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【目次】 演算娘パニック

2013.04.18 (Thu)

代行の企みによりフルメタの世界へトリップした演算の話。
しかも今回は桜庭吹雪としてではなく、原作キャラ成り代わり(憑依)らしいのだが?

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演算娘パニック 01

2013.04.18 (Thu)
本当は技術チートには制限をかける心算だったのだけれど、それをしていると間に合わない事象が一つだけ。
本来ならコレはズルすぎるし、第一やったとして後々の辻褄合わせが大変だ。
けれども、私はやると決めたのだ。
後に合金と自称する組織、その中で水中戦闘機とまで称されたとある潜水艦を偽造(細部にわたり使用されている技術が別物かつさらにオーバーテクノロジー)する。
時期は某日。かろうじて記憶に引っかかっていたデータ。それを頼りに、とある地点に仕掛けたセンサーに反応があったのだ。
こっそり作り出した小型潜水艇。近所の山の公園の奥、人が立ち入らないような林の中にドンと置いた潜水艇の操舵席にもぐりこむ。戦装までしたコレがもし見つかれば、大騒ぎではすまないな、何て考えつつ。

「――ジャンプ」




その後、とある飛行機のブラックボックスが航空安全会議に届けられた。
それまでのマスコミの報道が、飛行機のパイロットに対する余りにも酷な評価であった事に対し、ブラックボックスから検出された記録――機長堀田氏の英雄的な操縦が明らかになり、それまでのマスコミ批判に対して物議を醸し出したりするのだが、完全に余談である。







ウィスパードと言うのは、どうしてこうも中途半端なのか。
未来電波を受信した子供は、無垢なる心にその莫大な情報量を押し込まれ、けれどもそれを受け取れる子供達はそもそもそれを受けて変質する程度の存在ではない。
つまり、無垢なるまま莫大な情報を頭の中に仕舞いこんでしまっているのだ、彼等・彼女等は。

そんな無垢なる存在たち。彼等彼女等に、それら情報の重要性など、果たして理解できるのか。
事実として、それは不可能だろう。
私が活動を開始した時点で、世界中でかなりの数のウィスパードが行方不明になっていることを確認した。
と言うのも、ウィスパードと言うのは大抵の場合自我が育つ前に自らの知識を発露してしまう。知性が育つ前に知識が発露するのだ。何と言う矛盾だろうか。
結果、それを見つけたテレビ番組は、その不可思議な様子を面白おかしく世界に放映する。
そうして放映された結果、彼彼女等は家族ごと行方不明になっている、なんていうことが多々。いや、大半が行方不明になっていた。

流石に放置するのも後味が悪いので、とりあえず私はネット回線を通じて米国国籍を取得。方法については、某国防長官殿に彼自身の不正の証拠や、彼の政敵の不正の証拠、M6の改修案など色々送りつけて無理矢理認めさせた。相手に利を与え、此方に敵対する不利を示し、此方の利と相手の利を指し示す事で相手に納得しやすい状況を作る。
Win/Winの関係であると同時に、如何考えても自分の利が多く、さらに相手を敵に回す必要も利も無い。そんな状況に成れば、誰だって口をつぐむ事を選ぶ。

そうして米国国籍を手に入れた私は、次にその国籍を利用して米国にIT系企業を設立。私と言う演算装置を用いれば、プログラムの設計なんて物はチチンプイプイと言うものだ。何? それは死語だ?

……こほん。

まぁ、そういうわけで、米国名:キャロル・ドーリーの設立したIT系企業、ファントムタスク。
色々混ざってる? 別に意味は無い。強いて言えば、他に名前がパッと思い浮かばなかったからだ。
で、自慢の演算能力を駆使してプログラムの作成に株取引なんかを繰り返し、あっという間にある程度の資金を生み出す。

それを使って、北米、中米、南米、日本、南中国、ドイツの各所に小さな分社を建てる。といっても中にあるのは、居住性を完全に無視した大きなサーバーが一台立っているだけ。温度は常に最低に保たれ、他には監視カメラくらいしかついていない、各国のサーバー拠点。
それらを経由する事でさらに大量の情報をやり取りし、尻尾きり可能な根を世界に張り巡らせる。

