FC2ブログ

20 閑話7 1.安価「麻帆良にいくかいかないか」 >>4。

2012.08.21 (Tue)
4.行かない



「と言うわけで、俺は麻帆良に行きません」
「「「「「「「「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」」」」」」」」
「だって男子校なんて行きたくないんだもん!!」


……何言ってるんだろうあいつ。
クラン・F・マクレミッツのそんなコメディーを遠目に眺めながら、書類をさっさと書上げる。
男性版ダメッ――げふん、バゼッ――いや、ダメットでいいのか。――なイケメン、クラン。宝具まで実用化してるチートなのに、なんでああもコメディーマンなんだろうか。ノリとしてはランサーっぽいし。
因みに生活能力は一般的なレベル。残念ながらダメではない。

「はーい、書上げた人から封筒に入れて、ご両親に提出する事ー」

幽香の声に、はーいと声を上げるPXのメンバー。
何処の小学生だと突っ込みを入れようかと思ったのだが、よく考えたら俺らって小学校6年生だし。

さて、今回こうして書上げている書類なのだが、コレは要するにUHBに所属する人間が麻帆良へと潜入する為の資金的支援を行う為の補助を出す為の書類だ。
UHBに所属し、俺と同年代――つまり原作ヒロインたちと同年代の我々は、麻帆良へ潜入するという選択肢が存在する。いや、年上の場合でも高校大学に入学するという選択肢がある連中もいるのだが。
でまぁ、我々UHBに所属する面子というのは、大半が麻帆良へ入学することを希望した。
入学しなくとも仕事はあるし、別に入学を強制しているわけではない。
ただ、我々の目指すイベントの成立には、麻帆良に在籍している事が有利に繋がる。
――それに、折角ネギまに着たんだから、どうせなら麻帆良に所属してみたい、なんて連中も多々いるわけで。

ただそうなると、問題はUHBに所属する低年齢層――中学に入学する年代の人間と言うのが、要するに小学生で、更に所在地が麻帆良に限らず、日本全国、それどころか世界を超えて、魔法世界在住の人間なんてのもザラにいるのだ。

そこで使うのが、UHB社の権力と言うものだ。
最初は単純に、デバイスの再現の為だけに立ち上げた会社だったんだけど、いつの間にかソコソコの規模の会社になってたからなぁ。折角なので利用できる権力は利用する。
つまり、社員割り――いや、まぁ、正式には社員と言うわけではないのだが、UHB社の補助と言う形で麻帆良入りを支援する、ということだ。

先ず、ウチでスカウトした人間の身元を明確にする。
地球、現実世界に戸籍がある人間はいいのだが、魔法世界にしか戸籍のない存在というのもウチに所属している。そうした場合どうするかと言うと、主には伝手を利用した戸籍の容易だ。
例えば国連だとか、某大国だとか。ISの販売で各国にはある程度のパイプが出来ている。此方に貸しを作ると思えば、割と安いものだと大半がそれを受け入れた。
そうそう、戸籍関連で調べたときに気付いた居のだが、超鈴音は既に戸籍を用意したようで、既に麻帆良に渡っている事が確認された。
エヴァからも報告が上がってきているし、魔導師としての技術意外、魔法使いとしての技術開示は許可しておいた。さすがに魔導技術を導入したガイノノイドとか、相手をするのは辛すぎる。

……あぁ、そうか。超鈴音についても調べなければ。彼女がどのような未来から、どのような目的を持って此処に着たのか。
原作の通りであるならば、彼女は未来の平行世界からの来訪者であり、もし我々の存在を知っているのであれば、この未来からの来訪者という事に成る。
まぁ我々にコンタクトを取って来ないという時点で、平行未来の彼女――つまり、原作沿いである可能性は高いのだが。
であれば、きっと彼女はスプリングフィールドについても調べているのだろうか。
情報規制でそう簡単に情報は手に入れられないだろうが、それでも五つ子と知れば……。
くくく。

げふん、話が逸れた。
要するに、そうして戸籍を用意し、ついでに入学の為の補助を会社として行うというのだ。
細かい所は政務部が何とかしてくれるらしいので俺は知らないが、この書類を出す事で、寮生活におけるかなりの負担が軽減されるのだそうだ。
まぁ、その代わり将来はUHBへの所属が求められるが、そもそもUHB所属だし。
こうしてUHBの補助を受けることで、結果として各員の家庭に麻帆良への留学を許可させる、と言うのが最終目標。
此処に所属している連中はある程度融通が効く連中が多いので、大抵は上手くいくと思うのだが。

「クラン、お前は麻帆良が何故嫌なんだ?」
「だって、男子校だぜ!? 出会いが少ないだろう!!」
「その認識は間違っている」

そう、その認識は間違っているのだ――っ!!

