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22 忍び寄る手

2012.10.24 (Wed)
麻帆良に入って早半年。最初に訪れたイベントは麻帆良祭。
アスナやエヴァが地味に食券を荒稼ぎし、千雨がコスプレイベントで最優秀賞をとったり。
UHBの面々も二度目の人生を満喫する最中、俺が何をしていたかと言うと、リインとお祭りを楽しみつつ、その背後で進行しつつある現実世界、国連を中心とした企みごと。
残すところ一年を切ったこの計画成就の為、最後の仕込みの為、ほどほどに遊んだ俺とリインは、来るべき年に備える為、早々に麻帆良の土地に対する小細工を開始した。

設置するのは、缶ジュース程度のサイズの小さな筒。
麻帆良全域、余すところ無く設置されたこの筒は、麻帆良と言う土地の魔力の層や分布を計測する為の計測装置だ。
此処から吸い上げられたデータを元に、来るべきイベントの足掛りとなるのだ。

「リイン」
「――はい。十分な量のデータ収集が完了しました」
「うん」

何故この時季にこんな計測を行うのか。それは、本番の時期を想定し、尚且つ麻帆良でこうした活動をするには、麻帆良と言う閉鎖環境が開かれ、尚且つ本番に近い条件での計測が必要な為。
要するに、本番――来年の麻帆良祭の時を想定している為だ。
この麻帆良を祭壇とした大規模儀式。
俺達UHBの計画第一段階にして根本。コレの成否こそがすべての鍵を握っているのだから。
「――それじゃ、そろそろ行くか」
「はい、我が主」
リインと手を繋いで、雑踏の中へと足を踏み出し、二人揃って静かに姿を消したのだった。


Side Lingyin

麻帆良最強の頭脳と呼ばれる彼女、超鈴音は、この半年でチェックした世界情勢のあまりの差異に、思わず頭を抱えて項垂れていた。
彼女にとっての21世紀とは、未だ魔法が秘匿され、その上で英雄・ネギスプリングフィールドがその「奇跡の軌跡を描き始めた時代」だった。

この時代のデータは十分に存在していた。
世界情勢、平均的な技術レベル、この先起こりうる大きな出来事。
更にネギ・スプリングフィールドの転機となった3-Aのクラス構成や、其々の簡単な背景など。

幾ら歴史に振れ幅があるとはいえ、それを考慮しても十分なレベルの技術と情報を持ち、この時代へと訪れた。
――その、筈だったのだが。

「……どうなってるネ、この世界」

彼女がこの世界に訪れて、まず最初に行ったのは戸籍の偽造。戸籍は麻帆良に潜入する為には必須の物であるし、偽造の容易い彼の国の国籍を取得した。
事前情報の通り、あの国は情報に対する処理がかなりザルだった。片手間に組んだ電脳侵攻プログラムでも、障壁突破を気付かれず、丸ごとごっそりと情報を書き換え、翌日には完成した国籍を手に入れられたほどだ。
そうして国籍を手に入れ、ある程度の地盤を築きつつ麻帆良へ訪れて。そこで更に地盤を強化し、漸く周囲に目を向けられる状況になって、先ず最初に気付いたのがUHBと呼ばれる大手企業の存在。
この時代、日本に名を残すグループといえば、雪広と那波の二つ。その筈だ。だと言うのに、何故かさまざまな分野で存在するUHBと呼ばれる企業。
そのときは気に掛けなかったのだが、次いで魔法業界側に目を向けて、目を剥いた。

『スプリングフィールドの五つ子』

「なんネソレは」
思わずそんな言葉を彼女が漏らしたのも仕方あるまい。何せ彼女の知識が正しければ、本来スプリングフィールドの子は一人、ネギ・スプリングフィールドのみ。
だというのに、五つ子? 歴史のブレだとかで、双子くらいまでなら理解できなくも無いのだが、五つ子?!
ご先祖様偉くがんばったネ、と思わず零しつつ、超鈴音は更に情報を調べた。

結果手に入ったのは、五つ子のうち2人が行方不明、残る3人はメルディアナで順調に飛び級を繰り返しているらしい。
細かい評価は自分の目で行うとして、手に入れた教師の評価(メルディアナからMMへ送られたものの電子情報)をチェックしたところ、何かご先祖様の評価は相当微妙な事に成っているらしい。

ネギ・スプリングフィールド。
彼こそが我がご先祖様であり、スプリングフィールド兄妹の長男である存在。
本来の歴史では、その胸のうちに大きな闇を抱え、それでも光を目指して歩いたとされる英雄だ。
だが、この教師からの評価を見ると、何か相当怪しいことになっている。
どうやらご先祖様は、スレネギになってしまっているらしい。
両親に対する尊敬は無く、知識こそ求めるが、周囲との関わりは殆ど求めず。
ただ己の未を守るために、魔法使い見習いの度を越えた魔法修練を行っているのだとか。