で、上記と同時にもう一つやっている事がある。
プランB、ミスリルもどきの建設である。この時期ならば未だミスリルは出来ていないはずだ。国際救助隊という理想を掲げて、それに向けた下準備の最中、といったところか。
其処で私が行うのは、私と言う最上位権限を思考中枢とした完全な箒型組織。
私の目指す組織は、組織にして組織に在らず。軍部を持たない亡霊のような、名前の無い組織。

先ず、此方の人間に指定した子供を買い取らせる。大国ならまだしも、途上国なんてその辺りは適当だ。むしろ口減らし出来て、金も手に入るなんていうのは喜ぶ親さえいる。
次の手段に雇った傭兵に子供達を誘拐させる。此処はかなり心苦しいのだが、下手に放置すると一家郎党まとめてアマルガムに消されてしまうので、仕方ない物として諦める。
そうして回収した子供達を此方の用意した米国の某所でまとめて教育する。本当はこの時点で日本に引っ張り込みたいのだが、残念ながら日本の閉鎖的な環境は此処にきても変わらず、その点米国は多国籍・多民族国家である為融通がとても効く。
此処で(海兵隊的な意味で)エリート教育を施された彼等彼女等は、その後ファントムタスクと縁の深い各企業に流れていく。

彼等自身には、自分達の存在に対する危険性を確りと教え込んでいる為、余り目立つ行動をしようとはしない。
それでも接触してくるミスリルやアマルガムには、寧ろ積極的に協力をすることで内部情報を流してくれると嬉しいとだけ言付けてはいるが。
因みに教育施設を出た時点で、彼等彼女等は親元に帰還することが許される。一定以上の戦闘訓練を積ませた彼等なら、二流程度の相手は逃げ切るだけなら何とかなる。

さて、それとは別にあるのが、強襲部隊。
これはウィスパード同士の感応能力を利用し、捕らわれのウィスパードを救出する為の部隊だ。
ウィスパード同士には共感……いや、共振だったか? そういった互いに互いを感じ取る能力がある。
相手に渡れば厄介でしかないが、此方に一定数がある以上、それをセンサーにしない手は無い。
各施設を強襲しては、個人情報を抹消し、此方の施設で新たな個人情報と共に保護・治療を施す。
ヤク中にすることで脳みその中のブラックボックスから情報を取り出す、という手法らしいのだが、なんともスマートではない。
こんなことを態々せずとも、ウチならばテスタメント辺りを使えば一発で脳内情報のやり取りなんて出来るのだけれども。


14歳、中学一年生になった。
M6を初め、様々なオーバーテクノロジーの影響が顕在化しだし、歴史との技術的乖離が進行してきている。
そろそろミスリルも本格的に活動するようになってきたはずだ。
テスタロッサ一家の悲劇は、何とか干渉しようとしたのだが、干渉しようとした途端に各地でなぞの停電やら自身による断線、突然の竜巻などにより失敗してしまった。

相変らず世界の修正力は滅茶苦茶だ。

現状、ファントムタスクはかなりの大企業になってきている。
いや、ファントムタスク自体はとても小さな会社なのだ。世界各地に支社があるとはいえ、結局の所社員は俺一人のワンマン運営。ただ、ファントムタスクの共産企業が多く、それらを纏めるファントムタスクグループは大企業の一角と認識されているのだ。

で、最近米国においた本社(ガワだけの無人ビル)に調査官だか何だかがやってきた。此方の余りにも的確すぎる株のやり取りに、インサイダー取引の疑いが持ち上がったのだとか。
まぁ、ウチは実質有限会社。個人経営の下町の雑貨屋――いや、出店みたいな規模でありながら、同時に世界に根を張る大企業と言う、自由経済主義の支配層からしてみればなんとも悪夢のような存在なのだ。
一応しっかりと税金は納めているものの、業付くの阿呆共は一度此方の資産を差し押さえようとしてきた事が会った。

即座に各所の資金を引き上げ、各地に存在するダミー会社に分散。それと同時に情報による報復攻撃を行ったのは懐かしい思い出だ。

まぁ、そんなトラブルはあったものの、現在の米国は史実よりも若干ながら技術の発展速度が速い。
全てが自分の成果とは言わないが、少なからず自分の介入の成果だと誇るところはある。





