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10 終わりの始まり

2012.07.16 (Mon)
「やぁやぁ。漸く見つけたよ。君たちだね、ボクの作った箱庭で勝手に遊んでいたのは」

それは突如、空間から滲み出すように、沸き立つ泡のようにして現れた。
見た目はスーツに実を纏ったキャリアウーマンの様で居て/その凶悪なる炎の三目は見る物全てを呪い愛する魔王の姿であった。

「よう、初にお目にかかるよ、混沌」
「――リアル(胸が)膨れ女」
「あははっ、この姿は九郎クンが喜ぶかなぁ、と思って取ってるんだよね」

そういって手を口に当てて笑う混沌。
厭違う。その姿形こそ笑って見せているが、その実は此方を興味深そうに観察していた。

「ふむ、何時気付いた?」
「さて、何時だったか。数億周前くらいだったかな。面白い存在がいて、折角だから物語に正式に組み込もうかな、なんて思ったのに、不思議な事にボクの意図/糸を意にも介せず自由に振舞う存在が居る、って気付いたのは」
「――ドクターの件か」

ドクター……ドクター・ウェスト。
彼の元で学んだ事は、間違いなく昨今の俺の糧となっている。
今の俺を形作る上で、彼の元で学んだ事はとても重要な部分だろう。

だがしかし、彼は原作キャラ。物語の重要なキーパーソンだ。普段はとてもそう思えないが。
悪では有れど、唾棄すべき邪悪でもない彼等。欲する物を求めて必死に足掻く彼は、ある意味最も尊敬すべき“人間”なのかも知れない。
しかし、彼に接触した事で、ナイアルラトホテップに勘付かれてしまったという点を鑑みれば――いや。
彼の元について、目立ちすぎた。俺の責任、か。

「んじゃ、どうして此処が解った?」
「簡単なことさ。キミは最後に白の王と黒の王の道を使い、次へと移動していた。だからこそ、此処で網を張っていたのさ」

予想以上に時間は掛かったけどね、と混沌。
成程。――過去転移ルート、次の周のスタートが楽に成るからと使いすぎたか。

そう、此処は門の中。門にして鍵たる神、ヨグ=ソトースの回廊の一角だ。
遠目に見えるのは魔を絶つ剣とリベル・レギス。
その戦いは若干デモンベイン不利で進んでいる。これは――駄目だな。

戦いはまだまだ続く。物語の終わりはまだまだ先が長そうだ。

「それで、俺に何の用だ、混沌」
「またまた、解ってるんだろう?」
「言葉による意思疎通は、人の重要なコミュニケーションツールだ。その姿をしているなら、ちゃんと言葉を使え」
「おやおや、中々厳しいねキミは。まぁいいさ。用件は単純に、退去勧告だ」

そう言ってニヤニヤと笑う混沌。ああ、俺にコイツを殺し切るだけの力が在ればなぁ。

「当然ながら、断る」
「だよねぇ。ま、そうなれば当然力尽く、って事に成るんだよね」

にこりと、ゾワリと。
まるで花が咲くように/沸き立つ死臭のように微笑む/微嗤む〔邪神〕。
虹色にして無色の狭間を染め上げる漆黒の混沌。
全てであるが故に何者でもない怪物が、此方に向けてワラッていた。

「は、大人しく倒されるほど俺は大人しくも無いぞ、混沌」
「どこぞの魔導師ではないですが、踏み潰すぞ、邪神」

「ハ、ハハ、ハハハハハ!! 懐かしいなぁ、彼を持ち出すなんて。ああ、懐かしいな。まさか人にして魔導に身を落とした『だけ』の分際で、ボクの黒き王を千日手にまで持ち込んだんだから。けど、まさかあれを観測して記憶していられるなんてね」

フンと鼻を鳴らしておく。ち、カリンには後でオシオキだな。敵に余計な情報を渡す必要は欠片も無いんだけど。
――まぁ、いいか。

「来い、クラースナヤ」

呟くと共に現れる深紅のデウス・マキナ。
何者でもないが故に此処にある深紅のそれ。
その内側に収まると共に、普段は押さえ込んでいる力を稼動させる。

「ほほぅ、コレは中々。中級神
ダゴン
くらいの力は在るんじゃないかい?」
「ふん、催しはまだ始まったばかりだぞ」「精々愉しめ、邪神」

言いつつ、右手に籠めるのはクトゥグアの魔力。
無作為に放つのではなく、只一点に凝縮する事で、その拳が持つのは無限の熱量へと変化する。
レムリアインパクトの極点、圧縮消滅するその直前の熱量にも等しいほどのそれ。それをむき出しのまま、邪神へ向けて殴りつけた。

ニャルラトホテップはといえば、それを余裕の笑みを浮かべて片手で受け止め――ようとして、思い切り叩き飛ばされていた。

このチャンスを十全に生かすべしと、即座に魔導師の杖を召喚。

「スペル・ヘリクス!!」

――大地はその偉大なる懐を母とする。
――大海はその広大なる海原に命を抱き。
――生まれ出でた風は空を走り。
――炎によりて世界は廻る。

「四門神獣形態っ!!」

土、水、風、炎、其々のエレメンタルを調和する形で配置し、“杖”により撃ち出す。
純粋な西洋魔術では相克しか起こさないコレを、東洋思想をもって制御する。
己が一撃必殺、命の審判。

最初の一撃で思わずか自らの本性をあらわにしていたナイアルラトホテップは、迫り来るその一撃をなんとか受け止め、然し受け止めきれずに咄嗟に身をかわすことでその直撃を防いで見せた。