「そう、例えば此処に男子校がある。男子校では女子がいない。それは事実だ」
「う、うん」
「が、それ故に男子校の連中は女子に対して活発にアピールを行う。まぁ、たまには衆道に入っちゃう連中もいるらしいが」
「シュウドウ?」
「知らなくていい。検索もするな。さて、そうして男子校の人間と言うのは異性に飢えるわけだ。此処まではいいな?」
「お、おう」
「宜しい。では、その逆が無い筈が無いとは思わないかね?」
「???」

首を傾げるクラン。そしてそれは、周囲の男子連中も――あぁ、女子連中は苦笑している。まぁ、此処に居る女子連中って中身は「ピ―」だからなぁ。

「……相馬?」
「ひっ、な、何だケント」
「何か不快なことを考えなかった?」
「滅相も無い」

なんでこう、女子連中は異様に勘が鋭いのか。
きっと普段からそういう事を言われないかと思考が陰険な方向に……

「相馬」
「はっ、問題ありません」

殺気を含む視線が増えた。これ以上は拙いので、話題を元に戻そう。

「さて、つまり俺が言いたいのは、女子校の連中も、異性に対して飢えているのではないか、と言うことだ」
「「「「「「「「「「お、ぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」」」
「だ、だが俺達が行くのは男子校だぞ!?」
「そう、麻帆良学園都市に存在する、男子校だ。そして麻帆良学園都市には、男子校と並んで女子校も存在する。この意味が、分るか?」
「「「「「「「「「「ゴクッ」」」」」」」」」」
「麻帆良学園都市は、ある意味それ一つで一つの街として成立している。つまり、放課後土日休日なんかは、殆どが学園都市内で用事を済ます。……さて、それでは男子校、女子校の生徒は別の場所で生活するのか? 否! 断じて否である!」

反義語表現。演出参考文献は「はじめてのコロニー落し」から。著者? 野暮な事聞くなよ。
因みに勿論握り拳は握っている。

「「「「「「「「「「お、おぉ!!」」」」」」」」」」
「確かに男子女子校に分かれた麻帆良では、学園内においての出会いは少ないといわざるを得まい。然し、然しだ! その外、麻帆良学園と言う限定された土地において活動することになるその実! ある意味では、ただの同級生同士よりもアピールポイントは高くなる!」

期待値の加算による、カリスマ値の一時ブースト。
簡単に言うと、女子校という閉鎖社会において、外、つまり男子という異性に対する興味、これを期待値として現実に加算することで、一時的に彼女等の視界に映る自分をよりよく見せるというモノ。
もっと簡単に言うと、恋に恋する乙女を釣るという事
まさにげどうである。


「「「「「「「「「「お、おぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」」」」
「と言うわけだ。まぁ、如何してもお前が嫌だというなら強制は「書けたぞ! コレで頼む!!」しない……いや、それを親に出して捺印を貰って来い」

さっさと意見を翻したクラン。なんとも現金な奴だが、まぁこういう奴も居て楽しい。
因みに周囲を見回せば、何故か先程よりも書類記入に熱が入っているように感じる。
……あぁ、周囲の女性陣の視線が冷たい。

「そんじゃ、俺これを親に出してくるわ」「あ、俺も」「俺も」

と、ある程度書き進んだのだろう。誰かがそう言うのを皮切りに、俺も俺もと次々と転送ポートへと男たちは去って行った。

「――因みに聞くのだけれど、今の話って本気?」
「無論、半分程度だ」

そっと聞いてきた幽香に、苦笑しながらそう漏らす。
だって、正直に考えてみて、中学生程度の小娘が異性に対して其処まで飢えているだろうか?
確かに興味は持っているだろう。が、あくまで興味程度。
恋だの愛だのというよりは、恋に憧れるというレベルの代物だろう。いや、少女共の恋愛観を否定するわけではないのだが。
正直、あの連中なら麻帆良の少女達よりも此処の年齢詐欺連中のほうが話題とか合うと思うし。
――っ、睨まれた。思考すら除かれるのだから此処は恐い。桑原桑原。

