。
「本当、大変よね他のクラスは」
彼女達の所属する1-1には、計四人もの専用機持ちが居る。他のクラスはといえば、其々のクラスに一人ずつ。
専用機とは、つまり力だ。1-1には他のクラスの4倍もの力がある。それはつまり、凄い事ではあるのだが、彼女達はそれで少し勘違いをしてしまっていた。
つまり、自分達はエリートなのだと。
言ってしまえばIS学園の生徒はそれだけで既にエリートなのだが、彼女達は同じクラスに所属する力を見て、まるで自分達もその恩恵を受けているかのように錯覚してしまったのだ。
結果として現れたのは、増長。この上なく駄目な結果だ。
この事態に1-1の担任である織斑教諭は、当然その苛烈な腕力を持って修正を加えるのだろうと、職員室で隣に座るM女子は背筋を凍らせながら考えていた。
然し、M女史の予想に反して織斑教諭は何も行動は起こさなかった。いや、正確にはほんの少しだけ行動を起こした。
それが、1-1と1-3生徒の間で起こった諍いの決着に関するものだ。
例えばこの2つのクラス間の諍いが、個人のものであったとすれば、それは汎用機の貸し出しで決闘を行うという手もあったかもしれない。
然しだ。総勢20人強が2組。50人近くの団体同士を争わせる事が出来るほど、IS学園は機体を確保できては居ない。
そこで織斑教諭が提起したのが、訓練島における模擬戦だったのだ。
断行すると宣言する織斑教諭に、当然ながら反論する1-1生徒達。しかし。
――なんだ、貴様等勝つ自身がないのか?
自らに対する憧れを持つ少女達に対して、見事にその心を擽る台詞である。
当然のように織斑教諭の言葉に釣られた彼女達は、訓練島での模擬戦を承諾したのだ。
――そう、バラライカ教諭が納める3組との模擬戦を。

もし此処に織斑一夏が居れば、きっとこう叫んだであろう。「おい馬鹿ヤメロ!」と。





「あ~っ、きたよ~~!」
だぼだぼの制服に身を包み、その長すぎる袖をパタパタと振り回す少女がそんな声を上げた。
少女の声に釣られ、他の少女達がその方向に視線を向けると、其処には確かにIS学園の制服を身に纏った少女達の一団が居た。
けれどもその制服は、1組の少女達の身に纏うものに比べ、どうにも埃っぽく見えた。
1組の大半の少女達は、その3組の少女達の姿に失笑し、ほんの少しの少女達は小さく唾を飲み込んだのだった。
「待たせたわね」
そういって、一団の先頭に立つのは、このクラスでリーダー格として目される少女、速瀬 水月である。
何時もの明るい笑顔はそのままに、然しまるで野生の獣のようにギラギラと輝くその瞳。1組で気付けたのは一体何人居たか。
「逃げずによく来たわね。どうせ勝敗は決まってるんだから、精々ペイント弾塗れになっても構わないでしょ?」
そういって挑発的に笑うポニーテールの少女。先頭に立って挑発する少女に然し、3組の面々は一切の反応を返さなかった。
「何よ、やる前からブルッちゃってるの? ふん、精々私達の勝利の花に成れるよう頑張りなさいな」
そんな言葉を吐きながら、1組の塊へと戻っていく少女。それでも、3組の少女達は一切の反応を返さない。
そんな3組の少女達を見て、1組の塊から一人の少女が脱走を図った。
「……何処へ行く布仏」
「――てひひ、みつかっちゃった」
「即座に隊列に戻れ」
「……はーい」
何かを反論しようとして、然し困ったような笑みを浮かべたその少女は、とぼとぼと1組の群へと戻っていった。
更識に仕える少女である。当然こういう危機的な直感は鋭いのだが、鬼斑げふん織斑教諭は流石に脱走者を見逃すほど甘くは無い。
――所謂一つの「連帯責任」と言う奴だ。
そう小さく呟いたとか呟かなかったとか。




そうして現れたのは、強壮たる3組の主、支配者、女帝、ミス・バラライカだ。
女性の憧れとされる織斑千冬とはまた違う、独特の覇気を纏った彼女は、変わらぬリズムで軍靴の音を奏で、少女たちの前で立ち止まる。
「いまこの時をもって、貴様らはウジ虫を卒業する。貴様らは一兵隊だ!!」
『イエスマム!!』
「さて……貴様らはこれから、最初の試練と戦う。もちろん逃げ場はない。すべてを得るか、地獄に落ちるかの瀬戸際だ。どうだ、楽しいか!!」
『イエスマム!!』
「いい声だ。では……雌豚ども! 我々の特技はなんだっ!?」
『殺せっ!! 殺せっ!! 殺せっ!!』
「この試合の目的はなんだっ!?」
『殺せっ!! 殺せっ!! 殺せっ!!』
「我々は学校を愛しているか!? 1-3組を愛しているかっ!? 惨めな雌○ども!!」
『ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!』
「宜しい。では諸君――出陣せよ」

狂気すらも食い千切る。狂気を纏うて狂気を喰らう、そんな怪物たちが、ついに野に放たれる。
1組の女子達は、未だ何も知らずに暢気に構えている。……事前に危機を察知した一名とその友人二人を除き。
狩る側と狩られる側が、正しく自らの立ち位置を理解するまで、後数分。








――交戦報告書
本日1300付けより行われた模擬野戦訓練の結果を此処に記す。
1組
岸里女史含む3名――粘着トラップにより脱落
田嶋、リアーデ嬢含む4人――落とし穴+SPAMトラップにより緊急搬送。
岸原理子嬢含む3名――地底フィールドに追い詰められ、照明も無く地底を彷徨っていたところを救助、後に搬送。
四十院神楽ら4名――トラップ原に侵入。タレット、地雷、落とし穴などによりリタイア。軽傷。
相川清香3名――果敢に攻め込むが、クレイモア地帯に誘い込まれ壊滅。
鷹月静寝含む5名――果敢に応戦するも、分断された上囲われ、圧倒的火力の前に轟沈。
鏡 ナギら2名――薄暗い林間地帯をワライゴエと共に追い立てられ、銃による敗北。精神不安定により搬送。
布仏本音、谷本癒子、夜竹さやからの3名――逃走を図るも拘束。『オタクがハァハァ言うだけのテープ』を小一時間聞かされ精神崩壊。
参加者27名全員の敗退・壊滅。

3組
イルマ・テスレフ――降伏したかのように見せかけたおとり作戦により、トラップ原に敵を誘導。敵と共に自爆。
飛鳥 真由良――捕虜を捕縛する際、錯乱した捕虜の抵抗により軽傷。
速瀬 水月――最前線にて奮闘。数少ない直接戦闘の全てにおいて多大な戦果を上げるも、脇腹に銃傷。リタイア。
涼宮 遥――逃げ惑う囮作戦によりSPAM地帯へ敵を導くも、軽く足首を捻挫。
伊隅 まりか――後方での情報支援に徹するも、敵のフォワードの攻勢により肩に銃傷。リタイア。
以上の4名がリタイア。
参加者27名(3名はハンデとして参加せず)中23名が生存。

上記より、生存者数 1組0名、3組27名として、3組側の勝利とする。






こうしてIS学園1年1組対3組の互いの意地と誇りを掛けた戦いは3組の圧勝。圧倒的戦力を持つかと思われた1組はこの敗戦のショックからか、以後夏までの間成績不振が続く事と成る。
後にこの試合は『演習島の惨劇』として語り継がれ、暫くの間1学年の間では3組が恐怖の代名詞となった。


「――はぁ」
そんな、終わったばかりだというのに早速上がって来た報告書(?)を呼んで、どこぞの世界最強(笑)が重苦しい溜息をついた。
普段は滅多に見せないその憂鬱気な表情。その視線の先には、演習島の全域を完全にカバーするサーチャーからの映像を写すモニターが。
「終わりか! このクソッタレ共!」「さぁ立て、もう一度勝負してやる!!」「ガッツを見せろ! このヨーグ[禁則事項です!]アマ!!」「貴様等はくさい[禁則事項です!]にも劣る[禁則事項です!]だぁ!!」
――まだやってるよ。
世界最強(笑)の視線の先では、延々と繰り返すその罵声が画面を通して響き続けるのだった。
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40 想定外に全壊

2012.06.15 (Fri)
どうやら白式が全壊したようです。


「はぁ!?」

思わず上げた声。何せ原作だと白式はエネルギー切れを起こして、其処からシャルロットのRRC2にエネルギー供給を受け、零落白夜の一撃で機能停止、という流れだった筈だ。

――のだが。

「うわ、偽白騎士が能動的(アクティヴ)に行動してる……」
「多分、CPモードの攻撃パターンをそのまま流用したんだろうね。この挙動をみるに、難易度はHardの様だね」
「見事にコンボ入ってますねぇ」
「うむ。……お、コレは3回戦で使われた斬り払いコンボだな」

原作でのVTシステムは、未完成のシステムであったが故に、基本パッシヴなシステムだったらしい。
のだけれども、コレの元になったのはドクターが産み出した同人ゲームのシステム。同人でも製作者はドクタースカリエッティ。その完成度は原作のVTシステム以上なのだからもう馬鹿げている。

で、結局ハードモード……つまりオリジナルの織斑千冬と同レベルなのだ。(因みにVeryHardは織斑千冬の化物的な洞察力と直感を再現する為、基本速度の設定が倍になっている)
そんな化物に、幾ら魔改造されたとは言え一夏だけで相手になるはずもなく。シャルルの尽力でなんとか相打ちに持ち込みはした物の、その代償として白式が完全大破。コアと雪片弐型以外は見る影もないという有様に至ってしまったらしい。

「……くぅ、当日日本を離れるんじゃなかった……」
『面白いイベントだったわよ』
「ドゥーエ姉ェ……」

その当日、どうせ本戦は即座に中断されるのだからと、私はついついその日にN&T本社にてνGのヴァージョンアップを行っていたのだ。
どうせ戦闘データは忍び込んでいたドゥーエ姉がやってくれると判断していたのだけど……裏目に出たなぁ。

「で、コレが如何したん?」
「うむ。ぶち壊された白式だがね。残念ながらまだ生産ラインが整っていなかった所為で復旧が無理そうだったらしい」
「ふむ、まぁ、アレって急造品だったらしいしね」

関何せ製造期間が半年も掛かっていないのだ。篠ノ之博士の介入でも無ければ、絶対に完成しなかったであろう代物だ。

「で、その修理を我々N&Tが引き受けたわけだ」
「うぉい?!」
「あぁ、当然魔改造の許可も得ている。くくく、完成した機体からは好きにデータを取って構わないと言ったら一発だったよ」
「おいおい……」

そりゃまぁ、駄目だろう日本政府。
いや、確かにN&Tのブランドは世界的に有名だし、そんな提案をされれば是が非でも受けるだろう。
然し、だ。イチカってば今世界中から狙われてるんだから、そう簡単に怪しいところの手を入れるべきではあるまいに。

「で、このプロジェクトはNEXTではなくNMSS計画で行く事にしたよ」
「はぁっ!? なんでまた!?」

NEXTシリーズは、今現在N&Tの最も大きなシェアを誇るISシリーズだ。
基準としては第二世代に近いが、異様なほどの反応速度とイメージインターフェイスによる粒子防護力場(ボソンフィールド)を装備しており、様々な後付装備(イコライザ)を戦況にあわせて使い分ける事で、ありとあらゆる戦場に対応できるという、当に新世代(NEXT)な代物なのだ。

で、対するNMSSというのは、ニ(N)ュータイプ専用モ(M)ビルス(S)ーツ少女(S)という、明らかにネタとして考案したプロジェクトなのだ。
……いや、ネタとは言ってもバイオコンピュータから連なるサイコフレームチップや、荷電粒子技術、サイコフレームを利用したオールレンジ兵器などなどと、従来のISでは対応しづらく、技術レベルを根幹から底上げするような物を多々開発したのだけれど。
――それでも、アレはあくまで私の傘下で研究しているネタ装備なのだ。

いや、量産型を開発して輸出したりはしてるけどさ。

「ほら、最近良い感じみたいじゃないか」
「……あぁ、PS計画のこと?」

PS計画。つまりパワードスーツ計画。簡単に言うと、ISコアを利用しないISの製造だ。
いや、センセイの00ユニットを応用したり、電源を燃料電池式にしたらサイズのダウンジングに成功しちゃって……。
で、黒百合とか百合水仙とかを開発しちゃったのだ。
その辺りがかなり成功して、新規素材やら新技術の開発が上手く行き、その成果を今現在νGへとフィードバックしたりしている。

「ほら、前に言ってたじゃないか。サイコフレームをふんだんに使った件の機体、織斑一夏に使わせてみたいって」
「……って、アレのこと言ってたのドクター!?」
「ガワは大分前に作っていたようだし? 少しレストアすれば、最新型としてでも十二分に発表できるだろう」

それに、アレなら仕組みはわかっても再現は出来ないしね、とドクター。
うーん、サイコフレームやら装甲材やら、その大半が宇宙新素材の類で出来てるからなぁ。データを見たらその素材の理不尽なまでの性能に涙するかも。

「――まぁ、イチカに使わせる分ならいいか」
「一応向様の希望として、零落白夜の発動は可能にして欲しい、と言うリクエストがあったよ」
「その程度なら、まぁ、多分なんとか」

正直な話、アクシズの技術力を考えればISコアの解析なんてとっくの昔に終わらせられる。その程度の技術力は十分に保有している。
何せアクシズのメインフレームは量子演算型コンピュータ。人類の解析能力なんぞ圧倒しているし、第一解析したデータはそもそも従来のコンピュータとは規格からプロトコルまで全く違う為、外部からでは解析不可能なのだ。例え、ソレが件の天災であろうとも。
問題は、ISコアが持つコア・ネットワーク。そこから「コアが解析された」という情報が洩れる可能性。

ISコアの情報網、コア・ネットワークは、おそらく量子通信により形成されていると思われる。
何せうちのイノベイド達がISコアに反応した上に、量子演算型コンピュータも同じ答えを出したのだ。

でその結果、ISコアの解析には先ず量子通信遮断施設の完成が最優先とされたのだ。
で、これがまた大問題となった。
量子とは世界の揺らぎ。「世界」があるところには必ず存在する最も原始的……というか根源的要素の一つ……だっけ? 確かそんな感じの代物らしい。
で、そんな量子を遮断する方法というと、正直なところ今一わかっていない。
脳量子波遮断施設とか作りたいのだけれども、それに関してどうした物かと悩む羽目に陥ったのだ。

で、どうしたのかと言うと。
サイコフレームの鋳型バイオチップ技術。アレを少し転用したのだ。
ミノフスキー粒子の特性を情報的に再現したデータを、分厚いサイコフレームの壁に仕込む。こうする事で中々の精度の量子遮断施設の建設に成功したのだ。
因みにチェックはイノベイド達の脳量子波を使わせてもらいました。

……っとと、話が逸れた。

「でも、アレ本当に使うの? 私でも十全には使いきれないのに」
「ふむ。まぁ、キミは素体は前衛仕様の癖に、如何しても遠距離戦のほうが好きなようだしね。その点、アレはこれでもかと言うほどの格闘戦型だから、キミとの相性が悪いのは仕方あるまい」

だから、何故研究室内で内々に開発していたアレのスペックを知っているのかと(略

「――まぁ、もう細かい事はいいや。それで、アレを持っていくのはいいとして、どうやって輸送するの? アレの開発はアクシズだし、正々堂々と地上に下ろすわけにはいかないでしょ」

何せ、私たちが宇宙に進出しているという事はかなり内々に進められているのだ。
世界の各国に知られぬようギリギリのところをやっているのに、こんな事で事が露見するのは少し面白くない。

「いや、それがね。ついにリジェネレイトが完成したんだよ」
「なっ!?」

ちょ、まって! 私それ聞いてない!!

「あれ? 言ってなかったかい?」
「聞いてないよドクター!!」
「ふむ。今日此処(ソロモン)へ呼んだのは、拠点移動を知らせるためだった筈なんだが……ふむ、すまないね、どうやら忘れていたようだ」

おいおい、と思わず、けれども気力なく突っ込む。
リジェネレイト。マクロスクウォーターリジェネレイト。バトルクウォーターリジェネレイトから成る、小型の第四世代マクロスを再現して設計した物だ。
全体の製造にはやや時間がかかった物の、何せ途中でヴェーダやらイノベイドが完成してしまったおかげで、作業速度が一気に跳ね上がった。主に設計補助やら演算やらイノベイドによる人員増加やら。
確かに、此処最近作業状況が一気に改善して完成予想時間が大幅に削られた、とかいう報告は受けてたけど……まさか、もう完成したとか。

「PSシリーズも早速運用されている様子だしね。イノベイド達はその来歴上元から『電子の妖精』そのものだから、量子転移(ボソンなジャンプ)とはとても相性がよかったし、ね」
「作業効率も上がって当然、ね」

因みに火星の遺跡な感じの演算装置は量子型演算装置ヴェー……じゃない、アクシズやソロモン、そしてリジェネレイトのメインフレーム一つ一つがソレ相応の演算能力を持つ量子コンピュータであったり、もしくはPSに搭載された小型量子演算装置でのものだったりする。が……。
要はテレポート。コレだけでもうISを超越していたり。
じゃなくて。

「まぁ、HLVを一機貸すから、ソレを使って送り届けてくれるかな?」
「あ、アタシぃ!?」
「どうせ行き先は同じだろう?」
「えー……」
「それともトーレを同行させようか?」
「はっ、ゼロ-セカンド移送任務確かに受領いたしました!」

トーレ姉が来るなんてとんでもない。
只でさえ鬼教官式のトレーニングが連続しているのだ。其処にトーレ姉なんて連れてきてみろ、間違いなく状況は悪化する。トーレ姉もアレはアレで鬼教官気質だし。

「そうかい。では、帰るまでは少しゆっくりしていくといい。そういえばウーノがケーキを用意していたかな。件の喫茶店、翠屋と言ったかな。あそこからボソンジャンプでの直送だ」
「(それってボソンジャンプの転移実験……)」
「うん?」
「いーえ、なんにも~」

まぁ、あそこのケーキが絶品なのは間違いあるまい。
再び地上で鬼教官の刺激を受ける前に、一時の至福を夢見て、リビングルームへ向かってのたのたと移動を開始するのだった。


そうして、チンク、セイン、セッテにケーキを食い荒らされたと知って激憤するまで後数分。


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39 原作は順守される様子です。

2012.06.15 (Fri)
その後保健室へと搬送されたリンを追った。
イギリス娘とか如何でもいいのだけれども、リンは大事な幼馴染だし。

到着した保健室。実質は救護室なのだろうけれども、学校と言う体裁上保健室と言う呼称らしいというのは実に如何でもいい話だ。

「おぉ」
「おっ、スバル。来てたのか」

で、リンが目覚めるのを待ってたら、丁度目覚めそうな頃合に何処からともなく現れたイチカ。シャルロットもといシャルルが追従しているのが減点対象だが、まぁリンは気付いてない様子だし、いいのかな? さすがギャルゲ主人公属性。実に見事なタイミングでこの場を訪れるのだから。
主人公補正と言うものが本当にねたましい。パルパル。

「別に助けてくれなくて良かったのに」
「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

で、目覚めて最初の一言。

「嘘だ~、リンはオルコット庇って直撃受けて意識飛んでたし、オルコットなんかその直前のダメージで機体中破してたじゃん」

思わず反論したら、うっと黙り込む二人。でも、隣のイチカをチラリと覗いたら、また再び元気に喋りだす二人。
面倒くさいなもう。

「好きな人に格好悪いところを見られたから、恥ずかしいんだよ」
「ん?」

で、いつの間にか何処かへといっていたシャルル王子が見事な一撃を見舞った。
思わず内心で拍手喝采を入れたのだけれども、さすがの主人公属性か、肝心のイチカは聞き逃していたらしい。コイツ耳腐ってる。

「ななな何を言ってるのか、全っ然っわかんないわね! こここここれだから欧州人ってこまるのよねえっ!」
「べべっ、別にわたくしはっ! そ、そういう邪推をされるといささかどう申しますか――っ!」

で、そんな反応を見ても首をかしげるイチカ。コイツ本当に氏ネばいいと思う。
しかたないなぁと笑うシャルルに落ち着くよう促され、烏龍茶を流し込む二人。そんな様を眺めながら、同じく烏龍茶を流し込んでいると、何処からとも無く地響きが聞こえてきた。
凄いな、先の展開を知っているから理解できるけど、私の第六感が悲鳴を上げるほどのプレッシャーとは。思春期の乙女は化物かっ!

で、惨状――もとい参上したイチカのクラスメイト達。
凄まじい勢いで詰め寄る彼女を往なすイチカは、見事な挙動でシャルル・デュノアとペアを組む事を発表。リンとオルコットを適当に往なし、見事にその場を治めてしまったのだった。










――おのれぇ!!

部屋に帰って一息いれて、途端に湧き上がるもの。膨れ上がる怒り。友達を攻撃されて、肝心の私がアレを仕留め損なうとは。
フィン・ファンネルを出し惜しみしなければ、あの程度瞬殺も容易かったのだろうが……。
無しで十分と言う私の目算が計算違いだった、と言うだけの話なのだが、だからこそ何よりも腹が立つ。
私は、友の仇討ちに、手を抜いてしまったのだ。
何よりも、そんな自分がいらだたしい。
ファンネルを使わなさ過ぎてわすれていたとかそういうことはだんじてない。ないったらない。

「そうだ、黒百合あたりで奇襲仕掛け……」
「止めなさいおばか」

いきなり背後から頭を叩かれた。
何事かと背後を振り返ると、見た事のない顔の女子が一人。
……いや、もしかして?

「……ドゥーエ姉?」
「久しぶりねスバル」

言って、此方を抱きしめてくるドゥーエ。ああ、私の直感で気付かなくて当然か。いや、正確には気付いていたのだろうけれども、それを危機対象だと認識できなかったのか。

「でも、如何やって此処に。幾らドゥーエ姉でも、世界中のセキュリティの集大成な此処に来るのは面倒だったでしょ?」
「んー、クアットロが手伝ってくれたからね、チョロかったわよ?」
「……クアットロの技能を恐れるべきか、それに破られちゃう学園を嘆くべきか」
「といっても、流石に織斑一夏周辺と、地下への通路は流石に厳しいんだけれどもね」

そういって苦笑するドゥーエ姉。
久々の再会を喜び合いつつ、ある程度きりが付いた所で椅子に腰を下ろす。
机の上には、今淹れたばかりの煮出しミルクティー。

「で、ドゥーエ姉、どうして此処に? 単純に会いに来た、ってわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうなのだけれどもね。あなたに会いに来たってのもうそじゃないのよ?」
「わかってるってば」
「ならいいのだけれど。私の目的なのだけれどもね、貴女にドクターから言伝があったのよ。『ドイツ機』への過干渉を控えるように、って」
「はぁ?」

ドイツ機、つまりはシュヴァルツェア・レーゲンに対する干渉を控えろ、と?

「今現在、あの『黒い雨』にはVTシステムっていうのが搭載されているのよ」
「VTって、ヴァルキリー・トレース? 昔ドクターが千冬さんの動きをゲームに入れたいって作って、何故かISの動作補助プログラムになったアレ?」
「そう、それ。どこぞの馬鹿がアレを『黒い雨』に仕込んだらしいのよ」

VTシステムとは、その名の通り織斑千冬(ヴァルキリー)の動作をパイロットに投影(トレース)するというソフトだ。コレを用いればその機体のパイロットの腕に関わらず、常に織斑千冬の技術を一定量投影することが出来る、と言うものだ。
但しこれ、基本的に失敗作なのだ。何せ元が織斑千冬の挙動だ。あの人って殆ど直感で動くセイバータイプな人だ。ただ挙動を真似れば追いつけるとか言うような生易しいレベルではない。
第一、あくまでアレはゲーム用にと作られたのだ。ドクターが監修してる所為でかなり出来はいいが、あくまでゲーム用。実戦で使うにはまだまだ未完成の代物だ。

昔ドクターが未完成のVTシステムを使った同人ゲーム、『ヴァルキリー・トレーサー』が元ネタで、どこぞの企業の馬鹿がそれを参考に仕上たシステム。ドクターは「あくまで同人だからね、真似されても寧ろ光栄だよ」とか言ってたが。
まぁ、まさかゲームシステムを兵器転用するとは思わなかった。いや、IS(へいき)を玩具にしている私が言えた事ではないんだけど。

「ま、折角だからデータ取りをしたいってドクターが言い出してね。まぁ、織斑一夏の当て馬に用意されたみたいだし、手を出さないで欲しいのよ」

スバルが手を出しちゃうと舞台が喜劇になっちゃうでしょ? とドゥーエ姉。失礼な。

「いいけど、それって学年対抗戦でしょ? 組み合わせとかで決まっちゃった場合はその限りじゃないと思うんだけど」
「んー、ほら、そのあたりはチョチョイと、ね?」

そういって首をかしげるドゥーエ姉。
まぁ、クアとドゥーエが組めば、大抵の情報セキュリティは突破できるだろうし、抽選の組み合わせを弄るくらいは……軽いのかな?

「まぁ、とりあえずそういうイベントが発生するように調整が行われてるのよ。でもアンタの戦力は如何考えてもイベントを根底から覆しかねないから、手を出さないで頂戴ね、ってお話」
「いいけど……でも、私が全く動かなかったら逆に怪しまれちゃうよ? そこらへんのフォローは?」
「そのあたりはアドリブに任せるわ」
「ちょ」

まぁ、頑張りなさいな、なんて呟いて踵を返すドゥーエ。慌てて引きとめようと室外へ一歩足を踏み出す。
けれども既に其処にはドゥーエの姿は無く、感じられる彼女の気配も既に希薄な物となっていた。
……っていや、NTの直感を誤魔化せる戦闘機人とか。本気で恐ろしいんですが。

「……まぁ、いいか」

本当なら、今から学園サーバーにハッキング仕掛けて、こっそり抽選を弄ってしまおうか、なんて企んでいたのだけれども。
具体的には第一試合で私対厨二病で一気に原作ブレイク、とか。
まぁ、それも出来ないとなってしまえば……。

ごろりとベッドに横になって、当日の行動予定を頭の中で組み立てるのだった。



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38 ヒーローisスケコマシ

2012.06.15 (Fri)
「相変らず女の敵だねぇ」
「酷っ!? 俺何か悪いことしたか!?」
「いやいや、一人の人間として、イチカのやってる事はきっと尊敬できる事だと思うよ、うん」

某日某所。一人こっそりと第三アリーナにてνGの訓練をやろうとしていたら、突然一夏が飛び込んできた。
いや、こんな早朝からご苦労様なことです。
あと、何で私がシャルロットの事知ってる前提で話進めてるのかなイチカは。え? スバルはなんでも知ってるだろうって? 何でもじゃないよ、知ってる事だけだよ。

「とりあえず特記事項二一を出しておいたらシャルは大丈夫だって言ってたんだけど……」
「無論、それだけじゃ足りないのは理解してるよね?」
「……いや、それで何とかなるかなー……って思ってたんだけど……だめ? やっぱり?」
「うん、駄目」

幾らIS学園側の取り決めで守られる事が確かとはいえ、世界はIS学園だけで完結しているわけではない。シャルロットがシャルロット・デュノアである限り、デュノア社……ひいてはデュノア社長の影響は如何しても付きまとう。
確かに3年間、IS学園の中に居る間は安全に見える。……でも、本当に? 三年間、一切IS学園から出ないのか? 三年間、IS学園……もしくは、シャルロットを守りうる戦力の庇護の手のとどかないところに一切行かないと、そう本当に断言できるのか。

うーん、どうした物か。
シャルロットの身柄を引き受ける? どうやって。性別擬装なんていうのは正直な話弱みに成らない。やろうと思えば「性別は書類の不備だ」で押し通して、貴重な戦力であるシャルロットを強制的に本社に引き上げさせてしまえばそれでおしまい、と言う可能性もあるのだ。
いや、それ以前にシャルロットが処理されないとは誰も言い切れない。

いや、デュノア社を敵対的買収するっていう方法もあるんだけど、正直あそこを吸収してもあんまり旨みはないし。
確かに世界の量産型ISの大きなシェアを担っているというのは美味しいのかもしれないが、所詮旧式。発展性の無い会社を取り込んだところで、荷物を背負う以外に意味はない。第一あそこ旧AMIのサポート範囲と大分被ってるし。
いや、私が完全に単独で私ツエーやってるオリ主とかならそれもアリかもしれないけど、責任ある立場としては不利益を承知で会社に負担をかけるのは……うん。

「やっぱ、うちでやるなら技術と身柄の交換かなぁ……」
「何とか成るのか!?」
「でもなぁ……」

いや、技術を売れない、と言うわけじゃない。技術なんぞ腐るほどあるのだ。一つや二つ表に出したところでなんら問題は無い。
然し、だ。果たして、ウチから放出した技術を、たかが第三世代型の開発にすら引っかかっているデュノアが吸収することが出来るのか、というのが……うん。

「何か良い技術あったかなぁ?」
「頼むスバル! 俺に出来ることならなんでもするから……!!」
「ぬぅ……まぁ、後で実家に連絡して、何か手が無いか確認しとくよ」
「そうか、有難う!!」

言って満面の笑みで手を取るイチカ。だからそういう一つ一つの行動がきっと女の敵たらしめているのだろう。さっきから周囲のお姉様方(上級生の朝錬生)の視線が怖い。

「まぁ、いいさ。それよりもイチカ、折角こんな時間にアリーナに着たんだ。久々に実践訓練の相手をしてやろう。イギリス(ちょろいの)と武士っ娘(ツンデレ)相手に腕がなまってないか確認してやるっ!!」
「ちょ、ま、俺は……って、もうνG展開してらっしゃる!?」
「問答無用!!」
「せめて展開する時間くらいくれっ!」
「展開速度もまた武器。遅いのは自らの未熟を悔やむが良いっ!!」
「お、おおおおおお!!!???」

で、その後イチカの通例の起床時間が訪れるまで、延々と、白式にダメージが残らない程度にいたぶり続けたのだった。
……旧AMIの拡張領域増強技術(6年前の技術)くらい渡せば何とか成るかな? AMIってIS自体はヘタレだけど第二世代向け後付装備(イコライザ)とかは割りと得意だったし。




と、いうわけで。

「さぁ、今日の品物はイチカの物干し竿から風で流されたこの一枚の布。名称まで言っちゃうといろんなところで引っかかるから、無粋な事は言っちゃ駄目だよ?」
「3万!」「5万っ!」
「おk、それじゃトランk……もとい、この「織斑一夏の下腹部肌に直接触れていた布地」は5万でマユラの物と成りました~ んじゃ、次はこのハンケチ! 聞いて驚くなかれ、これ、織斑千冬のお古をイチカが使ってた物だっ! 古くなって廃棄するところを頂戴してきました」
「「「「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」




ふぅ、今日も良い仕事をした。廃品を売りさばくだけで一般会社員一か月分以上の収入を得られるんだからもう。IS学園にはエリート、つまりお金持ちなお嬢様が多いからなのだろうけど……大半腐ってるのがなぁ。

通例のバザーを終えて、リンと約束していた第三アリーナへと足を運ぶ。
なんでも件のイチカとのデートのために学年対抗戦で一位を狙うらしい。ははぁ、それはまたご苦労な。
で、私は何時もの競りがあるからと先にリンを向かわせていたのだけれども。
はて、何か妙にドンパチしてるなぁ。

「…………………………ふむ。…………………………………………………あぁ、厨二……じゃなくて、黒兎の」

IS原作では、チョロイのとリンが大ダメージを受けて、学年対抗戦を断念せざるを得なくなった一件だ。まぁ、この世界のリンは、私の監修が入っているチートリンだ。たかが軍人風情如き、そう易々と倒せる相手ではないのだけれど。
……まぁ、相手はアドヴァンスドだしなぁ。どうなる事やら。

なんて事をのんきに考えながら、第三アリーナへと足を勧める。
おぉ、見事。甲龍とレーゲンが辛うじて拮抗している。驚異的なAICだが、BTのレーザー攻撃による牽制で、何とか拮抗しているといった所か。
うーん、BTは戦力外として、シェンロンとシュヴァルツェア・レーゲンでは相性が微妙になぁ。何だかんだ言って、シェンロンは近接格闘型。対格闘型用兵装ともいえるAICを持つシュバルツァ・レーゲンを相手にするのには苦労するだろう。
イギリス娘? IS適性とBT適性だけのヤツに何を期待しろと。

とか思ってみてたら、イギリス娘が不意をつかれた。
オールレンジ兵器の操作中、自機の隙をつかれて、ワイヤーブレードが襲い掛かる。あーあ、残念、彼女の冒険は此処で終わって……って、何やってるリンっ!!

