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17 閑話4 Hidden "Move the World"

2012.07.21 (Sat)
「――以上が、我々が提示する魔法使いの存在と、それらによって予想される世界的(経済)損失、およ起こりうる混乱の予測シミュレーションです」

ミズチの言葉に、議会が完全に沈黙する。
それまで魔法を「妄言の極み」「空想の産物」「寝言は寝ていえ」などと、当に魔法と言う言葉に対する拒絶反応として何の面白みも無い反応をしていた議会の面々は、然し顔を真っ青に染めて。
最早この議会でまともな顔色をしているのは、我々UHBのメンバーか、もしくは事前にUHBから事情を通達されていた幾人彼の信用の置ける面々のみとなっていた。

現在我々は、コスタリカで行われている秘匿された国際議会へと参加していた。
いや、国際会議といってもオープンなものではなく、国同士の黒い部分を話し合う“表には出ない歴史”というやつか。それを話し合う場所に我々は立っていた。

目的は至極単純。国連という組織を介して、未だ“魔法”と言う未知に対して無防備な世界に警告を発するというモノ。

当然最初は紛糾した。
何せ我々ガキが表に出て、『魔法の脅威について』なんて訴えだすのだ。
はて今日はこんなゲストが予定されていたか、なんて呟いたどこぞの国の参加者の言葉には思わず笑ってしまったが。――因みに、その直後に幽香に脇腹を殴られた。

そこで、先ず最初に行ったのが、魔法使いの活動に関して撮影された動画。
中南米、南ヨーロッパその他扮装地帯など、世界中で活動する魔法使いたちの存在。
例えば石油問題に際して“大国の命令に背く悪の国家”を攻撃する魔法使いがいれば、逆に“大国に脅され賢明に抗う人たち”に味方する魔法使いたちもいる。

彼等の熾烈な争いは、時に魔法による暗殺が行われたり、時に剣士により町が血の海に染まったり、最悪町が地図から消えることも多々あったそうだ。そんなとき彼等はその地域に人払いの結界を張ることで、自然に人々からその町の存在が忘れ去られるまでその場所を放置するのだ。

そんな、実際に行われた動画。衛星からの撮影物と、サーチャーから撮影したもの。
然しやはり人間というモノは、自分の常識から外れたものは、映像を見た程度では信じられないらしい。

「そんな映像は作り物だろう!!」
「ならば、コレなどはどうです?」

そう言って、薄く虹色に輝くシューターを一つ発生させる。

「これは、彼等魔法使いが使う魔法とは少し違いますが、コレもまた魔法と呼ばれる技術です」

そう言って、シューターをそのどこかの国の代表者に近づける。彼はそれに半信半疑で指を触れ、なんとも言い難い表情でシューターをツンツンとつついていた。

「それとも、あなた方にはコレなんかがいいんじゃないかしら?」

そういって幽香が取り出したのは――あぁ、年齢詐称薬ね。
幽香が赤い飴玉を舐めると、途端に10歳の少女は20歳ほどの美女へと変身した。

「「「「「「「「「「(ガタッ!!!!!!!!!!)」」」」」」」」」」

いや、オッサン反応するなよ。
「因みに、コッチの蒼い飴玉だと若返って見えるのよ。
そう言って幽香は、国連議会代表の女性の虚をつき、いきなりその飴玉を飲ませた。
ポンッ、という音と共にあふれ出す煙。それが晴れた後には、それまで其処に居た悩める老女は消え、艶かしく悩む美女が一人。

「「「「「「「「「「「「「「「(ガガタッ!!!!!!!!!!!!!!!)」」」」」」」」」」」」」」」

今度は女性の大半が反応しやがった。
「そ、それは実際に若返っているのかね?」
「いえ、残念ながらこれは実際に若返っているわけではなく、一時的にそういう幻術を見せているだけです。――まぁ、現実を騙す幻術ですし、実際に若返ったのと大差ないかもしれませんが」
魔法使い連中は、こういう技術を自分たちだけで独占し、逆に此方の技術は税関も糞も無く勝手に持ち出してるんですよー、と。
もうね、「独占している」って言った次の瞬間の、女性陣の視線の恐いこと恐いこと。俺が人間止めてなかったら、きっと漏らしてた。

「あとは……こんなのとか」

そういって、手近な椅子を一つ中に持ち上げる。
その椅子は、パイプ椅子に分類されるものではあるが、さすが国連議会に用いられるものだけあって、パイプ椅子ながら中々豪華かつしっかりしたつくりになっている。
そんなパイプ椅子が突然宙に浮く。コレだけで周囲はおぉと声を上げて。
――でも驚くのは未だ速い。
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキ!!!!!
「?!」
突如として鳴り響く異音。それと共に彼等の視界に映るのは、突如としてその形をぐしゃぐしゃに丸められ、次第に小さくなっていくパイプ椅子。
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキ!!!!!!!!
そうして徐々にパイプ椅子は原形を失い、最後には丸められた金属の塊が一つ。

やった事は至極単純で、パイプ椅子を重力結界で押しつぶしただけだ。
因みにコレ、管理世界では質量兵器扱いらしい。俺はアルカンシェルの重力制御部分を解析編纂しただけなんだけどなぁ?

「魔法の利点は、学べば誰でも扱える、杖さえあれば携行火器など目じゃない火力を保有できる。不都合があれば周囲の記憶を書き換えられる――まぁ、若干大げさに言っている部分もありますが」

――他にも、他人を呪ったりすることも出来るのです。あなたの知り合いの政治家には居ませんか? それまで積極的に活動し、何かの法案を通そうとしていた誰かが、急に事故・事件・病気に見舞われ、不意に政界から追い出される、なんていう経験は。

そんな此方の言葉にゾッとした顔色をする面々。

――たとえば、あなた方の周りには居ませんか? それまで何かを調べ、必死になっていたというのに、ある日ふと顔を見れば、まるでそれまでのことを忘れたかのように振舞う誰か。――いえ、あなた自身にもそんなことに身に覚えはありませんか?

もう既に議会は、表面上こそ静かな物だが、その内側は完全な恐慌状態に陥っていた。

――そう、このタイミングだ!
「(カズ!)」
「(応よ!)」
――ギガジャスティス!!

静かに、しかしタイミングを狙って放たれた、全体魔法無効化呪文。
俺から送られる魔力によりブーストされたその呪文の波は、即座に会議場の全域を覆いつくし、議員たちに大きな影響を与えた。
……実は、この議会の参加者の大半が、魔法使いによる記憶改竄を受けたことのある人間だ、と言うことが、事前の調査で判明していた。それも、割とつい最近に。
さすがは政治の深い部分にいる人間。魔法使い達が狙うには、丁度ねらい目の人間なのだろう。
なにせ彼等を抑えてしまえば、一度に多くの影響を世界に与えられる。自分達にとって都合のいい影響を。
ある者は顔を青ざめさせ、ある者は怒りに震え、ある者はこの世の終わりに出くわしたかのような顔をした。

――大勢は今、我等に在り。

「――我々は、如何しても今の世の中、魔法使いによる法の裏側からの支配が許せない。彼等が其々住まう国、其々の国籍を持ち、其々の国家の法律に従うのであればいい。然し実際は如何でしょうか。彼等は魔法と言う力に胡坐をかき、自らを“魔法使い”という優等種と呼び、魔法を使わない人間を蔑む。――なるほど、偉く傲慢な連中だとは思いませんか」

ミズチの言葉に、ほぼすべての人間の意志が、今一つに纏まっている。
それは怒りだ。

「いや、それはいい。魔法使いなど言っても要するに他人だ。彼等は所謂“魔法の世界”の住人なのです。勝手に魔法で殺しあおうが、奴隷を作ろうが、自分個人としては勝手にしろといったところです。――然し、彼等は我々の、この魔法の無い社会に対し、魔法を持って裏から手を伸ばしているのです」

本来なら、此処に国家利益を考える人間も混ざっている筈だ。しかし、今このとき、此処に限ってはそれが存在しない。
なぜならば、此処に居るのはその大半が魔法使いによる記憶改竄を行われた人間だからだ。
記憶の改竄というのは、言葉ほど簡単なものではない。

「魔法というモノが社会的に認知されていない現在、彼等にとってこの世界は、自らを縛る法の無い犯罪天国。例え魔法使いの国で罪になる出来事でも、この世界でならばなれないうちは、勝手に証拠隠滅をしてしまえる。目撃者が一般人なら、その記憶を消してしまえばいい。残念ながらこれはそう簡単に見つけられません。何せ此処は、魔法が知られていない世界……いや、魔法が隠されている世界なのですから」

人の人格を形作るのがそれまでの経験であるのだとすれば、記憶を消すというのは、人格を殺すという事に他ならない。ましてや彼等は実際にそれをされて、今その欠けた欠片を取り戻したのだ。失っていた物を取り戻したからこそ、失っていた時の異常をより明確に感じられるのだ、とか。

「――そこで、我々は、魔法使いに対抗するため、国連と共に国際対魔法犯罪鎮圧部隊を設立します」

そうして映し出されるIS、イノセントストライカーの映像と、現れる実機。

「彼等の“魔法”技術に対抗するため、我々の“魔導”技術により生み出されたこれらは、魔法の才能を持たない人間にも十分に扱える『武装』です」

現在生産中であること、国連部隊を中心に配備を進めていること、また、これらを魔法の関わらないあらゆる事象に使わない限り、各国に少数ではあるが供給する準備があること。
その言葉に、各国の代表は目を光らせた。
本当、政治家って凄い。怒りに我を忘れていても、国益だけは忘れないとか。

で、そんな政治家連中にISという餌をちらつかせつつ、国連の独自部隊の保有やら独自拠点の新規建設をさらっと通したみずちはもっと化物だと思う。

「また、それと同時に国連では国際法として魔法犯罪に対する国際法の提議を行いたいと思います。何かご質問・意見のございます方は今よりどうぞ」

委員長のその言葉に、質問が上がる事は無く。

「――無いようでしたら、採決を取ります賛成の方は拍手をお願いします」

その言葉に、広い議会場に拍手の爆音が鳴り響いた。







Side MAHORA

「うむぅ……これは……」
「………」

日本は埼玉の某所。麻帆良学園と呼ばれる巨大な学園都市の一角にて、二人の男性が唸り声を上げていた。
一人はメガネをかけ、未だ若々しいその姿に何処か寂れた雰囲気を醸し出す青年。
もう一人は、本当に人間化も疑わしい、異様に長い後頭部を持った、大陸の仙人と言われれば信じてしまいそうな容姿の老人が一人。
彼等は高畑・T・タカミチと、近衛近右衛門、それぞれ麻帆良学園のトップと、麻帆良の最大戦力と言う2人だ。

「世界各国の先住魔法使いらの失踪、のう」

そう、現在彼等を悩ませている自称は、先住魔法使いの失踪と言う事柄。
彼等西洋魔法使い――とよばれている精霊魔法使い――は、その規模が大きく、魔法世界は勿論、現実世界の全域にその支部を点在させているのだ。
しかしならば魔法=西洋魔法かというとそうでもなく、元々土着の魔法と言うのは数多く存在する。
例えば日本の陰陽道、例えば大陸のタオ、例えばネイティブアメリカンの祖霊崇拝、例えばドルイドのルーン、etc,etc.
そういった先住魔法使い。彼等が、次々とその数を減らしているというのだ。

例えばこれが組織同士の抗争だというのならそれもわかる。しかし実際は、組織同士の抗争どころか、その組織同士がある非忽然と姿を消しているのだ。
その中には、魔法世界側の支配を渋々受け入れさせられたような組織も存在し、そういった組織は魔法世界側の組織に“保護”される対価として、その“代価”を魔法世界側に支払わされていたのだ。
そんな、魔法世界側にしてみれば、貴重な外貨の収入源が、忽然と姿を消したのだ。

「どうやら関西呪術協会でも同様の事柄が起きているみたいで……」
「うぬぅ……婿殿は……」
「既に呪術協会の6割が姿を消しています。残りの4割は比較的こちらに協力的な組織か、もしくは極端なまでの右寄りな組織で……」
「…………」

現時点で未だにこちら側から接触が取れるのは、どこもそういった組織ばかりだ。
現在西洋魔法使いが所在を掴んでいる魔法組織の大半は、西洋魔法使いに対して協力的であるか、もしくは自分たちの領土を犯されたと魔法使いに対して極端に敵対的な組織であるか、だ。

西洋魔法使いたちは世界中に点在している。その勢力は莫大ではあるが、しかし同時に脆弱なものでもある。
何せその本体基盤は魔法世界という異世界に存在するのだ。
麻帆良のように巨大な、それこそ一つの小さな経済基盤を持っているのであれば別として、そのほか世界に点在する各地の拠点は、大抵の場合現地の先住魔法使いを“保護”し、その“代価”で運営を維持していたのだ。

――それら運営資金が、唐突に途絶えたのであれば。

「……これは、少し拙いかもしれませんね」

現実世界で最も大きな西洋魔法使いの組織は、間違いなくこの日本の麻帆良と言う組織だ。
であれば当然、弱った他の支部への支援は、この学園都市から出すことを要求されるのは間違いあるまい。
いや資金だけであればまだ良い。然し、此処から他所の治安維持のために戦力まで取られると成れば話は変わる。
この麻帆良が大きな戦力を持っているのには、当然他に理由が存在する。
それが、この麻帆良に存在する“世界樹”であり、それを強奪する為に魔法使いを倒そうと襲い掛かってくる先住魔法使いたちと戦う為の貴重な戦力なのだ。

「ただでさえ、最近結界の調子も悪いというのにのぅ……」
「今戦力を取られるようなことになれば……」

この麻帆良を被う“麻帆良大結界”は、外敵の侵入を拒み、内なる魔を弱める破魔の力を持つ。しかし、その麻帆良を守る麻帆良大結界が、近年その力を弱めているのだ。

麻帆良大結界の維持は、その魔力の供給源たる世界樹、世界樹の根元に存在する魔力溜り、その魔力を引き上げる麻帆良大結界魔法陣、そしてそれらを制御する麻帆良大結界制御システム。
他にも細かなシステムが多数存在し、それらによって麻帆良の結界は十全に保たれている筈なのだ。

「(おかしいのぅ、エヴァも居るし、此処まで術式がブレるなどという事はありえん筈なのじゃが……)」

このとき、近衛翁は麻帆良の頭として、そこに囚われの囚人をこの結界のシステムとして利用していた。
囚人とは、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。嘗て英雄と呼ばれた人間に、光の中で生きてみろと此処に連れてこられた古の魔王だ。

麻帆良大結界の大元たる世界樹。その魔力は時間によって変動し、23年周期で活性化と不活性化を繰り返す。
そうしてその不活性化の時期は、当然ながら麻帆良大結界の出力は弱まってしまう。
本来であれば、コレの対策として内に存在する敵味方問わずの魔法使いから強制的に魔力を徴収することで結界を維持するのだが、近衛翁はこの徴収システムの対象をエヴァンジェリンに限定することで、彼女の魔力を封じると共に、彼女を麻帆良大結界の補助動力としていたのだ。
――彼女に無断で、ではあるが。

「(エヴァが術を解きおったのかの? もし気付いてやったんであればこちらに怒鳴り込んできておるじゃろうし、という事は何か無意識の切欠という事に成るんじゃが……。はぁ、どちらにせよまた術を掛けなおさねば成らんのであれば、面倒じゃのぅ)」
「学園長?」
「ほ――あぁ、すまんのタカミチ君。そうじゃのぉ……元老院側から派遣されてきた者らを派遣する、というのでいいじゃろう」
「彼等が納得しますか?」
「ええじゃろ、彼等とて“立派な魔法使い”の修行のために現実世界に来とるんじゃし、あちらなんぞ当に“立派な魔法使い”のための活動の場としてはうってつけの場所じゃろう」

麻帆良学園都市は、その最大規模の都市であると共に、最大規模の戦力を有し、またどうじにある程度以上の実戦経験を積める場所である為、麻帆良の名は元老院側では一種のブランドと成っている。
トップが近衛翁と言うことも在り、絶対的な実力者に守られたその土地で修行することは、MMの人間にとっては一種のステータスになるのだ。
此処で重要なのは、“近衛翁という実力者に守られ、絶対安全かつ適度に実績を築ける”という事。
麻帆良の外に出てしまえば、近衛翁の庇護など当然無い。ステータスを得る為だけに元老院から派遣されてきた彼等が、近衛翁の補助も無く、まして麻帆良ほど設備が整っている筈も無い拠点へと飛ばされる――当然、易々と受け入れられるはずも無い。――が、『立派な魔法使いへの修行の為』という建前がある以上、彼等にそれを断る事も実質不可能なのだ。
そんな事を知ってか知らずか、この老人は平然とそんな事を言うのだ。言われる側にしてみれば、このジジイを縊り殺したくて堪らないだろう。実力的に無理だが。

「――で、タカミチ君。君はこの失踪した魔法組織を追ってほしいんじゃ」
「了解です。それでは、とりあえず関西呪術協会の周辺から?」
「うむ――ただ、くれぐれも注意しておいてほしいんじゃ。何せ失踪した先住魔法組織の中には、西洋魔法使い以上に戦闘に向いた魔法を扱う連中もおった。彼等が消えた以上、もしかするともしかするかもしれん」

力を持った組織を押さえ込める以上、それ以上の力を持った存在が要るかもしれない。
そんな予想を旨に警告する近衛翁。
それに頷いたタカミチ青年は、即座にそのまま学園長室を後にした。

「本当、何事も無ければいいんじゃがのぅ……」

長い動乱を生きる近衛翁には、その不気味な予兆が、争いの前触れに感じられ、どうにも不安な日々を送るのであった。
まぁ、完全に自業自得ではあるのだが。


Side MAHORA END
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16 閑話3 ウェールズその2

2012.07.19 (Thu)
一度目の跳躍でブリテンへと移動した我々は、そのままミズチから得た座標データを元に、ウェールズの山外れへとジャンプする。

「ところで、ナギの息子というのはどういうガキなんだ?」

とりあえず気分転換にと、目に見えた喫茶店で適当に食事を取る最中、不意にエヴァがそんなことを聞いた。
やっぱり懸想相手の息子。少しは興味もあるのだろう。チラリとリインに流し目で合図する。
と、何処からとも無くメガネとファイルに仕舞われた紙片を取り出す。
メガネは勿論インテリっぽい雰囲気のトンガリメガネ。まさしく秘書さんだ。

「ナギ・スプリングフィールドの子息、ネギ・スプリングフィールド。魔法の容量では、西洋魔法使いの歴代でも十指に数えられるほどの持ち主。現在はメルディアナ魔法学園で保護をかねての勉強中。得意属性は光、雷、風」
「ふむ。なるほど奴と同じ属性だ。が、アレの息子が学校なぁ?」
そういって訝しげに呟くエヴァ。まぁ、ナギ・スプリングフィールドを知るエヴァにしてみれば、その息子と学校という単語の似合わなさに疑念がわくのも分る。
……だが、ナギの息子はナギではないのだ。
「二人目が、ニーギ・スプリングフィールド。同じく高い魔法の才能を持っていますが「まてまてまてまて!!!」……はい」
不意に声を上げるカズに、リインがどうしたのかと首を傾げてみせる。

「ナギ・スプリングフィールドの子だよな?」
「はい、そうです」
「……双子?」
「正確には、五つ子ですが」
「「「はぁっ!?」」」

リインの言葉に目をむく二人。そののギョッとした様子、わかる。分るぞその気持ち。
でもな、その感覚は特に俺達のような、原作知識もちには尚更驚愕の事実となるのだ。

「……五つ子」

呆然とした様子で呟くカズ。そりゃそうだろう。よりにもよってスプリングフィールドの血が5つ子とか。
しかも最悪なのは、そのうち4人――ネギ以外の全員が転生者なのだ。
転生者――つまり、俺達と同じ『予言』を持つ人間なのだ。

「話を再開しても?」
「あ、ああ。止めて悪かった」
「いえ――次男ニーギ・スプリングフィールドは、兄に比べとくに制御面で圧倒的に上回り、魔法の射手で長距離精密狙撃をこなすとか。得意属性は風、水、氷」
「大量破壊が得意なナギとはまた違うタイプだな」
「似ている、といえば三男が一番近いかと。ヌーク・スプリングフィールド。技術を捨てた完全魔力押しで、ネギ・スプリングフィールドをも圧倒的に上回る魔力を持ち、アンチョコ片手に魔法を乱発するそうです。属性は光、風、雷」
……きっと、魔法の才能はあっても、あのギリシア語だかラテン語だかの呪文詠唱に馴染めなかったんだろうなぁ。
「4人目が、……アリサ・スプリングフィールド」
チョットだけ言いよどむリイン。まぁそれも仕方が無い。俺も資料を見たときに吹いたのだが、モロにバーニングな少女の容姿なのだ。
「魔力量は兄妹の仲では最も劣りますが、それでもナギ・スプリングフィールドレベルの魔力です。殴られたら殴り返すを信条とし、武者修行に魔法世界へ。然し現在、MMのゲートポートを最後に消息不明。得意属性は炎・風」
「ほぉ、行動を除けば……気概としては、コイツがナギに一番似ているかもな」
「うん。ナギっぽい」
俺達にしてみれば、アリサっぽいなという感想になるのだが。
因みに頭に関してはニーギに次いで優秀だったらしく、特に政治的・軍略的な能力が高かったとか。

「最後がエリカ・スプリングフィールド。魔力は長男と同等ですが魔法センスは並。但しアリサに並ぶ政治・軍略センスに加え、高い商才をもっているそうです。なんでもまほネットのやり取りで彼女の資産は兄妹を圧倒的に超越しているとか。そして彼女もまた、アリサと共に魔法世界で行方不明となっています。得意属性はアリサと同じ火、風に加え、光」
因みに彼女の特技は、背景にバラを出現させることで、必殺技の前には必ず「お嬢様」を付ける。
「良美ちゃんは何処だああああっ!!!」
……あぁ、カズは元ネタ知ってるのね。多分彼女も幽香と同じナリキリ派の人間なのだろう。
因みに良美ちゃんは発見できませんでした。俺としてはほっとしてるけどね。元祖ヤンデレテラコワス。

「然し……アリカ姫、頑張ったなぁ……」
「下品」

バチコーンと吹っ飛ばされるカズヒロ。アスナちゃん、瞬間的に咸卦法を発動させた上、無音拳をぶっ放しやがった。いや、それ一般人にやったら死ぬからね!?
というか、なんで其処まで戦闘スキルが上がってるの?

「……あのウザイの対策にエヴァに教えてもらった」
「仕方あるまい。あれの被害者の気持ちは、ワタシも理解できる。できてしまう」

そういってどんよりと落ち込む二人。あー、拙い拙い。
「ほら、とりあえず紅茶でも飲んで。リラックスリラックス!」

因みにアスナの紅茶はハニーレモンでとても飲みやすい一品になっている。

「――あー、死ぬかと思った」

と、二人を宥めて暫く。
何処からとも無く復活してくるカズヒロ。寧ろ強化も無しに受けて何故死んでいない。というか己はヨコシマか。

「君は本当に人間なのか? ゾンビか何かでないとその不死身、説明がつかん」
「よしてくれよ……俺はれっきとした人間だぜ。臆病で弱っちい……ただの人間さ……!!」

こちらのフリに的確に対応してくれるカズ。要らんボケは多いが、こいつのこういう所は好意に値する!

「下らん小芝居はいい。そろそろ行くぞ」
「あ、チョット待って!」

気付けばいつの間にか席を立っていた女性陣。エヴァを先頭に、アスナ、リインと続く。
……リインだけは申し訳無さそうにチラチラこちらを振り返っているのが、唯一の心の救いか。











で、ウェールズは山奥。
訪れたメルディアナ魔法学校。いきなり潜入するのも拙いので、とりあえず近くの一般人の多い村の一角に仮設拠点を設営。
何せベースから転移させればいいだけなので、仮拠点設営はとても楽だ。
そうして送られてきた簡易拠点――というか、ベースで新たに外装を整えられ、すっかりSF魔法――魔導式の外装に整えられたホワイト・ルーク(WR)の中に乗り込み、その中から魔法行使。
WRの発動させた凄まじい数のサーチャーをメルディアナ、及びその周辺へ配置。
そうして、俺達・私達は全てを理解してしまった。

「――おい、何だアレ」
「い、いやエヴァちゃん、俺に言われても。なぁ?」
「あれはまた、酷い」
「アレ、ナギの子?」
「はい。少なくともスプリングフィールドを名乗る存在ではあります」

モニターに浮かぶ三人の少年の姿。
一人は赤毛にメガネを掛けた、ボッチ少年。
一人は金髪で、何処かでベクターマシンを操っていそうなオサレ系ピアノ少年。
一人はギラついた瞳で犬歯を剥き出しにして嗤う少年。

その三人に共通するのは、少なくともこの学園ではトップクラスの大魔力。
そして、その中でもネギ・スプリングフィールドだけが違う点が一つ。――周囲に、人が居ないのだ。
いや、言い方を変えると、ネギ以外の二人には凄まじい人数が纏わりついている。それも、女の子ばかり。

「は、ハーレム形成してやがる……」

カズのそんな呟きを耳にしつつ、ちゃっちゃと情報を検索。
先ずあのベクターマシンを操っていそうなオサレ系ピアノがニーギ。ギラギラした視線で少女を嘗め回すようにして眺めているのがヌーク。
サーチャー越しに簡単に調べたが、特に洗脳・魅了系のスキル保有は感知されなかった。という事はつまり、アレはあの二人の魅力……ということになるのか?
「まぁ、それもあるかもしれんが……あれはどちらかと言うと、スプリングフィールドの……英雄の血を目的としているのではないか?」
そう言うエヴァの表情は、酷く青ざめていて。……信じられるか? この嫌な現実に果敢に立ち向かいながら、今にも倒れそうな可憐な少女、これで真祖の吸血鬼、悪の代名詞なんだぜ?

そして、同時になるほどと頷く。スプリングフィールドの血……我々魔導師にしてみれば、カスにも成らない代物だが、魔法使い連中にしてみれば価値のある代物なのだろう。
そんな真っ青なエヴァに寄り添うアスナ。アスナの体温に少し安心したらしいエヴァは、まだ蒼いその表情を、少しだけ緩めて――くそぅ、見た目幼女同士のふれあい、途轍もなく愛らしいです! 不謹慎だけど、嗚呼何故手元にカメラがない!!
≪案ずるな。俺の相棒は優秀だぜ!≫
≪Of course! I'm Rec Now!!≫
やばい、インテリデバイスちょっと羨ましい。

――チラリ。

少し横目で見たリインは、そんな二人をとても優しい目で見ていて。
マジ御免なさい。




と、そんなこんなの最中、漸く見つけることの出来た「開かずの扉」は、メルディアナ魔法学校の大分端のほうに設置されていた。サーチャーで構築したメルディアナの内部構造図の予想からも、多分此処が地下への階段になっている。
此処で間違いないと見切りを付けて、早速その場所の座標をマーク。WR内の転移ゲートから、マークした座標へとジャンプする。
一応メルディアナにも結界の類が仕掛けられているのだが、そもそも霊地としての格も大したことの無いメルディアナだ。結界といっても精々探知結界――それも、内外の行き来を探知する程度。
魔導師の転移にはそもそも探知できるかも怪しい上に、仮に麻帆良のトップ、近衛近右衛門と同格とされるメルディアナ魔法学校校長が出張ってきたとしても、此処にたどり着く前には全てが終わっているだろう。

「これか」

目の前の扉。簡単な錠前によって封鎖されたそれは、然し見た目とは裏腹に、厳重な魔法封印によって守られている。
――まぁ、俺には関係ないが。
かるーく作り出したシューター。それを、錠前へ向けて叩きつける。
途端扉は魔法による封鎖を解除され、その上錠前をシューターにより物理的に破壊されてしまう。

「さ、入ろうか」
「ふん、解呪でもするのかと思えば、えらく力技だな」
「こっちのがスマートなやりかだだからね」

今回の場合、既に侵入がばれている可能性はそこそこある。ならば、侵入に気付かれないようにするよりも、気付いて此方に追いつかれる前に、此方の目的を果たしてしまう事が重要であった。
その点で、解呪よりも破壊が合理的であったというだけの話。

そうして訪れたメルディアナの地下。
其処に立ち並ぶ、まるで生きているかのような生々しさを持った石像群。
なるほどこりゃ子供には見せられない。下手に生々しい分、この石像の表情には生の恐怖が浮かんでいる。
薄暗い地下の雰囲気とあわせても、こんなモノ子供に見せたら、間違いなくトラウマになる。

「んじゃ、さっさと解呪しちゃうかね――カズ」
「おうよ。んじゃ、ソッチも頼む」

頷いて、魔法陣展開。本当は隔離結界でも使いたいところなのだが、今回の目的は呪いの解呪。
そのための手段は、俺のカイゼルファルベ、カズヒロのギガジャスティス、アスナの魔法完全無効化能力の三つ。アスナの同行は偶々だが、それでも可能性のある手段ではある。
そんなものを隔離結界の中で使えば――可能性は低いとはいえ、アクシデントが起こる可能性は控えておきたい。
今回の魔法陣は隔離結界ではなく、俺からカズヒロへの魔力供給の為の疑似ラインの形成だ。
虚数・吸収のコンボにより発生する莫大なエネルギー。それを魔力に変換し、カズへと供給。その莫大な魔力を、カズは見事にその手中に制御して見せた。

輝く魔法陣は光の五芒星。破邪の力と、呪文の効力を高める秘術。

「――ギガジャスティス!」

弾ける無色の波。
それは狭い地下空間を制圧し、所狭しと衝撃なき衝動に従い暴れまわる。

――ピシッ。

轟々と唸る呪文の波動に紛れ、何処からともなく聞こえてきたそんな音。その音は次第に重なり、ついにはバリバリという騒音が地下空間を満たしていった。
そうした中の一つ。一番近くにあった石像をチェックする。
ひび割れた石肌の下。其処から見えたのは、血の気の通った肌色。

「……一発成功か。見事だ、カズ」
「まぁ、たまには役に立たないとな」
褒めたら照れくさそうに笑う和弘。コイツももう少し落ち着いて行動すれば、彼女なんて簡単に作れるだろうに。
男の天然キャラはそれほど需要が無いのだといっているのだが。

「んじゃ、そろそろ俺達も帰ろうか」
「――ココのひとたちは?」
「ん? 大丈夫。今のギガジャスティスは派手だったから、多分メルディアナの人間も完全に勘付いたと思う」
であれば、すぐに人もココに来るだろう。寧ろ下手にココにとどまると、あらぬ疑いを掛けられるどころか、我々の存在が魔法使い側に露見しかねない。出来ればそれは避けたいのだ。
「そっか。ならいい」
「うん、それじゃ、リイン、お願い」
「はい、我が主」
言葉と共に現れる、うっすらとに地色に輝く回転三角魔法陣。
「――転移」
表側から近付くひと気を感じつつ、リインがそう呟いた途端に景色が入れ替わる。
それまでの陰鬱とした地下の風景から、何時ものWR転移ゲートへと。
そこから面々を引き連れ、WRのブリッジへ。モニターには、サーチャーから撮られた地下の映像が。
石化から解除された村人と、それを見て盛大に驚くメルディアナの魔法使いたち。

「イイハナシダ~」
「だからボケは要らん! ――ふん、折角だ」
「あ、ちょ、エヴァちゃん!?」
カズを殴り飛ばしたエヴァは、ニヤリと笑うとそのままディスプレイへと手を伸ばす。
慌ててそれを遮ろうとしたのだが既にとき遅し。
「……あーあ、やっちゃった」
「ふふん、どんなものだ」
「またか、また俺が怒られるのか!? 俺は別に中間管理職じゃないんだぞ!?」

エヴァの使った術。それは、転写と呼ばれえる類の物で、その中でも最も下の、文字を写すというだけのもの。
――我、此処に“悲劇の破壊者”としての本懐を成す。
日本語にすればこんな感じのことを、旧い英語でツラツラと書いて見せたのだ。
俺らにしてみれば当に厨二病。然しエヴァがやると古典劇を見ているような気分だ。外見と似合ってるからなぁ。
「いいではないか、この程度戯れで済むだろう」
「……まぁ、この程度でUHBと魔導師の存在が出てくるとは思わないけど……」
言いつつ、小さく溜息をついてサーチャーを分解する。
今回の目的――隠れ里の石化された住人の救済はなされた。後は野と成れ山と成れ。これ以上は我々の関わるところではない。

「んじゃ、そろそろ帰るか」
「「………………」」
「我が主……」
そうか。帰ると言う事は、あの銀髪オッドアイの君の元へ戻るという意味なのか。
「げふん、もとい、お二人を我々のベースに招待しようか」
「「(パアアアアアアア)!!!」」
途端に笑顔になる二人に苦笑しつつ、WRを静かに飛翔させ、そのまま上空へ。加速と共に、時限の海を越え、我等がベースへとジャンプするのだった。



その日、イギリスの某所山奥から、天に向かって飛び立つUFOが観測されたとかされなかったとか。
イギリス山奥の村は、UFOのおかげで少しだけ賑わいを得たのだった。
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10 終わりの始まり

2012.07.16 (Mon)
「やぁやぁ。漸く見つけたよ。君たちだね、ボクの作った箱庭で勝手に遊んでいたのは」

それは突如、空間から滲み出すように、沸き立つ泡のようにして現れた。
見た目はスーツに実を纏ったキャリアウーマンの様で居て/その凶悪なる炎の三目は見る物全てを呪い愛する魔王の姿であった。

「よう、初にお目にかかるよ、混沌」
「――リアル(胸が)膨れ女」
「あははっ、この姿は九郎クンが喜ぶかなぁ、と思って取ってるんだよね」

そういって手を口に当てて笑う混沌。
厭違う。その姿形こそ笑って見せているが、その実は此方を興味深そうに観察していた。

「ふむ、何時気付いた?」
「さて、何時だったか。数億周前くらいだったかな。面白い存在がいて、折角だから物語に正式に組み込もうかな、なんて思ったのに、不思議な事にボクの意図/糸を意にも介せず自由に振舞う存在が居る、って気付いたのは」
「――ドクターの件か」

ドクター……ドクター・ウェスト。
彼の元で学んだ事は、間違いなく昨今の俺の糧となっている。
今の俺を形作る上で、彼の元で学んだ事はとても重要な部分だろう。

だがしかし、彼は原作キャラ。物語の重要なキーパーソンだ。普段はとてもそう思えないが。
悪では有れど、唾棄すべき邪悪でもない彼等。欲する物を求めて必死に足掻く彼は、ある意味最も尊敬すべき“人間”なのかも知れない。
しかし、彼に接触した事で、ナイアルラトホテップに勘付かれてしまったという点を鑑みれば――いや。
彼の元について、目立ちすぎた。俺の責任、か。

「んじゃ、どうして此処が解った?」
「簡単なことさ。キミは最後に白の王と黒の王の道を使い、次へと移動していた。だからこそ、此処で網を張っていたのさ」

予想以上に時間は掛かったけどね、と混沌。
成程。――過去転移ルート、次の周のスタートが楽に成るからと使いすぎたか。

そう、此処は門の中。門にして鍵たる神、ヨグ=ソトースの回廊の一角だ。
遠目に見えるのは魔を絶つ剣とリベル・レギス。
その戦いは若干デモンベイン不利で進んでいる。これは――駄目だな。

戦いはまだまだ続く。物語の終わりはまだまだ先が長そうだ。

「それで、俺に何の用だ、混沌」
「またまた、解ってるんだろう?」
「言葉による意思疎通は、人の重要なコミュニケーションツールだ。その姿をしているなら、ちゃんと言葉を使え」
「おやおや、中々厳しいねキミは。まぁいいさ。用件は単純に、退去勧告だ」

そう言ってニヤニヤと笑う混沌。ああ、俺にコイツを殺し切るだけの力が在ればなぁ。

「当然ながら、断る」
「だよねぇ。ま、そうなれば当然力尽く、って事に成るんだよね」

にこりと、ゾワリと。
まるで花が咲くように/沸き立つ死臭のように微笑む/微嗤む〔邪神〕。
虹色にして無色の狭間を染め上げる漆黒の混沌。
全てであるが故に何者でもない怪物が、此方に向けてワラッていた。

「は、大人しく倒されるほど俺は大人しくも無いぞ、混沌」
「どこぞの魔導師ではないですが、踏み潰すぞ、邪神」

「ハ、ハハ、ハハハハハ!! 懐かしいなぁ、彼を持ち出すなんて。ああ、懐かしいな。まさか人にして魔導に身を落とした『だけ』の分際で、ボクの黒き王を千日手にまで持ち込んだんだから。けど、まさかあれを観測して記憶していられるなんてね」

フンと鼻を鳴らしておく。ち、カリンには後でオシオキだな。敵に余計な情報を渡す必要は欠片も無いんだけど。
――まぁ、いいか。

「来い、クラースナヤ」

呟くと共に現れる深紅のデウス・マキナ。
何者でもないが故に此処にある深紅のそれ。
その内側に収まると共に、普段は押さえ込んでいる力を稼動させる。

「ほほぅ、コレは中々。中級神
ダゴン
くらいの力は在るんじゃないかい?」
「ふん、催しはまだ始まったばかりだぞ」「精々愉しめ、邪神」

言いつつ、右手に籠めるのはクトゥグアの魔力。
無作為に放つのではなく、只一点に凝縮する事で、その拳が持つのは無限の熱量へと変化する。
レムリアインパクトの極点、圧縮消滅するその直前の熱量にも等しいほどのそれ。それをむき出しのまま、邪神へ向けて殴りつけた。

ニャルラトホテップはといえば、それを余裕の笑みを浮かべて片手で受け止め――ようとして、思い切り叩き飛ばされていた。

このチャンスを十全に生かすべしと、即座に魔導師の杖を召喚。

「スペル・ヘリクス!!」

――大地はその偉大なる懐を母とする。
――大海はその広大なる海原に命を抱き。
――生まれ出でた風は空を走り。
――炎によりて世界は廻る。

「四門神獣形態っ!!」

土、水、風、炎、其々のエレメンタルを調和する形で配置し、“杖”により撃ち出す。
純粋な西洋魔術では相克しか起こさないコレを、東洋思想をもって制御する。
己が一撃必殺、命の審判。

最初の一撃で思わずか自らの本性をあらわにしていたナイアルラトホテップは、迫り来るその一撃をなんとか受け止め、然し受け止めきれずに咄嗟に身をかわすことでその直撃を防いで見せた。

『ば、ばかな!? たかが人間がこのボクに傷を付けただとっ!? いや、それよりも何故人の攻撃がボクに通じる!?』
「ざまぁ見晒せ!!」
「貴様はそうやって上から見下していろ。その間にお前は滅ぼす」

俺には物語の力なんて無い。

世界のバックアップなんて物も無い。

在るのはただ無限に繰り返される時間と、最高にして最愛の我が相棒。

そして俺にあるのは、只我武者羅にぶつかるという選択。

「コレで解ったとは思うが、此方にはお前を滅ぼし得る力が在る」
「そして、喧嘩を売られて無傷で返すほど易しくも無い」
『ば、馬鹿な。クトゥグアやシュブ=ニグラに、それにこれはハスターとクトゥルーの魔力!? なんであの2柱が一人の人間に、しかも同時に力を貸す!?』

力を籠めて、混沌を睨みつける。
流石の俺も、此処であの邪神を滅ぼしきれるとは考えていない。出来て精々力の半分を削ぐくらいだろう。

「あまり人間
ヒト
を無礼
ナメ
るなよ、混沌」
「言ってみたかったんですね解ります」

でも、それで十分だ。俺がこの世界に与えた影響と、俺が削れる邪心の影響は大体同等。
ならば、俺の成すべき事は只一つ。

「行くぞカリン」「ハイマスター!」

俺、カリン、クラースナヤ。今此処には揃いうる限り最高の三位一体がある。
今の俺達に、勝てない存在なんて在る筈が無い。

――カチリと、頭の奥で、その瞬間何かが繋がった。
瞬間、理解した。成程、これが俺の本当のチートか、と。
そうして同時に理解する。コレが原因でループしていたのか、と。

『なっ、馬鹿な!? 何だその力は!? ボクの知らない力!? ――いや、違う、ボクはそれを知っているぞ!! けれど、そんな、まさか――――穴か!?』

高まる余りの力の顕現。波打つそれは、俺/カリン/クラースナヤの境界を曖昧に――否、本当の意味での三位一体をその場に顕現させて居た。

『そんな、馬鹿な!? なんでこの、僕の管理するクラインの壺の中で、よりにもよって『穴』だとっ!!?? 人類の極地、此処ではない何処か、無限にして零!! たどり着いたというのか、よりにもよってこのクラインの壺の中で、僕の生み出した箱庭で!?』

「誰が言ったか、この世は全て胡蝶の夢。貴様の敷いた悪夢の庭であれど、其処に生きるのは今日を生きる人々。為らば其処には希望の夢が響くは必然」
「其処に命の唄が響く限り、私たちに終わりは無い」

そのまま驚く混沌に、クラースナヤの右手の一撃を叩き込む。
混沌は咄嗟にそれを片手で受け止めようとするのだが――ガツン、といい音と共に混沌の化身は勢い佳く吹っ飛んだ。

『な、何故!? たかが神の影風情が!?』
「ブァーカ!! これを只の神の影
デウスマキナ
と同一視してるんじゃねぇよ!」

何せこの機体――というか俺は、旧支配者らから直接祝福やらを受け、それを取り込み進んだ俺の
・・
影だ。つまり、幾柱もの神の影と言葉を重ねて顕現しているこの機体は、下手な神よりも格上であり、同時にコイツは俺の写し身。例え神様だろうと消せはしない。

――で、あえてわざとらしく盛大に格好つけて混沌を見下してやった。

「要するに、イレギュラーザマァwww」
「邪神――NDK
ねぇどんなきもち
?www」

『――ふ、ふふふ、あははははは!! まさか、真逆
まさか
真逆
まさか
、こんな展開になるなんて』

頭痛を堪えるような、そんな姿が幻視出来そうな混沌の声。
ふふふ、流石の混沌といえど、この超展開に精神的ダメージは隠しきれまい。
混沌に精神攻撃は意味があるのかって? んな事趣味以上の意味は無い。



「さぁ、騙り逢おうか、混沌――主に暴力言語で!」
「SAN値直葬してやんよ!」
『じゃ、ボクはあえてこう言おう――こんなの絶対おかしいよ!!』

そうして、時空の片隅、ここではない何処かで。
方や黒き混沌が名伏し難き叫び声を上げ。
方や赤き喜劇の紡ぎ手が咆哮を上げた。

この死すら死せる時の狭間、その戦いが何時まで続くのかは、両雄そのどちらにも知れた事ではなかった。続きを読む

09 魔術的錬金術と見えてきた終わり

2012.07.16 (Mon)

佳く解らない周目。



今回は色々錬金術の造詣を深めるべく、色々な実験を行う周とした。
もう、これがとても面白い。
この世界の錬金術のレベルはそう高いといえるほどの物でもなかったのだが、どうやら俺と相性がよかったらしく、気付けば手合わせ練成とか出来るようになっていた。作品が違う。

先ず、錬金術と言うのは、物質の形を操る、と言う技術ではない。
錬金術と言うのは、無から金を生み出し、不老不死を求めるという事を主題とした技術だ。

で、手合わせ錬金――まぁ、鋼な錬金術師の話。
アレの手合わせ錬金とはつまり、合わせた手と言うものを術円と過程し、その中で循環させた術理を手を当てる事により添付/起動させる、と言うものだ。
世界観が大分違う上、真理なるものに触っても居ない俺にそれが可能かと言うと――少し手間取ったが、なんとかこれを成立させることに成功した。

というのも、先ず手を合わせる、と言う工程。此処に目を付けた。
手を合わせるという事は、円を描くという事。此処に俺は、更に呪術的な意味合いを持たせるべく、何時ぞやアヌスと共同研究していた略式儀式魔術を応用してみたのだ。
手を合わせるという行為に、術理の円環という意味に加え、精神統一を初めとする各種呪術的ブースト作用をはじめとした色々を添付。モーションと結果さえ同じなら、過程に関する術理はべつに如何在ろうと問題あるまい。
そうして組み上げた術理を用いて、物質の素材構成/高質を変質させるという現象に成功したのだ。

まぁ、真理なるものは佳くわからないが、ある意味俺は生と死
それ
を何度も体験しているわけで。ある意味での極地の一つを何度も経験している所為か、感覚的には理解できているのだ、ソレも。

そうして錬金術を儀式化し、マニュアル化した辺りで今周の終わりが来た。
何となく最近破壊ロボの活躍頻度が減ってきたなー、と思っていたら、いつの間にか平然とデウスマキナが暴れまわる都市アーカム。そうこうしている内に夢幻心母が浮き上がり、大いなるCことクトゥルーさんの劣化版が召喚された。

いや、ほら。怪物版と直接顔を合わせてると――あの程度ではねぇ。一般人が直視しても、SAN値が若干削られる程度まで劣化したクトゥルーなんぞ見る影もない。

「いえ、普通は劣化版でも直視すれば狂気に捕らわれます」
「えええ、あの程度で?」
「はい。マスターはチートですから」

下手糞な顕現をさせられたクトゥルー御大を眺めていると、何かカリンにチート認定を受けた。
うわぁ、ちょっと嬉しい。
あの、歴史的知識しか持ち合わせていなかった頃。未だ俺がただただ転生を繰り返すただの人間だった頃から考えると、確かに今の俺はチートといって差し支えない。

「駄菓子菓子
だがしかし
! コレは覚えておいてくれ。俺のチートは長い時間を掛けて研鑽したもので、決してぽっとでの胡散臭い神様から貰ったチートではない!!」
「若干補正はあるみたいですけど?」
「それはアレだ。ご都合主義の神様
デウス・エクス・マキナ
ってヤツじゃないの」

ゲーム・マスターに対する免責権。ゲームに携わりながら、ゲームマスターからの直接的干渉の一切を無効化するなんていうチートスキル。
他の世界観の大半では無意味なスキルだが、このデモベ世界ではまさしくこの上ないチートスキルだ。
まぁ、俺が此処までの研鑽を積めたのも、有る意味このスキルのおかげかもしれない。

「第一、此処まで鍛えても、白の王にも黒の王にも届かないってのはねぇ」
「物語のバックアップを受けている存在に、正面から挑んで勝てる筈も無いかと」

直接彼等に挑んだわけではない。ただ、俺の頭の中、カリンの超演算を用いて、彼等との戦闘をシミュレートしてみたのだ。
そうするともう、ねぇ。
黒の王は未だいい。ある程度まともに戦ってくれるから。ただ、時間が長引くとニャルさんに勘付かれて時間を変動させられて戦闘中断、という結果が大半で、黒の王を倒すまでは絶対に行かない。まぁ、それはいい。この世界のシステムに挑んでいるようなものだ。勝てないのは悔しいにしても仕方が無い。諦めはしないが。

ただ、問題は白の王だ。アレは寧ろ積極的に挫折を経験して成長を促す為、ニャルさんは早々簡単に力を貸したりはしない。
だというのに。だというのにだ!! 何で俺の妄想なエミュレートの中出まで、早々ご都合主義ばっかり起こるんだよ!! 意味不明だよ!!
何だよデモンベインを倒したと思ったらみんなの祈りが力となってパワーアップ再生!? 何処のグリッターだよ!! 俺ぁガタノトーアか! 石化スンのかァアン!?

