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08 何故彼はバグとやらかすハメに陥ったか。

2012.07.12 (Thu)
と、言うわけでグラニクス。

「よぉ、お前が最近ここらの闘技場を荒らしてるえ、エ、エリなんとかだろ? 次は俺と一つやんねーか?」

其処に筋肉お化けが現れたのは、俺達が試合を終えて、冷えた水で一息つこうとしていたとき。いきなり背後に現れたそれに、思わず口に含んだ水を噴出してしまった。
嗚呼、此処では水もそこそこいい値段なのに……。

「げほっ、……ふぅ、失礼、どちら様ですか?」
「あん? 俺をシラネーのか?」
「えっと……失礼ですが、初対面でしたと思うのですが……」

言うと、きょとんとした表情の筋肉お化け。で、何故か突然笑い出した。

「ガッハッハッハ、フハハハハハ、ひーっひっひっひっひ」
「……えと?」
「ひーっひっひ……いや、何でもねえ。何でもねえんだが、お前の次の試合は俺だって事だけ知っておいて欲しくてな」
「はぁ、然しなんでまた?」

このグラニクスの闘技場、試合のカードが選手側の意向で組まれる事は滅多にない。
例えば人気のカードだとか、名の在るライバル同士のチームだとかならまだ話は別なのだが、俺は別に有名でもなんでも――いやまぁ、最近、多属性の魔法の射手を雨霰と降らすから、と『虹色の雨』とか綽名をつけられたけど。

「んー、最近俺の経営する闘技場で、中々強そうな奴が居るって聞いてな」
「……俺の経営する?」
「そそ。俺様名前を表に出してこそいねーが、この辺りの闘技場は大抵俺がスポンサーになってるんだわ」
「………(だらだらだら」

その時点で、漸く気付く。
目立つ角こそ無いが、この特徴的な褐色白髪、間違いなくヘラス族。しかも、筋肉が凄くて気配からして物凄いテダレである事は間違い無し。
しかも、闘技場のスポンサー? んなの、俺の原作知識が正しいのであれば、その条件にヒットするのは一人。

「因みに、俺はジャック・ラカンだ。ヨロシクな」
「え、エリクシルを名乗ってます――大戦の英雄、ですか」

言いつつ、差し出された手を握り握手す――って、痛い痛い痛い!! 潰れる潰れる潰れる!!
即座に体内の循環魔力量を増加させての肉体強化。咄嗟にユニゾン中のリインが防御してくれたけど、俺の身体が闇と同化してなければ下手すれば今の握手で手が潰れていたかもしれない。

「おっ、耐えたか。成程成程、試合が愉しみになってきたじゃねーか。いや、最初はつまんねー仕事かと思ってたんだが、なんだ中々面白そうじゃねーか」
「仕事? この試合は仕事なんですか?」
「ん? あー、ま、いいか。そうだな、お前との対戦は、闘技場の他スポンサーからの依頼でもある」

ニヤニヤと此方を見るラカン氏。はて、他のスポンサーからの依頼って、俺何かやらかしたか?

「お前、実力を大分偽ってるだろ?」
「――――――」
「くっくっく。いやまぁ、ショーマンとして見るならそれもいいんだが、問題はお前さんが一気に儲け過ぎてるって所だな」

曰く、俺が参加する試合に関して、地味にだが運営側の儲けが赤字になっているのだとか。
闘技場全体としての儲けはある程度出ていて問題は無いのだが、ことエリクシル選手の試合に限っては如何しても赤字になる。
見てみれば、エリクシル選手は中々強く勝利回数も多いが、同時にある程度の数の負けも経験していて、倍率としてはソコソコの数字だ。
コレだけならたいした問題ではない。寧ろ勝ち負けの数字がいい具合で、人気取りにはとてもいい選手だ。
然し、問題はエリクシル選手の出た試合に関して、儲けがまったく出ていないという点。
エリクシル選手の出る試合には、必ず大金がベットされる。それも、どちらが勝つか予め分っていたかのように、勝つ方に、だ。

「ボンクラ連中は気付いてなかったみたいなんだが、ゼニ勘定の好きな奴は、お前がイカサマしてるんじゃないかって勘繰っててな。なら、折角だし俺をたきつけて……って話らしーぞ」
「代理人立てたりしてたんですが……そですか」

思わず頭を抱えてしゃがみ込む。
なんて事だ。リインに頼んで勝敗数を操作し、倍率が一定以上に下がらないようあれほど苦心したというのに。
『マスター……』
心配そうなリインの声が響く。そうだ、此処に居るのは俺だけじゃなく、リインも居るのだ。
立てよ俺! 男は格好つけてナンボだろう。

