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11 虹色の魔王・After

2012.07.13 (Fri)
「いやー、久々に死ぬかと思ったぜ!」
件の伝説の試合、虹色の魔王と千の剣の戦いの後、その当事者の一人、千の剣のラカンが笑顔と共に残したのは、そんな簡単なコメントだった。
然しそのコメントを言ったのは、ただの一拳闘士ではない。「死なない男」とまで言われる彼に、其処までの言葉を言わせる男――「虹色の雨」改め「虹色の魔王」は、その後に各国の有力者からその消息を探られるが、結局彼はジャック・ラカンとの対戦を最後に、その後魔法世界での消息を断ったのだった。





「……虹色の魔王って……」
「なんつーか、……酷い厨二病?」
「言うな!! 言わないでくれ!!」
グラニクス某所の宿屋。フルドライブの影響で全身筋肉痛により寝込んでいる最中に言われたその言葉。追い討ちを掛けてくる神奈川のをシューターで黙らせ、改めてその恥ずかしい名称に悶絶する。
悶絶して転げまわって、全身の筋肉痛に響いて更に悶絶しなおす。地獄である。

……いや、虹色は分る。魔力色は派手な虹色だし、魔法の射手を7種混合でぶっ放してた。
けど、魔王ってなぜだ!? アレか。終盤テンション上げ過ぎて「フゥーハハハハ!」とか統べ子風に高笑いしたからか。それとも闘技場の結界耐久力とか考えず、出す心算の無かった『魔力で作った螺旋丸(名称未定)』を思い切り高笑いしながらぶっ放したからか。
「ふん、しかも何だあの体たらくは。あそこまでの大言を吐いて、更に逆転かと思わせて、其処でまた引き分けるだと?」
「ぐはっ」
「ディアーチェ、そう彼を責めずに。というか、あれで死なない生物なんて、我々でも相手取るのは不可能ですよ?」
統べ子のきつい一言に思わず胸を押さえて地面に突っ伏すが、シュテルの慰めに何とか自分を取り戻す。
然し、酷い事になった。
あの試合、結局俺はラカンと引き分けた。
無限のエネルギーを得た俺と、公式バグキャラ「死なない男」の二人。やろうと思えば未だ未だ戦い続ける事は出来た筈だし、俺としてもそのほうがレベルアップの近道としてかなり喜ばしいのだが。
――残念ながら、闘技場の結界がアレ以上持たなかったのだ。
結局審判による宣言により試合が中断され、結果は引き分けと言う曖昧なままに終わってしまった。
「ごめんリイン、勝てなかったよ……」
「いえ、主の成長は確りと確認させていただきました。この期間であれほどの成長を成されたのであれば、私はとても喜ばしく思います」
「――次は、勝つ。もう無様は晒さない。で、俺がリインの主としての力を示してみせる」
この曖昧な結果、さすがにコレには納得していない。今回はこんな結果になったが、次は白黒はっきりつけてみせる。

「(きゃ、きゃ~~)」
「(お暑いのぅ、妬ましいのぅ!)」
「(はいはい邪魔してやるなよ)」
「(覗き見などはしたない真似をするなユーリ!)」
「(と、いいつつ確り見ているディアーチェでした)」
……何か外野が五月蝿いので、取りあえず今はこのくらいにしておこう。

「うるぁお前等! 後ろで喧しいぞ――ってか、なんでこっちに来てるんだよ!?」
「え、観光」
「だな」
「レヴィが行きたいって言うからね」
「うん、中々面白かったぞ!!」
「くくく、浮世の娯楽、特に貴様が殴られている様は中々愉快であったぞ!」
「――おつかれさまでした」「で、でした」

くうっ、萌えたらいいのか怒ればいいのか。
とりあえず神奈川のと麻帆良のの顔面にシューターを叩き込んで、早々に魔法世界を立ち去るべく、痛む全身にヒーリングをかけるのだった。










