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15 Intermission

2012.06.12 (Tue)
と言うわけで、CBFinオーストラリア大会は、後少しでゴールと言うところでその幕を下ろした。
選手達は悔しがる者、無感動な者、やれやれと息を吐くものと、其々様々な反応を示していた。

「ふむ、面白いじゃないか!」

そうしうて、選手達が様々な反応を示す中、概ねそんな反応で纏まった陣営が一つ。
誰と言わずもがな、当然ながらオーストラリアのIS開発陣営である。

AMIは別として、オーストラリアで幅を利かせるIS企業は、基本的に変態企業だ。
例えばRAY。兵器としての性能を無視して、極端に最高速度のみを願った機体。
例えばリガズィー。ISに簡易とはいえ可変機構を盛り込む必要性は、今のところ皆無。
例えばアルギュロス。ISの最大の利点である“機動性”を完全に潰し、まるで某リリカルな魔王様であるかのように『重いけど硬くて強い』を実践する機体。

さて、コレを見て感じるのは一つ。コレを作り上げた人間は、間違いなく変態であるという事。
そも、第二世代が主流の現代に、これだけの数の第三世代機を持つのは、多分オーストラリアだけだろう。

そう、変態科学者達は奮起していた。
彼等には自負がある。自らの手がけたISこそが最強であると。それは科学者としての矜持であり、技術者としての自信である。
だから、彼等は自らの作った機体が襲撃者を撃退した事自体には何の感慨も無い。

しかし、襲撃してきたIS、それ自体には多大な興味を示した。

例えば、“シュトゥーカ大佐”のISコアを確保した某ドクターは、その戦闘データに大層興奮していた。
シュトゥーカは第二世代だ。それもつい最近リリースされた物ではなく、第二世代の開発が開始されたその初期のものだ。

――だというのに、なんだこれは!!

動きは鈍く、第三世代兵器を搭載しているわけでもない。記録データから算出される数字も、如何考えてもRAYにとどく物ではない。
だというのに、だ。唸る36mm砲はRAYの装甲を削り、対地ミサイルである筈のバンカー・バスターを真上に放ってはRAYに甚大な被害を与える。
そのISとしてはひじょうに鈍いとしか言い得ない挙動で、然し有る程度の弾幕を回避し、かなりの弾幕に被弾しながらも、それでも尚有り得ないほどのタフネスを持って挑み続けてくる。

某ドクターは大興奮していた。
あまりにもわけが解らなさ過ぎるそれ。常識とか色々天元突破しているそれ。
大破した機体を検分しても、特にコレといって大きな特徴は見られない。
間違いなく、普通のISだ。

「――たまらないね」

そうしてドクターは有る決意をする。
手に入れたISコア。IS委員会がなにやら五月蝿いが、それは彼女の二番目の娘が何とかしてくれる事だろう。暗殺とか懐柔とか裏金とか色々で。

「ふむ。では先ず、A-10神でも作ろうか」

勿論30mmガトリング搭載の量産型として。







さて、一人のドクターが荒ぶる中、ナンバーズコーポは、社としてもまた動きを見せていた。
それが、トーラス社との共同開発。両社独自の技術を掛け合わせ、独自のISシリーズを生み出そう、と言う試みだ。

ナンバーズコーポ社のIS、RAYとリガズィーに搭載されていた、マルチスラスターシステム。ISコアを補助する小型補助ジェネレーター。2000キロを突破するVOB技術。
トーラス社のIS、アルギュロスに搭載されていた粒子機関、ISの機動性能を向上させる粒子神経網システム、ISの保有する絶対防御の上から、更にISを包み込む堅牢な防御、プライマル・アーマー。

両者は協議の結果、これら技術を秘匿しながらも、両社で共有する事で、独自のIS規格を産み出すことに同意した。

そう、新たなIS規格。第三世代を目指して生産される規格。

――“Next構想”である。

高機動、かつ、高火力、かつ、高防御力を保有するIS。
ISの常識を塗り替えるであろうその構想は、関係者(主に変態開発者陣営)を大いに沸かせた。

こうして、人には知られぬ世の闇の奥で、更なる技術が、ISを基点として発展していく。
――変態達は、転んでも只では起きないからこそ、紳士なのだ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※




さて、それとはまた違った某所。
赤道上を沿うように、オレンジ色の小さな光が、大気の層を突き破り、地球の重力から離脱していた。

『此方ゼロセカンド。予定通りの機動で大気圏を離脱しました。このまま其方へ向います』
『了解。解っているとは思いますが、此方への到着コースは緻密な計算の上になっています。大きく速度を変更したりすることの無い様に』
『了解です!』

ブツリと途切れる通信音声。途端、宇宙を泳ぐその影。――一機のISは、静かに宇宙遊泳を続ける。
IS――嘗てRAYという名の最速の第三世代であったその機体は、しかし今や見る影も無いほどにボロボロであった。

つい数日前に行われたCBF。オーストラリアの大地で行われたその大会の最後、イレギュラーに襲い掛かってきた五機の所属不明IS。
それらを撃退する最中、無茶をしすぎた結果、RAYの基礎フレームには致命的なダメージが入り、それは既に修復不可能なレベルにまで至っていた。
本来であれば、こうして宇宙にいたることすら不可能。とっくに別の筐体にISコアを移植されているという、それほどの状態でありながら。だというのに、RAYはその様な状態をおくびにも出さず、悠々と大宇宙を、青い地球を眼下に眺めながら飛んでいた。