さて、そんな米国とは別に、実はソ国にも触手を伸ばしていたりする。
ソ国は社会主義なので、米国のように経済から食い込むというのはとても難しい。然しあの国の面々は、外貨や技術に対して酷く貪欲な面がある。
ネットスラングで表現するなら、クレクレ君なのだ。

まぁ、其処はさしたる問題ではない。
此方では国籍は取得せず、情報のやり取りだけに留める。
といっても、此方から提供するのはリーヴェニ……サベージの改良案や、OSを実際に改良したり。
因みに接触したのは政府側ではなく軍側、その中でもグルーとか呼ばれてるセクションだ。
連中はあの国の所属ではあるものの、やはり軍人らしい面が強い。おかげで何とか交渉が纏まっているのだかありがたいことではあるのだが、選民思想というか、そういう思想に被れた政府側に比べてなんとも気の抜けない交渉が続く。まぁ、悪くは無いのだけれども。

そうそう、ソ国の軍部と交渉している間に、なにやら変なあだ名がついた。私の呼称だと思うのだが、Ведьма Cyberという記述が議事録に記されていたのだ。
何の事かと調べてみて、思わず笑ってしまった。そういえば今回は名乗っていなかったのだが……。
まさか、昔の綽名とこんな所で再開するとは思わず、実体で苦笑してしまったのだった。

さて、そんなわけでソ国にまで手を伸ばしたわけだが、この状況で一つ布石を打っておく。そう、何時か来る日の為に。




「ただいまー」
「おかえりなさい」「おかえりー」
「いやぁ、疲れた。新人共の研修の為とはいえ、この年で滑走路50週とか死ねるね。表情には出さなかったけど」
「お父さんお疲れ」
「ありがとうさっちゃん。――うん? サッちゃんは何してるの?」

父が覗き込む画面に映るのは、なにやらゴチャゴチャとした線が書かれた画像データ。
漸く普及しだしたパーソナルコンピューターと呼ばれる代物だが、初期型ではあるものの、登場と時期を同じくし、父にねだって一台購入してもらったのだ。
残念なことに、父や母はアナクロな人間で、PCの操作と言うものは出来ないらしいが。
その画面に映し出されるこのデータファイル。……うん、父が興味を引くとは。これも何かの因果かな?
「うん、ネットに何かデータが流出してたみたい」
「流出って――穏やかじゃないね。何のデータなんだい?」
「うん、ASの基礎設計データだって」
「――はっ!?」
言った途端に絶句する父に、思わず苦笑する。まぁ、いきなりそんなことを言われれば驚きもするか。
この時代、日本はASという技術に対して未だ何処か不信感を持っていた。何せ人型兵器だ。確かに浪漫では在るが、それが実際本当に役に立つのか、と。
まぁ、私も確かにASは環境に左右される兵器だとは思うが、アレは治安維持や災害出動なんかと、兵器としてではなく、作業機として多々使える場面は多いと思うのだけれども。
「ほら、これ」
「こ、これは――見たことの無い形だけど?」
「うん。ASの技術をフィードバックした作業用パワードスーツ、じゃなくて、パワードスレイブ? だって。しかもこれ、流出したんじゃなくて、もしかしてそれに見せかけてネットにわざと流したんじゃないかな?」
ほら、とそう言ってみせるのは、データの頭に記された小松製作所とCarroll Dollyのサイン。
――そう、実は自作自演である。

「こ、これはまた」
「駆動系は油圧式、操縦系はASのそれを流用、サイズと出力を抑えて、軽トラ二~三台分のコストで、汎用的な性能……だって」
言いつつ、添付されていた画像データを開いてみせる。
其処に移されていたのは、試作機と思しき黄色と黒にペイントされた、設計図を実物にすればこんな姿になるのではないかという予想通りの機体が映し出されていた。
隣に移された人影と比較して、サイズは4.5メートルくらいだろうか。
「こ、これは……まさか陸の連中かっ!!」
と、なにやら父は呟くと、脱いだ制服を肩に担ぎ、大慌てで玄関まで走っていこうとする。
「あ、お父さん!」
慌ててデータをまとめ、入れっぱなしにしておいたフロッピーに焼いておく。フロッピーではある程度の情報量しか入れて置けないが、URLのメモを添付しておいた。此処から引っ張れば、同じデータを手に入れることが出来る筈……というか、そういうようにしてある。
用意したフロッピーを父に向けて投げると、父はニカッと笑い、「さんきゅー!」と下手糞な英語で礼を言って、そのまま何処かへ向けて駆け出して言ってしまった。
「あらあら、お父さんは?」
「んー、何か火がついたみたい」
「あらあらまぁまぁ」