「ソーマ、下界が何か面白い事になってきておる様だぞ?」

ジャック・ラカンとの戦闘から数日。
ある程度以上の資材を得て、既に魔法世界の拠点を引き払った俺は、紫天一家と共に自宅と次元基地――ベースを行き来する日々を送っていた。
この次元基地、ちょっと頑張って居住性を相当良くした結果、自宅よりも住み心地がよくなってしまっているのだ。
空気/水・完全循環システムが予想以上に上手く成立した結果、現在のこのベースは食料意外の補給をほぼ必要としないかなりいい基地へと仕上がった。
形も、基地と言うよりは馬鹿でかいSF宇宙空母といった感じだし。
で、そんなベースの中で次元航行艦の建造をしつつ、のんびりと持ち込んだコーヒーを啜っていた最中。不意にディスプレイを弄っていたディアーチェがそんな事を言い出した。
ディアーチェには此処のシステム統括を任せているのだが、偶に施設を使ってわけの判らないメカを作る以外は、ソコソコ真面目に仕事をしてくれている。
そんなディアーチェの主な娯楽が、地球のインターネット、魔法世界のマホネットに接続して情報を喰い散らかす事なのだ。得た情報は此方にも回してもらっている上に、現実世界で開発してしまったAMF。あれは言ってしまえば此方にも有効な兵器なのだ。アレを此処で運用する為に、サブエンジンに核融合炉を仕込んだりと、ベースでの計画表が若干水増しされ、それに対応するのに忙しく、そんな中で有能な彼女の事は重宝しているのだ。
「面白い事?」
「ほれ」
送られてきたデータを見て、思わず絶句する。
何か、魔法世界の『虹色の魔王』が、物凄く話題になっている。

突如としてグラニクスに現れた黒衣の青年(融合と幻術で化けてた)、『虹色の雨』。
時には勝ち、時には負け、てだれとの戦いを経て徐々に成長する彼(調整してただけ)。
そんな中、不意に闘技場に現れる伝説、ジャック・ラカン。
英雄と青年の激突、追い詰められる青年は、その最中に新たな力に覚醒する。
常識を超え、無限にあふれ出す魔力。立ち上るのは虹色の闇の柱。
そうして、新たな英雄は伝説と相打つ――。

「――ナニコレ」
「貴様の事であろう塵芥」

しかも最悪なのは、『虹色の魔王』『未だ第二形態』『雨霰』『嗤う永久機関』『てかあいつの魔力無くならないんですが』のエリクシル、なんてとんでもない数の痛々しい二つ名が、俺の偽名とセットで出回ってしまっていることだ。

「……暫く……魔法世界にはいきたくない」




そんなこんなも有りつつ、それからディアーチェに手伝ってもらい、少し魔法世界で調べてみた事がある。
と言うのは、マホネットにて俺のことを「聖王」と呼称する連中が確認された事に関してだ。――多分、というか間違いなくほかの転生者の連中だろう。
あんまり敵対的な連中と接触するのは嫌なのだが、そのほかにもそれらしき人間として、旧オスティア周辺で拳闘士をやってる転生者らしき存在が居るらしいのだ。
というのも、そいつは自称「赤龍帝」を名乗り、赤い鎧を身に纏って戦うのだとか。

「――ふぅ」

隠す気がないのだろうか。むしろアピールしてる?
他にも、アリアドネーの鬼才と呼ばれ期待されている少女『アリス・マーガリン』だとか、俺の立ち去った直後にグラニクスを訪れたMMの金持ちお坊ちゃま――銀髪オッドアイだったそうだ――だとか。

「我が主、お茶をどうぞ」
「ありがとなぁリイン」

何か驚いたような表情のリインに首を傾げつつ、どうしたものかと眉間を揉み解す。
俺らのやろうとしていることは、下手をすると魔法世界を滅ぼしかねない戦いだ。幾ら転生者とはいえ、魔法世界に生きている連中は、「今」「魔法世界で」「生きている」のだ。
自分達の住む世界を滅ぼすかもしれない、なんて連中に味方するとは思えない。
――でも、だ。
例えばあの連中が、俺と同じく何時何故転生したのかも自覚できず、同郷の士を探しているだけであったのだとすれば?
特にMMの金持ちのなんて、俺が有名に成り出した時期から考えて、俺の存在を知ってすぐにMMを発ったと考えなければ、グラニクスへの到着時期に無理があるう。
それに、こう言う言い方はあまり好かないのだが――転生者は戦力になる。それは、たった4人集まっただけで、僅か短期間で日本の経済に食い込んだ実績を鑑みれば、嫌でも感じられるだろう。