「……アンタも中々下種よね?」
「酷い言われようだ。否定は出来無いが。ただ、完全な嘘と言うわけでもない。『恋に恋する少女達』はいるわけだし、色恋沙汰は無理でも、恋愛ごっこくらいは行くだろうよ。まぁ、縁があればそのまま――と言うことも無きにしも非ず」
「ふふふ、でも、もし私たちの計画が成就すれば……」
「まぁ、一般人に被害が出ない様には注意するが」

一般人以外には相当厳しい事になるだろうが。

「まぁ、大丈夫なんじゃないか?」
「………………」

まぁ、問題が起これば起こったで、ちゃんと我々としてもケアは行う心算だ。
何せ俺達が目指すのは、悲劇の回避。大きな悲劇の回避のために、小さな悲劇を生み出すようでは本末転倒でしかない。

「まぁ、アンタがそういうなら、私は何も問題ないわ」
「そうか……」
「って、何処行くのよ?」
「ん、少しゼロベースの様子を見にな。あそこもある程度チェックをしておかないと」
「ゼロベース?」

ゼロベースは、要するに一番最初に作った、0番目のベースのことだ。
因みに此処はファーストベース。
ゼロは現在折れ個人の所有となり、ファーストはUHBの転生者組み及び上級幹部のみ。セカンドはUHB所属で、ある程度以上身分証明が出来ている人間のみの入場が可能となっている。
因みにゼロベースの存在を知っているのは、UHB内でも始まりの四人とそれに連なる少人数くらいだけだ。

更に付け加えておくと、現在俺の相方であるリインはセカンドベースにて国連軍との折衷補助を行っている。
俺以上に事務能力が高く、しかも可愛らしい女の子だ。UHB社側ではとても人気だそうだ。因みにリインにチョッカイを出そうとした馬鹿は俺が始末しているのは余談。

「あぁ、あそこの事……」
「前々から改修してたんだけど、漸くそれが終わってな。ついでに新兵器だとか色々作ってたら完成が今になったわけだ」
「へぇ、改修ってなんでまたアレを? 確かアレって、色々問題が出たって……」
「その問題ってのがチョット面倒でな」

つまり、ゼロベースは開放するには少し性能が良すぎた。
もし万が一、俺の手を離れてアレが暴走した場合、相当規模の次元真が発生する。そうでなくてもアレ一機、使い方を誤らなければ世界征服も容易いのだから。

「……それは、また」
「改修ってのは、まぁ汎用性を下げて俺とリイン専用にして、少人数で運航可能にしつつ、ファーストとセカンドのデータからフィードバックして、な」

現状のアレは、ファーストやセカンドに比べればサイズとしては一回り小さい。が、その性能は延々と俺が改造し続けているだけ有って、かなりの代物に仕上がっているのだ。
一応ミズチには報告しているが、あいつも俺の趣味を知っているだけあって黙認してくれている。
俺の趣味――つまりは、灰スペックの追求、ネタ装備の開発だ。

「興味があるなら見に来るか?」
「いいのかしら?」
「あぁ、問題ない……って、レンもくるのか?」
「(コクリ)」

と、幽香と会話していたらいつの間にか近寄ってきていたレン。
その手に持つのは、彼女のアームドデバイス、白猫偃月刀。AIはツンデレの白猫だとか。

「……さ、さっさと行きましょうか」
「………」

何故か仕方ないわね、という表情の幽香と、幽香のその腕にくっ付いて、なんとも言い難い表情をしているレン。
まぁ、良く分らないがとりあえずさっさと行く事にしよう。

「んじゃ、ゼロベースへ」

言いながらゲートをくぐる。白い光に包まれて、ゲートを通過するとき、何か小さな声が聞こえたような気がした。













「で、こうしてゼロベースを改造したわけなんだけど」

具体的な改造はというと、コレまではある程度の規模を用意しておいた生活スペースを狭め、精々屋敷が一つ入るくらいまでにした。
そうして出来たスペースの大半をドローンやリアニメーターの格納庫にし、作業力の増強に努めた。
また元々造船所としての機能を持っていたゼロベースだが、このドッグを改良し、更に扱いやすく、尚且つ作業効率が高まるように改修したのだ。