咄嗟にBTの前へと踏み出した甲龍。遠心力を受けて相当加速していただろうワイヤーブレードは、然し甲龍の頑丈な装甲の前に辛うじてその威力を減衰させ、然しリンとイギリス娘はその衝撃を受けて、勢い良く地上へと墜落して……辛うじて、その直前で二機を受け止めた。

「全く。手加減も知らないのかドイツ軍人!」
「……ふん、愚物を釣る心算が、餌に掛かったのは別な物らしいな」

腕に掴んだリンとイギリス娘を見る。どうやら二人とも気絶したらしく、それと同時に二人の身体からISが光となって消えた。どうやら待機状態に移行したらしい。
それを確認し、二人をすぐ傍に居た上級生へと預ける。ちょっと前にギン姉と一緒に居た人だし、まぁ大丈夫だと思う。

そうして、二人の安全を確保して。ゆっくりと上空へと機体を持ち上げる。

「オーストラリア、N&T社製IS νG。……ふん、データで見た時のほうが……っ!?」

咄嗟に回避するシュヴァルツェア・レーゲン。まぁ、あんな牽制打に当たられたほうが興ざめなのだけれども。

「戦闘中にぺらぺらと、偉く口が廻るね、軍人娘」
「……貴様ぁ!!」
「――ふん、口を動かす前に体を動かせ、ド三流。ほら、いつまでも立ち止まってて良いのかな!!」
「な、動的空中機雷《アクティブエアーマイン》だと、何時の間に――くっ、おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」





というわけで、私対ボーディヴィッヒでのIS戦闘にしゃれ込むことと成った。
本来なら此処で介入するのはイチカのはずなのだけれども、うーん連中何してるんだろうか。

HWSに格納されていた機雷でシュヴァルツェア・レーゲンの行動範囲を限定しつつ、くるくると空中に円を描きながら互いに牽制を撃ち合う。


「ぐっ、落ちろ素人(アマチュア)っ!!」
「生憎コレでも専門家(スペシャリスト)だっ!」

――っ!!

放たれたレールカノンを余裕を持って回避する。予測される次の攻撃はワイヤーブレードによる斬撃。予め回避運動をとらせつつ、バルカンで牽制する。

「ふん、そんな豆鉄砲、このシュヴァルツェア・レーゲンには効かんっ!!」
「織り込み済みだよ馬鹿!!」

反射的に腕でバルカンをガードしたシュヴァルツェア・レーゲン。一瞬で来たその死角は、けれどもIS戦闘においては致命的と成りうる。

一瞬で来た死角を伝い、即座にシュヴァルツェア・レーゲンの背後へと回り込み、ビームサーベルを抜き放つ。

――――バチィッ!!

「ちっ」「くぅっ!?」

プラズマ手刀――っ!! そういえばそんな装備も積んでいたっけか、迂闊っ!!

咄嗟に引き抜いたもう一刀のビームサーベルで、ドイツ娘の左プラズマ手刀を斬り返す。
機体のシールド領域同士が干渉しあうほどの至近距離での高速連続格闘。バリバリと凄まじい勢いでエネルギーが消耗していく。

「くっ、AI――」
「させるかっ!! 振動拳っ!!」

咄嗟に低出力で放ったIS振動破砕。人体を破壊するほどの出力は無いものの、それでも受けた振動は人体を前後不覚にする程度の威力は持っている。
AICの運用には極度の集中力が求められる。現在、振動拳の影響で上手く体を動かせないであろう彼女に、AICを運用するのは至難の業であろう。

「ちぃっ!!」
「ぬ、くぅっ!!」

と、ついに破れかぶれになったか、ドイツ娘は肩のレールカノンを乱射すると、そのまま此方に向けて勢い良く突っ込んできた。
張られた弾幕に、如何しても直撃するいくつかをビームライフルで迎撃し、迎撃し切れなかった分を盾でベクトルを逸らして回避して。そうして接近してきたラウラ・ボーディヴィッヒに、必殺のビームサーベルを――――。

「おおおおおおおおおおお!!!!!」

とか考えていたら、いつの間にかイチカとシャルロ――もとい、シャルルがアリーナへと割り込んできた。
漸くかと考えていたら、イチカがAICにつかまった。
いや、ドイツ娘よ、「私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、貴様も有象無象の一つに過ぎない――――」とか格好つけてるけど、私にボコボコにされて既に装甲が所々剥げてボコボコだってわかってるんだろうか? アレだよ? ビーム兵器の直撃こそ無かったものの、機雷とかバルカンとか牽制兵器にはボコボコ当たって装甲は所々剥げたり欠けたりしてるし、今の台詞前に深呼吸して呼吸を整えて他のもバレバレだよ??

で、イチカが頑張って離脱して、ラウラが此方をガン無視しながらイチカに追撃をかけようとして――超人千冬さん登場。うわぁ、本当に生身でIS用近接格闘ブレード振り回してるぅ……。

「模擬戦をやるのは構わん。――が、アリーナのバリアーまで破壊される事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「教官がそう仰るなら」

そう言ってドイツ娘はISを量子格納してしまった。ちっ、あと少しでダメージレベルC突破だったのに、逃げられたか……。

「織斑、デュノア、スカリエッティ、貴様等もそれでいいな?」

そんな織斑千冬の声を耳朶に、仕留め損ねたという事実に思わず苦虫を噛み潰すのだった。


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37 訓練風景inバラライカさんの暴虐 もしくは3組の日常

2012.06.15 (Fri)
「と、言うわけで本日は実機訓練でーす」

つまりはそういうことだ。
何時も通りにN&T社製のスーツ「強化装備」を身に纏い、グラウンドに集合する。
――く、デザインした私が言うのも何だけど、コレ男の前では着れないなぁ。
いや、女子の前でも十分恥ずかしいんだけど、周りも似たり寄ったりだし。

「く、なんてスタイル」
「オーストラリアのは化物かっ!!」

イリーナとイルマの戯言は無視しつつ、軽く体を動かしてから整列位置に移動しておく。
うーん、要所要所は確りガードしてるし、胸が揺れて痛いとかいうのもないから性能はいいんだけどなぁ。最近先生がチームに加わった事で、XM3とか導入して、スーツの癖にバカみたいな性能誇るんだけど、エロいのがなぁ。
見てる分には楽しいんだけどなぁ。

「と言うわけで、本日は実記を使った訓練をする。具体的には、貴様等には学園保有のISを実際に装着してもらい、各自数分ずつ、実際に実機を動かしてもらおうと思う。――と、その前に」

言うと、バラライカ女史はその鋭い目を此方に向けてきた。
私、何かした?

「スカリエッティ訓練生、前へ」
「はっ!」

思わず軍隊時の訓練生口調で声を上げる。ううう、何故だ!?

「宜しい、安め」
「はっ」
「スカリエッティ訓練生。貴様には先ず、諸君に実際のIS戦闘と言うものの見本を見せてもらいたい」
「見本、でありますか」

思わず言葉を濁す。何せ、言うほどに私もIS戦闘に優れているというわけではない。
私が優れているのはあくまでも基礎的な身体能力。そして脳力を初めとした思考制御系と、直感を初めとした第六感系能力、そして思考と直感を同時に扱うカオスタスク。それこそが私の全てだ。
実戦経験は有るといえばあるのだけれども、対IS戦闘と言うのは出撃回数の3割にも満たない。

「そうだ。何しろ此処の連中が実際に見た事のあるIS戦闘といえば、ついこの間のあの腑抜けた白いのの戦闘だけだ。あの程度がISの戦闘などと思われてしまっては、甚だ不愉快だ」

なるほど。確かに今の時期、実際に行われた高レベルのIS戦闘といえば、まだ白式対甲龍のアレが鮮烈だろう。それ以前の物といえば白式対BT。どちらも白式の絡む、正直IS戦闘としてはレベルの低いやつ。
いや、リンと戦ったときの白式は強かったけど、途中中断だし、BTは論外。何せセシリアはIS適性とBT適性で国家代表を張ってるだけのやつだ。兵士適性とか低そう。

「スカリエッティ訓練生。直ちにISを展開せよ」
「はっ!」

一歩前へ進み出て、その場でIS――νGをフル装備で展開させる。
現れた純白の機体。周囲の視線が突き刺さるのを感じつつ、けれどもそれをおくびにも出さずに佇んで見せた。

「良し。では貴様の相手はアレにしてもらおうと思う。本来は私が相手をしたかったのだがな。この学園のISでは私に付いて来れん」

そういってバラライカ女史が指差した方向。其処には、遠くから接近してくるISの機影がひとつ。
機種はデュノア社製第二世代量産型、ラファール・リヴァイヴ。そしてこの搭乗者は――おぉ、ロリ巨乳!?――じゃなくて、山田麻耶先生かっ!!

ドジッ子天然という印象の強い山田先生だが、イチカさえ絡まなければきりっとした美少女系教師。地面まであと数ミリと言うところで機体をくるっと一回転させ、綺麗に慣性を相殺、そのまま静かに着陸した。

「うむ。相変らず見事だな、マーヤ」
「あははは、たまたまですよう。それと、私はマーヤじゃなくて麻耶で……」
「さて、それではマーヤよ、アレの相手を頼もうか。なに、雑魚の専用機持ちばかり相手にしてなまった身体をほぐす為の物だ」
「ざ、雑魚って……織斑君たちは結構頑張ってるんですけど……」
「誰がチフユの弟の話をしたかね」

ニヤリ、とバラライカ女史。
顔を真っ青にするマーヤ……じゃなくて、山田先生。

「あ、いえ、その、あの……」
「黙っていて欲しければ勝って見せろ。もし負ければ……な。私の口はウォッカで滑りやすいのだ」
「スカリエッティさん!! 悪いけれども先生本気で行くわ!!」

解っているだろう? という表情でニヤリと微笑むバラライカ女史。いや、だからその顔でニヤリは洒落にならないほど怖いって。
あー……うん。いや、別にいいんだけどさ。

「では互いに距離をとって……準備はいいな。それでは、はじめっ!!」











と言うわけで、バラライカ女史の祖国語での罵声が飛び散る中、なんとか山田先生を撃墜する事に成功した。
……バラライカ女史め、どうせ通じないからって、古ロシア語で凄まじい事言ってるな。

……ギロリ
「ひぃっ!!」
「……全く。あれほど言ったというのに、易々と負けおってからに」
「め、面目ありません~」

何せ、私が今回使った武装は、ビームライフルとシールド。それと頭部バルカン程度。武装の3割程度しか使っていないのだ。
山田先生は目が良いタイプの基本の人だから、思考的な搦め手だけで十分に対処できる。

「――まぁ、いいだろう。さて諸君、諸君が今見た戦闘こそが、本物のIS戦闘と言うものだ。従来の戦闘は、当たる弾丸は当たる、外れる弾丸は外れる。いかに有利な狙撃ポイントを先取し、いかに効率よく敵を倒すかと言うのが戦争だった。然し、ISは違う。何せ当たる弾丸を撃たれてからでも回避できるし、回避どころか弾丸を切り払う事とて不可能ではない。実際スカリエッティがやったように、実弾をビームで蒸発させるなどと言う荒業も、ISならではの戦いといえるだろう。……さて」

唖然とする生徒たちを尻目に、バラライカ女史がパチリと指を鳴らす。と、何処からともなく現れるやたらと厳ついSP達。
しかも妙に行動が規則正しい。……本当にうちのSPか?

「ご苦労軍曹。では持ち場にもどれ」
「了解しました」

……うん、OK。私は何も見てないし聞いてない。懐に光る黒光りとか見ていない。……でも、アレ、マカロフだよなぁ……旧ソ製の。ええい、知らん知らん!!

「では諸君、専用機持ち以外でチームを組め」

言われた途端にすぐさま整列するクラスメイト達。うん、流石にこのあたりはバラライカ先生の調きょ……教育が行き届いているなぁ。

「良し。スカリエッティ訓練生は他の訓練生のサポートに当たれ」
「はっ、了解しました」
「宜しい。訓練終了時は12:00。それまでに全員が実機に触れておく事。……では始めっ!!」

その掛け声と共に実機に群がるクラスメイト達。
うん、数字的な戦力では3組は他組に比べて圧倒的に劣る。成績毎に割り振られてるんじゃないかと想いたくなるようなこの学校だが、その中でも3組は総合的な中堅。高いIS適性持ちの1組2組や、一芸に秀でた四組と比べても、目だったところの無い器用貧乏なクラスだ。
――けれども。チームワークだけは、他に比べて圧倒的に高い。
まるでどこぞの軍隊式の訓練を課せられている3組は、他のクラスに比べて組織力が圧倒的に高く、また基礎的な身体能力も圧倒的に高い。全員がソビエト式のCQCを習っていたりして、私でさえも油断すれば殺られかねないという連中がゴロゴロ。本当、あの先生は3組を如何仕上る心算なんだろうか。





「さて、マーヤの本音をチフユに話して来ようか。あの偏屈がどのような反応をするか、想像するだけでクるものがあるな」
「ちょ、ごめんなさいお願いします堪忍してください駄目駄目駄目私ころっとされちゃいますキャーーーーーー!!!」

山田先生………南無。
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36 金色プリンス降臨

2012.06.15 (Fri)
はい、地上に戻って寮に帰ったら、なにやら周りの女子たちが奇妙なほど浮き足立っていました。
で、ちょっと適当に一人捕まえて話を聞いたところ、イチカに関する一つの噂話が出回っているのだとか。
なんでも、「今度の学年別トーナメントに優勝した物は、織斑一夏との交際権を手に入れられる」とか。
――――あー、なんだったか。確かこんなイベントもあったような気がする。
なんだったっけ、確か篠ノ之箒がイチカに告白したら、あの朴念仁が酷い曲解をしたとか、そんな話。

とりあえず私がすべき事は、何にも無い。
――いや、一応リンの手助けはするべきかな? 確かリンってリアル厨二病――じゃなくて、ドイツ娘に撃墜されて本選には出場できなかった筈だし。
まぁ、今のリンはたかが軍人如き相手にしたところで、余裕で勝利できるだろうけど。
アドヴァンスド? 此方はアドヴァンスドマシナリーな私が教えたのだ!! 格上相手の戦闘なんて当たり前だろう!!



「と、言うわけで訓練です」
「何がと言うわけなのかわかんないわよっ!!」

言いつつ、シェンロンを展開させるリン。
その姿は自然体でありながら、何処にも隙が見とれない。教え込んだ八卦掌寄りの太極拳。思うにリンのシェンロンって如何考えても防衛向きなんだよね。持久力に優れているというのはつまり、長期間にわたって数で押しつぶすというのを最初から考えているようにも見えるし。
で、より長く生き残れるようにアドバイスした結果、リンが身につけたのが中国拳法。いや、『拳児』教えたら嵌っちゃって……。

で、現在のリンは凄まじく強い。主に防御型の戦法を得意としており、此方が不用意に攻め込むと、それを引き込んで体勢を崩し、出来た大きな隙に強烈な一撃を叩き込むという、近接型泣かせなIS操縦者となっていた。
反面射撃の方は成長せず、『いっそのこと面制圧にしてはどうか?』なんて不用意にアドバイスしてしまった物だから、現在衝撃砲を範囲攻撃型に換装するプランを本国と練っているとかどうとか。
うーん、機体相性的には遠距離からジワジワ削っていれば十分勝てるんだけど、既に真正面からやりあいたくは無いレベルだ。
さすがはチッパ――じゃなくて、リンだ。ヒロイン補正は伊達じゃない、ってか。

「と言うわけで、あたしの勝ちー!」
「なんでよー!!!」

正面からの殴り合いで何とか辛勝を得る。
ははは、リンってば根が素直だから、コッチがわざと作った隙に綺麗に引っかかってくれる。
予め狙われているのが解ってるんだから、作る隙をこちら側からコントロールしたと、ただそれだけの話。

「ぬぐぐぐぐ……!!」
「まぁ、素直なのはリンの美点なんだけどね。日常でもそれくらい素直なら、イチカももう少し……」
「わーー!!!」

試合の反省点を話して、慌てるリンを見て愉しむ。
まぁ、リンの動きと言うのは本当に素直なのだ。喜びも悲しみも全て乗った、“人”らしい拳とでもいうか。

「うぅ、やっぱり本格的に心意六合拳でも習ってみるべきかしら」
「いや、アレはリンには合わないんじゃない? やるなら八卦掌を確り身につけるとかのがいいと思うよ

「因みにスバル、最後のアレ何?」
「ん? ムエタイのサイ・リウ・ランを、ちょっと透頸っぽくした技。流石にそのままアレを当てると、リンの顔がグチャグチャに……」
「アンタは私を殺す気かっ!!」

いや、殺す気は無いって。だから手加減したでしょうに。

「全く。何とか体勢を崩せたと思ったら、崩れた姿勢から回し肘って!!」
「リンの化勁も良かったんだけど、残念ながらリンのクンフーでは私を往なしきるのは無理よ。文字通りクンフーが足りないわ」
「ぬぐぐぐぐぐ!!!」

といってもまぁ、多分一夏には十分勝てるレベルには仕上げてある。
まぁ、技量云々以前にリンがイチカに本気で挑むというのが無理だろうから、あんまり意味は無いんだけど。

まぁ、少なくとも。
どこぞの厨二病に瞬殺されるとか、それだけは絶対にありえないから。
寧ろ此方がアレを瞬殺するんじゃないだろうか。何せ機体相性的には良くも悪くも無いわけで、衝撃砲で牽制しつつヒットアンドアウェイで攻めてればそのうち勝てる。

「ねぇ、そういえばなんだけど」
「うん?」

突如として話を切り替えてきたリン。
何事かと首をかしげると、なんだかポワンとピンク色の空気が周囲に漂いだして……って、拙い!

「実は今日ね、ちょっと思い切って一夏を夕食に誘ったのよね。そうしたらあの馬鹿、めんどくさそうにしてたけどちゃんと私に付き合ってくれて、で、色々話してたんだけど、そしたら何だかダンのところのランが此処にくるとかいう話に成ってて、全くあの子まだアタs――じゃなくて、まだ狙ってるみたいでブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…………………………………………………」

「―――――――――――」








と言うわけで、一組に転校生が二人程来たらしい。うざい。
うちのクラス――というか、一年生――いや、全学生が妙に騒がしい。ウザイ。
何せ、転校生の内一人は、世界でただ一人といわれていた男性IS操縦者、織斑一夏と同じ男性だそうだ。ウザイ。
で、浮き足立った生徒たちは、現在1-1にその身を集めている。全学生の9割が一箇所に集まって黄色い悲鳴を上げているのだ。正直頭が痛い。そしてうざい。

そして何よりもウザイのが、この昼食時。
折角自慢の懐石風弁当を静かに食べようと思ってたのに、何故かリンに誘拐され、そのまま一夏のハーレムと一緒に屋上でお弁当を食べる羽目に成ってしまっていた。

いや、それは良い。それはいいのだけれども。
目の前でアーンをし合う、パッと見バカップルな二人と、それを囃すブロンド貴公子。そしてその言葉で猛る虎仙人と戦女神。
正直コイツラが一番うざい。アピールしたいなら直接アピール擦ればいいだろうに。
……って、あーあー、酢豚とサンドウィッチの押し付け合いとか……あーあー。

「キミは参加しないの?」

とか傍観していたら、いつの間にか傍によってきていたブロンド貴公子。
シャルロット・デュノア。いや、シャルル・ジ・ブリt……シャルル・デュノア。

「私はあくまでも友達であって、異性としての興味は無いなぁ」

と言うか、イチカを自分の旦那にとか無理。既に十数年女子をやっていて、男子相手に対する忌避感は薄れてきているが……。それでも、ああいったエロゲの主人公みたいなタイプは選ばないだろう。JK。

「ふーん……あぁ、ボクはシャルル・デュノア。ヨロシクね」
「ん。スバル・スカリエッティだよ。ヨロシクね」

と、名乗った瞬間にシャルルが思い切り目を見開いた。

「す、スカリエッティって、もしかして、N&Tの……?」
「まぁ、そうだけど。そういうソッチはデュノア社のでしょ」
「う、うん……」

何か様子がおかしい。もしかしたら、件の父親とやらに、私(N&T製IS)のデータを得るようにでも言われているのだろうか。
まぁ、NEXTもNMSSも世代にして2~3世代なのに、既存の同世代型を圧倒するとか言う意味不明なデータが出てるし、他所にしてみればデータだけでも喉から手が出るほど、と言うやつだろう。
まして、落ち目のデュノアであれば尚更。

……いや、無いか。流石に疑心暗鬼が進みすぎている。
幾らなんでも、織斑一夏に対する接触が最優先目標に設定されているであろうに、その上で私にまで接触するのはあからさますぎて危険を伴う。
まぁ、スカリエッティの名前は知る人ぞ知るという名前だし、聞いてみたら当たってしまって驚いた、とでも考えておこう。もしくは予備知識としてN&T所属パイロットの情報を小耳に挟んでいたとか。

「まぁ、あんまり言いふらす事じゃないから、出来れば内密に」
「あ、うん。わかったよ」
「といっても、私のはあえて隠すほどのことでもないから、気に止めておく程度で」

頷くシャルルを確認して、再び視線を戻す。
うーん、恋する乙女は恐ろしい。
そしてイギリスのチョロイの。お前は駄目だ。料理の勉強を――とまでは言わないが、せめて味見くらいしやがれ。……味見してそれなら絶望的だが。

とか考えていたら、不意に一夏がシャルルを見つめた。
――キュピィンッ!!
そのとき脳裏に電流奔る。無駄に発揮された私のNT能力。それは即時に手を懐に沈み込ませ、其処に忍ばせておいた万能端末から記録機能を起動させた。

「…………………」
「どうしたの、一夏?」
「いや、男同士っていいなと思ってな」
「そ、そう? よくわからないけれど、一夏が良いならよかったよ」

う、わぁ……。
しみじみと呟く一夏に、少し頬を染めて返すシャルル。これ、クラスの連中に幾らぐらいで売れるだろうか。少なくともゼロ4つは固い。

「……男同士がいいって何よ……」
「……不健全ですわ……」
「……灯台下暗しに気付かぬ愚か者め……」

そして陰鬱に呟く三馬鹿。だから羨ましいならそれを前面に出してアピールしなさいと。
白い目で一夏を見る三馬鹿を更に白けた目で眺めつつ、今撮影した映像が一体幾らくらいで売れるのかを頭の中で計算しているのだった。








「きいいいいい!!!!!!!! 『何が男同士って良いな……』よっ!! あたしみたいな美少女が目の前に居るってのにっ!! 私これでも雑誌のモデルとかもやってるのよ? 容姿にはそれなりには自信もついてるの。だってのにあの馬鹿、よりにもよって『男同士って良い』とか、何非生産的な事をほざいてるのよおおおおお!!! アレか、昔っからいくらアピールしても反応が悪いと思ってたけど、実はゲ○でした、同○愛者でしたって落ち!? ――はっ、そうよだから昔からダンとは仲が良かったのよ。昔からアンタと私とダンとイチカの四人でつるんでて、私とアンタなんて結構美少女なのに殆ど反応しなかったじゃない? それって実は元からダン目当てだったと考えればあたし達に目をやらなかったのにもなるほど納得できるじゃない。何よ最大の敵はランじゃなくてその兄のダンだったなんて盲点を通り越して予想外すぎるわよっ!! くそぅまってなさいよ一夏。私がアンタを正常な道に戻してあげるからね、この鳳鈴音の魅力を持って、全力で、ノーマルに引っ張り戻してあげるわ。覚悟しなさいよ一夏ぁぁぁ!!!!!!!!」

「うぅぅぅぅ、イチカめぇ……」

結局その日の晩、延々と一夏に対する愚痴を語り続けられる羽目に陥ったのでした。

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35 そして再び宇宙

2012.06.15 (Fri)
「いや、確かに設計案を出したのは私だけどさ……」

ソロモンを訪れた私の眼前、そこに佇む一機の巨大な鋼の塊を見て、思わずそううめいた。

「どうです、見事な物でしょう!! ミス・スカリエッティの提唱したフォールド理論、そしてその派生技術とされたクロノストリングエンジンとHALO制御システムを搭載した大型宇宙戦闘機!!」

目の前に聳える、全長30メートルほどの巨大な機械。それは、ISに頼らない新たな宇宙での可能性を模索する為の一案として考え出された物だ。
――いや、フォールド技術を小型化しよう、と言う中で、小型化の際に如何しても出力が安定しない、と言う問題点があったのだ。
そこで思いついたのが、同じく超時空干渉系システムであるクロノストリング機関。いけるかなー、と思って概念だけ提唱して、後は研究者の皆様に任せてみたところ、このクロノストリングエンジンを見事に現実化させてくれたのだ。
いや、さすがはマッド集団。開発速度がおかしすぎる。幾ら作業用オートマトンが大量に存在しているからって、前に来たときから二週間で仕上げるとか、頭おかしい。

「GA-000……開発コード“銀河天使《ギャラクシーエンジェル》”計画ね」
「ええ。機体サイズは全長28.5メートルと、開発中のヴァルキリーシリーズの倍という少し大きな物になってしまいましたが、その戦闘能力はヴァルキリーの倍どころではありません!」
「出力の方は?」
「問題は其処ですね。やはりクロノストリングエンジンの制御と出力は反比例、と言うのは相変らずで。ご要望の通りクロノストリングシリンダーは一本にしてあります。扱えれば無敵ですが、無理だとどうなる事やら」

なるほど、と頷く。
クロノストリングエンジンの特徴として、その出力の莫大さ、それと反比例する制御能力と言うものがある。
クロノストリングエンジンは、HALO機関による直接思念操作、人の意志によるダイレクトな制御で操る事で、莫大なエネルギーを引き出すことが出来る。然し当然の話コレは途轍もなく難易度の高い手法で、CSEシリンダーと呼ばれるパーツを増やす事で、このエンジンの安定性を向上させる事が出来る。対価として、エンジンの出力の低下という面が存在するのだが。
で、安定させつつ莫大な出力を得ようと思うと、単純に数を増やして安定化させるしか方法が無いという、大艦巨砲主義というか、一発屋と言うか、なんとも極端な、とてもではないが量産機に使えるシステムではなかったりする。

「使い方はさっきの説明でわかるが、GAシリーズな、私に使えるか?」
「ミスの制御能力は未知数です、保証できる訳ありません」
「はっきり言う。気にいらんな」
「どうも。気休めかもしれませんが、ミスならうまくやれますよ」
「ありがとう。信じよう」

――ニヤリ。
思わず担当員と握り拳を交わしてしまった私は悪くない。






と言うわけで、早速乗ってみる事にした。

「……で、何やってるんですかセンセイ」
「あら、遅かったわね。アタシのやりたい事はもう済んだから、後はどうぞご自由に~」

コックピットから出てきた白衣の女性。入れ替わりで見れば、ピッカピカのコックピットの中、何故か破られたビニールが。

「いや、いいけどさ」

いってから、コックピットに入り込み、システムを立ち上げる。
――HALOシステムによる意志干渉アクセスを確認。高度情報処理を開始。
――HALO接続良好。システム起動。
「システムチェック開始、オペレーションシステム正常起動、各部システム正常に稼動。出力安定」

呟きながら、静かに起動していく機体を眺める。
リニアシートを覆う全天周囲モニター。映し出されるのは灰色の格納庫と、すぐ傍で喜びの笑みを浮かべる整備兵。

『どうやら上手くいったみたいですね!!』
「うん。でも油断は出来ないからね、このまま少し制空領域内で試運転してみようかと思う」
『了解しました。貴女なら問題は無いでしょうが、くれぐれもお気をつけて』
「Thanks!」

言いつつ、退避する担当整備員。
彼が管制室へと退避すると同時に、鳴り響く警報音と警告ランプ。赤く染まる格納庫は次第に減圧され、それと同時に室内に響く音は消えていった。

『減圧完了。ハッチ開放、リニアカタパルト・エンゲージ』
「了解。GA-000、スバル・スカリエッティ、出撃する!!」

重力制御が遮断され、途端ゆっくりと浮き上がる機体。
磁力投射装置により打ち出された機体は、一気に加速すると、そのまま機体を走らせる。
うーん、……ごめん。納得した。なるほどISはスポーツだわ。