――これは……どう考えるべきカ……
彼女にとって、ネギ・スプリングフィールドは越えるべき壁である。
そんな彼が強くあるのは、ある一面では好ましいことだ。壁が大きければ大きいほど、ソレを乗り越える為に尽力する。それは彼女にとって望むべき事なのだ。

然しだ。歴史において、ネギ・スプリングフィールドの最も大きな特徴と言うのは、その単体戦力などではなく、周囲の――彼を支えたとされる、彼の生徒達との絆の力だったと語られている。
単体戦力の向上は望ましいのだが、人間関係を捨てているというのは……。

更に次の記述を見ていく。

ニーギ・スプリングフィールド。
病弱なピアニスト。男女問わずに人気があり、また反動さえ考えなければ魔法の才能も十分にあるのだとか。
なんでもメルディアナを襲った魔法生物襲撃事件――コレも彼女の知る歴史には存在しない――の祭、彼は血を吐きながら燃える天空を20連発。その大半を見事に薙ぎ払って見せたのだとか。
超は思う。燃える天空20連発して生きていられる人間と言うのは、果たして本当に病弱と言うのだろうか、と。
少なくとも自分は其処まで燃える天空を連発すれば、間違いなく反動で死に絶える。

ヌーク・スプリングフィールド。
子供ながら好色な少年で、常に女の子を周囲に侍らせているのだとか。この時代既にピンクい魔法具は結構有るし、多分常用者なのだろう。然し英雄色を好むとは言うが、英雄未満が色を好むのはどうにも好きになれない。
此方は戦闘スタイルなどがナギ・スプリングフィールドにとても類似していて、偶像としてはとても利用しやすいのではないか。女を宛がえばある程度操る事もできそうな、駒としてはかなり使い勝手の良さそうな存在、として評価されていた。
この教師MMの草(スパイ)カ、などと考えつつ、超は思わず頭を抱えた。

いや、コレは良い。ご先祖様に関しては、多少の性格の差くらいは麻帆良に来てから修正してやれば良い。
正しい教育を与えてやれば、人間と言うのは正しく成長する。というものらしい。

さて、そうして魔法世界の情報をある程度仕入れた超は、今度は麻帆良での戦争の準備を整える為、此方の世界での資金稼ぎを行うことに。
彼女にもまほネットを使うことは出来るのだが、下手にマホネットをつかって資材を集めた場合、如何足掻いても魔法使い側にその不審な物流を感知されてしまう可能性が高い。
であれば、魔法を可能な限り排除した、科学による戦力作成。これが今現在最も安定した戦力の補充になると、彼女はそう考えていたのだ。

……ところがだ。

量子力学研究会や情報制御開発団やらを巻き込んで開発した超高性能演算装置スーパーチャオりんを使った経済操作による資金捻出。
コレを使っての資金作成は、当初順調に資金を生み出していたかのように思われた。
ところが、システムの稼動が順調と見、超が少し管理画面から目を離したその隙。超の経済操作システムに抵抗するように世界が鳴動を開始し、気付いた頃には超の資産は元々の物からかろうじて若干増えたか、程度の物にまで戻ってしまっていたのだ。

システムのバグかと超は即座にSチャオりんを検査したが、問題どころかプログラムにミスの一つも存在しない。
一体何がと再び経済操作システムを稼動させるも、再びまるで何者かに妨害されるかのようにそれは失敗に終わる。
何か空恐ろしいものを感じた超は、為らばと為替、先物取引と、様々な手段での資金捻出を目論んだ。……のだが、結果としてそれらの大半は見事に失敗に終わる。

その時点で超は、自らを覆う不可視の手のようなものの存在を感じ、それを探るべく世界に対してハッキングを開始。遮二無二なって探れば、自分の頭脳を持ってすれば敵の痕跡くらい把握は出来るだろう、と。

ところが。何故か世界の現在のネットワーク強度は、彼女が想定していたソレよりも一回り以上強靭なものとなっていた。一般人の使うネットワークでも一回り以上、企業なら数倍。国家に至れば数十倍以上にもそのセキュリティーは予想を上回っていたのだ。
それらを何とかかいくぐり、漸く見つけた国連組織というコトバ。ルートは案の定セキュリティーの甘い、彼女が国籍を偽造した国家のネットワークから。
そうして彼女が侵入したサーバーにあったのは、国際魔法犯罪取締法という文字。
ギョッとしつつ、それら情報を入手する為データを手元にダウンロード。回線を閉じ、改めてそれらデータをチェックしようとしたところで、Sチャオりんが火を噴いた。
「なっ?! ウィルスカっ!!」
慌てて伏せた彼女の背後、Sチャオりんは轟音と共に四散。Sチャオりんの置かれた研究室は派手に吹き飛んだのだった。