「でも、此処を改築して何か在るの? 此処の目的って、そもそも次元航行艦の造船の為でしょ?」

幽香の言う通り、このゼロベース――初代ベースは、そもそもL級時空航行艦の建造のために用意した施設だ。
時空基地と言うよりは、時空航行艦造船所と言う面が大きいこの施設なのだが、後続機であるファースト、セカンドはその機能を一応程度にしか継承しておらず、アレはどちらかと言うとドッグ艦といった意味合いに近い。
L級艦の格納及び修復は可能だが、開発は厳しい、といったかんじか。
それにあそこは既に秘密基地というよりは、秘密組織の駄弁り場になってしまっている。
いや、セカンドベースは一応重要な、UHBのメインフレームやら色々重要なものがおいてあるし、社員さんや国電軍側の上級士官なんかも入ってきて一緒に共同研究をやっていたりとかなり重要な拠点なのだが。
……ファーストはなぁ。駄弁り場だしなぁ。

「んー……まぁ、百聞は一見にしかずというか」


言いながら、奥の格納庫へ移動。そうして認証を通り抜け、一番奥に存在している格納庫へとたどり着く。

「また、えらく奥にあるのね」
「??」
「あぁ、だって考えても見なさい、此処にこれるのは基本的にUHBの人間だけ。秘匿のために守りを固めるっていう考え方は理解できるんだけど、そもそも此処にある時点で守りは十分なわけよ」
「……此処は、実は大昔、俺が此処を作ったときから存在しててな。此処の内容は他の三人にすら隠してたからなぁ」

故に外側に置く、というのも特に問題は無い。……無い、のだが、それでもコレの守りだけは有る程度気をつけておかねば成らないのだ。
最後の扉、其処に敷かれたタッチパネルに手をおき、最後の文言を唱えた。

「I am providence」
「ちょっ!?」

声を上げる幽香の前、静かに、ゆっくりと、目の前の扉が開いていく。

「その文言に、扉の獅子の記号……冗談よね……?」
「いや、割と本気で作ってみた」

開かれた扉の中。其処にあるのは、機械の残骸の群だ。
先ず一番最初に目に付くのが、未知のど真ん中に鎮座する銀色の台座。
五芒星と獅子の描かれたそれは、まるで儀式の祭壇のような奇妙な威圧感を放っている。そしてその周囲に漂う同様の祭壇、その残骸。どうやら開発中に壊れたか何かで、中から銀色の柱が飛び出したままその稼動をとめてしまっていた。

そして次に目に付くのが、巨大な盾のようなもの。その表面にはクリアな物質が張り巡らされており、仄かに漂う魔力の気配からそれが魔法物質であることは創造に易いだろう。そしてその透明な物質の中を輝く文字が漂っている。見るものが見れば、それが魔法式であることに気付くものも居るかも知れない。

更に奥に行くと、次に目に入ったのはコンピュータの塊だ。
水銀のようなものの入ったポッドを中心に、まるで人の形を取ったかのように繋がれたコンピュータの群。
稼動はしていないらしく、まるで機械でできた躯のようにも見えなくは無い。

更に奥に行く。そこにあったのは、人が着込むことでその動作を延長するパワードスーツ。
ISが存在するというのに、何故こんなモノがと首を傾げる幽香は、更に奥へと脚を勧め、その後を何時ものようにレンが追いかけていく。

次に現れたのが、ヒトガタのロボット。
無骨な角ばったそれは、然し如何見てもロボットと呼称されてしかるべきものだ。
全長は大体8~9メートル弱。

「……これは……」
「セミ・マスター・スレイブ方式の……まぁ、アサルト・スーツ……略してASだな」
「私は突っ込まないわよ!!」
「…………」

何かレンが物凄くキラキラした目でASを見ていた。何かツボに来るものがあったのだろうか。


そうして、更に奥へと進む。
ゴロゴロと転がる大小さまざまな金属の塊。元素変換による新素材開発の名残であり、同時に魔法的物質の開発でもあるそれらは、所々から魔力の残滓を発生させている。

更に奥へ。
其処にあるのは大小さまざまなエンジンだ。ISでも補助として用いられている魔力スラスタ。それを大型化・高出力化した代物で、それこそ時空航行艦くらいにしか用途の無さそうな代物だが、そもそも時空航行艦はスラスタ制御ではなくベクトル制御による代物だ。
故にコレの存在は、知らない人間にしてみれば一層のなぞでしかない。

更に奥にいこう。其処にあるのは、この近隣の次元世界を巡り集めたロストロギア。
どうやらこのネギま世界の周辺にも他の世界と言うのは一応存在しているらしく、そうした世界の中でも人の反応が無い世界を巡って物資蒐集を行っていた際に発掘した代物などが納められている。

奥へ、奥へ、奥へ奥へおくへえおく奥奥奥奥!!!

