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04 CBF in Australia・序

2012.06.08 (Fri)
「ねードゥーエ姉、これ外しちゃ駄目なの?」
「我慢なさい。それは貴女の身元を隠すための処置なんだから」

某日某所。私が製造されて、大体6年くらい立った。
世間では漸く第二世代型の技術が安定的に生産されるにいたり、フランスでは漸くラファール・リバイヴが生産されだした。但し、初期生産型が、なのだけれども。
まぁ、さすがは第二世代最後発機。第二世代の中ではかなり優れた性能を誇る。

――既に第三世代型を生産しているウチが言っても嫌味にしか為らないのだけれども。

「で、スバル。調子はどうなの?」
「うん、いい感じだよ。トーレ姉のおかげで、多重思考も高速思考も習得したから、私が扱えるRAYの最高速度もアップしたんだ」

多重思考と高速思考。
多重思考というのは、皆さんご存知のマルチ・タスク。要するに同時に複数の思考を演算する能力のことだ。出展は色々。私のはドクターに教えてもらったのだ。何時だったか処理が追いつかないと半泣きになっていたところ、ドクターにこんな技法があるよと教えてもらったのだ。

で、もう一つの高速思考。
此方はマルチ・タスクとは少し違い、余計な思考をカットし、脳の処理速度を合理的に向上させるというものだ。
余分なアプリケーションを一時停止して、メインOSの処理速度を上げる、と言う技法だ。

この二つ、当然ながら普通は両立はし辛い。何せ、余分な処理を切って複数を同時処理するというのだ。
一つに集中するからこその高速思考。だというのに処理を分散してしまうとはいかがな物か。

――とか考えていたのだけれども、さすがはこのチートボディーというか。並列分散思考からの統合情報処理で、擬似的に二つのスキルを統合することに成功。
要するに結果を基点とした思考系統樹を形成することに成功したのだ。

何を言っているのか解らなければ、要するにすんごいマルチ・タスクを習得したのだと理解して欲しい。

で、その結果、機体管制に割り当てられる処理能力がアップし、結果として更なる無茶な機動が可能となったのだ。

「未だ速くなるのアレ? そんなに速度にばっかり偏って大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。例えAIC搭載型のISが登場しても、私の最高速度はAICの理論最大相殺可能ベクトルを超えてるから!」
「――それ、口外しちゃダメよ? 何でそれで貴女が耐えられるんだ、とか聞かれたら答えられないでしょ?」

なるほど確かに。
AICは現在、「理論上開発可能はPICを上回る慣性操作装置理論」という扱いだ。要するに卓上の空論レベルの話だ。
だというのに、ソレを軽く上回る最高性能。そんなもの、人間に乗れるはずが無い。

正直言ってしまうと、この機体に私以外の人間――いや、戦闘機人含み、私以外が搭乗したとしよう。
戦闘機人で30秒。一般人で一瞬。それで、ミンチになる。

この機体、機動から最高速度に至るまでにかかる加速時間が3秒。最初にイグニッション・ブーストを使えば最高速度に持っていけるのだから、正直三秒というのはエンジンを喚起するのに必要な時間だ。
まぁ、ソレを使わなくとも生半可無い圧力が掛かる。最高速度で通常の三倍な速度を誇るのに、PICの性能は従来機と大差ないのだから、そのあたりは察して欲しい。

因みに、姉妹達が何故耐えられないかと言うと、単純に肉体の構造が戦闘向きではない、と言う話だ。
トーレ姉ならば搭乗出来るのか? と言う話なのだが、残念ながらソレもできない。

何せあの人は最初から空戦型。軽量化しつつ強化された戦闘機人なのだ。大して私は、陸戦型の強化フレーム。つまり、機人としてのフレーム強度は強化されているにしても、私とトーレ姉でフレーム強度を比べると、当然私の強度に比べてトーレ姉のフレーム強度は低いのだ。
コレは私にしても少し意外だった。だって、確かに素早いけど強いんだもんあの人。