コレは間違いなく彼女に対する警告だったのだろうと、彼女は後になってソレを理解した。
理解したが、それでも彼女はとまるわけには行かない。彼女を此処に送り出してくれた、未来の彼女の仲間達の為にも。
――だが、だがどうする?
研究の為、開発の為には資金が必要。だが、資金の捻出は如何足掻いても難しい。
一般的な研究成果の販売では足りないし、目的の時期に間に合わない可能性も高い。
「……ダが、コレしか方法が無いのモ事実カ」
口惜しげに呟いても、彼女は諦めない。
来るべきその日に備え、彼女は再び前へ進むべく、歩みを止めることは無かった。


side Lingyin end



side MAHORA

現在、麻帆良学園は危機的状況に陥っていた。
国家からの税務官の襲来、魔法世界側との連絡の不安定化、下部組織の喪失による収入の低下などなど。
物理的な意味では、麻帆良は平和そのもの。ただ、経済面で言えば麻帆良は既にボロボロの一言に尽きた。
麻帆良と言う土地は、外部に対してとても閉鎖的な土地といわれているが、実際のところ麻帆良ほど外部に依存した土地は存在しない。
その主だった収入源、物流、諸々は外部依存。麻帆良内部での経済流動など、精々資産の減衰に若干の歯止めを掛ける程度の能力しかない。

本来、麻帆良の目的とは、日本と言う土地における魔法業界の統括拠点としての役割が求められていた。
MMの意向を受け、日本に分散するネイティブ魔法使いを統べ、その対価として金銭を得る。
その金銭で麻帆良と言う都市を運営し、其処から得た収益を魔法世界側へと送る。
こうして魔法世界側が外貨を得、本国が潤うというシステムが構築されていたのだ。麻帆良の存在意義としては、他にも魔法世界崩壊後の橋頭堡という意味もあるらしいが、ソレは現在機能していないのでまたおいておく。
つまり麻帆良とは、魔法世界――いや、MMという組織が旧世界側から外貨を奪う為のパイプラインであった、と言うことだ。
何せMM、というか、魔法世界というところは未開にも程がある。人命救助の為という建前で奴隷法を施行するような馬鹿げた世界だ。とてもではないがまともな近代的経済網なぞ育ちはしないだろう。
故の現実世界側からの搾取であったのだが――現在、その搾取の為のラインが完全に破壊されていた。

「何故……」

近衛翁は一人、女子中学校校舎の奥に存在する学園長室で頭を抱えた。
麻帆良学園の運営。其処に発生する使途不明金。MMへ送られたそれらは、当然ながら公的な資料には記載できず、記載された資料は厳重な認識阻害と共に金庫の奥へと封印されていた。
ところがこの危機的状況に訪れた税務官は、非魔法使いであることは間違いないにも拘らず、一瞬でその金庫を見抜き、中から資料を没収していってしまったのだ。
咄嗟に記憶消去でソレを妨害しようとしたのだが、記憶消去は何故か発動する事は無く、近衛翁はただただソレを見送る事しかできなかった。

あの資料が見つかった以上、MMと言う組織がなんであるかは知られずとも、大量の使途不明金を生み出していたと言う事実は周知の事実になるだろう。最早ソレを隠すことは不可能。
であればコレを誰かにかぶってもらい、自らは一刻も早く麻帆良の機能回復に努めなければ――。

そんな事を考えながら、即座に行動すべく手を回す。
――いや、手を回そうとしたところでふと気付く。今、自分の手元に、回せる『手』など存在しない事に。

現在、世界各地に置いたMMの支部、そこが吸収していた土着魔法使い達の組織は、次々と謎の失踪を遂げている。その結果、それまで土着の魔法使いたちが守っていた霊的治安維持がなされず、結果そのしわ寄せが『土地の管理者』を自称するMM系組織へと迫っているのだ。
世界各地で同時に起こったこの現象。最も豊富な人材を抱えていた麻帆良は、この事態に世界各地への職員の派遣を決定。特に嘗ての戦争の英雄と名高い高畑・T・タカミチなどは、本職が教師であったのは嘗ての事かのように、既に年単位で麻帆良に戻ってきていない。
しかもこの土着系の消失現象は着々と進み、徐々にだが麻帆良の人員を以ってしても対応が追いつかなくなってきている。
そんな魔法教師的にも人員が不足している現状、裏帳簿の罪を自分の代わりに被って潰れられる程の重役の魔法先生と言うのは存在しない。
いっその事、一般教師で矢鱈と口うるさい新田教諭辺りを生贄にしてしまうのもいいかもしれないが、残念ながら彼は都市経営部には関わっていない、純然たる教諭職員だ。
内心で小さくしたうちをしつつ、どうしたものかと悩む近衛翁。