≪条件付きで接触を認可≫
≪同じく、条件付きで認可≫
≪ボクも同じだよ≫
というわけで、早速念話会議でUHBの面々に相談してみたところ、そんな返答を頂戴した。
≪因みにぼくの条件は、接触に際していきなりUHBの情報を漏らさない、と言う点。ある程度の判断がつくまでは、我々の集まりは、単純にネット掲示板『ネギま』のつながりであるとする事≫
≪あぁ、俺もその条件だ≫
≪んーと、……原作に対してこだわりが強すぎる奴は勘弁な≫
「了解した。んじゃ、その条件で連中に接触してくるとするよ――というわけで、誰かもう一人コッチについてきて欲しいんだけど」
「では、私が行きましょう」

という事で、早速再び魔法世界に。姿を誤魔化す為に、リインとユニゾンして「エリクシル」の姿で転移する。転移先は、魔法世界低衛星軌道――LEOにおいているWRへと転移する。
お供にはシュテル。つまり現在ベースには統べ子とユーリの二人っきりと言うことだ。精々いちゃつけばいいと思う。
――因みにレヴィは神鳴流のと一緒にモルモルにいる。まぁ、夕飯時にはかえってくるのだが。



そうしてWRから飛び出し、先ず最初にグラニクスへ。
シュテルに魔法具で姿を誤魔化させ、グラニクスへ訪れているというMMの金持ちくんへと接触することに。
何分警備が厳重で、中々接触し辛いのだが、あえて此方の姿を見せたところ、向こう側から此方に接触してきた。

銀髪オッドアイのお金持ち。但しぽっちゃり。――色々残念な少年である。
で、MMの少年との接触の結果、案の定彼も転生者の類であった。
特に戦闘能力が高いというわけではないのだが、本人曰く異性に効く「フェロモン」を放つ体質らしく、武人のように確りと意識を保っていないと、矢鱈と女性を誘ってしまうのだとか。
本人はその外見と出自に比べ、かなりの好青年みたいで、そのフェロモンを抑制する為に香水の類で誤魔化しているのだそうだ。
で、彼のポジションなのだが、彼自身は原作不介入。ただし魔法世界の崩壊は、自身にも被害を受ける。そのため何等かの手段により崩壊を回避する必要があるとは考えて、私兵の組織なんかをしていたそうだ。
本当は勧誘してしまいたいのだが、彼の立ち位置だと現時点で完全に此方に引き込んでしまうのはリスクが大きい。
なにせ彼は、その人格が如何であれ、魔法と言う特権によって利を得ている側の人間だ。

取り敢えず、自分達が現実世界、掲示板「ネギま」の集まりである事を教え、マホネットの端末アドレスを交換して、その場では分かれることに成った。
さすがはMMのお金持ちと言うか、現実世界のネットワークに接続する手段を一応持っているらしい。コッチの世界の人間は現実世界に対して否定的らしいから、良くネットワークの接続法なんて用意できたなと感心したり。
というか如何やって回線をつなげてるんだろうか。世界が違うだろうに。
――ん? マホネットはどっちでも使える? 成程。




で、次。『アリス・マーガリン』。
名前を聞いて、思わず『マーガトロイドじゃなくて?』って聞き返してしまったのは俺だけではないだろう。
もしかしたらわざとやってるんだろうか、なんて考えつつグラニクスからアリアドネーへ。まっすぐ南下するだけなので、魔力炉搭載型のWRでは2~3時間ほどで到着した。
で、港にWRを泊め、機をシュテルに預けてアリアドネーの学院へ。
なんとか面会手続きをとって、漸く面会できたアリス・マーガリン。
「いや、アリスじゃなくて幽香じゃねーか!?」
「あら、一目で分るってことは、御同郷ってことでいいのかしら」
と、言葉の通り目の前に居たのはアリスではなく、風見幽香。通風にいうなれば、D-89(但しロリ)。もし本物であれば絶対に接触したくない対象だが、幸い此処に居るのはそのガワ(アバター)の転生者だ。
「風見幽香よ。一応これが本名なの」
「遠藤相馬……こっちではエリクシルって名乗ってるよ――まぁ、確かに容姿が何がしかのキャラに引っ張られるってのはある事だし? まぁ、積極的にキャラに寄せてるのは初めて見たけど」
「簡単に納得してくれるのね?」
「うん――ほら」
一瞬だけリインとのユニゾンを緩める。途端に白い髪が金色に染まり、同時に幻術を解いた事で双眸の色が変化する。
「――金髪オッドアイ?」
「で、虹色の魔力」
「……あぁ、アナタだったのね。グラニクスの虹色の魔王」
「その呼称は勘弁して欲しいんだけど……」
「あら、格好いいと思うわよ、厨二病」
「分ってるだろう、あんた解ってやってるだろう!!」