倒しても倒しても無限に復活し続けるデモンベイン(妄想)。当に無限ループなその妄想に、妄想の主である俺が思わず悲鳴を上げてシミュレートを中断したほどだ。

本当、あいつ等二組はマジチートだ。んで、その仕掛け人のニャルさんは鬼だ。

「――マスター」
「ん。ドクターが覇道に亡命したな」

こっそり破壊ロボの一部を駆逐しながら観測していた現状。うんうん、物語はちゃんと進行しているみたいだねぇ。
まぁ、俺の目的の為には、この物語を成立させる必要がある。つまり、ニャルさんと目的は被っているのだ。
今のところ邪魔をする心算も無いし、向うに過干渉する心算も無いのだが。

なんて事を考えながら数日。
いつの間にか死んでいたアル・アジフが復活し、何だかんだで逆十時を叩き潰し、転移するクトゥルーを追って件のポイントへ向けて走り出した。

然し、最近大十字の魔導師としての錬度が上がってきている気がする。
いや、今周に限っての話ではなく、基礎的な部分の霊的強度が、マスターテリオン並みにまで。
未だトラペゾヘドロンこそ使っては居ないが、それでもアンチクロスとの一対一なら、苦戦しつつもなんとか下せる程度にはなってきている。

これは、もしかしたら終わりが近いのかも。
振り返れば、長かったような短かったような。
――いや、長かった。うん。長かった。

一応俺の人生はイベントマップを記載して、場合にもよるが、ルートごとに要救済対象毎の救済プランが設計されている。
この救済プランは主人格が休眠している間に、ルート毎の人格が設計した物だから、後々データを煮詰め直さにゃならんのだけど。まぁ、応用は効くし。

「ま、成るようになるっしょ」
「です」

海面に沸き立つ石柱群。不出来な機械と肉の塊を生贄に捧げる祭壇と、それを対価に現れようとする巨大な外なる神。
その姿を、カリンと二人上空から眺めながら、近付いてきた終わりの予感に言葉を漏らしたのだった。

08 ホラーハント。

2012.07.16 (Mon)
デモベ世界――というか、ニトロ世界はマジヤバイ。
なんというか、リョナまでは行かずともエログロというか、エロいのがグロいというか。
デモンベインという作中でもエログロは幾つか有った。
あの死の眠りに~云々といいつつ、ルルイエ異本だとかエンネアだとかライカだとかを触手でぬっちょり頂いてるタコ神。アレなんてエロ? と言う話。
しかもグロいし。SAN値削るし。

ごほん。何故そんな話に成っているかと言うと、今回面白い事例に巻き込まれてしまったからだ。


嘗て俺が見つけた新たなルール。
大十字九郎と大導師マスターテリオンの二人の最終決戦、ヨグ=ソトースの門の中。其処を俺達が利用する事で、そのときの肉体を保持したまま、嘗ての世界へとループすることが出来る、と。

ただコレには幾つか問題点が存在し、ループして世界に落ちることが出来るのは、3つの時点に限られる。

一つ。 アル・アジフが舞い降りる730年代。
一つ。 デモンベインと大十字九郎が舞い降りる18世紀中盤
一つ。 大導師マスターテリオンが召喚される、ズアウィアの滅びの瞬間。原作の大体25年くらい前。

一つ目、二つ目はまだいい。

アル・アジフが落ちた時間など、まだまだ怪異がハバを効かせていた時代だ。
俺の個人的な意見としては、文明開化が途轍もなく待ち遠しかった、と言う点。せめて洋式便器をはやらせた俺は間違ってないと思う。

大十字九郎が落ちた時間は、とてもいい。
何せ原作の大体訳50年前。この時間軸に落ちた場合は、次の己のための蓄えが容易に用意できて、その周の俺はスタートダッシュがとても決めやすい。日本も発展させられるし。
凄いのは、民間の経済力を強化し続け、結果政治よりも企業が力を持つ日帝が出来た、という話。アレにはマジでビビッた。経済力で世界を支配し始めた日本。続きがとても気に成ったが、残念ながら寿命でぽっくりといってしまった。

大導師のに引っ張られたときは本気で焦った。
何せレムリアインパクト炸裂のど真ん中だ。最近化物染みて強くなってきているとはいえ、レムリアインパクトの直撃は流石に死ぬ。
いや、本当なら出現「時」点だけで、場所までは引っ張られない筈なのだが。うーん。



あれ?話が逸れた。
いや、違う違う。問題は、アル・アジフの出現に引っ張られたときの話。

大昔に落された魔導書アル・アジフ。彼女はその直前の戦闘で魔力を使い果たし、死んだ魔導書としてとある人物――狂人と揶揄される男に拾われる。
そうしてその人物はアル・アジフを読み、狂気の中で類稀なる力を発揮し、一つの真実にたどり着く。
この世界こそ、邪神の箱庭である、と。警戒せよ、世界は彼の謀略により傀儡と化している、と。

そうして狂人は一冊の書籍を生み出す。
狂人の見たこの世の闇、外なる暴虐、外道の知識をただ一冊の書物へと。

その男、アブドゥル・アルハズラッドの生み出した魔導書こそ、後にこの世の重要な鍵として扱われる事と成る魔導書なのだが――。




また話が逸れた。
問題は、この時代が文明開化も無い未開の時代である、と言う点だ。
日本では藤原氏がまだ中臣氏だったり天皇が政治の中心だったりする時代だ。勿論武士(?)が現存してる時代だ。
そんな時代、流石に日本に渡るのも如何かとおもうし。
正直な話、元ではあるが現代っ子な俺だ。ここまで歴史が無さすぎるのも流石に辛い。
原作の時代でも結構一杯一杯だったのだ。19世紀の日本とか、住みづらかった。
アーカムに移住してからは、覇道のお膝元と言うことも有って大分住みやすかったのだが。

で、如何しようかと考えたのもつかの間。この時代、まともな照明機器が存在せず、国と言う枠組みも何だかんだでかなり曖昧な時代。何が言いたいかと言うと闇が大きかった。

もう少し薄暗いだけで昼間から路上を闊歩する怪異に、死病として辺りを練り歩く怪異。
いや、巫撃というかホラーハンターというか、この時代にもそういう闇払いが存在しているし、最多勢力を誇る某宗教の神職も色々やっていた。まぁ、汚職のほうが酷かったが。
で、俺がやった事は簡単。フリーの悪魔祓いとしての活動を開始したのだ。

もう、来るわ来るわの依頼の数々。もういっそのことこの時代はデビ○メイクライでも開いてやろうかと何度思ったことか。それほどの数の怪異が表れたのだからもう。
ただ、当然ながら問題も多数あった。と言うのが、某宗教だ。

此方はあちらの神を否定もせず、係わり合いに成る気は無い、と此方から明言してやったというのに、連中何を血迷ったか聖堂騎士
パラディン
を団体でこちらに嗾けてきた。まぁ、騎士といっても皮鎧で、製鉄技術も無い時代だけど。

流石に頭にきて、バルザイの偃月刀片手に大暴れしてやったのだが。
凄いねこの時代。未来では殆ど現存していなかった信仰系の魔術を使ってきた。
神に対する祈りという一種の精神とリップにより、自らの精神力をブースとさせ、更に神の代行者を名乗る事により、控える信者の信仰=魔力を自らにプラスしてブーストさせやがった。

地力としてかなり人間から逸脱している俺だが、流石にこういう類の人間を相手にするのは怖い。
ほら、言うじゃない。化物を殺すのは何時だって人間だ、って。

俺はまだ人間の心算だが、「幾ら自称しようが正真正銘化物だ」なんて言われるのは流石に傷つくし。
とりあえず連中を叩き潰して、姿を晦ましたわけですよ。

そうしてヨーロッパを歩き回っている最中。

漸く本題に戻るのだが、此処で見つけた小さな村。コレ幸いとその町を訪れた俺なのだが――。





「ふむ、悪魔へのイケニエねぇ」

訪れた村。そこは、妙に闇の気配の濃い村だった。
人々は妙に疲れた様子で、必死に生きているであろうにその村の影は妙に濃かった。

訪れた時間は遅かったものの、運よく宿を一室取ることに成功。
大分金はぼられたが、この時代だ。多少は仕方あるまい。
そうして訪れた宿で、宿の女将に尋ねたのだ。どうしてまた此処まで空気が暗いのか、と。

「それはね、またこの村の若い子供が、ヤルダバオトのイケニエにささげられたからさ」

曰く、この村は少し前までは、極普通の漁村であった。
然しある日を境に、徐々に村の海はアレ続けるようになった。
で、ある日突然ふらりと現れた男がこう言い放ったのだ。「この村の海は呪われている」と。
実際、少し離れた海はそれほど荒れても居らず、この村の近隣の海だけが酷く荒れているのだ。
その男曰く、この海の嵐を抑えるには、ヤルダバオトにイケニエをささげ、その怒りを静めてもらうほか無い、と。

で、村では月に一人、村の子供を一人ずつ生贄に出す事になったのだ、と。

うーわー。また古典的な。
しかもヤルダバオトって偽神の名前だっけ? なんとも適当な。もうちょっと名前凝れよと。

で、折角なのでその晩、こっそりとその村の生贄の祭壇なる場所に足を踏み入れたのだ。
ジメジメとした、いかにもクトゥルー系の祭壇らしい雰囲気を放つその場所。
闇の臭いの濃いほうへと脚を進めて、そうして見つけた一つの小さな祭壇。
どうやら其処は海底近くと繋がる地底湖らしく、祭壇の周囲を囲うように水が満たしていた。

で、問題はその祭壇の中心。
生贄と思しき少女が、四方八方を触手に囲まれ、ニュッチャニュッチャと卑猥な音を立てる触手に嬲られていたのだ。


《おっと詳細な描写はしないぜ。これ以上は検閲対象だ》

――何故か唐突に突っ込みを入れるべきだと、俺の全本能が叫んでいるが、流石に此処でそれをすると奇襲をかけられない。
こっそりとある程度近付いて、バルザイの偃月刀を連続鍛造。宙に浮かべて投げ付けたそれは、見事に触手をバラバラに引き裂いた。

「ひ、ひいいいいいい!!??? や、ヤルダバオトがああああ!!!???」

突如響き渡るヒステリックな叫び。何事かとそちらを見ると、其処に居たのはローブに身を纏った「いかにも」邪悪な魔導師のすがた。
もう少し凝ってくれよ、と色々ゲンナリしつつ、この時代ではまだアレは流行の最先端なんだろう、と無理矢理自分を納得させて。

とりあえず、粘液まみれでレイプ目の少女を回収し、如何したものかと考えていると、カリンが擬人化して手早く少女に手当てをしてくれた。

「マスターに任せては、結局被害が大きくなるだけですし」
「チョイ待て。如何いう意味だこら」
「ペドフィリア」
「此方を指差すな!」

とりあえず、少女の事はカリンに任せて、バルザイの偃月刀一つ手に魔導師に向き直る。

「よう、連続幼児レイプ魔」
「ぐ、きさまああああああああ、私が神へといたる神性な儀式をおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「あ、そういう手合いなわけ」

まぁ、佳くある話だ。
神に生贄をささげる事でその力を分け与えられ、最下級の神の力を得る、と言うもの。
まぁ、最下級とはいえ人間のレベルで図れば破格だからなぁ。

「はいはいわろすわろす」
「貴様あああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

そんな叫びと共に魔導師から放たれる青い波動。あー、水妖の気配が滅茶苦茶濃い。
クトゥルー系かと思ったら、少し違うのかな?

ぱしん、と音を立ててはじけ飛ぶ青い魔力の固まり。

「ぬあっ!?」
「俺に四属性は通じんよ」

どちらにしろ、何等かの属性系の魔術だったらしく、俺に届く前に加護の守りに弾き飛ばされてしまった。

因みに、この世界で最も多く出回り、ホラーハントに利用されているのが、儀式魔術。
何等かの武器を呪具に見立て、儀式と言う過程を通して怪異を払う物だ。例えば銀の弾丸やイブン・ガズイの霊薬を用いた兵装などがコレに該当する。
利点としては少ない魔力でも運用が出来る点。不利点は消耗品であるため戦闘継続に限りがある事か。

次に多いのが、属性魔術。俗に言う精霊魔術とは少し違うのだが、大体似ている。
これは自らの魔力を用いてマナを集め、集めたマナを属性変換――つまり既存の法則に存在する攻撃的なエネルギーとして利用する、と言うものだ。
魔力はエネルギーではあるが、物理干渉が難しい。そこで、魔力を既存のエネルギーないし現象に変換することで、わかりやすい“威力”として扱う事が出来るのだ。

今回の相手、件の魔導師の扱う物は、どうやらこの俗世威魔術だったらしく、物理的干渉といえど属性に縛られている限りは俺に技が届くことはありえない。

「さて、それじゃ、お前は早々に滅びろ」
「な、何故邪魔をするうううううううう!!!!! 貴様も魔術師ならばわかるだろう!! これさえなせれば、俺は至高の存在に至れる!! その娘を最後の生贄にささげる事で!!」
「理屈は理解できる。――が、興味が無い。第一俺が気に食わない。以上、抗弁終了」
「きざまあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

さてと呟いて、右手にバルザイの偃月刀を鍛造する。
これこそが魔術、魔導師として目指すべき場所。あるべき世界を捻じ曲げ、己の望む世界をその上に描き塗りつぶす。外道の知識を用いた“魔”の術。

此処には何も無い。いや、無かった。が、事実としてバルザイの偃月刀は此処にある。
いまこの瞬間、バルザイの偃月刀は此処にあった事に成ったのだ。

「炎熱術式添付――炎に抱かれ眠れよ邪悪!!」
「おのおおおおおおおおれえええええええええええええええええ!!!!!!!!」

何処の銀河南無だよ、等とおもいつつ。魔導師は此方の放った“燃やす”という概念の炎に焼かれ、徐々にその姿を失い――

「-----aaa----------Iaaaa----------IA! Ia! Basatannnnnnnnnnnんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!」
「な、しまっ――!!

咄嗟にその場を飛び退き、カリンと少女を回収してもう一歩飛び退く。
祭壇を中心とした円形の湖を囲うように、更に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

「ちょ、これは!?」
「神の召喚術式――但し魔力の不足による一部召喚かと」
「それでも十分脅威だ!!」

見れば件の魔導師は、先ほど放った炎により完全に消滅したらしかった。――くそ、最悪な置き土産だ。

「逃げるぞカリン」
「了解」

即座にカリンを身に纏い、マギウススタイルへと姿を変え、ページの翼を用いて洞窟の中を滑空する。
大慌てで洞窟を抜け出したその背後。近寄る触手を咄嗟に鍛造した偃月刀で叩ききって――。

「ち、何だよコイツは!!」
「バサタン、と呼ばれていたようですが、詳細不明!」

それは、今まで見たことの無いタイプのグロい触手だった。内蔵の継ぎ接ぎで出来たような触手に、蟹の甲羅のような装甲が所々に見えている。
アレで殴られれば相当痛いだろう、等と考えつつ、アレを吹き飛ばすにはこの状態では不利と判断。

「カリン、やるぞ」
「了解!」

頷きあって、魔力を高める。滅ぼす力が足りないならば、滅ぼす力を呼び出せば良い。

「――機神召喚!!」

天に浮き上がる魔法陣と、其処から呼び出される一機の赤い機体。
全長60メートルもありそうなその機体。クラースナヤ。腕を組んで現れたその機体は、伏せた目を突如その触手へ向けてギロリとにらみつけた。
即座にクラースナヤへ乗り込み、機内から触手を睨みつける。少女はとりあえず機内に運び込んだのだが――どうも、あの触手はこの少女を狙っているらしく、此方に向けてその触手を徐々に伸ばしていた。

「自らにささげられた供物を求めているのかと推定」
「ふん、悪食め」

右手に表すのは、何時も使い慣れたカリンの記述“魔導師の杖”だ。

「一気に焼き払う!! 呪文螺旋
スペル・ヘリクス
!!」
「いあ・くとぅぐあ!!」

螺旋状に放たれる字祷子術式。二つの螺旋は絡み合い、その中央に無限の熱量を生み出していく。

「――神獣形態!!」

轟音と共に放たれる白い光。獣の咆哮にも感じられたソレは、問答無用で触手を焼き飛ばすと、そのまま洞窟のあったであろう地形へと直撃し、その埠頭の在った場所を消し飛ばし、海底に小さなクレーターをあけていった。





「ベネベネ。清掃完了」
『埠頭ごと消飛ばすとは。まさにダイナミック清掃』
「ハハハハ、こやつめ」

久々に全力を出した所為か、少しテンションが高い。
何せ今まで、まともに大技を出せるような展開が無かったからなぁ。
クラースナヤを扱うようになってからは、本編中では破壊ロボを使っていたし、それ以外の場面ではクラースナヤを必要とする程火力を求めもしなかったし。

「――ゥゥッ」
「っと、そうそう忘れてた」

コックピットの中に響くその声。先ほど助けた祭壇にささげられていた生贄の少女。
慌ててクラースナヤを地上に降ろし、少女を抱えて地上へ降りる。

「カリン、問題は?」
「ありません。強いて言うなら、この子は才能が有りそうです」
「才能?」

言われて、改めて少女に視線を向ける。但し、今度はただ見るだけではなく、確りと根性を入れて。

「――成程」

薄らと香る闇の気配。オカルトという分野において、この上なく好まれる資質。
成程成程。あの魔導師がこの少女を最後の生贄にと望んだのも理解できる。
この少女の持つ闇の素質、言ってしまえばC計画における“月の子”にこそ及ばないが、一般的な魔導師のソレと比べても、なんら遜色のないほどの物を持っているように感じる。

「これは――事情を説明して、アーカム送りだな」
「はい。――田舎漁村哀れ」
「だな。どちらにしろ村の若い子は居なくなるわけだし」

とりあえず俺がすべきは、この子に対する事情説明、この子を村につれて帰る、村の人間に事情説明、この子をアーカムへと連れて行く、と。そんなところだろう。

「やったから、といって大局が変化するわけでもありませんが――」
「それでも、やらぬ善よりやる偽善、ってね」
「Yes,Master」

苦笑するようににこりと笑ったカリン。
そんなカリンを引き連れて、回収した少女を背負い、とりあえず村へと向かうのだった。

07 つまり、胎動とか強襲とか

2012.07.16 (Mon)
もうよく解らない周目。

最近、面白い現象が発覚した。
俺は基本的に、死亡転生によるループ移動を行っていたのだが、どうもそれ以外にループ移動の方法があった様だ。

というのは、デモンベインとリベルレギスの最終決戦直前。クトゥルーを生贄にヨグ=ソトースを召喚し、海洋上にゲートを開いたあのシーン。
あそこで、偶々ドクターの協力者をやっていた俺は、何時ものダンボールにのって覇道の艦隊を援護していた。
あまり派手な活動をしてしまうと、ニャルさんに目を付けられるので、精々ダゴンを散す程度にしか活躍しないが。
幸い俺にはクトゥルーの加護なんてものもある。直接召喚されたクトゥルーの支配力には流石に劣るが、それでも向こう側からの積極的な攻撃は嘗てに比べると大分減っている。

然しそんな中、ダゴンを散している内に、いつの間にかダンボールは周囲の艦隊から徐々に孤立していた。気付いたときには、いつの間にか石柱群のすぐ近くへと引き寄せられていた。

これは拙いと慌てて反転したところ、丁度ダンボールを門に押し込むような形でダゴンに体当たりを食らった。
慌てたのもつかの間、今度はダメージを受けた機体が盛大に暴走を始めた。

強い打撃を受けた影響か、ダンボール内部に設置された魔力コンデンサが逆流し、機体の要でもある魔力収集タービンが逆回転を始めたのだ。
タービンはつまりプロペラ。それも、ダゴンにより防護幕が壊され、むき出しになり、その上で逆回転。
つまり、タービンが、何の因果かスクリューに化けたのだ。

「にぎゃああああああああああ!!!???」

大慌てで機関停止を命じるも、ぶっ壊れた魔力コンデンサはジェネレーターまで巻き込んだらしく、どうも焦げ付いた回路が変な具合で接触、魔力収集用タービンと逆向きに直結してしまったらしい。
最早今回はコレまでかと早速諦めていると、機体はそのまますっと門の中へと突入してしまったのだ。

「ちょ、何処行く気ロボよ」
「知らん、あの世かもしれん。とりあえずあばよエルザ、ついでにドクター!!」

言いつつ、門の中に入りきった時点でダンボールが吹っ飛んだ。
まぁ、最早通常火力の爆発程度では死にはしないのだが。最低でも魔力を纏った攻撃でないと。

「で、なんだけど――カリン」
「Yes,Master 御前に」
「エセルドレーダごっこか」
「格好良かった」

マスターテリオンの走狗、愛犬などと揶揄される魔導書「ナコト写本」ことエセルドレーダ。彼女のその妄信ぶりは、同じく仕える魔導書であるカリンにも何か感じ入るところが有ったのかもしれない。

「アル・アジフの真似はしないのか?」
「――あれは萌えキャラ失格」

あー……うん。まぁ、言ってやるな。


「じゃなくて、だな」
「話を逸らしたのはマスター」
「……機神召喚!!」

話を逸らすように術式を走らせる。あふれ出す莫大な魔力に導かれ、赤いデウスマキナがその姿を表した。

うーん。
外観
ガワ
はアイオーンを魔改造した、という感じなのに、感じる魔力は完全に別物。無名祭祀書とか下手すると流血祈祷書の影響でも受けたかな?
一番似ているのはナコト写本の気配なのだが――いや、やっぱり無名祭祀書かも。

とりあえずその赤い機体――クラースナヤととりあえず名付けたその機体に身を躍らせ、即座にシャンタクを召喚する。
別に無くても飛べるのだが、シャンタクが有ったほうが安定するので。

「然し、そういえば何度も周回を繰り返しておいて、ヨグ=ソトースに突入するのは初めてだよな」
「Yes、いっつも此処に来る手前におっちんでました」
「――た、たまには生き延びただろ!」
「その場合は、世界各国で生産された破壊ロボモドキ相手に俺つえー無双してました」
「………」

デモンベインが立ち去ったその後の世界、それは、科学が台頭する魔境の時代だ。
ブラックロッジが残した、ドクターウェストの作品、破壊ロボ。各国はそれらを回収し、独自に開発を進めた。その結果訪れたのが、破壊ロボモドキが戦いあい、更には破壊ロボ対邪神なんていう場面がゴロゴロ転がる魔境な世界だった。

ま、まぁいいさ。
召喚後即座に発動させた隠匿術式。直接戦闘よりも忍んで逃げる事に定評の有る俺だ。例えこの門の内側にあろうと、逃げおおせる事に関しては外なる邪神すら欺いてみせる!!

と、そんなことを内心で考えつつ、如何したものかと機体を飛ばす。
何せ此処からの脱出は基本的に不可能。更に言うと、出口も何処にあるのやら解らない。
うーん、如何しようか。

「ダウジングを利用してみては?」
「おぉ、それだ」

カリンの提案を即座に承認。続いてバルザイの偃月刀を召喚する。
このバルザイの偃月刀って凄いよね。浮かべて回転させると、ダウジングの針にもなるんだよコイツ。
浮かべたダウジングの針に従って幾何学模様の回廊を進むと、いつの間にか何処かの宇宙空間へと降りていた。
ふむ、どうやら太陽系の内側ではある様子なのだけれども――。

「星の配置が予測と正しければ、火星と地球の間と判断」
「うげ」

火星と地球の間。確か、アイオーンのシャンタクを使っても50時間近く掛かる距離だったとか。
その半分――25時間としても、とてもではないが俺の集中力が持たない。

「ハスターの記述を使えば?」
「あ、そっか」

そうか、そうだ。シャンタクの記述に頼らずとも、より早いハスターの記述を持ってたんだっけ。いっつも軽い移動補助か牽制にしか使わないから若干忘れてた。

ハスターの記述を使う前に、懐から取り出したソレ。
黄金色に輝き、試験管の中にたゆたう液体。
コレこそ魔術的ドラッグ。術者の魔力を一時的にブーストさせる秘薬。
黄金の蜂蜜酒!!

あっま。




そうして何とかたどり着いた地球。魔力的消耗は許容量的にはまだまだ余裕なのだが、何分途轍もなく眠い。疲れると眠くなる。これは真理だ。
で、とりあえず地上に降りて、何処か宿を取りたいなー、などと考えていたら。
視線の先で、争う二つの影。いや、此処宇宙空間だし~、などと思っていたら、地上に落ちていくそれら二つの影。

「――なぁ」
「Yes、デモンベインとリベルレギスです」
「――聞く前に答えるなよぅ」
「つーん」

べ、ベタだが可愛いじゃねーか。じゃなくて。
うーん、この光景があるという事は、つまりあれは魔を断ち切れなかった魔を絶つ剣?
という事は、この後デモンベインはアリゾナへ、マスターテリオンはどこぞに消える、と?

つまり、何か。
死以外の方法で、ループした、と。

――ふーむ。

「カリン、全力で隠密を。全魔力をそれにまわせ」
「Yes,マスター」

何も聞かずに此方にあわせてくれるカリン。デウスマキナすら消して、マギウススタイルで宇宙を漂う。
アレがあるという事は、近くに――うわ、マジでいた!!

燃える三眼。這い寄る混沌。
心底楽しそうに嘲笑するそれ。如何見てもどっか逝ってるねーちゃんです。関わりたくありません。
幸い、これが最終週と言うわけでも無さそうだ。こっそりとその場を離れ、地味に背中から地球へ向けて降下開始した。

なに、幸い此方にはクトゥグアの加護がある。
更にその上からマギウス・スタイルを身に纏い、身の回りの防備はまさに完璧。

「うーし、じゃ、行こうか」
「何処に行きます?」
「うーん、折角原作の数十年前に来たんだし、折角だから何か面白いものでも探しに行こうか」

なんて、そんなことを嘯きながら、俺達は日本へ向けて降下を開始したのだった。







正直な話、ナイアルラトホテップが「幾星霜」って数えたのは、数字を読むのが面倒だったからじゃないかなと思う周目。



面白い。実に面白い。
完全攻略したと思って積んでおいたゲームを、気分転換にやったら実は更に裏ルートが存在していたとかそういう様な気分だ。
まさか、過去にジャンプして攻略を進めるなんてルートが存在していたとは。
思わず日本経済に背後から介入して、日本と言う国の国力を急成長させてしまった。
覇道財閥がナンボの物かと言わんばかりの成長。まぁ、覇道とはあまり競合しない所為で、あまり本編には関わらないのだが。

で、俺の話。
経済に介入した後で気づいたのだが、下手したらコレ、俺が生まれる下地まで変革しかねないか、と。
うわ、やべぇと焦ったときには既に遅く、仕方が無いので開き直って更に改革を進めてみた。

で、それから数十年。俺も年をとった。
驚いたことと言うかご都合主義と言うか、この世界で俺が生活するのは中々に疲れる。
多分基盤が違うものを使っているからだろうと考えていたのだが。
その所為かは知らないが、久々に老衰で死んだ。若いんだけど老衰て。



で、転生したわけなのだが。転生したのに世界が変化していない、というのも中々面白い経験だ。

「カリン」
「Yes,マスター」

転生して、6歳くらい。ある程度自分ひとりでの行動が可能になった時点で、即座にカリンを呼び出した。
まだ幼い俺とカリンでは、流石にカリンのほうが年上に見える。うーん、頬を染めるなカリン。

早速“嘗て”の俺が用意しておいた資金の情報などを調べようとして、思わず何かに引っかかった。

首をかしげて、次いで己のステータスをチェックして、思わず頬が引きつるのがわかった。
鑑定眼によるスキル表示には表示されていないが、それでも俺にはわかる。
俺の魂が、若干ではあるが、今までに類を見ないほどに急激に変質しているのだ。

「……これは……。カリン、この状態でよく気付けたな」
「Yes,何せ、私はマスターとダイレクトに接続していますから」
「ふむ――原因はわかるか?」
「予想です。前回の魂がこの世界に来訪した事による影響かと」
「――おぉ」

成程、と理解する。

本来あるべきループとは、大十字九郎とマスターテリオン、両者が生まれた世界を飛び立ち、過去に近い平行宇宙を訪れる、と言うものだ。
大十字九郎と言う存在がループにより過去を訪れる事で、全く同じ魂が二つ存在する、という矛盾が発生する。
世界はこの矛盾を解消すべく、新たな大十字九郎の魂を若干変質させる。――より、魔の属性に高い親和性を持たせて。
ニャルラトテップはこの性質を利用し、人工的――いや、神造的に、白き王を生み出そうとしている。

今回の俺の急激な成長。もしかして、このループによる変異が俺にも適用された――?

「……面白いじゃないか」
「Yes,私も、コレまでに無いほど快調です」

ニヤリ、と笑みを浮かべる。
これは、色々挑むチャンスだ――!!

06 色々キャラ崩壊する話

2012.07.16 (Mon)

億と三千少し。


シュブ=ニグラ傘下の魔術結社と、トカゲっぽい化物を操る魔術結社が争っていた。
どうにもトカゲ側の狙いはシュブ=ニグラ側の保有する魔導書らしく、シュブ=ニグラ側は撤退戦の最中、と言う様子だった。

まぁ、基本的にシュブ=ニグラスって地属性の邪神の中ではそれほど有害というわけでもないし。
黒い豊穣の女神、と呼ばれるだけあって、奉っていれば農業の収穫率がアップしたりする。
但しその野菜を食うと若干SAN値が下がるが。それでも美味いのだ。

如何考えてもトカゲ側が害悪。そう判断して、即座にクトゥグアの炎をトカゲに叩き込んだ。
最近になると、クトゥグアの炎もかなりの精度を持って制御できるようになってきた。
適当に暴れていると、今度はシュブ=ニグラス傘下の側が反撃に移った。
いや、市街地で黒い子山羊の大群を嗾けるのはどうかと思う。耐性無い人間が――あーあー、窓に向かって叫び始めた。「窓に! 窓に!」って。
まぁ、シュブ=ニグラス側はある程度良識があったのか、撤退完了と共に黒き子山羊を召還していた。
俺はと言うと、とりあえずあのトカゲ人間を殲滅して、その中央に居た魔導書を持ったアラブ系の女性を燃やしておいた。
何か不気味な魔導書を持っていたっぽいが、俺が如何こうする前にカリンが食べてしまった。
行儀も躾けるべきだろうか……?



億と三千と少しから一周
何故かシュブ=ニグラスの教団に誘われた。
俺はフリーのホラーハンター気取りなので、お誘いは丁重にお断りしたのだが。
そしたら、何故かシュブ=ニグラスとの親和性が友好的にまで上昇していた。いや、意味が解らない。




億と3千終盤

何か寝ていたら、魂が突然どこかに引っ張られた。
何事かと慌てると、星の海を渡って宇宙の彼方に。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「あ、あわわ」

で、目の前に現れたのは、無限の熱量で形作られた獣。
いや、その正体は流石に理解できる。何せ俺、この存在の力は一番よく利用させてもらっているしい。
――という事は、此処、フォマルハウトか。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「え、あう、はい」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「あ、そですか」

意訳すると、「お前、なんか知らんけどニャルラトテップの庭で暗躍しとるらしいな。シュブちゃんから聞いたえ?」「面白いやん。ウチもあのド腐れは好かんからなぁ」
といったところか。
いや、本当にそういうニュアンスだったんだって。

で――嗚呼もう面倒い。

『いやな、今日呼んだんは、お前にちょっとサービスをやろうかな、って』
「え、ええっ!?」
『言うても、そんなでかい事は出来んよ。派手な事したらよわっちい無敵の頑固馬鹿が怒るからの』

と、炎の獣から放たれた炎が、俺の躯を覆いつくす。彼女(彼?)の炎に燃やされてしまっては、流石に致命傷になるな、と背筋を冷しつつ、然し訪れたのは予想していたような痛みではなく。

『ウチの加護や。ウチの配下は須らくアンタに力を貸す。でも、調子乗ったらあかんえ? それと、絶対あのド腐れにきつい一撃かます事。約束やで』

言われて、理解する。これ、クトゥグアの祝福か!?
もし俺にスキル欄がアレば、間違いなく「クトゥグアの加護」って出るだろうな。効果は――炎に対する親和性ってところか??

『ほんじゃーの』
「て、ちょ、あざーっす!!」

ベチン、と彼女(?)の尻尾に叩かれて、俺の身体はマッハどころか概念を超越した速度という意味不明な結果によって、地球のほうへ向かって叩き飛ばされたのだった。


「はっ!?」

目が冷めて、慌てて身体をチェックする。
何か、若干神性が強化されてるよ――。クトゥグアの加護、間違いなく稼動してる。
何せ、ちょっと睨んだだけで部屋の花瓶の造花が燃えたし。何処のパイロキネシストだよと。

――って、ちょ、ああっSAN値が!? 窓に! 窓に!
猛烈に脳裏に沸き上がる邪神の姿。こ、これは発狂してる!?
机に向い、ガリガリと手が紙に勝手に何かを書き記していく。ちょ、これ拙い!?
カリンは――何を暢気に俺の手稿を食ってるんだお前はっ!!!




結果、発狂して死亡。
其処から魂が安定するまで実に10周ほど不安定な人生を過す。




億と4千周くらい。

久々にホラーハンターとして活躍していた今周。何故か再びあの感覚に襲われた。
何事かと警戒していると、今度は何か佳くわからない神性に牽引されて宇宙を進んでいた。
――これ、ビヤーキー?
まさか、とは思いつつも、覚悟だけは決めておく。

※以下『』神性
『よ』
「――どうも」

其処に居たのは、黄色いマントと派手な王冠を被った、何処かチャラい印象の成人男性の外見をした存在だった。
う、うーん、いいのかコレ?

「大体予想は付きますけど、貴方様は――」
『んー、予想付くならいいだろ?』

予想は当ってるのねー、と胃痛を感じた。

「で、御身はこの度私に何の誤用で?」
『うん、いやな、この間偶々放火魔とシュブに連絡するよう字が有って』
「放火魔て」
『他所の住居に放火して、森一つ延焼させるヤツだぞ?』
「――御身らにしてみれば、そんな感覚なのか――」

流石に感覚のスケールが違う。ガリガリSAN値が削られてるのが解るぜ!!

『でな、二人曰く、面白い人間がいて、加護を与えてみた、って』
「あー、いやー、俺、そんなに面白いでしょうか?」
『んー、若干外れてはいるが、たかが人間があの若作りの庭で、若作りに気付かれないように潜んでいる、って状況は中々面白いとおもうけど?』
「え、まだ気づかれてないの!?」

と、思わず声を上げていた。
何せあの演出好きの邪神の事だ。俺のことはとっくにお見通しで、あえて俺を見逃しているのかと思ってた。何せ俺、基本的に大十字とテリオンの戦いには干渉しない方針だったし。

俺の方針は、合理的な被害の削減。

『んー、お前のステータスがなー』
「え、ナニソレ。ステータスなんて見れるの!?」
『んー。――あ、人間はこういうの見れないんだっけ? んじゃ、ほら』
「え、なにその「神様では常識です」みたいな対応。って、ええっ!?」

諏訪 鋼一 属性:中立・中庸
筋力 C (D)
耐久力 B(C+)
魔力 A++(A)
幸運 A
俊敏 B
宝具 ???

保有スキル
・イレギュラー EX
観測世界への堕落の印。EXにも成ると、物語の根本をも揺るがしかねない。また、物語に内在しながら『物語』のあらゆる強制干渉を受け付けない。(検閲の不可能化)
・狂気の飼い主 EX
心を犯す知識に汚染されながら、尚その狂気を飼いならす者。字祷子を扱う魔導師には必須スキル。
無限の輪廻に磨耗する魂は至玉の如く。あらゆる精神干渉から魂を守る。
・半神 C (B)
神性を現すスキル。魂が若干神格化している。魔力、精神面に影響があり、幼い身体での全力行使は自滅の元。
汚染率としては高い神性を持つのだが、人としての自意識により神格を押さえ込んでいる。そのため寿命も人間レベル。
・魔術 A
魔術の巧みさ。無限螺旋で鍛えられたもの。大体の魔術をワンアクションで行使できる。
・対魔力 B++(B)
魔力を使用した現象に対する抵抗力。半神化、および加護により向上している。
・千里眼 EX
身体的な視力のよさ。派生して透視や未来視など。二次対象に対する影響力を持つ放出系以外の『目』『眼』の名前を持つスキルの大半を使用可能となる。
・心眼(偽)A
魔導からの派生。元々持つ野生の直感。魔導師として鍛え上げられた事で、危機察知に対しては抜群の精度を誇る。
・鑑定眼 B--New!!(_from Hastur)
視認対象のステータスを確認できる。
Bは一見で相手の名前、体力、魔力を見抜き、見て得たスキル情報などは別口での閲覧が可能。
精度は高め。技術などは実際の使用する姿を確認する事で確実な情報へと更新される。
・シュブ=ニグラスの加護 A
黒き豊穣の女神からの加護。彼女を崇拝する魔術結社を助けたことから。
地に対する親和性と、怪我や病気に対する回復力、また呪に対する抵抗力の向上、耐久力の向上。
農業をすると大体豊作かつ良質になる。ただし作物はSAN値を削る。
・クトゥグアの加護 A
炎の化身の加護。シュブ=ニグラスの紹介(?)であり、まだ憎きあんチクショウに対する嫌がらせとして。よくクトゥグアの炎を利用するがためにサービスとして得た。
クトゥグアの眷属に対する優位性、炎との親和性などを得る。

宝具
・ネクロノミコンラテン語版からの再編
ネクロノミコンラテン語版を元に、古今東西の魔導書の記述を取り込み独自改変した書物。
ネクロノミコンと言うより、内容的には寧ろナコト写本に近付いている。
黒髪青目の美幼女が化身。


「なんでサーヴァントのステータス表示式なんだ!? って、イレギュラー?」
『そりゃ、ほら、アレだ。ゼロがアニメ化したから――って、うん、そうそう。そのイレギュラーってスキルが原因だな』

闇の皇太子が何か馬鹿な事を言っているが、その辺りはさっくり無視して、と。
そう言うメタ発言は混沌さんのキャラでしょうに。

『そのイレギュラー、要するにこの“字祷子の庭”の外側から来た存在が持ってるスキル。外側から来た存在には、俺達そう簡単には干渉できないからさ』

何せ文字通り法則が違うんだから、と闇の皇太子様。
成程。何か、あるぇ? なんでこんな世界観ひっくり返しかねない状況になって、俺の事情として根本的ななぞが一つ解明されてるんだろう。

「あれ? でもそれにしては俺、偶に検閲されてるというか、勝手に加筆された痕跡みたいなのを感じたんだけど」
『あぁ、そりゃお前等の世界の神じゃね?』
「はぁ!?」
『何処の神も愉快犯ばっかりだからな』

なんじゃそりゃ、と思わず言葉が零れた。――何時か、魔を絶つ剣に近づければ、その神は叩き斬る。
とりあえず、せめて、もう少し緊張感のある展開でネタバレして欲しかったような。

『んで、お前俺の力も割と使ってるから。2柱の紹介も含めて、ほれ』

そういって魔風が俺を包み込む。
――うぁ、ステータスが追加されてるよ。しかもその影響か、若干全体のステータスが上昇してるし。俊敏が一番目立つ変化かな。
・ハスターの加護 A
闇の皇太子の加護。全ての魔風は我と共に。風との親和性向上。また風属性に対する強い影響力。
更に魔力を消費する事で機動力を向上させることが出来る。



「良いんですかね?」
『いいんだとも。所詮俺達は邪神だぜ?』
「いや、自分で言うのもどうかと」
『崇拝してくれるやつにはちゃんと力を貸すし、コレはソレとは別口。俺達の娯楽の一環なんだから』

成程、と頷く。
つまり、俺に力を与える事で、どの程度あの混沌の庭の引っ掻き回せるか、という事なのだろう。
うーん、俺、それほど暴れる心算は無かったんだけどなぁ。
クトゥグアと約束した、混沌に一撃入れる、っていうのは何とか達成するつもりだけど。

『字祷子の庭に住む邪神ってのは、大概娯楽に飢えてる。俺達がお前等知的生命体にちょっかいをかけるのって、実際娯楽だし』
「ちょ、ブッチャケた!?」
『だって、考えればわかると思うんだが、俺達がお前等に力を貸して、一体何になるよ?』
「し、信仰とか」
『人類なんぞよりよっぽど信仰してくれる奉仕種族は宇宙中に居るが? 第一、信仰ってナニソレ美味しいの?』
「邪神がそのネタ使うなや!!」

い、いかん!! ついつい突っ込みに走ってしまう!!
もうやだなにこれ。シリアスブレイクとかカリスマブレイクとか、そういうレベルの話じゃないぞ!?

『ま、そういうわけだ。俺からのサービス、有効に使えよ』





そうして目が覚めると、身体が静かに風を纏っているのを感じ取った。うへぇ、本当にアレの祝福っぽい。
何か鑑定眼スキルも実装されてるし、――って、んぎゃあああああああああ!!!!????

突如頭を襲うカオス。余りの痛みに発狂すら許されないそれ。そうして次に襲い掛かってきたのは、肉体の暴走。邪神を直視し、あまつさえ鑑定眼なんてスキルまで与えられてしまったのだ。
邪神を鑑定する――何その自殺行為。

「ぐ、お、おのれ邪神んんんん――」

頭の中の狂気を、頭から押し出すかのようにして、再び俺はペンを手に取る。
そうしてそのすぐ隣、ニコニコといつの間にか擬人化して待機するカリンの姿。心配して欲しいな、なんて思う俺は我侭なんだろうか。
ふぅ、と小さく息を吐く。

――さぁ、行くぞカリン。用紙の貯蔵は十分か――っ!!





・発狂して死亡。正確には食事を忘れて餓死。
半神化してるのに餓死て……。orz






億と4千周ちょっと。


あのセカンドインパクト(邪神という存在に対して)から数周。
邪神を生で見るという経験を人生で二度も経験したのは、そう多くは無いのではないだろうか。
まぁ、二度目と言うことも有って、数周で精神も復帰したが。

とか思っていたら、また引っ張られた。
今度は誰だよともう憂鬱としながら視線を上げると――。

「うげ」

思わず声が出た。目の前に居たそれ。タコのような緑のおどろおどろしく狂気を司った神である怪物であり旧支配者たるCCCCCCCCCcつうっつるうるううるるるるる―――再起動。
――精神防御網再構築。
――構成完了。

「――ぶはぁ!!」

慌てて、ソレから眼を逸らす。
危な。危うくSAN値を削りきって死ぬところだった。SAN値減少による死は周回を経て後を引くから厭なんだよなぁ。

「――眼を見ぬ失礼をお許しいただきたい。偉大なるCよ、卑賤な人間である俺に、一体何用か」
『――シュブ=ニグラス曰く。お前は面白い駒であるらしい』

眠たそうなニュアンスで、ぼそぼそとそんなことを言うタコの化物。
と、途端強烈な潮の香りが身を包んだ。何事かと慌てるが、身に沁みる神気に、真逆と慌てて己を鑑定する。
――うわ、クトゥルーの加護て。
水及び腐食を初めとする状態異常系に対する耐性、海というフィールドにおける適性向上などなど。
ステータスも、魔力がEXになって幸運が――マイナス補正付いた!?
ぐ、ぐぅぅ、さすが神話のタイトルに名を馳せる邪神。祝福でマイナス補正つけやがった。
と、俺に祝福を与えたクトゥルーは、何処か満足げな、それでいて眠そうな声で小さく頷いた。

『――金ピカには――負けんよ――――――』

金ピカって誰だ。英雄王でも居るのか、と思わず突っ込みそうに成ったが自重した。
どうせクトゥルーが敵対するって言うと、闇の皇太子だろうし。
確かあの二柱って、シュブ=ニグラスを挟んだ三角関係なんだっけ? くわしくしりません。



目が覚めて、何時も通り発狂。
今回はわかりやすい人型を取ってくれていなかった所為で、物凄くSAN値が削られた。
然しまだ慌てる時間じゃない。何せ俺は此処数回邪神に召されてSAN値をガリガリ削られていたのだ。
もう大分削られなれた。

「さて、カリン」
「はい。にー様」
「……それはバカンスの時だけ」
「じゃ、ダディー?」
「そりゃハヅキちゃんのだ」
「イエス、マスター」
「……あー、エセルドレイダか、リトルエイダ?」
「――最後のは普通だと思う」
「あ、うん。そだね」

あー、げふん。

「さてカリン。またSAN値直葬されかかってるのだが」
「ごはんTimeですね!!」
「――お前、何時から腹ペコキャラに……」

思わずガックリ膝を突きたくなったが、期待に瞳を輝かせるカリンを見ると、何かもう細かい事は如何でも良くなった。

「んじゃ、いくか」
「イタダキマス」

パチン、と手を合わせるカリンを横目に、狂気の吐出しにかかるのだった。続きを読む

05 瞳を閉じて(いたらループがkskした)。

2012.07.16 (Mon)
大体1000周目強。

漸く、やっとの思いで機神召喚にたどり着いた。
まさか2万年近く掛かるとは、流石の俺にも想像してなかった。
途中何度挫けそうに成った事か。だが、俺はついにたどり着いた!!
自分の娘に等しいカリンにニチャニチャ慰めてもらったりと色々情け無いが、それでも俺はついに至ったのだ!!
ふはははは!! 何か若干魂が変質しだしたり、素の肉体のパワーが初っ端から常人離れしていたりと、半魔化してるけど気にしない!!
魔導師として強力に成った理由が、ロリペドに走った所為のような気がしないでもないが気にしない!!
召喚といっても、術式自体がかなりアヤフヤで、まだまだ改良の余地もあるし。

さあ! 今周も魔導書食いに行くぞ~!!




1500周目

漸く機神召喚が形になりつつある。
基本的なデザインはアイオーンなのだが、何故か俺の機体のデザインにはひらひらが多い。
ひらひらと言うか、装甲がシャープに丸みを帯びて、その内側に魔力式推進機関みたいなものが多数設置されているのだ。
うーん、いわばブラ○ク・サレナとアー○ヤをアイオーンに足して割ったような感じか。
あぁ、其処にクロックワークを付け足したようなデザイン。クロックワーク・ファントムな。
若干敵役臭いデザインだけど――まぁいいか。
然し現状、出力不足でシャンタクまで手が廻らない。




大体2000周を超えた辺り。
漸く、漸くシャンタクと鬼械神を同時に扱えるようになった!!
空飛べない鬼械神とか、余りにも役に立たなさすぎてここ500周近くは必死こいて魔力総量を高める為に只管瞑想と実戦を繰り返していた。
アンチクロスも、カリグラと糞ガキ辺りならサシでやれば勝てる程度には腕も上げた。
くくく、これで逆十字の残る面々にもある程度は挑めるはず!!



ドクターに撃破されました。




ぬ、ぬかった。火力不足とは。






制御に手一杯でその他に全く手が廻らなかったという罠。






大体3000周目くらい。
カリンと共に過すようになってどれ程立っただろうか。
カリンに依存する事で精神の均衡を保っていたが、それでももうカナリやばい。
自らの記憶、知識、経験を整理し、必要分と必要無さそうな部分を区別し編纂しカリンに預け、自らの記憶を一度リセットする。
何、魂の変質自体は消えてなくなるわけではない。習得速度は、始まりに比べれば比較にならない程度のものにはなっているはずだ。

誰かも言っていた。其処に至る為には知識が必要で、知識があるが故に最後の一線を越えられない、と。

どうなるかは解らんが、いざとなれば俺の記憶が自動的に復活するようになっている。まぁ、大昔におれがやった自己暗示の術の強化版のようなものだ。
さて。
俺はどんな運命を辿るのやら。





不明。3万周目くらい。

カリンに呼び起こされて目覚めてみれば、どうやら今周の俺はミスカトニックの学生をやっているらしい。
うーん、今さらなんでミスカトニックに、なんて思っていたら、どうやらミスカトニックの経済学科の学生として入学したら、怪異に巻き込まれて魔導師としての教育を受ける事に成ったらしい。
王道な展開だなぁ――って、いやいやいや、何やってんのよ俺。
予め万周を超えるストックが有る俺だ。そりゃ一気にエリートになりもする。
有頂天に成っていた俺だが、どうもミスカトニックの陰秘学科でライバルと呼べる存在にめぐり合ったのだそうだ。
それが、大十字九郎。人類の正義の極地、白の王。
そんな記憶に思わず頭痛を感じていると、どうやら俺、大十字とは此処数週、高確率で仲良くなっているらしい。
というのも、どうもここ数周の俺、実家の関係で渡米し、そのままミスカトニックに定住しているのだが、同じ日本出身であり、また共に魔術を研鑽する中という事でよく付き合っていたそうだ。
なんともまぁ。

で、更にここ数周の話、どうやら俺の死亡原因は魔術的闘争というよりは、大十字を庇って格好良く死ぬ、というのが多かったらしい。
俺馬鹿じゃね???