次々と現れる異形の魔法、機械の群に、どんどんと幽香とレンの顔色は悪くなっていく。
それはそうだ。此処は、モデルとなった彼の施設ほどではないが、内側にいろいろな物を溜め込んでいる。

その多種多様な魔力はこの最奥の結界の中で混ざり合い、ある種の瘴気に近いものを醸し出している。彼女等が此処に違和感を感じても仕方あるまい。
まして、この瘴気と言うのは人を汚染する。相性がいいものなど特にだ。
防護を施していた俺やリインでさえ、この瘴気の影響で若干ではあるが変質しつつあるのだ。
ある程度変質してしまえば、此処の空気から受ける影響は減るのだが……まぁ、もともとの性質が光寄りの彼女達なら影響は少なかろう。

「さて、そしてコレがこの秘密格納庫の目玉だ」

そうして紹介するのは、鋼の躯。
此処に至るまでのすべての技術を集結させ、じっくりと形を築き上げている、未だ生まれぬ鋼の躯だ。

「これは……まさか、本当に?」
「ああ、そうだ。これは……」
「――デモン、ベイン?」

ゴゥ――――――

珍しくレンが声に出して小さく呟いたその途端、世界が震える。
目には見えず、風すら揺らさず、ただ世界だけが静かに揺れる。

「――っ、な、今のは……!?」
「名前を呼ばれたから呼応した、んだろうな」
「そんな馬鹿な!? 出来る筈がない!? ありえないでしょう!!」

鬼のような形相で、怒りに溢れたその声。まぁ、俺とて気持ちは分る。
コレが存在しえる筈は無い。俺だって、コレを作るつもりなんて欠片もなかったのだ。

「……如何いうことよ」
「事の始まりは、来るべき戦いにおける、魔法触媒の研究だった」

俺達の起こすイベント。それは、とあるイベントを乗っ取る形でなしえる事を計画している。
然しそのイベントにおいて、現状の計画では『乗っ取る』という部分の比重が大きく、いざという時、此方から持ち込むシステムによるサブプランの計画が必要ではないか、という考えが浮かんだのだ。
が、これには通常の魔法触媒では力が足りない。デバイスをその触媒とするには神秘が足りず、魔法使い連中の“杖”でさえ神秘が足りなかったのだ。
このこと事態は他の三人も承知しており、コレにより俺の魔法触媒の研究がスタートした。

が、当初研究は上手く行かない。それも当然だろう、我々が扱うのはミッド・ベルカの魔法式を基準としたシステムだ。其処には神秘の介在する隙間など無く、ただ無常なまでの哲理があるだけだ。

……そう、其処までは確かに俺の意志があった。
ただ、其処からが分らない。本当にそれが俺の意志だったのか、それとも何か外からの干渉を受けたのか。



先ず最初に思いついたのが、過去次元世界で物資蒐集を行っていた際に発見したロストロギアによるもの。
一言にロストロギアと言ってはいるが、実際のところこのロストロギアというのは科学以外の、それこそ呪物のようなものまで入る。要するに、現代の自分達の技術では解析不能な力、と言う部類なのだ。
そうして見つけた幾つかのロストロギアのうち、何とか解析可能なものを分解再構成したのが、あの銀の祭壇だ。
機械式のあの祭壇は莫大な魔力/術式の制御基盤となると共に、そこに凄まじいまでの神秘を付与する。これは『祭壇』と言う属性を受けてのものだというのが俺の見解だが、多分にオカルトが入っているため信憑性は薄い。

更に集め続けたロストロギア。その中に、ロボットのようなものを見たときにひらめいた。
日本にはヒトガタという、人形を人に見立てることで、それを触媒として呪を行う見立て呪詛というモノが存在する。またそのほかにも、東西問わず『人形には魂が宿る』とされることが多いのは事実。
であれば、もしかするとヒトガタには神秘が宿るかもしれない。
其処から、ロストロギアから引き出した技術を元に、ロボット工学の研究が始まった。とは言え、俺の手本としたものはロストロギア、魔法……いや、神秘の再現を最終目標とする魔術寄りの代物を手本としたものだ。どちらかと言うと魔導工学になるのだが、実際完成したのは多量の魔力を動力とする機械式のゴーレムのようなものだ。