「キャノンボール・ファストの仮想敵――まぁ、公開できない機体だけど、内側の企業の刺激にはなるでしょう。 スバル、負けちゃダメよ?」
「解ってるよ」

ぐっと右手を掲げてみせる。
コンディションは肉体面、精神面共に絶好。表舞台に出られない私が、漸く表舞台に顔を覗かせられるチャンスなのだ。この機会は存分に生かしたい。

「でもさぁ、顔のコレ、なんとかなんない?」
「なりません。そのまま頑張ってきなさい」
「え~……」

言われて、顔面に取り付けられたソレを両の手で押さえる。
素顔を隠すソレ。金属的な光沢を放つ、銀色のフェイスガード。まるで何処かの三倍な赤い人のつけていそうなその仮面は、事前にドクターから渡されて装着していた物だ。

「あのねスバル。貴女は事実として最年少のIS操縦者。けれど、私たちが簡単に表に出るわけには行かないの」
「むぅ」
「貴女だって、他の企業からやれ人権保護だ子供の権利だ学校へ通わせろだなんていわれて、面倒なことになりたい?」
「うん、それはイヤだ」
「そうでしょ? なら、素直に顔は隠しておきなさい」
「はーい」

うむぅ、ドゥーエ姉に諭すようにいわれて頷いたが、うむ。それでもこのマスクはちょっと恥ずかしい。
いや、ジャパニメーションってオーストラリアにも若干流入してきてるのよ。もう、ひやひやモノです。

「そんなにイヤなら、ブシドーマスクなら用意できるけど」
「コレで結構です」

ブシドーマスクってアレですか? 乙女座な修羅道??
――ジェイル・スカリエッティー……!!(ギリギリ...)

「――っと、そろそろ時間のようね」
「うん、それじゃ行ってくるよ」

オーストラリア横断・キャノンボール・ファスト。
今回私が参加するのは、私たちナンバーズコーポの主催する、大陸横断長距離レースだ。
因みに、ドゥーエ姉は秘書と言うか社長代理をやっているらしい。しかも会場ごとに別の顔で。おかげで、ナンバーズコーポは「社長が謎」とか「1000人の秘書」とか「秘書に紛れた社長の会社」とか言われているらしい。





事の起こりはドクターが政府の高官の前で言い放ったこんな台詞が切欠だ。

「技術とは、競い合ってこそ成長する。故に、戦場を用意して欲しい」

当然、こんな馬鹿げた意見が採用される筈も無い。議会はそのドクターの意見を一蹴した。
――が、一部有識者はその意見に目を寄せた。

ISとは兵器だ。元々は宇宙開発のための強化服として開発されたものかもしれないが、現在の立場は確かに兵器。
アラスカ条約により戦争は禁じられているとはいえ、紛争やテロ相手に対する使用制限は実はされていなかったりする。

技術は戦場から生まれる。

過去、飛行機や自動車と言うものが生まれた。
これらは生まれこそそれ以前から存在していた物の、それらが実用に足る物として成長したのは、確かに実戦の中で実践を経たからこそだ。

今世界を覆うインターネットという情報の網。これもまた戦争から生まれた物だ。一部拠点を撃破された最、それで組織管理が停滞しないよう、情報を分散保管するために開発されたのがネットワークだ。

そして演算装置。コレもまた戦争から生まれた物だ。戦艦の主砲。これの射角を計算する為の物が電算機、後のパーソナルコンピューターの起源だったりする。

そう、知識人なら誰でもわかる。戦争は人類を進歩させる。

然し、知識人ならば誰でもソレを口にすることは無い。何せ、戦争は悪(・・・・)だ。だれが好き好んでそんな事をしたがるというのか。

そうして誰もがドクターの言葉に目をむけ、けれども口をつぐむ最中。かの御仁が前へと出た。
そう、ドクターの意見が無視されようと言うのだ。彼女が動かないわけが無い。

「では、このようなイベントを開催されてはいかがでしょうか」

そう、ウーノ姉さんである。
いつの間にか用意したプレゼン資料。その内容は、何時だったか私がチラッと零したキャノンボール・ファストという競技の構想だった。
現在IS委員会が提唱しているキャノンボール・ファストというのは、要するにISをつかった駆けっこだ。しかし、正直な話ソレはつまらなくないだろうか。

