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16 Intermission 2

2012.06.12 (Tue)
「やばい」
『ふぅむ、これほどとは……さすがの我輩も驚嘆せざるをえんのである。いやはや、IS――科学絶頂の時代に、まさか超能力なんぞと言う分野が台頭してくるとは……』
「その意見には同意だけど――いや、超能力は脳科学の一端だと考えるんだ博士!」
『人体実験したい』
『やめい』

エルザ博士の突っ込み。
いや、まぁ、あの二人の犬も食わないやり取りは如何でも良いんだけどさ。
問題は、この私専用に新たに開発した新型IS。
世代的には第三世代に入るコレは、リセットされたRAYのコアが搭載されている。

「νG、此処までとは」

モノクロの装甲色。その頭部に輝くV字アンテナが、月の反射光を浴びてキラリと輝いた。










MoonLight――通称『月光』で開発していた新型IS用素材『サイコフレーム』。
コンピューターチップを細胞単位で鋳込むという、気が狂ったかのような精密技術の集大成。整備性とかを考えると、首つってるのかといいたくなるような、そんな馬鹿げた代物。
サイコミュという脳波感応装置の軽量型として設計したコレなのだが、実際にISに搭載してみて、改めてこの装置のチートっぷりを実感させられた。

サイコフレームは、その生産性の低さから、とりあえずコアを覆う形でのコアフレームとして取り付けられる事と成った。
まぁ、テストという事なので、最初はこんなものだろうと。
少量のサイコフレームでは、流石に意味は薄いだろう。そう、思っていたのだが。

まず最初に建造したIS――試作サイコミュ試験型。
MoonLightで使用されていたトーガ(当然私のデザイン)をNT専用に改造したNT専用試作量産機だ。
月光のテストパイロットが都合よくNTに目覚めかけていたので、折角なのでコレに乗ってもらって一気にNT覚醒してもらおう、という腹だった。
テストの結果、見事にNT覚醒。といっても、私から見てNTレベルは1くらい。ギリギリ殺気を感知できる、と言うレベルだろうか。それでも一流のIS乗りを相手取れるほどのスキルなんだから凄いよね。

テストパイロット曰く、宇宙とISの意思を感じたのだとか。
サイコフレームがISコアとのシンクロの仲介をしたらしい。データにも、ISとのシンクロ率が通常の倍近い数値を示したのだとか。

――舐めていた。自分で開発を願っておいて、それを舐めていた。
いや、確かにチェーン・アギもT字フレームだけで疑似NT覚醒してたっけ……。

で、サイコフレームの有用性が確認できたところで、月光で開発していた二つの素材を使って新規にISを作る事と成った。因みに素材はガンダリウムγではなく、Eカーボンを使用。
バリア張ってるISに重い(といっても普通の素材に比べればバカみたいに軽い)を装備する必要を感じず、柔軟性と堅牢性を両立させるEカーボンを採用したのだ。
あ、但しガンダリウムγは装甲材として使用してます。

素材の開発に約1年、機体の開発に大体5ヶ月。
気がつけば私も既に11歳過ぎ。そろそろ12歳になる。つまり、いい加減中学生と言う事だ。
出来ればそれまでには日本に移住したい。
なぜかって? 元日本人としては、オーストラリアの衛生面は……。どうにも合わない。
だってさ、洗剤で皿洗って流さないって如何なの? 水貴重品かもしれないけど、けどさぁ。

私には無理だよ。
なので、私は食事時には紙皿を利用してます。おかげで何故か綽名が『潔癖』。潔癖症はもう少し自室を整理すると思う。うん。
その点、この宇宙は最高だ。塵は滅多に積もらないし、そもそも食事は大半が保存食。栄養ドリンクとゼリーの食事が最高。驚いたのは固焼き煎餅がオススメの食事入りしている事。なんでも顎を動かすトレーニングにいいのだとか。さすが日本食。

さて、話が逸れた。
まぁ、そうして長い時間をかけて製造したIS、νG。
現在は稼動テスト目的の機体な為、武装は一切搭載していな――あ、違う。左手首と右肩にビームサーベルを搭載しておいた。記憶にあった雪片弐型の欠点を考えて、ビーム自体は振った瞬間にのみ発生するように、と。

そうして完成したνG。それのテスト飛行を行い、それでは試にとトーガとの模擬戦をやろう、と言う話に成った。話の出所はハーバート博士だ。

で、仕方無しに接近戦武装のみでトーガと戦う事になったのだけれども。
まさか、素で「見える、私にも敵が見え(ry」とか出来るとは思っていなかった。
いや、今までも十分にNT能力は活用できていたのだ。普通に殺気とか敵意とかは感じ取れていたので、暗殺とか悪意とかから身を守るのには十分に重宝していた。
のだけれども。――何だコレは。

明確に見て取れる敵の姿(イメージ)。想像できるビームの軌跡。未来予知に似た確信。

コレがサイコフレームの威力か、と考えて、いやそれだけではないのかもしれないと首を振る。
私も宇宙に出て長い。かれこれ10ヶ月近く宇宙と地上を往復している。――もしかして、私も宇宙で長期間生活する中で、普通にNT能力が成長した……?