この『銀の祭壇』と『機械式ゴーレム』の二つが揃った時点で、計算上では相当の神秘が得られることが分かり、俺はそのままそれらを組み合わせた機体の設計に入ったのだ。
……この、秘密ドッグで。

まるで狂ったように進む自らの腕。それを不思議ともなんとも思わずに、俺の腕はただ設計図を書上げていく。
俺と言う無限機関を銀の祭壇で制御し、その神秘を機体にめぐらせ、更に俺とリインの二人で機体を制御する。

「最初は、俺とリインの二人乗り……精々全長18メートルとか、そんなサイズの機体を作るはずだったんだ」
「何を……現に此処にあるアレは、未だ未完成でも60メートルはあるじゃない!!」
「そう、そうなんだよ。何時の間にああなったのか。俺にもわからん」

気付いたときには、俺が最初に想定していた設計図は何処にも無く。
それどころか何時の間にか魔力式のスラスターの設計図や、呪術的な仕組みの施された演算装置とやらや、他にも呪詛伝導物質やら、一体何処からそんな構想が浮かんだのかと言うような設計図やら構造図なんてものがいつの間にか俺の端末に溜まっていった。
そしてそれはありえないことだ。確かに現在の俺は、人を半ば辞めてしまっている為、頭脳の演算能力と言う部分では常人のそれを軽く圧倒している。
だがしかし、果たして俺は此処まで突飛な発想を出来るような、そんな脳のつくりをしていただろうか?

そんな疑問は後から浮かぶだけで、その当時俺は何の違和感も無くその研究開発を継続。そうして研究開発がスタートし、様々な試行錯誤を繰り返したその結果、いつの間にか此処は魔窟へと変貌を遂げていた。

「……」「………」

顔色の悪い二人を連れて、この秘密ドッグを後にする。一応このゼロベースにも生活スペースは存在しているので、其処に連れ込み、俺の唯一飲むハーブティーを出し、それを飲んで落ち着かせた。

「……まぁ、多分大丈夫だと思うんだけどな」
「なんでよ!? だって、アレがあるって事は、あの神話だって……!!」
「いや、それは否定は仕切れないが、とりあえず此処には関係ないと思うぞ」

幽香の理屈としては、此処にデモンベインがある。それは、デモンベインが必要とされる事態が起こりうるというもの。
その中で彼女が最も恐れているのは、かの機械仕掛けの神が生まれる物語。其処に存在する邪悪な神性と、それにまつわる魔術と呼ばれる世界を捻じ曲げる力。
我々転生者の能力を見るに、確かにこの世界では図抜けたチート具合ではある。が、あの世界観の魔術って、そういうチートをいかに騙し後ろから汚染するか、見たいな部分があるからなぁ。しかも公式がチート。希望は少なく、大半が絶望なのだから。

でも、これは俺の直感なのだが、多分そういった事態には陥らないと思う。

「アレはデモンベインかもしれないけど、でもデモンベインではないだろう」
「……でも、あれは確かに……」
「『見立て』の影響か、もしくは俺の特質……虚数から引っ張り挙げた可能性の顕現、ということもありえる」