4万と少し。

何故か知らないが、気付いたらウェスパシアヌスとの共同研究ルートに進んでいた。意味が解らない。
どうも魔導機械を扱えるという事で、ウェスパシアヌスに気に入られたらしい。
改造人間用の小型魔導機械の技術を共同で開発し、互いにウィンウィンの関係を結べたのだとか。
いや、いやいや。何考えてるんだか俺よ。それ、二回目の俺の仇。

でも、この周は凄かった。俺の研究していたのは、『肉体に埋め込んだ呪具を用いた挙動による略式祈祷呪術』と言うもの。物凄ーく簡単に説明すると、変身ポーズを決めると本当に変身できたり、ラ○ダーキックに呪術的負荷を追加したり、掛け声と共に腕をクロスさせるとスペ○ウム光線が発射できたり。いや、発射されるのはただの呪(フィンの一撃相当)だけど。
この周のブラックロッジは凄く熱かった。変身と必殺技が横行してたしなぁ。

何故か下級社員が一番多い周だった。





5万周目くらい
今回はどうやら、久々にドクターの元で開発に勤しんでいるらしかった。
なんでもドクターのサポートではあるが、同時にドクターと喧々諤々と喧嘩する仲なのだとか。
で、あちらは魔導理論を搭載したドラム缶、此方は魔導理論を搭載したダンボール。
どちらの機体がより優秀か、キッパリはっきり優劣を決める為、ここアーカムの町のど真ん中で巨大ロボ同士の決闘が始まるのだ。

「ンフ、ンフフゲァーッヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァ!!! 漸く、漸くこのときが来たのである。我輩と貴様、共に科学による真実を生み出すものであるが、それゆえに相容れぬ真実を生み出すこともまたあり。この辺りで一度確りと決着をつけておきたいと努々思っていたところなのであ~る!!」
「ふん、俺の答えが、ドクターにとっての違う真実と認められている、それ自体は光栄だな」
「ふひゃひゃひゃ!! では行くぞ我が弟子! エェェエエエエルザアアア、ゴォォォオオオウウウウウウ!!!!」
「恨みは無いけど、覚悟するロボよ!!」

言いつつ、ガッチョンガッチョンと此方に近寄ってくるドラム缶。
此方もダンボールを前に進め、両腕のパイルに魔力を充填させる。
魔力パイル。アイオーンすら破壊するこの一撃だが、残念ながらドクターの破壊ロボにはこの一撃は通用しない。
というか、直撃を許さないのだ。

「ロボォッ!!」

ガツン、と放たれたパイル。然しソレは、曲線を描くドラム缶の装甲によって方向を逸らされ、威力の大半を軽減させられてしまっていた。

「いぃまだ! スーパーウェスト式“男の浪漫”ドリルゥ!」
「ロボォ!!」

ガツン、とぶち当たるドリル。ガリガリと削られる装甲だが、然しドリルはある程度ダンボールに沈み込んだ時点で、それ以上奥に進まず、空転したまま抜く事すら出来ない、というような状態に成る。

「な、何ですとぅ!?」
「肉を切らせて骨を絶つ!! ダンボール装甲は伊達じゃない!!」

近接状態からのパイルを放とうとして、それを万能腕の一本に阻まれる。ならばと別の腕で中型レールガンを放とうとすると、それもキャノン方をぶつけて逸らされる。

「おのれ!!」
「ろぼぉ!!」
「ぬぐっ!!」

ガパッ、と音を立てて開くドラム缶とダンボール。
その中から現れるのは無数のマジックハンド。
両機がまるで毛に覆われたかのように見えるその有様で、互いに互いのマジックハンドの邪魔をしつつ、なんとか一撃を叩き込もうとモジャモジャもがく両機。

そうこう暴れていると、不意にウウィーンという駆動音が響いてくる。

「ちょ、ドクター!」
「なぁんであるか、今わが這い途轍もなく忙しいのである。具体的には、三日三晩必死こいて寝込ませたカレーの前に空腹の大食漢がいて、嗚呼駄目だこの子は私の血と汗の結晶、貴女なんかには渡せないは、いいやハニー、ソレこそ僕たちが求め合った愛の結晶、ああ、ハニー、ハニーと百合百合なお花畑が咲き乱れる花園を地味に盗撮しようとする輩を通報する程度には忙しいのである!!」
「わかったから、ドクター、デモンベインがくるぞ」
「なぬっ!?」


「こんの■■■■共がっ!! 俺の貴重な栄養補給の邪魔しやがってえっ!!!」
「己らに、ひっくり返されたフルコースの恨み、篤と味あわせてくれよう!!」

うわぉう。何か知らんが、変な恨みを買ってしまったようだ。

「ちょっと待てペド探偵。確かに俺は敵対しているが、■■■■扱いはやめい」
「その前にペドって呼ぶのを止めたらなぁ!!」
「えっ、でも幼女はべらせてる無職を他に何て呼べば……」
「うむ、諦めろ九郎」
「ちょ、アル手前どっちの味方なんだよ!!」
「そ、そうは言ってものう。事実昨夜とてあれほど激しく(ナイトゴーントとの訓練を)妾と一晩中ヤッて居ったではないか……」
「紛らわしい言い方やめぃ!!」

はいはいギャグワロスワロス。

「ええい、此処であったが3日目の煮込みカレーだ大十字九郎、コトコトに込んでクリームシチューにしてくれるわっ!!ってあれ、ルーは何処にいったのであろうか」
「昨日の晩おじいちゃんがチョコと間違えて食べちゃったロボよ」
「あぁ、そりゃうっかり。テヘッ☆」
「フヒャーッハッハッハ」「ローボロボロボロボ」
「ええい喧しいぞ■■■■コンビがっ!!」
「だからペドフィリアに言われたく(略」
「嗚呼もう面倒くせぇ!! とりあえず、ブッ倒す!!」

いいながら飛び掛ってくるデモンベイン。
断鎖術式での二段ジャンプは、こういう高速移動にとても便利なのだ。
然し、然しだ。

「エルザ、十字火砲で」
「了解ロボ」
「ちょ、なーんで我輩でなくてエルザノおおおっ!?」

近寄るデモンベインから一気に距離をとり、デモンベインとダンボール、ドラム缶の位置が二等辺三角形になるように配置して、と。

「いぃまだあっ!! ジェーノサイドクロスファイヤアアア!!!!」
「スクウェアポイント、シュート」

ドラム缶とダンボールから放たれる対魔術式を刻印された特殊弾等。
咄嗟にエルダーサインを張るデモンベインだが、当然の如くエルダーサインを引き裂いてデモンベインを削る弾等。
然し――大昔、コレを最初に開発した頃に比べて、エルダーサインの強度が若干上がっているような――。
ふむ、大十字九郎はこの無限螺旋の中で着実に強くなっている、と言うことか。

とりあえず、流れ弾に見せかけて、未開地域を何時もの如く吹き飛ばし、ついでにデモンベインの改良すべきポイントを狙って破壊しておく。
うーん、さすが俺。ピンポイントな威力行使は俺の最も特筆すべき点だとおもう。


で、結局どうなったかと言うと。
何処からとも無く現れたメタトロンに博士の破壊ロボが吹き飛ばされ、次いでデモンベインのレムリアインパクトでダンボールが昇華した。
ちくせう。

04 そうだ、魔導書を作ろう。

2012.07.16 (Mon)
あかん。磨耗する。
ループが300回を越えた辺りで、そろそろ限界が近いと感じ始めた。
さすがに、人間を止めるでもなく6000年近く生き死にを続けていると、精神が。
その癖魔導師としては何故か二流どまり。未だに機神召喚もうまく行かない。
これは、アレか。消滅するかも。

長く生き過ぎた所為か、どうにもココロが動かない。
何を見ても、何処かで見たことがあるように感じる。
何を見ても、何処かであった事のように感じる。
何に対しても心が動かない。

その事を拙いと感じつつも、どこか諦めている自分が居る。




ただ、俺が一番いやなのは、既に諦めだしている自分が居る事。それこそが最も唾棄すべき事態なのだ。


ナイアルラトホテップの言葉を鑑みるに、多分こんな段階はまだまだ序盤に過ぎないはずだ。
こんな所で砕けるわけには行かない。こんな所で死んでしまう心算は、欠片も無いのだ。

考えた結果、記憶を移す事にしようと思う。
ただ、単に記録を残すだけでは意味が無い。それはあくまでこの世界に属するオブジェクトになってしまう。
では、何等かの記憶を、魂に付随するオブジェクトとして認識させ、俺の転生に同道できるように仕組まねば成らない。

然しそんな代物は早々手に入るまい。魂に同道する外部容量? 賢者の石でもあるまいし、そんな事が出来る代物は――――あ。

待てよ。
この無限螺旋、記憶を保持したまま次のループに移動できるのは、
ナイアルラトホテップと、マスターテリオンとナコト写本ペア、大十字九郎とアル・アジフペア。
この五名のみだ。
ナイアルラトホテップは神で考慮から除外。テリオンとナコト写本もあちら側として除外。

では、大十字九郎とアル・アジフ。
この二者を見る。

――そうだ。魔導書だ。
外道の知識の集大成であるそれ。
不老にいたる知識もあれば、虚数を渡すほどの演算能力をも持ちえ、かつマスターと魂のレベルにおいて契約を結ぶ。

これだ、と思った。

然し、普通の魔導書では駄目だ。
より強い魔力を持ち、より俺と深い縁を持つ魔導書でなければ。





666周目。


なんとも因果な数字だが、今回の目的は、俺専用の魔導書を生み出すことだ。

現在、俺と最も縁の深い魔導書と言うと、あの洋館から得られるネクロノミコンラテン語版だ。
何せ、新訳英語版から入って、次に手に取ったのがあのラテン語版だ。あれと相性がいいというよりは、俺が相性よくなったのだ。

という事で、新たに書き出す魔導書は、ネクロノミコンラテン語版を下敷きにすることと成った。
まぁ、ある意味では安定の選択だろう。

さて、現在の俺の知識は、そこいらの魔導書のソレに比べると、途轍もなく深くなってしまっている。それこそ、ナコト写本であろうと徹夜で熟読でもしない限り狂えないほどに。
此処まで汚染されてしまうと、早々魔導書による汚染を恐れる必要もないのだが、とりあえず初心に帰って心を落ち着けながら魔導書たちを手に取る。

現在手元にある高位の魔導書は、
ネクロノミコンラテン語版、
エイボンの書、
無名祭祀書(黒の書)、
あとエルトダウン・シャーズなんて代物があったのには度肝抜かされた。まぁ、どうも「エルトダウン・シャーズ」自体ではなく、原典の模写を冊子に纏めただけのようだが。

知識だけならば、
クラウディウスのセラエノ断章、
ウェスパシアヌスが入手する前のルルイエ異本
あとミスカトニック秘密図書館の書籍の大体。

コレだけの知識が有れば、割といい魔導書が書けるのではないだろうか。
己の正気と狂気と血と魂と全てを籠めて。




最初に、富士の樹海に足を踏み入れる。
此処はいい。霊験あらたかな霊樹が多く、呪具の触媒と成りそうな死体も大量に転がっている。
ダウジングに導かれるまま霊樹を伐採し、使えそうな者を根こそぎ拾う。拾ったものは、とりあえずで使っているネクロノミコンラテン語版によって亜空間に格納する。
遺体は――さすがに勘弁して欲しかったので、見つけ次第線香を焚いて先に進んだ。

で、手に入れた樹木を製紙して、製本のために一通り必要なものをそろえる。
勿論此処にも一通り細工をしておく。
表紙の背にインクで呪術的な刻印なんかも仕込んでおく。
因みにインクにも細工をしてあり、俺の血液を精製した霊薬を混ぜ込んである。

ふふふ、錬金術を駆使して作り上げたこの紙と表紙。
あとは俺の知識の持てる限りを此処に記せばいいのだ。
さて、始めますか。





3日目。死掛ける。
魔導書の魔力恐るべし。




6日目。死掛ける。
学習しないな俺は。


9日目。また死掛ける。
だから徹夜をすれば死ぬと。




12日目。
また死掛けた。ちょっとダメージがでかいので、筆をおかざるを得ない。



15日目
記述再開。


20日目
旧神の記述、クトゥグア、ハスターなんかの記述は、ネクロノミコンよりもセラエノ断章のほうが詳しかった。改稿。



30日目。
少し休憩を挟む。



45日目。
エイボンの書は良い。外なる神の知識が詳しい。
演算能力も凄く、虚数展開カタパルトやら空間転移の術式に優れている。
これは記述せざるを得ない。




56日目。
やばい。暫く家の外に出ていない。
一ヶ月ほど外に出て、身体を鍛え休めることにする。





86日目
記述再開。




100日目
キリがいいのでメモ。


121日目
拙い、まだ完成してないのに魔導書として成立しつつある。既に記述が魔力を孕みだした。
未完成のこの状態で字祷子に触れさせるのは拙い。何かしらの隔離空間を作らねば。


123日目
借り受けたアパートに呪術的封印を施し、そこを自らの執筆拠点とした。
なにやら呪われていたので、お払いしておいた。格安物件である。



143日目
なんだか知らないが、建物の管理人が大丈夫ですか~、今なら違約金は安めで済ませますよ~とか言ってきた。成程、幽霊物件で違約金をせしめる類の悪質な業者だったか。
まぁ、このまま延々居座らせて貰おうと想う。
なに、案ずるな。出る時には字祷子汚染で酷い事になっているさ。


162日目
気付けば筆がおかしな方向に進んでいた。
ニャル子さん、続きを読む為にも元の世界に返りたいなぁ。
少し休憩を挟む



170日目
執筆再開




200日目
やばい、旧支配者の代表的な四柱の記述の完成度がおかしい。
てか、あれぇ? 俺ナイアルラトテップの記述とか何処で知識を得たっけ???




220日目
きが、くるう。


230日目
あかん、また休憩をいれねば。一ヶ月くらいやすむ。



260日目。
記述再開。



283日目
近所に怪異が発生した。どうもこのマンションから魔力が洩れたらしく、そこに怪異がひかれたのだろう。
慌てて結界を修復し、ついでに怪異も消し飛ばしておいた。




300日目
知識としての記述は書き終えた。
あとは、制御の為の俺が生身で得たアドバイスを記そうと思う。
今年中には完成させたい。




332日目
制御の術式が半分完成。


360日目
制御術式が完成。疲れた。
後は製本するだけ。今年中には終われそうだ。


366日目
除夜の鐘にあわせて魔導書を完成させたら、その瞬間に莫大な魔力があふれ出した。
俺の作った隔離結界? 一瞬で吹き飛ばされたさ。
慌てて魔導書を宥め(?)て沈静化させた。
驚いた事に、未分化ながら魂が宿っているらしい。意志、までは行かない様子だが。
面白い現象だ。


二年目。

7日目。
面白い事が別った。このネクロノミコン再編版、どうも今現在成長期らしい。
意味が解らない? 要するにこの魔導書、生まれたての赤子のようなものなのだと思う。
主な食料は、ありとあらゆる活字。とにかく活字であれば、文学作品から新聞から果は魔導書でも、というか魔導書のように魔力を含んでいると尚いいらしい。




10日目
驚いた。ネクロノミコンラテン語版再編が精霊化した。
あれは俺の家の書籍が全滅し、仕方が無いので洋館の書籍を与えよう、と洋館を訪れた時のことだ。
洋館に眠る魔導書。それらが突如宙を舞い、次の瞬間ラテン語番再編に飲み込まれたのだ。
驚いて呆然とする俺の目の前で、最後に黒い表紙の冊子が一枚、パクリと食われた。あれ、無名祭祀書だよな?
とか驚いていたら、光と共に字祷子が活性化し、気付いたら其処に少女がひとり。

如何したものかと悩んでいたが、捨てるわけにも行かず、寧ろ好都合と家に連れ帰る事にした。
無論、実家ではなくアパートのほうに。





11日目
名前をせがまれた。
悩んだ結果、カリンという名前を与える事にする。
砂糖漬けとか果実酒が好きだった。











さて、とりあえず俺専用の魔導書は完成した。
しかし、現状ではまだ弱い。此処から更に完成度を高めていかなければ。少しでも俺の魂に同道できる可能性を上げるには、カリンの保有する魔力の質を向上させる必要がある。
現在のカリンが保有する魔力は、俺から供給される物と、俺が書き記した記述、取り込んだ魔導書から得たものなどが上げられる。

俺からの供給は除外するとして、俺が記した記述の魔力と言うのは、実はそう多くは無い。
魔導書と言うものは使ってナンボ、時間を経てナンボなのだ。

であれば、手っ取り早くカリンを強化する方法は一つ。
――魔導書の乱獲である。









手始めに日本を制圧。
小さな島国である日本だ。あまり多くのCCDは居らず、収穫は正直今一。
手に入る魔導書とCCD対戦回数比がおかしい。


朝鮮半島を昇り北上。
クトゥルー系の魔導書ってわりと中国で書かれていることが多い。ルルイエ異本とか、あれも確か中国語訳があったはずだし。
まぁとりあえず、狂人の手稿含め中々の収穫だった。


中国
げろげろげー。
なんというか、いろいろな意味で汚染が酷い。
七色マーブルに濁る河の傍で、口から泡を吹いて痙攣する深き者共を見たときは、思わず手を合わせてしまった。


ロシア
やばかった。覆面をしていたから指名手配は無いと思うけど、某宗教組織と正面衝突した。
いや、確かに外道の知識を駆る=悪魔との契約 みたいなものだけどさ。
然し凄いね、あの秘蹟って技。信仰心を集めて威力に転科するんだってさ。
聖書は精進料理みたいだったそうだ。
一応魔導書も入手。


ヨーロッパへ
シベ鉄だっ!!



ヨーロッパ
ひゃはぁぁああああ!!! 入れ食いだぜええええええ!!!!
凄まじい数の魔導書と、凄まじい数の怪異。
その悉くをカリンが喰らい、その悉くを俺が浄火していく。
何か途中、ロンドン系の魔術師とガチンコになったが、まぁ機神召喚を使うわけでもなく、あっさり倒せたので問題あるまいよ。



南ヨーロッパ
此方の方は魔術の発展は微妙みたいだ。
然し凄いのは魔導書。原住民の言葉だったり、先史文明の言葉だったりで読めるものは少ないが、それでも此処にある魔導書は知識としてよりも狂気と魔力においてはぴか一の代物が沢山得られた。
それと、最近階位が上がったのか、直感が優れてきているような気がする。
直感と言うか、心眼(偽)というか。第六感というか。
銃弾を避けるなんて真似を、真逆この俺がなしえるとは。



アメリカ東部
折角なのでアーカムに立ち寄った。
そういえばアーカムの東海岸の沖、深き者共の巣があったような――。
と、思い立ったので襲撃。精霊化したルルイエ異本って、そういやこれ原作キャラじゃネーか!?
なんて思っていたら、とめる暇も無くカリンがルルイエ異本を喰った。性的な意味じゃなくて。
うーわー、カリンの魔力が一気に膨れ上がった。もう既にキダフ・アル・アジフの魔力とか超えてるんじゃね?



アメリカ西部
時代錯誤のカウボーイめ!! いや、時代的には間違ってないんだろうが、アーカムを見ると時代考証がおかしくなってくる。
ビヤーキーの記述が記載された手稿を所有しているらしく、ピースメーカーから誘導弾をガンガンと撃ちまくってきやがる。
己はオセロットかと思わず悪態をつきながら、クトゥグアの大玉で吹き飛ばした。
手稿を喰ったカリン曰く、中々良い味の手稿だったそうだ。



中部アメリカ
というかベネズェラとかコスタリカとか。
流石にこの辺りでは魔導書なんて無いかなー、なんて思っていたのだ。俺は。あくまでオーストラリアに渡るついでに此方を通っただけなのだ。
何か、トカゲ頭の怪物の群れと乱戦になった。



オーストラリア
オーストラリア自体には力ある魔導書は少ない。まぁ、狂人の手稿とかが無いわけでもないのだが。
ダウジングにしたがって、砂漠の真ん中の小屋に入ると、地下には狂気の図書館が――的な展開はあった。が、それは別に過去世界中の何処にでもあったし。
問題は、オーストラリア近海の海底だ。
アフム=ザーの魔力で海底の深き者共を凍らせて、その間に連中の魔導書を頂戴した。うーん、やっぱりクトゥルー系の魔導書多いなぁ。
内容的にはもうかなり重複しているし、既に魔力以外は要らんのだけど。





ハワイ
わいはー。言葉を逆さにするなっ! スイマセンオトウサン。
あぁ、そういえばそんなコマーシャルだった。

久々の休暇。うん、いいね。
ただ問題は、精霊化したカリン。当然の如く人型になれるのだけれども、その姿が黒髪青目の幼女だ、という点だ。
いや、いい事なんだよ。カリンが自我を以って、遊びに興味を持ってくれるのは。
ただ問題は、その幼女が俺に向かってご主人様
マスター
って呼びかけることだ。

く、くぅ。魔導師として練達するには人を捨てる必要があるというが。主にペド的な意味で。

とりあえず俺の呼称を兄と呼ぶように言い聞かせておきました。
髪の色、俺もカリンも黒髪だし、容姿的にも俺の影響か若干日系よりに成ってるし。
多分、大丈夫。ひそひそ話なんて聞こえない。
ポリさんが近付いてきて、慌てて逃げたなんて事実も無い。
美幼女が目の保養になる、なんて感じた時点で、俺も落ちているのだろう。
イヤだ!! マスターオブネクロロリコンなんて呼ばれたくないぃぃぃぃ!!!!!







末期
ティベリウス(というか妖蛆の秘密)を道連れにクトゥグアによる自爆。

03 オリジナル破壊ロボは漢の浪漫

2012.07.16 (Mon)
「ひゃーはははは、どうであるか我輩のスーパーウェスト無敵ロボ28壕CR~シント、再生~は!!我輩科学の使途であるが、我輩の望む科学を実現するには周囲の基礎技術が追いつかない。ああ、天才は常に孤独、孤独は寒い、寒ければ肌と肌で暖めあおうぜって山男はイヤー!! 我輩ノンケであるが故にしりを狙うその目はらめらめよってん? ゴゴゴゴゴゴ? 何だアレは、白い――壁です。ナ、ナダレダー!! そう叫んだ隊員A、なだれに飲み込まれた彼の遺品は唯一、その彼の声を記録したビデオカメラが見つかったのみであった……」
「ドクター、本筋に」
「おぉうそうである、要するに、我輩錬金術に手を出して、無敵ロボを更に強化したのである。こうなってしまったからには貴様等のロボット、デモンベインとかいうのにも最早敵ではないのであ~るっ!!」

言いつつ撃ち放つドクターの無敵ロボから放たれる数十の砲弾。
地味に錬金術で鍛えられ、魔術刻印が刻まれたあの弾丸。あの弾丸は線状痕により回転する事で、その回転自体を儀式と見立て、周囲のマナを巻き込みながら飛来するという、ドクターのドリルのオマージュ的な弾丸となっている。
但しこの弾丸、魔導理論を使う上にかなり高コストである為、使いどころが難しい上に俺が居なければ製造すら出来ないという代物だ。
ドクターに内緒でこっそりと生産してみたのだが、どうやらかなり有効な様子だ。

砲弾を喰らい、盛大に爆炎をあげるアイオーン。ふふふ、やっぱり俺、錬金術のほうが好きだなぁ。
というか、ロボとかメカが好きなのだ。

エリート魔術師大十字九郎の操るアイオーン。流石に戦闘の素人である大十字九郎には、いきなりデウスマキナで戦えといってもそりゃ戸惑うだろう。

と、思っていたら僅か2戦目にしていきなり霊燃機関全力稼動させて体当たりかました。
あんな魂の消耗の激しい術式、よく使う気になったもんだ。――いや、案外アル・アジフが見かねて勝手に使ったのかな? うへぇ、使用者の寿命を勝手に削る魔導書……恐ろしい。いや、使わなければあの時点でお陀仏してたかもだけどさ。




104週目


「で、ドクター。如何だった?」
「うぬぅ。あのデウスマキナであったか。やはり強靭。やはり強大。しかし、しかしである。目標が高ければ高い程、我輩やる気がムンムン出るのであ~る! 早速修理に入ったスーパーウェスト無敵ロボ28号も新たな改造を施している最中であるし、次は、次こそはあの憎っくきペド野郎、大十字九郎を我輩のこの手で――」

長くなりそうだったので意識を博士から逸らす。
現在の俺は、ドクターに弟子入りし、アーカムでの破壊活動に勤しむ日々を送っている。
というのも、ドクターの脳みそは狂人のそれだが、然しその技術は間違いなく一級品。最初に深く関わる原作キャラがドクターだというのは色々悲しくなってくるが(シュリュズベリー博士はあくまで教師と生徒の関係)、それでも彼の知識は素晴らしいものがある。
特にあのドラム缶。マジパネェ。現在アメリカの主力ミサイルやらMBTの主砲の直撃を喰らい、それでも平然としているあの化物。

冷静に考えて欲しい。普通、60m級のロボットを、誰が個人で製造出来る?
当に化物。まさに科学の怪物。大天才ドクターウェストは伊達ではない、と言うことか。

「うーん、俺も頑張らんとね」

呟きながら、ウェスト式高度情報処理用演算端末43号『できるんですか』――要するにパソコンのキーボードを弄りながら、そんなことを呟いた。




トイ・リアニメーター。コイツの汎用性は、ちょっと洒落にならないレベルで高性能だ。
とりあえず一機コイツを作ってしまえば、後は勝手に自分達で自分を量産して、凄まじい速度で作業を開始する。
俺もドクターの下で働き出して結構立つが、多分最も汎用性の高い作品はコレなんじゃないだろうか。
ただ、現状でこいつの名前はトイ・リアニメーターではなく、ただのウェスト式滑空方自動作業機械、という名前らしいいが。
はてされ、これがどんな経緯を辿ってトイ・リアニメーターと成るのか。
当に深遠なテーマと言うやつだ。

「ふんふんふーん」
「おや、陰気な貴様にしては珍しく機嫌が良さそうであるな?」

ふと、通りかかったドクターにそんなことを言われる。
まぁ、機嫌がいいのは事実なのでにやりと笑いながら肯定する。

「考えていた設計図に、一通り目途が付いたからな」
「ほほぅ、貴様の言っていた対デウスマキナ用破壊ロボ、と言うやつか」

ドクターの開発した破壊ロボ。それは、大元を辿ればシュリュズベリー博士のアンブロジウスであり、万能背嚢であり、自動ステージであった。
其処には、彼の作品の延長と言う属性はあっても、そもそもとして対デウスマキナとしての性能は鑑みられていない。

であるならば、最初から対デウスマキナを考えて製造された破壊ロボを作ったとしたら。どうだ。
そう考えた末に製造したのが、この機体だ。
正方形に見えて、地味に台形になっている四角い本体に、対魔術弾頭を搭載した大型レールガンを一門、小型無軌道レールガンを四門装備。さらに4本生えた腕には、其々ドリルとパイルバンカーを2機ずつ装備させた。
他にも万能投射砲やら万能マジックハンドやら色々装備しているのだが、まぁ実戦ではそう使うまい。
右側面にはスポンサー「ブラックロッジ」
左側面には技術提携「世紀の大・天・才 Dr.ウェスト」
そして背部には「PAD-01」の文字がそれぞれ刻まれている。
プロトタイプド・アンチ・デウスマキナ
まぁ、パッと見は正直ダンボールなのだが。スポンサーとかでかでかと書いてるし。

「まぁ、とりあえず。これ、完成し次第使ってみてもいいですかね?」
「ふむ、まぁ貴様の開発であるし、好きに使うがよかろう」

うん、さすが博士。話がわかる。






で、対鬼械神用破壊ロボ、通称ダンボールで出撃してみた。

「は、破壊ロボ!? ってことはまたあの■■■■か!!」
「うぬぅ、意味も無く唐突に登場するとは流石■■■■。突拍子もない」

うーわー、なんだかドクターと勘違いされてる。
まぁいい。折角なので勘違いをそのままに、適当に暴れまわってみる事にした。
といっても、なるべく人的被害を抑えるように、市外で盛大に武力アピールをして、ある程度住民が避難を終えたタイミングで市街地に突撃。
うーん、このあたりの区画は大分古くなってきているし、潰しておけば都市計画の一環とか言って覇道が勝手に改造するだろうな。うん。
万能投射砲からの投射で爆撃を行い、古い区画を徹底的に破壊。ついでに裏路地も叩き潰しておく。
ああいう古臭くて薄暗いところには、怪異とか悪人とかが沸きやすいのだ。

他にも字祷子反応が高いところを優先的に叩き潰していると、その内何処からとも無く件の聖句が響き渡ってきた。

  「永劫
アイオーン

  時の歯車 断罪
さばき
の刃
  久遠の果てより来たる虚無
  永劫
アイオーン

  汝より逃れ得るものなく
  汝が触れしものは死すらも死せん!!」

そうして目の前に顕現するアイオーン。
ふむ、矢張りデモンベインに造詣が似ているなぁ。
デモンベインが先なのか、それともアイオーンが先なのか。うーん、コレもまた深遠な命題だ。
いや、線自体はデモンベインの流用って話だけど。世界観的な意味で。

「さーて、覚悟はいいかウェスト!」
「油断するなよ九郎。彼奴の機体は何時ものドラム缶ではない。彼奴は■■■■だがその技術は本物だ。努々油断するでないぞ!!」
「おうよっ!!」

ガチョガチョガチョン! と音を立てて爆走してくるアイオーン。
ふーむ、デモンベインに比べるとなんとも足が速いな。やはり完全な字祷子体である為に、モノ自体が物理法則を歪めてるのか。
ふむ、成程。基礎スペックはアイオーンが上、ね。

成程成程。これでは尚更、ドクターが大十字に勝つのは無理だろ。

というわけで、とりあえず現れたアイオーンに向けて、コレでもかとレールガンをお見舞いしてやった。

「そんな物今さら効くんガッ!?」
「な、何事だっ!?」

ふふふ、途惑っている途惑っている。
このレールガン、弾頭自体に破魔術式が刻まれている。弾頭自体、幾つかのパーツとして製造し、立体魔法陣を組み込んで製造されたものだ。これも投射時に起こる回転を儀式と見立て、周囲の魔力を引き込み、字祷子構成に大きなダメージを与える事ができるのだ。

慌てたアイオーンは古き印を盾に、片手で“魔術師の杖”を召喚しようとしているが――甘い!

頭部に装着されている大型レールガン。最初から充填しっぱなしのソレを、即座にアイオーンに向けて撃ち放つ。
と、弾頭はまるで紙を破るかの様に容易くエルダーサインを引き裂き、アイオーンの片腕を派手に捥いで魅せた。

フゥーハハハハハ!!! どうだ!! 見たか!! これこそ対魔術用徹甲レールガン!!
コレでもかと言うほどに対魔貫通能力を高め、デウスマキナですら貫く大型レールガン!!
命中精度は中型のそれに劣るものの、威力はまさに必殺! 夢幻心母だろうが撃ち落してくれる!!

「ぐ、バルザイの偃月刀!!」

さすがに此方の鍛造は素早い。即座に此方に詰め寄るアイオーンは、片手に持ったその偃月刀を此方の頭上から振りかぶり――
――ふんっ!!

「久遠の虚無へ――なにっ!?」

ガツン、と音を立てて弾かれる偃月刀。
それは、二本の細長い杭。パイルだ。
超磁力により加速された槌でパイルを叩く事により打ち出されるパイル・バンカー。
射出するパイル自体には貫通術式、それを覆う投射体には防御術式が刻まれている。

「まさかこやつ、魔導理論を!?」

ガパン、と音を立てて機体の背中が開く。
其処から覗くのは大型のファン。ぐるぐると廻るプロペラには、矢張り術式が刻印されていて――。

「周囲の魔力がアレに引き寄せられている!?」
「――そうか! 彼奴め、回転による魔力収集儀式!? 魔術儀式を機械に代用させておるのか!?」

そう、その通り。
ただこのシステム、欠点として怪異を呼び込みやすい、と言うものがある。
魔力だけ選択して吸引してくれればいいのだが、そう都合よくも行かない。この辺りは俺の魔術の腕が上がる頃にでも――。

「ち、拙いぞ九郎!! あのまま放置すれば、彼奴の一撃は間違いなくアイオーンすら貫く!!」
「その前に叩く!!」

近寄るアイオーンに向けてレールガンを乱射。中型のそれは徐々にアイオーンの装甲を削る。
同時に此方も後退し、少しずつ距離を離していく。なに、確かに近接戦闘もできるが、此方には大型レールガンが存在する。そこまでする義理もない。

「く、彼奴め、本当にあの■■■■か!?」
「何時もに比べて戦い方が巧い、というか、冷静すぎる」

そう、現在の大十字九郎は、ミスカトニックのエリート。つまり頭でっかちな魔術師であり、とてもではないが魔導師とよべるようなものではない。
それはあくまで知識による魔術行使の賜物。魔術師としての階位は確かに高い。然し、戦士としての能力はとても語れるレベルに無い。

間合いを操り、此方のペースで戦う。最充填を終えた大型レールガンを、再びアイオーンに向けて発射。
アイオーンはそれをステップで回避するが、その結果アーカムの都市に盛大に溝が出来てしまった。

「チクショウ、避ける事も出来ねーぞ!!」
「ぬぐぅ!! あのガイ■チめええええ!!!」

――あー、ドクター、ゴメン。
内心でドクターに色々擦り付ける事を謝罪しつつ、自らの名を語る心算は一切沸かない。
まぁ、適当適当と呟きながら、適当にアイオーンを相手取るのだった。



一回戦戦績
パイル直撃によりアイオーン中破。システムの不良部分を発見。一時撤退により引き分け。
二回戦戦績。
敵搭乗機変更。デモンベインとの敵対。デモンベインの完成度――80%程度と確認。
アトランティスストライクによる一撃――大型レールガン大破。
デモンベイン脚部にパイルを撃ち込むも、“魔導師の杖”によるクトゥグアの炎により大破。

最終的にドクターがアンチクロスを離脱。同道するも、破壊ロボの大群にタコ殴りにされ、脱出し損ね死亡。

02 五流魔導師旅をする

2012.07.16 (Mon)
「力を与えよ/力を与えよ/力を与えよ!!」

三度呪文を繰り返し、右手に生み出すのはバルザイの偃月刀。
但し俺のソレはデフォルトの物に比べると若干シャープなデザインに変化し、何処か日本刀を彷彿とさせるものになっている。

生み出した刃を用いて、こちらに向かって飛び寄る腐乱死体を叩き斬る。

全く以って度し難い。
此処は元々某魔術結社の秘密の祭壇であった場所であり、霊的にも中々優れた立地条件に建設された意志の神殿だ。
が、現在のこの土地は、黒い瘴気に完全に汚染され、まともな人間ならば立ち入った瞬間に魔物に変貌するという凄まじいまでの呪術的汚染地域と化していた。

「うーっぷす」

そうして、今回の俺の仕事は、この汚染地域の浄化と、中々に俺に似合わない仕事であった。








46周目。

俺って才能無いのだろうな。いまだに機神召喚が扱えないとか。
現在俺がメインに扱うのは、ネクロノミコンラテン語版。嘗てコレを発見して以降、コレを使って修練を開始した俺は、それなりに魔術師としての階位を上げ、魔導師としての錬度をも徐々に高めていた。
だというのに、未だに旧支配者の一体すら制御できない。

えっと、一回のループが20年と考えて、魔導師としてまともに修練できるのが10年弱。
確かループ回数が43だった筈だから、単純に考えて430年は修練している事に成る筈。
……いやまて。一周毎に鍛錬した肉体はリセットされるわけだから、マイナス補正を――あー、×0.6くらいかな。と、258……。

二世紀半かけても一向に機神召喚が扱えず、それどころか旧支配者一柱の制御が一杯一杯の俺……。
思わずガックリ膝を突きそうになる。が、まぁある程度は戦えるようになってきた。

此処暫くのループ、日本の外、主にユーラシア寄りを旅するように成ったのだが、どうにもアジア系の怪異というのは恐ろしいね。
物理的な怪物として姿を現すのではなく、なぞの現象として姿を現す怪異。
精神的に攻撃してくるものが多く、おかげで現在の俺は内界に関しては並み居る魔導師のそれを圧倒している自信がある。
といっても内界の制御は基礎の基礎。自慢できるような事でもないのが情け無い。
まぁ、おかげでそこらの魔導書に精神がやられるような、駆け出しの魔導師レベルは卒業できたと思うのだが。

現在戦うゾンビっぽいもの。
この汚染された聖地がもつ力そのものが具象化した存在。つまりコイツラは、土地そのもののオブジェクトなのだ。
この黒い聖地が破壊されでもしない限り、無限に沸き続ける、と。

一番正しい対処は、この場所を封鎖して、然る準備を終えた後に核で吹き飛ばす、と言うものだ。
が、残念ながらそんなことこんな場所で行うと、色々な生態系が酷い事になる。
山のうえの方にあるこの場所だ。下手すると気候にすら干渉しかねない。

そこで、俺ないし流れの魔導師の出番と成る。
まぁ、実際山の山頂でゾンビが量産されつつある。何とかする一番簡単な手段は、無差別爆撃だし。
村人が此方に依頼してくるのも、それはそれで当然かなー、と。

適当にゾンビを蹴散らしつつ、漸く祭壇らしき場所にたどり着く。
祭壇というのは神殿の中心部。最も力の集まるパワースポットだ。
見れば――成程成程。山から噴出する霊的エネルギーを、瘴気が全て喰らい、自らの力にしているのだろう。
魔導師は瘴気――邪悪すら自ら従えてナンボらしいが、あそこまで邪悪でしかないものに俺は興味を持てない。

とりあえず、地形破壊は出来ればやりたくないので瘴気に向けてクトゥグアの炎を放つ。
うーん、一応焼き跳ばす事はできるのだが、どうも根が深いらしい。
やはりある程度――この神殿くらいは吹き飛ばさねばならんか。

「ヴーアの無敵の印において――」

精神
ココロ
はクールに、魂
ソウル
はヒートに。
魂を滾らせ生み出す魔力――励起。
ネクロノミコンラテン語版――喚起。
術式選択――超攻性防御結界。

空中に鍛造される無数のバルザイの偃月刀。

「霊験あらたかなる刃よ」

飛び出したバルザイの偃月刀は、ガリガリと音と火花を立てながら、無垢な神殿の白床に文様を刻み込んでいく。
例えばコレが、デモンベインなる人造の鬼械神のもつ必滅呪法、レムリアインパクトとかならば、最初から効果範囲を指定する術式が存在する。
しかし、今現在俺の最も攻撃力のある術といえば、間違いなくクトゥグアの炎の使役。
クトゥグアの使役は威力こそ高いが、そもそも其処には選択的排除なんていうものは最初から考慮されていない。
そこで、予めクトゥグアの炎の効果範囲を指定する術式を床に刻み込み、余計な破壊を防ごう、と言うのだ。

コレ、実践の中で編み出した必殺技。
初見の相手で、相手が攻撃的だった場合、割合高確率ではめ込む事が出来る炎熱昇華呪法だ。
まぁ、トラップ系のコンボ技であるため、使える場面は限定されてしまうのだが。
対象がこういったオブジェクト系ならば、この術はこの上なく効果的となる。

――ヴ――ヴヴヴ……
「良し良し」

術式が刻めた事を確認して、とっととその場から撤退する事にする。
この時代、まだモーターバイクっていう物が生まれてないんだよなぁ。いや、確か西博士が独自にバイクっぽいものを開発していたはずだけど――まぁ、今此処にあるかと言われれば、無い。

ある程度距離を離れたところで、ついに最後の術式。クトゥグア召喚を行う。
但しこの召喚は遠隔召喚となる。今回の範囲指定結界には、ある程度までの距離からの遠隔召喚を補助するターゲットとしての機能が組み込まれている。
何処までも精密な魔術を。これこそ日本系魔術師として目指す場所ではないだろうか。

「フォマルハウトより来たれ、イア、クトゥグア!!」

途端、地上に出現した小さな太陽。いや、それは太陽すらも焼き尽す狂暴な穿光。
と、そのクトゥグアの炎は、一瞬の輝きの後、急速に一点に向かって収束し、即座に空間から消滅する。
――うむ、上手く行ったようだ。

クトゥグアが瘴気を焼き尽したその瞬間、あの術式は起動する。
即座にクトゥグアの炎を拘束し、それ以上の暴虐を許すことなく、炎を丸ごと圧縮/虚無へと放逐したのだ。
まぁ、要するに魔術的にデモンベインのレムリアインパクトを再現しただけなのだが。

あぁ、エネルギー的な問題は、場所が解決してくれた。何せ地脈を纏め上げる為の聖域で祭殿だ。エネルギーラインは御誂え向けに用意されていたのだから、コレで失敗していては魔導師としての信用問題に関わる。
この程度こなせずして、魔導師は名乗れないだろう。

「ふぃー、なんとかなったか」

山頂を丸く刳り貫いたようなクレーターを眺めて、思わず安堵の吐息を漏らす。

まぁ、下手をすれば山が丸ごと焼滅、なんて事態もありえたのだ。それに比べれば、山頂がちょびっと無くなったくらい、如何という事は無いだろう。
この世の中には、人間にとって邪悪な種族というだけで、島丸ごと核で吹っ飛ばすような人だって居るんだし。

「ふむ、見事な魔術だ」

ビクゥッ! と、思い切りビビッた。
何事かと背後を振り返れば、其処には逞しい髭と、傍に幼女をはべらせたグラサン老人が一人。
――って、えええええええええ!!??

「キミは、アレか。何処かの結社の魔導師かね」
「い、いえ。ただのモグリですけど?」

言いつつ、自然な動作で臨戦態勢にはいる。
何せ相手は高名なホラーハンター。一応俺も邪神の悪意に敵対する側として立ってはいるが、それでも完全に無邪気かといえばそうでもない。
長く生きれば生きるほど、俺は人としての罪を重ねる。命としての業なんて、その数十倍は重ねているのだ。

「ふむ、成程。――なぁキミ」
「は、はい?」
「もしキミがよければ、だが、正式に魔術を学んで見る気はないかね?」

と、そのグラ髭の老人はそんなことをのたまった。
彼こそ、後に長く恩師と仰ぐ事になる、ミスカトニック最強の一角たる魔導師。
ラバン・シュリュズベリー氏だった。



と言うわけで、何故かラバン・シュリュズベリー博士の紹介を受け、50周目手前にして漸くミスカトニック大学陰秘学科への伝手を手に入れることが出来ました。
とりあえず今回の俺は、コレ幸いとミスカトニックに入学し、主に座学を中心に学ぶ事にしました。
というのも、今現在の俺の魔導というのが、完全に自己流というのが大きな問題となっていたのだ。
いや、魔導というのは結局術者の魂こそが全てと言うものなのだが、だからといって独覚(仏教用語で、簡単に言うと独りよがりの賢人)になってしまっては意味が無い。
と言うわけで、今回は基礎から学びなおしたのだ。
――然し、シュリュズベリー先生の実体験を元とした対CCD談が一番面白かったのは――はて。

さて、今回の周での成果は、他にもある。
改めてアーカムに住む事となったおかげで、一見では解らないアーカムの文明レベルと言うものが佳く理解できた。
いわば此処は、地方の田舎都市、といったところか。
唯一大きなミスカトニック大学以外は、覇道財閥を除くとこれといって大きな建物は無い。
コレが何を意味するのか、というと、此処がループのかなり序盤なのではないか、という事だ。
今本編に関わって、邪神に気取られるわけにも行かないのでかなり遠巻きな観察になってしまったのだが、多分この予想は間違っていない筈。

というのも、このアーカムと言うところは本来ドがつく田舎の港町なのだ。
それがこの世界では、覇道財閥の拠点となることで大都市へとループごとに少しずつ成長していく。
これは、嘗ての大十字九郎が覇道鋼造として、かすかに記憶に残る覇道の偉業を真似、さらに大きな事業を起こすことで少しずつアーカムを何時かのアーカムへと成長させていく、という事象からきている。
つまり、ループが進めば進むほどこの都市は大きくなる。では都市が幼いという事は、ループが若い、という事に成る。


今回、アーカムに住んでいたおかげか、夢幻心母の姿を見ることが出来た。
いままではその余波(量産型破壊ロボとダゴンとか)だけで死んでたからなぁ。
まぁ、いいさ。

で、今回はアーカムへの被害を抑えることを第一目標として、地味に粛々と活動していました。
具体的に言うと、簡単な魔術制御用の術式を刻み込んだ対物ライフル、M82を使い、クトゥグアの大玉を破壊ロボに叩き込んだり、崩落したデブリを砕いたり。

――いや、まぁ待て。俺だっておかしいというのは別っている。
未だに部分的には蒸気式がメインなこの時代、よりにもよってバレットかよ、という突っ込みは俺にだって十二分に別ってる。
ただな、佳く考えて欲しい。有るんだぞ? 原子力空母だとか核弾頭だとか。それに此処はニ■ルさんの介入している世界だ。彼女の介入によってプロメテウスの炎は既に人の手の中。文明レベルも偏って進歩しているらしく、コレも軍部のテストタイプの中から一品を頂戴したものなのだとか。

――うーん、少し調子に乗りすぎたかな。
なんだか周囲を覆う破壊ロボの数が増えてきているような。

残弾は――うぁ、これは詰んだかも、なんて覚悟を決めて、最後っ屁をかます準備を始めようとしたところ。

――――――斬っ!!

不意に近付く破壊ロボが細切れになった。
何事かと首をめぐらせると、其処には白いセイギノミカタの姿があって。

『ミスカトニックの魔術師か。此処はもういい、早くシェルターに!!』
「あ、アイサー!!」

折角得たチャンスなのだ。コレを最大現に利用せずに何が魔導師かと、大慌てで地下のシェルターに。
そうして第一次攻撃は何とか凌げたのだが、次、第二次攻撃。
アイオーンを失った大十字九郎が、未完成のデモンベインとアイオーンを二個一で召喚したデモンベイン・アイオーンを使い、カリグラを撃破。
続いて仇討ちに攻撃してきた糞ガキもといクラウディウス。アンチクロスとの正面衝突なんてとんでもないと、何処か安全な場所は無いものかと覇道の地下通路を彷徨っていると、何故か正面に見えたその人物。
上半身全裸で、四本腕を生やしたブシドー。

「あ、アンチクロスゥ!?」
「む――御主、ミスカトニックの魔導師か」

げっ、と思わず声を漏らす。アンチクロスの襲撃から逃げていた筈なのに、なんでアンチクロスと正面衝突するのか。
しかもクラウディウスの襲撃から逃げていたら、ティトゥスとご対面!?
後々考えると、この時上半身全裸ということは、既にウィンフィールド氏を斬った後、と言うことだったのだろう。
という事は、このときのティトゥス、大分消耗していた筈なのだ。

「く、あそこの連中は全て時計等に引篭もっていると聞いたが――成程、少しは骨の有りそうな輩も居た、と言うことか」

言いつつ、四本の刀を構えるティトゥス。
ソレに対して、俺は思わずM82を投げ捨て、バルザイの偃月刀を鍛造していた。
近接戦闘特化型のアンチクロスに、近接戦闘を挑む。そのなんと愚かな事か、後から考えると首をつりたくなる。

「――ふ、では抗って見せろ魔術師。今の私は手加減が利かん」
「――舐めるなよ逆十字。人を捨てたその身に、人の強さを思い出させてやる」

そうして斬り込んだ対ティトゥス戦。結果は――案の定。
何とか一太刀入れることには成功したのだが、刀4本を叩き込まれれば流石の俺も生き延びる事は出来ず。

「――く、為らばそれも良し。地獄まで同道願う」
「ぬ、これは固定結界!? 貴様真逆初めからこれを――!?」

範囲指定結界の内側で召喚したクトゥグア。流石に意識が朦朧としている所為で、ティトゥスの固定は今一つだったが、何とか範囲結界とクトゥグア召喚は成立させた。焼滅は無理でも、手傷を与えられたとは思うのだが――。







59周目。

シュリュズベリー先生の実体験談というのは、実際に過去に行った討伐の話だ。
という事は、逆に考えるとシュリュズベリー先生は高確率でその場所を訪れる。であれば、予めその場に先回りしていれば、シュリュズベリー先生に出会うことも不可能ではない、と言うことだ。

まぁ、まいかい同じ場所を繰り返すのも芸が無いので、フアハ=ハチ族だったり邪神の落とし子だったり、場所は毎回変更しているのだが。

で、ミスカトニックに通うようになってからどれ程の年月がたったか。
基礎の習得はほぼ完璧。むしろ応用こそに力を入れる時期が来ている。
そう感じて、そろそろミスカトニックから一時離脱するべきかな、などと考えるようになっていた。

あーあ、大十字九郎との直接面識、結局ミスカトニックに数十年も通って結局出来なかったし。
いや、偶にシュリュズベリー先生の講義で顔を合わせることもあったんだけどさ。
所詮、実習で顔を見る学徒、と言う関係だし。
さて、次は如何しようか。


クラウディウスに辛勝。
大十字九郎の旅立ちの後、得たセラエノ断章を読み込むも、クラウディウス戦の傷が祟り30代にて死亡。

01 考えすぎると鬱になる

2012.07.16 (Mon)
気がついたらバブル前の日本に転生していた。
な、何を言っているか解らないと思うが、俺にも何が何だかさっぱりわからない。
転生とかチートとか、そんなチャチなモンじゃ(ry

というわけで、何故か大昔の日本に転生した。
意味が解らないが、とりあえずもてる現代知識を総動員し、後ろ暗い方法なんかも若干使って溜めた元手を使い、ソレを用いて車やらバイクやらをなんとか作り出して販売。そうして手に入れた金銭を使い、更に新製品やらなんやらの工場を建てたりと、良い感じに金持ちになれた。

嘗ての貧乏人の俺が、今生では真逆、若くしてこんな金持ち人生を得られるとは。


ヒャッホーとか喜んでいたら、ある日突如として空が黒い雲に覆われ、空から舞い降りた黒い機械群。
何か肉っぽいものと混ざり合ったそれの大群に飲み込まれて、住んでいた会社ごと消し飛ばされた。






2周目。


気付いたらまた生まれ変わっていた。
ただ、今回は前回と違い、前回と同一人物として転生したらしかった。
一体何事だと、事態を確かめるべく幼少の砌から新聞を読む幼児。若干地元で有名になってしまったが、今はそんなことは如何でも良い。

そうして調べた結果、今一つコレといって手がかりになりそうな情報を得ることが出来なかった。
仕方無しに、また一般家庭からした俺だったが、そこで不意に目にしたテレビ。そこに、映っていたのだ。新興企業、渡米し一攫千金をなしえた巨人、覇道という男の名前が。

「で、デモベ!?」

まさかとは思いつつも、とりあえず英語を学び始めた。このときの俺は若干6歳。精神年齢は60手前だったが、若い脳と年老いた精神のおかげか、効率よく英語を吸収することが出来た。
といっても日本語英語なので、実際に向うに行くまではどうなるか解らないのだが。

そうしている内に、なにやら父が米国に出張するのだという。
前回ではこんなイベントは無かったのだが――いや、その前に俺が父に株を薦めて、一攫千金を築いたからか。

父に何とか頼み込み、アメリカはアーカムへの出張に同行することに成功。
なにやらこのアーカム、覇道の手により近代急速に発展している都市なのだそうだ。
うわぁ、なんて思いつつ、とりあえずアーカム見学。今の時期がどの時期かはわからないが、少なくともある程度の情報収集は出来るだろう。

――金髪眼鏡のアイスクリン屋を発見。

づおおおおおおおお!!!???
いや、彼女が存命と言うことは、本編より最低6年は前という事に成る。
いやいや、待て、ウェイト。落ち着け7歳児俺。
現状がどの程度進んでいるのかは知らんが、彼女がいる、という事はこの世界は無限螺旋で間違いない。

ええええええええええええええ。
ナニソレ。つまり何か、俺は無限螺旋に捕らわれてしまったと、そういう事なのか!?
いや、待て俺。ストップ。だとすると、然し何故?
デモンベイン。アレはアレで、完成したお話だ。今さら外部から新キャラを追加する必要の無い、オリ主が存在したところで、トリッパーならまだしも、転生者を送り込む必要性は全くわからない。
例えばコレが件の燃える三眼の謀略であった場合はどうか。
いやいや、俺を呼び込んだところで何の利がある? と言うか第一、物語の中の存在が、外側に存在していた俺に干渉できるのか?
では、干渉できる存在とは? ――外側の神? アウターゴット?