この麻帆良と言う都市は、MMの外貨吸収ラインであるが故、そのオコボレを喰らうことで此処まで成長できた。とてもではないが、単一都市としてだけでの成長は見込めるものではない。
此処までこの町を育てたのは己であり、今このような場所でこの立場から降りることはあってはならない。
何とかしなければとは思うが、うまい手がすぐさまは思い浮かばない。
どうした物かとイラつく近衛翁は、そのまま延々と自室の中で管を巻いているのだった。


side MAHORA end







「おい聴いたかよ」
「おぅ。聞いた聞いた。ついに攻撃してきやがったんだろう」

現在、国連軍基地ファウンデーションでは、つい先日起こったサイバーテロの話題で沸騰していた。

「ああ。幸い擬装回線に気付かずにダミーサーバーからウィルスを持ってったらしいが……」
「それでも、つまりコレは……」
「事の始まりが近いって合図……」

そう、超の仕掛けたサイバーアタック。それは実のところ、完全に予期され、見事なまでに回避されてしまっていた。
超は知らないが、彼ら国連地球防衛軍のメインフレーム・マザーコンピューターは集積量子コンピュータ『オモイカネ』『ヤゴコロ』である。従来型のウィルスソフト、魔法による電子精霊問わず、それら全てを圧倒する超越的電脳存在である彼らの前には、その程度の物は最早通用し得ない。
言ってしまえば此処にある技術は300年後の技術相当。たかが100年後程度の技術でそれを知覚するのは到底不可能なのだ。

「――まぁ、それもギリギリだったんだけどな」

何画がかといえば、超の攻撃を受けるまでに最新式の物へグレードアップできるかどうかが、だ。
正直な話、従来型のオモイカネだけでは超の侵攻を防げるかは五分五分であった。嘗てのアレは、ガワこそ頑丈な作りの代物が多いが、中身に関しては俺とリインによって作られている為、偏った技術であったりピーキーであったりとする上に、ソレを改良したのがあのオタ丸出しな転生者達、その中でも頭脳チート持ちだ。
他人に理解させようと言う努力を放棄した元引きオタのような連中だ。他人が使うことなど考えず、何処まで文字分たちに使いやすいように仕上てしまっていたのだ。

便利だからと他人のパソコンの中に用途不明のアプリを仕込みまくるような物である。

で、気付いたときにはメインシステムはスパゲッティコード、操作は凡人お断りシステムという有様。正直コレは拙いかもしれない、何て考えていたところに、名乗りを上げたのは幾人かのUHBの人員。
彼らは自らを「多重トリップ・転生者」と名乗った。
曰く彼らは、このような転生・トリップを各々に何度か経験しており、その中で豊富な研鑽を積んでいるのだという。

先ず最初に問題点を提起したのが高谷理子。
正直何処かで聞いたことあるような名前だなぁ、何て感じつつ、彼女の提起する問題について質問したところ、上述の万人に扱えるかと言うとそうでもないファウンデーションのシステムに関する問題だった。
システムは万全に扱えてこその代物だ。それが万全に使えないというのであれば、この基地は正直な話欠陥機という事に成ってしまう。
そりゃ拙いと、提唱者の理子を主軸に改良計画班を立ち上げたのだが、コレが面子選びに難航。
頭脳チートは何人も存在するものの、その頭脳チートを万全に使いこなせている人間が少ないのだ。
かく言う俺もそうなのだが、回転が速くなりすぎた頭脳を持つと、如何しても「このくらいなら」「この程度なら」とついついオーバースペックに持っていってしまう上、従来の加減というモノが今一つつかめないのだ。

暫く混雑する面々の中で何とかやりくりしつつ、依然として結果の出ないそんな状況。
コレはもしかして拙いんでないか、とそんな不穏な雰囲気が浮き上がってきた最中。3人の人員が手を挙げた。



マサキ、フブキ、ノア、ガイと名乗る4名。――此処に理子を加え、後に武闘派技術班と呼ばれるようになる5人だ。

地味に多重トリッパーであったらしい理子は、ガイナ系世界で研鑽を積んだ『究極の一般人』。一般人として戦い、戦い抜き、その果てに逸般人を超えた一般人に至った凄まじい一般人である理子。
頭脳チートこそ持たないが、その凄まじい研鑽の能力は、『訓練さえ詰めば使える』システムの構築に重要な役割を果たした。