久しぶりに乗るISの感触。一次移行の最中の、少し重い機体を触りながら、トーガの放つスターライトMk.Ⅱのビームを回避。
NT化したことでより明確に敵意を放つトーガのテストパイロット。皮肉にもその超感覚は、此方にとってはオールドタイプよりも読みやすい!!

そうして話は冒頭に戻る事になる。

未来が見えているかのような行動を取るνGのその挙動に、観測室からの声は次第に小さくなっていった。
それもそうだろう。IS戦闘と言うのは、いわばシールドバリアの削りあい。いかに相手シールドを削るか、と言うのが大切なのだ。
だというのに、この試合が始まってから、νGは未だ一度も被弾していない。
戦っているのは月光の誇るテストパイロット。軍から引き抜かれ、誰よりも宇宙を泳ぎ続けたと胸を張る、研究員ならば誰でも顔を知る女性だ。
その彼女が、掠りすらさせられない……?
そんな驚愕とも恐怖ともつかない感情が、月光ラボから放たれているのを感じて。

そうして、実に開始から10分。テスト飛行は、トーガの胸の中心にビームサーベルが突き立つという形で終了した。

「遠距離兵器装備したらどうなる事やら」
『うむ。アニメを思い出すのであるなぁ』

因みに、ハーバート博士はロボアニメオタだった。
話題が合ったときには思わず腕を組んだのを覚えている。

「――うん?」
――『”最適化処理(フィッティング)が完了しました。一次移行(ファースト・シフト)を開始します”』
「あ、そういやまだだっけ」

Yesを軽くクリック。
その途端、眩い光があふれ出した。

『ちょ、おま、計測ぅ!!』
「あ、ごめ――」

そんな研究員達の悲鳴をBGMに、姿を現したνG。
白と黒のカラーリングで、それまで何処かごつかった全体像が、一次移行の前後で明らかにスリムになっていた。

「一次移行で変化したスペックデータは?」
『凄いな、全体的なスペックが底上げされている。まぁ、武装は相変らずビームサーベル二本だけどね』
「それは追々追加するという事で――うん?――っ!!」

感じた違和感を掴もうとして、途端に流れ込んでくる情報量に思わず声を詰らせる。

『どうした? ――っ、これは!?』
『なっ、何この数値!?』
『どうした、報告は正確にするのであ~る!!』
『ISから搭乗者に送信されるセンサー情報が、異常なレベルの情報量を送信しています。このままではミスセカンドが……っ!!』
『ぬっ、サイコフレームが過剰に働いているのであるか……νGを強制停止』
『駄目です、信号受け付けません!!』
『何ですって!?』

そのやり取りを、なんだかエヴァみたいだなぁ~、等と頭の隅で考えつつ、改めて意識を集中させる。

――私を舐めるなよ、νG。

常駐している系統樹思考を、即座に80%近くまで開放する。
長時間連続稼動させられる限界ギリギリ。それを持って、流れ込む全ての情報を一気に解析していく。

「これは……全天周囲モニターも目じゃないね……」

何せ、360度全天周囲全ての情報が頭に流れ込んでくるのだ。
一々肉眼で確認する必要が無いため、顔を動かす必要が欠片も無い。

――けど、コレ、普通の――並列思考なりを持たない人間に扱えるのだろうか。

なんて考えていたら、νGから否定の意志が伝わってきて――。

――なるほど、普通はコア側でソートされた情報を渡すのか。それじゃやっぱり、コレは私を試してる?

伝わってきた感情は肯定のもの。

「お前ねぇ、知ってるでしょ? RAYの時の情報負荷はもっと凄かったって」

呟いた途端、ISから掛かる負荷が一気に落ち着いた。
……おいおい、忘れてたなνG。いや、初期化したんだから忘れてるほうが正しいのだろうけど。

『ゼロセカンド! 大丈夫であるか!!』
「あ、ドクター。OKOK無問題(モーマンタイ)。寧ろさっきよりもシンクロ率上がってる気がするよ」
『そんな馬鹿な、一次移行後のフィッティングと言うのは、それこそ難しい男女の関係の如く――ってマジか上がってやがる……』
『あるのね、そんなこと』

研究者たちが通信機の向うで喧々諤々と意見交換を開始している。
正直私には如何でもいいことだ。そんなことよりも、色々と気に成る事が出来ていて。

「――うわぁ……」

月に一つ、衛星軌道上に一つ、あと地上に点々と。
なにやら強大なプレッシャーが観測できる。

「――よし、忘れよう」

私の目的はあくまで空を飛ぶ事。原作に介入を企んではいるけれど、でもあえて箱猫を開こうとは思わない。
だから、月は忘れる。宇宙開発は他所に任せる。
私は一企業付のIS乗りとして、存分に世界を愉しむ。うん、コレだ。

「おーい、そろそろ帰投しますよ?」
『居や然し――であるか!!』
『嗚呼もう、わからずやね――あ、セカンドちゃん? ちょっと待ってね今ガイドビーコン出すから――だからそうじゃなくて――ええい、とりあえずガイドビーコン、すぐ!!』

うん、研究職ってのは色々大変なんだね。
次ぎ地上に帰ったら、甘い物でもお土産に用意しよう。

そんな余計なお世話を決意しつつ、一次移行したνGを操り、音の無い宇宙を静かに進むのだった。

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