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29 ちっぱい咆える。

2012.06.15 (Fri)
「なんで約束忘れてるのよあの馬鹿ーーっ!!」
「いや、イチカだし」

咆える鈴をそういって宥める。
どうやら件のイベント、「毎日私の酢豚を食べてくれ」が始まったらしい。
まぁ、冷静に突っ込みを入れるなら、毎日私の味噌汁を~から酢豚へのアレンジはあまりにもセンスが悪いとしか言い様が無いというか、その言い回しは既に死語だとか、色々有りはするものの傷心の鈴音にそんなことを言おうものなら容赦なく鉄拳が飛んでくるのは目に見えていたのでとりあえずそのあたりは黙っておく。

「あーもう、腹が立つわねっ!!」
「いや、だからってラーメンの自棄食いはどうかと。麺なんてモロ炭水化物だし太るぐあっ!!」
「スバル、アンタ本当に同性?」

いや、ゴメン。今のはちょっとデリカシー無かった。だからその呆れた表情でコッチ見るのやめて。
殴られた脇腹をさすりつつ、此方もトレーの上の焼肉定食(特盛)を平らげていく。

「然し、イチカの鈍感ぶりは昔からでしょうが」
「う、いや、でも約束した事まで忘れてるとは思わないじゃない」
「ん――、『私の料理の腕が上がったら、毎日私の酢豚を食べて欲しい』だっけ?」
「ちょ、なななななんで知ってるのよっ!!」
「いや、なんでも糞もあの時私も傍にいたし。リンとイチカは気づいてなかったけど」
「居たなら居たって言いなさいよっ!!」

いや、だからって照れ隠しで殴らないで欲しい。前衛型のリンの一撃は割りと痛い。

「そういう遠まわしなのはイチカには通用しないっていったっしょ?」
「う……でも……」
「第一、篠ノ之箒と部屋を入れ替わるっていうのも、多分無理だろうし」
「なんでよっ! 私だって一夏の幼馴染よ!?」
「それ以前の立場の問題だって。リンはただの国家代表候補生。対するあちらは、ISの開発者にして国際指名手配者の篠ノ之束の妹。世界で唯一の男性IS操縦者と並ぶほどの価値があるんだ。要監視対象を一箇所に纏めておくのは、まぁ最善とは言えずとも一つの手では有るよね」

私はどちらかと言うとリスク分散型を押すけれども、高脅威目標に対応しうる戦力の限られているIS学園では、護衛対象は一箇所に固めておくほうが簡単なのだろう。

「なんだかそれだと、私が部外者みたいじゃない……」
「まぁ、ぶっちゃけ周りの連中からはそう見られてるんじゃない?」

ウガー!! と唸りだすリン。いや、女の子がそんな声出しちゃ駄目でしょ。女の子はエレガントに――って私に何を言わせるんだ。

「そもそも、篠ノ之束の妹だか知らないけど、専用機も持たないやつが何が私が教える、よっ!! 遠距離戦しか出来ないヨーロッパの島国の機体で、どうやって白兵戦向きの白式の練習相手するのよっ!!」

まぁ、確かに。打鉄じゃ白式相手には出力不足だし、BTでは訓練にならないだろう。白式の訓練なのに、BTで遠距離無双してたら訓練にならないだろうし。

「というか、いつの間にかイチカの指南役完全に奪われてるし」
「そう、それよ!! 聞けば最初にイチカに教えてたのはスバルだそうじゃない。何でアンタがそのままイチカを教えてなかったのよ!」
「いや、だってなぁ。乙女の恋路を邪魔して馬に蹴られたくなかったし。それに、私の存在が二人を焦らせちゃったようなところもあったみたいだし」

うん、私とイチカは中のいい友達だ。故に、イチカに近付きたいあの二人には、私が高脅威目標に見えたのだろう。まったく。
男女間に友情は成立しないというが、イチカに限っては別だと思う。あいつ鈍感だし、千冬さん以外に興味無いシスコンだし。