いかん、SAN値が直葬される。
落ち着け俺。びーくーる。

とりあえず、俺がすべき事は――。
父親に貰った小遣い。それを使って、アーカムの闇へと脚を進める。
7歳でコレは拙いかなぁ。


アーカムの裏。適当な本屋を巡っている中で、何とか見つけた辛うじて力を持つ魔導書。
ネクロノミコン新訳英語版。正直、魔導書としての精度は最悪に分類されるそれだが、某貧乏探偵の原型である探偵・タイタスが所有していたとされるのもこの新訳英語版だったはず。
さらっと目を通し、若干頭にクる感覚を感じつつ、それを懐に収めて日本へ。

そうして帰ってきた俺は、持てる知識を総動員して魔術の勉強を開始した。
因みに俺は元々の世界では厨二病をわずらっていたオタクさんだ。それ故、クトゥルフ神話に関しても、それなりには知識を持っている。
誤訳だらけと評判の新訳ではあるが、それでも学研のアレよりは大分マシだ。

それからの俺は、普通の学生として日常生活を過しつつ、裏では魔術を学ぶ五流魔導師としての勉強を開始した。
近所では「あそこのボンは変なモンに傾倒している」なんて噂が立てられてしまったが、まぁ確かに変なもんだわな、魔術なんて。
とりあえず、噂が先行しすぎると畏怖の対象になりかねないので、表向きは良い人の面の皮を被る必要性が出てきた。
あー、面倒くさい。俺、基本的にはDQN寄りの駄目ニート何だけど。


そうして、20代の俺。正確な年齢は今一覚えていない。何せ引篭もって魔導の研鑽ばっかりだったので。
現れたのは、件の巨大ロボ。今なら解る。アレ、破壊ロボだ。
然し何故あの狂人博士の作品が日本を襲うのか。アレって確か、夢幻心母から出撃してるんでなかったか?
佳く解らないまま、魔術を駆使して破壊ロボを叩き落す。といっても、俺に使える魔術なんて、現在のところは精々クトゥグアに使える炎の精霊を操るぐらいなのだが。
そうしてなんとか周囲の被害を抑えるように戦いつつ、漸く全ての破壊ロボを叩き潰したと、心の其処から一息ついたところで

「おやおや、こんな極東に、我々の破壊ロボを壊しつくせるだけの術者がいたとは。驚いた。いや実に驚いた。驚いたね!」

思わず息を呑む。振り返った先に立っていたのは、白いスーツに実を包んだ、なにやらエセ臭い老紳士が一人。
然し、魔導師としての――三流にもとどかない俺の魔導師としての感覚が告げる。
――死んだ、と。

逃げろ、でもなく、勝てない、でもない。
であった時点で、俺の死は確定したのだと。

「然し、悲しい、悲しいね。嗚呼悲しいとも。なにせキミが練り上げたであろうこの十数年は、この時点で無駄になることが確定したのだからね」

ドスッ、と何かが腹にぶつかる。視線を落せば、其処には腹を貫くぬらぬらと光る触手のような何か。
それは、スーツ姿の老紳士の左手。そこにあった人面瘤から放たれたものだった。

「ははは、然し驚いた。まさかティトゥスの故郷に、炎の精を操る魔導師がいたとは。はは、しかもこれはこれは。ネクロノミコン新訳英語版。まさか、こんなカスのような魔導書で此処まで戦ったとは。驚いた。ああ驚いたとも」

身体から力が抜けていく。
若干の魔術的強化を施した肉体ではあるが、あくまで人の範疇に入るものでしかない。
心臓近くの太い血管を傷つけられた今、俺に残された時間は残り少ない。

「―――ィ・―――――・――――………」
「うん、何かね?」
「―――……………………」
「ふ、もう喋る元気もないか。いや仕方あるまい。仕方あるまいとも。何せキミの魔導書は所詮新訳。かのマスターオブネクロノミコンのソレに対して、数段どころではなく格が堕ちる。魔人に達したわけでもなく、術衣形態をとったわけでもないのだ。ソレは仕方あるまい」
「……………………………………」

腹に刺さった触手に、ゆっくりと、気取られぬよう腕を絡ませる。
詠唱は終わらせた。何分、今の俺に扱える魔術ではない為、余計に長く詠唱がかかったが。
本来なら更に5工程ほどの詠唱を必要とするのだが、制御を捨てるのであれば、この程度の詠唱でも十分だ。

「ははは、ではそろそろお別れの時間だ。何、安心して朽ちるがいいよ、島国の魔導師」

そういって此方に向けて手の平を向けるエセ老紳士。
さて、今回最後の俺の命の掛けどころだ。三流にも届かぬ五流魔導師の最後っ屁、篤と喰らうがいい!!

「――いあ、くとぅぐあ!!」
「んなっ!?」

突如として現れる窮極の炎。それは俺の躯を触媒として表れ、突如として地上に小さな太陽を作り出す。
炎の神性として語られる旧支配者、クトゥグア。その炎は、今の俺では当然御する事もできず、俺ごと世界を燃やし尽くす。
そう、エセ老紳士ごと。

「ぬぐおおおおお、おのれ、旧支配者をもって自爆をおおお」
「――逃がさんよ、じじい」

残された全生命力を対価とした拘束術式。

「お、おのれえええええ!!!」
「あんたの、命……一つ、削った……!!」

そうして、俺の意識は灼熱の中に解けて消えた。









3周目

ああ腹立つ。あの糞ジジイ。いま漸く思い出したけど、アレってウェスパシアヌスだよな?アンチクロスの上位一角。C計画の巫女製造担当。
忘れない内にその情報をメモしつつ、あの後のことを考える。
捨て身のクトゥグア召喚をかましてやったが、多分あいつ生きてるんだろうなぁ。
何せあいつ、自分の命含めて、三つの人面瘤とあわせて4つの命をもってるんだから。どこの12の試練だ、ってんだ。

とりあえず、今週は最初から魔導の研鑽に取り組もうと思う。
ちくせう、折角あそこまで魔導を磨いたというのに、最初からやり直しだ。





6歳、父親の出張に付き合って、前回と同じく魔導書を入手。帰国して早々に訓練を始めたのですが、どうにも何か、魔術の習得効率が早い。いや、前回の経験と言うのも有るのだろうが、ソレにしては妙に魔術の運用効率も佳くなっているような……?

まさか、ループによる魂の変質? でもあれは、あくまで白の王と黒の王に適用される物じゃ――ああそうか、前提として「ループを繰り返している」白の王と黒の王のため、なのか。つまり、イレギュラーでループしている俺にも適用されてしまっている、と?
んな馬鹿な。妄想も大概にしておきなさいと。

とりあえず魔術の修練を開始しつつ、今回は錬金術の分野にも手を出してみた。
何分、単純に魔術の修練だけでは成果として形に表れにくいのだ。
その点、何等かの魔法薬の精製などに転用できる錬金術は、割と応用が効く。
おかげで今回は、魔術趣味の変人扱いながら、いざと成ったら頼りに成る魔術師扱いだ。いいけどさ。

さて、今回の周回では、とりあえずもう少し魔術師としての階位を上げる事に専念する。
まぁ、俺の技能が引継ぎされるかどうか、と言う問題は有るものの、実際前回よりも習得効率が上がっているのは事実。腕は磨いておいて、損は無いだろう。









4周目。

気付いたら、近所の魔術師さんとして名を上げた俺は、最終的にダゴンに踏み潰されて死にました。

はぁ。なんだろうね、もう。ダゴンってなによ、ダゴンて。いや、もしかしたらその番のほうかもしれないが。
海産物に踏み潰されて死亡て。はぁ。

然し、前回の事実で理解した。要するに、魔術師では駄目なのだ。魔導師ではないと。
魔術を極めるのが俺の目的なのではない。魔術を用いて戦う道を逝くもの。魔導師でなければ。

10歳。例の如く魔導書を入手したおれは、こっそり地味に旅に出ることにした。勿論両親には黙って。


最初に訪れたのは、日本の地下某所、九頭龍を崇拝するという邪神崇拝教。
如何見ても深き者共という外見、インスマウス面というやつだ。
魔術的にはフサッグァを辛うじて扱える程度という低い階位の俺には、とてもではないが連中を駆逐しせしめる事なんて無理だ。

なので、とりあえず洞窟の出入り口を封鎖して、入り口から大量の煙でいぶしてやる事にした。

戦場で最も恐ろしいのは炎ではなく、立ちこめる煙なのだ。
とは、誰の言葉であったか。
暫くして洞窟の中に入ると、見事にインスマウス面は全滅していた。
術衣形態なんてとれないが、魔術により自分を含めた狭い領域を異界とすることで煙の害を無効化し、煙に満ちた洞窟の中を鍛造したバルザイの偃月刀片手に進む。石柱でできた円陣を叩き壊しながら進むと、その中で不意に小さな魔力を感じた。
何だろうかと身構えながら進むと、其処にあったのは一匹のインスマウス面と、その腕に抱かれた魔導書らしきものが一冊。
感じる魔力は、辛うじて新訳を上回るか、といった程度のもの。とりあえず拝借し、最後洞窟のそこ等中にハッパを仕掛けて退散した。



この魔導書を見るに、やはり連中はクトゥルーの信者で間違いない様子だ。問答無用で叩き潰したが、うん。
とりあえずクトゥルーに関する知識――といっても日本語訳で意味不明になっていたが――の水神祭祀書から知識を得た後、それを焼却処分する。
普通の炎では燃え辛かろうが、クトゥグアの眷属の炎を使えば、ある程度の物までは燃やすことが出来るのだ。

そうして、取り敢えずの日本国内魔導珍道中を繰り返す。
魔術師としてはある程度の階位に達していたであろう俺だが、どうにも魔導師としての階位は素人そのものだった様だ。
辛うじて生き残る事はできたものの、何だかんだでボロボロに成ってしまった。

ふと、なんで自分はこんなマゾい事してるんだろうか、と思う。
なるほど、他にすることが無いからか。
俺はあくまで一般人。この世界に訪れたからといって、無限に近い世界をループするかもしれない中で、そうそう同じ事ばかり繰り返していれば、間違いなく俺は磨耗する。
実際、まだ4度しかループしていないというのに、既に俺の心は磨耗している。これは、洒落にならない。

低い階位ながら、ボチボチ戦える程度の力を手に入れて、漸く故郷の土地に帰ってきた。
ら、なにやら空の雲色が突然怪しくなってきた。
生臭い水の臭い。――これは。

そうして現れた破壊ロボの群。
なるほど、今周はここまでか。








5周目。

新訳の入手まではパターンなのだと判断していたのだが、どうやらソレは早計というものだったらしい。日本でも手に入ったのだ。魔導書が。
父親がアメリカに行くまで暇だと判断していた俺は、普段自らの記憶にプロテクトを掛ける事にしていた。
一定以上の危険が自らに訪れたと判断しない限り、一定条件を満たすまでは自らの記憶にプロテクトが掛かる、と言う代物だ。
流石に40年近く魔導師をしていれば、魔導書無しでも多少の魔術は使える。

そうして、近所の餓鬼と戯れる中、ある日訪れた近所の洋館。
いかにも何か出そうな雰囲気のその館。聞けば、第二次世界大戦中にドイツとの物輸を行っていた家なのだとか。
当主は存命であるものの、此処は本家ではなく分宅で、普段は建物の外側の庭は開放されているのだそうだ。

で、当然の如くその洋館に忍び込んだ俺達は、その中である一室を発見した。
何をしても開く事の無い、硬く閉ざされた扉。ソレを見た瞬間、俺の中に設けられたプロテクトが弾けとんだ。

なんじゃこりゃ、と。

凄まじいまでの魔術的防御。いや、防御と言うよりは封印か。
中と外を別の世界と定義する魔術的結界。よくもまぁこの日本で此処まで魔術的な仕掛けを施せたこと。
驚きつつ、その日はガキ共と一時帰宅。その日の晩、再び屋敷に潜入したのだ。

そうして訪れた屋敷の中。なんとかプロテクトを解除して侵入した屋敷の中。
そこは驚いた事に、一種の異界となっていた。
修められた書籍と書籍。それだけではなく、半紙に綴られた手稿の様なものもあれば、中にはただ重ねられた羊皮紙のようなもの、パピルスのようなものまでが修められていた。

当時の此処の主は、オカルト趣味にでも傾倒していたのか、などと考えていたら、ふと目に付いたソレ。
慌ててその場から距離をとり、改めてその背表紙に目を向ける。
黒い皮の装丁に、鉄の留め金。
辛うじてドイツ語だとわかるソレ。放つ気配は、新訳英語版と比べるのも馬鹿馬鹿しくなるソレ。
とてもではないが、今の俺には扱えない。そう判断して、その冊子は開く事すらせずに棚に収めなおした。

そうして、新たに蔵書を調べようとして再び身を引く。
書籍、戯曲「黄衣の王」。何でこんなモノまで此処に。
内心で心臓が痛くなりつつも、とりあえず部屋の中に用意された机に座り、持ち込んだ大学ノートを使ってその内容を模写する。
ドイツ語らしきもので訳されているのだが、幸い俺はドイツ語なんぞ読めやしない。そのおかげか、若干頭に外道の知識が流れ込んで来はしたものの、精神汚染は休息を取れば何とかなる程度の物で済んだ。
第一章まで写し終え、魔導書から放たれる誘惑を断ち切り、書籍を棚に仕舞いなおす。
何せアレ、二章まで目を通してしまうと、なにやら悲惨な末路をたどる事になるらしい。
魔導書、怖いね。

一息ついて、漸く俺にも扱えそうな魔導書を発見する事ができた。
ラテン語版ネクロノミコンである。

いやいやいやいやいや。なんで此処にあるよ!?
ラテン語版ネクロノミコンといえば、ミスカトニックの秘密図書館の目玉商品――商品ではないな。まぁ、ミスカトニックの秘密図書館に蔵書されている中でも、1~2を争って力を持つとされる魔導書だ。
よりにもよって、なんで日本の、それもこんな古びれた洋館に封印――といえば聞こえは良いが、要は放置されてるの?
これ、外道すらも欲し求めるほどには幅広く知識を与える優秀な魔導書なんだけど???

このラテン語版、俺では辛うじて読めるが、階位的には長時間読み続ければかなり危険、とされる程度には力を持っている。
危険度としてはまぁまぁなのだが、他の魔導書に比べればいきなり寝首を掻くような真似はまずしない――とおもう。魔導書なんぞ、ソレこそ意志を持たない限りはただの外道の知識なのだから。

とりあえず手に入れたソレを鞄に仕舞いこみ、洋館の秘密図書室を後にする。
部屋の外から厳重に再封印を施し、万が一にも偶然で開く事の無い様に。

……とりあえず、今周は、このラテン語版を元に、一週ぶりに研鑽かな。



破壊ロボ多数撃破。
ダゴン(?)一体撃破。然し番らしきもう一体に敗北。

46 RebirthⅢ

2012.07.16 (Mon)

『よくもまぁ、此処まで無茶をやらかした物だ』

目の前に立つドクターが、呆れ顔でそんな事を呟いた。

Subaru >でも、必要に駆られての話だよ?
『XG-70bに任せてしまえばよかったんだ。出力だけならばアレは十分ISを落せる』

そういえば、あれは一応小型の宇宙戦艦に分類されるのか。どちらかといえば駆逐艦のような気もするのだけれども、その破壊力はデブリベルトに一撃で大穴を空けられるほど。クウォーター級には敵わないが、それでも十分以上の戦闘能力を持っているのは事実。

Subaru >いや、それでも万一が在るし。現状、ISに確実に相対できるのは、未だISだけだよ。
『PS計画の自己否定じゃないか』
Subaru >今は、って言ってるでしょが。

いずれはPS――量産型パワードスーツでISに追いつける時代が来るだろう。PSでなくとも、他の何かがISを追い越す日が、何時か必ず来るだろう。

Subaru >諦めたらそこでゲームオーバーですよ、だよ。
『まぁ、それもそう何だけれどもね。……とりあえずスバル、キミは今回無茶したバツとして、暫くは調整槽だ』
Subaru >えーっ!!
『ドゥーエが本気で怒っていてね。今出てくると洩れなくお説教が突いてくるが?』
Subaru >……調整槽で結構です。
『いやぁ、あの時のドゥーエは怖かった。トーレが裸足で逃げ出したからね。文字通り』

ガチ武闘派のトーレ姉をビビらせるドゥーエ姉。うわぁ、桑原桑原。
まぁ、クアの馬鹿はきっとそんなドゥーエ姉を見てエロくクネクネしてるんだろうなぁ。



あの地球へ向う最中の戦闘の後、気絶した私は気付いたら何処かの研究所のポッドに入れられていた。
で、最初に見たのがあのにやけたドクターの顔なのだから、その驚愕は察して欲しい。

イノベげふん、電子の妖精達の活躍のおかげで、何とか私はXB-70bに回収され、そのままこの施設に運び込まれたらしいのだが。

『本当に危ない状況でした。強化内骨格が内蔵を圧迫して、ポッドの強化型回復機能でかろうじて一命を取り留めた、と言う状況です』

リーダー格の赤毛君の言である。
で、目覚めた私はポッドに入れられたまま搬送。月軌道上の低重力医療施設に担ぎこまれた私は、現在こうしてポッドの中で、喋る事もできず、ただほぼ全裸の状態でチャットをするだけの毎日を過している。
幸い胸元より下は見えないように配慮したつくりになっているのだけれども、うーん、水の中で常全裸とか、何か新しい境地に目覚めそう。

――いや、ジョークだからね?

Subaru> で、あの襲撃してきた子について何か分った?
「あぁ、色々と情報が入ったよ。見てみるかい?」
Subaru> 是非に。

ドクターから送られてきたデータが、ポッド内の投影ディスプレイに表示される。
さすが未来の医療用ベッド。ステータスモニターからテレビ、果にはインターネットまで搭載している万能ベッドを豪語するだけは在る。
因みにこのメディカルポッド、愛称メディポッド、現在日本円で一機6桁くらいで販売している。感染症患者とか、大火傷の患者なんかが利用するのにいいらしい。

閑話休題。

ディスプレイに表示されたデータを見るに、成程彼女は確かにイギリス国籍の元代表候補生という事に成っている。
名前は「ミレイヌ・サヴィル」。イギリスのそこそこな旧家の出身で、IS適性はAと高く、学問に関してはそこそこより上くらいだが、実機演習ではかなりの好成績を記録。BT適性もそこそこあり、同じ代表候補生セシリア・オルコットとしのぎを削る関係だったのだとか。
人格面の評価は思想に身をおく狂人。要するにすぐにトリップする不思議ちゃん、という評価だったらしい。
思わずあの狂暴な少女の様子を思い出して、報告書とのギャップに首を傾げる。
だって、私が出会ったときのあの子って、如何見ても厨二系転生者といった感じだった。間違っても不思議ちゃん評価はないと思うのだけど。

続けて報告書を読む。
ブルー・ティアーズの専任選択においてセシリア・オルコットと競合。
サヴィルは戦闘能力こそ高いものの、その能力はどちらかと言うと近接戦闘に向いていた。試合の結果は僅差でオルコットの勝利。また戦術適性としてもオルコットに軍配が上がった。

此処で彼女はならばとIS学園への入学を希望するのだが、それを止めたのはイギリス政府だった。
イギリス政府としては、ヨーロッパ圏で行われる次期主力ISの選定――イグニッション・プランにおける主力候補である第三世代機、ブルー・ティアーズの広報は急務だ。
IS学園には多くの国家から未来のIS乗りが訪れる。そんな場所で新型を見せるのはナンセンス。然しこの次期ブルーティアーズを見せるのは寧ろ宣伝の意味として重要な物があった。
であれば必然的に、ブルーティアーズのランナーたるセシリア・オルコットのIS学園入学は必須となる。

然し、セシリア・オルコットがIS学園へ行ってしまえば、必然的にブルーティアーズの開発は遅れる。治外法権であるIS学園での開発は政治的に不可能なのだ。
そこで政府は、IS学園で取られたBTのデータを、本国でBT2号機、サイレントゼフィルスを使い、当機の熟成を進めることにしたのだ。

そこで抜擢され(てしまっ)たのが、彼女ことミレイヌ・サヴィルだ。

結果として彼女はIS学園へ行く事も敵わず、サイレントゼフィルスのテストパイロットをする事に成ってしまったのだそうだ。

で、来る某日。
セシリア・オルコットから齎されるデータにより、順調に進んでいた2号機開発だったが、此処で我々転生者であれば、予備知識と合わせて予期すべき事態が発生する。つまり、BT2号機、サイレントゼフィルスの強奪事件である。
彼女はサイレントゼフィルスを駆り、襲い来るISと激突。圧倒的不利な状況にも拘らず、施設の研究員全員が撤退完了するまでの時間を稼ぎきった。
残念ながら彼女は2号機ごと亡国機業に誘拐され、その後は消息不明――という事に成っていた。

なんともまぁ、若干残念ではあるが、中々波乱万丈な。オリ主といっても良い程度には主人公してるよ。

ページをめくる。
友好関係について。
彼女はなんでもオルコット家に規模でこそ劣るものの、歴史としてはオルコット家に比肩するほどの旧い貴族の家の出自なのだとか。
友人はその伝手、つまりは中流以上のところが主で、彼女自身父親の伝手を使い、広い交友関係を気付いていたのだとか。まぁ、周囲からの評価は「メルヘンちゃん」だったらしいが。

代表候補生の合宿においては、中心からはずれ、然し全体を俯瞰してバックアップするという立ち位置におり、貴族でありどうしても周囲を見下す傾向にあったセシリアや、何故か人格面で際立つ物のある高IS適性者達を、外側からサポートし、結果として合宿の前後での全体の成績向上率は例年を大きく上回ったのだとか。
個人の努力は当然だが、それを裏で支えていたのは間違いなく彼女であったのだろう、とは現地合宿所管理人のコメントだ。

また合宿所の面々――代表候補生達や貴族社会としての交友関係以外で、一つとても目立つ交友関係があったらしい。それが、インドの技術開発局に勤める鬼才、ラクシャータ・チャウラーとの交流だ。
一体何処で知り合ったのか、イギリス政府でも把握できては居ないのだが、ミレイヌ・サヴィルとラクシャータ・チャウラーは長く国を超えて交友を持った友人同士であり、ラクシャータ・チャウラーの発表した文献の幾つかには、ミレイヌ・サヴィルの名が残されているのだという。

つまりあのグレンは、ラクシャータ博士の開発ではなく、友好関係にあった彼女からの情報提供で建造された機体だ、と言うことか?
インドの機体って、ヴァジュラだったか、確かそんな名前だったように記憶している。

で、最後に彼女の現状。
地球回帰軌道において彼女との激戦の結果、Type-0-2の奮闘により撃破。装備する蒼い機体(サルベージしたデータからはソウエンと呼称)とともに回収。
簡易検査の結果、薬物による洗脳の疑いが出たため即座にメディカルポッドに入れ、入念な精密検査を実行。その結果、彼女の体内から大量のナノマシンと薬物を検出。
薬物は興奮剤、高揚剤、暗示剤――つまり催眠暗示に掛かりやすくなるような、麻薬系の物質が多量に検出され、そのほかにも肉体強化のためと思しき物などが検出された。
ナノマシンのほうはもっとえげつない。
主だった機能に、ナノマシン保持者の監視機能があり、このナノマシンを投与された物は、管理者に常に監視された状態に成る。そして最悪なのが、彼女の首に埋め込まれた小型の形成炸裂薬――つまり、爆弾。これを起爆させる為のシステムが組み込まれていたのだ。
機密保持、裏切り対策などを考えれば、成程中々のシステムだが。誘拐して洗脳した上こんなモノを仕込むとは。“らりるれろ”に切られてから、よほど余裕が無いと見える、亡国機業め。
幸いな事にウチの研究施設はその全てが狂った月兎対策に電波どころか量子の波、コアネットワークまで遮断する特別製だ。それが幸いして、彼女に対する自爆命令は遮断できたらしい。

現在彼女はウチの――つまり、N&Tの研究施設において、ナノマシンの排出と薬物の後遺症からの脱却の為の治療を受けているのだそうだ。
一応彼女の存命をイギリス政府に通達したらしく、即座に彼女の身柄返却要請が着たらしい。現在絶対安静が必要な上、亡国機業に狙われている可能性が高く、このまま秘匿して治療を優先させると宣告。
それでも強引に身柄を要求してきた為、ならばイギリスにN&Tの被った損害の補填を求めたところ、彼女が目覚め次第、サイレントゼフィルスと亡国機業の情報を可能な限り渡してくれれば、彼女の身柄をN&Tに完全譲渡する、とまでの言葉を貰ったのだとか。

N&Tの損害って、アレだよね。ソロモン。宇宙要塞の補填って如何よ。

TINAMIにだが、彼女の搭乗機、グレン改めソウエンは、現在N&Tの支社の何処かでオーバーホールと言う名の完全解体の憂き目にあっているらしい。
何せエナジーウィングに輻射波動砲と、中々愉快な技術が目白押しなのだ。ドクターも現地で顔芸しながら嬉々として解体に加わっていたのだとか。

Subaru> ありがとドクター。
「いやなに、私も今日見合って調べた事だ。満足したかね?」
Subaru> うん。
「そうか。なら、次はキミに関する話だ」
Subaru> へ?

そういって、次にメディポッド内のディスプレイに表示されたデータ。
何々、ファイル名「戦闘機人強化プラン」……っておい?!

Subaru> ちょ、何する気!?
「詳細はデータに纏めてあるんだが、まぁ要するにコレまで含め、今回の事でも分った戦闘機人全体の強化を行おうかと思ってね」
Subaru> 強化って。 具体的にはどうするの? 内部の骨格の構造材の変更?
「いいや、今回は根本的なところから改造しようと思ってね」

とりあえず見てご覧、といわれて送られたデータの中身を開封してみる。
そこにあったのは、いうなれば人と機械のより完全な融合。
現状、戦闘機人と言うのは、肉体の内部構造の主に骨格部分を機械化し、いうなれば人間を基にしたターミネーターのような構造をしている。

利点として、骨格が強化されているため、多少のダメージでは行動不能に成る事は無く、予め整備施設を整えておく事で、戦場で撃墜されても、回収・整備を行う事で即座に再出撃が可能である点だ。
つまり、軍事において最もコストが掛かるとされる人員の教育。
戦闘機人は、人的損失を軽減するとともに、高い回収率を期待できるのだ。
そのほかにも戦闘機人特有のデータの共有によりコストや時間を削減する事ができ、根本的に教育に掛かる時間をカットできたり、それどころか戦闘機人は『生産』出来るのだ。必要なときに必要なだけ戦闘機人を生産すればいいのだ。

まぁ、デメリットとして、一度壊れてしまうと専用の設備下でなければ修理は難しいし、設備が無ければただの人間を治すよりもコストが掛かってしまうのだが。

「なに、戦闘機人の初期プロットから既に15年以上経っているんだ。今やISは勿論、我々は宇宙に進出し、PS、紋章機、リジェネレイトと、この十数年であのときから大きく技術は進歩した。どちらにしろ、そろそろレストアの機会だと思っていたのだよ」

まぁ、確かに。私の提案する案や、N&Tで実際に開発された技術。それらは、私が生み出された当時には無かった技術だ。
それら最新技術を私の身体にフィードバックさせる……なるほど、レストアとは当にその通りか。

「具体的には、骨格系を特殊合金にし、更に全身にナノマシンを循環させる事で再生力を強化。骨格と企画をあわせることで、細胞に加え骨格の自己治癒まで可能に。更にナノマシンをIFSと連動させることで、生体情報端末たちにこそ及ばない物の、かなり高い情報操作能力を獲得! 無論神経系も強化するさ。とはいえ神経系のファイバー化は嫌がられたからね。また別の手段で、反応速度を倍以上に引き上げる事に成功したのさ。くくく、くふふふ、ふはははははは!!! 当に最強! さすがは私の作品。当に生命の神秘を手中に収めた所業!! 芸術的だとは思わないかね!!」
Subaru> 落ち着けドクター。
「あーっはっはっはっはっは!!!」

駄目だ、完全に暴走しだした。
顔芸までして完全にテンションがぶっ飛んでる。こうなっては、メディポッドの中に居る私ではドクターを正気に帰すことは無理だろう。

正直、カメラが寄ってる状態で顔芸されると、ポッドの中に居る私だとこう、逃げられないのだけれども。

Subaru> Plese come back Uno...

彼を止められるのはあなただけです。切実に。

...早く帰ってきてウーノ姉ぇ!!!

15 閑話2 ウェールズ編

2012.07.16 (Mon)
「なんか、あいつの成長速度ってちょっとおかしくねえ?」

ベース……既にUHBの溜り場と化したそこで、不意に龍次――神奈川のがそう呟いた。
視線の先に移るのは、訓練スペースでレヴィと切り結ぶソーマの姿がある。
「確かになぁ」
麻帆良の――カズヒロが、そんなリュージの言葉に同意した。
確かに、思えば彼の成長速度は凄まじい。
なにせ彼は既に、子供の頃から神鳴流に触れていたボクのスペックを圧倒してしまっている。
多分今彼とやったところで、ボクでは彼に一太刀報いるのが精一杯だろう。
多分、一撃入れた瞬間に落とされる。
「まぁ、本人も努力してるのは知ってるんだけどな」
「……そりゃ、あんな可愛い彼女がいればなぁ」
そういうカズとリュージの顔には、羨ましいという文字がべったり。
当人達は否定するが、端から見ていればあの二人――ソーマとリインフォースは酷いバカップルだ。
確かに巷のバカップルのように所かまわずいちゃつくタイプではないのだが、その行動一つ一つがまるで長年連れ添った夫婦のようにしか見えない。
最近は地元でも見ない、「一歩後ろを歩く」を普通に実践するリインフォースと、そんなリインを表情にこそ出さないが猫可愛がりするソーマ。
何が酷いって、その空気に当てられた馬鹿二人が、その都度呪詛を唱えだすのだ。
「でも、努力だけでは説明できない部分もあるよね」
彼の魔法は、リインフォースにより常に修練を繰り返している。馬鹿げた数のマルチタスクをフル稼働させることで、ありえないレベルで魔法技術を習得しているのだ。
それに加え、あの肉体。特質「吸収」で得た闇の書の闇を取り込んだもの。魔力でブーストしやすい上に、虚数から組み上げたエネルギーを得ることで無限により強いものへと変化していくのだとか。正直彼の身体は既に「人体の形をした何か」だ。
でも、ならば戦闘経験は? 確かにイメージトレーニングである程度賄えるのは知っているが、それにしては成長速度が如何考えてもおかしいのだ。
例えば彼のラカン戦。あの開始前の彼であれば、未だボクでも善戦することは出来るレベルだった。
然し、中盤――虚数に覚醒し、巻き返しを図ったその半ばで、既にボクの戦闘技術では相対できないレベルになっていた。それは、あの無限の魔力なしでの、戦術的なレベルで、だ。

あれか、人類最強か。寧ろ人類最終か。

「どっちかってと、灼熱の揺り籠(フォマルハウト)じゃね? 暴走特急的な意味で」
「肉体的にはブレインズだけど」

いや、アレは胸囲を脅威と掛けた洒落だっけ?
じゃなくて。しかもアレで未だ成長中というのだから恐ろしい。
この間なんて「チョット修行に行って来る」なんて言って、魔法世界はグラニクスから西のほうへと飛んで言ったらしい。
でも、グラニクスの西で修行できそうな場所なんて無かった筈。なにせ、あの辺りにはあの脅威の大地、ケルベラスくらいしか……。
いや、まさか……でも、帰ってきてから妙に強くなってたし……。「もうラカンも恐くねー」とか言ってたし。
――うん、考えるのは止そう。

「ん、貴様等は何をだらけておるのだ」
と、そんな事を話し合っていると、不意にPXにディアーチェが訪れた。
ディアーチェは良くPXかベースの艦橋でデータをいじっている。遭遇率としてはまあまあ。
「んー、ソーマについてな」
「あいつ、成長速度が凄いなぁ、って」
リュージの言葉をカズが補足する。あの二人って妙に息があってるんだよな。
「ふん、あの程度、嘗ての聖王に比べれば未だ未だよ」
「聖王って、そんなに凄い人だったの?」
「うむ。我々も直に会ったわけではないのだが、最後の聖王オリヴィエなど、幼少の砌には既に拳法を会得し無敵、戦場に立てばその拳で一騎当千。愛用の剣を佩けば天下無双。放たれる火砲の悉くを蹴散らし、最前線にて大地を薙ぐ。炎も毒も蹴散らして、戦塵無双の限りを尽くし、戦いの果ての平和を願いその悉くを叩き潰す」
「……何か、凄い言われ様だな」
「というか、その言われでよく聖王教なんて出来たな」
「ん、アレは元々――ふぁんくらぶ? のようなものだ」
「「「「はぁっ!?」」」」
と、驚いたところで不意に声が一つ増えていることに気付く。
風見、居たのか。
「ええ、ちょっとデバイスのメンテと提起報告に――で、聖王教会がファンクラブって如何いうことよ?」
そう言いながら怪訝そうな顔で問う風見。
「うむ、聖王といえば、それは美しい美女でな。そんな美女が、憂いた表情で平和を願う……。元々彼奴を慕う兵士も多く、更には覇王インクヴァルトとの悲恋だ――ただでさえ慕われていた彼奴だ。そこに悲恋などという塵芥の好みそうな話まで加われば……後は、わかるな?」
うーわー、と頬を引きつらせる転生者組。秘められた聖王教会の黒歴史が、異世界でつまびらかに!
「――まぁ、冗談だ」
「おい!」
「3割くらいな」
「「「「……………………」」」」
もうこの話は止そう。もし本気で聖王教会=聖王ファンクラブが事実だったりしたら、ボクらはその煩悶をどこにぶつければいいのかっ!!
「然し、その点を見れば、同じ聖王の資質を持ったものでありながら、アヤツの成長速度はたいしたものではないと思うのだが」
「……いえ、僅か10歳であのレベルであれば、十分驚嘆すべきかと」
「おぉ、シュテル、いたのか」
「はい。……ディアーチェと幽香もどうぞ」
と、訪れたのはシュテル。両手で持ったトレーの上に乗った紙コップ。香りからしてコーヒーかな。
――と、言うか。
「……聖王の資質?」
ふと、ディアーチェの言葉に引っかかるものを感じた。
そう、聖王の資質。確かにソーマは聖王の魔力を持っている。が、それが何故ソーマと……

「――ああっ!!」
「ど、どうしたんだよミズチ!?」
そうか、そういうことだったのかっ!! なんて凡ミス! なんたる落とし穴!!
「つまり、特質:聖王=聖王の魔力じゃなくて、本当に聖王の資質ってことなのか!?」
「何を言っておる、貴様等が最初に言っていたことであろうが?」
何言ってんだコイツ、見たいな目で此方を見てくるディアーチェ。ただ、それ以外の転生者組みは、ボクの言いたい事を理解してくれたらしく、その頬を引きつらせていた。

思い出すのは原作のヴィヴィオ。
彼女は高町なのはという強者に近付くことで、その強さを学習して盗み取ったのだ。
冷静に考えてみれば、一緒に居ただけでその技能を盗み取るなど、とてもではないが不可能だ。
彼女の当時の状況を考えれば、一緒に訓練をするなどということもありえないし、となれば彼女は本格的に「見取り稽古」だけで高町なのはとフェイト・T・Hの技能を学習したという事に成る。
もしそれが、それこそが聖王の資質であり、それをソーマが備えているのであれば……。

「「「………………」」」
「要するに、ソーマはマジチートって事ね。あいつを斃す方法ってあるのかしら」
「彼奴は『アルカンシェルを撃ち込まれればさすがに死ねる』と言っておったが……」
「そういえば、先日アルカンシェルの習得に成功したとか言っておられましたよ。本人は『レムリア・インパクトだ!』とか喜んでおられましたが」
「「「「「………………」」」」」
シュテルが何気なく呟いた言葉に、全員が頬を引きつらせた。
もう本格的に止められないんじゃないか、あいつ?

で、何故か其処から『如何にしてソーマを斃すか』という話題へと話がそれた。
一方通行、未元物質は虚数の前には無意味だし、レールガンは守りを抜ければダメージを与えられる。が、その無限の再生力の前には千日手は必然。原子崩しも同じで、心理掌握はマルチタスクを掌握しきる前に殺されるのがオチ。幻想殺しは如何か? 確かに防御は――いや、物量で押し切られかねない。というか、虚数の塊が制御を失ったらその時点で世界がやばい。
型月系の直死の魔眼――ソーマは逃げる。逃げて物陰から暗殺する。アイツチートな力持ってるくせに、ヤる時は陰湿にでも徹底的にヤる奴だからなぁ、とはリュージ談。
固有結界? カイゼルファルベで結界を砕かれる。空想具現化? それって世界のバックアップ――精霊を解した能力でしょ? なら魔力を散されるのがオチよ。
フラガラックとかの因果・運命操作系――アンタがアイツの味方である限りは無理ね――また俺かよ!!――そもそも宝具は特質では出ない。レンのミステスはかなり特殊な特質だ。
少なくとも原作キャラで対抗出来そうなのは赤き翼だけ。白い翼とか論外。カズヒロは「コレから毎日校長室を砲撃しようぜ」とか言ってる。チー研は止めろ塵芥。何故ディアーチェがチー研を!?

「……何言ってんのお前ら」

……と、何か妙な方向に進みつつも、その後ソーマ本人も加え、チートキャラ攻略談義へと花を咲かせたのだった。
因みに本人曰く、『魔力を使わず、尚且つ魔導書を圧倒的に上回る演算能力――例えば学園都市の全員を幻想御手で連結した、その“演算能力”で虚数を物理的に突破されれば俺でも拙いかも』との事だ。
重要なのは能力ではなく、その元たる演算能力なのだとか。少なくとも、デバイス数個の連結程度では無理、ムーンセル=オートマトンでも持ってこい、だとか。
つまり無理ゲーですね分ります。










「んじゃ、そういうわけで、カズとソーマはウェールズ出張よろしくね」
活動を開始しだしてから早一年。エヴァの麻帆良11年目を祝いパーティーを開いたり(本人は口元を引きつらせていたが)、地味に新たな転生者をUHBに迎え入れたり。
上級メンバーの生活基盤が地味にベースに移っているような気がする今日この頃。妹が生まれ、親が完全に相手をしてくれないので、暇をもてあましベースのPXで寝ながらディスプレイを閲覧していたのだが。
突如として現れたミズチは、そう言うと俺のデバイス・アルクにデータを送りつけてきた。
「……メルディアナの石化された村人か」
そういえば、そんなイベントもあったか。
原作主人公であるネギの過去として派手に話され、彼の人格形成の所以であり、MM元老院の陰謀として我々の間では割と有名なこの話。
原作では肝心の主人公ネギが、村人を助けるのではなく、悪魔を殺すという復習方面に突っ走ったり、かとおもえばその悪魔を殺さず還すという人格の捻れ具合を見せ付けられ、結局彼等の救済は忘れられたまま原作が終了してしまったのだ。
「石化……ねぇ? 虹の雫か、天使の涙、ストロスの杖かな?」
「ボクは金の針波……じゃなくて、アレって一種の呪でしょ? なら、カズのギガジャスティスで一気に払えるかな、と」
「呪ならシャナクの様な気もするけど」
まぁ、駄目なら全部試せばいいだけだし。
「でも、なんで俺まで?」
「んー、それが、エヴァ曰く「魔法無効化と違った、魔力無効化能力であるアイツのなら、可能性はある」だってさ」
「……つまり、石化させている精霊を吹き飛ばせと」
「石化してる村人は吹き飛ばしちゃだめだからね?」

そりゃ理解してる、と断りを入れつつ、成程なと頷く。確かにそれは俺の出番だ。まぁ、カズに任せっぱなしでも良い様な気もするんだけど。

「でも、カズを連れてっていいのか? 確かエヴァのところで修行中なんじゃなかったか?」
「いやそれが、件の銀髪オッドアイが最近エヴァに付きまとっているらしくて」

曰く、「キミはふつくしい」だの、「俺と一緒に生きろ」だの、矢鱈と口説き文句を吐きながらエヴァに付きまとっているのだとか。エヴァはエヴァでそれを魔法を使っても退けようとしていたのだが、こおる世界―おわる世界のコンボを喰らっても尚平然と「ハハッ、恥ずかしいのか? エヴァはツンデレだなぁ」とかほざくのを見て、迎撃から逃走にシフトしたらしい。
独覚(仏教用語:一人で悟りを開いた気になっているという意味)系(転じて自分こそが絶対と思ってるイタイ奴のこと)の転生者には、我々の存在を知られたくない。その前提で動いている我々は、出来る限り彼に存在を知られない範囲での活動を選択せざるを得ないのだ。

「アレも、他のオリ主思考の転生者に対する牽制としてはかなりの物なんだけどね」
「――然し、哀れなのはエヴァか」
「うん。カズもさすがに哀れに感じてて、『マスターをそっちに匿えないか?』って」
「……まぁ、あそこまで此方に踏み込んでる彼女なら……『ご立派な魔法使い』に情報を漏らすとも思えないし、スキルニルが完成し次第ならいいかな?」

とりあえずこの話は、また後々念話の会議で決めるとして。

「渡航手段は?」
「足跡を残したくない。不正規で」
「んじゃ、転移だな……麻帆良の外でカズと合流して、その後イギリスへ転移、かな?」
「あっちの政府には詳細を暈して、国連経由で一報を入れておくよ」
言いながら、ミズチの虚空からアルクへ座標データが送られてくる。そういえば、ウェールズの山奥なんていわれても場所知らないな、俺。
「じゃ、いってくるわ――リイン」
静かに紅茶を飲みながらハリ○・ポ○ターを呼んでいたリインに声を掛ける。リインはSFな存在な割に、ああいう非科学的な物語が好きらしい。ネット依存症のディアーチェが面白半分にネタバレしようとしたところ、デアボリック・エミッションを叩き込まれて煙を吐いていた。それ以来ベースでは「ネタバレ禁止」が暗黙の了解となっているとかいないとか。

そんなリインの手を掴み、一緒に転移。虹色に輝き回転する魔法陣を広げながら、何か呆れたような視線を向けるミズチに手を振って、そのまま転移した。







そうして訪れた麻帆良郊外。其処には何故かゲッソリした表情のアスナと、同じくゲッソリした表情のエヴァがいた。
「――って、なんでエヴァが!?」
「案ずるな。結界の反応はちゃんと誤魔化してある。だから私も、頼むから連れて行ってくれ」
そう言って弱々しく懇願するエヴァ。
もしかして、アレか銀髪オッドアイの君の件かと視線で問うと、どうやらその通りらしくカズが苦々しい表情で頷いた。
「もしかして、アスナも?」
「……アイツ、ウザイ」
聞いた途端、嫌悪も顕わと顔をゆがめるアスナ。
「そんな表情しなさんな。可愛い顔が台無しだ」
軽く頬を引っ張りつつ、改めて周囲を見回す。とりあえず、何か飲み物でも飲ませて落ち着かせないと。
「リイン、お茶とコーヒーとジュースを適当に」
「はい」
申し訳ないと思いつつ、リインに自販機へとお使いを頼む。
その間に俺とカズヒロでエヴァとアスナを、すぐ傍に有った公園のベンチへ。麻帆良には比べ物にも成らない質素な公園だが、それでも麻帆良が近い所為か、中々に整備が行き届いている。
そんな公園のベンチに座らせた二人。追いついたリインが二人に其々お茶とジュースを渡した。
受け取った二人は、其々にそれを飲み、少しだけホッとした表情で落ち着いていた。

然し、エヴァを此処まで追い詰めるねぇ? って事は、他へのアピールはもう諦めたかな?

「いや、そんな事も無い。恐ろしい事に、マスターをこんな状態に追い詰めながらも、他の原作組みにも確りとウザアピールを掛けてる。このかちゃんからもドン引きされてるんだから相当だぞ」
「……敵ながら尊敬する………って、ちょっとまて。何でお前近衛女史を名前で……」
「――てへ」
「お前またかまたなんかやったのかやったんだろう正直にいえば楽にイかせてやるぞ彼の世になぁ!!」
「ちょ、恐い怖い怖い!!」

本人曰く、偶々街角で出会った少女が近衛このかだっただけで、特に魔法関連での話はなかったとの事。致命的な状況は避けられたらしいが、それでも変な縁が出来てしまったのは事実。
……嫌だなぁ。これ、絶対後のフラグになるぞ。

「――まぁ、いい。今さら過去を悔いても仕方ない」
「そうそう、常に前をみなきゃばっ!?」
お前が言うな。後悔云々よりも先ず反省しろ馬鹿。
とりあえずトラブルメーカーに裏拳を叩き込みつつ、今度は二人に話しかける。――ああ、リイン、その馬鹿にも缶ジュース一本やっておいて。
「でも、其処までエヴァが弱るとは」
「……奴め、私のダイオラマ球に不法侵入した上、私の必殺コンボを喰らって平気な顔をしおった。糸は力尽くで引き千切るし、なんとか合気で斃して追い出しはしたものの、それから幾らウチの結界を強化しても平然と不法侵入。いっそ血をすって眷属化させようかと思ったのだが、あいつの血は臭過ぎて吸いたくない。近寄りたくも無い。逃げても逃げても何処までも追ってくる。 ――麻帆良には、既に、私の安息の場所は、ない」
ゲッソリとした表情のエヴァ。その話の内容を考えるに、コッチまで血の気が引いてきた。
「ワタシも同じ。このかと一緒に居たら付きまとってきて、「お前を助けてやる」とか言いながらへんな術を掛けようとしてきた。なんとか魔法は散らしたけど、薄気味悪い笑顔で「恐がらなくてもいい」とか言って私に触ろうとしてくる。後は逃げても逃げても追いかけてくる。あの、気味の悪い笑顔で」
思い出してか、顔色を真っ青にしてガクガクと震えだす二人。
「わ、悪かった。もういい、もういいから」
「あいつは、きっと今頃ワタシの家にまた入って……嫌だ、あの男が勝手にワタシのベッドにもぐりこんだかもしれないと思うと……あの家には帰りたくない…………」
「――っ!? ――嫌――!?」
「悪かった!! もうそれ以上考えるのストップ!!」
リインと一緒に、二人を思い切り抱きしめてやる。こういうネガティブなときって、人肌以上に落ち着くものはないのだ。
というか、其処までか。一体銀髪オッドアイの君はどんな手段でそこまで精神的に彼女達を追い詰めてるんだ?
もしかして俺と同じ虚数か? 影分身か!?