この機体、GA-000。オリ主らしく、GAシリーズを再現する前にオリジナル機体を作ってみたこの機体なんだけど、何か色々おかしい。
駆動方式は基本的にCSエンジンを利用したエネルギー出力方式で、制御さえ可能であれば事実上の半永久機関を搭載している。といっても、エネルギーの戦闘時の消耗量は連続生成量を上回っているから、戦闘機動は連続で精々120時間。パイロットのテンションを考えると戦闘継続時間は8時間。私で三日ほどだろうか。
起動補助としてイナーシャル・コントロールシステムも搭載しているし、此方はしっかりとISで蓄積された技術を流用させてもらった。
次。この機体の基本的な装備は、GA-001、ラッキースターと呼ばれる機体を元に、オリ主らしくパワーアップさせた機体になっている。といっても単純に対IS戦闘を考慮した武装……量子撹乱チャフとか、誘導ビームの本数を増やしたりとか、そういった解りやすい改造しかしていない。
いや、CS機関開発の由来から、CSジャンプよりも安全面で優れている高度フォールドジャンプをワープの基礎システムに変更したり、色々魔改造はしたけど。

「然し、これで現実味を帯びてきたわけですよ」

IS世界におけるトリッパー向けグランドタスク。つまりは人類の外宇宙進出。
この機体が完成したという事は、宇宙におけるN&T社の技術レベルがある一定のライン、大体地上の技術の八世代は先にたどり着いた、という事の証明足り得る。

現在某デブリベルトにて開発中のマクロスリジェネレイト。あれにもコレと同じフォールドシステムが搭載されており、つまり安全性の高い超時空航法が確立されたという事。
後は、これが完成し次第全世界に向けてN&T名義で某イオリアの如く演説をすればいいんだけど。
うちの会社、広報に良い人材が居ないからなぁ。今の認知度だって、実績に他の会社が恐怖して勝手に有名になっただけだし。その他のキッチン用具とかゲームソフトだとかなんて、ネットの口コミだし。

ただ、問題が一つ。

前々から此方に干渉してきていた不審な電波。つまりは篠ノ之束と思しき人物からの干渉が次第に目立ち始めているのだ。
以前は興味本位でアクセスしようとしていただけなのだろうが、何度も此方がプロテクトで侵入を弾くので、向うに尚更強く興味をもたれてしまったのだろう。
いや、弾くというか、ダミーサーバーに誘導していたのだが、どうもそれに気づかれたらしい。やっぱりダミーとはいえ、サーバーにアニメを保存しておいたのが拙かったんだろうか。

現在、篠ノ之束はまるで挑むかのようにして定期的に此方のサーバーにハッキングを仕掛けてきている。
まぁ、うちのメインサーバーはアクシズにある量子型演算コンピュータなので、普通に考えればアクセスは不可能だ。何せ処理速度からプロトコルまで全く違うのだから、既存のコンピュータでのアクセスは常識的に考えて不可能。地球人が日本語で宇宙人とファーストコンタクトを取ろうとしているような物だ。
まぁ、相手は篠ノ之束。万が一のことを考えて、サーバーまでのルート上に幾つものダミーサーバーと防御壁、更には接続網自体を複雑化させて一部管理をサーバーにさせたりと、かなり複雑化させている。これならば、多分大丈夫だろう。少なくとも、私たちが地球から出て行くまでは。

因みに移住先の最上位候補はバーナード星系だったりする。
いや、冗談半分に調べてみたら、この世界では居住可能惑星に分類されてた物だからつい。
フォールドジャンプを使えば半月ほどで到達可能な其処。流石にGAシリーズでは、燃料に問題が無いとは言え生活空間の確保が不可能な為、まだ実地調査を行うという段階ではない。然しそれもリジェネレイトが完成し次第、実際にあの惑星に調査団を送ろうという計画になっているのだそうだ。
いや、確かにマクロスなんだから惑星揚陸機能はあるんだけどさ。もう既に世界観がISとか関係なくなってきてる。いや、私ぁいいんだけどさ。


「この調子なら、アレの完成も間近って考えても?」
「ええ。もう既に概要は完成しています。後はアレの主力とも言うべきアレを確りと制御する為のインターフェイスの確立なんですが……」
「まぁ、亡国機業に奪われでもしたら大損害だし、いいんじゃない?」

GA000と並び、この世界観に似つかわしくない、私の手札の一つ。
規格をパワードスーツサイズに抑えた、男性でも扱える対IS装備。
そしてそれの量産型。
……チクショウ、私ぁ一体この世界を何処に向かわせる心算なんだか。
好き勝手開発したものの、何だかんだ言って私も大概ドクターに汚染されてるし。

――まぁ、世界の行く末なんてのは、政治家の皆様に考えてもらおう。
何せ私はこの世界に生きるただの小市民。一般人でしかないのだ。まぁ、軍需系の企業に所属してるけど。
とにかく、世界の行く末とかは私は知らない。







とりあえず、暫くは地上のIS学園で遊んでようかな。
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34 ゴーレムⅠ型あっさり風味

2012.06.15 (Fri)
突如としてクラス対抗戦に割り込んできた黒いIS。
一夏と鈴音は、その不審な挙動から鑑みて、それが無人のISではないか、と判断した。
もし、二人のISにエネルギーの余裕があったのなら。もし、黒いISが乱入してきたのがもう少し早ければ。二人は、それに巻き込まれてしまっていたかもしれない。

―――――――――!!

「リンッ、離れろっ!!!」

突如背筋を襲う激しい悪寒に、一夏はとっさに鈴音に声を掛け、白式に回避行動をとらせる。
それに一瞬送れて回避行動をとった鈴音のすぐ真正面を、極太の二筋の閃光が通り過ぎた。
光の筋は二人の脇を通り、黒いISを狙い空を行き……あと少しのところを、黒いISは辛うじてそれを回避した。

『墜ちろ、蚊トンボ!!』

不意に通信に響いたそんな声。
声に釣られて四方を見回す二人。そんな二人の視線の先で、黒いISが上空を睨みつけていた。
釣られるように空を見上げた二人。其処には、純白の戦乙女。彼と彼女の知る限り、最強の一角に立つであろう存在。

「「スバルっ!!」」

不意に揃った二人の歓喜の声に、空に舞う白銀の戦乙女は、小さく口元を歪めて応えるのだった。





Side Lin

そうして飛び出してきた純白の機体は、空中を立体的にカクカクと飛び回る特徴的な機動を見せながら、一瞬にして所属不明ISに接近すると、空中で突然ガツンという凄まじい音が鳴り響いた。

「な、何!?」
「げっ」

思わず悲鳴染みた声を上げてしまう。見ると、イチカは引きつったような表情で音源と思しき上空を見つめていて。
くっ、角度的にスバルの機影と所属不明機の姿が被ってちゃんと見えなかった!!

「あいつ、よりにもよって殴り飛ばしやがった……」
「はぁ!? なんでそんな――いや、そういう事ね」
「如何いうことだ?」
「いいから、一度此処から離れるわよ!」

言いつつ、一夏を引きずってフィールドの隅へと退避する。
見たところ出入り口は塞がれてるみたいだし……スバルのぶちあけた穴からなら入れるかしら。

とか考えていたら、一夏が説明して欲しそうな表情で此方を見ていた。

「簡単に言うとね、私たちからアレを引き剥がしてくれたのよ」

スバルの機体、νGにはビームサーベルが実装されている。接近戦を仕掛けるのであれば、当然ビームサーベルで攻撃したほうが威力は高い。然し何故かスバルはそれをせず、自らのシールドエネルギーも消耗するであろう打撃を攻撃手段として選んだ。
その目的は多分、あの機体を殴り飛ばして、私たちから距離をとらせる事が目的だったのだと思う。
ビームサーベルだと、多少の衝撃はあっても打撃としての威力は低いからね。

「なるほどな。でも、どうしてあいつが……」
「……スバル、私側のピットで観戦してたのよ。あそこからなら侵入は簡単だったでしょうしね」

見れば、いまだに粉塵収まりきらぬ私側のピット。其処には何等かの高エネルギーをぶつけられたような、酷く融解した無残な遮蔽シャッターの姿があった。

『おーい、リン、イチカ、聞こえてる?』
「うおっ!?」
「うっさい一夏! 聞こえてるわよスバル」

オープンチャンネルに一々反応する一夏。まったく、動きは良いくせにそういうところだけまだ素人なんだから、バランス悪すぎない?

『コレ、多分狙いはイチカだわ』
「えっ!? 何で俺が」
「…………」

あー、頭イタイ。

『あのねイチカ。男性IS操縦者って言うのは相当価値があるって、アタシ何度も説明したよね?』
「そういやそうだっけ?」
『そうなの。で、今こうして私が抑えてるけど、正直面倒だからイチカがコイツ倒しちゃってくれない?』
「はぁっ!?」

いきなり何を言い出すんだコイツはっ!!

「馬鹿言うんじゃないわよ! 一夏は素人に毛が生えた程度の操縦者なのよ!? 所属不明勢力のISといきなりガチンコなんて自殺行為よ!!」
『んにゃ、多分大丈夫だと思うよ? 何だかんだで一夏のデータ取りが目的っぽいし。むしろデータ取りの邪魔してるほうが危険。平行角度で本気ビームとか使われちゃうと、下手すると観客席に被害が出かねないし』

それなら望み通り一夏に相手をさせて、手加減してくれている内に倒したほうが効率的だ、とか。

「本気?」
『本気本気。っていうか、相手側が私を潰す為にリミッター解除しだしたみたい。倒せない事はないんだけど、アッチに本気出されるとこっちも本気出さなきゃ駄目で、そうなるとアリーナ消し飛ぶし』

おいおいと思いつつも、実際さっきよりも動きが良くなっているような気がする所属不明ISを見て、仕方ないかと納得する。
第一、隣に居る一夏が、前に出たそうな顔をしているのだ。

「……仕方ないわね。その代わり、私も一夏のサポートに入るからね」
「え、ちょ」
『うん。それじゃアタシは前衛で囮でもしてるよ』

言いつつ、凄まじい速度で桃色の光を散らしながら格闘戦を行うνG。

「ちなみにイチカ。あの機体中・遠距離戦向けの機体よ」
「えぇっ!?」
「完全近接戦向けの白式なら、スペック上アレくらいは出来て当然な筈よ。確り見て勉強しときなさい」
「……」

言いつつ、機体を前へと進ませる。
残量エネルギーには、まだ若干の余裕がある。
3対1、その上スバルのサポートがあるのだ。コレで負ければ笑いものは間違いなし。

「行くわよ!」
「おうっ!!」

声を掛け合って、瞬時加速。
丁度、意図的に(・・・・)作られたと思しき弾幕の穴。そこから所属不明機に向かって、二人揃って突っ込むのだった。

Side Lin out






というわけで、ゴーレムⅠ型に喧嘩を売りました。
うん、ちょっとマジヤバイ。さすがは篠ノ之束。何この機体。
ごつい外見に似合わず、地味に反応が良い。多分一夏よりも反応いいんじゃないだろうか。
いや、此方の攻撃に対してオートで反撃してきているんだろうけど。
どうやらロックオン反応から乱数回避につなげてる、と言うわけではなく、なんらかの思考パターンに沿って、普通に反撃もしてくる。回避自体をトラップに使ってくる事も有る。
うーん、一夏よりも戦闘能力は間違いなく上だな。

というか、やっぱり本編介入は止めとくべきだったかなぁ。
何せ本編で起こるイベントの大半は、篠ノ之束によるヤラセだ。手を出せば怪我じゃ済まず、手を出さねば何時巻き込まれるかわからないストレスに襲われる。
さすがは篠ノ之束。存在自体が悪質。
とりあえず技術をひけらかすのもどうかと思うので、今回はファンネル使用封印で普通兵装のみでの戦闘を意識しているのだけれども。

と、そんなことを考えている間に、直感。イチカとリンがゴーレムに向けて斬り込んだ。
さすがのゴーレムも、三対一は状況的に不利と判断したのだろう。一度此方から距離をとろうとしているのがわかった。

「イチカ、零落白夜でぶった切れ! なんかコレ無人機っぽいし、手加減とかいらないと思う!!」
「はぁっ!? 無人機のIS!? ISは女性じゃなけりゃ動かせないってのが絶対じゃないの!!」
「そうかっ!!」
「って、イチカァアアアアア!!!!」

人の話を聞けと怒り狂うリンに、そんなことより今はあれをぶっ飛ばすのが先だと冷静(?)に反論する一夏。
いや、イチカ、このタイミングでそれは火に油――って、あら。真剣そうなイチカの表情見て、リンがポになってる。これは棚ボタかな?
まぁ、誰の得なんだか知らないけど。本人が幸せならそれでいいんじゃないだろうか。


―――おっ

なにやらイチカの思考が洩れてる。どうやら原作でいうアレをやるらしい。
如何でもいいけど、遠距離戦向けの機体で近接高速戦闘とか結構辛いんですけど。私は板垣学じゃないぞ。――あー、このネタは通じないか。

「イチカアアア!!!」

とか考えてたら、突然響スピーカーから響いた大音量。

「男なら、男ならそのくらいの敵に勝てずしてなんとするっ!!」

そういやこんなイベントもあったなぁと思いつつ。
いやいや篠ノ之箒。あんた戦っても居ないのにその程度て。
コレ、手加減してくれてるけど結構面倒な相手だよ?

で、当然の流れとしてゴーレムの注意を引いた篠ノ之箒。当然ゴーレムはその主兵装を篠ノ之箒の方に向ける。冷静に観察していればそれがフェイクだとわかるのだが、それに過敏に反応した一夏が、リンに衝撃砲を放たせ、それを瞬時加速で取り込み――と言う流れ。
私の立ち回りは、ゴーレムに牽制をかけつつ、後のために少し距離をとって――。

「おぉぉぉおおおお!!!!」

(俺は……千冬姉を、箒を、鈴を、関わる人全てを――守る!!)
何か熱血的なイメージがキター!!

――斬っ!

吹き飛ぶゴーレムの片腕。それと共に殴り飛ばされるイチカ。
対消滅する遮断シールドと、直後に降り注ぐレーザーの雨。

気が緩んでる一夏。……なるほど。絶対防御は搭乗者を守るための最終機構。故に、搭乗者のいない無人機では、最後の最後まで粘り続ける事が出来る、と。

「イチカッ!!」

言葉がはしる。
途端にゴーレムに向き直るイチカは、咄嗟にゴーレムに向かおうとして――思い切り横にむかって回避した。

――うん、NTって便利。

直後に雨霰と着弾するビームとミサイル。
轟音を立てて煙を上げるそれら。νGから放たれた雨霰は、既に中破していたゴーレムをそのまま粗大ゴミへと作り変えて。

――――――――!

イチカの意志が迸る。
弾幕を止たその瞬間、それでもとしつこく粘るゴーレムに、イチカが純白の剣を振りぬいた。


ザンッ、という音と共に唐竹割りに真っ二つになったゴーレム。うん、見事な太刀筋だ。あの最後の一刀は嘗ての最強と呼ばれた一夏の姉の姿に被る。
――まぁ、コレにて一件落着、かな。

「い、イチカアアアア!!!」

とか思ってたら、何かイチカが墜落していくのが見えた。リンが追いかけてたから大丈夫だろうけど……あぁ、初めての実戦で、緊張の糸が切れた、ってやつかな。

途端大騒ぎになる第二アリーナ。スピーカーから響く篠ノ之箒の声だとか、セシリア・オルコットの声とかリンの悲鳴とか。

まぁ、何より、管制室から放たれている、このブラコンなプレッシャーが一番怖かったりするのだけれども。

と、とりあえず、一件落着。続きを読む

33 クラス対抗戦。

2012.06.15 (Fri)
と、言うわけでキングクリムゾン。

地上に帰って、リンと模擬戦したり喋くったりイチカと仲直りさせようと暗躍して失敗したり。
そんな感じで、あっという間に時間は過ぎて早くも五月初頭。

来週にもクラス対抗戦が始まろうというような時期にさしかかった。

「キィィィィイイイイイイ!!!!!!! 馬鹿一夏!! 馬鹿一夏!! 私の事を、ひ、ひ、ひ、貧乳って!! 胸なし哀れって!!」
「落ち着けリン。其処まで言ってないって」
「もう許さない、当日はボッコボコにしてやるんだから!! あいつが泣いても私は殴るのをやめない!! フルボッコよ!!」
「解った。解ったから落ち着いて。自棄食いで食べるにはそのケーキ高価いんだよ?」

言いつつ、ネットで有名な某港町にて店舗を構える翠屋なるカフェから取り寄せたケーキを口に入れる。
うん、甘さが絶妙。ふんわりしたクリームがサラリと流れ込んでくる。クリーム独特のこびりつくような硬さがないのだ。まさに神パティシエ。
あと、私はつっこまない。

「朴念仁、間抜け、馬鹿、阿呆、何が今のはよ、全部よ全部!!」
「ああっ、駄目だって、それアタシの!!」
「そうよ、久しぶりに見たら、その、ちょっと格好良くなったかな、って思ってたら、何時の間にか女の子はべらせてるし、しかも金髪と純和風? 同じアジア系なら十分相手取れるけど、何よあの金髪。お尻の位置ドンだけ高いのよ!! アジア系黄色人種舐めてんのかっ!! っていうか、一夏め、たった一年合わなかっただけでどれだけ女の子はべらせてるのよっ!! 確か格好良くなったけどっ!! でも、約束忘れて暴言吐いてっ!! 全部全部、一夏の所為じゃないのよっっ!!!」
「あ、ああ、アタシのケーキ……」

なんという事だ。ガトーショコラにモンブラン、ポワンにフルーツミックスが……ひ、一口でガッツリなんてあんまりだ……あんまりすぎる……。

「……うん? どうしたのスバル、そんなOrzなんかして」
「………(駄目だ駄目だ駄目だ我慢だスバル。リンだって甲斐性無しのイチカの所為で色々ストレスがあったんだろうし、仕方ないんだ。例え輸送費合わせて8000円以上を費やして送ってもらったケーキが八割がた食い荒らされたからといって、キレちゃ駄目だ、良いなスバル。私は大人何だから)」
「うん? 食欲無いの? ならこの最後のケーキ貰うわね?」
「ちょ、おまwww」

パクッと。もう問答無用でパクッと。

「むぐ、おいひいわねこのケーキ」

そうしてこの笑顔である。

「そ、そう? なら、ならならなら、よ、かった」
「ど、どうしたのそんなプルプル震えて。やっぱり調子悪いの?」

そういって心配そうに此方を見つめてくるリン。
アンタがアタシのケーキ食い散らかしたその怒りを我慢してるんだ! なんて怒鳴れれば、どれ程気が楽だったか。
けど、リンって基本一夏が絡まないところだと普通にいい子(・)だからなぁ。

「んにゃ…………そうだね。全部イチカが悪い」
「何でそうなったのかは知らないけど、確かに全部イチカが悪いわ」

言って腕組みしながら唸るリン。
とりあえずこの腹癒せは、明日のリンとの模擬戦あたりでたっぷりとノシをつけて返そう。
くくく、ダブルハイメガ粒子砲は正面から喰らうと相当怖いぞぉ……くくくくくく。

「?」

のんきに紅茶を啜るリンを眺めつつ、内心で地味に復讐を誓っておく。

翌日、ちゃんと復讐は実行されて、リンは半泣きの目にあった事を明記しておく。










さて、そういうわけであっという間に一週間が経った。

そうなんだ。またキンクリなんだ。すまない。

ごほん。
ついに始まったクラス対抗戦。最初の試合は、一年一組対一年二組。第二アリーナにて一番最初に執り行われる事となっている。

「んじゃ、リン。がんばんなよ」
「うん、イチカにガツンと入れてやるんだから!!」

そういって、勢い良くピットから飛び出していくリンの甲龍。
まぁ、展開が原作通りだったなら、この試合はドローになるのだろうけれども。
イチカもリンも魔改造済みだからなぁ。どうなることやら。
因みに、本来は三組のクラス代表である私が他組の試合を見る事は駄目なのだ。秘匿するが故の手札と言うのもあるし。だがまぁ、ぶっちゃけた話、私はあの二人のどちらにもISを教えている。白式も甲龍も、既に手札も糞もフルオープン状態なのだ。それに教えた師としては、二人の成長の程は確り見たい。
と言う話を担当の千冬さんに延々と語りまくったところ、ピットからこっそりとなら、と快く、何か疲れたような様子ではあったが、許可を貰う事ができた。
うん、何も問題は無い。

「お前はどっちが勝つと思う?」
(………………………………)
「まぁ、ISの搭乗時間で考えれば確かにそうだわな」
(……、………………)
「うんうん。織斑家に関してはそのルール無視か、やっぱり」

νGと、サイコウェーブによる簡単な意思疎通。νGの予想ではイチカが勝利する可能性は無視できないレベルらしい。
まぁ、そもそものISが、織斑と篠ノ之のために存在しているような物だし。

とかνGと一緒に考え込んでいたら、どうやらいつの間にか試合が始まっていたらしい。
ピットから飛び出して、暫く茶番というか夫婦漫才と言うか……を、続けていたから最初は見てなかった。

然し、リンも然る者ながら、イチカも中々に腕を磨いた様子だ。
リンの衝撃砲、肉視で確認せずに回避してるや。ハイパーセンサーを使いこなせてる、ってことなのか。
……まさか、私が傍に居た所為でNT覚醒してるとかないよな? だとしたらリアルセイバーじゃないか。いや、白だからリリィになるのかな?

然し本当に当たらない。もし本当に第六感で回避とかだったら、コレこそ本当の超感覚(ハイパーセンサー)だな、と。
まぁ、とは言ってもリンもやっぱり凄い。元々身体能力は私とイチカと遊べる程度には馬鹿高い。その上に手堅く身につけたISの操縦技術。不可視の衝撃砲を見事に使いこなすその戦いは、此処一年程度で身につけたものとは思えないほどのものだ。
……いや、まぁそれを言うとイチカなんて白式に初めて乗ったのはつい数週間前なんだけどさ。

――と、不意にアリーナの空気が変わった。

「ぷ、プレッシャー!?」

思わず仰け反る。背筋に走る悪寒。
殺意――違う。何だコレは。  まさか、闘気!?
敵意でも殺気でもなく、闘気でこのレベルのプレッシャーを放ってるの!?
――さ、さすがは織斑の系譜。才能に関しては化物レベルか。

「しかもこの様子だと、完全にNT覚醒してるよね」
(………………………)
「あ、バイオセンサーに反応? うわぁ」

拙いなぁ。イチカの脅威レベルがじゃかじゃかと上昇している。
一戦毎に大きく成長していくとか、何処の主人公だ――あぁ、ISの主人公か。
その世界に生きる以上、人をキャラと見るのはトリッパー特有の悪癖と言うけど、そうとでも見なければあの成長速度は舐めてるとしか。
何せ此方は戦闘機人。人間やめてるのに、下手したら人間相手に敗北しうるのだから。もう。

「――っと、そろそろだっけ」

とか言っているうちに、そろそろかなと外に傾注する。
頭に刻み込んだ原作知識。一応ノートにも残しているけれども、確かそろそろアレが登場するはずだ。

――ドゴォンッ!!

不意に響く爆音。見上げれば、天壌に張り巡らされた遮断シールドが大きく波打ち、その中心に大穴を見せていた。

そうして、其処から静かに入り込んできた一機のIS。
ISには珍しいフルスキンタイプの、まるでゴリラのような姿のIS。
確か、ゴーレムⅠだったか。オーバーマンを思い出したのは私だけでは無い筈。

――『お前はどうするんだよ!?』

とか思ってたら、νGのオープンチャンネルに突如としてイチカの悲鳴じみた叫びが響いた。

「うるさっ」

慌てて音量を調節して、そのまま外の様子を伺う。
幸いピットの中からこっそり見ていたおかげで、此処からなら何時でも出撃は可能だ。
――おっ、イチカがリンを抱き寄せた。くぅ、男だねぇ!!

『もしもし、織斑くん聞いてます!? 凰さんも! 聞いてますー!?』

あー、なんだ。マヤちゃんガンバ!









さて、それでは此処で一考してみようと思う。問いは原作介入に関して、だ。

私個人が定めたグランドタスクは、“人類の宇宙圏への進出、及び革新”だ。
まぁ、CBみたいな真似をする心算はないけれど、出来ることは少しずつやってきた。
その成果として、現在宇宙に拠点を三つほど設けた。といっても目的はあくまで「人類の」宇宙圏進出。一企業だけが突出していても仕方が無い。ゆくゆくは全人類が宇宙へと自由に行き来できる世界を作りたい。
といってもまぁ、社の利益は損なわないようにする心算だけれども。
理想を掲げるのも大切だけど、先ずは現実と戦わなくちゃね。

で、原作介入。
ぶっちゃけ此処まで介入しておいた、何を今さらといわれるかもしれない。
然し、だ。まだ引き返せる。何せ私が活躍しているフィールドは、あくまで「目の外」。物語に語られていない場所なのだ。

然し、今から介入しようと言うのは、“原作”に確りと描写の存在する本編だ。

――転生者としての悩み、のような物は、存在しない。
よく二次SSとかには、転生者が「もう既にここは漫画の世界じゃなく~」「此処に生きる一人として~」とか偽善タラタラに語る。
でも、私にしてみれば原作知識という強力な武器を手に、自らの欲望に素直に生きて何が悪いのか、と。
漫画だろうが現実だろうが二次SSだろうが、私がここに居て、考えて、行動する。それだけの話だろうに。

助ける力はある。
気持ちとしては、助けたい。
理性としては、助ける事で起こりうる誤差、其処から生じるデメリットを避けたい。

「……まぁ、いいか」

どうせ、既にかなり原作から乖離してしまっている。
特に篠ノ之束の行動パターンなんて、既に予測もつかない。色々干渉しているからねぇ。

肩をならして、ピットに備え付けられている連絡用の端末を中央管制室へと繋ぐ。

「管制室、此方第二ピット。1-3のスバル・スカリエッティです。正体不明機を抑える為の出撃許可を」
『お前もか……』

繋いだ途端、そんな台詞が帰ってきた。

『先ほどオルコットにも説明したのだが、現在第二アリーナは敵機のハッキングを受けている。遮断シールドはレベル4で固定され、扉も全てロックされている。進入は不可能だ』
「問題ありません。この程度の出力ならば、νGで破れます」
『何……?』

怪訝な顔をする織斑教諭。それも当然だろう。
遮断シールドと言うのは、ISの攻撃を観衆に届かせないための、絶対的な防壁だ。
スポーツであるISで、観客に怪我など出すわけには行かない。それゆえに遮断シールドと言うのは、ISの出力……ISコアの出し得る最高出力よりも高い出力に設定されているのだ。
単純に力技ではこじ開けられない。そういう代物なのだ。

『それは――いや、問答は後だ。どちらにしろ貴様は突入させられん。聞いた話、貴様の期待はイギリスのBTと同類だろう。ならばその機体は……』
「問題ありません。この機体はあくまで汎用型。少なくとも接近戦で弟君に負けたことはまだ有りませんよ」
『なら連携訓練は?』
「80時間ほど」
『……そのときのお前の役割は』
「適時適応型ですので、パーティーメンバーに合わせて何処にでも」
『……許可する』

よし、上の許可は取った。なにやら端末からキンキン声の罵声と言うか文句と言うかが聞こえてくるが、まぁ私の知った事ではないだろう。

言葉もなく展開するνG。薄く淡い翠の光を放ち、次の瞬間に身を包む純白の鎧。
途端、サイコフレームの影響か知覚範囲が一気に拡大する。
わかるのは、勇気、愛情、そして無邪気な邪気。

左腕シールドに取り付けられた、二連装ハイパーメガ粒子砲を、遮断シールドに向けて放つ。
放たれる黄金の光に、数瞬耐えたシールドは、けれどもその次の瞬間弾けとんだ。
シールドを突き破った二つの閃光はそのまま件の侵入者のISへと直進し、寸前のところで回避されてしまう。

それでもイチカ達から意識を引き剥がす事には成功した。
そして、アリーナへの侵入にも。

さて、それではキメ台詞。
大統領魂(レッツパーリィィ!)もいいし、メタトロンの意志(はいだらぁぁ)なのもいい。
だがまぁ、此処は一つ。

「墜ちろ、蚊トンボ!!」

そう叫んで、引金を引き絞るのだった。続きを読む

32 アクシズ

2012.06.15 (Fri)
「でも、よく核パルスエンジンなんて作れたよね」
「宇宙に国境は無いからね」
「……ちゃんと許可取ったんだよね? って、何処に許可取ったの?」
「宇宙に法律は無いからね」
「…………」
「…………」







アクシズ。重力ベルトから引っ張られてきた、資源採集用の宇宙機動要塞。
現在此処では、重力ベルトの影で建造中のマクロス級リジェネレイトの構成パーツの開発を急いでいる。
アクシズの主機動力は二次元核反応炉による超高出力発電。基地としての性能は十二分以上にあり、AICの応用によって十分な疑似重力も再現できている。
然し、それでも尚、人と言うのは空が無くては生きていけない生き物らしい。

「速く完成しないかな、リジェネレイト」
「アイランド1が未完成なんだってさ。バトル部分なんて後回しでも良いのに」
「いや、それがどうも件の連中が此方をかぎまわってるらしくてな。上もそれ対策にピリピリしてるって話だ」

通り過ぎていく作業員の皆様。矢張りこの密閉空間で長時間作業していては、ストレスの解消も難しいのだろう。

然し、彼等も話していたが、今現在N&Tが警戒している相手。量子コンピューター相手に平然とハッキングを仕掛け、アンチプログラムと対等に渡り合い、その上脚を掴ませずに逃走する。そんな化物は、この時代この世界には少なくとも一人しか存在しない。

そしてもう一件。どうも、亡国機業側が此方に敵対的な行動を取っているらしい。
元々は同じ親元の組織であったのだが、どうやらあそこの組織、賢者達から脱却したというか追放されたらしい。好き勝手やりすぎて、賢者達傘下の組織にダメージを与えたのだとか。阿呆すぎる。
結局あそこは個として活動を続けているらしいのだが、全く持って何処かの天才科学者に裏で操られているらしく、妙に要所要所で攻勢をかけてくる。本人達に自覚は無いのだろうが。

結局、νGの改装中に得た情報はこんなところ。
何せIS学園と言うところは、日本の中でもかなり外部との情報交流が遮断された場所にある。
まぁ、内部の情報が簡単に外に洩れない為の処置なのだろうが、おかげでN&Tの情報を手に入れるのも中々難しいのだ。

「……私も、ちょろっと細工しておくかな」

専用のマルチインターフェイス。第三世代型の特徴である思考インターフェイスを作業用PCに応用したシステム。それを用いて、ネットに色々と仕込みをしておく。
篠ノ之博士の痕跡を見つけ次第、手近な軍や警察に自動的に通報するというシステムだ。
しかも外部にはばれないように、最終的にはひっそりと通達されるように、アナログを経由するようにチョロッと細工して。

「ぱーぺき」

これでビッチ兎に対する多少の嫌がらせにはなるだろう。
と言うか、その内所在地を見つけたらミノフスキー粒子散布ミサイルを撃ち込んでやる。ネット厨のビッチ兎に情報遮断とかかなり鬼畜だろう。
まぁ、代償として地上の通信網が大パニックを起こす可能性があるが。