「ま、連中にしてみれば、俺を当てて本物か贋物かを図る心算なんだろうな。どちらにしろ俺とぶつかりゃ暫くは闘技場に出れねーだろうし」
「成程。なら、たまには全力でも出させてもらうとしましょうか」
「ほぉ、全力ね。何時もは全力じゃなかったのか?」
「ええ、此方にも色々目的がありまして。そのためには、全力を出すわけにも行かなかったんですが――アンタなら、俺の全力を受け止めきれるだろうし」
「ほほぉ」

楽しそうに。それはもう楽しそうに。
コチトラバグキャラの代表相手に啖呵切るなんてムチャに内心でガクブルなのだが、それを悟られないように必死だというのに。
真正面のバグキャラ、まるで獲物を見つけた獣――いや、獲物を見つけた怪獣の如くとても楽しそうにしている。
いや、試合は未だだから。未だ闘気とか立ち上らせなくてもいいから。

「くくく、成程な。――まそれならそれで俺も楽しみではあるんだが。――ちなみに聞いとくが、お前の目的ってなんだ?」
「目的ですか? 実は今、ちょっと家を建築中でして、その資材を買い集める資金が入用でして」
「はぁ? 家だ? そのためにあんな額を集めてたのか?」
因みに俺が現在までで闘技場で稼いだ金額は、8桁を超えていたりする。……そりゃ、主催者側にも嫌われるわな。
「ええ、家です。空も飛べば海にも潜れる豪邸」
「ほぅ……」
「ただ、建機から自分で作ってまして。まぁ、建機のほうは既に完成して、後は建築用の資材集めだけ、って所だったんですがねぇ」
「ははは、後チョットってところで俺と当ったわけか。そりゃー災難だ」
「本当災難です。まぁ、折角なんでこれを引退試合に、最後を盛大に勝利で飾りますよ」
「おっ、言うねぇ♪ ほんと、当日が楽しみだ」

言うと、ラカン氏はその巨体を驚くほど静かに動かし、流れるような動作で部屋の外へと出て行ってしまった。
……うわぁ、あれが俗に言う軸線をぶらさない、達人の動きって奴か。

『……ソーマ、あの御仁はそれほどの武人なのですか?」

ユニゾンを解除しながら、そんな事を聞いてくるリイン。そういえばリインにはこの世界の歴史ってあまりちゃんと話していなかったか。
まほネットに接続できるPDAは渡してたんだけど、歴史的情報って調べるの面倒くさいしな。

「えーっと、彼はジャック・ラカン。20年くらい昔、この魔法世界で起こった戦争で活躍して、赤い翼って組織――じゃないか、チーム? に入って、その戦争を裏から操ってた『完全なる世界』って組織を力技で叩き潰した英雄の一人だよ」

通り名は確か
「千の刃のラカン」「生けるバグキャラ」「死なない男」「不死身バカ」「つかあのおっさん剣が刺さんねーんだけどマジで」
など数々の異名を持つ伝説の男で、「究極の努力の人」らしい。

「元々奴隷拳士で、其処から地力で解放奴隷にいたり、そのまま賞金稼ぎを通して英雄になった偉人だね」
「それは……また」
「間違っても俺如きでは敵わない、本物の『戦士』だろうね」

まぁ、だからこそ胸を借りるつもりで全力を出せるんだけど、と微笑んで呟いてみる。
勿論空元気であるが。

「――現状、私は余り力になることができませんが――ソーマ、頑張ってください」
「……ふっふっふ。リインが応援してくれるなら100倍力。こりゃ、負けられないな」

おどけて、リインと一緒に微笑む。
……これは、本当に負けられなくなってきた。


■ジャック・ラカン
原作最強のバグキャラ。
魔法世界において絶対である「創造主の鍵」によって存在を消されるも、「気合の力」によって復活するというとんでもない存在。
どれ位とんでもないかと言うと、旧くなったパソコンのコンセントを引っこ抜いて放置したら、コンセントが刺さっていないにも拘らず、勝手に起動して勝手にプログラムを立ち上げて勝手にその中でキャラが出来てその中でくつろいでるくらい理不尽。
「コンセントが刺さってないのに何で動くんだよぉ!?」
というある意味ホラーな存在。
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コメント
更新お疲れさまです。

>「コンセントが刺さってないのに何で動くんだよぉ!?」
ソーマ君だってリィンやマテリアル達から見たら
「闇の書に飲まれたと思ったら吸収してた、何を言ってry」
ってなもんだから(笑

次回更新お待ちしております。
KoHi | 2012.07.12 19:52 | 編集
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| 2012.07.12 20:07 | 編集
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