FC2ブログ

45 RebirthⅡ

2012.07.05 (Thu)

四機の追跡者を撃破し、機体の調子を確かめる。
この機体は、νGに比べると途轍もなくピーキーな機体だ。νGは汎用性、生産性共に最高値を指す、私の最高傑作といっても間違いない機体だった。
それに比べれば、この機体はνGには到底及ばないだろう。

――けれども、νGでは、絶対に届かない次元。そこに、今私は立っているのだと感じている。

「調子はどう?」
『――――――』
「そっか、そだよね。なにしろコッチが本分なんだから」

完全無欠の速度特化。徒早く、徒何処までも。それだけを追求して、一番最初に生み出された私の機体。
嘗てのそれは、技術不足からその情報処理の大半を搭乗者にゆだねるという、とても人の扱える物ではない欠陥機であった。
何時しかνGの台頭で姿を消した筈のその機体。けれどもどうやら、ドクターはコレをこっそりと回収し、再設計やらなにやらで作り直していたらしい。
――私はてっきり、何処かの格納庫で埃を被ってる物だとばかり思ってたんだけどね。
真逆ドクターが、そんな七面倒くさい手間を掛けてくれるなんて、そんな事考えても居なかった。

『――――』
「ん、承認」

四機のISとの経験値により、ISがファーストシフトを迎える。
黒と銀のツートンカラーに赤いラインが走るその姿。かつての物と見た目の趣こそ異なるが、それは間違いなく嘗て私が乗っていた機体だった。

「イメージインターフェイス接続良好――演算容量120%の余裕――すごい、サイコフレームにサブジェネレーター、QB、OB、PAも装備して、しかも親和性が最高値だなんて。流石ドクター、パーフェクトだ」

思わず感嘆の言葉を漏らす。
何せNEXTの基幹技術と、NMSSの基幹技術たるサイコフレームを併用し、その上で両者を完全に機能させ、尚且つ嘗てのこの機体の問題点であった演算能力には圧倒的な余裕があるのだ。
コレを地上の科学者(兎以外)が見たら、沫を吹いて倒れるのではないだろうか。何せこの機体、ブラックテクノロジーの塊だろうし。

「――ん?」

不意に何かを感じて視線を向ける。
越界の瞳にも、ハイパーセンサーにも、何も写らない。けれども、確かに其処に気配を感じる。
――憎悪、悪意、敵意、言葉にすればそんな感情か。

「……あの子か」

思い浮かぶのは、ソロモンにて戦った、赤い機体の姿。
今ソロモンの方向から此方に向かってくる敵意というと、まずあの子で間違いないだろう。あの状況から如何やって復帰したのかは不明だが、それでもこの気配は間違いないだろう。

一歩踏み出そうとして、不意に訪れた痛みに思わず脇腹に手を当てる。

『――――――』
「はは、ダイジョーブダイジョーブ。戦闘機人はこのくらいでへこたれない!」

心配してくれるこの子にはそう言うが、それが口先だけだというのは、私もこの子も理解しているだろう。
私の肋骨は、先ず間違いなく折れている。それだけならまだしも、多分他にも何箇所も折れている上に、それが内蔵を若干圧迫しているのだろう。間違いなく病院に搬送して緊急入院レベル。間違ってもISに搭乗する様な――しかも、こんなピーキーな機体――そんなコンディションではない。
何よりも最悪なのは、私が戦闘機人だという事。骨格が普通の骨ではなく、調整された人工物であるという点。普通の物よりも頑丈なそれは、当然ながら普通の骨に比べてとても重い。それは、この高機動機に搭乗する現状、途轍もない負荷を内蔵に与え続けている。

けれども、だからといって此処で立ち止まるほど、私は諦めが良くない。
此処であの子を停めなければ、あの子は間違いなくXG-70bに追いついてくるだろう。それは、私の大切な駒が潰される事に他ならない。

「――ふぅ。行くよ、νG……いや、」

小さく息を吐いて、覚悟を決める。
私は、私のために、私の前に現れる有象無象を踏み潰す。

「行くよ、RAY―R2―――マッハキャリバー!!」

手に入れたのは最初の心。

『―――――――――』

取り戻したのは不屈の翼。

「うん! スバル・スカリエッティ、――マッハキャリバー、此処で、終わらせる!!」
『くぅっ!! この、イレギュラー如きがあああああああ!!!!!!』

加速した機体が、背後から迫る光の塊――巨大なスラスターを背負ったISと激しくぶつかる。
――そうか、基地に残ってたVOBを無理矢理束ねて加速したのかっ!!

ガン!!! と機体と機体がぶつかりあう。
共に地球へ向けて加速する中の戦いは、モンド・グロッソというよりはキャノン・ボールに似た物がある高速戦闘。
――つまりは、これは私の土俵!!

ハイパーセンサーといえど使うのは所詮人。背後や頭上、真下にたいしては、如何しても反応が遅れる。
それは、純粋な人間には絶対に対応できない穴だ。

「ハジケロイレギュラアアアアアアアアアアア!!!!!!」

血を吐くような叫びと共に放たれる電子レンジ砲。即座にその範囲外を計算―回避する。
天蓋方向への回避により一瞬此方の姿を見失った蒼い機体。嘗ては単発のみを許された必殺の一撃。今のこの機体なら、連射も出来る――っ!!

