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09 虹色の魔王・前

2012.07.12 (Thu)
試合開始直後、向うは完全に此方を舐めている――いや、先日の啖呵に免じて、最初の一撃を此方に許してくれるのだという。
舐められていることに若干頭に血が上るが、然し考えても見れば現在の彼我の実力差は歴然。正直、少しでもダメージを稼ぐチャンスを得られるのはありがたい。

「Call Spell :セリエス・ホ・テュラネ・フロゴス――クライ・クライ・クライ!」

マルチキャストにより連続無詠唱するのは燃える天空。
周囲に現れる数百の魔法陣、その其々にて高まる高威力広範囲殲滅魔法。
しかしそれをただ開放するだけでは、正直意味は無い。炎を連発するくらいなら、魔法の射手を連発したほうがダメージの蓄積率は高いだろう。
故に、圧縮(クライ)。
一つ一つの魔法の熱量は膨大。それを面積ではなく、圧縮する事により面積辺りの熱量を跳ね上げる。
最早其処に存在するのは小さな太陽。それ一つ一つが一撃で鬼神兵を落す程度の威力は備えている。
それを受けると宣言してしまっているジャック・ラカン。司会の囃し立てる言葉に、ラカンも少し冷や汗を流してみせる――が、この程度であの男を打破する事は限りなく不可能。それでも、少しくらいは削れる筈――っ!!

「ウーラニア・フロゴーシス(燃える天空)・ジェノサイドシフト!!」

ラテン語に英語を組み込むなんとも間抜けな詠唱だが、その威力は洒落にもならない。
ドドドドという轟音とともに着弾する小さな太陽。ラカン氏はその一撃に胸の中心を焼かれ、熱に身動きを阻まれる。
そのまま一気に削ってしまえと太陽を叩き込むのだが、コレにラカン氏は即座にアーティファクト「千の顔を持つ英雄」を召喚。呼び出した膨大の数の剣によって阻む。
やはり駄目か――いや、弱気になるな。
彼の英霊は言った。想像するのは常に最強の自分だと。
口に出せば赤面必死だが――ならば想像しよう。

「魔法の射手!!」
『喚起! 喚起! 喚起! 喚起! 喚起! 喚起! 喚起!』
「闇の矢 光の矢 水の矢 風の矢 炎の矢 氷の矢 砂の矢!!」
『魔力活性化・演算良好』
「サギタ・マギカ・セリエス・アイリス――ジェノサイドシフト!!」

魔力にモノを言わせ、数多の種類の魔法の矢を、まさに雨霰の如き勢いで振らせ続ける。
然しそれは何時もの比ではない。何時ものそれが雨霰だとするならば、今日のそれは全力全壊、豪雨とでも評するべき勢いだ。
全弾命中は狙わない。少しでも削る為に広範囲に、けれども隙間無く高密度に。
コレでもかと叩き込んで、手を止めた瞬間に見えたのは、鋼の傘を担いだ褐色の大男のすがた。

「がっはっは。いや、結構痛かったぜ、今の。確かにアレは本気なんか出せねーな、普通の奴なら間違いなくやりすぎだ」
――が、俺にはもう通じねーぜ?

もう、な。なんと言えばいいのか、この絶望感。そしてこの高揚感。
圧倒的絶望を前にするからこそ感じられる、背徳的、退廃的な、興奮。
それは医学的に言うならば、恐怖を紛らわせる為に脳がアドレナリンを分泌している――とでも言うのだろう。
けれども今、そんな無粋な事は如何でもいい。
全力をぶつける。それで、勝つ。

「そら、行くぞ」
その言葉とともに消え、次いで感じた衝撃に意識がぶれる。
殴られた、と気付いたのは、自分が闘技場の端に突っ込み、瓦礫の中から腕を振りかぶったラカンの姿を見てからだ。
――バケモノめ。
今の一撃、間違いなく人間なら死んでる。
多分、俺の限界を見極めたうえで、この程度なら死なないと判断しての一撃だろう。
即座に身体の一部――『闇』を伸ばし、触手のようにして攻撃する。
見た目的には影繰術に似ているが、コレは精霊魔法に属する物ではない。
身体から流れ出す虹色の魔力。それを闇も纏っている。
「ラカン・スペシャル・パンチ!!」
拳から放たれる白い光。間違いなく一撃必殺のそれだが――!!
「ぬおっ!?」
「――ちっ!!」
白い光弾を貫き飛び出した黒い槍。しかしラカンはそれを咄嗟にすべて回避してしまう。何とか掠った一撃は頬からの出欠を齎したが――その程度。
「おぉ、チョット驚いたぜ。まさか俺の気弾を抜くとは」
「タネも仕掛けもありますが――これもメシの種、秘匿させてもらいます」
「そうかよ、なら勝手に暴くだけだぜ」
言葉とともに殴りかかってくるラカン。此方の体術はリインから教わった柔術に近い体術が一つ。
とんでもない威力の一撃に身を削られながら、至近距離で魔法の射手を連発する。手を翳すことも言葉を唱える必要も無い。ただ立ち続けるだけで魔法の射手を連発する。
しかし、徒立ち続けるだけが途轍もなく難しい。
多重魔法障壁を易々貫通してくるラカンの拳を意地と根性で潜り抜け、至近距離からの魔法の射手の雨霰。
けれどもそれは本当にラカンに届いているのか、ラカンはそれらの一切を全く意に介さずに殴り続ける。
――ぐ、ミッド式かベルカ式でも使えれば――負け惜しみ、か。