「と言うか、私なら良かったの?」
「あんたの実力は折り紙つきだし」
「うん? 私リンにIS戦闘見せた事あった?」

そのリンのあまりの自信有り気な表情に、思わず首をかしげる。

「何言ってるのよ。OVの裏コード教えたのアンタでしょ?」
「――あぁ」

OV――オービタルバトルと呼ばれる、ISのシミュレーターがある。
N&Tの開発したこのシミュレーターは、かなりリアルなISのシミュレーターと各国で評判になり、世界中で広く使われている。使用可能なISは入力データによって好きに描く事ができ、更に様々な状況、地形、時刻と自由自在。何よりそのデータ入力がとても簡単である事が評判の一助と成っていた。
更にコレ、シミュレーターが一部雑誌で取り上げられ、男性でもプレイ可能という事で大いに話題になった。そこでN&Tはコレをアーケードゲーム化。廉価版シミュレーターと言ってもいいアーケード筐体は世界中に設置され、しかも軍所有ではない廉価版のゲーム筐体であるが故に軍機やらなんやらが一切無くなった為ネット対戦を実装したこのゲームは、世界中の若者(特に男性)に人気となり、一気にN&Tに巨万の富を築く事と成った。

で、そんなOVだが、隠しキャラとして私とトーレ、それにトーラスのアルギュロスが登録されていたりする。といっても私は覆面でのRAYとνGの初期型、トーレ姉はリガズィーと、かなり古いデータなのだけれども。

「教えてもらったコードをゲームセンターで入力したら、あっという間に大騒ぎよ? あれって一体なんだったの?」
「あー、うん。あの機体が登場するのって、主にイベントかアーケードモードでオールSSS以上を取ったときに低確率にランダムで出てくるかだから」

現役IS学園の生徒でも、辛うじてクリアできると言うような難易度のゲームだ。それをランクSSS以上でクリアなんて、一般人にはほぼ不可能な条件。
その丸秘キャラが、地元のゲームセンターでいきなり現れりゃ、そりゃ大騒ぎになる。

「言われたとおりあのコードは黙ってたけど、あの後大変だったんだからね!」
「それはそれは」

因みにあのコードを知っているのは、OV開発関係者と各国のOVチャンピオン以外ではリンだけだったりする。

「でもさ、アレ見てるから余計に思うんだけど、あんたの機体とあのイギリスの機体って何か似てない?」
「ああー、うん、それか」

一呼吸置いて、小さく語り始める。多分に国家機密とかが含まれた話なのだけれども、私の知った事ではない。

「要するに、イギリスがオーストラリアの技術を借りパクしたって事?」
「まぁ、大分ぶっちゃけて要約すると。元々は技術協定を結んでたんだけど、アッチは技術寄越さなかったし」
「さすがイギリス。やっぱり私にはあの国って海賊のイメージしかわかないわ」
「同感」

何しろ所々に海賊(ブンドリ)精神が垣間見える。
大英博物館なんてその象徴だ。各国に侵攻して奪い取った歴史的な品物を、堂々と自国に飾るとか。
いやまぁ、それも政治といわれてしまえば、それはそれで優秀なんだろうとも思うけど。

「まぁ、アッチにわたったのは基礎理論だけで応用も出来てないし、実際に完成したBTもかなり中途半端な代物。ビームを曲げるとか、オールレンジ兵器を積んでる状態でそれをつける意味が解らない」
「甲龍は苦手な相手だけど、アンタなら余裕そうよね。第一、BTは4つだけどアンタのFFは6つあるし」
「……ゴメン、私12機までなら同時操作できる」
「――――尚更無双よね」

六機って言うのは――シミュレーターのデータか。無改造νGとか懐かしい。
まぁ、少なくともこの学園で手間取る相手なんて、現時点では(ごく一部のチート以外には)存在しない。

「なら、後で私と模擬戦しなさいよ」
「一体如何いう話の流れでそうなった」
「いいでしょ、どうせアンタだって暇してたんだし」

いや、私には私で激辛麻婆豆腐を作るというミッションが――。

「いいから付き合いなさい」
「はい……」

怖い笑顔ですごまれて、あえなく撃沈する。
結局その後、第二アリーナにてリンの相手をする羽目に成ったのだった。



「女の子はエレガントに」
リュミエール - キディ・グレイドより。
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