フブキ、本名桜庭吹雪(自称)。外見年齢は20ほどの胡散臭い無表情の女性。
この「ネギま世界の次元世界」に存在していた時点で相当胡散臭い。スカウトしたのは自分なのだが、ソレまで事務仕事において優秀という印象しかなかったのだが、後にこの女をカズのダモーレで調べた所とんでもない存在だという事が理解できた。
三つの特質のうち、二つが制限系・デメリットのみの特質だったのだ。
本人に聞いたところ、今回は転生ではなくトリップで、偶々この世界に訪れたのだとか。
ネギま系世界へのトリップ・転生は何度か経験しており、独自の問題解決法も編み出してはいるが、ソレを口にする心算は無い、との事。
「お前の解決法を楽しみにさせてもらう」とか目に愉悦を浮かべて呟く、なんとも腹立たしい美女である。因みに発言が一々厨二病臭いのは仕様だそうだ。

野亜。本名不明の白い少女。
ノアと呼称されるこの少女。彼女も多重トリッパーらしいのだが、細かいことは分らず、唯一の手がかりが吹雪とこの世界以外での既知だという点。ただ、吹雪が野亜を見た瞬間口元を引きつらせていたので、外見に似合わない怪物である可能性が提起された。
一応カズにダモーレで調べさせたところ、カズは沫を吹いて倒れた。
俺でもそのステータスを聞いた時点で引きつった笑みしか出なかった。うん、アレは忘れるべきだ。
頭脳系チートどころか、コイツもフブキと同じく特質の二つがデメリット・封印系であったのだが、その経験は間違いなく優れたものであるのは十分に予想が出来た為、彼女にも開発に参戦してもらった。

ガイ。紫藤劾。
彼は多重トリッパーではあるが、現在二つ目の世界としてこの世界にたどり着いたらしく、なんと前の世界は宇宙世紀。名前的に派コズミックイラ出身っぽいのだが。連邦軍で技術者兼MSパイロットをやっていたらしい。
カズがダモーレで調べた所、確かに頭脳・開発系の特質を保有していることを確認した。
前述二人に比べ、とてもまともなステータス画面だった為、ぞれを見ていた全員が安堵の息を吐いたのは愛嬌だろう。
MSはとにかく汎用性が重要となる為、彼の能力はとても有用であるだろう事が予想され、実際彼はこの技術班の中核的存在へとなっていった。

そして、最後に。多重転生でこそ無いものの、今すぐにでもトリッパーに成れると多重転生・トリップ組から太鼓判を押された男。――木原雅樹。
そう、木原マサキだ。
彼の特質、その一つに次元連結能力があったりして、更に頭脳チートまで持っているのだからもう手に負えない。
中身が厨二病と言うことも在り、奴と相対・敵対したときは、さすがに俺も死ぬかもしれないと腹を括ったものだ(まぁ、その直後ノアらに力尽くで押さえ込まれて、世界の広さを実感したが)。
しかもこの男、ふざけたことに研究者一族『木原一族』の出身らしく、実家は独自に超能力開発をしているのだとか。木原違いだろう! と思わず突っ込みを入れた俺は間違ってない。
そんな彼は、自らの一族をUHB社に誘い、表のUHBを一気に活性化させることに成功。一定の貢献を残してしまう。故に、後のことを叱れなくなってしまった。

――何を言おうか、この男、UHBの資材を勝手に使って天のゼオライマーを完成させてしまったのだ。
俺が気付いたときには何時の間にかセカンドベースに増設されたドッグの中、そこに佇む50メートル級の巨大ロボットが鎮座していたのだからもう。

ブチキレ掛けたものの、まぁ後々の働きで対価を払うというので、まぁ俺も嫌いでは無いと見逃すことに。
さすがにこれをグレート・ゼオライマーに改造すると抜かした時には殴ったが。
結局GZの開発資金を対価にシステムの改造計画に参加することを承諾させたのだが。


彼ら五人、武闘派技術班が、後にとんでもない成果を生み出すことになるのだが、この当時原作まで一年をきっていた現状、慌しく動いていた俺がその事に気付いたのは、また大分後になってからのことだった。
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21 麻帆良に咲き乱れる。

2012.10.22 (Mon)
そして春。
そう言うわけでUHBの4割が麻帆良への入学を果たした。
一応麻帆良は名門というか、登竜門というか、全国的にも中々人気がある。そのため校舎と一口に言っても、女子中学だけで相当数の校舎があったりする。
UHBから送り込んだ連中の大半は、どうやら近右衛門の勘か、A組周辺――B,C,Dの三組に分散して配置された。一応A組にはアスナやエヴァ、千雨といった此方のエージェントも含まれているが。