「どうしたぁ! そんなもんじゃ勝てやしねーぞ!!」
「まだまだっ!!」

咆えて、手札を一枚切る。
それは主に戦闘以外にしか使ってこなかった手札――分身。全てが実体を持ち、全てが分身であると同時に本体でもあるそれら。それらの全てをラカンに向けて特攻させる。
「ぬおっ!?」
「「「「「「「フルドライブ!!」」」」」」」
全身から放たれる虹色の魔力。言ってしまえば魔力の過剰供給による肉体の強制活性化。
負担も大きいその技を、7つの身体で発動させながらの特攻。――後々が恐い。が、そんな事を言っていられる状況でもない。身体の内側で声を上げるリインに小さく誤り、その言葉を今このときは無視させてもらう。
ががががががががががががががが!!!!!
体当たりのように近付いては馬鹿げた威力の魔法の射手を叩き込んでいく分身達。
ラカンはそれらを手当たり次第に殴って消し飛ばすが、けれども分身は即座に補充される。
殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し、殴っては消し。
何時終わるとも知れない近接遠距離戦闘。
一撃で地形を変える拳を回避し、7方からの近接高威力魔法砲撃。
一体が消されても即座に補充。消えても補充、消えても補充。

「――成程な、理解したぜお前の手札」

そうして、どれ程時間が立っただろうか。
既に闘技場は盆地のように抉れ、同時にぶつかり合う魔力と闘気の影響か、その熱量で盆の内側を半ばガラス化させていた。

「お前の手札その一、これはちょっと信じらんねーが、お前魔力完全無効化能力者か」
「――まぁ、似たようなもんかな」
「ふん、道理で俺の気弾が通じない癖に直殴りは喰らうわけだ。まさかとは思うが、ウェスペリアーヌ王家の人間か――いや、そりゃネーか。あそこの血筋ってーと、残すはあの馬鹿の息子とあの嬢ちゃんだけのはずだしな」
「そーそー、俺は単なる突然変異だよ」
髪の毛は明るい金髪だし、オッドアイだけど。今思えば聖王王家の特徴っぽいのが出てるけど、父さんがヨーロッパの人だしそれぐらいは許容範囲だろう。因みに現在は目も髪も幻術魔法で常に黒く見せている。装でなくても目立つ容姿だ。昔から染めてカラコンを入れたりしていたのだ。
「くくく。で、お前の手札その2! あの分身――全部実体で全部ニセモノだな」
おおっとそれは一体如何いうことだぁぁぁああああ、なんて喧しく叫ぶ司会に、思わず殺意が沸く。
よりにもよって、こんな所で俺の手札が思いっきりネタバレされるとか。
「分身のどれもがニセモノで、同時にそのどれかが常にお前なんだろうな。アルの野郎みたいな面倒くさい技だが、その手の技は俺様の永遠のライバルも愛用しててな、そういうのは「一気に」「全部」消すに限る」
そう言うラカンの両手には、嘗て無いほどの莫大な気の塊が二つ。
「確かに魔力無効化と組み合わせれば有効ではあるが、それもソコソコ。コレなら纏めて潰せるし、魔力無効化だろうと突破できるだろうよ――まぁ、出来なけりゃ丸ごと吹きとばしゃいいわけだし」
なんて無茶苦茶を言う巨漢。然し実際、あれほどの高密度の気を砲撃されれば、間違いなく此方の防御は打ち抜かれる。
これが魔力万全体力万全の状態であればまた別なのだが、今は既に分身と鎧、更にフルドライブで魔力を盛大に消耗した後なのだ。
正直、打つ手が無い。
「うん、お前は良く頑張った。俺を此処まで殴ったのは、ナギ以来かも知れねーってくらいにゃ俺を殴った。だから、最後のコレは手向けだ」

そうして放たれた一撃。
『ソーマッ!!』
リインフォースの悲鳴を感じながら、分身すべて丸ごと巨大な光の壁に飲み込まれて、俺の意識は消し飛んだ。

■クライ・クライ・クライ!
何処かの双剣双銃の騎士にあやかって。
あそこまで突っ走れれば気持ちいいのだろう。
■ジェノサイドシフト
好きだなぁ、と思われても仕方ない。でもなのはのキャラで一番好きなのはアリサ。
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