PS――パワードスレイヴは、現時点から換算して、大体20年後くらいに流行する筈の技術だったりする。ASの技術を流用した作業用重機。後の世で、ASには劣るものの、それまでの重機に比べ途轍もない汎用性を示したそれ。
といっても、この程度は十分に現行技術でも再現できる。要は発想の問題と言うだけだし。
因みに名称はオッコト。形状は丸みを帯びた、東側よりも西側のそれに近い。構造もシンプル極まりないそれは、けれどもそれ故に耐久度はとても高い。

ロボットマニアの父がこんなモノを見れば、そりゃ興奮もするだろう。
何せ父は何時も言っているのだ。何で日本は未だにASを組織に組み込まないのか、なんて。
きっと父が自衛隊に入隊する前にASが存在していたら、父は空ではなく陸に行っていたことだろう。
いいのだろうかそれで。
「さっちゃーん、先にご飯にしましょーか」
「はーい」
まぁ、とりあえず私達は食事だ。――おぉ、今日は鶏肉のスパイシー丸焼きか。
各種香辛料でスパイシーに味付けされた鶏肉を丸ごと焼いた、豪快な料理。
とても母子二人だけで食べるような食事ではないが、美味しい物は美味しいのだ。
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オリジナルが書きたくなってきた。

2013.02.22 (Fri)
久々に一次創作が書きたい気分。
候補としては
・今再び流行り出したMMORPG。 自分で書くなら、非レベル制のスキル制にするんだろうか。
・異世界トリップ 異世界勇者召喚から始まって、異世界召喚勇者掲示板みたいな話にまで行き着いた現代。なら少し遡って異世界失踪事件物なんて如何だろう。
・学園トリップ物――ギャルゲの世界に来てしまいました、なノリ。但し私はギャルゲが苦手。


こんな事を書いてると、中断作品の続き早く、なんて言われるんだろうなぁ……。

03 夜の学校は魔境

2013.02.21 (Thu)

そういうわけで色々あった昼は過ぎ、漸く自由な時間、放課後も過ぎて日は沈み。
独断と偏見と法律の裏側を駆使して、簡単に言うとコネでなんとか手に入れた『寮の一人部屋』で一人ゆっくりと香るコーヒーを楽しんでいた。
いや、私は別にコーヒーにこだわりが在るとか言うわけではない。砂糖もミルクもドバドバ入れる、コーヒー好きな人間にしてみれば冒涜的と言う飲み方を好む、背徳的コーヒー好きだ。……どんな表現だ。
いや違う。話を戻そう。そもそも私がコーヒーを……いや、何処に戻そうとしているんだ私。
ではなくて。
私は多重転生トリッパーに分類される存在なのだが、そんな私に付けられたコードネームは『演算』。演算娘とか呼ばれることも在るが、大元と成った人間の人格は男性だったりする。もう凄まじい年月を女性として過ごしたし、まぁ、その、なんだ。色恋沙汰も多々繰り返した。最早男性女性に拘るような年齢でも無い。というか娘と付けられるような年齢でもないのだが、まぁその辺りは好意的に解釈しておこう。ババアとか呼ばれたくは無い。
そんな多重転生トリッパーな私は、コードネームの通り演算能力という一点にかけて、私の所属するトリッパーコミュニティー、代行の管理する部においては間違いなくトップを担っている。まぁ、その分戦闘能力においては最底辺なのだが。その代わり、私は社会性においてとても有利な存在であったりする。
例えば現在の私で言えば、私の属するコミュニティーを背後から支援して、例えば私の両親を極端に出世させて、生来中流だった家を上流に押し上げたりとか、父親を取り込んだコミュニティーを安定させたり、そのほかにも世界中の投資家の一部に私の端末を預け、適宜指示に従う限り利益を与えると言う契約で、いざという時に世界経済を裏から動かすことが可能になったりしている。
そうしたコネ、というか形成したコミュニティーを利用し、先ず最初に私が自分の利益として得たのが、この学生寮の個室という、至極如何でもいい物だったのだから、我ながら苦笑が零れた。
とはいえ今考えればこれは凄まじいファインプレーだったのかもしれない。何せあの学校の学生寮なのだ。凄まじい確立で他の転生者とバッティングしていた可能性が高いのだ。
何せ転生者には必ず付与される、というか発生するスキルに『奇運』というモノが存在する。これは物語で言う主人公属性から主人公補正を抜いた物だ。要するに、名探偵が自ずと事件に遭遇する、と言う奴。但し解決できるか不明、と言うのが奇運だ。しかも厄介なのが、この奇運同士は引き合うのだ。
だから、この部屋の外から聞こえる爆音とかはきっと気のせいだと錯覚する。完全防音の学生寮が地味に揺れているような気がするが、まぁきっと多分気のせいなのだ。