そこで提案するのが、元の映画キャノンボールを意識した、大陸横断レース。
妨害あり、障害ありのハラハラドキドキレースだ。

ルールは簡単。オーストラリア西部パースシティーからオーストラリア北部シドニーシティーへ最初に到着したISの勝利。
参戦するのはナンバーズ社のRAYとリガズィーの二機。RAYは仮想敵、リガズィー/トーレ姉は高速航行パックに換装して出場機として出撃。
私が選手としてエントリーしない理由は、私の機体が無調整で1000キロを超える速度を出せる機体だからと言うのが理由だ。
Nextっぽい技術構想を練りこんであるだけ合って、実はVOBも装備できる。というか、現在量子化して本体に格納してある。

正直、オーストラリア横断とか2時間も要らない。

まぁ、流石にそんなことではレースにならないので、RAYは妨害機として出場選手をいたぶりにいたぶって妨害することが役目となる。
まぁ、救護班も兼ねているので、ピンチのときは最速で駆けつけることになります。



次。
AMI(オーストラリア・メカニカル・インダストリー)からはCOAR-α――通称コアラが2基。試作型汎用機で、方向性が纏まっていない残念な第二世代機なのだが、其々方向性を決めたカスタムが施されており、1号機が実弾系を装備することで燃費向上を目指したガンスモーク。二号機が対IS戦を想定した中距離近接格闘戦を想定したケースショット。
どちらもかなり改良されており、是非模擬戦をやってみたい相手だ。今度ドクターに提案して、データ取りの名目で戦えないだろうか。

――いやさ、世代的に格下相手の虐めとか言われかねないが。



で、最後。
トーラス社。元はヨーロッパ系の企業だったのだが、ISが世間に現れた初期に、ISのコアを巡る政治的な戦争に敗北し国を追われ、同じ英連邦王国系であるオーストラリアに撤退してきた会社だ。
ただし技術力には確かな物があり、駆動系技術及び早くも第三世代機に手を出す新興企業だ。

――ぶっちゃけ、あのトーラスだろう。
なんでもドクター曰く「余りにもぶっ飛んだ兵器思想」とのことで、開発している兵器は環境やら使用した後の事を全く考えないぶっ飛んだ物だそうで、ドクターが思わず技術提供してしまいたくなるほど奇人が集まった会社なのだそうだ。

で、現在開発されたのが「アルギュロス」。超重量級のフル・スキンISで、とんでもない重量に対して類を見ないほどの最高出力を誇る機体だ。
その癖エネルギー効率はドクターですら舌を巻くほどの代物。まさに変態技術である。
最高速度? 仕様書が真実なら、高機動パックを装備すれば、高機動パック装備型のリガズィーに並ぶのだとか。化け物過ぎる。

まぁ、欠点として小回りが利かなくて、対IS戦には余り向いていない中距離機だという点だろうか。





「よし」

ISの仮想モニターに表示されたデータの再チェックを追え、視線を再び外の風景に戻す。
オーストラリアの海と砂漠の狭間。まぶしい日差しの大地の最中、ピットの中には暑苦しい装備の面々がずらり。

前から順番に、コアラ1号、コアラ2号、アルギュロス、リガズィーの四機。今回の大会にエントリーしたのはこの計四機で全てだ。
まぁ、普通はISの性能を公開するのは自殺行為。自らの手札を強制的に公開させられかねないISと言う業界では、自機性能はギリギリまで隠匿するのが常識だ。

ソレをしないという事は、情報を売り込みたいという組織か、もしくは情報を公開されてもいとわないという組織か。

ちなみに内の組織は後者だ。ぶっちゃけウチの機体は、第三世代といってもイメージ・インターフェイスを機体の制御補助に使っているだけで、それ以外は従来技術を突き詰めただけの代物だし。