それから暫くして、漸く落ち着いてきたらしい二人。
少し顔を赤く染めた二人の表情は、中々に可愛らしいものだ。――俺も赤い? 馬鹿言っちゃいけない。そこら辺は滾る紳士力でカバー。前世あわせて結構な年数生きてるおじさんを舐めてはいけない。
二人が落ち着いたのを確認して、ベースのミズチへと連絡を取る。
件の銀髪オッドアイの君の件が、想定以上に深刻である事を告げ、緊急対策を実施する必要を提言。
一応これも、悲劇といえば悲劇だ。
復活したカズヒロ曰く、他にもやばそうな子に長谷川千雨がいて、彼女に対しても「ボクは理解者だ」と言うかのように振舞っているのだとか。
あまりにもわざとらしいその仕草に、既に人間不信の毛がある長谷川千雨はあからさまに敬遠。だというのに彼奴は長谷川千雨に執拗にアピール。既に彼女もノイローゼの域に到達しかけている。
だというのに彼奴は「誰だ千雨をこんなにしたのは!」などと能天気に憤っているらしい。

……銀髪オッドアイの君、なんて、恐ろしい……。

「因みに、なんでお前そんなに詳しいんだ?」
「……てへっ」
「またかまたなのかまたなんだなお前ぇっ!!」

どうも、偶々長谷川千雨が銀髪オッドアイに迫られていた所を目撃。散々ウザ発現を撒き散らして去っていったあと、ついつい「ちうちゃん哀れ」と呟いてしまったのだとか。
で、既に麻帆良のヴァーチャル(幼女)アイドルとして活動を開始していたらしい彼女。10歳でネトアとか常識を盛大に打ち破っているような気がしないでもないが、そこは麻帆良。その程度余裕で常識の範囲内らしい。そんな彼女に目を付けられたこの馬鹿は、偶に彼女の愚痴に付き合う仲になっているらしい。

「お、の、れ、わぁ……」
「いやだってほら! 考えてみればアレだって相当な悲劇だし!!」

――まぁ、いい。彼女に関する責任を自分で取れるというならば、俺からは何も言わない。
UHBはあくまで同盟であって、互いに命令を出来るような関係ではない。
あくまでも、同じ目的に賛同した同士なのだ。

「えー!? 頼むソーマ、ヘルプぐあっ!」
「頼るの前提かっ!!」

とりあえず長谷川千雨にデバイスを用意してやることは約束しつつ、漸く全体が落ち着いたという事で、漸く、本命であるウェールズへの転移と相成った。
大分時間を無駄遣いしてしまった。ウェールズのは早々に終わらせたい。
そんな事を考えながら、周囲に人の気配が無い事を確認。全員を対象に転移魔法を起動させる。
薄らと輝く虹色の三角形に導かれ、俺達はその公園から姿を消したのだった。

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14 閑話1 麻帆良訪問。

2012.07.16 (Mon)
ついに、この日が来てしまった。

「ほぅ、貴様がエリクシルか。話に聞く偉丈夫とは偉く違うな」

そういって目の前で鼻で笑う金髪ロリ。
正直それを言うなら、その金髪ロリな容姿で「闇の福音」なんて呼ばれてるお前は何なんだと。

「……貴様、何か不快なことを考えていないか?」
「いやいやまさか」
「フン、まぁいい」

ザァ、ザァという波の音の聞こえる砂浜。
まるで常夏の島に忽然と現れたかのような西洋の城。その一室で、俺は麻帆良の……カズヒロと共に、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと向き合っていた。
今回此処に訪れたのは、俺の目的の為――ではなく、目の前のこの金髪エターナルロリータに召喚されたからだ。

「――ふん、こんなガキが、貴様等のトップ、なぁ?」

此方を見下すような視線で、そうカズヒロに言う金髪エターナルロリ。面倒だGEロリとしよう。もしくは金髪Eロリ。で、その金髪Eロリは何故か俺のほうを見てそんな事を呟いて。

「いや、なんで俺がトップ?」
「え? お前がトップじゃないの?」

なんか麻帆良の――カズヒロがそんな事を言い出した。

「いや、俺『最初の四人』の中じゃ最後発だろうに」
「いやでも、最初に行動を提起したのはお前だろ?」
「トップってのは指導者のことだろ? なら俺よりもミズチのが……」
「それだとUHBの経営に一番近いのは龍次だけどさ」

「ええい喧しい! もういいからさっさと話を進めるぞ!!」

と、自分から言い出したくせに何かキレて話を推し進めてしまった。然しそういえば、UHBのトップって誰扱いなんだろうか。
いやでもアレって、組織っていうか元は同盟だしなぁ。

「で、お話の内容って?」
「とりあえずだ。貴様等との契約の結果得たコレだがな。思いの外高性能で中々に重宝させてもらっている」

そういって見せるのは、腕に填めた待機状態のデバイスと、腰に斜めに巻いたカートリッジシステムのベルト。
そういえば研究成果って言って、インテリブーストとカートリッジ用デバイスを送ったんだっけ。
インテリはインテリ単体として使えるんだけど、このカートリッジ専用デバイスはインテリとは別口として装備することで、インテリの遠隔制御により、まるで一つのデバイスであるかのように運用することが出来る。
魔力を封じられているエヴァには、一時的な魔力ブースターとして送ってみたのだが。案外使えているようで安心した。

「そりゃ良かった。ただ、それは此方の秘匿技術が含まれているので、余り表には……」
「分っている。コレの使用はあくまでも連中の監視の無い場所でのみに限定している」
コレが無くとも手札はあるからな、と金髪Eロリ。さすが600歳は伊達じゃない。
「何か不快なことを(ry」
「いえいえまさか」
鋭いなぁ。
とりあえず否定しながら話を進めると、なんでも彼女はこの力を使った訓練をしつつ、カートリッジシステムを使用しての学園結界からの開放を目論んでいるのだとか。
――あれ?

「何、お前まだ解放してあげてなかったの?」
「え?」「は?」

金髪Eロリが――それも面倒になってきた。何だよ金髪エロリって。18禁か。
――エヴァとカズヒロがそんな間抜けな声を上げた。

「――そうだな、エヴァンジェリン殿。此方にはある条件と引き換えに、貴殿の呪縛の解放を実行する用意がある」
「な、なに?! 解けるというのか、この呪を!?」
「幾つか手はあるよ」
「と、解け!! 今すぐこの忌まわしい呪を解け!!」

そう言うエヴァにガクガクとエリを揺らされる。若干気持ち悪くなりつつも、弱体化の影響で10歳児程度の身体能力しかないその少女を押しのける。とはいえ、レディーには丁寧に、だが。
とりあえず落ち着かせたエヴァンジェリンに、用意されていた紅茶を飲ませ、改めて会話を進める。
「んー……此方の要求は、4年後からの3年間、麻帆良の中等部に在籍してほしい、というモノです」
「な、なにっ!?」

具体的に言ってしまうと、原作時点でエヴァンジェリンにこの麻帆良に残っていてほしいのだ。
彼女の在籍の有無では原作の改変度が大きく変わってくる。
――いや、我々としては別に原作なんて既に如何でもいいのだが、問題は原作派ないし、ハーレム厨と呼ばれる連中だ。連中に原作改変度に気付かれてしまうと、変な干渉が増えかねないのだ。
出来れば連中には我々の存在が勘付かれないように行動したい。そのためには、エヴァの在籍は如何しても必要になるのだ。

「数え麻帆良に15年ほど滞在していただく計算になりますが――これはあなたにとっても利のある話なんですよ?」
「フンッ」

現在彼女の麻帆良滞在歴は10年。まぁ、既に十分な年数といえなくも無いが、15年も表社会から姿を消していれば、もう彼女を=闇の福音と結びつけるのは難しいだろう。

「然し、何故15年なのだ? その数字には何か意味があるのか?」
「あまり詳しい事は話せませんが……要すると、予言です」
「予言?」

未来に起こるであろう原作知識。それを予言として、その予言に基づき、自分達の利益を得ようとする者たちがいる。
子供の頃、あるひ突然予言を手に入れた彼等は、それを元に様々な行動を取るようになる。
ある者は力を得る為に物語に関わることを。
ある者は平穏を守るために物語を避けることを。
また在るものは物語りこそが平和を乱すとして、物語を収束させる為に動いた。

「その中でも、一番性質が悪いのが、自分こそがヒーローであると勘違いした馬鹿で」

予言を得たものの中でも、偶にそういう馬鹿が発生する。自らは神に選ばれた英雄なのだ、と。
彼等は「自らの信じる正義」をなす為、善悪問わず立ちふさがるものをすべて粉砕する。何が悪いかと言うと、予言を得た連中の場合、そういう連中が本当に力を持ってしまっている場合があるのだ。

……転生者の因縁を、マイルドにしてみたのだが……駄目か。こういうのは俺じゃなくてミズチの担当なんだ。

「正義等言うのは……」
「いや、『正義』って言葉を使ってますが、あれを正義扱いするのは……一応理想を持って真面目に偽善をやってる人たちに失礼かと」
「ククク、貴様は正義ではないのだな」
「俺達は、あくまでも自分達の為、それと起こると判っている悲劇を回避する為――分ってて何もしないのは、“後味悪い”から……」

例えば、俺が此処に来るに際して、神鳴流のもモルモルから少し出張に出た。
何でも四階の組み鈴だか組紐だかに物資を運んで救援に行くのだとか。そういえばそんなイベントもあったなぁ。俺は完全に忘れていた。

「悲劇の回避……な」
「義を見てせざるは勇無きなり、は、ちょっと違うかな?」
「ハ――で、その予言の内容は」
「お教えできません。何分、アナタはその予言の大きな鍵となりますので」

知って行動するよりも、知らずに行動してもらったほうが為り易い。
もしその時に何か有れば、そのときは此方からも動くだろうが。

「――まぁ、よかろう。どうせ外に出ても追われるだけの日々だ。為らば後数年ここにとどまるのも一つ、か」

言うエヴァンジェリン。やっぱり彼女も逃亡生活に逆戻り、と言うのは正直辛いものがあるのだろう。
この麻帆良、割といい空気だし、住み心地は良さそうだしなぁ。
で、細かい内容――たとえば麻帆良の魔法使い陣営を騙す為、魔力にリミッターを掛けるだとか、そのリミッターの解除キーはデバイスに任せるだとか。あとは簡単な自己暗示で「魔力は封じられているもの」として振舞うようにするだとか。
まぁ、そういった細かい話は追々煮詰めるとして、とりあえず彼女の呪を解呪してしまおうか。

「んじゃ、任せたぞカズ」
「イヤイヤイヤ、何で其処で俺!?」

今まで呆然と話を聞いていたカズだが、……コイツ、本当に理解してないのか?

「……なぁ、お前、自分の特質覚えてる?」
「あ? えっと、気配遮断と幸運と――ドラクエの呪文?」
「忘れてたのか? 実は忘れてただろうお前!」
「い、いやまぁ確かに筋肉痛の時にホイミ使うくらいしかしないから忘れてたけど、でもそれと解呪と何の関係が……」
「お前……マジャスティス使えよ」
「…………………………あ゛っ」

※マジャスティス
ドラクエⅦに登場した呪文。
消費MP15で敵一体に掛かった魔法を完全消去する。
いてつく波動と同じ効果だが、消費MPがでかすぎてあんまり役に立たない。

因みにこの呪文、魔王に呪われて魔物に変化させられた人々を助けるのにも使えたらしい。
「呪いって、モロにマジャスティスの使いどころだと思うんだが?」
「……」
「ダメでも、シャナクとかミナカトール――は、拙いか? まぁ、色々手段はあると思うんだが?」
「…………」

で、試行した結果、あっさりとエヴァの呪は解除されてしまったのだった。
結局その日はエヴァの喜びの余り、件の模擬戦の話は流れ、それどころかエヴァにカズ諸共食事に誘われ、その席で彼女のことをエヴァと呼ぶことを許されてしまった。
高級フレンチおいしかったですが、俺別に何もやってないんだけどなー。

……然し戦闘回避成立である(ニヤリ。







で、その翌日。
相変らずご機嫌なままのエヴァンジェリンに引き連れられ、俺達は麻帆良の観光案内に連れられていた。
どうなるかは未だ分らないが、もしかすると俺達UHBのメンバーは、何らかの形で麻帆良に訪れる可能性がある。その時のことも考えれば、まぁ地形の把握くらいにはなると思ったのだが。

……金髪ロリが男二人(ショタ)を侍らせて歩く……物凄く、目立つ。一応リインも要るのだが、リインはその体格的に中学生くらい。如何見ても保護者です。
なにかこう、微笑ましいものでも見るかのような視線がびしびしと突き刺さってくるのだ。若干背中から別の視線を感じるような気もするが。
カズヒロは基本的にこういう視線には鈍感だし、エヴァはテンションが上がりすぎて気付いてない。

とりあえず俺の羞恥心がガリガリ削れる現状を改善すべく、手近にあった喫茶店へ。
軽い軽食を取りつつ、エヴァに聞くのは魔法世界関連の話題。一応軽い認識疎外も掛けているが、そもそもこんな話題をしたところでゲームの話題と認識されるのが落ち。
ガキが集まって魔法なんて単語を出したところで、真面目に「魔法が実在する」なんて思うのはよっぽど狂気に走った狂人くらいだろう。
――いや、この麻帆良に居ると言う銀髪オッドアイに見つかっても厄介なのだが、彼は現在森の奥で忍術の修行中らしい。サーチャーで確認したが、どうやら『木登り』の真っ最中らしい。永遠に木登りでもしていればいい。

で、魔法世界の話題とか、過去エヴァは魔法世界で活動していた時期があったらしく、なるほど彼女の話す歴史的話題は、確かに今の政治形態に繋がる部分を感じさせる。
同じ闇属性の魔法使いという事で、若干興がのって喋っている最中。ついついカズヒロを放置してしまったのだが、その放置が拙かった。
何を思ったかカズヒロ、突然ギガジャスティスを唱えたのだ。

※ギガジャスティス
マジャスティスの上位呪文。
敵と仲間にかかっている呪文の効果を全て消し去り、さらに暫くの間全ての呪文を無効化する。
消費MPは20と大きく、更に仲間の呪文効果をも消し去ってしまうので、マジャスティスよりもさらに使えない。

幸い俺の聖王の鎧により、俺と俺の影に居たエヴァに被害は無かった。ただ、偶々近くを通りかかったのであろう人々が突然頭を抱えて苦しみだし、特に小学生の――今の俺達と同い年くらいの少女が、突然バタリと音を立てて倒れこんだ。

「――っ、馬鹿かお前馬鹿じゃねーの、お前、バッカじゃねーの!?」
「うわーっ、えええなんで拙いやばいゴメンゴメンゴメン!!!」
「喧しい! とりあえず手当てを優先せんかっ!!」

慌てて少女に駆け寄ったところ、少女はただ意識を失っているだけで、少し表情に険しいものがあったものの何処にも怪我は無かった。
そもそもギガジャスティスは、マジャスティスの広域版。当ったところでダメージなどあるはずが無く、確かに強力な呪文ではあるが昏倒する要因になどなり得ないはずなのだ。

其処まで考えて、少女の容姿に気付く。
赤味を帯びた髪の毛を、左右で縛ったツインテール。
あどけない姿のその少女は、また俺の記憶に残る原作キャラクター。

「……とりあえず、エヴァの家に運んでも?」
「仕方あるまい」



この日、麻帆良某所で発生した無差別魔法無効化呪文は、周囲に居た人間に施された魔法使いの記憶封印を無差別に解除。そのほかにも魔法使いの定点観測用の魔法を徹底的に破壊。魔法的空白地帯が発生した。
コレにより、魔法使いにより記憶をいじられた人間が多数その事を自覚するのだが、各々はそれを自らの胸のうちに秘め、魔法使いに対する隔意を胸の其処に沈めるのだった。



「で、どうするよ?」
目覚めた途端鬱々と防ぎこむオレンジロリを相手するリインを眺めながら、やらかした張本人のカズヒロに尋ねる。
目の前の少女――神楽坂明日菜こと、『黄昏の姫巫女』アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。
この物語のキーパーソンにして、魔法世界の鍵のような存在である彼女。
確かに魔法世界崩壊の回避を行うなら、彼女の助力は必要と成るだろう。
でも、未だ原作5年前。彼女は現在9歳児なのだ。いやまぁ、エセロリだけど。
本来魔法無効化体質を有する彼女には、魔法の類は通じない筈なのだが。其処は腐っても転生者。その持ち前の莫大な魔力と、ドラクエの呪文というこの世界では少し異質な魔法により、見事彼女に掛かった記憶封印を木っ端微塵に打ち砕いてしまったのだ。
「どうするよ、って言われても……」
「現時点で彼女の記憶が復活するとか、想定外にも程がある。正直俺は此処からどうするかなんて考えてないぞ?」
だって俺の担当は、主にUHBの戦力増強。
ワンオフ品のデバイス開発だとか、次元航行艦の開発だとか。
因みにモルモルのミズチは大量生産を前提とした装備の開発を行っているため、俺とは少し方向性が違う。あっちは他にも政治的介入もやってるし。
「えーっと……如何いう選択肢がある?」
選択肢、ねぇ?
「一つ、彼女の記憶を再封印する」
言った途端、明日菜……いや、アスナの肩がびくりと跳ねる。
「ただ、これはオススメしない。連続した記憶処理は彼女への負担が大きいし、第一俺は人の記憶を弄る連中を好いていない」
「そりゃ俺だってそうだけよ。んじゃ、次は?」
「放置する。正直そんなことに成れば間違いなく魔法使いに勘付かれて戦争が起こるが」

UHBの戦力は未だ少ない。
確かに我々転生者は強い。内何人かは一騎当千の力を誇るが、それでも原作最強位と相打つのがやっと。麻帆良の前戦力と正面衝突は、良くて共倒れ。少なくとも今のUHBは倒れるだろう。
「三つ目。彼女をこちら側に引き込む」

これにも中々リスクが伴う。何せ彼女は現在高畑――魔法世界の英雄の一人と同居していた筈だ。
彼女を此方に引き込むという事は、魔法世界に露見する可能性が跳ね上がるという事なのだ。

「俺達に提示できる手段はこの三つくらいか」
「――デメリットしかねぇ……」
「手前の所為だろうが阿呆!」
「――なぁ、そろそろ私にも事情説明がほしいのだが?」
カズヒロに非殺傷シューターを叩き込みつつ、そんな事を言ってきたエヴァンジェリンに向き直る。
……これ、彼女に話しちゃうと色々拙い気がするんだけどなぁ。
ま、いいか。悪いのは全部カズってことで。
「彼女は、魔法使い達に生贄にされた少女で、「黄昏の姫巫女」なんて呼ばれてた子です」
「――ハ、それはまた、ビッグネームが出てきたものだ……」
なんていいつつ、つつつと落ちる冷や汗。さすがのエヴァでも黄昏の姫巫女の名前には驚いたらしい。

「こんにちはお姫様。俺はソーマ。コッチはカズヒロで、あの人がエヴァンジェリン」
「……アスナ」
「うん、よろしくアスナ。で、早速なんだけどアスナ。俺達と来ない?」
言いつつ、リインに抱かれたアスナに声を掛ける。
原作の記憶解放時に比べて落ち込む様子は少ないが――多分、封印後の自己形成が完了する前に記憶封印が解かれた所為で、元の記憶に継ぎ足された形で人格が統一された、とかそういう話か?
「あなた達?」
「そう、俺達UHB――アンハッピーブレイカーズと」
「……は、ッククク、何だ、UHBとはそういう意味だったのか」
と、話を聞いていたエヴァンジェリンが突如として嗤い始めた。世間一般に謎とされるUHBの略字の意味。それが、こんな下らないものであれば、俺でも笑う。当に厨二病。卒業したんじゃないのかって? きっと肉体に魂が引っ張られちまったのさ……。
「俺達とくるなら、魔法使いに負けないものを。魔導師としての力を」
「魔導師?」
「そう、俺達の力は撃ち抜く力。涙も痛みも、運命も」
話すのは、俺達UHBの理念。誰かの為じゃない。俺達のわがままのために。ただ見捨てるのが後味悪いと言う、自分達の傲慢で手を差し伸べるという“悪”。
そんな物を語って、少女の前に手を差し伸べる。
「――うん、私も連れてって」
如何いう葛藤があったのか。少女はそういって此方に手を差し伸べてきた。
うん、フィッシュ、じゃなくて。と言うわけで、アスナがUHBに参入しました。――また怒られるんだろうなぁ。でも責任はカズに押し付けよう。うん。

然し、事は大事と成った。よりにもよって、現時点でキーパーソン2名確保とか。もう現時点で原作は成立しないだろう。此方が調整しない限りは。
うーん、ミズチとリュージに怒られるのは確定かっ!!

「もういっそのこと、エヴァには此方の深いところまで関与してもらいましょうか」
此方から対価として差し出せるのは、彼女の自由。
この旧世界と呼ばれる世界での、彼女の完全な身分と自由の保障。
今は未だ少し遠いが、必ず手にすることは出来ると確信しているそれ。
「――フフフ、大言を。いいだろう、貴様等の言う世界にも若干興味がわいたぞ」
「――ならば、これからもよろしくお願いします」
こうして、力を取り戻したエヴァンジェリンと、自らを取り戻したアスナ。
その二人を味方につけるという良くも悪くも大きな成果を残して、今回の麻帆良滞在を終えたのだった。





※呪縛から開放されてテンション上がってたエヴァには、その後復活祝いの腕慣らしとして、ダイオラマ球での二十四時間耐久魔法サバイバル戦をやらされる羽目に陥ったのだが、それはまぁ余談。
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13 Hidden "Change the World"

2012.07.15 (Sun)
それからの事を少しだけまとめておこうと思う。
俺達UHBは、表向きPCハード・ソフトを共に開発する全国規模の企業として名を挙げることに成功した。
まぁ時代背景的に、技術レベルを押さえたとはいえ、此方のデバイス技術は数世紀先の技術だ。現代の物よりも少しだけ上の技術を、本当に少しずつ表へ出していけば、大体技術レベルの戦闘を走っていることになった。
そして、その成果はモルモル王国にも大きな利益を齎す。
技術的共同開発者であるモルモル王国カオラ機関。其処にはUHBから齎された最新技術に加え、元々彼の国が持っていた部分的オーバーテクノロジーなどで、技術国国家としてその名を大きく上げることに成功。
更にそれら技術により、砂漠地域の緑化計画が現在進行中だったりする。


そして、それに加えて裏側の話を。

世界規模で勢力を伸ばしていた俺達UHBは、ついに国連への接触に踏み切る頃になる。
ある程度の時期から、各国の信用できる筋に伝手を作っていた我々ではあったが、それはあくまでも各国という区切り。国連という組織に関してはほぼノータッチだった。

俺達が国連へ接触して、先ず行った事は国連の地位向上。現在の曖昧の形の国連から、より世界に存在感を示す物へ。
国連主導の下、我々UHBが協力し、太平洋上にギガフロートを建設。……実際には異次元世界にてガジェットやらリアニメーターやらで組み上げたフロートを、此方に運び込んでは組み立てただけなのだが……それを以ってして、国連の拠点を巨大な海上施設へと移転。このギガ・フロートをファウンデーション0と呼称。
何処の国家にも属さない『国連』勢力の樹立を実行。
そうして更にその状態からの、国連主導での宇宙開発を提言。ギガフロートに設置したマス・ドライバーの存在により、宇宙開発の拠点として注目されることで、国連は世界の宇宙開発と言う分野においてトップに躍り出ることとなる。


どこぞの過去の偉人さん曰く、世界平和の鍵は国連の成長にあるのだとか。
実際やってみたところ、国ではなく人類の組織としての躍進であった為か大きな妨害は殆ど無かった。
例えばユーラシアの大国が『我が国は世界最大級の人口を誇るアル。故にマス・ドライバーの優先的使用権を寄越すヨロシ』とか、『何でもいいから技術寄越すクマー』とかいう連中が鬱陶しかったらしいが、その辺りは恩着せがましくマス・ドライバーの設計図を渡すことで誤魔化した。
――どうせあの設計図の通りにマス・ドライバーを作ろうと思ったら、四半世紀計画になるだろうし。
因みに自称世界の警察さんはどうしたかと言うと、大量にスパイを送り込んで来はしたものの、同じように送りつけた設計図から、建設及びマス・ドライバーの独占による世界からの批判というデメリットを考え、ファウンデーション0との友好的な付き合いを取るようになっていた。


さて、そんな国連事情とは裏腹に、国連を解して各国に働きかけていたものがある。
それが、ISシリーズの全国展開と、魔法使いによる脅威への対策だ。
魔法使いの介入したとされる具体的事例を数件挙げ、それによる魔法使い側の得た利益、各国の不利益などを明確に表してみた。
例えば両陣営に魔法使いが加担した為に長引いた内戦、例えばそもそもの原因が魔法使いの暴走であったもの。そのほかにも魔法使いによって改竄され他であろう不審な帳簿だとか、政治家達の急な趣旨換えだとか。
集まった外交官だか政治家だかの何人かにも心当たりがあるのか、顔色を真っ青に染めてガタガタ震えていた。
で、そんな魔法使い連中に対抗するために、このISの導入を勧めた、というわけだ。
ノーマルISは高い対魔法使い能力を有するが、然しその運用には魔法使いとしての資質は関係が無い。
量産性も効き、価格も戦闘機より安くて汎用性が高い。
各国はこれを解体して技術を吸収する気満々で、これらの購入を検討しているのだとか。
ちなみに、だが。
現在このISは国連を解して販売しているのだが、この国連から販売されるISシリーズは、その大半がブラックボックス化されている上、武装の大半が非殺傷設定に固定されている。
そのため確かに対魔法使い能力は高いのだが、兵器としての性能は戦闘ヘリより上程度。対戦闘機戦では、戦場によっては敗北もありうる程度のものでしかない。
いや、さすがに対魔法使い以外に軍事利用されるのは嫌だったからね。その辺りは神鳴流がかなり上手くやってくれたらしい。ありがたいことだ。
結果各国は多くのISを手に入れ、対魔法使い戦能力を着々と上げていく。

またそれと同時に併用して世界に広まったのがAMFだ。
魔法使いの魔法行使を阻害するこの装置は、同時に幾つかの利点を齎す。
現時点の加工技術からはオーバーテクノロジー過ぎて、復元は可能でも、如何足掻いても技術的転用は不可能。
そんな代物を世界に広めたところ、ISとあわせて世界中でかなりの違法魔法使いを捕縛するに至った。
捕まえた魔法使いの扱いで、最初「体内に爆弾を仕込んで監視すべき!」なんて過激すぎる意見も「多々」出てしまっていたのだが、慌てて此方で生体電流を利用した魔法行使阻害チップを開発。これを埋め込み、一般的な収容所に叩き込む事で事なきを得た。
因みにあのチップの弱点は、阻害できるのが精霊魔法のみで、我々魔導師の扱うモノは阻害できない点だそうだ。
ただ、それに際して表に出てきた問題。
世界各国に存在する、魔法使いの隠れ里に対する対応だ。
コレに関して、西欧系の魔法使いは魔法世界との関わりが深いために介入は見合わせてもらい、逆に東洋系の魔法世界との関わりの薄い魔法使いは此方で抱きこむことに。東洋の当たりは置いておくとして、未だ魔法使いに対する戦術的ノウハウの集まっていない現状、未だ表立って魔法使いに対する世界一斉検挙は実行されていない。





各国でいい具合に抗魔法使い能力が上がっていく最中、国連は国連で活動を続けている。
と言うのが、独自戦力としての国連平和維持軍の編成だ。
UNPO(PKF)は本来、国連の要請によって目的地に派遣される『各国軍』を指すのだが、我々の介入によりその勢力を増した国連軍は、ついにその独自戦力を保有するに至った。これをもって名称を変更。国連安保理軍はその名称をEDF――地球防衛軍へと変えた。
実際火星人からの秘密的侵略を受けているわけだし? それの反勢力という意味ではいい皮肉だろう。

EDFの主な内訳は、UHBからの推薦が極少数と、各国軍隊からの派遣、各国軍隊から派遣されたスパイ、国連軍志望の新人さん、取り込んだ反魔法世界勢力など。因みにスパイが物凄く多かった。
で、そうした連中に何をさせているかと言うと、各国の紛争への『政治的』介入や、世界規模の大災害などの対応。当に「国連軍」としての働きをさせているのだ。
それに加え、ISの訓練や国連兵士の育成など。更に育てたISランナーをマスドライバーで衛星軌道へ打ち上げ、国際宇宙ステーションの増築などを一気に進めた。
更に、国連独自の宇宙ステーションとして、ファウンデーション1を建設。国連軍は自重せずに突っ走る。

更に国連軍は対魔法使い用の最高戦力として、UHBから極少数供与されているハイエンドIS――ネクストのランナーを有する特殊部隊、アームズフォースを設立。従来のノーマルISを圧倒するネクストISをISの戦争投入への抑止力とし、尚且つ汎用性の高い彼等は世界中で秘密裏にその活動を続けることとなる。






さて、そんな折、我々UHBが何をしていたかと言うと、現実世界は宇宙にて活動を続けていた。
先ず最初に行ったのは、月の裏側の整地と、我々の活動の為の仮設拠点の設置。この仮設拠点は基本的にベースを利用すればいいので、要するに簡単なベースの格納用スペースの確保という面が大きかった。
因みに月の裏側を整地したのは、後に来る国連軍の宇宙基地建設用のスペース確保だ。
一応基礎工事やら簡単な仮設基地も立てて、更に国連旗も立てた。これで万が一この基地が関係者以外に発見されても、不当にこの施設が占拠されることは無い、と思う、のだけれども……。


で、宇宙に拠点を設けた我々が次に行ったのは、宇宙に漂流するデブリを用いた錬金術。
……いや、別にゼロ魔だとか鋼錬とかな意味ではない。単純に、核反応を利用した物質生成だ。
さすがに我々非正規組織としてのUHBのために、地球や魔法世界から物資を不法流出させるのは忍びない。そこで宇宙を漂うデブリをベースに集め、ベースの出力を用いた大魔力で発生させた超重力。それを以ってデブリを超加圧。超重力により圧縮され、質量が熱量へと変化。余剰エネルギーを逃しつつ、其処の生成されたのはキラキラと七色に輝く不思議な結晶。これがレアメタルとしても、魔法触媒としても其々で高く売れた。なんでも従来金属に添加することでその強度が数パーセント上昇するだとか、魔法触媒として高い伝導率をもつだとか。
地味にUNPOの維持のために寄付を続けなければいけない我々としては、この超科学錬金中をガンガン進めて、更なる資金を集めなければならないのだ。

他にも、新たに仲間になった、本当の意味で「鋼錬」な錬金術師転生者にデブリを従来金属へ変化させてもらったり、よりデブリの多い地域へ移動したり。
――あぁ、その過程で溜りに溜まった蓄積データから、俺とリインまで錬金術――というか、元素変換魔法・元素形成魔法――を習得してしまった。演算速度の関係で俺とリイン以外にはとても扱えた物ではないのだが、それでも固有の特殊能力に近い技術の再現に至ったというのは、結構な成果ではあると思う。錬金術師君はガックリorzしてたけど。
で、気付いたときには月軌道上に衛星基地(ルナ2)を建設したり、L3――太陽と地球の一直線上に、地球に落せば核の冬を齎せそうな巨大な基地(アクシズ)を建設したりしていた。
多分新規参入メンバーに乗せられた結果だと思う。

だが、太陽の向こう側にあるアクシズはともかく、月衛星軌道上に作ったルナ2はヤバイ。天体観測で見つかりかねないという事で、サテライトバスター(ベースに備え付けられた衛星破砕砲)で砕かれ、その破片を錬金術で物資化して地上で売る事に。
……あの時は、折角用意したルナ2が砕かれて悲しいやら、空間を消滅させるアルカンシェルに比べてかなり派手なサテライトバスターに腰が引けるやら。
だってあれだよ? 400メートル級の時空航行艦が五機は格納できるサイズの天体衛星基地が、ベースから発射された野太い光線の一撃で大爆発起こす様子とか。
いいさ。国連がある程度育ったら、国連名義でもう一回作るつもりだし。
ア・バ○ア・クーとかソ□モンとかも作りたいなぁ。大丈夫、日本人ならきっと支持してくれるはず!!








さて、それとは別に、現在UHBが魔法世界で行っている活動も存在する。
それは、魔法世界の救済に関して。
幾ら我々が現実世界の人間で、此方で好き勝手し腐る魔法使い連中を排斥したいからといって、そのまま魔法世界崩壊を放置するのも幾分後味が悪い。何せベース建設ではお世話になったのだ。
そこで現在幾つかの手法での魔法世界存続のプランを設計中。

先ず、魔法使いが崩壊する原因は、魔法世界の魔力枯渇による人造異世界の崩壊。これにより、魔法世界の「人以外」は消失し、「人」は荒涼たる火星の大地に放り投げだされることになる、というもの。

コレの対策としては幾つか方法が考えられている。

先ず一つに、紫天一家のエネルギー源、「永遠結晶エグザミア」を用いた魔力の充填。
ただ、エグザミアは「特定魔導力を無限に生み出し続ける『無限連環機構』」であり、その特定魔力というのが魔法世界を維持するための魔力にたいして親和性がどの程度あるのか、と言う点が問題になる。

次に、俺の虚数・吸収による無限魔力変換による魔力充填。
コレの問題点は、俺のスキル習熟度と、やはり魔法世界の魔力と俺の魔力との親和性になる。
第一、俺の魔力なんか魔法世界に充満させてしまうと、下手すると魔法世界を消してしまうかもしれないし。

他にも、引き込んだ転生者が言っていた、世界樹の植樹による方法なんかが挙げられる。
曰く嘗ての世界で二次SSの手法の一つとしてよく用いられた手法で、魔力(その元?)を生成する世界樹を魔法世界に植樹する事で、魔法世界の魔力生成量を増加させ、魔力減少量を圧倒させる。これにより魔法世界を安定させ、その存続を図る、と言うものだ。
ただ疑問として、あの世界樹って、もしかすると『地脈の接合点に存在する樹木が、その莫大な地脈のエネルギーを帯びて世界樹に育った』可能性というのも存在しているのだ。つまり、エネルギー自体は地球の地脈の物である場合、世界中を移植しても余り意味は無いのだ。

後は……適当な衛星を引っ張ってきて、物質―魔力変換をやるとか。錬金術師とか、物量系の特質持ちなら出来なくも無いらしいんだよね。

と、魔法世界の崩壊対策に対してはこの程度。
魔法世界の崩壊を前述の手段で救った後、植樹以外の場合は魔力炉なりを世界各地に設置し、それを其々の国家に管理してもらえば魔法世界の崩壊はほぼ永続的に安定する。
まぁ、それが次の火種に成りそうな気がしないでもないが。
因みにこの件に関して、幻想世界を現実側の火星に定着させるという案に関しては、ソレはまた別問題という事で、方法のみ勘案され、実行に移すかは別案件とされている。



次。完全なる世界について。
完全なる世界の目的は、崩壊する人造世界の人々を新たな「完全なる世界」へ隔離し、永遠の安寧を与えること。
簡単に言うと
「折角魔法世界作ったけど、結局そこでも戦争続けやがって。けっ、やってらんねー!!」
「もういいや! なら夢の中で勝手に永遠に幸せになってればいいじゃねーか!!」
と、こんな感じである。

魔法世界崩壊からの救済という建前で、折角作った魔法世界でドロドロした政治しやがって昇天しやがれという本音から行動しているらしい。
いや、下の人間は本気で救済のために働いてるらしいけど。


連中の対策としては、精霊魔法使いには難しくても、こと我々魔導師にはとても容易かったりする。
隔離結界で離脱を封じた後、シューターで牽制しつつ封印を掛ければそれでおしまい。
何せ連中は『人形』の類。魔力を封印してやれば、それ以上動く事はできない。
此方はロストロギアにとて封印を掛けられるミッド・ベルカ式。たかがこの世界の魔法で出来た人形如き、必ず封印してみせる。




と、懸案事項はその程度か。
他に、麻帆良のがうっかり神楽坂アスナの記憶封印を解除しちゃったとか、俺とエヴァが非殺傷設定のデバイスでガチの殺し合いしたとか、エヴァの封印を解除したり、何か俺の魔力が呪の類にも効果が有るとかで、忍び込んだメルディアナで色々やって永久石化を解除したりと、色々やらかしたのだが……まぁ、その辺りはまた今度。
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12 其々の現状

2012.07.13 (Fri)
「と、言うわけで、新規参入のお二人。ほれ自己紹介」
≪風見幽香よ。積極的にナリキリをやってるわ≫
≪……レン≫
≪だからなんで女の子ばっかり≫≪グギギギギ、リア充め!!!≫
ほら言われた。
「……別に狙ってやってるわけじゃないよ?」
≪それにしては、手前の勧誘してきたのって女ばっかだよなぁ≫
神奈川のに言われて回想。
先ず最初にリインフォース、次いで勧誘と言うのかは知らないが、紫天一家の4人。
で、幽香とレンだから……うん、見事に女性のみしか勧誘してないね!

「それでも おれは やってない」
≪ネタ乙≫
バッサリ切り込んでくるなぁ。








と言うわけで、幽香とレンの紹介を終えて、とりあえず現状の報告会議を始める事に。


「んじゃ、先ず俺から報告しようか」
いいながらデータを各員に送信する。データの内容は、建造中のL級巡洋艦に関して、だ。
「魔法世界での活動の甲斐あって、とりあえずベースの建設は完了。現在は試作機の次元航行艦でデータ取りをしつつ、L級巡航艦の一番艦を建造中。リアニメーターとガジェットを増産した甲斐あって、早ければ来月中にはかんせいするよ」

因みに、アルカンシェルに関してはまだ未完成だ。
アルカンシェルの術式プログラムや、砲身自体は既に完成しているのだが、その試射が未だ出来ていないのだ。
アルカンシェルの試射には、アルカンシェルを放てる空間、充填用のエネルギー、それに加え地球・魔法世界の双方に観測されないという条件が必要とされる。
とりあえず、1番艦用のデータ取りが終わり次第、0番試作艦に括りつけて、何処かの無人世界で試射しようと思っているのだが、そのときには他の連中も呼ぶ心算だ。あぁ、創始者メンバーだけだけどな。
あと特筆すべきは――0番試験艦にはAMF対策として核融合炉を搭載している、という点だろうか。何故かエスティアの設計データの中に、核融合炉のデータがあったんだよな。年式からして多分ミッド軍時代の設計の名残だと思うのだが。

「俺からはこんなところかな? 他に何かあったっけ?」
「現在、風見幽香用のデバイスを製作中です。傘型インテリ・アームドデバイスで、術の型式はミッドの変則式になります」
「そのくらいか」
≪――アームドデバイスを使うゆうかりんとか≫
≪しかもD-89じゃなくてロリ幽香というのがポイントか……ッ!!≫
「何の話をしてるんだおまえら……」
傘の杖――俺はハグリッドを思い出すんだけど――なんてこの連中に言ったら顰蹙を買うんだろうなぁ。
因みに何故ミッド式かというと、幽香の陰陽道系のスキルを生かすなら、ベルカ式よりもミッド式のほうが相性がよかったのだ。第一、幽香はベルカ式で肉体強化をするまでも無く強い。なら術で補助系を伸ばしたほうが利がある、という考えからだ。リインはちょっと残念がっていたが。

とりあえず、俺からの報告は以上。というわけで、次の報告にまわす。




≪それじゃ次はボクが。とりあえずモルモル王国での開発を報告しておこうかな≫
神鳴流の言葉と共に送られてきたデータ。早速開いたところ、思わず頬が引きつるのを感じた。
≪IS、完成しちゃった≫
てへ、と聞こえてくる声に、けれども一瞬全員が沈黙した。
「因みに、どの程度の代物で?」
≪えーっと、今機体はハイエンドのネクストとノーマルが存在してて、ノーマルはモルモルで開発された小型疑似魔力炉を搭載。稼働時間に制限はあるけど、一流どころの魔法使いに訓練を詰んだ非魔法使いが勝てる程度の代物には仕上がってるよ≫
それは、十分に、ミリタリーバランスを崩せて仕舞うのではないだろうか。
≪因みにコレが小型疑似魔力炉の概要ね≫
≪如何見ても疑似○陽炉な件≫
≪スターターの電力で魔力を発生させられるのか。かなり凄いな……≫
但し、スターター電力は結構莫大で、一家に一台、なんてやるにはまだ電気料金やら設備費なんかが壁になって、精々軍事基地に配備するぐらいが限界だろう。
因みに小型疑似魔力炉は、構造自体は単純だけど再現は現代の加工技術では不可能な上、解体したところで先に魔導理論に確り触れていないと、何が如何なって動いているのか全く理解でき無い様になっている。
オーパーツ此処に極まれり。
≪んじゃ、さっきのネクストって方は如何違うんだ?≫
≪ネクストの方は文字通り次元が違うよ≫
そういって表示された資料には、先ほどのノーマルISに比べ、比較的スリムになったISの姿が映し出されていた。
≪ノーマルは機動兵器としてはかなりの性能を誇るけど、魔導兵器としての性能は一級品。特級品には及ばない。それは操縦者の適性を問わない代わりに、運用兵器の特殊性を殆ど撤廃してるからなんだ≫
「特殊兵器?」
≪例えばサーチャー、シューターなんかに見られる誘導術式。一応先行入力したターゲットを追跡する、とかは出来るんだけど、途中で目標を変更したり、なんてのは出来ないんだ≫
他にも、収束砲や変換資質の再現なんかは殆ど不可能になっているのだとか。
「――つまり、ネクストは其処の辺りが可能となっている、と?」
その問い掛けに、何処からかフ、という笑い声が聞こえたような気がした。
≪ネクストには疑似リンカーコアが不活性状態で仕込まれていてね。魔力資質を持った人間がこれに搭乗すると、供給される魔力により疑似リンカーコアが賦活。これと同調する事で、ネクストの搭乗者――ランナーは、ノーマル以上の反応性と、高い魔力操作性を手に入れることが出来るようになってる。簡単に言うと、『兵器であるノーマル』に比べて、『ネクストは拡張デバイス』なんだよ≫
「≪≪…………………………≫≫」
思わず、神鳴流の以外全員が黙り込む。
俺も何だかんだで、アルカンシェルとか次元航行艦とか色々拙いものを作ってたつもりだけど、コイツも中々とんでもないものを作り出したなと。
実際に資料をチェックしていくと、このとんでも兵器の凄まじさが理解できてくる。
ネクストには小型疑似魔力炉こそ搭載されていないが、複数の疑似リンカーコアを搭載し、しかも疑似リンカーコア同調システムにより、その数値を加法式――足し算ではなく、掛け算にするのだとか。
≪ツイン・ドライブシステムかよ!!≫
麻帆良の、ツッコミ乙。
≪因みにネクストは運用条件が難しい分色々出来ることは多くて、待機状態とかも出来るんだ。今現在ぼく達4人分のネクストは建造中だから、出来次第各位に――いや、ベースでの受け渡しにしようか≫
「問題ない。ついでにそのまま何処かの次元世界で試乗ってのもありだと思う」
まぁ、出来たというなら是非欲しい。
然し神鳴流のめ。ドンだけチートなんだか。闇の書と夜天の書を納めた俺でも、彼ほどのチートは無理だと思うんだけどなぁ。俺のって所詮は知識の再現だし。アッチは知識の発展だし。




≪んじゃ、次は俺。UHB本社からの状況報告をやらせてもらうぞ≫
と、次いで神奈川のが口を開く――念話だけど。
≪ウチの本社に設置したAMFなんだけど、先ず花粉症の人間が、社屋とその近隣での花粉症被害の軽減に物凄い感謝してた。≫
≪あぁ、副次効果か≫
確かモルモルで開発されたAMFは、同時に放射線の拡散だとか、空気中の対流物――埃だとかカビだとか、ついでに花粉だとか――の滞留を抑える効果があるのだとか。
加湿無しにそれが高い効果で期待できるのだが、まさかいの一番に花粉症の話とか。
≪いやいや、意外と重要だぞ、花粉症≫
「……そか」
≪麻帆良にも欲しいなぁ。いやほら、案外きついんだよ麻帆良の花粉≫
そういえば、麻帆良ってでっかい木とかいっぱいあるもんなぁ。然し残念ながら麻帆良への設置・稼動は一番最後になるだろう。
事を急いで魔法使いに気付かれるのも面白くないしな。
≪あと、先に言っておくがコレはネタじゃないぞ≫
≪んん? お前がもったいぶった言い方って、チョット珍しいな≫
≪いや、かなり馬鹿らしい事件でな……≫
そういって神奈川のが送ってきたのは、一つの映像ファイル。
その動画はどうやらUHB本社前の監視カメラらしく、何時もの風景が映し出されて――途端、何かがカメラの前にドサリと落ちてきた。
≪なんというか――表向き、箒に跨った成人男性が、ウチのビルから飛び降りた、って事に成ってるんだが……≫
「こ、これは……」
如何考えても魔法使いです。アレか。潜入しようとして箒で近付いて、AMFの影響で墜ちたか。映像には、顔を真っ赤にした男性がそのまま救急車で搬送される姿が映し出されていた。
≪阿呆だね≫
≪いやいや、連中にしてみればAMFなんて科学の産物は理解し難いだろうし……≫
≪いや、麻帆良にも破魔結界――学園大結界ってあるでしょ? あれの同種の物の存在を警戒してれば、あのAMFにうかつに突っ込むなんて馬鹿なことは……≫
「一般企業にまさかそんなものが仕掛けられてるなんて思わなかったんだろうな。今まで好き勝手してきた魔法使いの慢心ってやつだ」
いい気味だ、とは思うものの、若干そういう事故があるのも理解した。チョットだけ気が重い。

≪因みに何故かこの動画はネットに流出していてな……≫
神奈川のって案外容赦無いよなぁ……。

≪が、AMFの有用性はこんなところでも実証できたわけだ≫
≪一般的な魔法使いの飛行阻害――手札としてはかなり大きいね≫
「ただ、相変らず俺達に対する有効性も保ってるんだよな」
≪あぁ、それだけどね、AMFC――AMFキャンセラーのデバイスドライバが完成したから、全員に送っておくよ≫
≪仕事が速いなぁ≫
まぁ、神鳴流のだから。
≪因みに、現在建設中のISには最初からAMFCとAMFが搭載されてるから、ある意味魔法使い殺しになるよ≫
「それノーマルのデメリットが無い! 寧ろネクストの存在意義はあるのか!?」
ノーマルの量産が機動にのれば、現実世界から魔法使いが駆逐されてしまうのではないだろうか。
「……あ、IS学園の設立の提唱」
≪あー、技術開示はどの程度する?≫
≪魔力炉の制限――は、何か恐いね。AMFを外した状態の物を開示しようか≫
≪どっちにしろAMFは魔導技術だし、ブラックボックスにしとけば、例え中を覗かれても問題ないんじゃないか?≫
全員の脳裏に浮かぶのは、世界の警察を自称する某国の干渉だ。
「そういえば、その件はどうなったんだ?」
≪――えっと、あそこにはある程度の情報を開示する事で手を引いてもらいました。寧ろ、此方の開示した情報で国内に潜むテロリストの存在を認知したってことで、CIAとFBI、更にかなり無尽蔵に情報が吸い上げられてる可能性の出てきたエシュロンなんかがパニックになってる≫
寧ろAMFの最大のお得意様になってくれそうな気配だ、とのこと。どちらにせよ、ノーマルの解析では魔法技術の分析は不可能だそうで、他にも現行とは全く型式の違うOSを使うことで、それらの規制により戦力比を調整する、なんて方法も一応考えてはいるそうだが……。
ええい面倒な! もういっその事、UHBの全力で国連を支援して、国連の勢力を拡大させるか!? そうすりゃそこにISの管理を任せればいいんだし。

――まぁ、ISに関する話は追々詰めていくとして。

≪あ、AMFの話が出たからついでに報告しておくと、現在急ピッチで世界中にAMFが配備されてるよ。特に発電施設と通信施設が重点的かな≫
日本において普及している携帯基地局。年代的に考えれば如何考えても早すぎるのだが、多分愉快神の真似してる転生者の介入だろう。UHBは現在それら携帯電話事業に介入する形で、全国の通信基地局に広範囲型AMFを設置しているのだとか。
で、更にそれら通信施設に設置したAMFを隠れ蓑に、全国の発電所・変電所にもAMFを設置しているのだそうだ。此方は空間滞留物による事故防止にも成るので、名目としては新型の事故防止設備という事で内密な設置が進んでいるのだそうだ。
――神鳴流の、本気で魔法使いの駆逐を目論んでるなぁ。


≪んじゃ、麻帆良から。滋賀のをマスターが呼んでる。「さっさと来い」だって≫
「えぇー……」
≪なんか、まほネットでエリクシル選手の活躍を知ったとかで、それがソーマだって言ったら是非手合わせをしてやるって≫
「うわぁ……いやまて、お前がチクッたわけだな!?」
≪あ、やべ……≫
「とりあえず麻帆良の。手前は中・上級精霊魔法を習得したらアグレッサーな」
フルボッコにしてやる、と言う呟きに、「そんな~」と情け無い声を上げる麻帆良の。
ただでさえ金髪エターナルロリータに目を付けられてたって言うのに、余計に目を付けられた気がする。



≪あ、ボクからもう一つ≫
「もうISネタはいいからな?」
で、次の議題にいく。再び声を上げた神鳴流のだが、予め釘を刺しておくのは忘れない。
≪大丈夫。今度のは、各員の特質についてだから≫
≪特質って、何か分ったのか?≫
≪うん、全員分の三つの資質が判明したから、此処で平等に公表しておこうかと≫




■遠藤 相馬
1.聖王:魔力完全無効化。但しそれ以外も無効化してるみたいで、少し疑わしい。
2.吸収:習熟度B。砲撃単発くらいなら余裕で吸収できる。訓練中。
3.虚数:チート。吸収とあわせれば永久機関。

■諏訪部 蛟
1.気の急速回復:総量は一般的を若干上回る程度の気だが、その回復速度がおかしい。気の瞬間回復。
2.姦計の逆臣:頭脳チート。思考による未来予測。曹操か。
3.解析能力:目視したものの詳細な情報を見出せる。頭脳チートとあわせれば簡易未来予測。

■唐沢 龍次
1.超回復:あっという間に肉体的損傷どころか疲労まで回復するチートスキル。気も普通に比べれば回復速度は速い。但し神鳴流のには及ばない。
2.炎気:気の変換資質。炎の如く燃え盛るオーラ。ゴム人間の兄か
3.満胃健身:食事による回復能力。食べれば気も回復する。海賊王になるのか。

■斉藤 和弘
1.ドラクエの呪文:ザキ恐い。マジ恐い。でも回復系便利そう。
2.気配遮断:存在感を希薄にすることが出来る。逃げ隠れに便利。
3.幸運:原作キャラの幸運には及ばないものの、効果範囲が広く、所属する味方にも効果が及ぶ。




……拙い、誰が誰かわかんない。一つも所在地で呼んでるからなぁ。
『主、スキルを見れば……』
あぁ、そうか。有難うリイン。
――という事で、順番に俺、神鳴流、神奈川、麻帆良の並びだと思う。
因みにスキル説明に関する突っ込みは入れないぞ。


≪説明はボクじゃなくて紫天一家だよ……ボクの力は先述の通りで、ソーマの不明だった三つ目は、自己宣告の通り虚数だったわけだ。で、判明したリュージとカズヒロのスキルなんだけど……≫
「神奈川のこれなんて読むんだ? マンイソウシン?」
≪ああ。最近気付いたんだがな、俺って怪我しても、食事のあとには大体治ってるんだよ。んでもしかしてコレが三つ目かもと思って≫
≪ちょっとしたテストの結果、確かに特質らしかったから。因みにその特質の名称はボクじゃなくてリュージの命名だから≫
……神奈川のぇ。
≪なぁ、んじゃ、俺のは? なんで気配遮断と幸運? 俺って別に運は普通だと思うんだけど?≫
≪気配遮断は前々から示唆してたんだけど、多分間違いないと思うよ。幸運の方は――そうだね、書いてあるとおり本人に強く作用するタイプの物じゃなくて、緊急時に最初以下の状態に成らない、悪運寄りの特質だね。それも、味方全体に作用する広範囲の。その恩恵は――UHBの発展を見れば分ると思うよ≫
実際、ISやAMFの開発において、まるで何かに導かれるように、妙に発展速度が速かった。開発担当の神鳴流のも、何かに後押しされているような気配を感じた事があるそうだ。
≪あ、それウチ――UHB本社の運営でも感じた。廻りもよく「妙にツイてる」って言うし≫
「……俺も、あるな。虚数を自覚したとき。何かに引っ張られるようにしてキーワードが結びついたし」
≪え、えええっ!?≫
≪当時UHBに所属していた転生者で、特典が不明で尚且つそれらしいのはカズヒロだけだったんだ。もしかしたらソーマの、って可能性もあったんだけど、虚数が発覚した時点でカズヒロだっていうのは確定したんだ≫
≪それって消去法……というか、なんで俺のスキルは俺にあんまり恩恵をくれない癖に、まわりにばっかり恩恵を齎してるんだ?≫
≪いや、そんなことは無いよ? この間AMFで電子精霊を誤魔化せるかと思って麻帆良にハッキングを仕掛けてみたんだけどね――≫

突っ込みは置いておくとして、神鳴流の齎した情報は中々に面白いものだった。
何でも行く先行く先、麻帆良のは魔法先生や魔法生徒と出会いそうで出会わない、ニアミスの乱発を繰り返しているのだとか。
特にエヴァンジェリン邸付近では、高畑教諭とのニアミスをかなりの回数こなしているとか。

≪役に立ってないとか言ってごめん! 寧ろ致命的事態を何度も回避してくれてた!!??≫
「というか、所属グループ全体に幸運のプラス補正って、俺以上にチートじゃね?」
≪非戦闘系の中ではダントツじゃないかな?≫
≪恩恵を預かってる身としては、感謝しねーとな≫




と、何か本人の自覚の無いところで周囲から感謝されて、あわあわと戸惑う麻帆良のを見たり。
結局、麻帆良の「幸運」の話に気を取られて、精霊魔法でぶっ飛ばすという話を完全に忘れてしまっていた事に気づいたのは、それから大分先の話だった。
これもあいつの幸運スキルか?