さて、次だ。
幾らドクターの作品とはいえ、自分の機体に使われる素材の事くらいは把握しておかなければ成るまい。
私の権限はドクターの次。つまり、支配者権限に次ぐほどの高位の物だ。ブッチャケアクセスできないのはドクターの秘蔵フォルダくらいで、逆にドクターは私の権限にアクセスできない、と言うレベル。まぁ、そのほかにも色々プログラムを組んでるから、簡単にはアクセスできないだろうし。

とりあえず、私の権限を使って、γ合金、ε合金、ついでにサイコフレームとの反応やら実験段階のテストデータなんかをいろいろと見ていく。
……ふむ。ε合金のテストベッドはサイコ・ギラ・ドーガを使ったのか。まぁ、サイコフレームとの親和性チェックとかも合ったのだろう。幸い問題は無かったらしいが。

そうそう、NMSS計画といえば、次にジェガンの開発計画があったっけか。
最新の量産型第二世代。各種量産型兵装と抜群に相性が良く、様々な装備に換装が可能。尚且つ、安くて速くて強い。
グッドな計画では合ったものの、N&TのメインであるA-10とバッティングする可能性を指摘され、あえなく没となったのだけど。
あれをテストベッド用に開発しなおすのも良いかもしれない。あれ、ドーガ系と並んで汎用性高いし。

と言うわけで、資料のチェックを完了。データを見た限りでは問題無さそうだ。と言うか、サイコフレームの構造素材もε合金由来の素材に変更するのな。面白いから良いけどさ。




さて、次だ次だ。私の休日はこの土日の二日しかない。月曜日までに学園に帰島しなければ、担当に何を言われるかわからないし。
といってもまぁ、五月初頭のクラス対抗戦までは、どうせイベントも何も起こらないのだけど。

「ふむ、素材のチェック用にサイコフレームの見本を貰っていくか」

自分でのチェックの為といえば、ある程度は融通してくれる筈だ。何せサイコフレームの考案者にして運用者である私だ。自分でチェックするくらいは何の問題も無い。
第一私からどこかに情報が洩れたとして、サイコフレームを再現できるほどの技術力を持っている存在なんて限られている。
宇宙に研究施設を持っていて、尚且つサイコフレームを解析できるほどの技術力を持っている。そんな存在は、可能性として篠ノ之博士くらいしか考えられないし。
さて、話が逸れた。

チェックする項目。マクロスは基礎設計を私がしただけで、その後の開発には基本的に関わっていない。
一応開発状況の日誌は確認させてもらっているが、特に大きな事故も無く開発が進んでいるようで安心している。
問題は、開発のために運用されている宇宙作業服とパワードスーツだ。

例えばコレがナンバーズの皆なら、コネクタを接続する事でパワードアーマーをダイレクトにコントロールする事が出来る。
けど、普通の一般人がパワードスーツを扱おうとすると、相当な技術を盛り込んだ代物を作らなければならない。

で、現在運用されているのは、油圧電力制御式の、いかにもSFに登場しそうなパワードスーツだ。エイ○アンとかに登場しそうな感じの。
然し、あれは如何考えても細かい作業には向かない。そこで現在開発しているのが、イメージインターフェイスの応用を積み込んだ、セミ・マスター&スレイヴシステム搭載型のアーマードスーツを開発している。単純に人体の挙動をトレースするのではなく、まぁ色々と操作に癖があり、開発自体は成功しても運用に難があるという一品だ。まぁ、元々イメージインターフェイスが無く、操作がかなり難しかったところに思考操作装置を追加したおかげで大分動かしやすくはなっているのだが。

此方の改良案、一応IS学園に通っているあまり時間で色々と考案してある。スラスターの改良案だとか、ジェネレーターの改造案。情報系等を量子コンピュータに一極集中しようか、とか。

まぁ、どれも原案ばかり。コレを開発班に投げて、後は私はノータッチ。





……ふむ、こんなところかな。
気づけば既に結構な時間が経過していた。そろそろ地上に戻って寝ないと、授業に色々差し支える。
いや、寝ない心算なら未だ少し時間が有るけれど。
誰も、徹夜できるからといってあえて徹夜したがる人間は居ない。

『ああ、スバルかい? 調整出来たよ』
「あ、うん。丁度そろそろ地上に降りようと思ってたところだから、すぐ取りに行く」

突如響いた通信。それに簡単に答えて、情報室を後にする。
うん、次くるときは、地上から食料をちゃんと持ってきておこうと思う。


31 N&Tの暗躍

2012.06.15 (Fri)
「然し、この3年で偉く進歩したなぁ」
「ん?」

思わず呟いたそんな言葉に、紫がかった髪の毛の我が養父、ジェイル・スカリエッティは首をかしげた。

「いや、うちの会社の技術レベル。普通企業レベルで宇宙開発とかありなの?」
「まぁ、出来てしまったのだから仕方あるまい。と言うか、宇宙開発のアイディアはキミが原因なのだが」

昔、NMSS計画の中で、レールガンを開発したいな、などとドクターに相談した事があるのだ。
連射方レールガンといえば、試製99型電磁投射砲が一番に思い浮かび、次に自由Gの腰についてたレールガンなんかがくる。
で、ドクターとレールガン系の技術について語っていたところ、レールガン系の技術がいかに可能性に満ちているかについて、延々と語ってしまったのだ。

例えば陸上運輸手段。リニアレールなどの超電磁誘導による超高速移動は、従来の運輸システムに大きな改革を齎す。
またマスドライバーなどの宇宙開発。マスドライバーによって投射体自体に加速をかけることで、大気圏離脱時の燃料消費を格段に減少させる事が可能。またマスドライバー自体の推力により、推進力自体も大幅に稼ぐ事が可能。
最早一企業というよりは一宇宙国家でいんじゃね?とか。

とまぁ、その手の話を延々と。

それが、確か数年前。IS学園に入学するよりも前の話だ。
で、その結果としてオーストラリア本国ではリニアレールウェイが国家事業として建設された。
ドクターはどうしていたかと言うと、リニアレールの建造と同時に、月光ステーションにて開発された新素材を用いたマスドライバーを建造。コレにより宇宙開発を開始した。

さて、宇宙開発で一番重要なこと。それは、宇宙における活動拠点の建設だ。
我々には月光ステーションがあるが、あれはあくまで新素材開発のための研究施設。宇宙開拓の為の施設としては聊か容量不足だ。
そこでドクターは、月面は目立つという事で避け、月の裏側にプラントでも建設しようかと企んでいたらしい。
のだが、実際に月の裏側に視察に言ったドクターの脳裏に電流走る。

月の裏側。其処には、一つのラグランジュ点が存在する。機動な戦士で言えば、公国が存在していた位置だ。
そのL点。そこに、巨大な(といっても月のサイズからすれば小さな)小惑星を発見した。
ドクターは即座に計画を変更。その小惑星を開発し、宇宙要塞――もとい、宇宙基地とすることにした。
何しろ小型ジェネレーターやらAICの技術がある所為で、擬似的な人工重力は簡単に再現できる。N&T社は、全ての持ちうる限りの戦力(IS含む)を宇宙開発へとつぎ込み、一気にその小惑星を開発してしまった。そのときばかりは、日本へと出向いていた私をも呼び戻しての開発を行っていた。

で、完成した宇宙要塞、もとい宇宙基地。名前をソロモンとした。いや、だって金平糖みたいな形してたから。機能的には外宇宙航行艦CBでもよかったんだけど。
此処を一気に宇宙要塞――もういいや――化したドクターは、月光を此処に取り込み、一気に宇宙開発を促進した。

ゼロ式宇宙航行艦、簡易ISとでも言うべきアーマードスーツの開発、量子演算型コンピュータの開発、無人作業用ドローンの開発などなど。
特に量子演算型コンピュータを開発してからが凄かった。あれが完成した途端、各所の情報伝達及び情報統制が完全に成ったらしく、其処から開発が更に加速し、結果重力ベルトから引っ張ってきた小惑星もう一つの改造まで完了してしまった。

そうして、今現在。ドクターに呼ばれ、IS学園からVOBを利用して一気に大気圏を離脱し、軌道上中継基地となった旧月光を経由し、そのまま地球の夜の側、地球の影に隠れるようにして有る宇宙基地2号――アクシズへと訪れていた。




「で、結局ドクターは何の用事があって私を呼んだの?」
「あぁ、その件か。実は宇宙開発をするに当たって、新素材の開発に成功してね。で、君の機体をバージョンアップでもしようかと思ってね」

なるほど、と頷く。
現在、N&Tの研究機関は、その大半が宇宙へと移動してしまっている。
何せ地上では、開発とは名ばかりの情報戦ばかり。それに嫌気が差した科学者達は、その大半が宇宙へと逃げ出していた。
その上、ドクターには過去の遺物たる裏のネットワークが存在する。その情報網を使って、世界中の抗争に疲れた科学者、女尊男卑の世界に嫌気がさした科学者をスカウトして、宇宙へと引っ込んでしまったのだ。
現在地上で活躍している科学者といえば、チームとしての技術力が優れている研究者グループのリーダーとか、女尊男卑でちやほやされている女性研究者が大半。

「我々は既にワープ技術さえ確立させようとしているのに、地上は滑稽だと思わないかね」
「まぁ、ねぇ」

因みにワープ技術だが、コレの開発には私も協力していたりする。
主に量子転移技術だとか、時空波転移だとか。
因みにその研究成果は、今現在デブリベルトの影に隠れるようにして建造されているマクロス級に実装されている。まぁ、マクロス級といっても、第四世代型をクウォーターサイズで再現した機なのだけど。
凄いよねドクター。構想だけであっという間に設計図引いちゃうんだから。

「さて、それじゃ早速バージョンアップを行うから、ISを預けてくれるかい」
「はいよ」

言いつつ左腕のバングルをドクターに預ける。

「因みに、どういったバージョンアップを想定してるの?」
「ああ、全身の骨格を換装しようと考えているよ。現在はEカーボンをメインに使用しているが、やはりキミの機動にEカーボンでは耐え切れないようなのでね、コレを全てε合金に切り替える」
「ε合金って、もしかして核パルスエンジン用に開発してたアレ?」
「γ合金を改良したそれだよ。フレーム素材としてもかなり優良だったのでね」

ジョークで開発を促したルナチタニウム。まさか、此処まで開発が進むとは私も思ってなかったのだけれども。現実として、ガンガン開発は進んでいる。その内複合合金も出来るのだろう。

「あと、サイコフレームにも少し改良を施したよ」
「……あぁ、改良型出来たんだ」
「ああ。宇宙に移動してから、覚醒した人間が一気に増えてね」

そういって、突然ウンウンと唸りだすドクター。
途端、ドクターから放たれる気配の質が少しだけ変わった。

「……まさか」
「ああ、どうやら私も覚醒とやらをしてしまったらしいね。科学の求道者たる私が、まさか超能力の類に目覚めるとは、中々に皮肉が利いているとは思わないかい?」

そう言って苦笑するドクター。
うーん、まさかドクターまで覚醒するとか。感じたところではギン姉よりもNTレベルは低そうだけれども、それでも人の気配を感じる能力を持った、と言う時点でNTとしては十分だろう。

「目覚めたおかげで、サイコフレームを自ら確かめながら開発できてね。おかげであっという間に改良が済んだよ」
「……サイコフレームに触れてたのも、覚醒を促す一助になったのかもね」

何しろサイコフレームは保有するだけで人の意志に敏感になる。宇宙と言う環境、サイコフレームに長時間触れていたのだとすれば、NTに覚醒したとしてもなんら不思議は無い……のかな。

「武装面の改良は何かあるの?」
「其方はとくには無いね。……あぁ、追加ジェネレーターを新型の物に交換して、最大出力が少し上がった点と、エネルギーCAPが改良されてライフルの弾倉が改良されたね。あと、公式ルール用出力設定が要るだろうと思って、ギンガから送られてきたデータを調整しておいた。コレを実装しようと思ってるよ」

勿論、設定は簡単に変えられるようにしているからね、とドクター。

「パーフェクトだドクター」
「光栄の極み」

何をやってるんだか、と苦笑しつつ、早速νGの改良に取り組むドクターを尻目に、少しばかり施設内を探索しようと、ドクターの研究室を後にするのだった。
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30 弾幕はエレガントに。

2012.06.15 (Fri)
「うわ、綺麗」
「ありがと」

私が展開したνGを見た第一声がそれ。
まぁ、リンが知っているのはMS少女っぽいνGで、現時点の追加装甲を纏った物とは少し外見が違う。完全な常態のνGを見たのはコレが初めてだからか。

因みに私の現在のνGは、正式名称νG-HWS-DFF。白いドレスのような強化装甲の上に、両肩から伸びる左右6枚ずつ、計12枚のフィンファンネルというリアル厨二病臭いデザインだ。

対してリンが知るのであろうνGは、多分無印のνG。それも無改良のやつだろう。
FFは6枚で、主兵装がビームライフルのやつ。

「スバルの癖に、綺麗って言うのが何か腹たつわね」
「酷い言われよう。まぁ、自覚あるから否定できないんだけど」

言いつつ、νGの主機出力を低下させる。
νGは宇宙での活動を主眼に開発されているため、基本的に出力が馬鹿高い。模擬戦出力にし無ければ、ISのバリアなんて平然と貫きかねない。
しまった、先にギン姉にリミッタのデータ貰っとくんだった。

仕方無しに即席で出力を調整して、と。

「準備できた?」
「うん、何時でも」
「それじゃ、行くわよ!!」

そうして唐突に始まる模擬戦。リンは相当私(のデータ)相手に訓練を積んだのだろう。即座にイグニッションブーストをかけ、此方に接近してきた。
なるほどFFを封じる心算か。でも、甘い!

ビームサーベルを引き抜いて、即座にその双天牙月を打ち払う。

「ちっ!!」

二振りの偃月刀とぶつかり合う二振りのビームサーベル。ふふふ、リンめ、勘違いしてるな?

「チッ、何でアンタ普通に接近戦出来るのよっ!!その機体遠距離戦の機体でしょ!?」
「ゲームの設定と混同してるな? あれはFFの包囲網を突破できる相手にしか接近戦をしないだけで、私の機体は遠近両用の汎用機だよ」
「何たる理不尽!」

言いつつ打ち合う二組の双剣。ふむ、出力に制限をかけているとはいえ、凄いなリンは。私相手に喰らいついてこれるとか。
でも甘い。

「必殺、トンファーキーック!!!」
「何っ、キャアアアアアア!!!!!」

両手に集中しすぎてお留守に成っていた懐に向けて、νGの前蹴りを叩き込む。
即座に悲鳴を上げて吹き飛ぶリンを確認しつつ、此方は此方でファンネルを全て展開。

「さぁ、近距離格闘型機体のパイロットに求められる必須事項! 弾幕に対する回避能力、リンの場合はどの程度か見せてもらおう!!」
「ちょ、本当に12機全部操作できるの!?」
「しかも私の場合、普通に本体を操作しながらの攻撃も可能! 接近できるならしてみなさいと!!」
「何その鬼難易度!?」

第一、BTの機動はかなり単純。あれは常に敵機の背後を取るように動いている所為で、迎撃はかなり簡単だ。しかもBTの操縦者が未熟なのか、それともシステムが悪いのかは知らないが、其々のBTの周期が同期してしまっている。簡単に言うと、同じリズムで動いているのだ。それゆえに、BTを通して本体の呼吸まで簡単に読めてしまう。
まぁ、周期をずらすというのは、右手で丸を描きながら左手で三角を書き続けるというような物で、中々に難しいのだけれど。

「因みに、正面のが囮で背後のが本命――」
「そこっ!」
「――と言うのがフェイクで、バランスを崩したタイミングで右手側から奇襲を仕掛けます」
「ぬ、くっ、舐めるなっ!!」
「おぉ、AMBAC(アンバック:動体姿勢制御方)で回避したか。でも残念。最初の正面のファンネルが此処で火を噴きます」
「え、きゃあああっ!!」

と言うわけで、私のファンネル無双が始まった。
といっても、リンはクラス代表としてイチカとの対戦がある。あまり無茶は出来ないし、機体に大きなダメージを与えるのも厳禁だ。
本体に傷が残らぬよう、シールドだけを削るように、角度に気をつけて一撃一撃……。

「ん?」

何かを感じて、即座に頭部バルカンを放つ。途端弾ける虚空。どうやら何かに衝突したらしい。

「なっ、私の衝撃砲を相殺!? 一体どうやって!?」
「えっと、勘?」
「どんな直感よ馬鹿!!」

馬鹿とは酷い。
然し、リンも頑張りはした物の、その衝撃砲が最後の抵抗だったらしく、シールドエネルギーの残量がゼロになり、静かに地表へと降下していった。





「昔から化物だとは思ってたけど、ISでも無双とは……」
「うーん、でもリンも才能あると思うよ? ISに乗ったのって此処一年の範囲でしょ? それで格闘戦だけとはいえ、私に付き合えるって言うのは中々」
「……アンタ、累計登場時間ってどのくらい?」
「内緒。だけど、うちの会社の起業に関わってるとだけ」
「……NC社って、12年前にはISを扱ってたわよね?」
「ノーコメントで」
「……………」
「……………」
「数年前NC社に存在したって言われてる、伝説の第三世代IS、その搭乗者は童女のような操縦者だった、って聞くけど……まさか」
「…………」

なるほど、とリンは小さく頷いた。

「化物ね」
「否定できないなぁ」

事実、人間と言う枠は既に超えてるし。私って戦闘機人(サイボーグ)だし。

「とりあえず、やっぱりアンタは凄いって言うのは再確認できたわ」
「えへへ、褒めるなやい」
「……はぁ。ま、いいわ。ねぇスバル、また今度模擬戦に付き合いなさいよ? あんたと訓練してれば、間違いなく世界最強だって容易いわ」
「いいよー」

まぁ、リンの強化は原作面子の強化になる。それは追々の原作ブレイクに十分に役立つだろう。

「それじゃ、もう一戦いくわよ!」
「ええっ!? でもシールドエネルギーが……」
「もう回復したわよ。甲龍なめんな!」

さすがは燃費型。充電速度も半端無い。

まぁ、付き合うといったのは自分だしな、と小さく息を吐いて、結局その日は第二アリーナの使用終了時間まで延々と訓練……と言う名のリンの特訓……を続けたのだった。
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29 ちっぱい咆える。

2012.06.15 (Fri)
「なんで約束忘れてるのよあの馬鹿ーーっ!!」
「いや、イチカだし」

咆える鈴をそういって宥める。
どうやら件のイベント、「毎日私の酢豚を食べてくれ」が始まったらしい。
まぁ、冷静に突っ込みを入れるなら、毎日私の味噌汁を~から酢豚へのアレンジはあまりにもセンスが悪いとしか言い様が無いというか、その言い回しは既に死語だとか、色々有りはするものの傷心の鈴音にそんなことを言おうものなら容赦なく鉄拳が飛んでくるのは目に見えていたのでとりあえずそのあたりは黙っておく。

「あーもう、腹が立つわねっ!!」
「いや、だからってラーメンの自棄食いはどうかと。麺なんてモロ炭水化物だし太るぐあっ!!」
「スバル、アンタ本当に同性?」

いや、ゴメン。今のはちょっとデリカシー無かった。だからその呆れた表情でコッチ見るのやめて。
殴られた脇腹をさすりつつ、此方もトレーの上の焼肉定食(特盛)を平らげていく。

「然し、イチカの鈍感ぶりは昔からでしょうが」
「う、いや、でも約束した事まで忘れてるとは思わないじゃない」
「ん――、『私の料理の腕が上がったら、毎日私の酢豚を食べて欲しい』だっけ?」
「ちょ、なななななんで知ってるのよっ!!」
「いや、なんでも糞もあの時私も傍にいたし。リンとイチカは気づいてなかったけど」
「居たなら居たって言いなさいよっ!!」

いや、だからって照れ隠しで殴らないで欲しい。前衛型のリンの一撃は割りと痛い。

「そういう遠まわしなのはイチカには通用しないっていったっしょ?」
「う……でも……」
「第一、篠ノ之箒と部屋を入れ替わるっていうのも、多分無理だろうし」
「なんでよっ! 私だって一夏の幼馴染よ!?」
「それ以前の立場の問題だって。リンはただの国家代表候補生。対するあちらは、ISの開発者にして国際指名手配者の篠ノ之束の妹。世界で唯一の男性IS操縦者と並ぶほどの価値があるんだ。要監視対象を一箇所に纏めておくのは、まぁ最善とは言えずとも一つの手では有るよね」

私はどちらかと言うとリスク分散型を押すけれども、高脅威目標に対応しうる戦力の限られているIS学園では、護衛対象は一箇所に固めておくほうが簡単なのだろう。

「なんだかそれだと、私が部外者みたいじゃない……」
「まぁ、ぶっちゃけ周りの連中からはそう見られてるんじゃない?」

ウガー!! と唸りだすリン。いや、女の子がそんな声出しちゃ駄目でしょ。女の子はエレガントに――って私に何を言わせるんだ。

「そもそも、篠ノ之束の妹だか知らないけど、専用機も持たないやつが何が私が教える、よっ!! 遠距離戦しか出来ないヨーロッパの島国の機体で、どうやって白兵戦向きの白式の練習相手するのよっ!!」

まぁ、確かに。打鉄じゃ白式相手には出力不足だし、BTでは訓練にならないだろう。白式の訓練なのに、BTで遠距離無双してたら訓練にならないだろうし。

「というか、いつの間にかイチカの指南役完全に奪われてるし」
「そう、それよ!! 聞けば最初にイチカに教えてたのはスバルだそうじゃない。何でアンタがそのままイチカを教えてなかったのよ!」
「いや、だってなぁ。乙女の恋路を邪魔して馬に蹴られたくなかったし。それに、私の存在が二人を焦らせちゃったようなところもあったみたいだし」

うん、私とイチカは中のいい友達だ。故に、イチカに近付きたいあの二人には、私が高脅威目標に見えたのだろう。まったく。
男女間に友情は成立しないというが、イチカに限っては別だと思う。あいつ鈍感だし、千冬さん以外に興味無いシスコンだし。

「と言うか、私なら良かったの?」
「あんたの実力は折り紙つきだし」
「うん? 私リンにIS戦闘見せた事あった?」

そのリンのあまりの自信有り気な表情に、思わず首をかしげる。

「何言ってるのよ。OVの裏コード教えたのアンタでしょ?」
「――あぁ」

OV――オービタルバトルと呼ばれる、ISのシミュレーターがある。
N&Tの開発したこのシミュレーターは、かなりリアルなISのシミュレーターと各国で評判になり、世界中で広く使われている。使用可能なISは入力データによって好きに描く事ができ、更に様々な状況、地形、時刻と自由自在。何よりそのデータ入力がとても簡単である事が評判の一助と成っていた。
更にコレ、シミュレーターが一部雑誌で取り上げられ、男性でもプレイ可能という事で大いに話題になった。そこでN&Tはコレをアーケードゲーム化。廉価版シミュレーターと言ってもいいアーケード筐体は世界中に設置され、しかも軍所有ではない廉価版のゲーム筐体であるが故に軍機やらなんやらが一切無くなった為ネット対戦を実装したこのゲームは、世界中の若者(特に男性)に人気となり、一気にN&Tに巨万の富を築く事と成った。

で、そんなOVだが、隠しキャラとして私とトーレ、それにトーラスのアルギュロスが登録されていたりする。といっても私は覆面でのRAYとνGの初期型、トーレ姉はリガズィーと、かなり古いデータなのだけれども。

「教えてもらったコードをゲームセンターで入力したら、あっという間に大騒ぎよ? あれって一体なんだったの?」
「あー、うん。あの機体が登場するのって、主にイベントかアーケードモードでオールSSS以上を取ったときに低確率にランダムで出てくるかだから」

現役IS学園の生徒でも、辛うじてクリアできると言うような難易度のゲームだ。それをランクSSS以上でクリアなんて、一般人にはほぼ不可能な条件。
その丸秘キャラが、地元のゲームセンターでいきなり現れりゃ、そりゃ大騒ぎになる。

「言われたとおりあのコードは黙ってたけど、あの後大変だったんだからね!」
「それはそれは」

因みにあのコードを知っているのは、OV開発関係者と各国のOVチャンピオン以外ではリンだけだったりする。

「でもさ、アレ見てるから余計に思うんだけど、あんたの機体とあのイギリスの機体って何か似てない?」
「ああー、うん、それか」

一呼吸置いて、小さく語り始める。多分に国家機密とかが含まれた話なのだけれども、私の知った事ではない。

「要するに、イギリスがオーストラリアの技術を借りパクしたって事?」
「まぁ、大分ぶっちゃけて要約すると。元々は技術協定を結んでたんだけど、アッチは技術寄越さなかったし」
「さすがイギリス。やっぱり私にはあの国って海賊のイメージしかわかないわ」
「同感」

何しろ所々に海賊(ブンドリ)精神が垣間見える。
大英博物館なんてその象徴だ。各国に侵攻して奪い取った歴史的な品物を、堂々と自国に飾るとか。
いやまぁ、それも政治といわれてしまえば、それはそれで優秀なんだろうとも思うけど。

「まぁ、アッチにわたったのは基礎理論だけで応用も出来てないし、実際に完成したBTもかなり中途半端な代物。ビームを曲げるとか、オールレンジ兵器を積んでる状態でそれをつける意味が解らない」
「甲龍は苦手な相手だけど、アンタなら余裕そうよね。第一、BTは4つだけどアンタのFFは6つあるし」
「……ゴメン、私12機までなら同時操作できる」
「――――尚更無双よね」

六機って言うのは――シミュレーターのデータか。無改造νGとか懐かしい。
まぁ、少なくともこの学園で手間取る相手なんて、現時点では(ごく一部のチート以外には)存在しない。

「なら、後で私と模擬戦しなさいよ」
「一体如何いう話の流れでそうなった」
「いいでしょ、どうせアンタだって暇してたんだし」

いや、私には私で激辛麻婆豆腐を作るというミッションが――。

「いいから付き合いなさい」
「はい……」

怖い笑顔ですごまれて、あえなく撃沈する。
結局その後、第二アリーナにてリンの相手をする羽目に成ったのだった。


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28 チョロイのとツンデレ咆え、腐女子前へ進み、チッパイ現る。

2012.06.15 (Fri)
祝勝会、と言うのだろうか。
その日、食堂の一角で、派手にパーティーが開催されていた。
壁にべったりと貼られた張り紙には、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』とでかでかと記されている。

「いやさ、一組のパーティーでしょ? なんで私たちまで来てるのさ」
「え~、だって織斑君だよ? せっかくのお近づきになるチャンスなんだし!!」
「そそ。それに他組の子だっていっぱい来てるし、私たちが入ったくらいじゃばれないよ~」

そんなクラスメイトに乗せられて、何故か食堂に訪れる事になってしまった。
因みに私のクラスは3組。原作では一切目立つ事のなかった哀れなクラスである。

「いいじゃない。それに、スバルはあのオリムラクンと友達なんでしょ?」
「いや、イリーナ……」

えぇぇええええ!!と声を上げる三組のクラスメイト達。

「いや、中学時代の友達だから」
「でも、スバルってオーストラリアの操縦者じゃなかった?」

そういえば、と不審そうに首をかしげる。そりゃ、オーストラリアのISパイロットが何故日本で中学生をやっていて、その上初の男性操縦者である織斑一夏の友人をやっているのか。
うーん、こうして考えると相当不審人物だな、私。

「いや、オーストラリア国家代表じゃなくて、オーストラリアの企業所属。中学が何で日本かっていうと、姉が同じく此処に入学してね。土地に慣れるために入学一年前にコッチに引っ越してきてたんだよ。で、私もそれに付き添いでこっちに。元々血筋的には日系だし、治安もコッチのほうが良かったし」

第一、魂の日本人としては、水資源の豊潤な日本には是非住んでいたいのだ。
何せオーストラリアは水に関して風土的に物凄く節約する。神経質なくらい節約する。
洗剤まみれの食器を水洗いしないとか、私としては我慢できない。風呂がオマケでシャワーがメインとかありえない。
今の生活? くくく、そりゃもう水なんて使い放題ですよ!!

「なるほどね。でも、何でそれでオリムラ君と友達に?」
「んー……話してもいいけど」

前置きを置いて、私たちとイチカたちとの出会いを話す。
日本に引っ越してきて、生活用品を買いに待ちに出た事。
その先で、古いタイプのナンパ君に絡まれてしまった事。
で、その最中イチカとその友達のダンに助けられた事。
友達になって分かれたその翌日、転校先の学校で再び顔を合わせて、それから良く遊ぶようになった事。

「と、そんなかんじ」
「「「「…………」」」」

なんだろうか。何か物凄い視線でコッチを見てきてるんだけど。
しかも何? なんでコッチを見てる視線が増えてるの!?

「何それ何処の王子様!?」「凄い。ピンチのときに颯爽と現れてくれるなんて」「其処に痺れる憧れるぅ!!」「織斑君かっこいい!!」「お姫様のポジションいいなぁ」「寧ろ私が織斑君を颯爽と助けたい」

駄目だコイツラ。

「で、スバルちゃんは格好いい織斑君に惚れちゃった、と」
「は? なんで?」
「…………………………いや、なんで、って」
「助けてくれたのはまぁありがたいけど、それだけだし」

正直な話、あんなナンパ君如き、殺ろうと思えば瞬殺出来るレベルの相手でしかない。まぁ、確かに頭部に受けた打撃の所為で、若干ピンチではあったけれど、あの程度は訓練でも良くあるレベルだ。
第一、私の中身は嘗の男が混ざっているのだ。そうそう『夢見る乙女がファンタジー!』な展開でポット惚れてしまうほど簡単な中身ではない。

「……そう」

そんな考えを、もう少しオブラートに包んで語ってみたところ、クラスメイトのイリーナは、何か残念な物を見るような目で此方を見つめてきた。
なんだよ、そんな目で見るなよ。照れるじゃないか。

「「「……はぁ」」」

ええい鬱陶しい!!
とりあえずイチカにアプローチをかけるよう周辺の女子をそそのかして、妙な視線から開放されるべく手を回したのだった。

なにやら黛先輩の声が聞こえるが、無視。
個人情報流出な質問されてあたふたしているイチカと顔真っ赤な篠ノ之箒も無視。
なにやら睨まれているけど、当然無視!