彼女、アリス・マーガリンこと風見幽香。因みにアリスの名前は、他の転生者を呼ぶためのアピールを兼ねた偽名だそうだ。別に「風見幽香」でもいいんじゃないかと思ったのだが、魔法世界で漢字名は通じにくい上に、本名を売るのは敬遠していたのだとか。
まぁ、確かに有名税って意外に鬱陶しいし、俺も偽名を使っているからとやかくは言わないが。

で、彼女のスタンス。
彼女自身は、魔法世界と旧世界を行き来する自由人をやっているのだそうだ。なんでも旧世界の弱小派閥の魔法使い(?)として生まれた彼女は、折角この世界に生まれたのだからとアリアドネーに留学する事にしたのだとか。
特に魔法世界の存亡に関しては興味が無く、アリアドネーに居るのは単純に砲撃魔法を作る為なのだとか。
「――なんでまた砲撃魔法?」
「あら、折角幽香に生まれたのよ? なら幽香を極めたいじゃない」
とのこと。成程、ナリキリか。
因みに転生者の持つ『三つの特性』についてを説明し、自身の能力に関して理解しているかを聞いたところ
「勿論、花を操る程度の能力と、花を育てる程度の能力、あとはもしかしたら、この身体能力かしらね」
とのこと。しかも彼女、魔法使いといっても陰陽師の亜流だとかで、陰陽道と彼女の能力はかなり凶悪。
魔力に緑化特性があるとかで、
1.魔力を撒き散らすと花が咲く
2.陰陽術とあわせて花を操る
3.無双
という有様なのだそうだ。
しかも本人はそれこそ風見幽香の如く強靭な肉体を持っている。成程コレは手がつけられない。
意識的ポジションもウチとそれほど競合しないし、彼女なら誘っても良さそうだ。
という事で、誘ってみたのだが。
「駄目よ。私はまだマスタースパークを完成させていないの」
との事。――しかし、此方にはちゃんと手札があるのだ。
「そうそう、彼女を紹介し忘れてた。リイン」
そうして、ユニゾンアウトしたリインを彼女の前に立たせる。
「はい。始めまして風見さま。夜天の書の管制人格、リインフォースです」
「……か、風見幽香よ」
呆然とした表情の幽香に、思わずニヤリと笑みを零した途端、彼女に腕を掴まれて一気に物陰へと引きずり込まれた。
「(一体如何いうことよ、何でネギまにリインフォースがいるの!? あれも転生者!?)」
「いやそれが赫赫然然で」
とりあえず、リインが虚数空間からこの世界に落ちた――という事を説明するが、コレは本題ではない。
「……リリなのクロスのネギま、ね……」
「そっちは東方クロスじゃねーか。いや、アバターだけか? じゃなくて――因みにコレ、なんだか分る?」
言いつつ手に表すのは、俺のガンランス型ストレージ・アームドデバイスの「アルク」。
「――アーティファクト、ってワケじゃないのよね?」
「無論。ストレージだけど、デバイスだ」
途端、幽香の目が輝いた。
「秘匿義務とか色々掛けられるけど、もし此方の陣営に所属してくれれば、バスター系の術式とセットでデバイスを「乗った!!」……ようこそ、UHBへ」
まぁ、かなり分りやすい性格の彼女だ。勧誘は割と楽に成功したのだった。




「マテリアルまでいるのね……」
「はい。シュテル・ザ・デストラクターです。以後、よろしくお願いします」
「ええ、風見幽香よ。幽香でいいわ――――――で、これから何処へ行くの?」
「次は旧オスティア領。そこにいる赤龍帝のスカウト、かな」
シュテルを見て小さく呟く幽香。そんな幽香の疑問に答えたところ、幽香はキョトンと目を丸くした。
「赤龍帝?」
「そう」
「赤龍帝って、その、白龍皇で双天龍の?」
「その赤龍帝」
「――っ、ここの世界観は一体どうなってるのよっ!!」
思わず、といった様子でぶち切れた幽香。ただ、お前が言えた事なんだろうか、と思ってしまう俺は悪だろうか。
「さて、アーティファクトか何かだとは思うんだが……」