『ば、ばかな!? たかが人間がこのボクに傷を付けただとっ!? いや、それよりも何故人の攻撃がボクに通じる!?』
「ざまぁ見晒せ!!」
「貴様はそうやって上から見下していろ。その間にお前は滅ぼす」

俺には物語の力なんて無い。

世界のバックアップなんて物も無い。

在るのはただ無限に繰り返される時間と、最高にして最愛の我が相棒。

そして俺にあるのは、只我武者羅にぶつかるという選択。

「コレで解ったとは思うが、此方にはお前を滅ぼし得る力が在る」
「そして、喧嘩を売られて無傷で返すほど易しくも無い」
『ば、馬鹿な。クトゥグアやシュブ=ニグラに、それにこれはハスターとクトゥルーの魔力!? なんであの2柱が一人の人間に、しかも同時に力を貸す!?』

力を籠めて、混沌を睨みつける。
流石の俺も、此処であの邪神を滅ぼしきれるとは考えていない。出来て精々力の半分を削ぐくらいだろう。

「あまり人間
ヒト
を無礼
ナメ
るなよ、混沌」
「言ってみたかったんですね解ります」

でも、それで十分だ。俺がこの世界に与えた影響と、俺が削れる邪心の影響は大体同等。
ならば、俺の成すべき事は只一つ。

「行くぞカリン」「ハイマスター!」

俺、カリン、クラースナヤ。今此処には揃いうる限り最高の三位一体がある。
今の俺達に、勝てない存在なんて在る筈が無い。

――カチリと、頭の奥で、その瞬間何かが繋がった。
瞬間、理解した。成程、これが俺の本当のチートか、と。
そうして同時に理解する。コレが原因でループしていたのか、と。

『なっ、馬鹿な!? 何だその力は!? ボクの知らない力!? ――いや、違う、ボクはそれを知っているぞ!! けれど、そんな、まさか――――穴か!?』

高まる余りの力の顕現。波打つそれは、俺/カリン/クラースナヤの境界を曖昧に――否、本当の意味での三位一体をその場に顕現させて居た。

『そんな、馬鹿な!? なんでこの、僕の管理するクラインの壺の中で、よりにもよって『穴』だとっ!!?? 人類の極地、此処ではない何処か、無限にして零!! たどり着いたというのか、よりにもよってこのクラインの壺の中で、僕の生み出した箱庭で!?』

「誰が言ったか、この世は全て胡蝶の夢。貴様の敷いた悪夢の庭であれど、其処に生きるのは今日を生きる人々。為らば其処には希望の夢が響くは必然」
「其処に命の唄が響く限り、私たちに終わりは無い」

そのまま驚く混沌に、クラースナヤの右手の一撃を叩き込む。
混沌は咄嗟にそれを片手で受け止めようとするのだが――ガツン、といい音と共に混沌の化身は勢い佳く吹っ飛んだ。

『な、何故!? たかが神の影風情が!?』
「ブァーカ!! これを只の神の影
デウスマキナ
と同一視してるんじゃねぇよ!」

何せこの機体――というか俺は、旧支配者らから直接祝福やらを受け、それを取り込み進んだ俺の
・・
影だ。つまり、幾柱もの神の影と言葉を重ねて顕現しているこの機体は、下手な神よりも格上であり、同時にコイツは俺の写し身。例え神様だろうと消せはしない。

――で、あえてわざとらしく盛大に格好つけて混沌を見下してやった。

「要するに、イレギュラーザマァwww」
「邪神――NDK
ねぇどんなきもち
?www」

『――ふ、ふふふ、あははははは!! まさか、真逆
まさか
真逆
まさか
、こんな展開になるなんて』

頭痛を堪えるような、そんな姿が幻視出来そうな混沌の声。
ふふふ、流石の混沌といえど、この超展開に精神的ダメージは隠しきれまい。
混沌に精神攻撃は意味があるのかって? んな事趣味以上の意味は無い。



「さぁ、騙り逢おうか、混沌――主に暴力言語で!」
「SAN値直葬してやんよ!」
『じゃ、ボクはあえてこう言おう――こんなの絶対おかしいよ!!』

そうして、時空の片隅、ここではない何処かで。
方や黒き混沌が名伏し難き叫び声を上げ。
方や赤き喜劇の紡ぎ手が咆哮を上げた。

この死すら死せる時の狭間、その戦いが何時まで続くのかは、両雄そのどちらにも知れた事ではなかった。




実は最後のコレをやりたいがために書き始めたこの過去編。
ナイアさんにコレを言わせたいだけだった。
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コメント
そんなの絶対可笑しいよ!

むしろこの続きが見たいと思うのはなぜだ。
夜霧 | 2012.07.30 03:57 | 編集
どうもにじファンから読ませてもらってます田んぼの英雄です。

少し遅くなりましたが、お引越し乙です。

これからも主の作品を楽しませてもらいますね。

でわでわ

最後に一つ:
???「わけが分からないよ。」
田んぼの英雄 | 2012.08.03 23:58 | 編集
面白かったけど、正直結末はしっかり書いて欲しかった
デモンベインも最期は戦いはまだまだ続くって終わり方だったけど、あれあくまで
一連の戦いの結末をしっかりつけた後の後日談だったからまた違うものだしな
なんかこの終わり方だと上手くまとまる結末を思いつかなくて投げ出したように見える
| 2012.11.12 09:14 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
| 2013.02.18 15:30 | 編集
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