と、いうわけで。現在少し学生寮から遠く離れた場所に位置する、IS用整備格納庫へと赴いていた。

「はろー簪。元気ー?」
「う、うん。……スバルは相変らず元気そうね」

そうして訪れた整備用格納庫。その隅で、一機のISをいじくる青い髪の少女。
所謂原作キャラ、件の『生徒会長の妹』こと、更識簪ちゃんだ。

「で、調子如何?」
「うん、スバルのくれたデータのおかげで、なんとか稼動常態にまでは……」

そういって、嬉しそうに微笑む簪。
うーん、いい笑顔。此処まで気を許してもらえるようになるまで、結構私頑張った。

と言うのも、最初に私が簪に接触したのは、件の放置されたIS、打鋼弐式というISを見てみたいが為というのが大きかった。
だって、気になるじゃない? 純日本産のISなんて。技術大国にして、ISの産み出された国。その国が産み出す、次期主力機。
白式みたいな篠ノ之博士の段階的にぶっ飛んだ技術なんて、国益的に考えれば後に自分達の首を絞める代物でしかない。それに比べ、私の知っている打鉄弐式という機体は、とても汎用性が高く、完成度も素晴らしい機体だったはずだ。完成していれば。

と言うわけで、その操縦者たる更識簪に接触を取ってみたのだけれども。

「IS持ってるんだよね。見せてくれない?」
「――(プイッ」

であった当初のやり取りだが、事実こんな感じだった。
後で聞いた話だと、この手前に丁度姉ともめた直後だったとかで、私が声を掛けたのはまさに最悪のタイミングだったのだそうだ。
でも、だからといって遠慮するような私でもない。
その後も、暇を見ては積極的に話しかけるようにしているその最中、打鉄弐式が高機動型だという事をひょんなことから聞きだした。

「そういえば、私が前に乗ってた機体って、超高機動型で、マルチミサイル搭載機だったよ」

で、思わずポロリと口から零れたそんな言葉。
そう、考えてみればとても似ているのだ。RAYと打鉄弐式という機体のコンセプトは。
といってもRAYは既に10年近く昔の機体。速射荷電粒子砲こそ搭載していないが、超振動兵器搭載の超高速型。それもミサイルをばら撒くとか。

「そ、そのデータ頂戴!!」

で、見事に簪が釣れた。
ただ、無条件に渡してしまうと簪の為にならないと判断して、何等かの交換条件を設定した。
だって、「交換条件の成果として手に入れた」という建前が無ければ、「温情でもらえた」とか後々彼女が落ち込む原因に成りそうな気がしたし。

結局「貸し三つ」で手を打つことにした。あまり無茶は言わないという約束で。
で、その結果として現在、打鉄弐式は原作よりも完全な状態で完成に向かっていた。

「……で、スバルは何しに来たの?」
「んー、差し入れとお手伝いにね~」

言いつつ、手に持ったバスケットを差し出す。
適当な食材をはさんで斬っただけの簡単なトーストサンドイッチ。
ソーセージとバター、玉子マヨネーズとレタスと、そんな簡単な品揃えだ。

「設定見ておくから、簪はそれ食べておくこと。どうせゴハン食べてないんでしょ?」
「……うん」
「まったく。ちゃんと休憩しないと作業効率も落ちるよ?」

言いつつ、簪と入れ替わるようにしてコンソールパネルに手を伸ばす。
私のカオスタスクは伊達ではない。脳内で情報を高速処理させつつ、それをさらに指で打ち込み続ける。
情報の入力速度に関しては簪に劣る私だけど、情報の入力効率に関しては私は簪を圧倒している。
脳開発、ひいてはドクター様様というわけだ。

「ふーん、やっぱりRAYと似てるんだねぇ」
「うん……貰ったデータも、殆ど触るところが無いぐらい相性良かったし」
「まぁ、荷電粒子砲があるから、出力情報をちょっと弄らないと駄目だね。まぁ、RAYほど速度に出力をまわす必要も無いから、ちょろっと弄ればすぐに……」
「あんまり魔改造しないでね?」

前にミサイルを気化爆弾に積み替えていたのがそんなに気に喰わないのだろうか。
いや、確かに実戦で使うと自分ごとフッ飛ばしてしまうけど。高威力兵器って素晴らしくない?

とりあえず、簪が普通に部屋で寝れる程度の余裕が出来るよう、常識的な範囲でのデータ調整を行うのだった。




そうして、放課後。
日も暮れて、そろそろ整備格納庫から引き上げようかと屋外へと足を踏み出して、何処かからとも無く聞こえてくるイチカと篠ノ之箒の叫び声のような物が聞こえてきた。

「相変らず元気だなぁ」
「スバルに言われるのは、アッチも不本意だと思うけど……」
「ふむ、簪はこの『特装版 エガレンジャー ~二時間五十分の戦い~』は見ない、と」
「あっ、あの幻の同人映画っ!? 見たいっ!!!」

とか、そんな話をしながら寮へと移動する。
予断だがこのエガレンジャー、誰かのピンチの際、突如上空から落ちてくる鞄の中から現れるヒーローが、助けを求める人たちの前で踊りまくるという意味不明な作品だ。一応ヒーロー物に含まれる……らしい。

と、ふと気づいた。
なにやら、校門の方に、人影が見えるのだ。
こんな時間に人影と言うのもかなり珍しく、思わずその方向を見つめていると、そのシルエットが何処かで見たものと不意にダブって見えた。

この影は――まさかっ!!

「ちっぱい!! ちっぱいじゃないか!!」
「誰が無い胸チッパイかああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

何かが顔面に突き刺さり、私の身体は吹き飛ばされた。
私が最後に見たもの――それは、闇夜に煌くツインテールのツンデレ少女の姿だった。

27 白銀の騎士は青い雫を打ち砕く。

2012.06.15 (Fri)
と、言うわけで気づけばクラス代表騒動から一週間。
早くも一年一組のクラス代表決定戦が行われる日となった。

「で、きたの?」
「未だらしい……」

そうして全く持って意味不明な事態へと陥る。
なんだよ専用機が来ないって。いや、確かにこの事態は予定外の事態なのかもしれないけど、なんでそう専用機の到着が試合開始直前になっても来てないとか。
馬鹿なの? パイロット殺すの? と。

まぁ、私としては如何でもいい話。

「んじゃ、打鉄で出る?」
「いや、それは流石に無理だろう」

篠ノ之箒の言葉にイチカも首を縦に振る。
まぁ、ねぇ。只でさえ錬度に差があるこの状況、専用機も無しに国家代表候補は勝てる相手じゃない。

「……ふぁ」

然し眠い。
何せここ数日、対BT用の戦略を練るのに、睡眠時間の何割かを使ってたから。
肉体的には5日ぐらい徹夜しても平気なんだけれども、残念ながら精神的にはそうもいかない。一日二日ちょっと生活リズムが変わるだけならいいのだけれど、生活リズムが狂うというのは辛い。

「この緊急事態に暢気な……」
「いや、アタシらまで焦ったって仕方ないでしょ」

言いつつ、νGのハイパーセンサーを起動し、四方八方に向けてセンサーを働かせてみる。
学園の敷地外で、かつ学園敷地に向けて接近するISコアの反応……。
――センサーの範囲外に、それらしき反応が一つ。コレは……海輸? 自前の疑似ハイパーセンサーも使って更に走査。半分海中に沈んでる偽装船で学園に運び込んでる……のかな?
擬装の表看板が某大規模菓子パンチェーンになっているのが笑える。

「ん……そろそろ来そうな感じだね」
「それは何時もの?」
「そ、直感」

言いつつ私も踵を返す。

「ぬ、何処へ行くスカリエッティ」
「私は観客席から見てるよ」

何が悲しくて、態々ピットみたいな7割がた閉じた空間からグラウンドを見上げねばならないのか。私は折角だから観客席のいい席に陣取るぜ!

「そうそうイチカ」
「ん?」
「戦いなんて……特にISの戦闘なんて、結局の所は間合いの差し合いでしかないんだ。自分の間合いを理解して、相手の間合いを読み取って、以下に自分の間合いに敵を引きずり込むか。いかに敵の間合いから身をかわすか。それを確り考えれば、なに、今のイチカならイギリス代表候補くらいなら勝てるよ」

言いつつ、後ろ手に手を振ってその場から立ち去った。





さぁ、そういうわけで移動しました。
場所は観客席……ではなく、観覧席の近く、練習場のシステム面の整備用通路の一角。関係者以外立ち入り禁止の場所にこっそりと忍び込み、観客席よりも高くて遠い場所にひっそりと陣取ったのだった。

「さて、どうなるかな」

マジックポットからミルクと砂糖を溶かし込んだ甘甘コーヒーを小さくすすりながら視線をアリーナへと向ける。

東西のピットから飛び出す青と白の影。
青の機影は滑らかに、白の機影は何処かぎこちなくも、それでも確りと空を踏みしめるようにしてその中央へと陣取っていた。

んー、機体の挙動は大分マシみたいだけど、急制動とかはやっぱりまだまだだねぇ。

私の鍛えた現状のイチカは、原作よりも数段実力は上だ。
だけど、だからといって無敵かと言われればそうでもない。
先ず、入りの前に力が入りすぎていて、ある程度の武術家相手になら動きを読まれてしまう。
また一撃一撃が必殺なのはいいのだけれど、一撃の次に繋ぐのが若干遅い。ISでの戦闘は基本交差戦だからまぁ問題ないとは思うんだけれども、コレが例えば中国の開発している甲龍(シェンロン)みたいな格闘戦対応型とかを相手にする場合、少し相性が悪くなってしまう。

まぁ、BTなんて所詮は実験兵器。
そもそもオールレンジ兵器は制限された射角を補う為、また遠距離から奇襲をかけるという思想の元に存在しているのだ。
だというのに、オールレンジ兵器を搭載しながら、その上でビームが更に曲がる???
正直、意味が不明すぎる。この機体は一体如何いう状況を想定して設計されているのだろうか。
ビーム歪曲とオールレンジ攻撃は、如何考えても使用用途が被っている。正直容量の無駄食いにしか感じない。
しかもそれを使いこなせていないというのだから尚お笑いだ。

まぁ、例えレーザーだかビームだかが歪曲しようが、νGが負ける要素は欠片とてありえないのだけれど。


とか考えていたら、いつの間にかイチカの白式が一次移行を迎えていた。
なるほど、さっきまで銀色っぽかったけど、今では真っ白な機体に成り代わっていた。
その姿はまるで中世の鎧を思わせるデザイン……とやらに成っていた。

いや、けど……なんだろうか。
私の知っている原作の白式とは少しデザインが違う?
なんだろうか。こう、機体が全体的に丸みを帯びているというか、丸みの中にも鋭角があるというか。

「ぬるい! 俺を落したきゃ、その三倍のBTを持って来い!」

何処と無くACっぽいなぁ、なんて考えていたら、イチカのやつ何かを叫んだかと思うと、いきなりBTへと斬りかかった。

「あ、調子のってるな」

まぁ、訓練では12機のフィンファンネルを相手していたわけだし。BTの3倍というのは間違っては居ないのだろうけど。
機動性が上がったのはいいものの、どうもイチカのやつ、それにいい気になってかかなり動きが荒くなってる。
仮にも相手は国家代表候補生。一時期有利だからといって、油断するのは愚かな事。そう教え込んでいたのだけれども。
矢張りイチカには剣術の修行が必須か。身体能力云々以前に、精神力のほうを磨いてもらわなけりゃいけないか。

「ま、必要なデータは全て揃ったし、此処まででいいか」

零落白夜のデータも、一定の計測値を手に入れることが出来た。
エネルギー消滅能力。なるほど、シールドエネルギーと同質の波形によるエネルギーブレード。
シールドに当たればエネルギー波形の関係から一撃必殺。物理攻撃としても超一級品のエネルギー兵器なのだろう。
ただ、シールドを一撃で崩すほどの出力の代物だ。既存の第三世代型兵装としては破格の代物。途轍もなく高コストかつ悪燃費な代物と言うのも理解できた。

――とりあえず、イチカには心眼の修行が必須だな。

未来のイチカの修行プログラムを考えつつ、この場から離脱する為に一気に駆け出した。
私のハイパーセンサーに反応する人影。そろそろ頃合だとは思っていたのだけれども、どうやら学園関係者に見つかってしまったらしい。なにやら気配が一つ、こちらに向かって接近してきている。

NTセンサー、ハイパーセンサー共に感じるこのプレッシャー。
綺麗なまでの気配の隠匿。それゆえに、放つプレッシャーとの誤差で良くわかる。
私がNTじゃなければ絶対に気づけない。そんな恐ろしいまでの気配の希薄さとプレッシャーの濃さという矛盾。

視線を向けると、少し離れた通路に一人、青い髪の毛の美少女が一人。
少し年上に見えるその少女は、何処か不敵な笑みで此方をニヤリ。いや、この距離で生身の人間が見えてるの!?

ばさりと広げた扇子には『不敵』の二文字。
やべえええええええ、生徒会長キタアアアアア!!!!!

敗北は無いけど、無駄に疲れる相手。
その姿を一目見た瞬間、大慌てでその場を離脱したのだった。




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26 学園生活云々その2

2012.06.15 (Fri)
原作云々って、私あまり詳しくないから、現状の原作乖離がどれほど進んでいるのやら。

私の知る織斑一夏の朝は早い。
朝五時。彼は携帯電話のアラームで静かに目を覚ますと、先ず最初に普段から愛用しているトレーニングスーツに着替える。
因みにこのトレーニングスーツも、我がN&T社のIS関連グッズだったりするのだけど、イチカ本人は高性能なトレーニングスーツとしか知らない。
そんな、実はコンディションコントローラーまで搭載された高級品の強化装備(非エロ)を着込んだイチカは、先ず最初に中庭に出て、朝の冷たい空気の中でトレーニングを開始する。

「よぅ、スバル」
「おっ、来たねイチカ」

で、私と合流して朝のストレッチ。
……いやさ、私も戦闘機人で、体の動かし方はモビルデータの最適化でしかないとはいえ、生身のパーツが使われている以上、常日頃からある程度動かしておく必要があるのだ。

まぁ、そういうわけで朝のストレッチに励む。
ストレッチは柔軟を基本にして、身体をほぐす事を重点的に行う。
ストレッチの内容は、近代スポーツ学を取り入れた~……とかなら格好いいんだけれども、残念ながらイチカ本人にはそんなコネはない。仕方が無いので、私が記録しているイチカの身体データから、適当に良さそうな運動を選びメニューを作成している。
まぁ、幸い効果はあったらしく、中学時代からコレをやっているイチカは、今では主人公属性とあわせてチート染みた身体能力を誇っている。

「よし、それじゃそろそろ次いくか」
「ん、じゃ一分攻撃一分防御一分休憩のセットを10セットかな」

人間、本当に集中していられるのは本当に短い時間だけだ。一時間も同じ事に集中し続けられる人間なんて、本当に一欠けらもいないだろう。
だから私のトレーニングは、一つ一つに確り集中させて、こまめに休息を取る、というこんな形にしている。

「セアッ!!」
「ふっ!!」

左脚で牽制をかけつつ、身を屈めて一気にイチカへと接近。そのまま至近距離から乱打を放つ。
然しイチカも然る者、その拳を予め容易しておいた木刀で見事に受け止めてみせる。

「っつつ、鉄心入りの木刀なのに腕が痺れるとか……相変らずの怪力め」
「ふふん、それで腕が痺れるって事は、力の逃がし方が成ってないってことだよ」

言いつつ、再びイチカに向けて殴りこむ。
イチカの構えは正眼。真正面に向けて真直ぐ木刀を構える姿勢だ。

「――」

本当、あの極普通の中学生が、成長した物だ。
嘗て私が始めてであった織斑一夏と言う少年は、私の知る限り、女の子にモテるという以外はごく普通の少年だった。
間違っても、目の前の少年のように、鋭い剣気を放つような少年ではなかった。

彼を変えた要因は二つ。
一つは私による思惑。私のトレーニングにつき合わせるという名目で、地味に彼の基礎身体能力を底上げしていたというのがひとつ。
二つは第二回モンドグロッソ。その際起こったとある事件の顛末が、彼の戦意に火をつけたのだろう。

千冬さんに比べればまだまだ拙い。けれども、高校生の平均程度は軽く超越した剣気。

「――本当、面白いなぁ」

叩きつけられるプレッシャーをくすぐったく感じながら、フェイントと身体裁きを使って、イチカの腹に軽く一撃を叩き込むのだった。








朝の訓練は、平均して朝七時には終了する。
其々部屋に戻り、朝食の前に軽くシャワーを浴びておく必要があるのだ。
15~6の肉体の新陳代謝って、割と活発だからね。

「よ」
「や。篠ノ之さんもオハヨ~」
「……うむ」

何だうむって。
なんだか妙に含むところのありそうな視線を向けてくる篠ノ之箒の眼力に気づかぬフリをしつつ、特盛り炒飯を掻き込む。

「……相変らず良く食べるなぁ」
「まぁ、この身体燃費悪くてさ」

事実、この身体は戦闘機人のボディーとして、適合率、出力共に、一般的な戦闘機人のそれを大きく上回る。コレは私とギン姉に共通している特徴で、このことから素体となった人物の遺伝子データが戦闘機人と言う存在に対してどれ程適性が高かったかが伺える。
まぁ、その代わり、遺伝子データの親元の特性も受け継いでしまったらしく――私とギン姉は、揃って大食漢だったりする。

「……一夏。お前とスカリエッティと言うのは、その、如何いう間柄なのだ?」

と、炒飯を掻き込んでいる最中。不意に篠ノ之箒が、鯖味噌定食をつつきながら、ぼそりとそんなことを呟いた。

「んー、中学1年のときにコイツが転校してきたんだよ」
「そそ。ただの同級生だよ。だから篠ノ之さんが心配するような間柄ではないよ~」
「な、なななななんの話か…………。い、いや、然しそれにしては随分知った仲と言う風に見えるが」

疑り深いなぁ。

「ああ、それはな、コイツ俺の武術の師匠だから」
「は? スカリエッティは剣術を嗜むのか?」
「あぁ、違う違う。スバルがやってるのは格闘術。俺が教わったのは、基本的な体の動かし方とか、立ち回りとか……そういう実際に使える部分だな」

炒飯掻き込むことに集中していたら、空気を呼んだイチカがさり気無く注釈を入れてくれた。
相変らず色恋沙汰以外の部分ではとても気の利く男だ。

「きっ、貴様には篠ノ之流があるだろうに。剣術はどうした剣術は!」
「んー、剣も一応握ってるぞ? まぁ、一階小学校の時点で辞めちまったし、基本的な型以外はあんまり覚えてないんだけど」
「なら!! わ、私が剣術を鍛えなおしてやる!」

おぉ、アグレッシブに篠ノ之が行動を開始したァァァァッッ!!!
コレは一体如何いうことかっ、原作では
「箒、教えてくれ」「ツーン!」
    ↓
「なら、上級生のオネーサンが教えてあげようか?」
「私が教えると約束したっ!!私は篠ノ之博士の妹だ!!(ドーン」
という流れの結果、イチカにISに関する技術を叩き込む……と言う名目で、二人きりで同上に時化込むという荒業をやってのけたのだが。

……はっ、なるほど。つまりは私か。
私がイチカに必要最低限どころか十分な技術を与えてしまっている為、さすがの篠ノ之箒(ツンデレ)もただツンツンしているだけでは自分の価値が上がらないと直感的に判断したのだろう。

「ん? んじゃ、またその内都合のいい日にでも……」
「今日だ。放課後、道場に行くぞ」
「え? いや、今日も放課後はISの……」

ぎろり、と此方を睨んでくる篠ノ之箒。
だから私を睨むなと。うーん、やっぱりツンデレば見てる分には楽しいけど、実際絡まれると面倒くさくて仕方が無い。

「ま、基本に立ち返るのも重要な事だよイチカ。今日の予約は私が消化しとくから、そっちは篠ノ之さんにしかと教わっておいで」

剣術はISに役立つから、と一言添えておく。
まぁ、武術という広い括りで修練を積んでいるイチカに、態々範囲の決まった剣術をやらせるというのは今さら感があるのだが……ま、篠ノ之箒へのサービスという事で。
……いや、そういう意図でやった事だけど、そのキラキラした視線を此方に向けるのもヤメテ。

「何時まで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ!!――――――」

と、食べながら色々話していたら、ついつい時間が過ぎてしまっていたようだ。
何処からともなく現れた鬼教官『織斑千冬』の怒声によって、食堂に集まっていた生徒たちは慌てて食事を胃の中へと詰め込み、おのおの其々の教室へと向かって移動を開始した。

「んじゃ、俺達も行くな」
「んー、またその内。篠ノ之さんもまたね~」
「うむ、またな」

何処と無く上機嫌な篠ノ之箒と、そんな箒の様子が意味不明とばかりに首を傾げる一夏。
そんな二人を見送りつつ、特盛り炒飯を再び胃の中へと納めるのだった。







とか、そんな感じでのんびりと過す午前中の授業。
何せ法律関係だとか技術関係だとかは、全て頭の中に入っているのだ。今さらそういう知識を詰め込む学習をやってもなぁ、と思うのだけれども。

まぁ、適当に授業に参加しつつ、適当に過し昼休みへ。
昼は昼で生姜焼き定食を特盛りで注文して、適当な席に。

「って、ギン姉!」
「スバル!!」

ぼんやりとご飯を食べていたら、ふと見知ったかを見かけた。
青味かかった黒髪ロングの美少女。まさしく我が姉、ギンガ・スカリエッティに相違ない。

「もうっ、入学して一番に挨拶に来なさいよ!!」
「あはは、ごめんごめん」

むぎゅぅとその豊満なお胸に抱きしめられる。
伸びそうになる鼻の下を理性で必死に押し留めつつ、此方からもギン姉を確りと抱きしめて。

「ギンガとそっくり……ねね、その子妹?」
「うん、私の妹で、スバルっていうの」

そういって私の事を紹介するギン姉。って、うん?何だこの人。首からカメラぶら下げてる。

「凄い、髪型以外輪郭までそっくりだ。あ、私は黛薫子。二年の報道部だよ」
「スバル・スカリエッティです。何時も姉がお世話になってます」

……原作モブキター。

で、結局その日は黛先輩とギン姉の三人で昼食を取ったのだった。

「……食事の量も、さすが姉妹って感じだね」
「そう?」
「ハハハハハ……」

因みに、なにやら食堂の中心のほうから篠ノ之箒が上級生に向かって何かを宣言するような声が聞こえてきたり。
いや、篠ノ之さん? 教えるのは私ですから。

まぁ、さすがの私でもこういうタイミングでの無粋な突っ込みと言うのは趣味じゃない。
ので、此処は若い少女の頑張りを遠目に眺めてニヤニヤしておくのだった。

「ん? どうしたのスバル?」
「いや、実はですね……織斑菌が……(ごにょごにょ」
「ほほぅ、それはそれは……(ニヤニヤ」



※黛先輩との友好度が上昇しました。
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25 学園生活云々。

2012.06.15 (Fri)
「頼むスバル、俺にISの事を教えてくれっ!!」

そうして、IS学園に入学したとある昼下りの事。
食堂で何時ものように神盛スパゲッティ(たらこ)を注文して貪っていると、何処からともなく現れた一夏が、突如としてそんなことを言い出した。

「……イチカ、とりあえず座りなよ?」
「お、おぅ」

そういって促すと、イチカも自分がどれ程目立っているのか気づいたのだろう。慌てて正面の座席へと腰を下ろした。
……いや、ねぇ。今さら気をつけたところで、物凄く目立ってしまったのは事実で、そのイチカが話しかけた私は一体何者だ、的な視線がさっきから背に突き刺さるというか。

「で、どうしたのイチカ。イチカが思い悩む事といえば、大抵女の子の事なんだろうけど」
「ぬぐ……いや、実はな」

そういって語りだしたイチカ。
その内容はと言うと、簡単に言うと、セシリア・オルコットなる人間とISバトルする羽目になった。頼れる幼馴染は此方の不注意で機嫌を損ね、四方八方に居る女子に声を掛けるのは何か憚られる。
そこで、ISに対して造詣が深い(は言い過ぎ)私に、一手教授を頼めないか、と頼ってきたらしい。

「ふむ。まぁ、私が教えるのは吝かではないんだけどさ、でも、イチカの幼馴染ってアレでしょ、篠ノ之博士の関係者とかの」
「ああ、うん。束さんの妹。まぁ、箒のほうが束さんに何か確執持ってるみたいだけどな」
「まぁ、そういう内輪の話は知らないけどさ。私よりも、ソッチに教わったほうが良くない?」

何せ、篠ノ之博士の関係者なんだし、と何気なく誘導してみる。

「いや、箒はあくまで箒だ」
「ほぅ」
「それに、箒は束さんみたいな頭を使う暗躍タイプじゃなくて、どっちかと言うと感情が暴力に直結する前衛タイプだし」

うわぁ、と思わず唸る。
何せこの朴念仁、其処まで理解しているくせに、その感情が一体何処から来ているのかを理解できていないのだ。全く、意味が不明だ。コレも主人公属性、と言うやつなのだろうか。

「それに、お前言ってただろ、ISの搭乗時間はそこらの十把一絡には負けない、って」
「まぁ、ね」

何せ既に2000時間は軽く突破している私だ。
此処三年は搭乗平均時間が落ちたものの、それでも毎日近くISに触れている為、累計搭乗時間は随一だという自信は有る。

「だから頼む!この通り!!」

そういって頭を下げてくる一夏。
まぁ、其処まで頼み込まれてしまえば、ねぇ。

「……解った。ちょっとだけ教えてあげるよ」
「本当か!? 頼むぜスバルっ!!」

まぁ、ちょっとくらいは、ねぇ。





※※※※    ※※※※    ※※※※    ※※※※





さて、そういうわけで、先ず最初にイチカにはIS戦闘における基礎を学んでもらう事にした。

「つまり、どんな戦闘でも相手を視界、出来れば体の正面に入れておくというのが重要なわけ」
「うん、わかる。どんな武術だって、相手を視界から外すなんてしないもんな」
「ハイパーセンサーは全方位からの視覚情報をくれるけど、攻撃手段はやっぱり限定されちゃうからね」

自習室の一角に陣取り、スクリーンと手持ちの資料を駆使して、ISに関する基礎的な知識を叩き込んでいく。
とは言っても私が教えるのはあくまで実戦のための知識であり、ISの法や機械的知識なんかは授業と自習で勝手に学んでもらおう。

「さて、相手を正面に捕らえるのは重要なんだけど、その場合機動は如何いう風にすればいいかわかる?」
「え? ……切り込んで一撃じゃ駄目なのか?」
「千冬さん並の技術があればいいよ。つまり、イチカには無理」
「む」

因みにこのイチカは魔改造……とまでは行かないものの、生身での戦闘技術に関しては中々の物を教え込んである。
何せ元が剣道をやっていたスポーツ少年だ。身体をなまらせるのは勿体無いと、軍隊仕込の格闘術なんかを私直々に仕込んで置いたりした。
だからこのイチカ、ナイフとか得意なんだZ☆E!