……あぁ、千雨は頭を抱えていた。何せ、UHBでも無いのに如何考えても一般人が少ない。というか、逸般人が多すぎる。いや、BCDの三組にUHBの面子が送り込まれて逸般人が増員されているのは理解できるのだが、なぜこのクラスはUHBのエージェントが自分達しか居ないのにこうも逸般人だらけなのか、と。

……まぁ、彼女も大分一般常識を捨てられてきているし、言っているうちに馴染むだろう。……二年の夏休み終わりまで。







で、俺はというと、問題なく麻帆良男子中学校への入学に成功した。
UHBからのエージェントは大半が入学に成功。まぁ、UHBのエージェントって俺達が厳選して選んだから、実際『○○さんじゅうさんさい』とかザラだし。
ただ、問題と言うかなんというか、そういうのが一つ。

「えーっと、それじゃ獅子堂くん」
「ふっ、我にその答えを問うか。良かろう」

そう、この俺の隣の席に座る厨二病……銀髪オッドアイの君だ。
いや、銀髪オッドアイの君と同じクラスになるのは、まぁ一歩譲っても問題ない。何せコイツはUHBに所属しない転生者だ。監視、という意味では同じクラスであるのは、まぁ俺の精神的な面を鑑みなければ悪くは無い。
ただ、いくつか問題がある。

先ず一つ目。
この銀髪オッドアイの君、本名は獅子堂・U・シドー。名前まで痛いのだが、彼こそが我が友エヴァ、アスナ、千雨の三人、いやそれどころか麻帆良の女子生徒を鬱陶しさの極地へと導いたツワモノである。
……のだが、コイツ何故か改心してる。意味が分らない。

「ふふふふふ、如何だ、我の答えは!」
「……その……間違ってる……」
「…………」

カチリ、と固まる空気。
どうも彼、厨二病というか、前世が厨二病で終わってる子らしく、吹っ切れた痛い大人とかではなく、ガチでガキだったというだけらしい。其処までは間近で行動を見ていればなんとか分る。

「……ふ、良くぞ気付いたな。コレは我からの試しよ」
「そか。なら、此処は此方が生徒を試す場所だから、次からはちゃんと答えような」
「フクク、貴様がそう言うのであれば、そうしよう」

サラッ、と髪を掻き揚げながらそんな事を言うシシドー。
まぁ、なんだろうか。女子と違い此方には被害も薄い。こうして第三者的な視点から見ていると、こう、鳥肌が立つというか、背筋がかゆくてたまらないというか。寧ろ自らのうちに眠る黒い何か(歴史)が目覚めそうでヤヴァイというか。

「ふ、王者の気遣いと言うのも苦労する……」
「はいはい、王者ワロス」
「なんだソーマ、庶民の嫉妬は見苦しいぞ?」
「いいから前向いておけ。またセンセに怒られるぞ」
「ふ、常に余裕を持ってこその王者よ」
「いや、授業中の余所見を余裕って」

で、何故か俺はコイツに気に入られてしまった。何故だろうか。
もしかしてアレか? 麻帆良に潜入して、いきなりUHBの面々をかち合わないように考えて、いつの間にか昼休み一人で居たから、同じくボッチだったコイツに同族意識をもたれたか?
それともアレか? 友人作る為の小道具(携帯ゲーム機)の協力プレイに数合わせと言う口実で様子見する為に誘った所為か?
他にも幾つか軽い接触はあったのだが、その程度で気に入られるというのも。

「獅子堂君」
「ふむ、我を呼んだか」
「うん、リベンジのチャンスをあげよう」
「…………」

チラリと奴の首筋を伝う冷や汗は、きっと見間違いではないだろう。
因みに黒板には、コレはペンですか? いいえコレは私の靴です、なんて和文が書かれており、これを英文にするのが問題だ。
Is This a Pencil? No,It's My Shoos
俺も英語は嫌いだが、多分こんなところではないだろうか。
この、何時何処でこんなペンと靴を間違えるのかと言うのは、教科書英語らしいといえばらしいのだが。

因みにシシドーの答えは
[this is Pen? no, it is a syuuz]
だった。色々残念だ。
……いや、ここはもう疑問詞が付いているだけマシなのかもしれない。


さて、シシドーの二つ目の問題点。それは、その能力にある。
許可を得て和弘から蒐集したドラクエの魔法スキル。精霊魔法に近いドラクエの魔法とは、俺の性質上相性が悪い。メラの消費魔力が10と言えばどれ程相性が悪いか理解できるだろうか。その上呪文のレベルが上がるにつれて消費魔力も更に上がっていくのだ。
正直使い物にならない。多分俺の聖王の魔力補正とカズの転生者補正が二重にかかってこうなったんじゃないかと俺は判断してる。そうとでも考えないと口惜しすぎる。ホイミって美肌効果あるんだぞ! リインに連発JK。
げふん。