『レディース・アンド・ジェントルメン!! ごきげんよう皆様、本日はオーストラリアの大地、パースへお集まりいただき、誠に有難うございます!!』

と、どうやらイベントが始まるらしい。ハイパーセンサーに引っかかる司会の声に、思わず時刻表示に目を移した。

『さて、本日の競技に選手として参戦する機体は以上ですが、実はもう一機、仮想敵、追跡者(チェイサー)として本戦に参加する機体が存在します!!』

出番らしい。瞬時にISを展開し、指定されたポイントへと機体を浮上させた。

『彼女はナンバーズコーポ所属のISパイロットで、登録名ミス・セカンド!! 搭乗ISはRAY!! 企業が作った中では世界初の第三世代型ISです!!』

ドッ、と沸き上がる歓声。数秒の間をおいて手を上げる司会者。それにあわせて波が引くように静まる歓声。

『さて、彼女が選手として登場しない理由は簡単。彼女が参戦してしまうと、この試合がゲームにならないからです。――おっと、言い方が悪かったですかね? 失敬』

会場の所々からブーイングが上がり、慌てて司会者が両手を挙げた。

『彼女のIS搭乗時間は累計で1500時間を突破しています』

その一言で会場からざわめきが完全に無くなった。
1500時間。つまり、ISの一日の搭乗時間を1時間とすれば、4年は毎日ぶっ通しで乗り続けている事になる。まぁ、一日一時間以上乗ったり、休日もはさんでるし、もうちょっと数字に誤差は歩けど。
それはIS搭乗者としては最古参のパイロットという事。それほどの搭乗時間なら、寧ろ既に引退している人間のほうが多いのではないだろうか、と言うほどだ。
つまり、完全に規格外。IS適性を無視して、熟練の域にある存在だ。

――実際、能力の制限無しで此処の連中を相手にしろといわれた場合、トーレ姉含め30分以内に鎮圧する事は十分に可能だ。

トーレ姉が私に教官役をしていたのは、あくまで“戦術始動”であって、“IS指導”はむしろ私から教えていたりする。私のほうが累計搭乗時間長いしね。

『更に彼女の機体は無換装で音速を突破し、パッケージをインストールする事で、最高速度が2000キロを上回るという超速度特化型ISだからです。彼女が本気になれば、オーストラリア横断は2時間ほどで成し遂げられる、それほどのとんでもない機体なのです!!』

『さて、お分かりいただけたところで、最後にルールの確認を行いたいと思います』
『今回のルールは制限殆ど無し! ただし高度にリミッターあり。ルートは南オーストラリア、クーバーペディを経由しシドニーに着く事!! 尚、コース各地には敵対ターゲットが設定されており、それらには各機ごとにポイントが設定されております!!』
『なお、このポイントは自機にも設定されており、此方はゴール時のシールドエネルギー残量と為ります』
『つまり、ゴールまでにいかにシールドエネルギーを残し、また同時に如何に敵機を撃墜したかが問われる事と為ります』
『尚、この試合の制限時間は120時間、つまり5日!!』
『ギブアップは何時でも可能。救難信号発信次第、即座にRAYが救助に向います』
『――っと、そろそろ時間のようです。それでは皆さん、サーキットに注目ください』

――――――――――――<<<<キィィィィィッィイイイイイイイイイイイイイイイ――――――――――――――>>>>>

唸るエンジン音が空気を震わせるのがわかる。

『レディイイイイイイイィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイ…………』
『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウ!!!!!!!!』

その合図と共に爆音を立てて発進する四機のIS。
それらを遠目に眺めながら、最終調整に入る。

VOB最終チェック終了。システム正常、接続状況オールグリーン。何時でも出撃可能。

『さて、それではネットワークから送られてくる各機のモニター映像にご注目ください。なおエネミー機のRAYは、他機から30分遅れての出撃となります。RAYの勇姿は30分ほどお待ちください!!』

と言うわけだ。
少し暇になったので、手慰みに高速切替でシステムの反応をチェックしていたり。新装備のスナイパーシステムを調整していたら、不意に司会者の声が響いた。

『さて、それでは皆様、そろそろRAYの出撃時間となりました!!』

言われて慌てて武装を仕舞う。多分此方に対する注意も含まれた放送だったのだろう。

さて、それでは出撃しますか。

「ジェネレーター出力、ブースター正常。――RAY、出ますっ!!」

キィィィィ――――ドカンッ!!!

瞬時の喚起、次いで爆音。
瞬時加速により、文字通り瞬時に音速を超えたRAYは、大地に衝撃波の波を描きながら、東の空へと旅立ったのだった。

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