『此方ゼロセカンド。其方を肉眼――もとい、ハイパーセンサーで確認した』
『了解。――此方からも確認したわ。ようこそ、ミスゼロセカンド。我々ナンバーズコーポ宇宙新素材開発支部“MoonLight”は貴女を歓迎するわ』

そうして、RAY――それに搭乗するミス・ゼロセカンド。――そう名乗るスバル・スカリエッティは、静かにボロボロのRAYを、宇宙に漂うその巨大な建造物、ナンバーズコーポの保有する新素材開発用宇宙ラボ、MOONLIGHTに機体を進めた。

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「さて、それじゃ貴女の話っていうのを聞かせてもらいましょうかしら。あ、私は此処の所長のエルザ・ランチェスターよ」
「ゼロセカンドです。まぁ、お分かりかと思いますが機密上のコールサインで、本名ではありません。気軽にセカンドと呼び捨てていただいて結構ですよ」
「それじゃ、私もエルザってよんでね」
「はい、エルザ博士」

そうして、研究所を訪れたスバルは、即座に用意していた資料を備え付けのPCに接続――投影する。

「これが――」
「はい。私の想定している新型ISの設計図です」

立体投影モニターに映し出される映像。それは、額にV字のアンテナを立てた、ワイヤーフレームで構成されたISの立体モデル。

「プロジェクトコード、νG。元々はサイコミュで動かそうと設計していたんですが、ドクターと相談したところ、此処ならばサイコフレームが製造できる、と聞いてお邪魔させていただきました」

言うセカンド。対するエルザ博士の視線は、セカンドの持ち込んだ設計図に釘付けになっていた。

「――これ、確かあなたが一人で計画を練ってたのよね?」
「ええ、何時か、もしもの時のことを考えて、ドクターとはまた別軸の開発を、なんて考えていましたので」

その言葉にエルザ博士は静かに頷く。
技術的に、規格が統一されるのはいい事だ。何せ共通すればそれだけ全体的な汎用性は上がるのだ。

しかし、規格の統一は一概にいいことともいえない。
何せ、もしその規格の成長が行き詰ってしまうと、それは全体的な停滞を意味するのだ。

「確かに、コレは今したで騒がれてるNext構想とは少し――いえ、大分違うわね」
「私はNMSS計画と呼称してます」

因みにNMSSはNT専用MS少女の略だ。少女をGirlではなくShoujoに擦る辺りが拘り――らしい。

「ふぅん――あぁ、そうそう、それじゃ、頼まれてた品のサンプルを渡すわね」
「!? もうサンプルが!?」
「ええ。データが届いたその翌日にはテストタイプが。完全版は昨日出来たばかりなんだけれどもね」

そもそも脳波測定自体、一般人ではかなり曖昧すぎて、調整に難航したのだとか。

「ただ、それに触ってた研究者の一人が、妙に勘に鋭くなったのだけど、それもその『サイコフレーム』の影響なの?」
「…………(覚醒、しちゃった?」

NTとはつまり、地球の重力から離れた事で、遠くに居る隣人とコミュニケーションをとるために進化した人類の事だ。
NT能力を増幅させるサイコフレームを、宇宙空間で触る――そりゃ、覚醒を促しもするか。

「ハーバートくん、アレ持ってきて」

と、スバルが悩む傍で、どこかに通信を繋げるエルザ博士。
言うや否や、プシュッっと音を立てて開く空気圧式ドア。

「ふむ、お待たせしたのである」
「相変らず速いわねぇ、ウェスト博士?」
「否、我輩いまだにこのプラント全域に行き渡る『空気圧式輸送ライン』の実装を諦めたわけではないのであるからして!」

そうして現れたのは、金髪碧眼に眼鏡をかけた、優しい笑顔の美丈夫であった。
ただそれを見たスバルの反応は、「外見ハーバートなのに中身が西博士……」という引きつった笑いだったが。
まぁ、ギャグ属性ならば死体蘇生実験でゾンビに八つ裂きとかは無いだろう。

そうしてなにやら愉快な夫婦漫才を繰り広げるエルザ博士とハーバート博士の掛け合いを尻目に、手元に漸く渡ったそれを手にする。

T字型の金属の塊。それに手を触れた途端、スバルは自分の感覚が突如として大きく広がるような錯覚に襲われた。

「――ぬっ」
「凄い」

ピクリ、と反応するハーバート博士。そんな博士の様子に気づかずに、首を一度縦に振るスバル。

「見事です」
「それじゃ、これはちゃんと稼動したのね?」
「当然なのである。我輩の手がけた品に欠陥など有り得ようか、否、あるまい!」

言うドクター達。そんな二人にチラリと視線を移すスバル。

「因みにエルザ博士、勘が鋭くなったのって、ハーバート博士含む数人――5人くらいですか?」
「あら、人数まで言ったかしら?」
「――ふん、それがそこな小娘のいうNTの能力と言うものなのであろうよ」

頷くスバル。NT同士というのは共鳴する。わかるのだ、お互いが。

「でも、この様子ならいけそうね」
「です。サイコフレームがこの完成度なら、間違いなく」

彼女達の計画。NMSS。それは、宇宙空間での活動を主眼においたISの製造。

「ふむ、成らば我輩、この天才の頭脳を遺憾なく発揮してやろうではないか!」
「彼、馬鹿だけど天才だから。私も協力させてもらうわ」
「はい、お二方とも、協力よろしくお願いします」

そうして、とある戦闘機人の少女の、宇宙でのIS開発が密かに開始されたのだった。
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