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11 虹色の魔王・After

2012.07.13 (Fri)
「いやー、久々に死ぬかと思ったぜ!」
件の伝説の試合、虹色の魔王と千の剣の戦いの後、その当事者の一人、千の剣のラカンが笑顔と共に残したのは、そんな簡単なコメントだった。
然しそのコメントを言ったのは、ただの一拳闘士ではない。「死なない男」とまで言われる彼に、其処までの言葉を言わせる男――「虹色の雨」改め「虹色の魔王」は、その後に各国の有力者からその消息を探られるが、結局彼はジャック・ラカンとの対戦を最後に、その後魔法世界での消息を断ったのだった。





「……虹色の魔王って……」
「なんつーか、……酷い厨二病?」
「言うな!! 言わないでくれ!!」
グラニクス某所の宿屋。フルドライブの影響で全身筋肉痛により寝込んでいる最中に言われたその言葉。追い討ちを掛けてくる神奈川のをシューターで黙らせ、改めてその恥ずかしい名称に悶絶する。
悶絶して転げまわって、全身の筋肉痛に響いて更に悶絶しなおす。地獄である。

……いや、虹色は分る。魔力色は派手な虹色だし、魔法の射手を7種混合でぶっ放してた。
けど、魔王ってなぜだ!? アレか。終盤テンション上げ過ぎて「フゥーハハハハ!」とか統べ子風に高笑いしたからか。それとも闘技場の結界耐久力とか考えず、出す心算の無かった『魔力で作った螺旋丸(名称未定)』を思い切り高笑いしながらぶっ放したからか。
「ふん、しかも何だあの体たらくは。あそこまでの大言を吐いて、更に逆転かと思わせて、其処でまた引き分けるだと?」
「ぐはっ」
「ディアーチェ、そう彼を責めずに。というか、あれで死なない生物なんて、我々でも相手取るのは不可能ですよ?」
統べ子のきつい一言に思わず胸を押さえて地面に突っ伏すが、シュテルの慰めに何とか自分を取り戻す。
然し、酷い事になった。
あの試合、結局俺はラカンと引き分けた。
無限のエネルギーを得た俺と、公式バグキャラ「死なない男」の二人。やろうと思えば未だ未だ戦い続ける事は出来た筈だし、俺としてもそのほうがレベルアップの近道としてかなり喜ばしいのだが。
――残念ながら、闘技場の結界がアレ以上持たなかったのだ。
結局審判による宣言により試合が中断され、結果は引き分けと言う曖昧なままに終わってしまった。
「ごめんリイン、勝てなかったよ……」
「いえ、主の成長は確りと確認させていただきました。この期間であれほどの成長を成されたのであれば、私はとても喜ばしく思います」
「――次は、勝つ。もう無様は晒さない。で、俺がリインの主としての力を示してみせる」
この曖昧な結果、さすがにコレには納得していない。今回はこんな結果になったが、次は白黒はっきりつけてみせる。

「(きゃ、きゃ~~)」
「(お暑いのぅ、妬ましいのぅ!)」
「(はいはい邪魔してやるなよ)」
「(覗き見などはしたない真似をするなユーリ!)」
「(と、いいつつ確り見ているディアーチェでした)」
……何か外野が五月蝿いので、取りあえず今はこのくらいにしておこう。

「うるぁお前等! 後ろで喧しいぞ――ってか、なんでこっちに来てるんだよ!?」
「え、観光」
「だな」
「レヴィが行きたいって言うからね」
「うん、中々面白かったぞ!!」
「くくく、浮世の娯楽、特に貴様が殴られている様は中々愉快であったぞ!」
「――おつかれさまでした」「で、でした」

くうっ、萌えたらいいのか怒ればいいのか。
とりあえず神奈川のと麻帆良のの顔面にシューターを叩き込んで、早々に魔法世界を立ち去るべく、痛む全身にヒーリングをかけるのだった。










「ソーマ、下界が何か面白い事になってきておる様だぞ?」

ジャック・ラカンとの戦闘から数日。
ある程度以上の資材を得て、既に魔法世界の拠点を引き払った俺は、紫天一家と共に自宅と次元基地――ベースを行き来する日々を送っていた。
この次元基地、ちょっと頑張って居住性を相当良くした結果、自宅よりも住み心地がよくなってしまっているのだ。
空気/水・完全循環システムが予想以上に上手く成立した結果、現在のこのベースは食料意外の補給をほぼ必要としないかなりいい基地へと仕上がった。
形も、基地と言うよりは馬鹿でかいSF宇宙空母といった感じだし。
で、そんなベースの中で次元航行艦の建造をしつつ、のんびりと持ち込んだコーヒーを啜っていた最中。不意にディスプレイを弄っていたディアーチェがそんな事を言い出した。
ディアーチェには此処のシステム統括を任せているのだが、偶に施設を使ってわけの判らないメカを作る以外は、ソコソコ真面目に仕事をしてくれている。
そんなディアーチェの主な娯楽が、地球のインターネット、魔法世界のマホネットに接続して情報を喰い散らかす事なのだ。得た情報は此方にも回してもらっている上に、現実世界で開発してしまったAMF。あれは言ってしまえば此方にも有効な兵器なのだ。アレを此処で運用する為に、サブエンジンに核融合炉を仕込んだりと、ベースでの計画表が若干水増しされ、それに対応するのに忙しく、そんな中で有能な彼女の事は重宝しているのだ。
「面白い事?」
「ほれ」
送られてきたデータを見て、思わず絶句する。
何か、魔法世界の『虹色の魔王』が、物凄く話題になっている。

突如としてグラニクスに現れた黒衣の青年(融合と幻術で化けてた)、『虹色の雨』。
時には勝ち、時には負け、てだれとの戦いを経て徐々に成長する彼(調整してただけ)。
そんな中、不意に闘技場に現れる伝説、ジャック・ラカン。
英雄と青年の激突、追い詰められる青年は、その最中に新たな力に覚醒する。
常識を超え、無限にあふれ出す魔力。立ち上るのは虹色の闇の柱。
そうして、新たな英雄は伝説と相打つ――。

「――ナニコレ」
「貴様の事であろう塵芥」

しかも最悪なのは、『虹色の魔王』『未だ第二形態』『雨霰』『嗤う永久機関』『てかあいつの魔力無くならないんですが』のエリクシル、なんてとんでもない数の痛々しい二つ名が、俺の偽名とセットで出回ってしまっていることだ。

「……暫く……魔法世界にはいきたくない」




そんなこんなも有りつつ、それからディアーチェに手伝ってもらい、少し魔法世界で調べてみた事がある。
と言うのは、マホネットにて俺のことを「聖王」と呼称する連中が確認された事に関してだ。――多分、というか間違いなくほかの転生者の連中だろう。
あんまり敵対的な連中と接触するのは嫌なのだが、そのほかにもそれらしき人間として、旧オスティア周辺で拳闘士をやってる転生者らしき存在が居るらしいのだ。
というのも、そいつは自称「赤龍帝」を名乗り、赤い鎧を身に纏って戦うのだとか。

「――ふぅ」

隠す気がないのだろうか。むしろアピールしてる?
他にも、アリアドネーの鬼才と呼ばれ期待されている少女『アリス・マーガリン』だとか、俺の立ち去った直後にグラニクスを訪れたMMの金持ちお坊ちゃま――銀髪オッドアイだったそうだ――だとか。

「我が主、お茶をどうぞ」
「ありがとなぁリイン」

何か驚いたような表情のリインに首を傾げつつ、どうしたものかと眉間を揉み解す。
俺らのやろうとしていることは、下手をすると魔法世界を滅ぼしかねない戦いだ。幾ら転生者とはいえ、魔法世界に生きている連中は、「今」「魔法世界で」「生きている」のだ。
自分達の住む世界を滅ぼすかもしれない、なんて連中に味方するとは思えない。
――でも、だ。
例えばあの連中が、俺と同じく何時何故転生したのかも自覚できず、同郷の士を探しているだけであったのだとすれば?
特にMMの金持ちのなんて、俺が有名に成り出した時期から考えて、俺の存在を知ってすぐにMMを発ったと考えなければ、グラニクスへの到着時期に無理があるう。
それに、こう言う言い方はあまり好かないのだが――転生者は戦力になる。それは、たった4人集まっただけで、僅か短期間で日本の経済に食い込んだ実績を鑑みれば、嫌でも感じられるだろう。

≪条件付きで接触を認可≫
≪同じく、条件付きで認可≫
≪ボクも同じだよ≫
というわけで、早速念話会議でUHBの面々に相談してみたところ、そんな返答を頂戴した。
≪因みにぼくの条件は、接触に際していきなりUHBの情報を漏らさない、と言う点。ある程度の判断がつくまでは、我々の集まりは、単純にネット掲示板『ネギま』のつながりであるとする事≫
≪あぁ、俺もその条件だ≫
≪んーと、……原作に対してこだわりが強すぎる奴は勘弁な≫
「了解した。んじゃ、その条件で連中に接触してくるとするよ――というわけで、誰かもう一人コッチについてきて欲しいんだけど」
「では、私が行きましょう」

という事で、早速再び魔法世界に。姿を誤魔化す為に、リインとユニゾンして「エリクシル」の姿で転移する。転移先は、魔法世界低衛星軌道――LEOにおいているWRへと転移する。
お供にはシュテル。つまり現在ベースには統べ子とユーリの二人っきりと言うことだ。精々いちゃつけばいいと思う。
――因みにレヴィは神鳴流のと一緒にモルモルにいる。まぁ、夕飯時にはかえってくるのだが。



そうしてWRから飛び出し、先ず最初にグラニクスへ。
シュテルに魔法具で姿を誤魔化させ、グラニクスへ訪れているというMMの金持ちくんへと接触することに。
何分警備が厳重で、中々接触し辛いのだが、あえて此方の姿を見せたところ、向こう側から此方に接触してきた。

銀髪オッドアイのお金持ち。但しぽっちゃり。――色々残念な少年である。
で、MMの少年との接触の結果、案の定彼も転生者の類であった。
特に戦闘能力が高いというわけではないのだが、本人曰く異性に効く「フェロモン」を放つ体質らしく、武人のように確りと意識を保っていないと、矢鱈と女性を誘ってしまうのだとか。
本人はその外見と出自に比べ、かなりの好青年みたいで、そのフェロモンを抑制する為に香水の類で誤魔化しているのだそうだ。
で、彼のポジションなのだが、彼自身は原作不介入。ただし魔法世界の崩壊は、自身にも被害を受ける。そのため何等かの手段により崩壊を回避する必要があるとは考えて、私兵の組織なんかをしていたそうだ。
本当は勧誘してしまいたいのだが、彼の立ち位置だと現時点で完全に此方に引き込んでしまうのはリスクが大きい。
なにせ彼は、その人格が如何であれ、魔法と言う特権によって利を得ている側の人間だ。

取り敢えず、自分達が現実世界、掲示板「ネギま」の集まりである事を教え、マホネットの端末アドレスを交換して、その場では分かれることに成った。
さすがはMMのお金持ちと言うか、現実世界のネットワークに接続する手段を一応持っているらしい。コッチの世界の人間は現実世界に対して否定的らしいから、良くネットワークの接続法なんて用意できたなと感心したり。
というか如何やって回線をつなげてるんだろうか。世界が違うだろうに。
――ん? マホネットはどっちでも使える? 成程。




で、次。『アリス・マーガリン』。
名前を聞いて、思わず『マーガトロイドじゃなくて?』って聞き返してしまったのは俺だけではないだろう。
もしかしたらわざとやってるんだろうか、なんて考えつつグラニクスからアリアドネーへ。まっすぐ南下するだけなので、魔力炉搭載型のWRでは2~3時間ほどで到着した。
で、港にWRを泊め、機をシュテルに預けてアリアドネーの学院へ。
なんとか面会手続きをとって、漸く面会できたアリス・マーガリン。
「いや、アリスじゃなくて幽香じゃねーか!?」
「あら、一目で分るってことは、御同郷ってことでいいのかしら」
と、言葉の通り目の前に居たのはアリスではなく、風見幽香。通風にいうなれば、D-89(但しロリ)。もし本物であれば絶対に接触したくない対象だが、幸い此処に居るのはそのガワ(アバター)の転生者だ。
「風見幽香よ。一応これが本名なの」
「遠藤相馬……こっちではエリクシルって名乗ってるよ――まぁ、確かに容姿が何がしかのキャラに引っ張られるってのはある事だし? まぁ、積極的にキャラに寄せてるのは初めて見たけど」
「簡単に納得してくれるのね?」
「うん――ほら」
一瞬だけリインとのユニゾンを緩める。途端に白い髪が金色に染まり、同時に幻術を解いた事で双眸の色が変化する。
「――金髪オッドアイ?」
「で、虹色の魔力」
「……あぁ、アナタだったのね。グラニクスの虹色の魔王」
「その呼称は勘弁して欲しいんだけど……」
「あら、格好いいと思うわよ、厨二病」
「分ってるだろう、あんた解ってやってるだろう!!」



彼女、アリス・マーガリンこと風見幽香。因みにアリスの名前は、他の転生者を呼ぶためのアピールを兼ねた偽名だそうだ。別に「風見幽香」でもいいんじゃないかと思ったのだが、魔法世界で漢字名は通じにくい上に、本名を売るのは敬遠していたのだとか。
まぁ、確かに有名税って意外に鬱陶しいし、俺も偽名を使っているからとやかくは言わないが。

で、彼女のスタンス。
彼女自身は、魔法世界と旧世界を行き来する自由人をやっているのだそうだ。なんでも旧世界の弱小派閥の魔法使い(?)として生まれた彼女は、折角この世界に生まれたのだからとアリアドネーに留学する事にしたのだとか。
特に魔法世界の存亡に関しては興味が無く、アリアドネーに居るのは単純に砲撃魔法を作る為なのだとか。
「――なんでまた砲撃魔法?」
「あら、折角幽香に生まれたのよ? なら幽香を極めたいじゃない」
とのこと。成程、ナリキリか。
因みに転生者の持つ『三つの特性』についてを説明し、自身の能力に関して理解しているかを聞いたところ
「勿論、花を操る程度の能力と、花を育てる程度の能力、あとはもしかしたら、この身体能力かしらね」
とのこと。しかも彼女、魔法使いといっても陰陽師の亜流だとかで、陰陽道と彼女の能力はかなり凶悪。
魔力に緑化特性があるとかで、
1.魔力を撒き散らすと花が咲く
2.陰陽術とあわせて花を操る
3.無双
という有様なのだそうだ。
しかも本人はそれこそ風見幽香の如く強靭な肉体を持っている。成程コレは手がつけられない。
意識的ポジションもウチとそれほど競合しないし、彼女なら誘っても良さそうだ。
という事で、誘ってみたのだが。
「駄目よ。私はまだマスタースパークを完成させていないの」
との事。――しかし、此方にはちゃんと手札があるのだ。
「そうそう、彼女を紹介し忘れてた。リイン」
そうして、ユニゾンアウトしたリインを彼女の前に立たせる。
「はい。始めまして風見さま。夜天の書の管制人格、リインフォースです」
「……か、風見幽香よ」
呆然とした表情の幽香に、思わずニヤリと笑みを零した途端、彼女に腕を掴まれて一気に物陰へと引きずり込まれた。
「(一体如何いうことよ、何でネギまにリインフォースがいるの!? あれも転生者!?)」
「いやそれが赫赫然然で」
とりあえず、リインが虚数空間からこの世界に落ちた――という事を説明するが、コレは本題ではない。
「……リリなのクロスのネギま、ね……」
「そっちは東方クロスじゃねーか。いや、アバターだけか? じゃなくて――因みにコレ、なんだか分る?」
言いつつ手に表すのは、俺のガンランス型ストレージ・アームドデバイスの「アルク」。
「――アーティファクト、ってワケじゃないのよね?」
「無論。ストレージだけど、デバイスだ」
途端、幽香の目が輝いた。
「秘匿義務とか色々掛けられるけど、もし此方の陣営に所属してくれれば、バスター系の術式とセットでデバイスを「乗った!!」……ようこそ、UHBへ」
まぁ、かなり分りやすい性格の彼女だ。勧誘は割と楽に成功したのだった。




「マテリアルまでいるのね……」
「はい。シュテル・ザ・デストラクターです。以後、よろしくお願いします」
「ええ、風見幽香よ。幽香でいいわ――――――で、これから何処へ行くの?」
「次は旧オスティア領。そこにいる赤龍帝のスカウト、かな」
シュテルを見て小さく呟く幽香。そんな幽香の疑問に答えたところ、幽香はキョトンと目を丸くした。
「赤龍帝?」
「そう」
「赤龍帝って、その、白龍皇で双天龍の?」
「その赤龍帝」
「――っ、ここの世界観は一体どうなってるのよっ!!」
思わず、といった様子でぶち切れた幽香。ただ、お前が言えた事なんだろうか、と思ってしまう俺は悪だろうか。
「さて、アーティファクトか何かだとは思うんだが……」

シュテルの操船で、アリアドネーからオスティアへ。途中ヘラス帝国領を通る最中、何か空賊の類に襲われたが、俺の通り名の元たる魔法の射手・虹色の1001矢を並列起動で連発してやったところ、空賊の船は地形ごと跡形も無く消滅した。
因みに並列起動――マルチタスクは訓練次第で身に尽くし、デバイスがあればこんな高速詠唱が出来る、という事を幽香に言うと、物凄いキラキラした目で見られた。
……これ、量産品のデバイスなんか渡したら殺されるかな? ワンオフ機の生産ってかなり面倒なんだけどなぁ。


というわけで旧オスティア領域。
一応MMの国土に含まれるのだが、此処ってMMがドサクサで併合しただけで、元々は別の国だったのだ。
MMもそれを理解している為、この辺りの統治はかなり適当。一応クルト・ゲーデル元老院議員の介入により、ある程度新オスティア近郊の治安は維持されている。が、このMMとヘラスの境界にある国土はその大半が未だに荒れ果てたままで、その上嘗てのオスティア難民問題など、未解決の問題は山積している。
そんなオスティア。首都から少し離れた町にて行った聞き込みを行ったところ、驚くほど早くに情報を得ることが出来た。
なんでも現在ドラゴンの角を狩ってきただとかで、その角が競りに出されているのだとか。
本人は今現在近所の宿の酒場で昼食をとっているんじゃないか、とのこと。
早速逢いに行ったところ、宿屋のオバチャンに追い出されてしまった。
どうも、赤龍帝のおっかけが赤龍帝に迷惑を掛けているとかで、オバチャンは親切心から追っかけらしき俺達を追い出した、ということなのだろう。
「――マスパが使えればぶち込んでいるものを……」
「おい馬鹿ヤメロ」
『(本当に彼女をスカウトしてよかったのでしょうか……)』
過激な発言をする幽香に突っ込みを入れつつ、どうしたものかと考える。
例えば俺――『エリクシル』のネームバリュー……なにかそれを使うのは嫌だ。
「風見、お前が呼びかけてくれない?」
「何で私が」
「まだ外見が日本人に見えるからな。それに名前を呼ばれるなら男より美少女がいい。これは全人類共通の審理だと思う」
言うと、幽香は何か少し驚いたような表情で、「仕方ないわね」と呟いて一歩前へ。
「あ、そうそう」
「なにかしら?」
「呼びかけに、日本ってキーワードを入れておくこと」
「……成程ね。ええ、わかったわ」



と、いうわけで、宿の外から赤龍帝に向かって大声で呼びかけ開始。
開始1分も経たずに、宿から飛び出してきたオバチャンが物凄い形相で迫ってきた。
オバチャンのほうきに追われるまま、仕方なくその場を後にしようとしたら、不意に背後から此方を呼び止めるようにして声が掛けられた。
「……これ、絶対誰か狙ってやってるよな」
「――さすがに、否定できなくなってきたわね」
そうして其処に居たのは、赤茶けたボロ布から、右腕に赤い龍の籠手を突き出して、此方に向けて手を伸ばす少女が一人。
そう、少女だ。
……確かに、赤龍帝とは聞いていたが、性別は聞いていなかったか。乳龍帝のイメージが強すぎたっ!!
「――キミが、赤龍帝?」
その問い掛けに、コクリと頷いてみせる少女。その容姿は、長い蒼銀色の髪を首の後ろで束ねただけ。その瞳は綺麗な赤色。
所謂、綾波レイだとか、ホシノルリ、タバサ、長門と、所謂沈黙不思議系とでもいうか、そういう系等の容姿をしているのだ。
「赤龍帝、レン」
成程OK把握した。よりにもよって其処か。
「俺はエリクシルと名乗ってる」
「風見幽香よ」
とりあえず名前を交換して握手。ただ、俺のは偽名だからその辺りが良心をチクチク刺激される。
「では、――レンと呼んでも?」
コクリ、と頷くレン。
「よし、ではレン。先ず一つ聞きたいんだけど、――ネギの相棒といえば?」
「……アスナか、カモ?」
「うん、合格」
まぁ、赤龍帝である以上、まさかという事はないだろうが。一応チェックする必要はあって。
で、とりあえず同じ転生者だという事を確認しあった事で、自分達が同郷の仲間達に対して少しだけ接触を行っているという事を伝えた。
「幽香は?」
「コイツはウチにスカウトしたんだ」
「……私も、駄目?」
「えっ?」
自分を連れて行って欲しいとアピールしてくるレンをとりあえず落ち着かせ、一度その理由というモノを聞かせてもらうことに。
そうすれば成程、十分に納得できる理由だった。

レンは旧オスティア難民の両親から生まれ、生まれて以来この旧オスティア周辺の町で生きていたらしい。
嘗ては両親が街から街を行商していたらしいのだが、そんな両親を不幸が襲う。いや、不幸などという言い方は生ぬるい。所謂盗賊――と言うのに見せかけた、MMの貴族の人狩りにあったのだ。
両親は彼女を庇い凶刃に倒れ、粟や彼女も――と言うところで、彼女は彼女の持つ力に目覚めてしまったのだとか。
それが、赤龍帝の籠手。そして、咸卦法。
ロンギヌスにアルテマアートという弩チートコンボに、何とか襲撃者を撃退したレンは、けれども結果としてこの砂礫の大地の上で、身寄りもない孤独な一人になってしまったのだ。

「力なら、ある」
そういって此方を真直ぐ見つめてくる少女。けれどもその瞳の中には、何処か恐怖が混ざっていて。
あれは見覚えがある。ふとした拍子に感じる、この世界は自分ひとりではないかという、分けの判らない強迫観念から来る恐怖。
……この目は、嘘は言ってないだろうなぁ。
『マスター……』
『……そうだ、な』
「――いいじゃない、連れて行きましょうよ」
リインから掛けられた声に、此方も内心で決心して。
そうして此方が声を放とうとしたその直前。すぐ隣から、そんな言葉が隣から洩れた。
振り返れば、一歩前へ出た幽香が、同年代とは思えないほどに身長差のあるレンの頭を抱え込むように抱きしめていた。
「別に、どちらにしろ最後にはスカウトする心算なんでしょ? ならさっさとスカウトするって言っておしまいなさいな。それとも何、私の実力をその身で体験してみたい?」
そういって、凄まじい形相で此方を睨みつけてくる幽香。ラカンの闘気にこそ及ばないものの、その殺気は素人が浴びれば失神は必須、と言うほどのレベルの代物だ。
「……別に、連れて行かないなんて一言も言ってねーよ」
「「!!」」
「レン、ウチの組織に来るか?」
ぶんぶんと大きく首を縦に振るレン。……ああ、これ絶対連中に何か言われるなぁ。
何時の間に仲良くなったのか、姉妹のように一緒に喜ぶ幽香とレンを眺めつつ、とりあえず念話でベースに一報を入れるのだった。
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10 虹色の魔王・後

2012.07.12 (Thu)
「なんと情け無い。ベルカの聖王の資質を得ながら、あのような筋肉風情に後れを取るとは」
「いやいやいや、アレを資質だけで何とかはできないから」
「ええ、さすがにあれを如何にかするのは我々でも一対一では無理でしょう――レヴィ、駄目ですよ?」
「(うずうずうずうずうず)」
「――そうだね、なら後でこの世界の精霊魔法をバルニフィカスにインストールしよう。それを使ってなら、参加していいよ」
「ほんと! やるやるボクもかっこよく戦う!!」
「ほぁー……レヴィ頑張ってくだしゃい!!」
「(俺、濃いはずの麻帆良在住なのに何故此処まで空気なんだよ……)」

ユーリが筋肉――ラカンに吹き飛ばされるその光景を、闘技場の観客席から見つめる一団が居た。
勿論のこと、UHBの面子と紫天一家の面々である。
先日の報告の際、其々が一度原作キャラの最高峰――ジャック・ラカンを直に見て多くべきという意見を出し、その結果UHB一行で空間転移による魔法世界観光を実施したのだ。
そうしてその当日。勝てる筈は無いと其々が理解しつつも、一応仲間の戦場ということで、こうして応援に駆けつけたわけなのだが。

「全く、見事に負けおって。無駄に時間を浪費しただけで、勝てねば意味が無いではないか!!」
「ディアーチェは、ソーマに勝って欲しかったんですね」
「なっ、なななな!? 馬鹿者そういう意味ではないわっ!!」
「あれ? 王様顔まっかだよ?」
「ええい痴れ者がっ!! ……と、いうかその手のネタは夜天の緒に響く。我は未だ死にたくないぞ」
「は、はわわわわ」

「王様かわいい……じゃなくて、まだカウント終わってないから――とはいえ、無理だろうなぁ……」
「シュテルんまじお母さんだなぁ。……そりゃ、さすがに無理だろ」
「目の保養になるよね――こほん、ジャック・ラカン。幾ら原作キャラとはいえ、此処まで強力無比とは」

はしゃいで騒ぐ面々の中、唯一真面目に観測するのは既に神鳴流のくらいというような状況(それでもマシ程度なのだが)。
神鳴流にしてみれば、原作キャラの中でも最強候補であるジャック・ラカンに、UHBの上位戦力である滋賀の――ソーマ、「エリクシル選手」がどの程度通じるのかという確認も、此処での重要な仕事であった。
――が、結果はこの有様。
ソーマといえば、UHBの戦力では神鳴流のに続く――いや、既にUHBの最高戦力に至ったであろう存在だ。
そのソーマが、容易くとは言わずとも、勝つことが出来なかった。
ああいう「英雄」格の存在と言うのは、数で斃す事はできない。斃すには、最強の1をぶつけるしかないだろう。
しかし、それが――UHBの最高戦力を当てても、あれが斃せなかった。
魔導師としての戦いに縛りがあったとはいえ、敗北は変わらぬ事実。この先敵対しうる存在は、あれには劣るとはいえ、それに並ぶほどの高脅威目標なのだ。
「――最近、開発にばっかり力をいれてたからなぁ。チョット久しぶりに鍛錬しないとね」
「おっ、ミズチも一緒にやる?」
「そうですね、うん、ご一緒させてもらってもいいかなレヴィ?」
「うん、どーんとやるよ!!」
――とりあえず、頑張ろう。
笑うレヴィの笑顔を見て、ほんのりしながらそんな事を考えていた神鳴流の――ミズチ。
けれどもその笑顔は一瞬で固まる。
闘技場の端。吹き飛ばされたソーマが埋まっているであろうその場所。
其処から、ガラガラと瓦礫を押しのけて、人影が立ち上がったのだ。
「――嘘だろ、あいつまだヤル気だ」
神奈川のの呟きは、その場すべての人間の意志と同じもの。
既に死に体なその姿、然し未だ衰えぬその闘志に、その場の全員が息を飲んだのだった。










「――足りない」

考える。
俺がジャック・ラカンに至らない要因を。
経験が足りない。鍛錬が足りない。肉体強度が足りない。精神力が足りない。気力が足りない。魔力が足りない。
威力が足りない。技術が足りない。速度が足りない。手札が足りない。手段が足りない。実力が足りない。
足りない足りない足りない足りない足りない。

足りないなら、あるもので補えばいい。

経験が足りないならリインに頼れ。
鍛錬が足りないなら戦いながら鍛えろ。
肉体強度は魔力で補強し、精神力は意地で貫け。
気力も魔力も魂から搾り出せ。
威力が無いなら補強しろ。技術が無いなら借り受けろ。速度が無いなら搾り出せ。
手札が無いなら使い方を考えろ。手段が無いなら知恵を絞れ。
実力が足りないなら、それ以外で喰らいつけ!!

――考えろ、考えるんだソーマ。
俺の手札は何だ。俺の最強の手札は――リイン。そう、リイン!?
『無事か、リイン!!』
『…………………』
『リインっ!! ……っ!!』
もしそれが、体力を十分に残した状況であれば、間違いなく奥歯を噛み砕いていたであろう。
あれだけ啖呵を切って、よりにもよってリインに庇われてしまった。リインの返事が無いのは、間違いなくダメージの一部をリインが肩代わりしたから。
それ故にこうして俺は今も意識を保てているのだろう。
アレあけ言っておきながら――っ!!
余りの自分の不甲斐無さに、自分を八つ裂きにしてやりたい衝動に駆られるが、それよりも先ずすべき事がある。
それは、勝利。
俺の師はベルカの騎士。その教えに敗北などというモノは存在しない。
すぐさまにでも敗北を宣言し、次元基地へ帰って即座にリインの治療に入りたいという気持ちはある。
けれども――それは違う気がする。
俺がリインの弟子を名乗るなら、此処で逃げるのは絶対に違う。
――勝って、それからすぐにベースへ飛ぶ。

――でも、勝つ手段は?
今切れる手札はすべて切った。
――それは、本当に?
俺の特質は、分っているだけで二つ。
「聖王」と「吸収」の二つ。
そして、それ以外の手札が、闇を取り込んだ肉体と、分身、そしてデバイスによる高速詠唱、マルチタスクによる魔法の並列喚起か。

――今の状況から逆転をするには?
例えばラカンの気弾を吸収するのは?
――ネガティブ。気弾を吸収する間に殴られればそれでおしまい。
吸収を分身に任せては?
――ネガティブ。どちらにせよ連発されれば動きは止まる。
吸収速度を上げれば?
――ネガティブ。吸収速度は錬度に比例する。「吸収」を訓練しておくべきであった。
ガンランス・アルクによる刺突及び近距離からの砲撃
――ネガティブ。そもそも二つ名通り刃が通らない。
魔力により攻撃力を強化した場合
――ネガティブ。同じく刃は通らない。魔力も残り少ない。
分身による自爆特攻
――ネガティブ。方向性の無い爆発ではあの鋼の守りを抜けない。
ラカン本人に取り付いてのドレイン
――ネガティブ。蹴散らされるのがオチ。

思考を止めるな。常に勝利に至る道を想像しろ。止まるな奔れ奔れ奔れ!!!
そう自分に唱え続けて、けれども何処かで無理かもしれないと諦める自分が居る。
そんな自分をぶん殴りたいのだが、残念ながらその体力が既に無いことに気付く。

『……主ソーマ』
『っ、リイン!? 無事か!?』
『はい、なんとか』
不意に脳裏に響くリインの声。意識を自分の内側へと移せば、どうにか意識を取り戻したらしいリインが感じ取れた。
『――すまんリイン。あれだけ大言を吐いておきながら』
『いえ、私は問題ありません。主に仕えてこその私です。――が、主はまさか、既に負けてしまったのですか?』
『……いや、未だカウントは数秒あるけど……』

マルチタスクによる高速思考の最中。この状態であれば、10秒もかなりの時間に引き延ばされる。
そんな中で必死に考え続けて、それでも如何しても打開策が思い浮かばない。
当に手詰まり、そんな状況だった。

『……まさか、その程度で我が主は諦めてしまうのですか?』
『その程度って……』
『――私の前の主――主はやては、諦めませんでしたよ?』

両親を失い、両足の自由を失い、孤独の中で必死に生き抜いた。
そうして再び家族を得て、苦痛を笑顔で押し殺して。
そうして再び家族を奪われて、安寧の闇の中に閉じ込められて。
それでもその少女は、明日を生きる為に生き足掻いた。
そうしてその果、彼女は闇の書と呼ばれた夜天の書を、その呪いから開放し、家族を取り戻して見せたのだ。
その少女は、諦める事だけはしなかった。

――その程度で諦めるのか?

成程確かに『その程度』だ。彼女に比べて、俺のなんと恵まれている事。
両親は未だ健在。身体は五体満足。
肉体の苦痛? たかが一時的に受けたダメージと疲労で草臥れただけだ。
手札が無い? 此処に無いならあるところからかき集めろ。
痛いだの恐いだの泣き言言ってる暇があるなら先ずその弛んだ身体に活を入れろ!!

瓦礫を押しのけて、一歩前へと出る。その途端止まるカウント。というか、司会もギョッとした表情で此方を見ていた。
いや、それは司会だけではない。会場全体が静まり(一部何か騒がしいが)、目の前のラカンでさえ少し呆れたような、ギョッとしたような表情で此方を見ていた。

「おいおいマジかよ。結構本気の一撃だったんだが……」
何で立ってんだ? なんて聞いてくるラカン。けれども残念ながら今の俺にそれに答える体力は存在しない。
大気中の魔力を吸収し、少しずつ再生してはいるのだが――如何せん魔力が足りない。
そう、魔力だ。今一番必要なのは、魔力なのだ。
此処で、彼処で、何処かで。

そうして、ふと一つ疑問が思い浮かぶ。

『リイン、そういえば、分身の術式には、何か特別な資質が居るとか言ってたけど』
『はい。あれは確率系の技術が用いる、魔導の研究の進んでいた世界で得た術式です。一般人では精々分身を数体生成するだけですが、あの術式をある資質を持ったものが使えば、主のように分身と本体を入れ替えたり出来るようになります』
『その資質って?』
『虚数、と言うそうです』

カチリ、と何かが嵌ったような気がした。
まるで何かに導かれるようにして答えが手の内に転がり込んだ。
それまで『考える』と称して四方八方に散らばっていた思考が、今一本のラインとして、筋の通った制御のうちに再び組み込まれていく。

『主ソーマ?』
『リイン、ありがと。おかげで漸く理解した』
呟いて、そのまま一気に『吸収』を開始する。

――変化は劇的だ。

『そこ』に存在する無限のエネルギー。開始した吸収により、一気にエネルギーが満ち溢れる。
肉体はまるで動画を逆再生するかのごとく修復されていく。
死に体だったその身体は、何処からか流れ込んだエネルギーに賦活され、最早完全な活人と化す。

「……おいおい、何の冗談だよ、そりゃ」

そうして、完全な状態――いや、それ以上の状態に至る。
目の前には呆然としたラカン――いや、俺の内側にいるリインすらも、呆然とした様子で俺を観測していた。
正直、自分でも驚いている。が、それよりも湧き上がるのは分けの判らない高揚感だ。

「なんだそりゃ。お前真祖の吸血鬼か何かだったのか?」
「まさか。単純に、戦いを通して強くなってるってだけだよ」

当にこれは、そうとしか言い表しようの無い現象だった。
要するに、俺の資質――神鳴流の曰く、『三つの特質』というモノを、漸く自覚できたというだけの話。
俺の資質――それは、ひとつが『聖王』、ひとつが『吸収』、そして最後の一つが『虚数』というものなのだろう。
最後の一つ、『虚数』。それは、いわば確率の海だ。存在し得ない存在。無限の可能性。
もし、俺の特質がそれであるのだとすれば? もし、俺が其処に干渉できるのであるとすれば?
そしてそれを試した結果がコレだ。

ディラックの海から無限に『吸収』し続けるエネルギー。
それらを喰らう闇の肉体は、即座に身体を最適な状態に再生――いや、より厳しい環境に適応する為にその肉体を寄り強いものへと進化させる。
何せ其処にかけられるコストは無制限。こうして立っている間にも、肉体は徐々に変質していく。

ラカンの一撃に耐えられるように。ラカンの守りを抜けるように。ラカンを超えられる存在へ。
無限再生機構。そういえば、そんなものもあったっけ。

「感謝する、ジャック・ラカン」
「あ゛ぁ?」
「この試合、始まった時点では俺に勝率なんて欠片も無かった。でも、今の俺ならアナタに届き得る」
「――は、たかが回復した程度で、ちょっと気が早いんじゃねーのか?」

そんな言葉とともに叩き込まれた拳の一撃。それを拳で殴って相殺する。

「――はっ?」
「――っつ、まだ筋力は及ばないか」
「いや、いやいやいや、なんだそりゃ!? 明らかにおかしくないか!? さっきのお前、俺の一撃を受け止めるなんて如何考えても無理だったろ!?」
「――大したことじゃない。『気合だ』」

なんて事無いといった様子で、そう言って見る。
実際には賦活した『闇』による超回復により、肉体が上位へむけて進化しただけなのだが。
その台詞を受けて、ぽかんとした様子のラカンに、思わず笑が零れた。

「――なんか、マジっぽいな」
「ああ、マジだ。オオマジだ。アンタが強いからこそ、俺は今此処まで強くなった。あんたが強ければ強いほど、俺はもっと高みを目指せる。何時か来る戦いに、守り抜けるように」

両手に魔力を集める。
それは虹色の闇。光を食らう不滅の闇。

「んじゃ、改めて。――行くぞバグキャラ。剣の貯蔵は十分か?」
「――ち、手前にバグキャラ扱いされんのは如何かと思っちまったぞ!!」

――手に入れたのは無限の力、身に纏ったのは虹色の闇。
出会いが導く偶然が、今、闇を纏って輝きだしていく。
立ち向かっていく日々に、俯かないように。

「魔導師エリクシル、飽くなき渇望と共に、参る!!」

そうして、目の前の『大きな壁』に向かって、遮二無二その拳を振るうのだった。続きを読む

09 虹色の魔王・前

2012.07.12 (Thu)
試合開始直後、向うは完全に此方を舐めている――いや、先日の啖呵に免じて、最初の一撃を此方に許してくれるのだという。
舐められていることに若干頭に血が上るが、然し考えても見れば現在の彼我の実力差は歴然。正直、少しでもダメージを稼ぐチャンスを得られるのはありがたい。

「Call Spell :セリエス・ホ・テュラネ・フロゴス――クライ・クライ・クライ!」

マルチキャストにより連続無詠唱するのは燃える天空。
周囲に現れる数百の魔法陣、その其々にて高まる高威力広範囲殲滅魔法。
しかしそれをただ開放するだけでは、正直意味は無い。炎を連発するくらいなら、魔法の射手を連発したほうがダメージの蓄積率は高いだろう。
故に、圧縮(クライ)。
一つ一つの魔法の熱量は膨大。それを面積ではなく、圧縮する事により面積辺りの熱量を跳ね上げる。
最早其処に存在するのは小さな太陽。それ一つ一つが一撃で鬼神兵を落す程度の威力は備えている。
それを受けると宣言してしまっているジャック・ラカン。司会の囃し立てる言葉に、ラカンも少し冷や汗を流してみせる――が、この程度であの男を打破する事は限りなく不可能。それでも、少しくらいは削れる筈――っ!!

「ウーラニア・フロゴーシス(燃える天空)・ジェノサイドシフト!!」

ラテン語に英語を組み込むなんとも間抜けな詠唱だが、その威力は洒落にもならない。
ドドドドという轟音とともに着弾する小さな太陽。ラカン氏はその一撃に胸の中心を焼かれ、熱に身動きを阻まれる。
そのまま一気に削ってしまえと太陽を叩き込むのだが、コレにラカン氏は即座にアーティファクト「千の顔を持つ英雄」を召喚。呼び出した膨大の数の剣によって阻む。
やはり駄目か――いや、弱気になるな。
彼の英霊は言った。想像するのは常に最強の自分だと。
口に出せば赤面必死だが――ならば想像しよう。

「魔法の射手!!」
『喚起! 喚起! 喚起! 喚起! 喚起! 喚起! 喚起!』
「闇の矢 光の矢 水の矢 風の矢 炎の矢 氷の矢 砂の矢!!」
『魔力活性化・演算良好』
「サギタ・マギカ・セリエス・アイリス――ジェノサイドシフト!!」

魔力にモノを言わせ、数多の種類の魔法の矢を、まさに雨霰の如き勢いで振らせ続ける。
然しそれは何時もの比ではない。何時ものそれが雨霰だとするならば、今日のそれは全力全壊、豪雨とでも評するべき勢いだ。
全弾命中は狙わない。少しでも削る為に広範囲に、けれども隙間無く高密度に。
コレでもかと叩き込んで、手を止めた瞬間に見えたのは、鋼の傘を担いだ褐色の大男のすがた。

「がっはっは。いや、結構痛かったぜ、今の。確かにアレは本気なんか出せねーな、普通の奴なら間違いなくやりすぎだ」
――が、俺にはもう通じねーぜ?

もう、な。なんと言えばいいのか、この絶望感。そしてこの高揚感。
圧倒的絶望を前にするからこそ感じられる、背徳的、退廃的な、興奮。
それは医学的に言うならば、恐怖を紛らわせる為に脳がアドレナリンを分泌している――とでも言うのだろう。
けれども今、そんな無粋な事は如何でもいい。
全力をぶつける。それで、勝つ。

「そら、行くぞ」
その言葉とともに消え、次いで感じた衝撃に意識がぶれる。
殴られた、と気付いたのは、自分が闘技場の端に突っ込み、瓦礫の中から腕を振りかぶったラカンの姿を見てからだ。
――バケモノめ。
今の一撃、間違いなく人間なら死んでる。
多分、俺の限界を見極めたうえで、この程度なら死なないと判断しての一撃だろう。
即座に身体の一部――『闇』を伸ばし、触手のようにして攻撃する。
見た目的には影繰術に似ているが、コレは精霊魔法に属する物ではない。
身体から流れ出す虹色の魔力。それを闇も纏っている。
「ラカン・スペシャル・パンチ!!」
拳から放たれる白い光。間違いなく一撃必殺のそれだが――!!
「ぬおっ!?」
「――ちっ!!」
白い光弾を貫き飛び出した黒い槍。しかしラカンはそれを咄嗟にすべて回避してしまう。何とか掠った一撃は頬からの出欠を齎したが――その程度。
「おぉ、チョット驚いたぜ。まさか俺の気弾を抜くとは」
「タネも仕掛けもありますが――これもメシの種、秘匿させてもらいます」
「そうかよ、なら勝手に暴くだけだぜ」
言葉とともに殴りかかってくるラカン。此方の体術はリインから教わった柔術に近い体術が一つ。
とんでもない威力の一撃に身を削られながら、至近距離で魔法の射手を連発する。手を翳すことも言葉を唱える必要も無い。ただ立ち続けるだけで魔法の射手を連発する。
しかし、徒立ち続けるだけが途轍もなく難しい。
多重魔法障壁を易々貫通してくるラカンの拳を意地と根性で潜り抜け、至近距離からの魔法の射手の雨霰。
けれどもそれは本当にラカンに届いているのか、ラカンはそれらの一切を全く意に介さずに殴り続ける。
――ぐ、ミッド式かベルカ式でも使えれば――負け惜しみ、か。

「どうしたぁ! そんなもんじゃ勝てやしねーぞ!!」
「まだまだっ!!」

咆えて、手札を一枚切る。
それは主に戦闘以外にしか使ってこなかった手札――分身。全てが実体を持ち、全てが分身であると同時に本体でもあるそれら。それらの全てをラカンに向けて特攻させる。
「ぬおっ!?」
「「「「「「「フルドライブ!!」」」」」」」
全身から放たれる虹色の魔力。言ってしまえば魔力の過剰供給による肉体の強制活性化。
負担も大きいその技を、7つの身体で発動させながらの特攻。――後々が恐い。が、そんな事を言っていられる状況でもない。身体の内側で声を上げるリインに小さく誤り、その言葉を今このときは無視させてもらう。
ががががががががががががががが!!!!!
体当たりのように近付いては馬鹿げた威力の魔法の射手を叩き込んでいく分身達。
ラカンはそれらを手当たり次第に殴って消し飛ばすが、けれども分身は即座に補充される。
殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し。
何時終わるとも知れない近接遠距離戦闘。
一撃で地形を変える拳を回避し、7方からの近接高威力魔法砲撃。
一体が消されても即座に補充。消えても補充、消えても補充。

「――成程な、理解したぜお前の手札」

そうして、どれ程時間が立っただろうか。
既に闘技場は盆地のように抉れ、同時にぶつかり合う魔力と闘気の影響か、その熱量で盆の内側を半ばガラス化させていた。

「お前の手札その一、これはちょっと信じらんねーが、お前魔力完全無効化能力者か」
「――まぁ、似たようなもんかな」
「ふん、道理で俺の気弾が通じない癖に直殴りは喰らうわけだ。まさかとは思うが、ウェスペリアーヌ王家の人間か――いや、そりゃネーか。あそこの血筋ってーと、残すはあの馬鹿の息子とあの嬢ちゃんだけのはずだしな」
「そーそー、俺は単なる突然変異だよ」
髪の毛は明るい金髪だし、オッドアイだけど。今思えば聖王王家の特徴っぽいのが出てるけど、父さんがヨーロッパの人だしそれぐらいは許容範囲だろう。因みに現在は目も髪も幻術魔法で常に黒く見せている。装でなくても目立つ容姿だ。昔から染めてカラコンを入れたりしていたのだ。
「くくく。で、お前の手札その2! あの分身――全部実体で全部ニセモノだな」
おおっとそれは一体如何いうことだぁぁぁああああ、なんて喧しく叫ぶ司会に、思わず殺意が沸く。
よりにもよって、こんな所で俺の手札が思いっきりネタバレされるとか。
「分身のどれもがニセモノで、同時にそのどれかが常にお前なんだろうな。アルの野郎みたいな面倒くさい技だが、その手の技は俺様の永遠のライバルも愛用しててな、そういうのは「一気に」「全部」消すに限る」
そう言うラカンの両手には、嘗て無いほどの莫大な気の塊が二つ。
「確かに魔力無効化と組み合わせれば有効ではあるが、それもソコソコ。コレなら纏めて潰せるし、魔力無効化だろうと突破できるだろうよ――まぁ、出来なけりゃ丸ごと吹きとばしゃいいわけだし」
なんて無茶苦茶を言う巨漢。然し実際、あれほどの高密度の気を砲撃されれば、間違いなく此方の防御は打ち抜かれる。
これが魔力万全体力万全の状態であればまた別なのだが、今は既に分身と鎧、更にフルドライブで魔力を盛大に消耗した後なのだ。
正直、打つ手が無い。
「うん、お前は良く頑張った。俺を此処まで殴ったのは、ナギ以来かも知れねーってくらいにゃ俺を殴った。だから、最後のコレは手向けだ」

そうして放たれた一撃。
『ソーマッ!!』
リインフォースの悲鳴を感じながら、分身すべて丸ごと巨大な光の壁に飲み込まれて、俺の意識は消し飛んだ。
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08 何故彼はバグとやらかすハメに陥ったか。

2012.07.12 (Thu)
と、言うわけでグラニクス。

「よぉ、お前が最近ここらの闘技場を荒らしてるえ、エ、エリなんとかだろ? 次は俺と一つやんねーか?」

其処に筋肉お化けが現れたのは、俺達が試合を終えて、冷えた水で一息つこうとしていたとき。いきなり背後に現れたそれに、思わず口に含んだ水を噴出してしまった。
嗚呼、此処では水もそこそこいい値段なのに……。

「げほっ、……ふぅ、失礼、どちら様ですか?」
「あん? 俺をシラネーのか?」
「えっと……失礼ですが、初対面でしたと思うのですが……」

言うと、きょとんとした表情の筋肉お化け。で、何故か突然笑い出した。

「ガッハッハッハ、フハハハハハ、ひーっひっひっひっひ」
「……えと?」
「ひーっひっひ……いや、何でもねえ。何でもねえんだが、お前の次の試合は俺だって事だけ知っておいて欲しくてな」
「はぁ、然しなんでまた?」

このグラニクスの闘技場、試合のカードが選手側の意向で組まれる事は滅多にない。
例えば人気のカードだとか、名の在るライバル同士のチームだとかならまだ話は別なのだが、俺は別に有名でもなんでも――いやまぁ、最近、多属性の魔法の射手を雨霰と降らすから、と『虹色の雨』とか綽名をつけられたけど。

「んー、最近俺の経営する闘技場で、中々強そうな奴が居るって聞いてな」
「……俺の経営する?」
「そそ。俺様名前を表に出してこそいねーが、この辺りの闘技場は大抵俺がスポンサーになってるんだわ」
「………(だらだらだら」

その時点で、漸く気付く。
目立つ角こそ無いが、この特徴的な褐色白髪、間違いなくヘラス族。しかも、筋肉が凄くて気配からして物凄いテダレである事は間違い無し。
しかも、闘技場のスポンサー? んなの、俺の原作知識が正しいのであれば、その条件にヒットするのは一人。

「因みに、俺はジャック・ラカンだ。ヨロシクな」
「え、エリクシルを名乗ってます――大戦の英雄、ですか」

言いつつ、差し出された手を握り握手す――って、痛い痛い痛い!! 潰れる潰れる潰れる!!
即座に体内の循環魔力量を増加させての肉体強化。咄嗟にユニゾン中のリインが防御してくれたけど、俺の身体が闇と同化してなければ下手すれば今の握手で手が潰れていたかもしれない。

「おっ、耐えたか。成程成程、試合が愉しみになってきたじゃねーか。いや、最初はつまんねー仕事かと思ってたんだが、なんだ中々面白そうじゃねーか」
「仕事? この試合は仕事なんですか?」
「ん? あー、ま、いいか。そうだな、お前との対戦は、闘技場の他スポンサーからの依頼でもある」

ニヤニヤと此方を見るラカン氏。はて、他のスポンサーからの依頼って、俺何かやらかしたか?