あまりネガティブに考えるよりは、そういう風にポジティブに考えておいたほうがいいだろう。

「あぁ、そうそう、見立てといえば何だけど……」
「何よ、もう私たちお腹いっぱいよ?」
「(こくこく)」

そんな二人に苦笑しつつ、とあるデータを二人に見せた。
途端表情が引きつる二人。

デバイスの投影ディスプレイに映し出される三次元グラフィックス。
其処に映し出されていたのは、黄金に輝く三角形。

「な、コレ見たらそんな緊張するのも馬鹿らしくなってくるだろう」
「……まぁ、ねぇ?」「……」

思わず、と言った様子で脱力する二人に小さく苦笑しつつ。

まぁ、事実なんでこんな設計図まで俺は書いたのかと首をかしげながら。
そのドリル付きドラム缶の設計図に視線を落としたのだった。





■フラワーマスター
インテリ・アームド・ミッド式。風見幽香の傘型デバイス。ミッド式ながらアームドという、色々チグハグな構成。
ミッド式の砲撃・射撃を得意とした術式を搭載し、然しその上で格闘戦にも対応する強度を持つ。魔法的肉体強化はオーバードライブくらいしか出来ないのだが、元がラカンと張り合えるレベルの怪物なのでそれで十分。
寧ろラカンと張り合える怪物の全力でも壊れないミッド式とか誰得かと。しかもそれでいて傘としての機能を残しているのだから、もう本当に誰得かと。もちろん幽香得である(ドヤァ
デバイスのAIはかなり寡黙な性格。

■白猫偃月刀
インテリ・アームド・近代ベルカ式。レンの偃月刀型デバイス。通称は白猫。
レンの特質、咸卦特性でも術が扱えるようにされた特注品の中の特注品。
夢に誘う白猫は、主にレンの補助の為幻術に特化している。痛みを持った幻想、現実を犯す悪夢の描き筆。
強度もさることながら、展開時のその重量は平均的なデバイスのそれを圧倒し、扱える人間はUHBでも少ない。
デバイスのAIはツンデレ白猫。


■I am providence
我は神意也
■銀色の祭壇
銀鍵守護機関。機械式魔術制御の祭壇。
■DemonBane
鋼の躯。神秘を表す触媒。またやっちまった。
とある儀式魔法のために設計されたのだが、本来はもう少し小規模な機体になるはずだった。
何かに導かれるようにして完成したこの機体には、独自の名前が与えられることになる。
但し、この世界だけでは「転生者」達の総力でも完成は無理。
■ドリル付きドラム缶
緑のマッドの愛機。構造素材以外は純科学の産物という浪漫メカでありながら、髪の模造品たるデウスマキナを撃破しうる力を持つ。頭がおかしい。
■何か混ざってたネタ
・ガイノノイド・ミク
・天を穿つドリルアーム
・超西式魔導工学理論
スポンサーサイト



トラックバックURL
http://amane0130.blog.fc2.com/tb.php/110-3fbe93c8
トラックバック
コメント
誤字報告です。
次元真→次元震
国電軍→国連軍
テツ | 2012.08.21 22:10 | 編集
本当に好きですねぇ(ニヤニヤ
これでデモベ関連作が移転していないのも含めて4つかな?w
当分動く事は無さそうだけど……やっぱり魔導書??
皇 翠輝 | 2012.08.22 00:29 | 編集
そうだよね。
デモンベインは完成しないよね……


あれ?
この世界では「転生者」達の総力でも完成は無理。
「転生者」達の?
あれ?あれ?
もしかして…リインと力を合わせたら完成可能だったりするのか?
仮眠 | 2012.08.22 13:49 | 編集
まあ作ったところで使う相手がいないから……いないよな?
むしろ破壊ロボのほうが便利に使えるかもしれない。
超改造鬼神兵対破壊ロボとか胸が熱くなるな。
戦場となる麻帆良は壊滅するだろうけど。
| 2012.08.22 16:32 | 編集
なんかこう・・・
危険なとこに警告なしで連れてったり何してんの?と思ったら洗脳されてますセリフが出てきて最後の落ち。
安心していいのか??
| 2012.08.23 13:03 | 編集
この話ってネギに対する救済は無いのでしょうか?
日向 | 2012.08.25 15:39 | 編集
やっぱりデモベキター!
予想通りといえば予想通り。
思わずニヤリとしてしまいました。

でもこの世界でこれ以上の戦力は要らないと思うの。
西博士でないのかなー(チラチラ
コオロギ | 2012.08.26 23:04 | 編集
つまり機体はデモンベインだけどあの神話が無いから獅子の心臓が完成しないでアイオーン式エンジンなのか?そうならたしかにデモンベインじゃないし完成もしないな。

本家デモベ⇒動力はノーリスクで無限だよ!でも一定の出力しかでないけどな!
アイオーン⇒術者の魂燃やして動くよ!寿命は減るけどどんな敵だって魂燃やせば滅ぼすよ!
このデモベ⇒動力は術者の魔力を使うよ!どんな術者だって走るだけで魔力を使い切るよ!(ただし主人公除く

つまりこういうことだろうか?
| 2012.08.31 01:16 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
| 2012.10.02 14:47 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top