「振動速射砲!!」

衝撃砲とIS:振動破砕の併用スキル、振動砲。
ISの処理能力が向上した現在、衝撃砲、振動拳共に連発が可能!
そうであるなら、当然振動砲も連射が出来る!!

ISを貫通し、搭乗者にダメージを与える事を狙った酷いその攻撃。蒼い機体の子はけれど、その不可視の攻撃を一撃喰らっただけで、後は機動とその巨大な右腕を盾に防いで見せた。

――不可視の攻撃を初見だけで防ぐかっ!!

「薙ぎ払うっ!!」

途端に赤い閃光が宇宙空間を両断する。咄嗟に回避して、即座に周囲で起こった爆発に眼を見開く。
周囲にあったデブリ帯が、赤く融解し、一部では派手な爆発すら起こっているのだ。慌ててハイパーセンサーでXG-70bを確認――幸い射線からは外れていたようだが――それでも驚く事に、あの一撃はXG-70bを有効射程範囲に捉えているらしい。
FCSまで有効範囲に入っては居ないだろうが、攻撃が十分な威力を持って届くというだけで十分以上の脅威なのだ。

「くぅっ!!」
「自分の武器で、滅びろイレギュラー!!」

途端、蒼い機体の繋がったブースターの各所、其処に繋がれたコンテナのような物が開く。
いや違う、あれは――ウチのマイクロミサイル!!

衝撃砲で迎撃しながら、ミサイルに向かって吶喊する。確かあのタイプのマイクロミサイルは、目標に対して最速で着弾する為、旋回性能が低くなってしまっている。そのため、正面から突っ切ってしまえばそれ以上の追跡は出来ないのだ。
とはいえ現状は高機動戦闘。正面といっても負荷はかなり大きい。
鈍痛が激痛に変わるのを感じながら、ミサイルの弾幕を潜り抜ける。

……どうやら、近接信管のミサイルは混ざってなかったらしい。セーフ。

「くっ、ならもう一度この収束砲で!!」
「やらせるかっ!!」

蒼い機体に近接し、背後からその巨大なブースターになんとか一撃を叩き込む。急造品であろうその巨大なブースターは、その一撃で火を噴いて機能を低下させ、ついで二発、三発と叩き込むごとにその機能を落していく。

「お、おのれおのれおのれえ! イレギュラー風情が!!」

ガコンと、ブースターから蒼い機体が分離して――その一瞬、完全に蒼い機体が動きを止めた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」

大きく振りかぶる一撃。スラスターを全力噴射。最短距離で最強の一撃を叩き込む事だけを意識して。
――その瞬間だけ、間違い無く私は徒一発の弾丸であったのかもしれない。
遅れて此方に向き直ろうとする蒼い機体。けれどもその搭乗者の表情は、驚愕に見開かれていて。
それでも尚勝利への渇望があるのだろう。動いていない機体を無理矢理動かし、その右手の鋭い爪を此方に向けて突き出してきた。
それと同時に、此方も覚悟を決めた。

――――ッ!!

「な、なんだこれは!? 私の知らないシステム!?」
「 戦争を遊びにしているお前にはわかるまい! この俺の体を通してでる力がっ!」
「ふざけた事を!!」

Ray-Ⅱ……マッハキャリバーに搭載されているサイコフレーム。いや、この場合はサイコミュといったほうが言いか。
サイコミュは、人の意思を表す装置。マッハキャリバーは、その力を表現してくれるマシーンなのだから。

「イレギュラーーーー!!!」
「一撃必斃!!」

――――ゴガンッ!!

手に伝わる衝撃。音にすれば、そんなものだっただろうか。
弾くわけではなく、貫通する拳。必殺の威力を籠めたその右拳は、ギリギリ相手の爪が届く前に、向うの脇腹を深く抉っていた。

……いや、違う。相手のISこそ抉っていたが、搭乗者のほうには傷一つついていない。振動拳の影響で内蔵は拙いだろうが、それでもISスーツ、いや半透明なエロ水着っぽい宇宙服? 自体には、傷一つとしてついていない。
――運のいい。もしスーツが破れていれば、ISが機能停止した現在致命的だったろうに。

「…………っ」

考えている内に、漸く痛みが思考に追いついたらしい。
激しく激痛を放つ脇腹。同時に腕や脚なんかも激痛を放ち始めた。鎮痛剤も既に効果を切らしたらしい。
肋骨が折れてるっぽい現状で高機動戦闘――後が怖い。

「……はぁ」

小さく息を吐いて、一瞬悩んでから意識を失っている蒼いISの搭乗者を片手で掴み、そのままXG-70bへ向けて加速する。
どうやら向うも此方の戦闘が終了したのを察知したらしく、此方と合流する為に少し速度を落したらしい。相対速度的に見て、あと10分もすれば合流できる筈。

――っ!?

と、気を抜いたのが拙かったのだろう。途端に視界が黒く染まりだしたのに気付いた。
宇宙空間自体暗いものなのだが、星の光が徐々に消えていくその光景に、とっさに自分の意識が落ちかけているのだと自覚して。

「まず……MC(マッハキャリバー)、頼む……」

それだけ小さく呟いて、意識は完全に闇に飲まれる。
最後に聞こえたのは、何処か慌てたような少女のコエだった。



※産廃は荷電粒子砲で光になりました。
スポンサーサイト



トラックバックURL
http://amane0130.blog.fc2.com/tb.php/76-b1bcdb1f
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top