「お前、実力を大分偽ってるだろ?」
「――――――」
「くっくっく。いやまぁ、ショーマンとして見るならそれもいいんだが、問題はお前さんが一気に儲け過ぎてるって所だな」

曰く、俺が参加する試合に関して、地味にだが運営側の儲けが赤字になっているのだとか。
闘技場全体としての儲けはある程度出ていて問題は無いのだが、ことエリクシル選手の試合に限っては如何しても赤字になる。
見てみれば、エリクシル選手は中々強く勝利回数も多いが、同時にある程度の数の負けも経験していて、倍率としてはソコソコの数字だ。
コレだけならたいした問題ではない。寧ろ勝ち負けの数字がいい具合で、人気取りにはとてもいい選手だ。
然し、問題はエリクシル選手の出た試合に関して、儲けがまったく出ていないという点。
エリクシル選手の出る試合には、必ず大金がベットされる。それも、どちらが勝つか予め分っていたかのように、勝つ方に、だ。

「ボンクラ連中は気付いてなかったみたいなんだが、ゼニ勘定の好きな奴は、お前がイカサマしてるんじゃないかって勘繰っててな。なら、折角だし俺をたきつけて……って話らしーぞ」
「代理人立てたりしてたんですが……そですか」

思わず頭を抱えてしゃがみ込む。
なんて事だ。リインに頼んで勝敗数を操作し、倍率が一定以上に下がらないようあれほど苦心したというのに。
『マスター……』
心配そうなリインの声が響く。そうだ、此処に居るのは俺だけじゃなく、リインも居るのだ。
立てよ俺! 男は格好つけてナンボだろう。

「ま、連中にしてみれば、俺を当てて本物か贋物かを図る心算なんだろうな。どちらにしろ俺とぶつかりゃ暫くは闘技場に出れねーだろうし」
「成程。なら、たまには全力でも出させてもらうとしましょうか」
「ほぉ、全力ね。何時もは全力じゃなかったのか?」
「ええ、此方にも色々目的がありまして。そのためには、全力を出すわけにも行かなかったんですが――アンタなら、俺の全力を受け止めきれるだろうし」
「ほほぉ」

楽しそうに。それはもう楽しそうに。
コチトラバグキャラの代表相手に啖呵切るなんてムチャに内心でガクブルなのだが、それを悟られないように必死だというのに。
真正面のバグキャラ、まるで獲物を見つけた獣――いや、獲物を見つけた怪獣の如くとても楽しそうにしている。
いや、試合は未だだから。未だ闘気とか立ち上らせなくてもいいから。

「くくく、成程な。――まそれならそれで俺も楽しみではあるんだが。――ちなみに聞いとくが、お前の目的ってなんだ?」
「目的ですか? 実は今、ちょっと家を建築中でして、その資材を買い集める資金が入用でして」
「はぁ? 家だ? そのためにあんな額を集めてたのか?」
因みに俺が現在までで闘技場で稼いだ金額は、8桁を超えていたりする。……そりゃ、主催者側にも嫌われるわな。
「ええ、家です。空も飛べば海にも潜れる豪邸」
「ほぅ……」
「ただ、建機から自分で作ってまして。まぁ、建機のほうは既に完成して、後は建築用の資材集めだけ、って所だったんですがねぇ」
「ははは、後チョットってところで俺と当ったわけか。そりゃー災難だ」
「本当災難です。まぁ、折角なんでこれを引退試合に、最後を盛大に勝利で飾りますよ」
「おっ、言うねぇ♪ ほんと、当日が楽しみだ」

言うと、ラカン氏はその巨体を驚くほど静かに動かし、流れるような動作で部屋の外へと出て行ってしまった。
……うわぁ、あれが俗に言う軸線をぶらさない、達人の動きって奴か。

『……ソーマ、あの御仁はそれほどの武人なのですか?」

ユニゾンを解除しながら、そんな事を聞いてくるリイン。そういえばリインにはこの世界の歴史ってあまりちゃんと話していなかったか。
まほネットに接続できるPDAは渡してたんだけど、歴史的情報って調べるの面倒くさいしな。

「えーっと、彼はジャック・ラカン。20年くらい昔、この魔法世界で起こった戦争で活躍して、赤い翼って組織――じゃないか、チーム? に入って、その戦争を裏から操ってた『完全なる世界』って組織を力技で叩き潰した英雄の一人だよ」

通り名は確か
「千の刃のラカン」「生けるバグキャラ」「死なない男」「不死身バカ」「つかあのおっさん剣が刺さんねーんだけどマジで」
など数々の異名を持つ伝説の男で、「究極の努力の人」らしい。

「元々奴隷拳士で、其処から地力で解放奴隷にいたり、そのまま賞金稼ぎを通して英雄になった偉人だね」
「それは……また」
「間違っても俺如きでは敵わない、本物の『戦士』だろうね」

まぁ、だからこそ胸を借りるつもりで全力を出せるんだけど、と微笑んで呟いてみる。
勿論空元気であるが。

「――現状、私は余り力になることができませんが――ソーマ、頑張ってください」
「……ふっふっふ。リインが応援してくれるなら100倍力。こりゃ、負けられないな」

おどけて、リインと一緒に微笑む。
……これは、本当に負けられなくなってきた。

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07 光あるかぎり...

2012.07.11 (Wed)
「う、うまれる――アーーーーッ!!!」
「わわわわが主っっ!!??」




≪というわけで、やったね皆、仲間が増えたよ!≫
≪おい馬鹿止めろ――って、えええ!!??≫
≪ほれ、皆ご挨拶≫
≪ふん。我が闇統べる王、ロード・ディアーチェだ。知れ置け愚民ども≫
≪星光の殲滅者、シュテル・ザ・デストラクターです。どうぞ、よろしくお願いします≫
≪満を以ってボク登場! 凄いぞ強いぞカッコイイ! 雷刃の襲撃者、レヴィー・ザ・スラッシャー参上!! ――ねぇ、どう、決まった? ボクかっこよかった!?≫
≪紫天の盟主、システムU-D。ユーリ・エーヴェルヴァインです。その、よろしく、おねがいしましゅ  (かっこよかったですよ、レヴィ)≫

と言うわけで、人員不足を補う為に悩んだ結果、闇の書の闇の中にあった何かを発掘しました。
良く見ると闇の書の闇の中にあったくせに、闇の所とはシステムの系等が全然違う存在だったので、少し気になって此方から接触してみたところ、システムU-Dが如何とか、永遠結晶エグザミアが如何とか。
無限の魔力云々には若干興味があったものの、正直無限に魔力があっても、それを運用する場面が俺には思い浮かばない。精々建造中の次元航行艦の動力にでも使う程度か。
で、闇の中に存在した連中――総称を『マテリアル』と名乗ったのだが、その時点でこの連中の存在が如何いうものかに、遅ればせながら漸く思い至った。
そう、統べ子、アホの子、薄い子のマテリアル達だ。
原作三部作+2部しか目を通していない俺なのだが、一応マテリアルの存在くらいは知っている。発売当時資金があれば、間違いなく購入に走っていただろうし。

≪何で滋賀のところにばっかり女の子が――≫
≪グギギギギ、羨ましいのぅ、妬ましいのぅ!!≫
「騒がしい連中だ。一応貴様の言う通り自己紹介は済ませた。我等はこの辺りで引かせてもらう。行くぞ」
「あ、待ってください、ディアーチェ」
「それではまた後ほど。失礼します」
「なーなーソーマ、何か遊べる場所ってないか?」
「とりあえず用意した個室に色々用意してるから、暫くそれで遊んでて」
「本当か? 仕方ないなぁそれでてをうってあげよう!」
≪――と、言うわけで、マテリアルズというか、紫天の4人というか、連中が仲間になりました≫
≪事後報告で悪いけど、ちょっとした緊急事態だったんでね。堪忍ね≫

発掘、といえば聞こえは良いが、履歴を見るにどちらにしろ連中はそのうち闇の中から出てきていたのだろう。
彼女等の存在に勘付いた後、A’sPシリーズに関する知識を求めて神鳴流のに声を掛けたところ、あのマテリアル――というか、その盟主たるシステムU-Dは、闇の書に勝るとも劣らないトンデモレベルのロストロギアだというではないか。
幸い此方には頭脳チートの神鳴流のが存在する。リインと俺、神鳴流のの三人の頭脳をフル活用し、先行して表に出てきていた闇統べる王、ディアーチェの協力を(力尽くで)取り付け、なんとかシステムU-Dを安定状態で出現させる事に成功したのだ。
なんでもあのシステムU-Dは過去何度も誰もが制御に取り組み、その結果暴走させて世界を滅ぼしたベルか戦乱時代の狂気が如何とか言っていた。
が、此方には最強のアドバンテージ「原作知識」がある。まぁ、原作知識の保有者は俺ではなく神鳴流のなのだが。
そうして安定して出現したマテリアル達に、俺達は改めて契約を持ちかけたのだ。
「極普通の日常」を対価として、我々に対する助力を。

――なんともアコギな事じゃないか。
幸い、システムの呪いから開放したと言うこともあり、ユーリ(と本人から呼べといわれた)には割と好意的。レヴィとシュテルも同じで、唯一ロードだけは少し渋った物の、ユーリの上目遣いに押し切られるようにして此方の陣営に所属する事に同意した。
もう俺のミジンコ良心が大ダメージである。本当にいい人というのは、彼女等を此方の思惑に利用しようとしたりはしないだろう。

とりあえず彼女達の戸籍を地上で偽造したり、色々と辻褄合わせをしたりして彼女らの社会的存在を成立させつつ、此方の陣営の技術協力者としての研究に参加してもらっている。
そう、彼女等はモルモル王国でデバイス技術の開発、及び現地の緑地化計画に携わっているのだ。
他にも、王様には専用の船を用意することを対価に次元基地の建設に協力を得ていたり、来るべき魔法世界への対応として、その時にユーリの力を借りる事を約束していたり。
因みにアホの子は毎日モルモルのお姫様と追いかけっこをしているらしい。この場合力のマテリアルに科学技術で対抗するお姫様に感心するべきか、そんなお姫様に何時も遊ばれるレヴィを呆れるべきか。

あと、彼女等を解き放った事が影響してか、俺の演算能力が一気に跳ね上がった。
どうも彼女等にかなりのリソースを裂いていたらしく、今回の事でそれが開放されたのだろう。
魔力容量なんかに影響は無いが、演算能力がまた少し上がっている。

≪というわけで、俺のところに居るわけじゃないよ。寧ろモルモルは神鳴流の担当だし≫
≪いや、モルモルとはいえUHBの所属なんだろうが! なら何故本社所属の俺が知らない!!≫
≪えーや、ほら。お前って一応上級幹部待遇じゃんか。所謂「上まで報告が上がってきてない」状態なんじゃないか?≫
≪ガーン≫

落ち込む神奈川のを全員で暖かい気持ちで眺めつつ。
とりあえず改めて今回の会議で幾つか相談する事がある、という事で話を進めることに。
先ず最初に議題を挙げたのは、珍しい事に麻帆良のから。

≪んじゃ、俺から。些事だけど、マスターが滋賀のをここに呼べって≫
「ちょ、ええっ?!」
思わず口に出して驚く。いや、麻帆良ののマスターって、闇の福音?
≪ん。この前貰った精霊魔法のエミュレーション、あれの出来は相当良かったらしいよ。マスターも送られたブーストデバイスで魔法の射手を並列起動して喜んでたし≫
――絶句。
いや、確かに闇の福音には、お近づきの印としてデバイスを一機進呈した。ブースト・インテリデバイスの「マスターベル」。小洒落た名前に反し、その機能はブーストに加え、カートリッジシステムを試験的に搭載する事で事大規模魔法においては手のつけられない威力を発揮する産廃デバイスと成ってしまっている。しかもしかも、マクダウェル女史の呪われている現状を考えて、カートリッジによる呪い下での魔法行使を可能にしてるんだよね……。
それを既にある程度使える上に、並列起動もこなした?
≪えっと、伝言は二つ。『舐めた名前だが、いいものを貰った』と、『大規模魔術は直接仕込んでやる』だって≫
「……それは要するに、舐めた真似し腐りおってワレ、いっぺん面かさんかい、ってこと?」
≪………………≫
沈黙するなよぉ!!

何となく黙祷されてる雰囲気に、居ても立っても居られずとりあえず無理矢理次の議題に進めることに。

≪UHB本社は現在いい感じで軌道に乗ってきた。ただ、最近スパイが増えて困ってる≫
≪スパイ!?≫
「あー、もしかして麻帆良から?」
≪だと思うぜ。ニオイからして魔法使いっぽいしな≫

とはいえ、残念ながらUHB本社には大したデータは存在しない。連中の欲しているだろうウチの極秘データの類は、その大半が次元基地のメインサーバーの中。
あそこにアクセスするには、専用のプロトコルを持ったデバイスによる通信か、もしくは次元転移により直接基地内からアクセスするしかない。間違っても精霊魔法でたどり着くことは出来ないのだし。
因みにならばUHB本社は何のためにあるのかと言うと、主に販売・広報業務をやってもらっているのだ。

≪無害とはいえ、何かの拍子にウチの中で記憶証拠の魔法なんて使われるのは癪に障る。そこで出来れば対策に提案の一つでも欲しいんだが……≫
≪それは丁度いい。結論の前にボクからの報告をさせてもらうよ≫

と、それまで黙っていた神鳴流のが突然割り込んできた。思わず少し身構える。
何せ神鳴流のはとても行儀がいい。他人が喋っている最中に口を挟む事は滅多に無く、この会議の中でも他人の話の最中には滅多に口を挟まない。
そんな彼が口を挟む――それはつまり、いいことにしろ悪い事にしろ、何か「大きなこと」であるのは間違いない。

≪ウチ――UHBモルモル共同開発支部で、面白い物が発明されたんだ。魔力炉の開発の一端で、AMFが完成しちゃったんだ≫
「≪≪……………………」≫≫
絶句。
≪おーい?≫
「……とりあえず俺が聞くけど、何でまたAMF?」
≪いやそれが、魔力炉から洩れた高濃度魔力が勝手に結合して、たまにちょっと火花が飛び散ったりして危なかったんだよね。それで、それを何とかしようってモルモル技術部が頑張って、気付いたらAMFが完成してた≫
「――魔導師でもない一般技術者がAMFをか。管理局世界の連中にはいい皮肉だな」
≪それもさ、このAMF他にも色々性質があって、指定領域の放射線拡散を押さえ込む能力だとか、空間中の粒子物質の滞留を抑える効果だとか。詳しくはデバイスに送るよ≫

その言葉とともに送られてきたデータ。
俺のデバイス――待機状態のネックレスになった「アルク」を掌に載せ、ディスプレイを投影して目を通す。
――なんじゃこりゃ。
効果範囲が半径数百キロ。その範囲は魔力結合が大幅に阻害され、そのほかにも埃や塵、花粉などの滞留物を沈殿させる効果があるだとか、放射性物質から出る放射線を阻害し拡散防止になるだとか。デメリットとして、一定周波帯の電波を阻害してしまうとあるが、たいした問題ではない。
≪――ニュートロンをジャマーするわけ?≫
≪寧ろミノフスキーな粒子だと思うよ。別に核反応自体は阻害しないわけだし≫
なんという事だ。魔法の研究をしていた筈なのだが、やっぱりSFにたどり着いてしまった。
恐るべしSF魔法、恐るべし魔導師――っ!!

≪劇画調の所悪いんだけどさ、コレ、日本全国に普及させない?≫
≪そんなことしたら魔法が――いや、まぁいいか。日常生活で魔法なんて使わないし≫
「寧ろ俺達の目的としては、普及させたほうがいいのか――な?」

俺達の目的は、悲劇の回避。そしてもう一つ、理不尽の拒否。
人々の生活に忍び込み、記憶を弄ったりする理不尽な連中――魔法使い。
そもそも魔法使いが此方の世界に干渉しなければ、魔法犯罪なんで最初から発生しない。
そんな考えから、如何しても魔法使いと言う存在に対してネガティブな考え方を持ってしまう我々。
特に神鳴流のはネガティブどころかアンチ派だ。何せ神鳴流――関西呪術協会は、その現在の長・近衛詠春(旧姓:青山)の影響により、魔法世界の戦争に強制的に介入させられたという過去がある。
それは言わば、全く関係の無い国の戦争に強制的に徴兵された上、大量の犠牲者を出し、尚且つ保障は殆ど無い上に謝罪も無いという、現代社会としてはとても考えられない手抜きな対応をされたのだ。
神鳴流のが原作不介入を訴えていたのは、原作に介入したくないと言うよりも、原作不介入という建前を得ることで、自らが暴走しないように設けた枷でもあったのだと思う。

「まぁ、いいか。別に現実世界に関しては魔法なんて無くてもいいわけだし」
≪そそ。それにいざとなれば、ノイズキャンセラーをデバイスに搭載すれば、デバイス越しの魔法なら可能だしね≫
≪≪「…………≫≫」

――添付データを参照――項目:ノイズキャンセラー。
フィールド系魔法に分類されるAMF、その仕組みは、発生したフィールド系魔法の範囲内では、魔法の効果として現れる特殊な波長の影響で魔力結合がほどけてしまう、と言うもの。
そこでプログラムドライバ・ノイズキャンセラーを搭載する事で、デバイスの運用下という限定条件においてのみ、魔法の運用を正常化させることが出来る。但し放出系の範囲は影響範囲外に比べ数段低下する。

「……技術チート、恐るべし」
≪はっはっは≫

気楽に笑いやがって。
然しコレって、かなり恐ろしい技術だよな? いや、AMFとしての機能は如何でもいい――とは言えないが、それほど重要と言うわけでもない。
寧ろミノフスキーな粒子としての効果――此方が重要だ。
現在の世界の電力事情は、その3割近くを原子力に頼っている。残りの6割が火力発電で、後はその他に分類される、太陽光だとか風力、水力発電なんかが入るわけだ。
然し其々には其々の問題があり――此処では略するが、原子力発電の大きな問題として、その事故発生時の被害の大きさというものが上げられる。
要するに、メルトダウンだとか、放射能汚染だとか、そういう話だ。
例えば――あまり考えたくは無いが、事故などが原発で発生した際、このAMF発生装置の放射線抑圧機能が稼動したとする。その場合、事故の最中でも放射線の拡散を押さえられる上、素早い事故対応が可能になる、と言うことだ。これって凄まじい事でないの?

「……ツェーアに狙われそうだな」
≪国家の利益のために、ってか? ハハッ……≫
≪……………≫
≪……………≫

拙い。何が拙いって、このまま俺達だけで事を進めることが。

≪これは……予め各国の上層部に繋ぎを取っておくべきか?≫
「んな伝手誰が持ってるんだよ……」
≪……逆にCIAを呼び込むとか≫
≪えーっと……なんだっけ、あの国の電脳を支配してるって言われてる組織≫
「……エシュロンの事か?」
≪そうそう、其処にわざと情報を拾われるように仕向けるとか≫
≪寧ろそんな誘いをしてくるってことで、余計警戒されたりして≫

もう、ならどないせえっちゅうんじゃ!!

結局、議会は紛糾……の、真逆。通夜のような沈痛な沈黙に満たされ、結局発表はするものの、コンタクトは向こう待ちと言う事になった。
……いや、俺らは表に出てないから大丈夫だと思うんだけどさ。
UHBの表社員の皆様が危険に晒されるかと思うと。ちょっとなぁ。
表向きの国内工場でもでっち上げておくか?
とりあえず、コレを本社に設置しておけば、本社社内において魔法使いが無茶をするような機会は無くなるはずだ。早速一機を日本へ運び込むことに。
運送手段? ――へっ、転移に慣れてる俺に決まってるじゃないですか。

≪さて、今日の会議はこんなところかな?≫
「あ、最後に一ついい?」
≪滋賀の、まだあるの?≫

神鳴流のに呆れたように言われる。まぁ、確かにマテリアル達に続いてもう一つ何か言おうとしているのだ。
今日は特に議題も多かったし、既におなか一杯と言うのは理解できる。
ただ、コレだけは相談させて欲しい。

「いやほら、俺って幻そ――魔法世界でかねかせいでたじゃん」
≪ああ。そのおかげで次元基地の建設がすすんでいるんだろ?≫
≪貰ったデータでは、ガワは既に完成して、後は内装だけとか。お疲れ様です≫
「ん、いやまぁ、それはいいんだけどさ。その手段として、拳闘大会を利用してたわけだよ」
≪……何かもったいぶった言い方だなぁ。しかも拳闘大会から連想されるイベントなんてろくな物は無いとおもうんだけど?≫
「……ジャック・ラカンとの試合が組まれてました。しかも強制」


≪≪≪……南無≫≫≫
「シクシクシク」

というわけで、原作キャラ戦を原作数年前にヤる事に成りました。
どうしてこうなった。続きを読む

06 魔法世界に潜入してみよう。

2012.07.10 (Tue)

というわけで、早速魔法世界に侵入してみる事にした。

朝、一杯のコーヒー……牛乳を飲み干し、身だしなみを整えてからリインとユニゾン。
一体分身を出し、そいつを学校に向かわせつつ、此方は庭の真ん中に移動する。
因みにバリアジャケット――もとい騎士甲冑のデザインは、俺の『騎士』のイメージに影響を受けてか、何故か黒セイバーっぽくなってしまった。最低限ズボンにしたりと手直しは入れたが、フェイスガードをバイザーにすれば顔も隠せて意外と便利なのだ。

「んじゃ、いってきまーす」
「あんまり危ない事しちゃ駄目よ? リインさんも相馬の事ヨロシクね?」
『はい、主の守りには全力を尽くします』

因みにウチの母には、俺が魔導師をやっている事を打ち明けてある。後々こじれるのも嫌だったので、UHBに所属している事も打ち明けた。
のだが、あの母は何故か「あらあらうふふ」で全部を済ませてしまうのだ。何処の水の妖精だ。
で、リインをつれて転移。
座標に関しては、ネットでハッキングした某天体観測所のデータを参考に、火星の座標を指定。其処から更に次元座標をずらして、近い位置にある次元を探査。その結果生命活動の反応があった時限に跳躍した。





Side Mahora

[Master...]
「分ってる、分ってるよブラック。でもなぁ」
右手首。待機状態になっているブラックロッドが、そんな声を漏らした。
右手には待機状態のブラックロッド、左手には「斉藤和弘」という、自分の名前の書かれたネームタグ付きの鞄。
UHB麻帆良担当の俺は、現在俺に与えられた任務を遂行すべく、最低限の装備を持って麻帆良の地下へと潜入を開始していた。
「これは、うおっ!?」
[Master,Plese be careful]
ガション! という音とともに飛び出すトリモチ。咄嗟に障壁を展開することでそれらを防御するが、ブラックロッドに叱られてしまう。
「うぅ、面目ない」
[all right master.let's go!]
「うぅ」
何で俺デバイスに怒られて、その上慰められてるんだろうか。
なんて事を考えつつ、麻帆良は地下へと脚を進めていく。



事の起こりは、先日の晩のこと。UHBの本社にいる神奈川のからの念話が、今回の事の始まりだ。
「――サーバーが攻撃を受けてる?」
≪ああ。どうも、ウチのファイアウォールの出来に関心をひかれたらしいな≫
攻撃場所は2箇所。一つは海外からで、どちらかと言うと無作為の攻撃にたまたま引っかかったという様子。
で、もう一つ。
「……まぁ、俺に連絡してきたって事は……」
≪そう、麻帆良だ≫
思わず眉間をつまんで揉み解す。まさか、こんな時季に麻帆良に目を付けられるとは。
原作5年前に尻尾を捕まれるなんて洒落にならないぞ?
≪無論、それは俺達も分ってる。そこで、一つ手を打たないと拙い≫
そう言う神奈川のが示した策は、簡単に言うと麻帆良の中枢サーバーにハッキングし、ウィルスを流し込む事で「UHBのサーバー侵入に成功した」という誤情報を与える、と言うものだった。
≪ただコレをやるには、麻帆良のサーバーに直接アクセスしなきゃならないわけで≫
「……」
≪データはデバイスに送る。頑張れ≫
「ちょ、おま」
ブツッ、と鳴る筈の無いそんな音がわざとらしく聞こえ、それと同時に念話が途切れる。
思わず頭を抱えてどうしたものかと唸っていたのだが、そしたらデバイスに思い切り叱責されてしまった。
[Master! Let'S GO!!]
と、妙にやる気に満ち溢れた我がブラックロッド。結局、ブラックロッドに促されるまま、俺達は麻帆良は某所にある地下へと脚を進めたのだった。


麻帆良の地下、といっても一概に一まとめには出来ない。
何せ麻帆良の地下といえば、図書館島の地底迷宮、世界樹の地下迷宮、麻帆良の地下に存在する魔力溜り、魔力溜りを利用した麻帆良大結界のシステム部、そのシステム部の機関部と、そのほかにも部活で利用されているものや、地下上下水道なんてのも存在する。当に混沌とした有様。ある意味では麻帆良らしいのだけど。
今回侵入するのは、そのシステムの機関部――の、一角。麻帆良学園の中央サーバーの所在地だ。
とはいえ此処の警備は中々厳重らしく、本来此処に潜る心算なら、予め滋賀のとリインフォースさんのバックアップを受けた状態で、物理電源・ネットワークに妨害を与えつつ侵入する、と言うのが真っ当なやり方だ。
が、今回は俺一人[Master]……俺とブラックロッドの二人での潜入となった。

先ず最初にブラックロッドで麻帆良のシステムの表側に欺瞞情報を流し、地下のセキュリティーをマヒさせる。
麻帆良の世界樹前の広場、その脇にある地下通路にこっそりと足を運ぶ。
因みに現在は昼間。夜間だと魔法先生やら警備が一気に増えるので、潜入するなら昼のほうがいいのだ。

通用口から入った地下通路は、表の麻帆良とは一線を隔した雰囲気に包まれている。
地価の麻帆良は――例えるならば洋館の地下に建設された秘密研究所。
図書館島の地下とおなじファンタジーな雰囲気を期待していた此方としては、正直このホラーっぽい雰囲気は勘弁して欲しいのだけれども。
コツコツと鳴る自分の足音にびびりつつ、出現する防衛機構――よりにもよってゾンビ風泥ゴーレムを魔法の射手で打倒して行く。
『ウボオオオオオオオオォォォォォォォ』
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
[Sagita Magica serie ignithe]
泥人形の上げる呻き声。思わずドン引きで腰の引ける俺の手の中で、主の代わりに魔法の射手を花ってくれるブラックロッド。
なんかこの子、余りにも俺が情け無いとかで、勝手に魔法の射手・炎の三矢を編纂して、自分で詠唱できるように改良してしまったのだ。
とはいえさすがにリインフォースさんほどの演算能力は持っていない為、三矢までの編纂が限界だったらしいけど、その代わり速度特化・誘導性犠牲にして、弱誘導の3点バースト魔法にしてしまったのだ。
ブラックロッドの廃スペックには笑ったものだ。
おかげで俺は魔力を供給していれば、後はブラックロッドが適当にやってくれるという楽な状態に。
――え? 駄目なインテリデバイスの使い方の代表例? 馬鹿言っちゃいけない、コレも一つの有り方だよ。
[Master, All enemyes Clear]
「あ、終わった? お疲れ様です」
[all right]
聞いた話によると、コイツ勝手にリインさんに連絡とって、カートリッジシステムの搭載を希望しているらしい。それも原作の様なカートリッジを起爆剤とするものではなく、カートリッジをキャパシタとして、魔力供給の補助を行うタイプのシステムを開発しているのだとか。
きっとコイツ、そのうち擬身とか要求して、自立稼動を始めると思う。
[Master?]
「あー、んにゃ、なんでもないよ」

そんなこんなで、麻帆良の地下をゆっくり進む。欺瞞情報が上手く作用しているおかげか、防衛機構は通常のゾン……もとい、泥ゴーレムのみ。
気分としては、本気でバイオ……それもハンドガン縛りでもしている気分で。
暗闇にびびりつつ、漸くたどり着いたサーバールーム。むやみに真っ白で清潔をアピールしすぎていて、何か逆に恐怖心をあおられる。
それをなんとか押し殺しつつ、たどり着いたサーバーにブラックロッドを向けた。
「如何だ? ちゃんとアクセスできる?」
[Offcourse!!]
ブラックロッドがチカチカ光ったかと思うと、続いて黒い巨大な匣――サーバーの駆動音が、一瞬甲高いものへと変わった。
コレで件のウィルスが麻帆良のサーバーに仕込まれたのだろう。
[ok, let's go back home!!]
「あいあい。んじゃ、とっとと転移で帰りますか」
[Yes. and go send deta at magick]
「あー、そだね。でも、滋賀のとリインフォースさんは今魔法世界だろ?」
[go hack to MAHO-Net!]
「お前過激だよなぁ」
何で俺の相棒はこう過激なんだろうか、なんて思いながら、さっさと帰るべく、とっとと家路へと付くのだった。



このとき、俺は知らなかったのだ。
ブラックロッドが、目的のウィルス以外に、ちょっとした仕掛けをサーバーに施していた事に。
まさかブラックロッドのちょっとしたお茶目が、後々あれほど役に立つなんて。



side MAHORA end


というわけで、適当な賞金首を捕獲して蒐集。転移や中級以上の攻撃魔法は中々手に入らないが、途中で麻帆良のから自分達で組み上げたという精霊魔法の簡単なプログラムが届いた。意外と便利なその呪文を早速使いつつ、拳闘大会にも参加。賞金首から得た資金を自分にフルベットして、一気に資金を稼ぎまくった。
何せ普通ツーマンセルで出る大会に、俺一人で(実質はリインとユニゾンしているので2人なのだが)参加しているのだ。
俺はエリクシルという名前で拳闘大会に参加しているのだが、その倍率の酷い事。
最初俺が初参戦の素人と言うこともあり、倍率が10倍以上。もう即座に全資金ベットした俺は間違ってない。
相手はなんだか知らない中堅所だったらしいのだが、俺のマルチタスクとリインの演算能力を最大に発揮して、魔法の射手×1001×7のジェノサイドシフトをお見舞いしてやったところ、何か一気に人気が出たらしい。
俺も10万ドラクマが一気に100万ドラクマに膨れ上がって満足です。
でも思うに、千の雷とかジェノサイドシフトでやったらどうなるんだろうか……。

とはいえ、さすがに序盤でいきなり力を見せたため、倍率は一気に2~3倍にまで落ちてしまった。それも未だ未だ存在する中堅所のおかげなのだが、勝ちすぎれば倍率も下がって色々駄目だろう。
戦闘訓練というお題目もあるのだが、リインフォースからそんな忠告を受けて、なるほど定期的に負ける必要もあるのだと考え直した。
そこで勝つ日には自分にフルベット、負ける日には相手にベットし、更に勝つ日にはある程度本気で、負ける日にはわざと戦い方を遠距離戦に限定する事で隙をつくり、苦境の条件下で戦ってみたりと、色々と試してみた。

何せほら、リイン相手に訓練しているときに比べて、相手の温い事温い事。
リインは普段はシッカリ風ポワポワ天然ドジッ子&弱腹ペコキャラの癒し系キャラなのだが、事戦闘に入ると物凄く厳しくなる。
本人曰く、「自分は烈火の将と違い、戦闘を好みはしません。やるときは徹底的にやるものです」との事。
多分意識をスイッチさせてるんだなぁ、とか考えつつ、リインのデアボリック・エミッションの雨霰を潜り抜けた日々を思い返して涙する。
ベルカ式の空間隔離ってなんであんなに頑丈なんだろうね。逃げらんなかったよ……。

とりあえず、ボチボチ手を抜きつつ、ガンガン資金を稼いでいく。
稼いだ資金は即座に試合にフルベットするのだが、残念ながら掛け金もある程度以上の金額はかけられなくなってくる。まぁ、無限に掛け金を掛けられるなら、その元となる資本は一体どれ程の規模の金額となるのか。
俺の場合、戦う相手にもよるが、大抵の場合で勝敗はコントロールできる。
そのため、2~3戦分の掛け金最高金額を溜めておいて、それ以上として発生した余剰金はその全てを物資へと変更する。
とりあえずグラニクス近郊だけだと色々問題になるので、とりあえずグラニクスで買える高速輸送艇を一つ購入する。コレだけでも結構な額だったが、まぁ稼いだ資金の全体額から見れば未だ未だ。
で、その購入した艦を秘密裏に次元転移。建設中の次元基地へと運び込む。
其処に待機したるは大量のガジェット・ドローンとトイ・リアニメーター。コイツラに艦を魔改造させ、主動力を精霊機関から魔導機関へ換装し、フーン機関を搭載、更に装甲全体を強化することで、簡易式の次元航行艦へと魔改造を果たした。
これを以って何をするかと言うと、この魔改造艦――白いカブトガニ型の登録船籍『ホワイトルーク(以下WR)』を、主に建設中の次元基地への運送手段とするのだ。
現在拠点としているグラニクス。此処から物資を送るだけなら、なるほど船など不用かもしれない。
しかし、一箇所から資材を延々と送り続けていれば、いずれは誰かがその事に勘付く。何せ我々は、ある意味不正に資源を国外へと運び出しているわけなのだし。
そこで、この船を使い、世界各国から資源を買い集める。この船で資源を買っては、内部に用意した転移門を使い時限基地へ。船自身はそのまま世界中を飛び続け、気取られぬ程度に世界中から物資を買い集める。
中々にいい感じのシステムが出来てきたように感じる。
「ただ、このままでは些か人員不足ですね」
「開発に関してはデータを再現するだけだと思うんだけど、駄目か?」
「事私達のみに関すれば、私と主ソーマという規格外を用いれば何とかなります。然し、それでもこのまま続けるには無理が有りすぎます」
今現在、主ソーマがどれ程働いているか、少し考えてみてくださいと、何故か怒り気味のリイン。
いわれて考えてみる。
先ず一人。学校へ行ってるが、ぶっちゃけあれはモラトリアムだ。
次、魔法世界でWRの運転手。資材搬入担当だな。地味に揉め事も多いので、割と実戦経験を得られる。
もう一つ魔法世界はグラニクス。拳闘大会で稼いでいる。現在本体は大体此処。戦闘訓練にいいのだ。
あとは次元基地。指令クラスタとして常駐しているが、存在密度を下げた分身なので負荷は殆ど無い。
ああ、もう一つ。魔法世界で賞金稼ぎをしているのが居たか。
「まぁ、確かになんでこんなに頑張ってるんだろう、って程度には頑張ってるような」
「無理しすぎです!」
それは今自覚した。俺って寧ろ、物事を凄く面倒くさがる性質の人間だった筈なんだけど。何でこんなに頑張ってるんだか。あれか? リインにおだてられて調子乗ってるのか?
――ガキか俺は。
うん、そんな恥ずかしい理由ではなく、憧れの宇宙(次元)戦艦に興奮していた、という事にしておこう。うん。
「――はぁ。うん、んじゃ、次の会議では魔導師の人員増加を提案しなきゃな」
「それもですが、現時点でマスターは少し休むべきです!」
言うリイン。とはいえ、今は中々大切な時期。分身なんて超絶便利スキルを持っている俺は、物語が始まる前、嵐の前の静けさである今こそ頑張らねば為らないのだ。
――という理屈が、目の前で涙目で睨みつけてくる少女に使えるはずも無く。
仕方無しに、最低限WRの運転手以外の分身を消されてしまった。
「頑張るのもいいですが、加減も重要です!」
「はーい」
で、何故か翌日リインと買い食いに行く事になった。
ケバブっぽいのが美味しかったです。
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05 魔導師

2012.07.08 (Sun)
≪デバイス技術とモルモルの技術をあわせれば、ISが出来てしまう可能性がある≫
「≪≪なにいいいいいいいいいいい!!!???」≫≫

ネット掲示板改め、デバイスを用いた念話会議において。神鳴流の漏らしたそんな言葉に、全員が驚愕の声を上げた。
≪いや、滋賀のは知っているだろう?≫
「乗っておいたほうがいいかな、と」
≪乗らなくていい≫
さいですか、と頷いて続きを促す。まぁたしかに、あそこのMT(メカタマ)シリーズってガチで技術レベルがおかしいし。
≪MTシリーズ最大の問題点であった出力部分――燃料電池に要するレアメタルの莫大なコスト、及び如何足掻いても解決不可能だった熱処理問題――爆発の原因だったこれらを魔導式に置換する事で、一気に問題が解決してしまった≫
「しかもプログラムをコッチの――ミッド式に書き換えたら、OSの処理効率も跳ね上がってね」
≪現在はモルモルで発掘した魔導師が専任で開発を進めている。なに、あの国は解放的に見えてその実裏は深い。情報が漏れる事は無いだろう≫
何せあの国は神秘の国。魔法使いとて奥には立ち入れないのだ。
≪成程。――でも、という事は≫
「慌てるな麻帆良の。――ああ、ちゃんと完成したぞ。念話だけの簡易デバイスではない、ちゃんとした純正品のインテリデバイスが」
その途端、念話の向うで音がはじけた。咄嗟にボリュームを下げたものの、ちょっと頭が痛い。
≪――っ、はしゃぐ気持ちは分るけど……≫
「まぁ、いいじゃないか。――しかし、そうなると一層麻帆良のには頑張ってもらわないといけないんだけど」
現時点で完成しているUHBのデバイスは、俺のアームドを含めて四機。
一つは俺のガンランス。今度の物は一応ストレージ機能を搭載した仕様だが、形状は完全オリジナル。銘を『アルク』とした。
神鳴流のがインテリ・アームドの大刀、『虚空』。神鳴流に協力してもらい、神鳴流の『気』の技術を蒐集――編纂したものや、そのほかの気の術で、使えそうなものが大量に記載されている。
神奈川のが、インテリ・アームドのガントレット『ストライクエア』。神鳴流のと同じく『気』を主軸に置いたものとなっている。
で、問題となるのが麻帆良のデバイスに関してだ。
一応形は既に出来ていて、AIも稼働中。杖型インテリデバイスのブラックロッド。元ネタは――察してください。
麻帆良のデバイスには、現在魔法プログラムは入っておらず、魔力制御、マルチタスク、バリアジャケットなどの基礎・教導プログラムが入っている。
この基礎教導は全てのデバイスに仕込んでおいたのだが、何故彼のデバイスにプログラムが入っていないかと言うと、それは麻帆良という都市に対する情報漏洩防止の為なのだ。
≪ふ、ふくく、くはははは!! つまり俺が頑張ればいいって話なんだろ? いいぜやってやる頑張るぜ!!≫
我々――特に俺に関して、麻帆良のが精霊魔法を習得するまでは、表立って活動する事ができない。
なぜなら俺が表立って活動するという事は、つまり科学式魔法を表に晒してしまうという事なのだ。出来ればそれは後回しにしたい。
そこで、麻帆良のがエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと交渉し、魔法技術を習得する。それを俺が蒐集・編纂する事で、俺も表立って活動する事が出来るようになる、というわけだ。
一応ブラックロッドは普通の魔法触媒――杖として使うことも出来るように調整してある。もし見つかってもアーティファクトという事にしておけば大事には至らないだろう。
≪それと、現在エヴァンジェリンに送る用のデバイスを開発している。コレを対価に、エヴァンジェリンを蒐集できないか、一応交渉しておいてくれないか?≫
≪了解。確かに、俺の属性とマスターの属性って丁度補完しあう形になるしね≫

因みにエヴァンジェリンの属性は闇・氷だが、麻帆良のの属性は光・太陽なのだ。
エヴァンジェリンからは『お天気』の愛称を貰ったと喜んでいたが、それって『お天気野郎』――貶されてないか?
本人が幸せならそれでもいいが。

「ま、得意ではなくても、地と風も二人分もあれば十分だろうしな」
それに、もし駄目なら駄目で、そのときは別の手段を考えてある。最悪麻帆良のだけでも蒐集し、後は俺が次元転移で魔法世界へ、そのままあの世界の魔法使いを適当に蒐集し続ければ何とか成るだろうと考えている。
他にもアリアドネーないしイギリスのメルディアナ辺りの禁書庫の魔法書をリインに取り込んでもらうという手もあるだろう。
「と、魔法技術に関してはこんなところか。他に報告が無ければ、一つ此方から提案したいんだけど」
≪ぼくは特に無いよ。強いて言うなら青山の狂姉妹に目を付けられちゃったくらいかな≫
≪神鳴流ェ……。特にはないな≫
≪ツヨク、イキナサイ……特に無し。≫
「キミは生き延びる事が出来るか……げふん。そんじゃ提案。次元航行艦つくらね?」
≪は?≫
≪へ?≫
≪ふむ……手札は多いに越した事は無いが、データはあるのかい?≫
「エスティアのがあった。その延長で、アルカンシェルも」
≪( ゜Д゜)ポカーン≫
≪( ゜Д゜)ポカーン...エスティアって、A’s10年前の、クロノパパの?≫
「そそ。無いと思うけど、もし俺――というか、俺の取り込んだ闇の書の闇が暴走したときの事も考えると、無いよりは在ったほうがいいと思うし。それに、魔法世界で活動するときの拠点にもなるしな」
≪成程な。確かに保険は必要か。条件付きで賛成≫
≪同じく条件付きなら賛成だよ≫
≪僕も条件付きなら。因みに条件と言うのは、艦の運行権と、アルカンシェルの解除キーの分散になるね≫
神奈川のの条件付きに、他二人が揃って同意する。
うん、全員次元航行艦の建造自体は肯定的と見た。ただ、やっぱりアルカンシェルの建造には慎重になるみたい。
――うん、寧ろアレをポンポン使えるようなシステムを作って放置するような連中でない事に安心したよ。
「因みに現在ですが、モルモルの協力で仕上た無人作業機――簡易AI搭載型のトイ・リアニメーターを使って、造船用の次元空間基地を作ってる。座標は秘密にさせてもらうけど、その辺りは承知して欲しい」
これもまたリスクの分散に関する話だ。例えば神奈川のなら問題ないが、もし神鳴流や麻帆良のが記憶を弄られたりして、魔道師の技術に関するものが漏洩してしまうと――そうならないように、未だ弱い過程は秘匿せざるを得ないのだ。
≪別に俺はいいんだけどよ。その資材は一体何処から調達したよ?≫
「モルモルで爆発したMTシリーズの残骸とか、基本的に廃材を溶かして作ってるよ」
ただ、今現在は中身の無い器だけだからこんな廃材だけで建造が進んでいるが、この先本格的に次元の狭間に置く拠点としての運用を考えるのであれば、確りとした資金と資材が必要と成ってくる。
とりあえずある程度のリアニメーター、もしくはガジェットドローン辺りを作ることが出来れば、適当に次元世界に放流し、勝手に資材を集めさせる――なんてことも可能なのだが。
「そこで、この次元基地建設計画に予算を出してほしいんだけど……」
≪――ぼくの資産では足りないね≫
≪会社のも駄目だろ。今デバイス関連の設備拡大で結構金を使ってるみたいだし≫
≪といって、造船なんて時間の掛かるものを後回しにするのもどうかと思うんだけど?≫
うむ。神鳴流のには、そもそも唯一の個人収入源としてかなり力を狩りている。これ以上あいつに頼りすぎるのも悪いし……となれば、俺に思い浮かぶ方法なんていうのはそう多くない。
「――俺が魔法世界に渡って稼いでくるか?」
「!? ソーマ!?」
後ろで驚いたという声を出すリイン。わかってる、ちょっとだけ待ってね。
≪然し、キミの魔法は……≫
「無論それを晒すのが未だ早いというのは理解してる。ただ、これ以上――L級次元航行艦を建造できるほどの施設を作る、その資金を稼ぐのは、これ以上此処では無理だろう」
であれば、いっそのこと向うに渡り、賞金稼ぎなり何なりで一気に稼いだほうがまだ可能性はある。
≪なっ、なら俺かマスターの蒐集をやってからのほうが――≫
「麻帆良の、お前のは未だ未成熟だ。今やっても得るものは少ないし、第一お前に掛かる負担が大きすぎる。それにミスマクダウェルへの現時点での接触は拙いだろうに≫
寧ろそちらのほうが、我々の存在の示唆に繋がりかねない。徒でさえ麻帆良のがエヴァンジェリンに接触しているという事で警戒されかねないというのに。
「俺達があちら側に次元転移、その後秘密裏に賞金首なり犯罪者なりから蒐集、その蒐集した魔法を編纂しつつ、賞金稼ぎと、あー、なんだったか。賞金の出る大会があったろう。アレとかで稼いでみるさ」
もし駄目だったら即座に此方に転移して戻ればいいだけだしな、と付け加えておく。
≪――リインフォースさん、アンタ今この会話を聞いてるか?≫
「はい、我が主の下で、失礼ながら話を聞かせていただいております」
と、不意に神奈川のがそんな事を言い出した。
≪アンタから見て、そいつは荒事に耐えられるほどの力を身につけたと思うか?≫
「――私としては不本意ですが、ええ。我が主……ソーマの力は歴代の主の中でも上位の物です。未だ魔法のバリエーションは少ないですが、基礎を叩き込みましたのでそう簡単に敗北する事はありません」
なんて、そんな事を堂々と連中に宣言するリインフォース。
……なんだか顔が熱い気がする。褒められてのぼせるとか、ガキか。
≪――まぁ、リインフォースさんがそういうならそうなんだろう。俺は認可≫
≪うー……未熟な俺に人の事はいえないや……認可≫
≪事実、それ以外に出せる手が少ないのも事実だしね。うん、認可≫
「よし。んじゃ、アルカンシェルの認証キーとかに関しては、またそのうち相談するよ。とりあえず俺は、リインのご機嫌取りしなきゃ……」
≪リア充め。頑張れ≫
≪リア充め。お疲れ様≫
≪女の子と同棲なんて羨ましいねぇ。んじゃ、今日の会議此処まで。お疲れ様≫

音も無く途切れる念話。どうやら上手く纏まった。
組織って言うのは、自分の行動に関しても一々ほうれんそうが求められるから、その点面倒だよなぁ。
「……主ソーマ?」
「……はひ」
そして、リインさん。やっぱり、事前相談なしに事を決めたのは拙かったか。後ろから物凄いプレッシャーを放ってきてる。
ご機嫌取り――リインと一緒に食事にでも行くしかあるまい。ウチのリインさんは若干腹ペコキャラの気があるらしい。
「……主ソーマ?」
「ひゃい!」
「今何か失礼な事を考えませんでしたか?」
「いいえ、トンデモございません!」
まぁ、こんなのもまた悪くないのだが。
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04 行動開始

2012.07.08 (Sun)
と言うわけで、先ず最初に俺達が行ったのは、自分達の属する組織作りからだった。
ネギま板の4人は当然としても、表社会で活動する以上はなんらかの代理人を用いて、法的根拠の元に起業する必要があるのだ。
で、起業に辺り「ネギま板」の名前のままの活動は拙いという事で、先ず名前を決めることに。
「全員の名前の頭文字とか」
「どんなグリードアイランドだ」
第一俺達の名前ってそんな都合良くないし。
「公国強攻機構」
「CMネタ乙」
「他の転生者に容易に見つかるのも避けたいね。麻帆良の曰く、愉快犯も多いんだろう?」
「ソコソコには」
喧々諤々、と言うには和やかな雰囲気で進んだ論議だが、結果としてUHB(UnHappyBreaker)とし、とりあえず私生活で中々顔を合わせることの出来ない我々で出来る企業という事で、ネット上のソフトウェア会社をやってみる事に。
代表はとりあえず東にも西にも関わっていない神奈川のの姉に頼む事に。
とりあえず、ウチではファイアウォールの開発を行う事に。本当はハード系の開発もしたいのだが、実体の無い企業である現状ではソフトウェア開発が現界なのだ。