と、そんな事を考えていると、不意にスマホが音を立てて鳴り出した。綾乃から連絡でも来たのだろうかと画面を覗き込むと、其処に表示されているのは綾乃の名前ではなく、代行という不吉な二文字。
「……もしもし」
『やぁ、演算。調子は如何だい?』
「文句を言ってもどうしようもないのは理解してるが、酷いものだよ」
『はっはっは。いやまぁ、その、ゴメンね?』
と、なにやら素直に謝る代行。如何したのかと首を傾げつつ話を聞いてみて、思わず額に手を当てる。
代行曰く、最初この世界への介入以来を受けたとき、この世界に関する情報は単純に何処かの世界で発表された腐女子ゲーであり、問題が在ると言っても内側からではなく外側からの介入で十分ことが済む問題だ、と記載されていたのだ。それ故に私の休暇先としてこの世界が選ばれたのだ。
……が、その実はただの世界ではなく、腐女子ゲーを模倣して、どこぞの転生神が面白半分に生み出した世界なのだと言う。どこぞの世界でこの腐女子ゲーが流行り、其処を管理していた某転生神。リクエストをとっても全員が全員この世界をリクエストした為、なら全員此処にブッコメ! と突っ込まれたのがこの世界なのだと言う。
つまり、本来なら見過ごされていた筈の不正書類。そこに休暇半分で私が介入した為不正が発覚したという事。
この一軒で某転生神は更迭されることに。
「では、一件落着?」
『まさか。その世界に送り込まれた転生者達はもうその世界に定着してるんだし』
「………はぁ」
しかも最悪なのが、この世界のモデルとなった世界がかなりヤバイ世界だと言う点に在るのだとか。
そんな事を言いつつ、不意に手元に白い光が集まっていく。ポンッ、とVRMMO辺りのアイテムドロップが如く手元に沸いたソレ。如何見ても市販の大学ノートだ。表紙に書かれているのは、バベル語(と呼んでいる我々の言葉)で「攻略まとめ」と書かれていた。
『一応アフターケアってことで、この世界の大元になったゲームとそのスピンオフ、そのマトメと攻略情報ね』
「ありがたい。でも、何でバベル?」
『万が一内容を一般転生者に知られると拙いからね』
バベル語、というかバベル文字なら一目見ただけで読める人間はまず存在しない。余程転生を繰り返しているとかなら可能性は無いでもないが。
『出来れば見て覚えたあとは燃やして欲しい。万が一が無いとは限らないからね』
「了解」
まぁ、確かに万に一つ、『すべての言語が理解できるチート』をもった人間が居ないとも限らないのだから。
代行の言葉を聞きつつ、軽くノートに視線を走らせて、再びくらっと来た。なんだこれ。
先ず本編の学園ラブコメルート。各員に問題は無いのだが、親友キャラの寺町京子の隠し友好度がマイナスに突入した時点で発生する皆殺し編、各ヒーロールートに突入した時点で発生するライバルヒロイン事件。ヒーローの中に存在する人外ヒーロールートには流血沙汰が在るし、スピンオフが異世界トリップに退魔師モノと超能力モノと魔法少女モノ!!??
「商業展開広すぎるだろうっ!!」
『いやぁ、それほどの人気だったみたいだよ?』
しかも展開によってはスピンオフ同士でクロスオーバーするらしい。めんどくさいっ!!!
そんな事を考えつつ、ふと眼に留まったのは時系列を整理して記載されたページ。本編に加えスピンオフ側の時系列まで合わせて書かれたページの、その中の一つ。本日の日付、その夜の時間帯に一つイベントが記載されていたのだ。
何となく嫌な予感を感じつつページをチェック。
この世界の原作である『プリズム・ロード ~私と彼と学園生活っ!~』の番外編、『戦う魔法少女のお仕事』における、主人公の少女とメインヒーローの彼の出会いの話。
……今初めてこの世界の原作の名前を知ったんだけど、凄まじい。
――ではなくて。そのイベントが今晩在るのだそうだ。
「それで、私にどうしろと?」
『別にどうしろ、とは言わないよ。でもね、コレ放置するのは拙いと思う』
「というと?」
『多分だけど、転生者の子達が介入するんじゃないかな?』
原作における初対面の場面。最も印象に残るであろうそのシーン。そのシーンに介入できるとすれば……それは原作(この場合は『戦う魔法少女~』のこと)に対する大きな利点となるだろう。それを狙い、転生者達が介入を行なったとしても、まぁ不思議ではない。
『彼女達が、平穏無事に事を運べると思うかい?』
「……………………」
それは、なんだろうか。刹那的快楽主義者のあの腐女子たちに、物語を最初から最後まで見据えて、その結果最善を目指す、何て事が出来るだろうか。
彼女達がOTAKUであればまだ良かった。OTAKUは自らの快楽に素直だが、それと同時にこれでもかと言うほど根っこが臆病だ。OTAKUはHENTAIで在るが同時に紳士なのだ。臆病であるが故にそう有らざるを得ないのだ。
然し腐女子は違う。OTAKUと違い欲望に素直且つ周囲を押しのける強引さを持ち合わせている。しかも腐女子は間違っても淑女にはならない。
『マトメに書いてるんだけど、この出会いって割と重要で、裏設定で魔王の血を引く彼女が魔に魅入られたとき、愛の力で自分を取り戻す、ってシナリオが在るんだよ。まぁ、この魔法少女のは大元の腐女子ゲーと違ってヒーローが固定されてるから』
「魔王の血、愛の力、うぇぇぇ……」
ダメだ!!! 臭い、くさすぎるうううううっっ!!!
『そういや君って、そういうのダメだったね』
「確かに色濃い沙汰は経験も在る。が、そういう青臭い言葉は苦手だ」
『君の色恋沙汰って、妙に老成しているのが多かったからね』
「やかましい。平均結婚年齢は20半ばだったぞ?」
トリップなら別だが、転生の場合は前後の私はある程度別人として認識している。故に、私は何度かは結婚もしているし子供も居たりした。その子達は何処かの三千世界で平和に暮らしていると願っている。
「で、行ったほうがいいんだな?」
『休暇を続けたいならね』
まぁ、実際世界が滅びてしまえば、この世界での休暇は其処で終わりとなってしまう。この世界、腐女子が大量で面倒は面倒なのだが、エイリアンの侵略があったり謎の大怪獣が大量発生していた並行世界から侵略者ガ訪れていたりとかな面倒な状況には無い。腐女子達のことを除けばとても住み心地のいい世界なのだ。
「仕方ない。行ってくる」
『ああ。気をつけて』
言って、簡単に服を着替える。
下手に衣装を用意しても目立つので、此処は簡単にこの学園の制服を強化魔改造(見た目は同じで防御力や各種耐性が急上昇)した物の上に馴染みの白衣とバイザーを装着して、と。
「……よし」
顔が隠れているのを姿見でチェックして、最後に玄関でブーツを履いて駆け出す。
イベントのステージは学園内の体育会系エリア・南公園となっていた。女子寮からは園内バスなり電車なりで通う距離なのだが、流石にこの時間にそんな公共施設は利用できない。しかも目的が目的だ。下手をするとドンパチに巻き込みかねない。
そんな事を考えながら、目的地の公園へ向けて一気に加速した。