シュテルの操船で、アリアドネーからオスティアへ。途中ヘラス帝国領を通る最中、何か空賊の類に襲われたが、俺の通り名の元たる魔法の射手・虹色の1001矢を並列起動で連発してやったところ、空賊の船は地形ごと跡形も無く消滅した。
因みに並列起動――マルチタスクは訓練次第で身に尽くし、デバイスがあればこんな高速詠唱が出来る、という事を幽香に言うと、物凄いキラキラした目で見られた。
……これ、量産品のデバイスなんか渡したら殺されるかな? ワンオフ機の生産ってかなり面倒なんだけどなぁ。


というわけで旧オスティア領域。
一応MMの国土に含まれるのだが、此処ってMMがドサクサで併合しただけで、元々は別の国だったのだ。
MMもそれを理解している為、この辺りの統治はかなり適当。一応クルト・ゲーデル元老院議員の介入により、ある程度新オスティア近郊の治安は維持されている。が、このMMとヘラスの境界にある国土はその大半が未だに荒れ果てたままで、その上嘗てのオスティア難民問題など、未解決の問題は山積している。
そんなオスティア。首都から少し離れた町にて行った聞き込みを行ったところ、驚くほど早くに情報を得ることが出来た。
なんでも現在ドラゴンの角を狩ってきただとかで、その角が競りに出されているのだとか。
本人は今現在近所の宿の酒場で昼食をとっているんじゃないか、とのこと。
早速逢いに行ったところ、宿屋のオバチャンに追い出されてしまった。
どうも、赤龍帝のおっかけが赤龍帝に迷惑を掛けているとかで、オバチャンは親切心から追っかけらしき俺達を追い出した、ということなのだろう。
「――マスパが使えればぶち込んでいるものを……」
「おい馬鹿ヤメロ」
『(本当に彼女をスカウトしてよかったのでしょうか……)』
過激な発言をする幽香に突っ込みを入れつつ、どうしたものかと考える。
例えば俺――『エリクシル』のネームバリュー……なにかそれを使うのは嫌だ。
「風見、お前が呼びかけてくれない?」
「何で私が」
「まだ外見が日本人に見えるからな。それに名前を呼ばれるなら男より美少女がいい。これは全人類共通の審理だと思う」
言うと、幽香は何か少し驚いたような表情で、「仕方ないわね」と呟いて一歩前へ。
「あ、そうそう」
「なにかしら?」
「呼びかけに、日本ってキーワードを入れておくこと」
「……成程ね。ええ、わかったわ」



と、いうわけで、宿の外から赤龍帝に向かって大声で呼びかけ開始。
開始1分も経たずに、宿から飛び出してきたオバチャンが物凄い形相で迫ってきた。
オバチャンのほうきに追われるまま、仕方なくその場を後にしようとしたら、不意に背後から此方を呼び止めるようにして声が掛けられた。
「……これ、絶対誰か狙ってやってるよな」
「――さすがに、否定できなくなってきたわね」
そうして其処に居たのは、赤茶けたボロ布から、右腕に赤い龍の籠手を突き出して、此方に向けて手を伸ばす少女が一人。
そう、少女だ。
……確かに、赤龍帝とは聞いていたが、性別は聞いていなかったか。乳龍帝のイメージが強すぎたっ!!
「――キミが、赤龍帝?」
その問い掛けに、コクリと頷いてみせる少女。その容姿は、長い蒼銀色の髪を首の後ろで束ねただけ。その瞳は綺麗な赤色。
所謂、綾波レイだとか、ホシノルリ、タバサ、長門と、所謂沈黙不思議系とでもいうか、そういう系等の容姿をしているのだ。
「赤龍帝、レン」
成程OK把握した。よりにもよって其処か。
「俺はエリクシルと名乗ってる」
「風見幽香よ」
とりあえず名前を交換して握手。ただ、俺のは偽名だからその辺りが良心をチクチク刺激される。
「では、――レンと呼んでも?」
コクリ、と頷くレン。
「よし、ではレン。先ず一つ聞きたいんだけど、――ネギの相棒といえば?」
「……アスナか、カモ?」
「うん、合格」
まぁ、赤龍帝である以上、まさかという事はないだろうが。一応チェックする必要はあって。
で、とりあえず同じ転生者だという事を確認しあった事で、自分達が同郷の仲間達に対して少しだけ接触を行っているという事を伝えた。
「幽香は?」
「コイツはウチにスカウトしたんだ」
「……私も、駄目?」
「えっ?」
自分を連れて行って欲しいとアピールしてくるレンをとりあえず落ち着かせ、一度その理由というモノを聞かせてもらうことに。
そうすれば成程、十分に納得できる理由だった。