「大切なのは相手の間合いを読む事。相手の手札を知る事。そして何より、油断しない事だね。ISに限らず、戦いなんてのは間合いの指しあい、なんてのはわかるよね?」
「おう。『隙の無い人間なんて存在しない、要は如何にして隙を制御するか』だっけ?」
「そそ。持論だけど、『制御』こそ人間の本願。自分を律すれば世界を征する……うん、言葉にしちゃうと陳腐に成っちゃうから、あんまり口には出さない事」
「あいよ」

言いつつ資料を渡す。今回の資料は、イギリス製のIS、ブルーティアーズに関するデータだ。

「これは?」
「本国に送ってもらった。何、政府同士はともかく、N&Tはイギリス嫌ってるから」

主にサイコミュの一件で。
BTをへこませるからデータくれって頼んだら、即座に様々なデータが送られてきた。
戦うのは私じゃないんだけどなぁ。

「BTは狙撃を主体とした中距離制圧型。最大の特徴は第三世代IS用兵器『BT』。このブルーティアーズの名前の元になった兵器だね」
「ふーん……うん?『フィン・ファンネル程の機動力、攻撃力は持たない物の、反応性自体はファンネル程度には使える』……ファンネルとかフィンファンネルって何のことだ?」
「うちで開発してるオールレンジ兵器のこと。……コレの事だな」

そう言って、FFを顕在化させる。

「うぉ、飛んでる?」
「コレが私のISの武装の一つ、フィンファンネル。イギリスのBTと似たような物だけどね」

まぁ、あちらが同時制御可能なのが四機に対して、此方の最大制御可能数は12機。その上制御しながら本体も稼動可能。何処に負ける要素があると?
そもそも、ビームの屈折とか意味がわからない。屈折してでも当てるじゃなくて、狙撃手なら最初の一手で当てろ、と。

「BTはコレが四機同時に攻撃してくる。まぁ、素人相手なら勝ち目なんて無いね」
「……」
「大丈夫だって、イチカには私が教えてるんだし」

不安そうな表情のイチカに、そう声を掛けて慰める。まぁ、原作だってギリギリまでBTを追い詰められてたんだ。今のコイツは原作に比べて幾らか性能UPしてるし、負ける筈も無い。と思う。

「んじゃ、次ぎ行こうか!!」

とりあえず、今は明るく、知識を詰め込む事を優先する。
それが、今の私に出来ることなのだ。





    ※※※※    ※※※※    ※※※※    ※※※※




さて、そうしてその翌日。
運よくアリーナの一角に予約が取れたため、放課後第三アリーナにて一人イチカが訪れるのを待っていた。

「おーい、スバルー!」
「おぉ、来たか。……ん? 其方は?」

ふと視線を向けると、イチカの背後には一人の少女が立っていた。
ポニーテールを結った、目つきの異様に鋭い少女。何故か此方をにらみつけていた。

「あぁ、ほら、前に言ってたろ。こいつが俺の幼馴染の篠ノ之箒。箒、コッチは中学時代の友達のスバル・スカリエッティ」
「ん、よろしく篠ノ之さん。スカリエッティでもスバルでも自由に呼んでね。但しスカさんとかは勘弁」
「……篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

あんまり乗ってはくれなかった。残念。

「さて、それじゃイチカ、早速ISに乗ってもらおうか」

そういって、ババンと指差すのは格納庫。其処に収められた、一機のIS。
所謂「打鉄」という日本製第二世代量産型ISだ。

「ば、馬鹿な。この時期に一年生に訓練機の使用許可が下るだと!?」
「ふっふっふ、伝手とコネは使ってナンボ。さぁ、イチカ。それを使って、ISの基本的な挙動くらいは覚えるよ」
「お、おう! 感謝すんぜスバル!!」

言いつつ、勢い良く打鉄に駆け寄るイチカ。
うん、なんだか子供みたいにはしゃいでいるのがわかる。
……と、思ったら急に引き返してきた。

「スバル、コレ如何やってのったら良いんだ?」

思わず額に手を当てた私は、決して悪くない。






「し、仕方ないだろ! 前は試験官の先生がついててくれたんだよ!!」

要するに、嘗てイチカが乗った打鉄は、教員の補助があったため、自分ひとりでISに乗るのは、実質コレが初めてなのだとか。

「さて、それじゃ私のISのお披露目といこうかな。行くよνG」

――ヴゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウンンンン…………………

まるで此方の声にこたえるように。低い駆動音と共に、左腕のバングルに緑色の光が灯る。
一瞬放たれた光は、次の瞬間躯が少し浮き上がり、身体には白い鋼のドレスが顕現していた。

「なっ、専用機だとっ!?」

その篠ノ之箒の驚愕の声に、周囲四方から注目が集まる。
何せ、このνG……[νG-HWS-DFF]はとんでもなく派手だ。私としては片方だけのフィンファンネルで十分なのだけれども、ドクターの趣味で現状の羽ファンネルで行く事が決定している。
なんでも「火力は大いに越した事は無い」とか。何時からトリガーハッピーに成ったんだろうか。
私の戦術特性は機動力特化なんだけどねぇ。

「あ、あの機体はギンガさんの……」

そんな中、何処かからそんな声が聞こえてきた。
ふふふ、ギン姉、確り目立ってるみたいだ。
何せ量産型とこの機体、基本的な部分は同型機だ。現状ギン姉の機体はファンネル型からインコム型に変更されてるけど。
ギン姉のNT適性は低かったし、仕方ないといえば仕方無い。それに、インコム型は追加スラスターとしても機能するから、ギン姉にはあちらのほうが向いているのだろう。

閑話休題。

「さて、イチカ。これから私はBTの動きを再現するから、イチカは好きなように攻めてみな」
「いや、でもスバル? この機体、武装が剣一本しかないんだけど?」

そういってイチカは、自らが着込んだ黒色の鎧武者のようなISを親指で小突く。

「付け焼刃で火器なんて扱えば怪我するからね。イチカは愚直に突撃するのが似合ってるよ」
「……それ、褒めてないだろ?」
「あ、ばれた?」
「てめっ!!」

こちらの挑発に、半ば苦笑を浮かべながら突っ込んでくるイチカ。
くくく、本当、私の干渉の結果かは知らないけど、へんな性格に捻じ曲がってしまった物だ。
FFを四機射出。それを使って徹底的にイチカを翻弄する。
何せFFはBTには無いAMBAC機構が搭載されている。機動力では此方のが圧倒的に難易度は上がる。といっても、機動自体はBTを真似ているから、気づけば簡単に対処できるんだけどね。

「おおおおおおおおおお!!!!」

咆えるイチカ。そんなイチカのはるか下で、病んだオーラを立ち上らせる篠ノ之箒。
そんな彼女のオーラをNT的な意味でビンビンに感じつつも、イチカに修行をつけるという名目の元、必死に無視し続けるのだった。

(後で剣道の相手でもしてもらうようにフォローしておこう)

日和(ひよ)るのも、立派な戦術なのだ。


24 そして原作へ。

2012.06.15 (Fri)
そうして、ひょんなある日のこと。
授業も終わり、少しの暇を得た私たちは、五反田食堂の上、ダンの自室へとお邪魔することに。

「へぇ、それじゃスバルの進学先はIS学園一択なのか」
「そそ。そのために日本にきたようなもんだしね。まぁ、此処でIS学園以外を選んじゃうと、日本に来た意味がなくなるというか」

IS/VSをやりながら、話す内容は進学先の話。
何せダンのヤツ、内部推薦でとっくに決まっているとか。羨ましすぎる。ねたましすぎる。

「んー、なんだ、強制でもされてるのか?」
「んにゃ。強制されたというか、自分が強制したというか」

何せ、N&Tを――ナンバーズコーポを立ち上げさせたその理由と言うのが、そもそも私がISを手に入れるため、世界を愉しむ為なのだ。
そのためには原作を観測できる位置に陣取るのはかなり重要だ。なにせ、転生者にとって原作知識は最大の武器。それを最も生かすには、イベントから時系列を計測する必要がある。
まぁ、その辺りは人に任せるという方法もあるのだけれども。……いや、ほら。どうせなら直接介入して愉しみたいじゃん。

「ま、色々裏技使っちゃったからね。今さらやめちゃうとマイナスがでかくて」
「ん、如何いうことだ?」
「んー、コッチの話」

コレが例えば国家所属のIS乗りとかだと、簡単に国を出る事ができなくなってしまう。私のように、日本に住処を移動させるとか、何の暴挙だという話。
けど、私に関してはかなり事情が違う。先ず初めに、私は国家所属ではなく企業所属のISパイロットだ。この点から、国が私に対して持つ命令権はさほどの物でもない。国がISコアの所有権について文句をいってきた場合、偶々手に入れたISコアを渡して黙らせる。何せ連中にISを運用する能力は無い。その根幹技術はN&Tに依存してるからなぁ。その上私自身もIS開発に大分貢献している。下手に機嫌を損ねて亡命なんてされても困るだろう。ま、貢献度と袖の下と権威行使の勝利だ。
で、貴重なISパイロットを誘拐される恐れに関してなのだけれども――さて、私とギン姉、仮に誘拐されたとして、生身でもISとやりあえる戦闘機人だ。むしろ護衛をつけてIS《インヒューレントスキル》を秘匿する対象を増やすほうが危険だったり。

まぁ、ダンに関してはそんな裏事情よりも、単純にアイドル育成学校としての面が強いIS学園に対する憧れが強い様子だけど。

「くぁー、いいなぁ、IS学園。女の子しか居ない秘密の花園、ISと言う最新技術の集結する一大拠点。くぅ、男なら一度は覗いてみたい!!」
「ダン、その発言、蘭の前では止めなよ? また蹴られるよ?」
「げ――まぁ、自重するよ」
「第一、女だけの社会とか、そう良いものでもないよ? またしてあげようか、『女社会の裏・女子高編~陰湿な女達』」
「ひぃっ、あのトラウマ話は勘弁してくれっ!!」

私もこの身体に生まれて15年。流石に、元男としての女性幻想なんて物は木っ端微塵に砕け散った。
何せ最初にイチカと友誼を結ぶまでにも大分攻撃を喰らったし。こう、濡れてたりくっ付いてたり染められてたり。
性的な意味でイチカに興味は無いと上手く情報を流せたから良かったものの。失敗していたらと思うとぞっとする。既に精神年齢的には良い年なのに、それでもぞっとしたのだから相当なものだ。

「おにぃ、またアタシのCa―――いっ、イチカさん!?」
「おぅ、蘭。お邪魔してるぞ」

そんなことを話していたら、突如として部屋の扉が爆音と共に開いた。
あーあー、蘭め、折角教えてあげたのに。メールチェックを怠ったな!

――因みに、私は蘭とは友人関係で落ち着いている。
最初はイチカ目当てかと、リンと共に此方を警戒してきていたが、二人の事をさり気無く応援しておいたら仲良くなれた。さすが弓弦世界。ちょろい。






そんなわけで、日本に来てからかれこれ3年。中学一年生に転校した私は、今年になって漸く高等教育へと進学する年齢へと達したのだ。

嗚呼、この3年間は長かった。
ギン姉はすぐに学園に入学しちゃうし、そうなれば私は近所のアパートで一人暮らし。
同じ学年のリン、ダン、イチカの三人は私に良くしてくれたけど、途中でリンが祖国へと帰国。そんな寂しさを味わう事にも成った。

まぁ、いい。いいんだ。これで、今年漸く私の目的。IS学園への入学が果たせる。
くくく、長かった。先に入学したギン姉が、学園内での演習なんかで蓄積した実戦データを本国へ持ち帰って、それを最適化して私の機体に実装。そうして実際にテストを重ねたデータをギン姉へと再送信して……そんなことを繰り返していたのが懐かしい。
今や私のνGは既に完成直後のそれとは明らかに別物へと進化を遂げていた。
オーバーロードを自由自在に起こせる、と言う時点で、どれだけチートな存在になっているかを理解してもらえると思う。

「で、イチカは何処の学校行くって言ってたっけ」
「ん、俺か? 俺は藍越学園だな」

近いし学費も安いし、とイチカ。まぁ、高校を選ぶ基準なんて人それぞれだしなぁ。

「ダンは? 食堂を継ぐにしても、高校ぐらいは出といたほうが良いんでしょ?」
「おぅ。といってもまぁ、俺は推薦でとっくに確定してるからな」
「そんな頭良さそうにはみえないんだけどねぇ」
「ほっとけ!」

そう、この五反田弾は頭がいい。
ISフェチという種族は、近代に至っては極普通に存在しえる。というのも、最近のISに関する狂った宣伝の賜物で、ISとその操縦者をまるでアイドルのように取り扱うというのを何処の国もやっている。
おかげでISに対する一般的な理解は、アイドルに対するそれとなんら変わりの無い様にも感じた。

「でもさ、皆ISISって言うけど、IS操縦者になるって何か良い事でもあるのか?」
「ちょっ、お前、それ本気か!?」

イチカの頓珍漢な言葉に、思わずといった様子で弾が声を荒げた。
そりゃ、ねぇ。
私もこの三年間で、出来るだけの知識をイチカに刷り込んできた。
日常生活の中でも、ニュースの中でも、ISに関する情報と言うのは様々なところで目にした。そういうところに私が居た場合、事細かに、一般常識として、ISに関する専門知識をイチカに刷り込んでいたのだ。

本当、大変だった。
事ある毎にIS知識を刷り込み、ゲームと称してブレオン機での戦術を叩き込む。
今の一夏は、原作よりは若干強化されている。まぁ、肉体面では比較にならないレベルに仕上げはしたけど。

「……イチカ、今の時代、軍事力の優劣はISに左右される、って言うのは既に理解してるよね」
「あ、ああ。従来兵器を圧倒したIS。単機で従来戦力一個師団を壊滅させられるほどのそれ、だったか」
「そそ。それじゃさ、それの操縦者には、IS並みの価値(・・)が与えられるのは理解できる?」
「F1カーが幾ら高性能でも、乗りこなせるドライバーが居なけりゃ成らない、って事だ」

私の説明に、ダンの補足が入って、イチカは漸く首を縦に振る。

「つまり、ISの操縦者にはISそれ自体に次ぐほどの価値がある。圧倒的技量をもっていたりすれば、その価値は更に跳ね上がるわけね。と成れば、当然各国は優秀な人間を自分のところに囲い込みたくなる。高い報酬を支払ってでも、ね」
「野球選手だって、有能なヤツは高い報酬を貰ってるだろ」
「……つまり、IS操縦者って言うのは、それだけで高い価値を持つ、って事か」
「特に有能なIS操縦者はね」

うんうんと頷く。
IS操縦者が持つ価値と言うのは、実は結構高かったりする。
只でさえ女性しか乗れないIS。その中でもAクラスの適性持ちなんて、本当に数が限られている。
そういう人間の価値と言うのは、欲しがっているところからすれば本当に喉から手が出るほど、なのだから。

「でもなぁ。ISって戦争には使えないんだろう? だってのに、そんなに重要視されるのか?」
「そんな建前、いざ戦争に成れば誰も気にしないよ」
「いや、スバル、お前も正直に言いすぎ」
「まぁ、本当にいざと言うときには、多分開発者がコアを停止させるんだろうけどねー」
「……あぁ、束さんか。でも、あの人なら戦争とか起こっても嘲笑してそれで済ませちゃいそうな気が……」

そういえば、イチカは篠ノ之博士と面識があるんだっけか。
でも、なるほど。確かに他人に興味の無い篠ノ之博士のことだ、戦争が起ころうが『馬鹿は馬鹿同士勝手に殺しあってれば良いよ。束さんには関係ないしね』とか言ってスルーしそうな気もする。
あ、篠ノ之博士とはこの三年間の中で一度だけ顔を合わせたことがある。
なんでもイチカの顔を見に来たらしく、その際此方に一瞬視線を向けたのが印象深かった。
ばれたかな?

「それにねイチカ。ISは戦争には使っちゃいけないって成ってるけど、テロや内紛は戦争じゃないんだよ」
「え? ……え?」
「テロリスト集団が銀行に立て篭もったとして、その場合、ISでテロリスト集団を圧殺するとかは禁止されて無いんだよ」

通称「アラスカ条約の抜け穴」と呼ばれるこれら問題点。
ISは戦争に使ってはいけない、と言うのはISの大前提。開発者が直々に唱えたとされるこれだが、どうにもこの話には抜け穴が多すぎる。結果として世界各国ではこの抜け穴を存分に利用し、また利用する為に、この数年でその方面の技術力が一気に飛躍してはいる。

「まぁ、細かい所はいいよね。IS学園は要するにアイドル学園だ、とでも考えて置いたらいいと思うよ」
「最後ので色々台無しだなおぃ」
「しかも間違ってるとも言い難いから、身も蓋も無い」

なんだよ。別に間違っちゃ居ないだろ?
とか思っていたのだけれども。なにせ、相手が悪かった。私が今会話しているのは、Theフラグメイカー、織斑一夏なのだから。

「んじゃつまり、スバルはアイドルに成りたいって事なのか?」
「ブyホッ!!」

何かダンが物凄く奇妙な声を出しながらむせていた。
物凄く失礼だ。裏拳を叩き込んだ私は悪くないと思う。
何かうめき声を上げてうずくまっているが知らない。ちょっと手加減を間違えて機人モードで殴っちゃったかもしれないけど、まぁダンだし大丈夫だよね?

「――ううん、ちょっと違う。私は企業所属のパイロットだから、IS学園に行くのは必須なんだ」
「――って、ええっ!? パイロット!? 候補生とかじゃなくて!?」

と、ポロッと口から零した言葉に、ダンが予想以上に反応して見せた。復活早っ。
まぁ、私が覆面でパイロットをしていたのは、自分がまだ未成年で、事件に巻き込まれた場合の対処力に多少問題があったから、と言うのが一番大きい。
大して現状の私。振動破砕もνGも完成して、戦力的には単機で国を落せるレベルだ。何も問題は無い。
本来国から離れて留学する際、ISは国に預けておくのが普通だ。
けれどもこのνGの場合、もし第三者の手にわたってしまった場合のことを考えると、私の手元に置いておいたほうが安全なのだ。私自身の戦力は一般兵士のそれを圧倒してるわけで。

「うん、N&Tってオーストラリアの会社」
「なっ、なんばーずあんどとーらすぅ!?」
「知っているのかダン」
「う、うむ。――N&T、その源流は数年前、突如としてオーストラリアに現れた義肢開発企業であるナンバーズコーポ(NC)が、突如としてIS分野へと手を伸ばした事が始まりとされている。
かの企業NC社は、IS分野に手を出し、僅か数年で独自の技術を盛り込んだISを完成させ、同国内三本の指に入るほどに成長を遂げた。そして何よりも有名なのがオーストラリア国内で開催されたISによるレース、キャノンボールファスト。途中国籍不明機の乱入で有耶無耶になってしまった試合だが、ここでもNC社製のISは盛大に暴れまくったのだそうだ。そうしてその後、当時オーストラリアを支配していた三社、NC、トーラス、AMIは其々に合併併合を繰り返し、その結果トーラスはNCに吸収され、AMIは技術商社へと身を落した。要するに、N&Tと言うのは、オーストラリア最大手の一流企業だ。そして料理人にとってのあの会社は超一流の台所グッズメーカーだ!!(参考 民明書房刊 『21世紀企業演義録』より)」

うーん、なんて雷電。

「因みに、其処の社長が私の養父だから」
「なにぃっ!?」

ダン、大興奮。

で、何故かうちの鉄工部門で販売してる最高級遠赤外線フライパンを一つ安くで融通する事になったのだった。

ネタに走ってみる その1「スバルにそそのかされて」

2012.06.12 (Tue)
※これは本編とは一切関係有りません。此処で起こったことは一部を除き本編とは関係の無いフィクションです。











ジェイル・スカリエッティは一人自らの研究室で思考する。
現在の課題はIS。インフィニットストラトスと呼ばれる兵器についてだ。
そもそもは宇宙服として開発したのだそうだが、そんな見え見えの建前を信じているのは、最早子供にすらいまい。

政治家にとってのISは、取引の手札。
国民にとってのISは、文字通り雲の上の話。
子供達にとってのISは、メカニカルなロボット。
青年達にとってのISは、新時代のアイドル。
女性達にとってのISは、女性の強権を支える柱。
そうして、一部の人間にとってのISとは、打破すべき壁。

私にとってのISかい? それは当然研究対象!!
といっても、ISコアの研究は流石に控えているがね。
ISに携わる研究者に伝わる御伽噺に、「ISコアを深く知りすぎたものには、ウサ耳の断罪が下される」なんて御伽噺が流れているのだ。

ウサ耳の断罪ってなんなのだろうか。ギャグ?

まぁ、事実として秘匿されていた筈のISコアの研究所、その幾つかが何者課の強襲により壊滅している。
その研究所と言うのが、連中(・・)の運営する研究所なのだ。さすがの亡国企業でも、手を出す事はありえない。

推察するに、ISコアのコアネットワークから情報が洩れた、と考えるのが一番妥当だろう。
ISは、そのネットワークを用いて常に監視されている。全く、彼女が何をしたいのか、私にも計りかねる。

うちはウーノとクアットロによってほぼ完璧に情報統制されてはいるが、だからといって冒険をしようとは思えない。いや、嘗ての私だったら平然とやってのけたのだろうが、如何せんスバルに毒されすぎたようだ。娘達のことを考えると、彼女たちを危険にさらしてまでも、と言うほどコアに魅力を感じない。



話が逸れた。

現在私が悩むテーマ。それは、ISそのものではなく、ISスーツというものに関してだ。

ISスーツ。それは、ISを装着するパイロットが必ず身につける水着のような着衣だ。
性質としては、パイロットの保護、機体の精密部品の保護等が有る。
ISとパイロットは、接触によるシンクロニティにより相互情報交換を行い、その情報を用いて操縦する。つまり、操縦桿を用いず、体を動かすようにISを動かす事が出来るのだ。
このとき、当然としてISとパイロットの設置面積は広いほうがいい。そのほうが情報の相互交換は効率的に行える。

極論を言えば、素っ裸でISに乗れば、ISとの相互情報交換はとても効率が良くなる。

まぁ、そんなことは当然無理だ。倫理なんて言葉、私はトイレにでも流せばいいとは思うのだが、世間ではそうもいえないのだそうだ。

衣類を着れば効率が下がり、衣類を脱げば倫理的に問題がある。
さて、この問題を解決する為の手段が、このISスーツと呼ばれる代物になる。
ISスーツは、外見は競泳用の水着のような形をしているが、その実はISと操縦者との相互通信を補助するという能力を持ち、更にISパイロットの様々な面からの補助機能を備えている。
このスーツにより、ISの操縦者達はスッパで空を飛びまわるという露出狂のような真似をせず、堂々と空を飛びまわることが出来るのだ。
まぁ、一部の人間が言うには「あんなスク水で空飛びまわるとかクレイジー」だそうだが。

さて、私が考えるに、ISの技術の進歩と言うのは、如何してもかなりの時間が掛かる。
スバルでこそクレイジーな速度での技術開発を進めてはいるが、それでも卓上の理論を飛び出さない程度の物ではあるのだ。

ぶっちゃけ、性能向上を目指しても、簡単に手を入れることが出来ない。
そこで考えた。簡単にISの性能向上を目指すには、何をすればいいか。
つまり、ISスーツの性能向上だ。







「そういえば、エロいパイロットスーツってお約束だよね」

そんなで出しと共に、スバルが語ったパイロットスーツの構想があった。
なんでも、マブラヴ衛士装備とかいう代物で、全身をフィルムで包み与圧。急所や要所要所をプロテクターで覆い、最低限の防御性能を持たせながら、設置されたセンサーなどにより最高レベルの延命機能を持たせた代物だとか。
その上、スーツに設置されたセンサーにより、パイロットの状態は常に監視可能。鎮静剤の投与機能等も備え、またスーツ自体にも通信機能が有り、陸戦兵のアンダースーツとしても有能。

「面白そうだね、それは」
「国連軍訓練兵版はいい物だった……。ドクター、作れる?」
「構想を寄越してくれれば、挑んでみよう」

そうスバルに言ったところ、その翌日にはレポート用紙200枚程度のレポートになって此方に提出された。あの子は女の子の癖に、何でこう行動原理がおやじ臭いのか。

さて、そういうわけで届けられた200枚のレポート。
最初の50枚は、元ネタになったスーツの性能に関して。次の50枚はISスーツ化に際する問題点について。最後の100枚には改良に関する構想と大まかな方法などが記述されていた。
いや、だから一晩でコレって、私の研究者としてのプライドがちょっと……。








さて、そういうわけで研究をスタートした新型スーツ計画なのだが、なんと開発から半月程度で完成してしまったのだ。
元のISスーツ同様、パイロットとの情報交換は勿論、横付けされたセンサーからISに対して情報が送信され、ISとパイロット間の相互理解を寄り進める、などの機能も見事に機能していた。
装着方法は若干変更して、少し余裕の有るスーツを手首のコンソールでプシュッっとする、要するにNerv式というのに変更された。
なんでも地球上では電力の関係で5分しか活動できない巨人を操る為に必要(絶対ではない)な装備の装着方式だとか。Qが楽しみだとはスバル談だが、一体何の事なのだろうか。

また話が逸れた。
さて、そうして完成した新型のスーツなのだが、その中でも特に与圧機能はラボに所属する女性陣に中々好評のようだ。
何でもこの与圧機能、NCの研究室に検査させたところ、女性の体型維持に効果的なのだとか。そういう目的は無かったのだが、まぁウーノ達が喜んでくれるのならばそれもよかろう。
と言うわけで、気づけばうちの娘達は、ほぼ全員が新型スーツをアンダーウェアとして着込むようになっていた。
それを見たスバルが「ブッ、ナンバーズ(笑)」なんて叫んでいたが、……彼女達がナンバーズと呼ばれている事は最初から知っているだろうに?

さて、このISスーツだが、売り出すに際しての評判は予想もしない方向へと向かった。
当初、スバルの言葉通りに考えるのであれば、主立った客層はIS学園の生徒くらいを考えていたのだ。
学園生は数も決まっているし、第一スーツのシェアは他所が多い。それほど流通はしないだろう、と考えていたのだ。

ところが、売り出してみればびっくり。
IS学園での評判は「何かエロい」と今一だったにもかかわらず、コレが各国の軍に大うけした。
IS搭乗者は勿論、非IS搭乗者にも恩恵の有るスーツだ。各国の軍でアンダーウェアに着込まれたこのスーツは、大いに評判となった。
中でも海兵隊とかにはとても喜ばれたらしい。おまる機能が重宝されるという話だが、――さて、意味がわからないという事にしておこう。


とりあえず、新型のISスーツを、スバルに習い強化装備と呼称する事にした。
その強化装備なのだが、中々の売り上げが出たので、その結果報告を、出た成果を報奨金としてスバルに渡したときに話しておいた。

「えっと……『いいのかホイホイ買っちまって。ヤツは海兵隊(ネイビー)だろうが構わず喰っちゃってるんだと思うぜ!』で、『アーーーッ!!!』かな」

私には君が何を言っているのか解らないよ。







……まぁ、とりあえずウーノの強化装備姿を眺めてニヤニヤしておこう。
あぁ、恥じ入る我が娘は可愛いなぁ!!!続きを読む

23 Intermission 9 引越し

2012.06.12 (Tue)
と、言うわけで、我々タイプゼロシスターズはこのたびオーストラリアの大地を離れ、魂の故郷である日本の大地へと足を踏み入れたのでした。

「誰に向かって話してるのスバル?」
「うん? 何か電波がお約束を守れって」
「……そう?」

うん、ギン姉はちょっと大人び出して、途端に綺麗になってきた。
その豊満な胸元も、正直たまりませんなぁ。

「……えっち」
「はっ、アタシは一体何をっ!! いや、ギン姉、そのポーズは拙いからっ!!」

気づけばギン姉の胸元を凝視していた。それに気づいたギン姉が胸元を隠すように両腕で……。
その結果、より強調されたその豊満なお胸様。四方を見れば……あーあー、被害者らしき前かがみ男児が。

まぁ、幸い今の時代は女権主義だ。こういう無防備な女の子二人な現状だけど、私の知ってる時代みたいなナンパは……

「ヒュー、ネェネェ彼女達、俺達とお茶シネェー?」

なんなんだよ! フラグが!! 私がネーヨって言ったら有る有るなのかっ!! じゃネーヨって言ったら消えるのかっ!!

「あ、あのっ、困ります」
「イージャンイージャン、俺美味しいピザ屋知ってるからサァ!」

いや、女の子お茶に誘ってピザ屋って如何よ? というかそもそもお茶しないかって何時の時代の誘い文句なんだか。「こういう連中って、時代が変わっても居るのねぇ」

「ちょ、スバル」
「はぇ? って、あ」
「おいおいジョーちゃん、そりゃ如何いう意味だよ」
「いや、女の子の誘い方を知らない御仁だなー、と」
「なっ」

拙い。口から思わず出てしまっていた。ら、此方に声を掛けてきていたパツキンは口元を引きつらせ、その隣に居たグラサンがなにやら驚いたような顔をしていた。

「……こ、この百戦錬磨の東吾君に向かって、センス無いだとっ!!」
「確かに雌犬に“梓”とかわかれた彼女の名前を付けるような、正直どうかと思うセンスの持ち主の東吾君に向かってセンス悪いだとブルアァァァァァァァァアアアアァツ!!!!!」
「手前等おちょくってんのかあ”あ”っ!!」

うーん、見事な突っ込み。と言うか、手首のスナップが素人のそれじゃないね。
このパツキン、何か武術でもやってたんだろうか。

「――けほん。それで、彼女達、ちょっと付き合ってくれよ」
「なかった事にする気か」
「な、いいだろ? 美味しいカフェ知ってるんだ」

おや、ちょっと学習したみたいだ。
まぁ、これ以上私が前に出るのも何か違う気がする。折角なのでここは、ナンパ君に絡まれて困惑するギン姉の可愛らしいお顔を観察……。

「なぁなぁ」
「っ」

ギン姉に向かって手を伸ばしたナンパ君の腕を、咄嗟に掴み取る。
流石にそういう直接的な接触をするのは止めて欲しいんだけど。

「いててっ、手前、何しやがる!」
「あっ……」

とか思ってたら、ちょっと加減を間違ったらしい。
ついつい姉妹内でのやり取りでの出力でやっちゃった所為で、対人には少し威力が過剰だったらしい。
振り払うようにしたパツキンの腕。ついつい気を抜いていた私の体が流れるように飛ばされた。
あー、私の体、新素材開発のついでに、素材交換で軽量化して軽くなってるから……。

ドンッ、という衝撃が背中から走る。

「スバルっ!!」

慌てたようなギン姉に抱き起こされる。いや、私戦闘機人だから。この程度じゃ動作に問題は無いから。
でも拙い。今すぐに立ち上がるのは、ちょっといや。いや、動けなくは無いんだけど、今急に動いちゃうとダメージが残る気がする。でも、そうなるとこのナンパ君は……。

「オマワリさーん!! こっち!! 女の子が襲われてマース!!」

とか思ったら、突如として何処かから聞こえてくるそんな声。
女の子が襲われてる……うーん、表現は何かエロいけど、まぁ間違っては居ない……し?

と、泡を食ったように逃げ出すナンパ君達。
いや、捨て台詞に「覚えてやがれ」は無いと想います。もう会う事も無いと思うし。

とりあえず、コレでこの騒動は一件落着なんだろう。
そう思って、思わず小さく吐息を吐いた。







の、だけれども。

「おい、お前ら大丈夫か?」

そんな声と共に駆けつけてきたのは、シャツにジーパンとラフな格好をしたひとりの青年――いや、少年か。
中学生くらいの男の子が一人、此方を心配した様子で駆け寄ってきた。

「す、スバルが……!!」
「大丈夫だって、ギン姉」
「いや、頭打ったのか? なら無理に動かないほうがいい」

そういって、自然に私の頭に手を置いてくるその少年。
……うん? 何か、私のセンサーに反応してる……?

「おうイチカ、そっちは如何だ?」
「うん、この子のほうが頭打ったみたいで……」
「なぬっ、そりゃ拙い……ふむ、此処なら、病院よりもうちの店のが近いか」
「いいのかダン?」
「怪我した女の子を見捨てるなんて、俺の矜持に反するからな!!」

……あれぇ?








そうして気づいたときには、私は見知らぬ少年の家にお邪魔する事が確定していた。
何でもその少年……ええい、ダン君の家は食堂をやっているらしく、昼も過ぎてひと気も疎らだったため、畳の一角を貸してもらえたのだとか。

「ダン、手前女の子を助けてくるとはやるじゃねーか!」
「心残りは、女の子を突き飛ばした糞ヤローに報復できなかった事なんだけどな」
「けっ、そんなのぁ次あったときに握り拳を叩き込んでやりゃいいのよ!!」

私は突っ込まない。入れないったら入れない。

「織斑一夏クンっていうの」
「ああ。そっちは?」
「私はギンガで、コッチがスバル。ギンガ・スカリエッティとスバル・スカリエッティよ」

つ、突っ込んじゃ駄目だ。突っ込むな私!!