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この世界の裏側。魔法世界と呼ばれる、魔法使い達の世界が在る。魔法使い達はその力を使い、世界の安定と維持のために日夜努力をしている――と言うのが公式設定の一文。
但し冷静にこの世界を観察してみると、実のところは大分様相が様変わりしてしまう。
この世界における元々の魔法使いと言うのは、嘗ての時代魔女狩りから逃れた魔女達、その中に紛れ込んでいたホンモノの魔女が見つけ、現世に繋ぎ固定した一つの世界が起源だ。
この世界は人造世界であるが故、その維持には莫大なコストが掛かる。嘗てその世界を作り出した魔女達は、その世界を自らの魔力で維持しようとした。が、その結果は失敗。一つの世界を並の人間数十人で支えるなど無理に決まっているのだ。
ソレに対し魔女達は、足りないならば在るところから持って来ればいい――古来からある魔術の定理として、外部からの魔力供給を考えた。
然し生贄を使うのは絶対的に不可能。何せ彼女等を排斥したのは、そうした外道の魔術に対する恐れ。其処から逃れる為に外道に落ちては本末転倒だ。
故に彼女等が選んだのは、世界に自然に生まれる魔力の――いや、世界の生命力の結晶、マギリングピースと呼ばれる代物を集めることだ。
これは世界の生命力の余剰分が結晶化したもので、ある意味純正の魔力の結晶といっても相違ない代物だ。
このマギリングピース、魔力の純粋な結晶であるが故、同時に万能機のような能力も持つ。つまり、願いをかなえてくれるのだ。
無垢な魔力の塊に、意志と言う方向性を与えて導く。原始的な魔法に近いのだが、魔術ほど洗礼されていないが故に暴走しやすい。
この暴走したマギリングピースを回収し、自らの世界の克てとする。これが嘗ての世界において魔法世界を維持する手段であると同時に、魔女及び魔法使いを正義と秩序の側に結びつけ流事に成る。