レンは旧オスティア難民の両親から生まれ、生まれて以来この旧オスティア周辺の町で生きていたらしい。
嘗ては両親が街から街を行商していたらしいのだが、そんな両親を不幸が襲う。いや、不幸などという言い方は生ぬるい。所謂盗賊――と言うのに見せかけた、MMの貴族の人狩りにあったのだ。
両親は彼女を庇い凶刃に倒れ、粟や彼女も――と言うところで、彼女は彼女の持つ力に目覚めてしまったのだとか。
それが、赤龍帝の籠手。そして、咸卦法。
ロンギヌスにアルテマアートという弩チートコンボに、何とか襲撃者を撃退したレンは、けれども結果としてこの砂礫の大地の上で、身寄りもない孤独な一人になってしまったのだ。

「力なら、ある」
そういって此方を真直ぐ見つめてくる少女。けれどもその瞳の中には、何処か恐怖が混ざっていて。
あれは見覚えがある。ふとした拍子に感じる、この世界は自分ひとりではないかという、分けの判らない強迫観念から来る恐怖。
……この目は、嘘は言ってないだろうなぁ。
『マスター……』
『……そうだ、な』
「――いいじゃない、連れて行きましょうよ」
リインから掛けられた声に、此方も内心で決心して。
そうして此方が声を放とうとしたその直前。すぐ隣から、そんな言葉が隣から洩れた。
振り返れば、一歩前へ出た幽香が、同年代とは思えないほどに身長差のあるレンの頭を抱え込むように抱きしめていた。
「別に、どちらにしろ最後にはスカウトする心算なんでしょ? ならさっさとスカウトするって言っておしまいなさいな。それとも何、私の実力をその身で体験してみたい?」
そういって、凄まじい形相で此方を睨みつけてくる幽香。ラカンの闘気にこそ及ばないものの、その殺気は素人が浴びれば失神は必須、と言うほどのレベルの代物だ。
「……別に、連れて行かないなんて一言も言ってねーよ」
「「!!」」
「レン、ウチの組織に来るか?」
ぶんぶんと大きく首を縦に振るレン。……ああ、これ絶対連中に何か言われるなぁ。
何時の間に仲良くなったのか、姉妹のように一緒に喜ぶ幽香とレンを眺めつつ、とりあえず念話でベースに一報を入れるのだった。




■「MMの」
MMの転生者。銀髪オッドアイの金持ちだが、ぽっちゃり系。
本人はいたって真面目な人格なのだが、特質に「フェロモン体質」を持つ。
真面目な本人は意思を捻じ曲げるようなその所為質を嫌い、香水でフェロモンを誤魔化している。
そんな彼を本気で慕っている人間は少なくない。

特質
1.フェロモン体質――異性に対する好感度が一気に上昇する。匂いに起因する為、阻害は可能。
2.不明
3.不明



■風見幽香(アリス・マーガリン)「アリアドネーの」
アリアドネーにて出会った、幽香スタイルの魔法使い。ナリキリさん。
陰陽術の亜種を操り、これを用いて巧みに花を操る。
怪力により強い肉体を持ち、体術も納めている為、敵対すると手がつけられない。
マスパを習得する為にアリアドネーに居たが、スカウトに乗ってUHBへ。

花を操る程度の能力――文字通り花を操る程度の能力。
花を育てる程度の能力――正確には魔力変換資質の緑化能力。荒地を緑豊かな大地に変える特質。火星緑化計画。
怪力――肉体の強度を数ランク跳ね上げるチート。ラカンと殴り合える。




■レン「赤龍帝の」
旧オスティア近郊で拳闘士として名を馳せる少女。オスティア難民の両親から生まれ、そのまま流浪の民として生きる。
赤龍帝の力により、咸卦の気を無限倍加させた超超高威力の一撃を得意とし、また体術も拳闘を扱う。
外見は恋するお姫様な無双の飛将。なんだけど某黒猫の使い魔も混ざってる。

特質
1.ミステス――魂の蔵。魂に納められた武具。内容物は神滅具『赤龍帝の籠手』。
2.咸卦特性――発する力が常に咸卦法状態になる。但し魔力・気力は使えない。
3.不明(ただし疑わしきものが一つ有り)
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コメント
誤字?
赤龍帝の人、本文では少女で後書?では少年と書かれていますが、どちらが本当なのでしょうか?