とりあえず、現状のソフトウェアをリインに見せたところ、彼女がPCに手を置いて数十秒ほどで何かソフトが出来上がっていた。
ちょっと呆然としつつも、早速それをインストール。問題が無い事を確認して、それを神鳴流に送り、問題が無いかをチェック。その結果をUHBから販売する事に成った。

この時代、20世紀末。PC関連の知識が未だ普及しきらず、ソフトウェア開発においても民生品はこれから台頭しだすという時期。そんな時期に、いきなり次世代的ファイアウォールが登場したのだ。
最初はそれほど表に出なかったのだが、クチコミから徐々に人気が沸騰。後にはその後次々と出たFWを押しのけ、UHBのFWはかなりのヒット商品となった。

で、FWを表に出しつつ、今度は其々が其々で出来ることをしよう、と言う方向に行く事に。

先ず神鳴流のには、二つほどコネを作ってもらうべく頑張ってもらう事に。
一つは西の重鎮が一柱、浦島家への繋ぎ。一つはモルモル王国のカオラ機関への技術協力要請。
浦島家へのつなぎは、関西呪術協会に気取られぬ程度の裏へのつながりとして。モルモル王国は、間違いなく世界有数の技術、それこそSF染みた超技術をもつかの国であれば、デバイスの再現も不可能ではないのではないか、という意見からの物だ。
何故これを神鳴流のが行うかと言うと、その両者に伝手を持つ人物が神鳴流に所属しているからなのだが――死ぬなよ、神鳴流の。

次、麻帆良のには、何時も通りにスネークって貰うのだが、それに付け加え一つ危険な賭けに出てもらうことに。
と言うのは、麻帆良に居るであろう怪物、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルへの接触である。
幾ら我々にデバイスの技術があるとはいえ、この世界の魔法体系もある程度は知っておく必要が在る。敵を知れば云々という諺もあるくらいだ。
それに、一度魔法の情報が得られれば、もしかすると俺がその情報を『蒐集』『編纂』することで、デバイスによる魔法としての運用が可能かもしれないのだ。
そこで、組織的なものとは縁遠く、それでいて大きな力を持っている存在――つまり、彼女くらいしか目に付く人物が存在しなかったのだ。
交渉の結果は、彼女の魔法を教わり、尚且つ此方の存在の秘匿、非敵対行動という三つの対価として、彼女に対する定期的な血液の提供、此方の開発した技術による利益の供与、ナギ・スプリングフィールドの情報収集の三つとなった。
――そっか、まだそんな時期なんだなぁ、と思わず揃ってほんわりした気持ちになってしまった。


で、神奈川のには、表社会で活動する為、姉の伝手を使って実態の在る『本社』の立ち上げに協力してもらうことに。
彼女の長女は既に働いている人間だったのだが、今回の事で実質的に社長の地位を手に入れた。それに加え、実働部隊の設立を急がれた現状、彼女は同時にスカウトの仕事までこなし始めたのだ。
どうやら彼女は人を見る目が肥えていたらしく、次々と良さそうな人材をスカウトし始めた。
因みに神奈川の本人はといえば、何故か彼を慕う喧嘩屋連中をまとめ、そういう連中のネットワーク(といってもつながり、と言う意味でインターネットではない)の整備を行っていたそうだ。
――案外、いきなり記憶が消えたりする連中というのは全国で多々確認されているのだとか。

で、俺はと言うと。








「ナハトバスター!!」
ゴオオオオオオオオオッ!!!!
轟音とともに、右手に携えた槍のような杖。その先端から撃ち出された、薄く虹色に輝く魔力が、目の前に陣取るサソリの怪物に直撃する。結晶のような甲殻に身を包んだサソリは、けれどもその高威力の魔力砲撃の直撃を受けてひっくり返ってしまった。
『バインド』
「闇に沈め、デアボリック・エミッション!!」
バインドから放たれる広域殲滅呪文の闇に、ひっくり返ったサソリはそのまま魔力ダメージによって昏倒した。
「――ふぅ」
『お疲れ様です、ソーマ』
「リインもお疲れ。然し、いや、結構慣れてきたかね?」
言いながらサソリのリンカーコアを死なない程度に蒐集する。――おぉ、物理防御系の術が手に入った。
『油断は禁物です――が、実際かなり腕を上げられたかと』
「ははは、嬉しいねぇ」
リインの賞賛に思わず口元が緩む。
何を隠そう、俺の仕事はリインとのコンビによるSF魔法――魔導師としての習熟なのだ。幾らデバイス技術が優れているとはいえ、それを扱う人間が居なければ話に成らない。
その点で、リインのマスターである俺は、一刻も早い魔導師としての成長が求められたのだ。
何せ現状で戦える人間といえば、表に立って戦えるのは神鳴流のくらいしかいないのだ。

と言うわけで、先ず最初にシールド、バリア、フィールドの防御系三系等を覚え、その後飛行魔法で魔法の細かい制御を覚え、その上で転移魔法を覚えた。
転移魔法を覚えればもう此方の物。無人世界に転移しては、延々自らの力を伸ばすべく戦闘訓練漬けの日々を送っています。
幸いな事に俺自身はマルチタスクの才能が在ったらしく、制御・分散思考の数は、歴代の主の中でも有数という評価を貰ってしまった。魔力のランク? 闇の書に選ばれる辺りで察してください。

さて、そうして訓練漬けの日々を送っていると、如何しても問題になるのが日常生活。
これでも小学三年生のガキですから、ちゃんと学校に通う必要もあるわけです。
最初の頃は俺も真面目に、魔力養成ギブスを装着の上マルチタスクの大半を仮想戦闘訓練につぎ込みながらも、日常生活をちゃんと送っていました。
しかし、それもある程度を超えると飽きてしまった。
何せ、徒でさえ前世の記憶で高校生くらいの学力は保持してたところを、『闇』と『夜天』というある意味データベースのようなものを得た上、多数のマルチタスクにより思考演算速度は嘗てを圧倒。最早日常生活面において俺の問題は、それこそ交友関係くらいだ。

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と言うわけで、日々の日常を可能な限り削れないかと悩んでいたところ、リインフォースが面白い術を教えてくれた。夜天の書の復旧に辺り発掘された、特殊な系等に属する魔法。
所謂、分身と言う奴だ。
なんでもこの分身は、嘗てベルカのとある一族が有していた秘術で、自らの分身を魔力により構築、それらと意識共有を行う事で、分身達を同時に一つの意識で制御し、尚且つそれら全ての経験を本体へフィードバックさせることが出来たのだとか。

――思わず「なんという影分身」と呟いた俺は間違ってない。
因みにリインも苦笑していた。此処は弾倉世界だが、リインは跳躍も読んでいるのだ。

で、この術式の問題点なのだが、先ず遠隔制御、次に魔力容量、最後に適性と、物凄く習得条件が厳しいのだ。
まぁ物は試しと実際に術を行使してみたところ、何か無茶苦茶相性が良かった。しかも、俺の場合分身と本体の入れ替えまで自由自在なのだ。

「……ホワイトゴ○イヌ」
「ぶっ!?」

ボソりと呟くリインの言葉に思わず失笑。
いやまぁ確かにそんな感じだけど。
で、習得したこれらを使い、徹底的に魔導師としての訓練を強化しだしたわけだ。

≪やぁ、聞こえてるかいソーマ≫
「――神鳴流のか? デバイスの試作機が出来たのか!?」

と、そんな最中聞こえてきたのは、念話によるささやき。その声は盟友たる神鳴流剣士の声だ。
神鳴流のは現在モルモル王国にて、試作デバイスの開発を行っていたはずだ。そしてその彼が、次元世界を隔てた俺に対して念話を送ってくるという事はつまり――。

≪ああ。漸く完成したよ。といっても、処理速度も遅いストレージだけどね。≫
「それは……一歩前進か!」
≪うん。理論実証機が成功したから、次はハイエンドパーツでの本格的なプロトタイプの製造だね。で、それに際してキミに一回此方へ来てもらいたいんだけど≫
「ん、了解した。どのルートで行けばいい?」
≪一応表で≫

デバイスの開発には、俺――というか、リインが深く携わっている。何せこの世界で唯一の純正品デバイスは彼女――というか、『夜天の魔導書』だけなのだ。開発にはどうしても彼女が直々に意見を出す必要がある。
因みに表だ裏だというのは、入国手段に関してである。
――転移魔法だと、入国が不正規になってしまうのだ。

「んじゃ、すぐにそっち行くよ」
≪交通費は振り込んどくよ≫
「あいよー」

とはいえ、修行時間を削る心算は無い。一人分身を出して、彼にモルモル王国まで正規手順で渡ってもらおう。

「んじゃ、修行の続きと行こうか」
『8時方向5キロ地点に大きな魔力反応あり。手頃な相手かと』
「よし、行くか」

とりあえずは、もう暫く訓練を続けるのであった。


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03 ネット掲示板「ネギま」

2012.07.07 (Sat)
1:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:05:41 ID:XXXXXXXX
今日はお疲れ様でした。自分としては魔法スキルに適性が有るのか無いのか微妙な結果――と、思っていたのですが、あの後少し進展がありましたのでその後報告を。

2:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:11:15 ID:XXXXXXXX
>>1乙
進展というと? 相性のいい属性でも見つかった?

3:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:12:32 ID:XXXXXXXX
因みに俺は気が炎になった。気の炎化に成功。
本日はお疲れ様でした。

4:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:16:40 ID:XXXXXXXX
やぁ、本日はお疲れ様。今回、ぼくは色々得るものが大きかったよ。
言うと、どうやら転生者は3つの特質を持っている、と言う点。
ぼくでいうと、気の急速回復と、頭脳、目の三つだね。
名無しの神奈川市民のは2つ判明、名無しの麻帆良市民は1つが判明してる状態だね。

以上。名無しの滋賀県民さん続きをどうぞ。

5:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:20:22 ID:XXXXXXXX
全員きたみたいだな。んじゃ、報告。

リインフォース拾った。

2:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:21:15 ID:XXXXXXXX
は?

3:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:21:32 ID:XXXXXXXX
はぁ?( ゜Д ゜)

4:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:21:40 ID:XXXXXXXX
詳細キボンヌ

5:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:25:53 ID:XXXXXXXX
>>4 また旧いネタを。
話は今日の帰りのこと。駅で神鳴流と分かれた後、田舎道を何時ものように歩いて帰ってたんだが、その途中呼ばれたような感じがして脇道へ。そこで銀髪美少女を発見。即座に家へ連れ帰りました。
で、何か見たような顔だな、と思ってたら、黒いドロドロに飲み込まれ、目覚めたら土下座されてました。
で、その銀髪土下座美少女が、自らをリインフォースと名乗った。


6:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:26:15 ID:XXXXXXXX
>>5 通報しました。
黒いドロドロって、アンリ・マユ?

7:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:26:37 ID:XXXXXXXX
もしそれがリインフォース本人なら、寧ろ闇の書の闇だと思うんだが――kwsk

8:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:28:46 ID:XXXXXXXX
多分リインフォース本人。本人の証言だと、はやてに看取られた後、闇の書の闇に回収されて、一緒に転生機構が作動したのだとか。
ただ、完全に破壊された状態からの再生だったため、基幹プログラムにあった正常なデータを元に再構成したとかで、夜天の書も闇の書も両者かなり安定した状態だったんだとか。
ただ、両者が安定して存在する以上、闇の書の闇が夜天の書の中に存在するのは不可能。そこで転生機構の導きに従って、闇の書は俺をパックリ行った――と言うわけらしい。

9:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:29:37 ID:XXXXXXXX
ちょ、おまw
闇の書の闇に取り込まれたとか、大丈夫なのか?

10:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:30:12 ID:XXXXXXXX
全然大丈夫。取り込まれたというか、寧ろ取り込んだような状況で、今の俺は半人半霊、もしくは半人半プログラムみたいな状態らしい。肉体強度は上がったし、闇の所の再生機構やらも取り込んで、寧ろチート化した。

11:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:31:22 ID:XXXXXXXX
>>10 ナニソレ羨ましい。

12:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:31:59 ID:XXXXXXXX
>>11 いや、お前等のが羨ましいから。ネギまに来てネギまの魔法使えないとか、どんな呪いだ。

13:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:33:33 ID:XXXXXXXX
話が逸れてるよ。
もしキミが拾ったのが、件のリインフォース本人だったとして、その闇をキミが取り込んだというのなら、それは多分キミの特質によるものじゃないかな?
特質:吸収とか、そういうのがあったんじゃないかと思うよ。

14:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:34:54 ID:XXXXXXXX
>>13 さすが我等がブレイン、頼れる。
で、リインを拾った結果、俺が魔法を使えなかった理由が判明。何か俺の魔力『聖王』のらしい。
道理で精霊との相性が今一つなわけだよ。


15:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:35:11 ID:XXXXXXXX
チートキター

16:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:35:33 ID:XXXXXXXX
魔法無効化能力者かよ...(汗)

17:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:37:27 ID:XXXXXXXX
しかもリインを得た現状、ミッド式やベルカ式を習得できる。つまり、デメリットをメリットが上回った!!

18:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:39:54 ID:XXXXXXXX
つまり、特質は
1.聖王
2.吸収
3.??
という現状。しかも習得技能が闇の書の闇にSF魔導師と……チートですね。

一つ聞きたいのですが、デバイスに関する情報は有りますか?

19:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:41:20 ID:XXXXXXXX
聞いてみたところ、かなりあるらしい。
ストレージ、インテリ、アームド、ブースト、ユニゾン諸々。
資金と設備があれば、この世界でも多分廉価版くらいは生産できるんじゃないか、だって。

20:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:42:14 ID:XXXXXXXX
それは結構。然し、我々『気』の使い手には余り関係ありませんねぇ。

21:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:43:50 ID:XXXXXXXX
>>20 ところがギッチョン!! なんとリインフォースが完全復旧した関係で、過去に蒐集し、転生機構によりリセットされてた過去の記述が完全復元されたらしくて、その中には気やら霊力に関する記述もあったらしい。
つまり、神鳴流のアームドデバイスも、金と設備があれば作れる。

22:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:44:01 ID:XXXXXXXX
金は出します作りなさい

23:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:45:11 ID:XXXXXXXX
俺のもつくってー

24:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:46:33 ID:XXXXXXXX
出世払いで頼む。

25:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 01:49:42 ID:XXXXXXXX
勿論データは渡す心算。ただ、一つみんなにお願いがある。
と言うのは、正確には俺の願いではないのだが、リインがこの世界の未来に起こりうる悲劇の回避の為に行動したいと言ってるんだ。
無論皆が不干渉派なのは理解してるんだが、如何か力を貸してくれないだろうか。


26:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:54:04 ID:XXXXXXXX
私のスタンスとして、原作不介入は代わりません。が、バックアップやブレインとしての活動くらいは協力しますよ。

27:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:56:55 ID:XXXXXXXX
悲劇回避に限定するなら、原作介入も已む無し。
あの既知害じみた銀髪オッドアイ連中みたいに、不用意に周囲に迷惑を掛けないなら。

28:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 01:58:31 ID:XXXXXXXX
麻帆良ののは実感が篭ってるなぁ……。スネークまかせっきりでゴメンね?
因みに原作介入はいいよ。ただ、やるなら背骨を確りと整えてからにしたほうがいいと思う。
現在の俺達の戦力って、たった4人だし。
どうせなら、神鳴流のに頭をしてもらって、デバイス技術で旧世界科学魔法派、見たいな新勢力でも作ったらいいんじゃね?

29:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 01:58:12 ID:XXXXXXXX
>>28 良いってことよ。
然し、科学魔法派か。それは面白そうだ。
うまくやれば、裏からコッチに触手を伸ばしてる新世界側の影響を弾けるかもしれんね。

30:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 01:59:35 ID:XXXXXXXX
……とりあえず、纏めてみよう。
1.名無しの滋賀県民がリインフォースを拾った。
2.その結果名無しの滋賀県民がチート化。
3.リインフォースの希望で原作における悲劇回避の提案。

3からの派生案として、新党設立もとい、新派閥の設立が提案。
3-1.新派閥の基幹はリインフォースから齎されたデバイス技術
3-2.そのトップには頭脳チートである神鳴流
3-3.現在条件付きではあるが、悲劇回避にかんしての原作介入は概ね肯定的。

と、こんなところかな。
因みにぼくはやってもいいよ。新世界側の魔法使いって嫌いだし。こっちでの勢力を削れるならザマァみろだし。


31:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 02:01:11 ID:XXXXXXXX
その条件で承認。

32:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 02:01:52 ID:XXXXXXXX
同じく承認。

33:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 02:01:52 ID:XXXXXXXX
皆に感謝。

34:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 02:02:53 ID:XXXXXXXX
然しそうなると、また集まらないと駄目か。起業するなら大人の代表も居るし。
大人は――まぁ、またウチの姉でも使えば良いが。長女辺りなら一定の利益を供与してれば力を貸してくれるだろうし。

35:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 02:04:22 ID:XXXXXXXX
次の会合は、まぁ場所はまた横浜でいいと思うよ。
ただ、次の時は送り迎え頼む>滋賀県民

36:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 02:05:48 ID:XXXXXXXX
な、なんでさ!?

37:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 02:07:26 ID:XXXXXXXX
転移すれば金も掛からないしすぐだろ。

38:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 02:08:11 ID:XXXXXXXX
あ……。

39:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 02:08:53 ID:XXXXXXXX
>>38 ニヤニヤ
然し、デバイスか。ネギま世界でまさかの存在にwktkが止まらない。
次の会合が楽しみだ。

40:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 02:10:13 ID:XXXXXXXX
会合場所が麻帆良に出来ない嘆き。ちくせう。
と、そろそろいい時間だ。これ以上はこの身体では厳しいのでそろそろ寝るとします。

41:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 02:13:26 ID:XXXXXXXX
うん、確かにそろそろいい時間だね。
それじゃ、この話題はまた次に持ち越しという事で、僕も寝るとするよ。
皆お休み。

42:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 02:14:11 ID:XXXXXXXX
おやすみ ノシ

43:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 02:15:36 ID:XXXXXXXX
おやすみ~

44:名無しの滋賀県民:1998/XX/XX(X) 02:17:11 ID:XXXXXXXX
おやすみ。
んじゃ、最後にリインの生写真でもうpしとくか。

 
 ┗証拠写真

41:名無しの京都神鳴流:1998/XX/XX(X) 02:18:32 ID:XXXXXXXX
ちょっ

42:名無しの神奈川市民:1998/XX/XX(X) 02:18:38 ID:XXXXXXXX
おま

43:名無しの麻帆良市民:1998/XX/XX(X) 02:18:42 ID:XXXXXXXX
生写真キター!!
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02 金色じゃないけど闇だそうです。

2012.07.07 (Sat)
リインフォース(?)を運んで、自室のベッドに寝かせたと思ったら何か黒いのがあふれ出して飲み込まれた。
で、目覚めたらリインフォースに土下座されていた。
「真に申し訳ない!!」

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「俺はリインフォースを拾って運んだと思ったら寝ていて土下座されていた」
な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も如何成ってるのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

以上テンプレ。
半泣きで土下座してくるリインフォースに、とりあえず落ち着くように声を掛け、改めて自己紹介に移る。
リインフォースは矢張りあのリインフォースらしく、自らをベルカの騎士、夜天の魔導書の管理人格と称した。
とりあえずリインフォースって呼ぶのが面倒だから、許可を得てリインと呼ぶことに。
「で、何で土下座?」
「――話せば長くなるのですが」
其処からリインが語ったのは、夜天の魔導書の由来、そして闇の書への変遷という、リリカルA’sの流れだ。
「我が主と守護騎士達は、二人の少女達の助力により救われました」
ふむ。何か原作に無い登場人物の存在が仄めかされたような気がするが。まぁそこらへんは此処に居る俺達には関係ないだろう。
「でも、その話だとリインは死んでるんじゃないの?」
「ええ、そのはずでした。此処で出てくるのが、夜天の書の無限転生機構です」
「え?」
思わず声が出た。だって、転生機構は闇の書の闇と一緒に――あれ? あれは防衛機構だっけ?
「滅びた闇の書の闇は、消え逝く私を回収。その後システムにより強制転移を実行しましたが、結果として防衛機構の影響で発生した時限断層から虚数空間に飲み込まれました。結果、気付けば――」
「此処に居た、と。虚数空間で平行世界って、また難儀な」
何処の二次創作だよ、と内心で小さく突っ込みを入れつつ、肝心の其処から先の話を聞くことに。
「一度完全に破壊された闇の書の闇は、内部に記されたデバックにより自己復元を実行。その結果、闇の書の闇は正常な形で復元されました」
「正常な形?」
「暴走する事の無い、安定した闇の書、と言う形でしょうか。ですが、その所為で一つ問題が発生しました」
本来夜天の書と闇の書は同一の物だ。闇の書は夜天の書を改変した結果に出来た改悪書のようなものだ。
しかし、此処で一度夜天の書と闇の書が完全に分離してしまった、という経緯が表になる。
分かれ再生した夜天の書と、切り離されて再生したことで「一つ」として安定した闇の書。
今や完全な別物となったこれらが、今さっきまで、一人の『リインフォース』として固まっていたのだ。
「安定したとはいえ、闇の書は最早器の無いプログラムです。器を求めて、私の中から飛び出して――」
「で、俺に混ざった、と」
言われて成程と納得する。道理で目覚めてから身体の感覚に妙なところがあるのか。
感じた事も無いほどの身の軽さ、感じる世界の魔力。ぐるぐる廻る並列施行(マルチタスク)。
――あれぇ? 残念魔力がチート化してないか?
「――今の俺って、人間?」
「……申し訳ありません」
純然たる人間と言うよりは、半人半プログラムの人外のような状態らしい。いやまぁ別にその辺りはいいさ。どうせ二度目の人生。人を止めるなんてレアな経験はそれはそれで面白い。
問題は、ちゃんと成長できるのか、と言う点か。
「それは――多分問題ないかと。ただ、肉体の最盛期を越えた時点で成長は停止するかと思われますが」
「なんだ良いじゃん。今のところ変な感じは特に無いし、リインも気にしなくていいよ」
単純に考えれば、身体がいきなり強くなっただけだ。慣れる必要はあるだろうが、デメリットは小さく感じる。
寧ろ問題は俺の方に在る。現在俺は『闇』を取り込んだ影響で、リインフォースとの間にパスが形成されている。つまり、俺がリインフォースの主に相当する状態と言うことだ。
俺に魔力があることは予め分っている。俺の魔力を供給する事は全く問題ないのだが、然し俺の魔力は精霊に好かれない変り種だ。リインに変な影響が出なければいいのだが、と思って聞いてみたところ。
「――ソーマ、自らの魔力光は確認しましたか?」
「え、そういや見てないけど……」
というかネギま世界で魔力光って確認できたっけ? と首を傾げつつ、リインに促されて魔力を放つ。
やっぱり寝る前までと違って、異常に魔力の通りが良い。
すっと身体から溢れる魔力。少し勿体無いと思ったので、それを身体に貼り付けるように維持して。
「ソーマ、それが何色かわかりますか?」
「何色って……虹色?」
呟いた瞬間、思わず絶句する。いやいや、何でさ。
「闇がアナタに魅かれた理由が分ります。虹色の魔力は、古来ベルカの王の証。――夜天の書が管制人格リインフォース、恩義もあるアナタにこの身を捧げましょう」
え、えええ、いやいやちょっとちょっと。
何かいきなりチートが化けた。

――ソーマは闇の書の闇を取り込んだ。
――リインフォースⅠが仲間に加わった。








とりあえず此方からリインフォースに伝えるのは、自分が今の人生の前、前世に関する知識を持っているという事。
前世は此処とは違い、魔法やそれに類する技術が一切存在しなかった事。
娯楽文化が発達しており、その中でこの世界や、リインフォースの出自する世界に類似した物語が存在していた事などを話した。
「……それは、私達が物語の登場人物だという事ですか?」
「あー、いや、そうじゃなくて」
とりあえず、観測論と言うのを語ってみることにする。
世の中は、主観となる自分、その自分が観測している相手、そして自分と相手の対話を観測する第三者であり、これら最小規模が拡大したものから成るという考え方。
この考え方を世界規模で適用すると、自らの暮らすこの世界は、必ずどこかの世界に観測されたものである、と言う考え方だ。
「つまり、自分の世界は何処かでは物語であり、物語を観測する神でもあると」
「――まぁ、言いたい事は何となく理解できました」
本当かよ。自分で言ってて大分混乱してるんだけど。
「然し、なら主ソーマはこの世界の未来に関して、何等かの知識を有しているという事ですか?」
「無いとは言わないがな」
「……なら、其処に悲劇は存在しますか?」
言われて考える。まぁ、彼女――リインフォースにしてみれば、止められる悲劇は回避したいのだろう。それが例え自分に関係ないものであるのだとしても。
「――なら、動くかい?」
と、気付いたらそんな言葉が口から零れだしていた。見れば、リインフォースも目を見開いてキョトンとした表情をしている。
内心でやってしまったと思わないでもないが、コレでも俺はリインフォースのファン、と言う言い方は変だが、――A’sの作中、俺が最も救済を望むのは、間違いなく彼女であったのだ。
転生して以来、過去の記憶は既に記録となったと思っていた。過去の考えは、あくまで記録、感情とは既に乖離したモノと成ったと思っていたのだが。
――どうやら、俺は何処まで行っても俺らしい。
「――いいのですか? 主ソーマ」
「まぁ、どうせなら悲劇を喜劇に変えて、全員が笑える明日を目指す、なんて青臭いのをやってみるのもいいかもしれないしな。あと主は要らないよ」
とりあえず、やるなら死なないように、確り身体を鍛える必要があるわけだが。
「その辺り、任せてもいいかな?」
「お任せください、ある――ソーマ。必ずやあなたを最高の騎士へと育てましょう」
言って、少しだけ表情をほころばせるリイン。
……面倒は面倒だが、まぁ、美少女の笑顔を見られたのは儲け物かな?




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01 ネギま? 居酒屋にでも行くの?

2012.07.07 (Sat)
俺、遠藤相馬は転生者だ。名前は前世と変わらずの名前なのだが、容姿は若干補正が入ってる臭い。
まぁ、余談だ。

今回俺が転生したのは、神様転生じゃなくて、気付いたらアニメ・漫画の世界に転生していた、と言うタイプの、[迷い込み][転生]に分類されるのだろうか。
で、何故俺が転生に気づいたのかと言うと、埼玉の一部に麻帆良学園都市なんてものがあることに気付いたからだ。
転生して9年。小学三年生にもなればある程度の自由は得られる。
その当時は、トリップ転生などとは夢にも及ばず、単純に前世由来の精神からある程度周辺環境の情報知識を得る為に活動していたのだ。
その過程で知ったのが麻帆良学園都市の存在。
よりにもよって発展途上国が暗躍する無理ゲー世界です。本当に有難うございました、と思わずorz。
どうした物かとネットサーフィンをしている内に、ふと目に留まったのがネギま!掲示板。
おいおいと思わず頬を引きつらせながらハイパーリンクをクリック。パスワード制の掲示板。ヒントは「筋肉が用意した葱の技」。勿論「エターナル・ネギ・フィーバー」である。
パスワードを抜けて掲示板に参加したところ、参加者は3人の小規模な物だった。
少し意見交換したところ、なんでも此処は転生者の集まる掲示板で、現在の参加者は、一人を除き全員が原作不介入の方針を取っているのだとか。
因みにその一人というのは、京都神鳴流に所属する関西呪術教会の反融和派に属しているのだとか。まぁ、その立ち位置なら反麻帆良は仕方ないね、とは俺含めた全員の意見。

そんなわけで、早速オフ会に参加させてもらうことに。
場所は神鳴流の人に配慮して、新横浜でやることに。え、神鳴流に配慮するんじゃないかって? だって神鳴流は既に傭兵出撃で金持ちなんだもん。
というわけで、因果量子の彼方でBETAと戦う転生者に祈りを捧げながら皆でカンパイという運びに。
とはいえ我等は小学三年生の幼児。保護者も無しにそう長時間活動は出来ない。
――とか思ってたら、なにか神奈川県在住の少年が姉を連れてきたとか。見れば、其処には眠そうな顔の巨乳さんが一人。如何見ても竜子さんです本当に有難うございます。ありがたやありがたや。
聞いた話実の姉妹で、確かに呂布じみた武力を持つが、別に転生者ではないそうだ。
と言うわけで鎖の緩んだ我々は、早速この世界で生き抜くためのスキルアップを行う事に。

事前の情報交換で、この世界には我々のほかにも原作介入を目論む転生者が存在するのだとか。彼等は既に活動を開始しており、あるものは麻帆良小学校へ、あるものはウェールズへ、ある者は魔法世界である者は麻帆良の教師を目指してと、もう本当に好き勝手しているらしい。
そのバイタリティーはちょっと尊敬する、と思わず呟く。だってほら、俺って精神年齢はおじさんだし。正直其処まで頑張る気力はわかないよ。
でまぁ、そういう連中も暴れてる現状。転生者である我々は、高確率で何等かのスキルを得ている可能性がある。
例えばネギ並みの魔力だとか、高い気の資質だとか。
我々の中で最も技術体系に詳しい神鳴流の。そこで今回は、神鳴流のに基礎的な気と魔力の運用を教わる事になった。

……のだが。
先ず、神鳴流の。彼のは極単純に、気の回復速度が途轍もないというもの。単純な気容量は、現在真・雷光剣を3回連発する容量があるのだが、気が空っぽの状態でも3分休めば完全回復するのだとか。必殺技連打とか羨ましい。
次、神奈川の。
姉が武闘派である為か、魔力よりも気に適性があった。こいつは……あれか。元ネタつながりだろうか。気の制御を覚えた途端に、超回復を覚えやがった。死に難いとか羨ましい。
もう一人。麻帆良から着た奴。
コイツは気よりも魔力に適性が有ったらしく、あっという間に魔力の運用を覚えてしまった。
「メラ!」
で、コレである。つまりコイツの能力は、ドラクエの呪文。恐っ。ザキ系恐っ。ただ夏日にヒャド系は羨ましい。
で、俺。
俺には気の才能よりも魔力の才能があったらしく、少しの練習で魔力運用を身につけることが出来た。のだが。
「……あれ?」
どうも、精霊魔法がつかえない。結構大きめの魔力があるというのに、魔力を用いて精霊に感応することが出来ないのだ。正確には、完全に出来ないわけではなく、「火よ灯れ」の呪文を唱える為に、途轍もないレベルの魔力制御が求められたのだ。

結果として、俺は修練を重ねても魔法の射手くらいしか習得できないだろう、と言う話になった。
なにそれ酷い。全員そこそこチートなのに、俺は駄目とか。
あれだ、きっと咸卦法フラグだ! と一瞬希望を持ったものの、気の習得は肉体的修練と聞いて諦めた。生まれ変わってまで肉体修練とか勘弁して欲しい。

とりあえず感応は無理でも簡単な肉体強化の術を覚えてオフ会は終了、魔力を察知されるのも厭なので、魔力を限界まで隠蔽。何か神鳴流に魔力の隠蔽について驚かれたが、そもそも利用価値の無い魔力なのだ。隠蔽も糞も得られる価値がない。

で、電車に乗って一人帰路へ。偶々神鳴流と方向が同じなので一緒に帰ることに。
俺は本来節約の為に鈍行で6~7時間掛けてゆっくり変えるつもりだったのだが、何か神鳴流が電車賃を驕ってくれる事に。真にありがたいです。
で、電車の中で神明流とモンハンでラージャンを狩り(神鳴流が太刀、俺がガンス)、俺の降りる駅で別れる。
駅で電車から降りて暫く歩く。何せ田舎なもので、少し外れたところだと街頭すら無くなるような土地だ。
まぁこの世界に生まれて、この土地で10年も生きている俺だ。ネットがあれば後はどんな環境だろうが住み慣れたものだ。

――――――。

そんな、月明かり以外に光のない夜の闇の中。不意に聞こえたのは、誰かが痛みを堪える声。
痛いのに、苦しいのに、けれどもそれを表に出す心算は無く。けれども零れ出てしまった、そんな声。
そのときの俺の精神状態が、一体如何なモノだったのか。後の俺はその時の俺のことが全く理解できずも、けれどもその時の事を後悔する事は無かった。

見つけたのは、闇色に身を包んだ、月明かりにキラキラ輝く銀色の少女。
その少女は、俺の記憶が確かなら、先ず間違いなくこの世界に存在する筈の無いモノだ。
面倒ごとに首を突っ込むデメリットと、自己満足を満たすだけの善意。どうしたものかと一瞬悩み、まぁいいかと結局その少女を拾うことにした。
黒いタイトな衣装に身を包み、草むらに横たわる少女。

「祝福の風、だよなぁ」

其処に横たわる少女。八神を主に、烈火、鉄槌、盾、湖を従えた大いなる魔導書。
夜天の書の管制人格、リインフォース。そんな少女を背に、早速覚えたばかりの肉体強化を使い、少女を自宅へと搬送するのだった。

45 RebirthⅡ

2012.07.05 (Thu)

四機の追跡者を撃破し、機体の調子を確かめる。
この機体は、νGに比べると途轍もなくピーキーな機体だ。νGは汎用性、生産性共に最高値を指す、私の最高傑作といっても間違いない機体だった。
それに比べれば、この機体はνGには到底及ばないだろう。

――けれども、νGでは、絶対に届かない次元。そこに、今私は立っているのだと感じている。

「調子はどう?」
『――――――』
「そっか、そだよね。なにしろコッチが本分なんだから」

完全無欠の速度特化。徒早く、徒何処までも。それだけを追求して、一番最初に生み出された私の機体。
嘗てのそれは、技術不足からその情報処理の大半を搭乗者にゆだねるという、とても人の扱える物ではない欠陥機であった。
何時しかνGの台頭で姿を消した筈のその機体。けれどもどうやら、ドクターはコレをこっそりと回収し、再設計やらなにやらで作り直していたらしい。
――私はてっきり、何処かの格納庫で埃を被ってる物だとばかり思ってたんだけどね。
真逆ドクターが、そんな七面倒くさい手間を掛けてくれるなんて、そんな事考えても居なかった。

『――――』
「ん、承認」

四機のISとの経験値により、ISがファーストシフトを迎える。
黒と銀のツートンカラーに赤いラインが走るその姿。かつての物と見た目の趣こそ異なるが、それは間違いなく嘗て私が乗っていた機体だった。

「イメージインターフェイス接続良好――演算容量120%の余裕――すごい、サイコフレームにサブジェネレーター、QB、OB、PAも装備して、しかも親和性が最高値だなんて。流石ドクター、パーフェクトだ」

思わず感嘆の言葉を漏らす。
何せNEXTの基幹技術と、NMSSの基幹技術たるサイコフレームを併用し、その上で両者を完全に機能させ、尚且つ嘗てのこの機体の問題点であった演算能力には圧倒的な余裕があるのだ。
コレを地上の科学者(兎以外)が見たら、沫を吹いて倒れるのではないだろうか。何せこの機体、ブラックテクノロジーの塊だろうし。

「――ん?」

不意に何かを感じて視線を向ける。
越界の瞳にも、ハイパーセンサーにも、何も写らない。けれども、確かに其処に気配を感じる。
――憎悪、悪意、敵意、言葉にすればそんな感情か。

「……あの子か」

思い浮かぶのは、ソロモンにて戦った、赤い機体の姿。
今ソロモンの方向から此方に向かってくる敵意というと、まずあの子で間違いないだろう。あの状況から如何やって復帰したのかは不明だが、それでもこの気配は間違いないだろう。

一歩踏み出そうとして、不意に訪れた痛みに思わず脇腹に手を当てる。

『――――――』
「はは、ダイジョーブダイジョーブ。戦闘機人はこのくらいでへこたれない!」

心配してくれるこの子にはそう言うが、それが口先だけだというのは、私もこの子も理解しているだろう。
私の肋骨は、先ず間違いなく折れている。それだけならまだしも、多分他にも何箇所も折れている上に、それが内蔵を若干圧迫しているのだろう。間違いなく病院に搬送して緊急入院レベル。間違ってもISに搭乗する様な――しかも、こんなピーキーな機体――そんなコンディションではない。
何よりも最悪なのは、私が戦闘機人だという事。骨格が普通の骨ではなく、調整された人工物であるという点。普通の物よりも頑丈なそれは、当然ながら普通の骨に比べてとても重い。それは、この高機動機に搭乗する現状、途轍もない負荷を内蔵に与え続けている。

けれども、だからといって此処で立ち止まるほど、私は諦めが良くない。
此処であの子を停めなければ、あの子は間違いなくXG-70bに追いついてくるだろう。それは、私の大切な駒が潰される事に他ならない。

「――ふぅ。行くよ、νG……いや、」

小さく息を吐いて、覚悟を決める。
私は、私のために、私の前に現れる有象無象を踏み潰す。

「行くよ、RAY―R2―――マッハキャリバー!!」

手に入れたのは最初の心。

『―――――――――』

取り戻したのは不屈の翼。

「うん! スバル・スカリエッティ、――マッハキャリバー、此処で、終わらせる!!」
『くぅっ!! この、イレギュラー如きがあああああああ!!!!!!』

加速した機体が、背後から迫る光の塊――巨大なスラスターを背負ったISと激しくぶつかる。
――そうか、基地に残ってたVOBを無理矢理束ねて加速したのかっ!!

ガン!!! と機体と機体がぶつかりあう。
共に地球へ向けて加速する中の戦いは、モンド・グロッソというよりはキャノン・ボールに似た物がある高速戦闘。
――つまりは、これは私の土俵!!

ハイパーセンサーといえど使うのは所詮人。背後や頭上、真下にたいしては、如何しても反応が遅れる。
それは、純粋な人間には絶対に対応できない穴だ。

「ハジケロイレギュラアアアアアアアアアアア!!!!!!」

血を吐くような叫びと共に放たれる電子レンジ砲。即座にその範囲外を計算―回避する。
天蓋方向への回避により一瞬此方の姿を見失った蒼い機体。嘗ては単発のみを許された必殺の一撃。今のこの機体なら、連射も出来る――っ!!

「振動速射砲!!」

衝撃砲とIS:振動破砕の併用スキル、振動砲。
ISの処理能力が向上した現在、衝撃砲、振動拳共に連発が可能!
そうであるなら、当然振動砲も連射が出来る!!

ISを貫通し、搭乗者にダメージを与える事を狙った酷いその攻撃。蒼い機体の子はけれど、その不可視の攻撃を一撃喰らっただけで、後は機動とその巨大な右腕を盾に防いで見せた。

――不可視の攻撃を初見だけで防ぐかっ!!

「薙ぎ払うっ!!」

途端に赤い閃光が宇宙空間を両断する。咄嗟に回避して、即座に周囲で起こった爆発に眼を見開く。
周囲にあったデブリ帯が、赤く融解し、一部では派手な爆発すら起こっているのだ。慌ててハイパーセンサーでXG-70bを確認――幸い射線からは外れていたようだが――それでも驚く事に、あの一撃はXG-70bを有効射程範囲に捉えているらしい。
FCSまで有効範囲に入っては居ないだろうが、攻撃が十分な威力を持って届くというだけで十分以上の脅威なのだ。

「くぅっ!!」
「自分の武器で、滅びろイレギュラー!!」

途端、蒼い機体の繋がったブースターの各所、其処に繋がれたコンテナのような物が開く。
いや違う、あれは――ウチのマイクロミサイル!!

衝撃砲で迎撃しながら、ミサイルに向かって吶喊する。確かあのタイプのマイクロミサイルは、目標に対して最速で着弾する為、旋回性能が低くなってしまっている。そのため、正面から突っ切ってしまえばそれ以上の追跡は出来ないのだ。
とはいえ現状は高機動戦闘。正面といっても負荷はかなり大きい。
鈍痛が激痛に変わるのを感じながら、ミサイルの弾幕を潜り抜ける。

……どうやら、近接信管のミサイルは混ざってなかったらしい。セーフ。

「くっ、ならもう一度この収束砲で!!」
「やらせるかっ!!」

蒼い機体に近接し、背後からその巨大なブースターになんとか一撃を叩き込む。急造品であろうその巨大なブースターは、その一撃で火を噴いて機能を低下させ、ついで二発、三発と叩き込むごとにその機能を落していく。

「お、おのれおのれおのれえ! イレギュラー風情が!!」

ガコンと、ブースターから蒼い機体が分離して――その一瞬、完全に蒼い機体が動きを止めた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」

大きく振りかぶる一撃。スラスターを全力噴射。最短距離で最強の一撃を叩き込む事だけを意識して。
――その瞬間だけ、間違い無く私は徒一発の弾丸であったのかもしれない。
遅れて此方に向き直ろうとする蒼い機体。けれどもその搭乗者の表情は、驚愕に見開かれていて。
それでも尚勝利への渇望があるのだろう。動いていない機体を無理矢理動かし、その右手の鋭い爪を此方に向けて突き出してきた。
それと同時に、此方も覚悟を決めた。

――――ッ!!

「な、なんだこれは!? 私の知らないシステム!?」
「 戦争を遊びにしているお前にはわかるまい! この俺の体を通してでる力がっ!」
「ふざけた事を!!」

Ray-Ⅱ……マッハキャリバーに搭載されているサイコフレーム。いや、この場合はサイコミュといったほうが言いか。
サイコミュは、人の意思を表す装置。マッハキャリバーは、その力を表現してくれるマシーンなのだから。

「イレギュラーーーー!!!」
「一撃必斃!!」

――――ゴガンッ!!

手に伝わる衝撃。音にすれば、そんなものだっただろうか。
弾くわけではなく、貫通する拳。必殺の威力を籠めたその右拳は、ギリギリ相手の爪が届く前に、向うの脇腹を深く抉っていた。

……いや、違う。相手のISこそ抉っていたが、搭乗者のほうには傷一つついていない。振動拳の影響で内蔵は拙いだろうが、それでもISスーツ、いや半透明なエロ水着っぽい宇宙服? 自体には、傷一つとしてついていない。
――運のいい。もしスーツが破れていれば、ISが機能停止した現在致命的だったろうに。

「…………っ」

考えている内に、漸く痛みが思考に追いついたらしい。
激しく激痛を放つ脇腹。同時に腕や脚なんかも激痛を放ち始めた。鎮痛剤も既に効果を切らしたらしい。
肋骨が折れてるっぽい現状で高機動戦闘――後が怖い。

「……はぁ」

小さく息を吐いて、一瞬悩んでから意識を失っている蒼いISの搭乗者を片手で掴み、そのままXG-70bへ向けて加速する。
どうやら向うも此方の戦闘が終了したのを察知したらしく、此方と合流する為に少し速度を落したらしい。相対速度的に見て、あと10分もすれば合流できる筈。

――っ!?

と、気を抜いたのが拙かったのだろう。途端に視界が黒く染まりだしたのに気付いた。
宇宙空間自体暗いものなのだが、星の光が徐々に消えていくその光景に、とっさに自分の意識が落ちかけているのだと自覚して。

「まず……MC(マッハキャリバー)、頼む……」

それだけ小さく呟いて、意識は完全に闇に飲まれる。
最後に聞こえたのは、何処か慌てたような少女のコエだった。


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14 闇の少女に優雅な安らぎを。

2012.07.04 (Wed)
さて、そんなわけで麻帆良にてマクダウェルの封印を解除したわけなのですが。

「とりあえず、封印が解けたって言うのは内緒で」
「ふん、まぁいいだろう」
「はい――では、契約内容の方に入りたいと想います」

と言うわけで、用意しておいた羊皮紙にラテン語でサラサラと文字を書き連ねる。
まぁ、結構読み辛いのだが、簡単に言うと以下のとおりとなる。

契約書
私、諏訪鋼一はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルにかけられた二種類の呪い(1.登校地獄 2.学園結界)を解除する事の対価として、以下の条件を求める。
1.現1―Aが卒業するまでの学園への在籍。
2.諏訪鋼一の企てる計画内容の秘匿
3.諏訪鋼一の企てる計画に対する妨害行為の禁止
4.お友達になってください

「おいちょっと待て最後のコレは何だ!」

渡してみたら、そんな反応が返ってきた。

「駄目?」
「阿呆か貴様、私は吸血鬼だぞ!? 何が悲しくてこんな阿呆みたいな契約内容で友達を作らねば為らんのだ!!」
「駄目? 友達なってくれない?」
「友達なんぞいらん!」
「マクダウェルがいらなくても俺は欲しい!!」
「貴様なら友達なんぞ幾らでもいるだろう!!――――――って、おい、どうした?」

……ふ、ふふ、ふふふふふ。
友達、一杯……ねぇ。
友達ってさ、貴重だよねぇ。うん。
俺ってさ、ほら、無限螺旋に捕らわれてたじゃない? あれの中に居るとさ、なんていうのかな、幾ら何度友情を育もうと、周が変わるたびにその友好度とか好感度は全部リセットされちゃうわけじゃない?
それがさ、何か一時期猛烈に空しくなって、周回が万を越えたあたりから友人を作らなくなったんだよね。そしたらさ、なんだかそのまま孤高の魔導師路線を突っ走っちゃって、そのままロンリーマギウスに成っちゃってさ、結局其の後友達を作るように成ったのは、無限螺旋末期の事。俺に対する大十字の評価なんて「一人で悟り開いた気に成ってるショタ魔導師」だぞ? なんじゃそりゃと思わずTrue(アーカムで探偵しつつミスカトニックに復帰、アル・アジフと再会)END行った大十字の頭を殴った俺は悪くないはず。

そして今生。
前世の影響で、最初っから飛ばしまくった結果。俺の現在の友人というと、ネットサークルの面々と会社の面々。いや、後半は部下だから、なんて野暮な突っ込み話。あれは共に機械で浪漫を夢見る同士だ。

「友達――居ないんですよ」
「……それは……」
「友達、駄目ですか?」
「――ぬ、く……」
「トモダチィ……」



30分くらい粘った結果、友達契約(っていうと何か厭だが)を結ぶ事に成功したのだった。





「さて、それじゃエヴァ」
「なっ!? なんだその腑抜けた呼び方はっ!!」
「んむ? 友達と言うのは、ニックネームで呼び合ってもいいものでは?」
「だからといってその様な――」
「駄目?」

じーっと見上げるように頼み込んでみる。マクダウェル――エヴァは基本善人なので、正面から誠意を籠めて頼み込めば、早々断られる事はない、と思う。

「……如何しても駄目なら、エヴァンジェリンって呼ぶけど……」
「――ち、契約を盾に取るか、恩を傘に着るかすれば蹴り飛ばしてやれた物を……」
「うん? 何か言った?」
「なんでもないわ戯け!!」

軽く頭を叩かれたが、なにやらよく解らない内にエヴァも納得してくれたらしい。

「――、それじゃ、エヴァ。コレを」
「何だこれは?」

そういって手に置かれたそれを見て首をかしげるエヴァ。
其の手に置いたそれ――魔刃鍛造の術式ででっち上げた、簡単なマジックアイテムで、鈴の形をしているのだが、エヴァが其の鈴を振っても、一向に音はならない。

「其の鈴には、エヴァに掛かっていたものと同じ、麻帆良大結界とのリンクが埋め込まれてます」
「――つまり、コレを身につけておけば、結界への侵入者を感知でき、また結界に拘束された状態に有ると擬装できる――と?」
「はい。魔力に関しては、擬装である為、その鈴自体に吸収されるようになっています。と言うのも、緊急時には、其の鈴から逆に魔力を引っ張る事が出来るようになってるんです。一種の蓄電池ですね」
「ほぅ、中々面白いマジックアイテムだな」

他に応用が出来そうな術式だとかなんとか呟くエヴァンジェリン。まぁ、事実そういう術式の応用だし。
因みに其の鈴だが、形としてはブレスレットと言う体裁にしてある。

「ふむ――」
「おぉ、良くお似合いです」
「ふん、世辞はいい」

言いつつ、満更でも無さそうなマクダウェル。
ふっふっふ、貴女が日本の古文化フェチだという事は既に調べがついているのですよ! 如何だその鈴! デザイン的には古きよき物と言うのを狙ってるからな! 開運の効果もあるよ!!

「あ、それとなんですけど」
「なんだ?」
「学園結界の術式をそれに移植する際、間違って登校地獄の術式も移植しちゃったんですよね」
「――って、なにぃ!?」
「あ、大丈夫ですよ。バグはちゃんと修正して、3年には卒業できるようになってます。勿論、修学旅行にもいけますよ」
「貴様、何て事を……!!」

これでも一応先生なのでね。サボり魔がサボりそうだと解っていて、何の手も打たないというわけにはいくまい。

「くっ――外れん!?」
「あぁ、登校地獄の呪詛ですね。まぁ、三年後には外れますよ。こうプチッと」
「今すぐ外せ!」
「そりゃ出来ません。それも契約内容から外れた事にはなりませんよ?」
「貴様、計ったな!!」
「キミはいい吸血鬼だったが、キミの保護責任者(学園長)がいけないのだよ――って、何をやらせるんですか」
「私が知るか!!」
「振ったのは貴女でしょうが!!」
「振っとらんわ馬鹿者!!」

まぁ、そんな感じで適当に話をはぐらかしたり誤魔化したりしつつ。
結局、鈴はそのままエヴァの左腕にくっついたままで行く事となったのだった。

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