対して現在の魔法世界。
既に魔法世界の魔法使いは現行世界にこそ劣るものの、嘗て魔法使いたちが排斥された時代の総人口には匹敵し、彼らの未によって魔法世界を支えることは可能となっている。
それに加え、次代が既に科学の時代だ。魔法と言うものが異端であると知っている魔法使い達は、魔法世界に引篭もり、既に現行世界へのマギリングピース回収は行なわれていない。
つまり、現状それは完全に放置されてしまっているという事だ。

さて、話は変わるが、このスピンオフ作品『戦う魔法少女のお仕事』における主人公、佐々木 沙希 (ささき さき) は、現世に残る魔法使いの家系だ。嘗て魔法世界において魔王を名乗った彼女の父が、勇者である母に倒され、現世へ駆け落ち。現在平和に暮らしている、と言うものだ。
勇者と魔王の両方の素質を引き継いだ彼女はその身のうちに莫大な素質を持ち、その制御のためにも幼少の砌から魔法と言う技術を練磨していた。
そんな彼女の前に不意に現れたのが、現代に現れたマギリングピース。
大気汚染や人口の増加、様々な要因から世界が弱った現代において、『地球の生命力の余剰結晶』であるマギリングピースが発生するのはありえない。
然しこの場、この学園においてだけはその条件がひっくり返る。
優れた地脈に加え、優れた人材、自然の多いこの学園は、一種の異境だ。万人が優れた才能と力を持つこの異境に溜まった力が、龍脈を通して結晶化し顕現する。これがこの物語におけるマギリングピースだ。
純粋な地球の余剰生命力結晶とは違い、現代のマギリングピースはその生成由来に人がかかわっている。それ故にオリジナルのマギリングピースに比べ、現代のソレはかなり不安定且つ暴走しやすい。
しかし肝心のソレを封印できる魔法使いは既に現代には存在しない。そう、彼女を除いては。
偶々居合わせただけの魔法少女。でも彼女は此処に生きている。そんな彼女が戦うことを決意して、守るために戦っていく勇気の御伽噺。それがこの『戦う魔法少女のお仕事』という物語だ。
……『プリズム・ロード ~私と彼と学園生活っ!~』、に比べればかなり好みの作品なのだが、如何せん現実として相対すると疲れる。