やっぱり、色々と登場人物が増えてきましたね
そろそろ、登場人物の設定が欲しいです
ユエ | 2012.07.16 02:45 | 編集
更新お疲れ様です。

>引き分け
原作のパワーvs技巧(技術?)ではなく、破壊力対決になればなぁ~

>MMの
彼にはMMの良識ある鳩派を作ってもらいたいですね。
MMは良い?(クルト)も悪い(元老)も腹黒さMAXだし。

>アリアドネーの
ブレねぇなぁ~と思いきや実は人情派、何かイイ。

>赤龍帝の
やっぱり誰か(何か)に意図されている?、そのうちに神様転生者が現れないといいけれど。
ところで文末紹介では“少年”になっていますが♀ですよね?、“性別:男の娘”とかじゃないですよね!?

……次回更新をお待ちしております。
KoHi | 2012.07.16 03:27 | 編集
>『未だ第二形態』
これだけは頷かざるを得ないwwwwwwwwwww
きっと最終形態は……バスタードの光体・暗黒体系になる気がするわwwwwwwwwwwwwww

幽香の特質はマジ金と政治的影響力高いな。
どんな荒野も緑地化可能で新旧世界行き来可能とか間違いなくソッチ関係で経済活動すれば億万長者ルートはイージーモードで逝けるwww
……火星も大気組成と水の問題クリアすればテラフォーミング可能?

赤龍帝は禁手化と覇龍が残っているからまだまだ強化可能……残り特質一つも気になるところですねwww

では次回更新楽しみにしております^^!




ん?MMの?野郎に興m(ry
皇 翠輝 | 2012.07.16 03:32 | 編集
改めて思う、この作品は素晴らしいな。

>白龍帝
白龍皇の間違いでは?
ヨシユキ | 2012.07.16 07:08 | 編集
飛将軍ェ
| 2012.07.16 09:34 | 編集
■風見幽香(アリス・マーガリン)「アリアドネーの」にはもう火星の緑化に動き出してもらたほうがいいのでは?
原作まで何年かは分からないですが、結構ましな状況になりそうですし。
| 2012.07.16 10:53 | 編集
なんだか、特質を3個同時に発揮することで本来の(チート)能力が使用できるようになっているみたいだな。

主人公の特質「虚数」でリインをつれてきたようだな。
そのうち、アリシア入りのポッドとか、虚数空間に落ちたジュエルシードをうっかり拾いそう。
けー | 2012.07.16 12:08 | 編集
うん。面白い。
あんまりクロス作品を増やしすぎると制御不能の何でもありの混沌に落ちて話を終焉に向けてまとめられなくなりそうで怖いけれど。
| 2012.07.16 17:43 | 編集
朝は仕事直前であまり書けなかったので改めて。

幽香のデバイスはもちろん日傘型ですよね。
分身ができるのかも気になります。
陰陽術の式神とマルチタスクでいけるんだろうか。
でも、この方法だと分身側のマスパの威力が弱くなりそうなんですよね。

他にも出してほしい作品もあるけど、リクとかは自重しておきます。
無理に出そうとして逆につまらなくなっても嫌ですし。
何より一人がリクすると俺も俺もって混沌としそうで。

あと、かくかくしかじかは漢字にすると
かくかくは「斯く斯く」又は「是く是く」だそうです。
しかじかは「然々」または「云々」なのであってます。
ヨシユキ | 2012.07.16 19:20 | 編集
ひゃっはー更新ダァー

アリス・マーガリンで笑いました。
難民A | 2012.07.16 20:20 | 編集
レンで蒼銀の髪?
七煌宝樹のメザーランス?
真黒 | 2012.07.16 21:30 | 編集
誤字報告
沿道相馬
遠藤
真黒 | 2012.07.24 03:52 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
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