「い、一夏さん……女の子を連れ込んで……」
「ファイトよ蘭、コレを持っていって母性をアピールするのよ!!」
「お母さん……解った、私頑張る!!」

(プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル)

「? スバルどうかした?」
「なんでもないよ。――ふぅ、もう大丈夫」

そういいながら身を起こす。一応全身にスキャンをかけてみたけれども、何処にも異常は無い。うん、既に平常稼動は十二分に可能だ。

「えっと、織斑君だっけ? 助けてくれてアリガトね」
「おう、でも頑張ったのはダンだし、礼はアッチに頼む。それと俺のことは一夏でいいから」
「うん、一夏。ダンくん? にもお礼言っとくよ」

……織斑……一夏……。
何でこんな所で本編主人公と邂逅してしまうのか。
コレも世界の補正か。それとも一種の恋愛原子核性質の影響か。
いや、私が魅かれることは無いと思うけど、ギン姉を確りガードしなきゃ……。

ふとギン姉に視線を向けてみる。
キョトンとした表情で首をかしげるギン姉。
……ふむ。天然のギン姉には耐性があるみたいだ。

「あ、ダン! もう大丈夫みたいだぞ」
「おっ、そうか、ちょっと待ってろよ~」

まぁ、ギン姉が取られなければなんでもいいのだけれども。
なんてぼんやり思いつつ、一夏が弾にむけて声を掛けているのを、やはりぼんやりと眺めているのだった。





そうして、その翌日。

転校した街の公立中学校にて。

「それじゃ、今日は転校生を紹介しまーす。スバルちゃん、どうぞ~」

ガラガラガラ、と音を立てて開く引き戸。
渡されたチョークでカツカツと黒板に名前を書いて、と。
--Subaru Scaglietti

「スバル・スカリエッティです。よろしくお願いします」

言葉と共に一礼。うん、私ながら見事な挨拶だったと思う。

「それじゃ、スバルさんは後ろの「「あ”あ”あ”------!!!」」ひゃうっ」
「って、ぁあっ!?」

大声を上げた馬鹿二人を見て、私も思わず声を漏らしてしまう。
なんとまた陳腐な……。

「何? 何々!? また女なのっ!?」

呆れたように妙な声を漏らす私の傍ら、なにやら妙にパニックを起こすツインテールの少女が居たり。

22 Intermission 8

2012.06.12 (Tue)
「さて、こんなところか」

νG-HWS-DFFが完成して、漸く訪れた休暇。
MoonLightの皆々様は揃って地上へ下り、思い思いに地上での休暇を楽しんでいる事だろう。
今現在月光に残っているのは、交代制で月光に駐在している警備員くらい。

「休暇ぁ~、私も欲しかったぁ……」

そうして私は今現在、このMoonLightにて、漸く完成したνGのデータをレポートにまとめて、それを地上のドクターのラボに送る、と言う作業に取り組まされていた。

私も休暇が欲しいって言ったのだけれども、「やりたいといって実行したのだから最後まで責任を持つべきだと思うんだ」とか、遠まわしにネチネチ言って来たドクター。その後、「それに、この後もキミにはちゃんと予定があるだろう」とドクター。
仕方が無いので泣き言を漏らしながら、レポートをさっさと仕上げる為、月光で得た宇宙での稼動データを動画付でレポートにまとめ、地上へとデータを送信。
前回の機動実験では足りなかったデータ分は、後から宇宙に出てデータを収集。同じ挙動パターンを何度も繰り返して、最適化したデータを機体に反映。そうして稼働率が向上したデータをレポートに記載して地上へと送信。
そうやって何度もレポートを繰り返しているうちに、漸くドクターからOKが出た。

「いやったぁ!!」
『うん、それじゃ地上に降りて――いや、その前に、今から送るデータを適用してごらん』
「うん?」

そうして、送られてきたデータ。
見るに、コレはISの稼動データ?

「何これ?」
『見ての通り、ISの稼動データさ』
「いや、ISの稼動データて、νGは既存のISともNextとも規格が違うから、データの共有は出来ないと思うんだけど?」
『問題ないさ。何せこの稼動データは、νGの稼動データだからね』
「は?」

送られてきた最適化された稼動データ。
なるほどコレは重力圏内での稼動データか。確かにνGの稼動データって、宇宙以外で取ったのはあのA-10との試合のときくらいか。

「νGって、どうやって……」
『此方に送られていたデータと、月光から送られてきた資材を流用して、ね。何、此方にはキミの開発構想と稼動データ、設計図と全て揃っていたから、作るのは簡単だったよ』
「……コアは?」
『あぁ、それなら少し前に色々あってね。内の企業が少し大きくなったから、ISコアもまた配分されたんだよ』

で、聞いてみたところ、ドクター、ついにオーストラリアのIS市場を手中に収める事に成功したらしい。
何でもトーラスと共同でAMIを下した時点で、既に市場的な意味ではNC社がオーストラリアトップの座を手に入れてはいたのだそうだ。
ただ、技術的なレベルで言えば、トーラスが若干上。NCは尖った技術、もしくは汎用性としてトーラスに対抗していた。
が、AMIを下して、NCはトーラスと手を組んだ。コレを切欠に、トーラスは自らNCの元に下る事を望んだのだという。

曰く、「経営とかメンドい。開発させろ」だそうだ。

元々トーラスと言う会社は、あまりにも変態的かつ危険な技術を、望むがままに好き勝手開発していた所為で、ヨーロッパの大地を追われた組織だ。
そもそも経営には欠片も興味が無いあの組織は、要は開発さえ出来れば何でもいいのだとか。

と言うわけで、NCはトーラスを吸収。社名をN&T(ナンバーズ&トーラス)として社名を変更。トーラスはNext系開発部署トーラスとしたらしい。

要するに、現在のオーストラリアの市場を語ると、

・ナンバーズコーポ……設置社名をN&Tに変更。IS系技術を中心に、民間にも技術を下ろす大手企業
・トーラス……N&Tの一部所に。好き勝手開発して、その運用法はN&Tに押し付けている。本人達は満足。
・オーストラリアミリタリーインダストリー……最早N&Tの下請け。技術商社扱いされて、IS開発には手を出せず、IS関連の武装を開発している。Next・A-10を一機配備され、コレを実験機としている。尚、国家代表はAMI所属のパイロット。

と言う状況にあるらしい。

『因みに、此方で作ったνG2号機のパイロットは誰だと思う?』
「誰って、トーレ姉じゃないの?」
『くくく、なんとギンガなんだ』
「――は?」

え、何? 今ドクターなんて言った?

「ドクター? 如何いうこと?」
『っ、い、いや、コレは本人が』
「――本人が、何? 本人が希望したからって、ISのパイロットにしちゃったの?」

ギンねぇには、極普通の、平凡な生活を送って欲しいと、そう思っていた。
だから、そういう意味も籠めて、私は色々ドクターの利にもなるように行動してきた心算だったんだけど。

『落ち着きなさいスバル』
「ウーノ姉……」
『ドクターはギンガにISに乗る事を強要していませんし、ましてクアットロが誘導したという事もありません。そのあたりには私が見張っていましたから』
「……うん」

コレがクアットロの戯言なら信じないけれど、ウーノ姉の言葉なら信じられる。
ウーノ姉はドクター至上主義だけど、同時にとても真摯な人だ。家族を危険に晒す事は、ウーノ姉も嫌っている。
世界を改革したいのがドクター、クアットロの二人なら、平凡な生活を望むのが私とウーノ姉だ。

『ギンガはね、貴女を見ていたからこそ、自ら前に進む事を選んだの』
「私?」
『ええ……。細かい事は、通信で話す事ではないわね。貴女が此方に下りてきてから話しましょうか』
「うぬぅ」

そういう言い方をされてしまうと、今此処では怒鳴れなくなってしまう。
仕方無しに怒気を――って、あれ、私怒ってたのかな?
というかドクター、ウーノ姉の背後に隠れんな。

「それじゃ、今から其方に向います」
『ええ、待っているわ』

よし。それじゃ行こう。すぐ行こう。すぐさま行こう。秘匿ラボにカチ込もう。そして問い詰めよう。
通信を切って即座に準備を整え、駆け足でラボを出て移動。

「それじゃ、後ヨロシクね」
『アイサー、セカンドちゃん、またねー!!』

私服の下に着込んでいたISスーツに着替えて、私物をケースに入れ、それを保持。
ISを展開して、そのまま港から宇宙へと飛び出した。

減圧され損ねた空気が、気圧差から宇宙空間へと流れ出し、その流れに押されてポンと飛び出した勢いをそのまま即座に加速。
真直ぐに大気圏に突っ込んで、狙い違わずオーストラリアに突っ込む。
大気摩擦? そんなものは知らない!!

――キィィィィィィィイイイイイイ!!!!!!

と、ヤケクソで突っ込んでいたら、音の無い音と共に、機体から緑色の眩い光が奔りだした。

「……って、このタイミングでサイコフレームの共振!?」

別に隕石を持ち上げるわけでも、接触しそうな宇宙船をつなぎとめるためでもなく。
ただ単純に、此処にあるのはギン姉への愛。

――単一仕様(ワンオフ・アビリティ)<オーバーロード(νGはだてじゃない)>
・人の人たる力とやさしさ、人の心の光を示す為の力。
・搭乗者の精神力(テンション)を柱としたエネルギーの発生。
・質量、非質量問わず、ありとあらゆるエネルギーのコントロール。

……なるほど。人の意志を力とするサイコフレーム。
有る意味、魂喰いの性質を持つサイコフレームらしい単一仕様(ワンオフ・アビリティ)かもしれない。
しかも何だコレ。一度サイコフレームに変換されたエネルギーはISのエネルギーにはならない?その癖このエメラルドグリーンのエネルギー、エネルギー攻撃ならそのエネルギーを、実弾ならその慣性を食い尽くして、更にそのエネルギーを増幅。そうして増幅したエネルギーは直接的な攻撃手段に転用させる事が出来るらしい。
どちらかと言うと、ISのエネルギーを燃料として、精神を顕現させる単一仕様(ワンオフ・アビリティ)と言うのが正しいかもしれない。寧ろコレ、ISでやる必要あるのか?

「ええい、なら滾れ! 私のギン姉へのラブ☆パワー!!」

冷静になればちょっと恥ずかしい台詞を、誰もいない宇宙だからと調子に乗って大声で叫び。
テンションに呼応して、一層色合いを深める輝き。機体からあふれ出した輝きは、ISを丸く覆うように広がり、まるで流星の如く地上の待機を引き裂いて。
そうして、一切の減速を行うことも無く、だというのに機体自体に欠片もダメージが通ることは無く、νGはエメラルドグリーンの力に包まれて、一気に地上へと降下したのだった。





    ※※※※    ※※※※    ※※※※    ※※※※





「えーっと」

つまり、コレは如何いう状況なのだろうか。
落ち着け私。何時も通りCOOLに行こう。

えっと、現状。
ギン姉に抱きつかれている。
Why?
ギン姉は、言っちゃ何だが内気な娘だ。普段のコミュニケーションも、ギン姉からとってくる事は少なく、寧ろ私から積極的に抱きついていく事が大抵。
いや、はっきり言うと、向うから抱きついてきたのはコレが初めてだ。

「私、立派なおねーちゃんに成るから、ゴメンねスバルぅ!!」

え、いや、何!? どうしてそんな涙ながらに、決意の篭った表情でそんな宣言を!!??







とりあえずギン姉を宥めすかして、その豊満な胸の感触を存分に楽しみ、かつ姉の巨乳で窒息死しかけるという稀有な経験をしつつ。
漸く落ち着いたギン姉にくっつきながら、如何いうことかと説明を求めてみた。

「ギンガったらね、どうにも日常生活の中で覚醒したみたいなのよ」

クアットロの説明は相変らず意味不明すぎる。
抽象的かつ概念的で、それを理解するにはきっとIntが最低100以上は無いと駄目何だと思う。
レベル的には魔法使いのレベル30代半ば。本編攻略可能レベルである。

で、話を纏めてみた。

・ギン姉、日常生活の中で、家族と言うものについて考えた。
・姉妹、兄弟と言う存在について、学校で出来た友達を見て、学んで、考えた。
・その結果、自分は姉で、スバルが妹なのだという事は知っていた。
・改めて自分達の立場を考えて、改めてスバルに対して興味がわいた。
・で、ドクターに情報の開示を求めたところ、スバルがいかに自分の日常を守るために暗躍していたかという事をクアットロに多分に美化して語られたとか。間違っては居ないのでウーノ姉も止めなかったらしい。
・で、何かおねーちゃんとして覚醒したギン姉は、自分も一人として独立する事を目標に活動開始。
・それと同時にスバルの力になる方法を考えたところ、折角なのでνG二号機のパイロットに志願。
・IS適性は並、NT適性は若干といったところだったものの、元が戦闘機人。元々身体は自主トレで鍛えていたらしく、すぐにでもISは使える。という事で、トーレ姉に訓練をつけてもらい、ドクターからνG二号機を強奪し、自らνG二号機の稼動データ取りに協力。
・現在では学校に通う傍らISパイロットとして仕事をこなしたりと、地上で精力的に活動をしているのだとか。

「私聞いてない」
「聞かれなかったからね」

とりあえずドクターには軽く裏拳を入れておいた。何椅子から転げ落ちてるんだか。オーバーだよ。
しかもウーノ姉に慰めてもらってるし。けっ、ドタコン(DaughterComplex)め。

然しギン姉もなんというか、思い込んだら一直線と言うか。情熱的と言うか視野狭窄というか。

「うー」

まぁ、私に言えることは一つ。
おどおどしたギン姉はS心にキタが、デレたギン姉はストレートに滅茶苦茶可愛い。

……うー、ギン姉の笑顔に悶絶。
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21 Intermission 7 νG - HWS・DFF

2012.06.12 (Tue)
[やぁ、スバル。私、ジェイル・スカリエッティだ。件の代物が出来上がったので、早速キミの元に届けようと思う。最初はシドニーに先のメールと一緒に送る心算だったのだけれども、開発に少し手間取ってしまってね。で、漸く完成したのでこうして其方に打ち出したんだ。そう、VOBのIS以外への実用試験は成功だったよ。まぁ、コレは余談だったかな。]
[さて、本題だが、君の構想にあったフィン・ファンネル。コレは凄いね。BT技術を弄っている内に感じたんだけれども、コレはBT以上の代物だ。BTは精々キミの構想にあったファンネルレベルだね]
[あまり余談を長くするとキミは読み飛ばしそうだから、速く本題に入れとウーノにせかされてしまったよ]
[さて、そういうわけで開発したフィン・ファンネル(以下FF)の性能について記載しよう。
先ずFFはキミの構想どおり、ジェネレーター付きのオールレンジ兵器として開発した。BTのような蓄電式ではなく、一機一機に小型のジェネレーターがついているため、連続稼働時間はBTの数倍は保障する。この辺りはトーラスからの技術提携に感謝するといい。何せFFはBTのようなレーザー兵器とは違いビーム兵器だ。向うの粒子制御技術、及び小型ジェネレーターはとても参考になっている。
更に本体に連結している間はスラスターとして機能し、その上宇宙空間ではAMBACとして稼動する。
うん、なんとも欲張りな構想だけど、それを実現してしまう私も凄いとは思わないかね!]
[――話を戻すが、と言うわけで完成したFFだが、折角なので6機ではなく12機ほど用意してみた。キミの構想にはH-ν案やHWS案に並び、DFF案があっただろう。折角なのでそれにしてみては如何だろうか。話は先に月光に通してある。背部コネクトは既に変更してあるはずだね。それでνG-HWS-DFFへと換装することが出来るはずだ。くくく、然し面白い実験をさせてもらった。]

[そうそう、最近ウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、ギンガの5人が寂しがっている。最近此方にも新しい子が入ったし、近いうちに一度顔を出して欲しい。
――J・S]





と言うわけで、早速送られてきたFFをインストールしてみた。

「うわ」
『だから、うわは……わぉ』

そうして完成したνG-ヘビーウェポンズシステム-ダブル・フィン・ファンネル[FA-93HWS-DFF]。
その姿は、HWSの純白のドレスのような姿と左右に伸びる翼のようなFFと相まって、まるで天使みたいな――って、だから自分の姿にどんな感想をんにゃあああああああああああああ!!!!!!

『凄い、まるで天使ね』
「はうっ?!」
『!? ど、どうかした?』
「な、なんでもないです」

落ち着け私。クールだ。KOOLに成れ!!

「と、とりあえず機体性能の稼動テスト行きましょう!!」
『そ、そうね』

言いつつ、機体の向きを変える。
現在私が居るのは、月光ラボから少し離れた宇宙空間。
嘗て20世紀半ばの冷戦に打ち上げられまくった軍事衛星のデブリがわんさかと堆積していた、そしてISが登場して以降、まるで何かの鬱憤を晴らすように国際宇宙開発連盟のISの手によってデブリが駆逐された、そんな重力ベルト地帯の一つ。

現在此処に展開されているのは、私のνGと、テスト用と観測用のガジェット・ドローン一型改が数機ずつ。

『それじゃ、最初に9mmバルカンね。ターゲット射出』

ガジェットから飛び出してくるターゲット。そのあたりのデブリを採取して作られた簡易ターゲット。
それを頭部センサに横付けされた9mmバルカンで撃ち落す。
ちなみにこの頭部センサ、V字アンテナとか派手な割に、指向性ハイパーセンサーや広域レーダーなどの、マルチセンサー端末だったりと、汎用性の面では割と重要なパーツだったりする。

『OKね。それじゃ次は肩部ミサイルのテストよ。マルチロックオンシステムのテストのために、此方からもミサイルを撃つわ。ミサイルで迎撃して頂戴』
「了解」

そうして一型改から放たれるミサイルの雨。
此方のミサイルのマルチロックオン数は、最高で18点。その全てをフル活用させて、迫り来るミサイルの全てを迎撃した。
うん、ロックオンに掛かる時間も短いし、ミサイルの速度と旋回率も大体把握した。

『次は、ビームサーベルね。少し出力が調整されて、威力が上がっているらしいわ』

腰部にジョイントされたビームサーベルを引き抜き、試しに一閃。
うん、少しサーベルのレンジが伸びたかな?
試しに射出されたデコイに向かって一閃。――岩の塊のデコイが、ものの見事に真っ二つになった。
しかもコレ、断面は切断面じゃなくて溶解してる。

『良い様ね。とりあえずコレで基本武装は終わりね。次は跡付け装備よ。ハイメガライフルとハイメガシールドを展開しなさい』
「了解」

ハイメガシールドにハイメガライフルね。
正式名称はハイパーメガライフルとハイパーメガシールドね。

無言で展開されるライフルとシールド。
なんというか――想像していたよりは小さめで、少し拍子抜けした。
何せもとのイメージがでかいから。――よく接合部分がへたったし。

『それじゃ、ハイメガライフルの試射を』

言われて、飛び出してきたターゲットを撃破。
凄い、ターゲットデコイが爆破散逸したよ……。

『ダミーバルーンも一応積んであるけど、試しておく?』
「一応、お願いします」

一型改から放たれる複数のミサイル。
それを確認して、シールドからダミー・バルーンを射出。その影に隠れるようにして真横にクイックブースト。
このダミーバルーンは、本体と誤認しやすいように、一定の熱量やセンサー反応がするように仕込まれている。ダミーバルーンは地味にコストが掛かったが、高速戦闘では多分役立つだろう。爆雷にも成るし。
そうして、ミサイルは狙い違わずダミーに直撃。バルーンに設置された爆雷とあわせて、盛大に閃光を撒き散らした。

『うん、凄い威力ね。この時代にデコイとか、どの程度の物かと思ってたけど……』
「コレは使えますよ。多分ね」
『今のを見る限りそのようね。それじゃ、次はハイメガシールドに設置されてる大口径メガ粒子砲の試射よ!』

何故か興奮しているエルザさん。何を興奮しているのかとぼんやり考えていたら、不意にハイパーセンサーに何かが反応した。
巨大な質量。背後から来るそのプレッシャーに振り返って……思わず唖然とした。

「ちょ、うぇええええ!!??」

其処にあったのは、巨大な岩の塊。

『ついこの間地球圏に流れてきた流星よ。検査した結果、何の変哲も無い石ころの塊らしいから、何の遠慮も無く砕いちゃってくれて構わないわ』
「勿体無くありません?」
『ただの岩よ、コレ』
「いや、資源衛星に改造するとか、軌道エレベーターの錘にするとか」
『前者にしろ後者にしろ小さすぎるわ。その癖、地球に落ちると結構なダメージが見込めちゃうのよね。危険だから砕いたほうが安全なの』
「なる……了解。コレより破砕作業に入ります」

そうして、左腕のハイメガシールドを構える。
エネルギーの充填は展開した時点で自動的に開始され、充填は既に完了している。

「撃ちます」

一言かけてからの発射。
放たれた金色の閃光は、野太い光の柱となって巨大な石ころの中心を穿った。

ズッ、と一瞬向こう側へと押されたように動く巨大なデブリ。次いで亀裂から四方に皹が走り、そのままゆっくりとばらけ、IS程度のサイズの破片へとバラけた。

「どうです」
『いいわね。それじゃ、次は待ちに待ったFFの稼動テストとしましょうか』
「サイコミュは一応調整しましたけど、FF側の調整は未だ甘いですし……」
『まぁ、取り敢えずはテストよ。そうね、今砕いたデブリが散逸してるわよね。そのIS以上のサイズの中規模デブリを潰す、と言うので動かしら』
「それで行きますか」

小さく息を吐いて、意識を集中させる。
――思念波、サイコフレームによる増幅を確認。
――思念波のFFへのリンクを確認。
――意識領域拡大。
――カオスタスク、ファンネル一機につき複数思考を割り振る。
――FF起動。

ガチョン、と音を立てて背中の接続がパージされる。

「――行け、フィンファンネル!!」

光の帯をたなびかせて羽ばたくフィンファンネル。
12機のそれらは、奇妙な軌道を描いて、一つ一つ中規模デブリを叩き潰していく。
途中制御のぶれたファンネルが隕石に直撃しかけたが、其処は此方のカオスタスクによる制御で即座に回避。そうして、一定以上のサイズのデブリは、そのこと如くをFFによって叩き潰された。

「オマケだ!」

そうして、デブリベルトに飛散した隕石たち。それに向けて、リチャージの終わったハイメガシールドを向ける。
ゴウッ、という音と共に放たれるビームを、デブリベルトに向けて薙ぐ。
途端、宇宙に現れる赤いライン。灼熱した隕石は、そのまま発生した推力によって、宇宙の何処かへと吹き飛ばされていった。


『馬鹿火力』
「ですね。コレって一般的なISの出力を超えてません?」
『そのあたりは、NC社とトーラス社の合同開発した小型ジェネレーターの産物なんじゃない?』

まぁ、PAを装備していない本機だけど、共同開発されたジェネレーターは積んでるし。

「とりあえず、コレでテストは終了ですかね」
『そうね、後は機動テストを少しやっておきましょうか』
「あ、忘れてた……」

そうして、その後QBやOBのテストと、巡航機動や戦闘機動の簡単なテストをしてから、その日のテストを終えた。
HWSになって機体挙動が重くなるかと思ったけれども、思っていたよりは変化が無いことに驚いた。

などなど、実験結果をレポートにしてドクターに提出。
ついでに月光ラボの面々に休暇を与えて欲しいと申請。
その結果、即座に地上からOKが来たので、その結果を皆に報告。

「よっしゃ、パーティーだ!!」
「「「「「「「「「「イィィィィィィィイイイイイヤッホオオオオオオオオオオゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

「……まぁ、喜んでくれたのなら敬重なんだけどね」


20 Intermission 6

2012.06.12 (Tue)
「何を書いてるんだ?」

そうして、AMIにてA-10の技術指南を行って居る最中。
ある日、空いた時間を使ってパソコンに向かい合っていると、背後からマリアさんに声を掛けられた。

「ちょっと、νGの追加装備の開発状況の報告が来ていたので」

言って、少しだけ身体をずらしてPC画面を見せる。

「……って、それをあたしに見せてもいいの?」
「まぁ、見られて問題になるものでもないんで」

送られてきたメールは二つ。
一つはドクターから。なんでもイギリス、BT兵器のデータを渡すのを渋ったらしい。なんでも「BT兵器の技術を公開する事は、万が一にもわが国のISにとって悪手となる可能性がある」とか。阿呆だ。
当然ドクターは報復行動に出た。その手段が、BT兵器の根幹技術であるサイコミュを学会で発表する、と言うものだ。いや、それはいい。サイコミュといっても、サイコフレーム技術なんかではなくて、純水にNTに許される人の意識の拡大を機械的に察知し、それを用いた思念遠隔操作システムの基本的なところを語っただけだ。まぁ、私に――オーストラリア側には特に問題は無い。問題があるとすれば、論文の発表者の名義が何故か「スバル・スカリエッティ」そう、私になっていたこと。何でやねん。とりあえず文章を読み進めると、なんでも論文と言うのが、私がドクターにサイコフレーム開発を行うに置いて提出したレポートをそのまま論文として発表したのだとか。いやいや、高々400枚程度の文章で論文って無理でしょうに。で、結果としてイギリスは大パニック。発表されたサイコミュ技術は基幹部分だけだった為、応用であるBTに関しては大きな問題は無いらしい。イギリスは盛大に冷や汗をかいたことだろう。で、ドクターってば悪い事に、その混乱の最中にBT技術をしっかり頂戴しちゃったらしい。なんでもドクター曰くBTは「欠陥兵器」らしく、送られてきた設計データには要改良の文字が記されていた。うん、どうせFFに改造する心算だったし。

で、次。νGの強化プランの一つ、HWS用の装備が完成したので、現在パッケージ化中。近々取りに来て欲しい、とMoonLightからのメール。
HWS装備。つまり、ヘビーウェポンズシステム。汎用性及び整備性共に最高値であるνGではあるが、その欠点として汎用型パーツを多用しているため、特徴的な装備が一切――フィン・ファンネルが完成するまで――無いのだ。実際、性能的には互角どころか此方が圧倒している筈のA-10にすら負けた。ぎ、技術は拮抗してたんだからね! 勝てなかったのは手札の数で負けてたからなんだから!! ――と言うわけで、何とか手札の数を増やす為に、新しい装備の図面を引いて、それを月光で開発して欲しいと依頼していた。その結果出来たHWS。どうやら上手く言ったらしい。新たに開発されたのは、機体を覆うドレスのような追加装甲と、肩部ミサイルランチャー、ハイ・メガ・シールド、ハイパー・メガ・ライフルの三種類の武装。ビームライフルすら未完成なのだけれども、どうも小型のビームライフルより、大きいままのハイパーメガライフルのが開発が簡単だったらしい。

ふむ、コレは宇宙に上がって是非テストをしなければ成るまい。


「はー、相変らずアンタん所は色々ぶっ飛んでるわね」
「あはは、コレはあくまで私の研究成果だから、本社はもう少しマシなんだけどね」

NMSS計画とか、あくまで私個人の開発プロジェクトだし。
月光で協力してもらってはいるけれど、NC社のメインはあくまでNext計画。此方は技術蓄積のためのオマケでしかない。

「とりあえず、そういうわけで、そろそろ此処からも撤収しようかと思ってます」
「……そういえば、派遣期間ってもう終わってるんだっけ?」
「ええ。最初は半月って話でしたけど、ついつい長居しちゃいましたし」

私がこのシドニーの開発局に来てもう既に一月近く。そろそろ私も本業に戻る、丁度いい頃合だった。

「んじゃ、いっちょ盛大にお別れ会でも開きますか!!」
「マリアさん……」
「よっしゃビールだ!!」
「マリアさん……」

「そうと決まれば」と他の整備員に伝える為か、作業ブロックの方へとかけて行ったマリアさんの後姿を眺めつつ、小さく苦笑するのだった。




    ※※※※    ※※※※    ※※※※    ※※※※




そうしてその翌日。二日酔いで頭がくらくらしながらも、何とかISを操って大気圏を離脱した。
――え? 未成年の飲酒運転? ハハハ、ソレハ日本ノ法律ダヨ。オーストラリアノ法律? ワタシ学校行ッテナイカラワカンナイヨ!!

因みに、νGには単独での大気圏離脱/突入能力を持たせている。
一応宇宙での活動を想定しているISなので、そういった能力は寧ろ必須なのだ。
そうでなければ隕石の一つや二つ押し出せないしね。

「あー、此方ゼロセカンド、νG。MoonLight、コレより入港します。許可を」
『此方MoonLight。セカンドちゃんオヒサー!!』

管制官の阿呆の声と共に放たれるガイドビーコン。
何時の日か「ガイドビーコンなんか出すんじゃないよ! 死にたいのかい!!」とか言ってみたいものだと思う。
まぁ、今のところ敵対的な組織は存在していないから、多分大丈夫だとは思うけど。

とか、そんな如何でもいい事を考えていると、いつの間にか月光の港に入っていた。
港といっても小さなコンテナのような物で、ISでここを訪れる私用に博士達が用意してくれた簡単なものだ。入港を確認すると、次にエアが注入され、次いでPICによる仮想重力が展開。
ストっと音を立てて地面に脚をつけた。

「――うん? はい、セカンド」
『あ、セカンドちゃん? 博士達がNTラボで待ってるから、此方に直行する事、だって』
「あー、了解です」

管制官の阿呆からの連絡を受けて、指示通りにラボに向かって足を進める。
因みにNTラボは、私が提唱するNT論を聞いた博士達が、「それならばNT研究の為のラボを開設しよう」とか言って、月光に勝手に増設したニュータイプ研究用のラボである。

因みに余談だけど、このNT論、これまたドクターの手によって学会に発表されてしまったらしい。といっても此方はオカルトが入ったような荒唐無稽な話で、殆どの学者達には一笑に付されたらしいが。
ただ、一部の学者さんたちは私の論文を好き好んで呼んだらしく、前のサイコミュの論文とあわせ、一部で私の名前は「NT論の第一人者」として有名になってしまっているらしい。

「ハーバート博士、エルザ博士、お久しぶりです」
「おぉ、セカンド遅かったではないか、我輩待ちくたびれて放置して二日目のミルクラーメンの如きほのかな腐臭を放ち、間違って手を伸ばした瞬間訪れる天にも昇るような脳の痺れと腹を押そうおぞましいほどの腹痛に冒されたかのような倦怠感を感じたジェーンが窓を向いて窓に! 窓に! まどぐふおぅ!!」
「ゴメンねセカンドちゃん、この馬鹿はすぐ黙らせるからちょっと待ってね」

そういってハーバートを引きずっていくエルザ博士。「ちょ、待て、待つのであるエルザっ!!」あの二人は普段からそうなのだ。「ちょ、それはバール!? 何故この宇宙にバールが、ちょ、それを振りかぶってどうする心算であるかっ!!」人目もはばからず何時もイチャイチャと。見ている此方の気分にもなってほしいというものだ。「イヤアアアアア!!! バールはイヤアアアア!!! だからってサイコフレーム(鉄筋型)もラメェェ!!」此処に所属している研究員って、7割男性で、その上宇宙にあるこの研究所は出入りが制限されている。というか、簡単に出入りできないのだ。ISでも使えない限り。「あ、あ、サイコフレームの共振、光が逆流す、ウワアアアアアアァァァァァァ!!!!!」それゆえ、あの二人のイチャイチャを見てストレスを溜める研究員が増大。もう本当、そろそろ全員に地上での休暇を与えたほうが良いのではないだろうか。一応ドクターに打診しておこうと思う。

「……って、あれ? ハーバート博士は?」
「あぁ、ウェスト君なら少し休憩に行ったわ。そのうち還って来るわ」
「そですか」

何かニュアンスがおかしかったような気もするけど、エルザさんが言うならきっとそうなのだろう。

「とりあえず、出来てるアレを見せましょうかしら」
「是非」

言って、エルザさんがパネルに向かってコードを打ち込む。
と、そのコードに反応し、研究室奥にあるマルチロールコンテナが切り替わり、RX93のコンテナがガチャリと音を立ててセットされた。

ガコン、と音を立てて開放されるコンテナ。

「うわぁ……」

中から現れたのは、純白の装甲。
νGを模して作られたイミテーションの上から、まるで純白のドレスでも着飾るかのようにして纏われた純白の装甲(ドレス)。

「ヘビー・ウェポンズ・システム。構想は理解できてたから、折角だしデザインも少し弄ったわ」

女の子ならお洒落しなきゃねー、とエルザさん。
いや、確かに私の送ったHWSの構想外略図と設計図は元ネタのHWSっぽく無骨なデザインにしてましたよ。と言うのもさ、私ってばほら元男じゃん。だからさ、いまだにお洒落とかそう言うのをすると、なんとも気恥ずかしくなってしまうのですよ、はい。しかも段々身体も女性っぽくなってきてるし、何よりこのドレスっぽいHWSを見て、ちょっと嬉しくなった辺り、精神が肉体に引きずられているというか。
とりあえず。

「エルザさん……」
「うん?」
「完璧です、博士」
「光栄の極み」

違う、思わずネタに走ってしまった。

「有難うございます、エルザさん」
「いえいえ、私は私の仕事をしただけよ。デザインは……そうね、趣味よ」

などなど言いつつ、イミテーションに装着しておいた装甲をパッケージ化。
即座にνGにインストールする事に。

「セカンド、νGを」
「はいはい」

そういって差し出す左腕。
左腕に装着した純白に黒いラインの入ったバングル。それが、νGの待機状態だ。

「それじゃ、ちゃちゃっとやっちゃいましょうか」

そういって、バングルにケーブルを接続し、投影されるディスプレイに向かって猛烈な勢いで指を走らせる。
此方も此方で、フィッティングを手伝う為に意識を集中。
サイコフレームによってνGと私の接合率はかなりの数値を誇っている。こちら側からの思考操作でシステムを操作するくらいはわけない。


15分ほどそうしていただろうか。

「――っと、こんなところかしら」

不意に顔を上げたエルザさんが、にこりと口元に笑みを浮かべた。

「そうそう、少しだけどマイナーチェンジを入れておいたわ。背部ビームサーベルと腕部ビームサーベルの位置を二本とも腰部に移動させたわ。背中と腕じゃ使いづらかったでしょ」
「まぁ、確かに」

νGにはビームサーベルが二本装備されているけれども、腕部ビームサーベルなんて実質背中のビームサーベルの予備だし。

「あと、依頼の通りに四肢の構造を強化して、両腕に衝撃砲を搭載しておいたわ。でも、小型で出力も最低限しか割り振っていないから、牽制くらいにしか使えないわよ?」
「ええ。それを上手く使うのは此方の仕事です」

そう、そして漸く実装できた。
νGの両腕に実装された圧縮砲。そして強化された機体。
この時点で、漸く戻ってきたのだ。切り札、振動砲が。

「それじゃ、早速展開してみましょうか」
「了解!」

研究室の一角、実験用のスペースの中心。
そこにに立って、左腕を胸の前に構えて――。

「展開」
「――相変らず、見事な展開速度ね。台詞の最中には既に展開してるでしょ」

当然。だって台詞はあくまで気分であって、正直思念操作で無言でも展開できる。
のだけれども。そういう言葉を口にする以前に、私は思わず鏡に映った自分に目を丸くしていた。

「うわ……」
「こら、女の子が鏡に映った自分を見て、ウワはないでしょウワは」

なんだろう。鏡に映った自分は、自分で言うのも何だけれど、中々キレイだと思う。
思うのだけれども、元男である自分がそう思ってしまうのが何だか負けたような気分になって、でもやっぱりキレイな自分を見て何だか嬉しくて、でもその嬉しさがもう自分が違ってしまっているのだと自覚する要因になっていて。
ええい、何時もの自分らしく行く!! 面倒くさい事はもう考えない!!