さて、カズがドラクエの魔法、その中の一つであるダモーレでコイツの性能を調べた所、俺並にチートな存在であることが分った。
奴の特質はこうだ。
1.皇帝特権――本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
※自己暗示のブーストにより、効果時間上昇、使用後の再使用待ち時間が延長される。
※狂化化により作用効果が上昇。再使用待ち時間が延長される。また特殊能力の再現をも可能とする。
2.自己暗示――自らに対する暗示。思い込むことで完治の難しい傷をも無視することも可能。ラカンと同等。
3.厨二病――思い込みによる狂化。思い込みが尚悪化する。ステータスがランクアップ。

もう、俺並、いや俺以上に狙ったとしか思えないほどの特化型チートコンボ。
先ず皇帝特権。コレ自体相当なチートだ。いや、使い方を誤れば雑魚にしかならないのだが、逆に言えば使い方さえ正しく使えば世界がヌルゲーになるレベルのスキル。
で、自己暗示。自分の能力以上のことは出来ない様だが、逆を言えば自分の能力を完全に発揮するスキルだ。しかも「自分の能力以上」を引っ張り出す皇帝特権と組み合わせると考えると、下手をすると素人が湖光の騎士並の剣術を扱える可能性さえ出てくる。
更に更に、厨二病。この名称はどうかと思うが、要は狂化。つまりコレもまた精神を奮起させるスキルなのだ。
ステータスがランクアップし、此方からは読み取り辛いスキルによって多様な戦場に対応する。正直洒落になりません。

……奴の能力をたとえるなら。
例えば奴がいきなりナデポ(ナデてポッ)能力を取得し、厨二病で邪気眼、更に自己暗示で能力がフルスペックで運用されるわけだ。如何だろうか、この恐怖が伝わるだろうか。
つまり、奴の場合邪気眼が本気で邪悪な魔眼になりかねない。一種の爆弾野郎なのだ。

まぁ、幸いと言っていいのか、皇帝特権には使用制限がある。それに対処法も存在するし、発動さえさせなければなんとでもなるはず。その事を思えば、まぁ、うん。

「お疲れ」
「ふっ、我にかかればああの程度容易いものよ」

と言う割には英文一つに結構時間取られてたが。
どうもこの学校でも、小学校の頃から名を馳せていたコイツは嫌な意味で有名人らしく、教師各員もコイツをある意味で好いているらしく、皆が皆コイツを好き好んで問題を当てたりするのだ。
ある意味人気者、ある意味ご苦労様と言うやつである。

「ほれ、多分ここら辺でまたお前当てられると思うぞ」
「おぉ、貴様のノートか。感謝するぞソーマ!」
「ばっ、小声で喋れ!」

哀れに思ってこいつに勉強を教えたり、ノートを貸したりしたのも、コイツに気に入られてしまった一因かもしれない。

さて、そろそろ目を逸らすのはやめて、最大の問題を、如何対処するか考えなければならない。
その最大の問題と言うのは――。

ヴーーーッ……

不意にそんな音が耳朶に響く。咄嗟に隣の席のシシドーの腹を抜き手で突く。
途端に「ゴフォッ」と悶絶して倒れこむシシドーを横目に、勢い良く手を真上に突き上げた。

「センセー、シシドーが調子悪そうなんで、保健室連れて行きます」
「ん? 本当だ、少し顔色が悪いな。よし、それじゃ頼んだぞ、遠藤」
「アイアイサー」

言いつつ、獅子堂の腕を肩に担いで、引きずるようにして獅子堂を保健室へと引っ張っていく。

「……ソーマ、貴様、何を……」
「あれ、気付いた? まぁ、ああでもしないとお前、携帯電話没収されてたぞ?」

今の授業の担当、英語担当の藤咲は地味に耳が良く、携帯のバイブレーターの振動音でも聞こえてしまえば没収すると言う中々に厳しい先生だ。
まぁ、鞄の中にしまっていれば別なのだが、コイツはどうやら先ほどの休み時間にポケットに入れたままにしていたらしく、その音が聞こえてきていたのだ。

「やりかたというものがあるだろう……」
「悪いな、俺は不器用なもんで。……それよりもいいのか? メール読まないで」
「……そうだな。保健室で読む心算だが、件名だけ……む」
「ん? 彼女か?」
「ああ」

ほんのりと朱のさすシシドー。銀髪オッドアイのイケメンのこんな顔、何も知らない女子が見れば悶絶ものだろう。まぁ、コイツは悪い意味でかなり有名だから、エレベーター組みは気にしないだろうが。
そして、最大の問題とはコレ。