純白のドレス装甲。ワンポイントとして入る黒のライン。
それはまるで、御伽噺に出る戦乙女の姿にも似ていて。

「いや、エルザさん、コレは「うわ」ですよ」
「そうかしら。似合ってるしきれいだと思うわよ?」
「あ、有難うございます」

――だから何を喜んでいる自分!! 嗚呼、頬に血液が!! 体温が!!

「さて、それじゃ次ね。武装の確認をしましょうか」
「はいはい」

頷いて、一度νGを格納する。
管制室へと赴くエルザさんを見送り、私自身はIS用の港へと行こうとして――。

「セカンドっ!!」
「ひゃっ!?」

突如後ろから此方へと引き返してきたエルザ博士に声を掛けられて、思わずそんな声を漏らしてしまった。
……私が、「ひゃっ」だってさ。ハハハ。

「ど、どうしました?」
「今地上からランチがとどいたのよ!!」
「は? お昼ごはん?」
「そりゃlunchよ! じゃなくてlaunch! 輸送用ボート!!」

見事な突っ込み。コレもISの普及にかけて日本語が共通語になったおかげと言うものだ。
息も荒々しい様子のエルザさん。喋るのも億劫なのか、その手に小さな投影モニターを握ると、此方へとそれを投げてきた。(本当に投げたわけではなくて、投げるという動作にエフェクトを付けながらデータを転送する最近流行のお洒落デバイス。私はあんまり使わない)
慌ててそれを受け取り、此方の画面で表示。

「って、えええ!? 嘘っ!!」

そうして其処に表示されていたのは、コの字型型の、放熱板と良く勘違いされるオールレンジ兵器。
貨物リストに記されたフィン・ファンネルのデータと、ドクター・スカリエッティの署名が記載されていた。


19 Intermission 5 Next VS NMSS

2012.06.12 (Tue)
「ちっ!!」
『おぉぉぉぉおおおおおお!!!!』

叫び声と共に吶喊してくるA-10を水平移動で回避し、すれ違い様に脇腹に頭部9mmバルカンを叩き込む――のだが、やはりPAで威力が減衰しているのだろう。網膜に投影されている戦況情報――
コア・ネットワークを介して表示される適正バリア値は、目立った減衰をみせない。

「ち、やっぱりPAは反則だ……」
『は! そのPAの上からでも徐々に削る化物に言われたくねーな!!』

失礼な。誰が化物か。
返答の変わりに再び頭部バルカンを放つが――矢張り駄目。赤いPAに阻害された弾丸は、大きなダメージを与える事が出来ずに居た。

「ち」

困った。技術的な面では同等を自負できるのだけれども、彼女のIS、A-10が完成系の量産機であることに対して、此方のνGは未だ未完成。スッピンの、ファンネルの一機も積んでいないνGでは、あらゆる局面を想定して開発されたA-10に対して聊か火力不足なのだ。

『然し、さすがだねアンタも。前は機体の性能で手も足も出なかったけどさ、今回は同じNEXT、勝たせてもらうよ!!』
「んふふ、そう簡単には負けませんよ! それと、この子はNextじゃありませんよ!!」
『え? ――そういえば、PAが無い……?』

放たれる30mmガトリングをバレルロールで回避し、その最中にSLMk2で狙撃を試みるのだが――命中はするものの、芯を外されたレーザー光は僅かなシールドエネルギーしか削れずにいる。
さすがは近接戦闘のプロ。そして国家代表選手。第三世代型を手に入れたその姿は、まさに水を得た魚。嘗てのコアラ改二号機を思わせるその挙動は、然し嘗てのそれとは違い圧倒的な機動力と破壊力を持って攻め立ててくる。

「そもそもなんですかそのバンカーナックルって!!」
『いいだろ、バンカーバスターを参考に作った装備で、殴った後に発射されるミサイルだ!!』

その言葉と共に放たれる、マリア女史の左手の鉄拳。
装甲で強化されたその拳を、咄嗟に引き抜いたビームサーベルで受け止める。――って、ビームが圧される!!

「え、AIC!? 拳を加速させてる!?」
「完全なマニュアル操作のAICはまだ無理だけどな、コマンド登録した所定の動作を補助させるくらいなら出来る!!」

慌てて後退、そのまま距離をとろうとするのだけれども、それを追撃するようにマリアさんの左腕から放たれたそれが追走してくる。
銀色の鉄の杭。バンカーナックルと呼ばれたそれは、バンカーミサイルを腕に装着した、ただそれだけの代物。でも、それこそが近接格闘戦では本当に怖い武装となる。

「ぬ、ぐ!!」

ガクン! と派手に揺さ振られる機体。バリアの上からでもわかるほど、派手に機体が揺さ振られる。
ISはPICにより飛行している。が、それは実際にはかなり不安定な飛行だ。
バンカーナックル――そのバンカーミサイルは、推力部分以外はほぼ金属で出来た純鉄ミサイル。いわば純質量兵器だ。そんなものが、不安定なISに直撃すれば――当然空中の機体はバランスを崩す。

「きゃ――っ」
『とる!!』

右手のガトリングを乱射しつつ、勢い良く此方に突っ込んでくるマリアさん。
何が恐ろしいかって、此方の射撃を何時でも回避できるように、両足と腰に遊びを作っているのだ。
例えば此方がこのタイミングでSLMkⅡを放ったとする。その途端マリアさんは確実にそれを回避してくる。ISの性能云々ではなくて、肉体を用いたAMBACで。脚と腰で産み出した回転運動で軸をずらし、こちらのレーザーを回避するのだ。
遠~中距離からの高速制圧戦闘を得意としていた私には必要の無かった技術。けれども、今現在私を追い詰めつつある技術。

もう本当、あれ本当に人間なのかと問いたい!!
というか、あんな化物が生で居るなら、遺伝子強化体とか戦闘機人の存在意義って何!?

「ちぃっ!!」
「見えた!!」

だからなんで見える!!
案の定回避したマリアさんのA-10。然しその回避先はちゃんと感じ取れている。
即座にその方向に向かってサーベルを凪ぐ。咄嗟にバックしたマリアさんに向い、更に一歩踏み込み、そのまままわし蹴りを叩き込む。

『ちっ!!』
「くそっ!!」

面倒くさい話だけど、矢張りNEXTを攻略する最も簡単な手段は、近接格闘戦に限るらしい。
今の蹴り、此方のシールドエネルギーも若干削られはした物の、今までで一番効果的なダメージを与えているのがわかる。

――のだけれども。

格闘戦を挑もうという相手は、よりにもよってIS近接格闘戦のプロフェッショナル。銃器も使うがそれはほぼ弾幕用で、基本的に格闘最強の猛者だ。
そんな相手に対して、遠近両用の汎用型、言ってしまえば器用貧乏の私が挑む!?

無理無理無理、絶対無理!!
幾らこの身体が近距離格闘に向いているとはいえ、中身はどちらかといえば遠距離オンリーで行きたいチキンな私。その上νGにある武装は背部BS、左腕BS、格納SLMkⅡのみっつのみ。

手数で戦う私には、全く手段が無さ過ぎる!

この機体には、嘗てのRAYのような超高速戦闘が出来るわけでもなし、推力と小回りこそ向上しているものの、RAYの衝撃砲は継承していない所為で振動砲も撃てない。
如何考えても火力不足!!

「――ええい、侭よ!!」

悩んだ結果、もう知るかとばかりに背部スラスターを噴射した。
どうせコレはデータ取りの訓練だ。敗北は悔しいけれど、何事も経験だ。第一、チキってはいるけれど、まだ私が近距離戦でマリアさんに敵わないと実証されたわけではない!!

「はあああああああああああああ!!!」
『いい覇気だ!! でも甘い!!』

瞬間延びるビームサーベルを、やはり殴って弾き飛ばすマリアさん。だからなんで――っ!!

咄嗟に身体を捻ってその一撃を回避する。

『おっ、AMBAC回避』
「近くで何度も見れば、そりゃ覚えもします。――それに、その拳の手品、漸くわかりましたよ」

言いながら、ビームサーベルを構えなおす。
もうあの機体にレーザーライフルで挑む気は起きない。SLMkⅡを格納し、空いた左手とあわせて両手でビームサーベルを握る。

「PPB――ピンポイントバリア。指定空間に粒子を圧縮支えて、一時的にPAを上回る粒子装甲を顕現させてるんですね。――トーラスの変態どもめ、そんなのはスペックシートに載ってなかった!!」
『当然! 何せコレは、アタシが変態技術者共に頼んで作ってもらった技術だからな!!』

なるほど納得。もうこのA-10はマリアさん専用機として大分弄られているのだろう。
いや、流通していない装備とか、A-10は本来中距離機なのに、格闘戦用にセッティングされているのを見て先ず最初に考えるべき事項だった。

ああもうと内心で唸りながら、再びマリア機に向かって吶喊。

PPBは此方のビームサーベルと同じ粒子技術。
粒子を流動させているサーベルと、粒子を圧縮固定しているPPBではPPBが幾分有利。しかしPPBは対ビーム性能こそ持つが、当たったところで普通の砲撃を当てられた程度のダメージしか入らない――それでも大ダメージなのだけれども――ハズ。此方のビームサーベルは、あたりさえすれば一撃必殺なのだ。まだ十分チャンスはある!!



-------- Side Other


「おおおおお!!!」
『く、かああああああああああああ!!!!』

気勢同士のぶつかり合い。
放たれた拳を蹴脚術でいなし、隙を作ってビームサーベルを叩き込み。
然し当然のようにそれは回避され、そのまま流れに乗って近距離からガトリングを放たれる。
そんなものに当たるわけにも行かず、即座に回避運動。今度はその隙を狙われ、再びPPBの一撃が近付く。
そうして放たれた拳を蹴脚術で往なし……と、気づけばそんな一連の動作が無限ループ。
半ば根競べのように、互いに同じ動作を、然し徐々に精度を上げて続ける。

そうして、その繰り返しが始まって、どれ程の時間がたったのか。
ドン、という音と共に、それまで互いに手のとどく距離で演舞のような動きをしていた二機が勢い良く離れた。
ついに繰り返しの均衡が解け、最後が来たのだと、その両者が、その両者を見つめる研究者達ですら理解していた。

――っ

「「りゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」

引き絞られた弓矢の如く、互いにはかったかのように揃って飛び出す二機のIS。
一つは瞬時加速による赤い光をたなびかせ。
一つはオーバーブーストによる閃光を撒き散らして。

そうしてすれ違う二機。
一呼吸遅れて、試合終了の合図が鳴り響いた。



-------- Shide Other End




「結局、相打ちか」
「いや、同じ第三世代なら勝てると思ったんだけどなぁ」
「累計搭乗時間的に、負けられない戦いだったんだけどなぁ」

リプレイに表示されているのは、互いの一撃が同じタイミングで直撃する瞬間。
超スローモーション、コマ送り、どれで見ても全く同じタイミングで叩き込まれた両者の一撃。
同時に尽きたシールドエネルギーから、結局出された判定は相打ち。

「ち、今回こそはとおもってたんだけどなぁ。ま、またそのうち戦ろうぜ。次はアタシが勝つけどな!!」
「――クス、ええ、また戦りましょう。でも、次は私も勝ちますからね!!」

ジッと互いの顔を見詰め合って、不意におかしくなって破顔して、ガシッっと腕を組んでいた。
戦いあった者同士にしか解らない共感、とでも言えばいいのだろうか。

なんだか解らないまま嬉しくなって、結局その日その後は、マリアと友好を深める事に費やしたのだった。

18 Intermission 4

2012.06.12 (Tue)
「ですから、Nextと既存のIS……まぁ、本社ではNormalとされてるんですけど、このNormalとNextの最大の相違点は、粒子ジェネレーターの有無です」
「その粒子ジェネレーターってのが今一わからんのよな。所謂一種の粒子加速器を小型化したもので、其処からエネルギーを取り出せる、って言うのはわかるんだが」
「小難しい理論は流石に此処では勘弁を。まぁ、電力を粒子出力としてチャージできる蓄電池、見たいなものです」

実際には、スターターから一瞬莫大な起電力を得、起動した粒子ジェネレーターが少しずつ減衰しながら稼動し続けると言うものだ。
起電力に比べ、粒子から得られるエネルギー利率が圧倒的であるとか。
電力で粒子をチャージしているわけではないので、蓄電器というのも少し違う気はするけれど。

「それ、ジェネレーターって名前は変じゃないか?」
「変ですよねぇ。変えよう、って言ったんですけど、私が言い出したときには既にジェネレーターで定着しちゃってたんですよ」



訪れたAMI本社。
オーストラリア政府から直接的な経済支援を受けていたこの会社は、今や独立した一つの会社ではなく、その利権の半分をNC、半分をトーラスに握られるまでに落ちぶれてしまったらしい。
私が宇宙と地上を往復している間に一体何があったのかと言うと、コレがまた情け無い話で、AMIは新型ISの開発に失敗したのだそうだ。

なんでもCBFinオーストラリアの結果を見たAMIの運営陣が「コアラは未だいける!」とか判断してしまったらしく、その結果「コアラ2式」の開発が計画。その結果できたのはガラクタ。結局、次期オーストラリア軍主力候補を競うコンペ、その第一段階で蹴落とされてしまったのだとか。

簡単に言うと、「貴様等の頑張りすぎだ!」ったのですね。コアラ1とコアラ2哀れ。

そういうわけでトーラスとNCの両者に経営権を握られ、ほぼ両者の共同出資子会社のような扱いのAMIだが、此処は何せ国営だ。それでもやっぱりしぶとく生き残る。
ISコアラの生産ラインを完全に破棄し、コンペで最優秀に選ばれた機体を量産する事になった。

――IS、Next A-10だ。

因みに製造はNC。つまりウチだ。
ドクターがネタで作り上げた渾身の一品。ジョークの心算でコンペに参加させたら、何故か採用されてしまったのだとか。
ドクターが真剣にorzしているところなんて初めて見た。

因みにコレが受かった理由だけど、
・安い
・落ちない
・バカみたいな攻撃力
の三点が最も力強かったらしい。
安くて硬くて強ーいのだ。まさに無敵である。

因みにコレが採用されるに当たってドクターが米国の某企業に連絡を取ったところ、
「版権料? 流石に請求できないね。寧ろよく此処まで見事に仕上げてくれた!」
と感謝されたらしい。うーん、世界各国に存在する変態企業。

因みにメインウェポンは30ミリガトリングガン「アヴェンジャー」だ。
まるで何処かのサーヴァントみたい……いや、そういえばセイバーって戦闘機もあったような……。

更に因みに、トーラスからはNext化されたアルギュロス改が出品されていた。ジェネレーター周りと機動性が向上したトーラスは、某管理局の白い魔王様化していた。
残念ながらコストが馬鹿げているという点が拙かったらしく、正式採用には至らなかった。
但し、その優れた技術力は認められ、技術開発に関してはちゃんと報酬が出ているらしい。
Nextも一機売れるごとに基幹技術の使用料が入るしそもそもあの会社技術者以外殆ど居ない少人数制だから、あの会社はあれで黒字運営だ。

閑話休題。

「つまり、別口の電池、って解釈はそのままなわけ。因みにコレの充電はISコアから出来るよ。ただ、シールドエネルギーの回復にプラスアルファされるから、時間が無いときは業務用コンセントをブッ挿す事をオススメするね」
「業務用コンセント……って、挿せるの?」
「規格の共通化は既に」
「完璧だ」
「光栄の極み」

何やってんだ私は。

とりあえず一通りA-10の説明を終え、コアラ2――マリアさんの下へと脚を進める。

「もう説明は終わったのか?」
「うん。といっても、技術的なところはやっぱり触ってナンボだからね」
「ふん――そんじゃ、俺の方に付き合ってもらうぞ?」
「おkおk」

言いつつ、マリアさんから少しだけ距離を置く。
マリアさん――CBFinオーストラリアで、コアラ改二号機を操っていた超絶技能持ち操縦者だ。
彼女はAMI所属のパイロットであると同時に、国家代表でもあるのだとか。
リーリン――一号機のパイロットの方はというと、マリアさんのお師匠様的な存在で、先代の国家代表だったのだそうだ。
うーん、やっぱり只者ではないと思ってたけど。

「――おい、セカンド。ちゃんと見てるか?」
「っ、あ、ゴメン。すぐ見る」

そうしていつの間にか展開されていたIS、Next A-10を前に、慌てて機体に手を接触させる。
然し、赤茶色のカラーリングって如何よ?

「――っ」

Next A-10との疑似接続を開始。
NMSS、νGによる中継、接続補助。
――リンク形成完了。ステータスチェックを開始。

「――ふむ。なるほど、確かに少しズレが有る」
「だろ? 多分だけど、ISコアのほうが追加されたジェネレーターをちゃんと認識できてないんじゃないかと思うんだが」
「ふむ?」

――ISを経由してフォトンジェネレーターへアクセス要求。
――アクセス要求の拒否を確認。ブラックウォールを確認。

「あちゃぁ」
「解ったのか?」
「多分ですけど、ジェネレーターの方に設置されてるブラックボックスですね。コレに引っかかったのかと」

量子ジェネレーターは、いわばNextの基幹技術の一つだ。
量産する以上機密確保は難しくなる。そのため当然ブラックボックスの設置は必須。
然しまさか……ISコアにすら読み解けないブラックボックスを設けるとか。トーラスは何考えてるんだか。
アレか? 篠ノ之博士対策かな?

科学者達の御伽噺。ISコアの解析、進みすぎた技術の開示、篠ノ之一派へのチョッカイ。以上の行動を取った、ないし取ろうとした存在は、謎の魔手により社会から物理的に抹殺される。
――業界の御伽噺ですよ……。
とか。如何考えても某兎の仕業です。
アレに臆したか、または兎側に情報が抜ける事を恐れたか。まぁ、どちらにしても面倒極まりない事態であることには変わりない。

さて、どうした物か。
セキュリティを外す――のは少し問題がある。流石に此処まで隠しているものを、私の一存で公開してしまうのは拙いだろう。

それじゃ、どうするか。ISコアを誤魔化すしかあるまい。

リンクを通してISコアに語りかける。
――コレは異物ではなく、新しいあなたのパーツ。中は理解できないかもしれないけど、効果はわかるでしょう。つまりコレはそういうものなのだと理解出来ればいいのだから。

理解しようとして出来ないから、ISはジェネレーターに対して拒絶反応を示す。
なら、そもそも理解しなければいい。それだけの話。

「よし、コレでなんとか。後は回数こなしてやれば、ISのほうも次第に馴染んでくるかと」

なんとかISコアを説得して、ジェネレーターへの異物感を堪えてもらう。
まぁ、コレでも駄目ならそのうちジェネレーターの問題に関してトーラスに相談しなけりゃならないんだけど。
うん、でも不思議だ。今までジェネレーター搭載型に関して、こういったトラブルは報告されて無いんだけどなぁ?

――――――、――――。
「――あぁ、なるほど」

考えていたら、νGから思わぬ返事が返ってきた。
なるほど、あの超絶的な細やかな操縦者と共に有ったISコアだ。その操縦者同様細やかな技術に傾倒しているのは理解できる。
ましてマリアさんは前衛職。自分の体に違和感があれば、その原因は確りと調べるべきだ。そしてそれは彼女のISも――。つまり、そういう事なのだろう。


「うん、なるほど。ちょっと違和感がマシに成ってきたな」
「ですか。まぁ、その子は貴女に似てとてもいい子です。良く馴染ませれば、きっと凄い子になりますよ」
「い、いい子て……まぁ、いいさ。そうだセカンド、折角だから模擬戦していかないかい?」

この子の慣らし運転に丁度いいだろう? とマリアさん。
うーん、地上での性能試験はそういえばやってなかったなぁ、と。
現在のISの主戦場は、やはり地上。一度くらいはちゃんと地上でもやっとくべきか。

「よし、それじゃやりましょうか」

言って、IS νGを展開する。
モノクロの装甲に、顔を覆うバイザー。何より特徴的なのは、額から伸びる金色のV字アンテナ。

「――なんか、前のと大分違うな」
「うん。RAYは前のあれで大破したからね。今回のはうちの――特に、私の持てる技術と知識と発想を全てつぎ込んだ、汎用型の第三世代IS、規格名はNMSS。νG!!」
「――あぁ、νガンか。Nextじゃないのか?」
「うん。NMSSって規格で、こじんまりとやってます」

どうやら知っているらしい。オーストラリアのジャパニメーション汚染は結構酷いのかもしれない。

「然し、FF(フィン・ファンネル)が無い様だけど……?」
「現在イギリスと交渉中。BT兵器を入手次第、調整してとっつけようかな~って」
「ふむ。あの国は溜め込みはするけど、放出は滅多に……。まぁ、期待してるよ」

そうして、二機揃ってゆっくりと試験用アリーナの中央へと移動する。
ワクテカする研究者達は空気を読んだらしく、資材一式をガラガラと引きずりバックヤードへ。

それを確認しつつ、アリーナの中央で滞空して互いに構える。
此方の手にはSLMk.Ⅱと楯。
相手の手には、30mmガトリングガン一丁。

『それでは、コレよりIS、Next A-10対、IS、NMSS νGの試験戦闘を開始します』

そうしていつの間にか司会席に座った研究者の一人が、威勢よく声を上げる。
全く、こういう時だけノリノリになる。いいんだけどさぁ。

『ISファイト、レディィィィィィィィ、ゴオオオオオオオオオォォォォオォォォオオウウウ!!!!!!!』

「まって、それなんか違う!!」
「おぉぉぉぉお!!!!」
「ちょ、えええ!!??」

思わず司会に突っ込みを入れて、けれど問答無用で攻撃を開始するマリアさんに圧されて。

「ええい、もう知らん!!」

とりあえず、試合に集中すべくライフルを撃ち放つのだった。


17 Intermission 3

2012.06.12 (Tue)
とりあえず、νG開発に関して、私が関われる段階は此処まで。
フィン・ファンネルの開発については、私は門外漢過ぎて手のつけようが無い。

オールレンジ兵器に関する情報はまだ此方にも無いらしく、現在ドクターがイギリス政府と交渉してBT兵器の一部技術を寄越してもらう、とか何とか。
そんなことが可能なのかと聞いて見たところ、サイコミュのツケがあるから、それで何とかできる、とドクター。

――さすがドクターやるときはやってくれる!

とか褒めてみたら、その背後のウーノ姉がドゥーエの努力の賜物です、とボソッと。
うーん、ドゥーエ姉か。あの人なんでも出来るな。百面に次ぐ百芸――いや、百技。ネギま世界に転生とかだったら、きっとパクティオーカードは『千の~』シリーズだろうね。

ドゥーエ姉スゲーとか言ってたら、画面の中のドクターが少ししょぼくれていた。まぁ、気にしないことにして。








さて、本日の目的。それは、近いうちにドイツで開催される第二回モンド・グロッソに備え、オーストラリアの代表選手のISを調整する、と言うものだそうだ。
なんでそんな仕事を私がしなければ成らないのかとドクターに問い詰めたところ、「ウチのIS第一人者といえばキミだろう」との事。

んな馬鹿なと突っ込みを入れはした物の、その後NCの社員の皆さんにいかに私がISに関して造詣が深いか云々と語られてしまった。
おかげで耳が真っ赤だぜ!!

「いや、確かに整備系技術ならドクターに勝ってるかもしれないよ。RAYみたいな機体を操っていただけ合って、ISの制御系を全部マニュアルでやれっていわれても、第二世代を最低限動かすぐらいなら完全マニュアルも可能だけどさ……」

戦闘機人の躯って、何気にチートだと思う。情報端末にはアクセス出来るし、人間の致命的損傷とか、戦闘機人ならパーツ交換で済むからね。
そのおかげで、まぁISに繋がるだけで、ISの問題点とかは大体わかる。その能力が転じて、問題点の解決策を考える、と言う能力の養成に繋がったわけなのだけれど。

「然しドクターめ、VOBの一機くらいくれれば良いのに」

ケチケチしやがって、とぼやきながら、オーストラリアのはるか上空を弾道飛行で通り過ぎる。
ISνGは、その速度こそRAYに劣るが、汎用性や全体的な能力は、RAYどころか既存の第三世代の中でも間違いなくトップだろう。
現在搭載している武装はビームサーベル2本と、イギリスが量産販売しているレーザー兵器のスターライトMk.Ⅱが一丁。
最低限の武装しか積んでおらず、フィン・ファンネルも搭載していないνG。けれども、この時点で既に列強に並ぶと自負している。

そんなνGで、今現在オーストラリアはシドニーに向けて弾道飛行を行っている理由。それは、私が調整するべきISが、オーストラリアはシドニーに置かれているからだそうだ。
何せNC本社はまだしも、ドクターのラボはオーストラリアの広大な砂漠の地下を移動する地下移動要塞なのだ。それが偶々オーストラリアの西端にきていたものだから、何時ぞやのCBFの如くオーストラリアを横断擦る羽目になったのだった。

しかも、何を考えたのか博士め、「折角だからVOB無しで行ってごらん」とか言い出した。
博士め。NMSSの性能を知りたいのかもしれないけど、既得データは既に全部NC本社に投げているだろうに。

「――っと、あ、そろそろ着くかな」

網膜に表示されるGPS地図。其処には、猛烈なスピードで近寄る目標地点のマーカーが映っている。
そろそろ制動をかけないと、と判断して、即座に機体正面を大空に向け、仰向けの体勢で制動をかけた。

轟音を立てて放たれるスラスターの噴射音。
砂塵を撒き散らしながら、速度を落したνG。そのまま速度を大体時速100キロほどに制限して、そのまま地上伝いに、シドニーへ向けて進むのだった。

――あ、トラックの運ちゃん。いえいえ、ISは公道走ってもいいんですよ。飛ばないのかって? 街中で飛んじゃうと大問題なのですよ。え、「目の前を飛ばれると逆に怖い?」我慢してよおっちゃん。もう街も近いし加速もできないしさ。……え、乗せてくれるの!? ラッキー!! アリガトおっちゃん!! ……え? 「IS乗ってるくせにトラックに乗って喜ぶんだな」? あはは、それもそうだね~。

などなど、少し想定外の事態もあったものの、のんびりとシドニーへと向かったのだった。






    ※※※※    ※※※※    ※※※※








さて、そういうわけでシドニーは約束の喫茶店へと訪れたわけなのですが。
指示されたとおり何時ものフェイスガードで顔を隠してサンドイッチを貪っていると、不意に日に影が差した。

「えっと、このあたりに――って、げっ、お前は!?」
「うん――?」

見上げると、其処に立っているのは、少し癖の有る赤毛の、一見軍服のような制服に身を包んだ女性。
全体的に猫っぽい女性だな~と考えて、ふと記憶にヒットする人物が一人。

「あー……もしかして、コアラ2?」
「ゼロセカンド!! じゃぁ、派遣されてくる技術アドバイザーって!?」

つまりは、そういう事なのだろう。

「……えーっと、NCから派遣されてまいりましたゼロ・セカンドです。AMIからのお迎えの方……で宜しいですかね?」

まぁ、取り敢えずはお仕事を果たす為に、そして円滑なコミュニケーションの為、とりあえず挨拶をしてみるのだった。

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