――コイツ、彼女が出来てしまったのだ。

最初にその事を知ったとき、俺は先ずパニックに陥った。そしてパニックから回復した直後、UHBに連絡を入れたのだが、そうしたら次はUHBがパニックに陥った。
「悪質な洗脳!」「恐喝」「詐欺」「脅迫」「相手側の精神的疾患」「薬物」「身内が人質に取られている可能性は!」などなど。
このウン十倍の可能性が提起され、言い合っている場合ではないと即座にシシドーの彼女(?)についての調査が行われた。

その結果、『白』。

驚いた事に、ニコポもナデポも一切使われず、底抜けに驚いたことに、完全に自然なオツキアイだったのだ。

しかも更に驚く事が。獅子堂の付き合い始めた彼女というのが、柿崎美砂。そう、未来のA組少女、柿崎美砂なのだ。これにはUHBがひっくり返った。いや、冗談ではなくファーストベースを火星衛星軌道上へ航行させている最中そんなが放送されたもので、舵の操舵を誤って、宇宙空間でベースがぐるっとひっくり返ったのだ。
幸いベースの中は物資のブロック化がなされているので整理はすぐに出来るのだが、あの時は悲惨だった。

「美砂からのようだ。今日買い物に付き合えと」
「ほぉ、デートか」
「全く、気安く我を呼び居って。我をそこらの易い男と一緒くたにされては困る」

そう言いつつも、傍目には浮かれているのが丸分り。何処かほほえましい雰囲気を醸し出している獅子堂。言葉と表情が一切合致していない凄さである。
今年の夏前だったか。何故か獅子堂と仲良くなってしまった俺は、もうどうせだからとついでに獅子堂が何故柿崎と付き合うことになったのか、その切欠というモノを聞いてみたのだ。

「それは――何時ぞやの春先のことだ。夜のコンビの帰りで、不埒者に襲われておった美砂を見つけてな。其処を救ってやった縁だ」

とのこと。
コレは更に後に聞いた話なのだが、何でもそのその不埒者と言うのが、麻帆良の地下ゲートを潜り抜けてきた向こう側の魔獣――いや、魔蟲の一種だったらしい。
あやうく蟲姦という超マニアックプレイを強要されるところだった柿崎女子はそこで獅子堂と知り合ったのだとか。

まぁ、其処からオツキアイに至るまでには更に多々の苦難が在り、その苦難(というか彼女の調教)の結果、今のコイツは大分マシな人材に成長する事ができたのだ。

今のコイツであれば、UHBについても少し話してもいいのではないか、とも思うのだが、何分コイツは視野狭窄の気が異様に強い。下手に情報公開して、それが麻帆良側にバレでもしたらと思うと……。

――本当、どうしたものか。

UHBで議題に提案したところ、「お前に任せる」という結論。
エヴァやアスナ、千雨などの(この世界本来の)住人組にも意見を聞いたところ、「最近マシになってきた様だ」「前ほど声を掛けられなくなった」「馬鹿のままだが救えない馬鹿じゃなくなったな」とのこと。
肝心のUHBのことについては、やっぱりオレに任せるとのこと。
というかそれ、押し付けてるだけじゃね?

まぁ結局はオレが選ぶハメになるのだと思考を切り替え、改めて悩み続け、結局今日に至っているのだが。

「……よし、オレもリインに逢いに行こう」

現在リインはこの地球上にはいない。
彼女は現在、国連軍のIS部隊の教導の他、捕らえた違法魔法使いの更迭、及びこちら側に参画した土着系の魔法使いの組織再編集などの統括をやってもらっている。
俺達麻帆良潜入組の中でも、事務系の人間は麻帆良からデバイスの通信を使った情報交換で手伝いをしているのだが、それでもやはり現地にいる彼女ほどの働きは出来ない。

――うん。リインに逢いに行って、そのついでにちょっと仕事の手伝いもしてこよう。

どうせなら、今日行くときにお土産でも持っていってやろう。
甘いものでも沢山持っていけば、たぶんリインは喜んでくれるだろう。

そんな事を考えて、結局獅子堂のことは後回しにして、その日は日のある内はリインへのお土産を求め、麻帆良を一人ぶらぶらと歩いて回ったのだった。

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やばい

2012.10.13 (Sat)
更新してない。

最近久しぶりにクウガを見てる。昔はなあなあに見ていたクウガ、今見ると中々面白い。
アレだ、特撮ヒーローの面白さもそうなんだけど、同時にドラマとして魅せ方が上手いというか。
仮面ライダーの二次創作……やってみるか?
まぁ、アレはドラマだし弄るのが難しそうだけど。



http://elephant.2chblog.jp/archives/51943034.html
↑が面白かった。
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