さて、思考を現在に戻そう。
到着した南公園。普段であれば既に日が沈んだ今ごろ、誰も寄り付かないこの公園は本来静かなはずだ。
然し現在その公園の中。木々に覆われた林の中の道には、薄い魔力が充満し、一種の異界――隔離結界を形成している。私は霊能力が扱えるので、一応魔術系も多少は扱える。
だからこそ分るのだが、この結界が術式として編み上げられたものではなく、単純に高純度の魔力によって形成されている場でしかないという事が。
そうして更に視界を延ばす。其処に居るのは、巨大な黒い犬のような怪物と、それと相対する茶髪の私と同じ制服に身を包み、その手の先にうす赤い魔力を溜めている少女と、その背に庇われるようにして倒れている少年。
これが原作のシーンか、と一瞬息を付きかけて、思わず溜息が洩れる。
少女と少年の視線の先。其処に立つ巨大な黒い犬。けれどもその巨大な黒い犬は少年少女に向き合っていたわけではない。

「コレが私の必殺のぉ!!」「私のこの手が唸って光る、勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!!」「ディバイン!ディバイン!ディバイン!ディバイン! ディバイイイイイイイイン!!!!!」「ユニバアアアアアアス!!!」「今、必殺の、葬送曲!!」「我が魔剣技の冴を見よ!!」「チャンバー内正常加圧、コレでも喰らええええ!!!」

……カオスである。
案の定、とでも言うべきだろうか。目の前に広がるカオスは、腐女子転生者達によって形成されている。
つまり、本編介入ではなく、こちら側で魔法少女として活躍しよう、という思惑で現れた面々なのだろう。
まぁ、学校でハーレム建設して肉欲ウハウハ、なんて考えている連中よりは、魔法少女になって世界を影から守る私カコイイ! は幾らか健全だろう。うん、多分。
とりあえずこの現場如何したものかなぁ、なんて考えていると、不意に此方に視線を向けた魔法少女、佐々木沙希と視線が絡み合った。
小さく一つ息を吐いて、小走りに少女の下へと駆け寄っていく。
「貴女、大丈夫?」
「わ、わたしは。――っていうか、これは何ごと!? 貴女も関係者!?」
「私は違うぞ。……とりあえず、アレは連中に任せて、私達はこの場からさっさと離れたほうがいいと思うんだが?」
「そ、そう、ね?」
「ちょ、いいのかよ?!」
「君にあの戦場に対して何か出来るのかい?」
佐々木沙希のほうはすぐに納得したものの、その背後で腰を抜かしていた少年の方は若干反論を返してきて。とはいえ此処に居たところで彼に何かができるというわけでもない。
とりあえず佐々木沙希と共に少年――確か馬場蛮とかいう名前の少年の脇に腕を入れて、引き摺るようにして大急ぎでその場を後にしたのだった。





「で、説明してくれるんでしょうね?」
「その前に自己紹介だ。私は桜場雪吹。キミ達は?」
「私は佐々木沙希。高等部の一年生よ」
「俺もか? 俺は馬場蛮。同じく高等部一年生だ」
原作では私と同じAクラスであったはずの彼女と彼。然しこの世界においては腐女子転生者達の影響でBクラスに移動しているらしい。
そんな彼女等。とりあえず自己紹介をしたのだが。
「で、あれは何? 貴女は何? あれと如何いう関係!?」
「落ち着け。説明はしてやる……」
言ってから、如何したものかと本格的に頭を抱える。
とりあえず、転生者云々の話は絶対に出来ない。というか、その辺りに触れるのはルール上禁止だ。
故に語るならば、腐女子ではなく、あの怪物について。もしくは私と言う存在に関して、だろうか。
「先ず、あの怪物はマギリングピースの怪物、といって分るだろうか」
「マギリングピース? 何処かで聞いたような……」
「説明は省く。そういうものだと覚えておけ。で、あの戦っていた子達は知らん。魔法使いや魔女は私の専門外だ」
「ドキッ」
「うん?」
態々口でドキッって言う奴はじめてみた。じゃなくて。
「私は霊能力者だ。その昔死掛けたときに霊能力に目覚めて、知り合った霊能力者の下で少しだけ霊能力が扱えるようになった。此処へ来たのはその能力で違和感を感じたからだ。Did you understand ?」
「れ、霊能力者……魔法少女に霊能力者って、もう俺の社会常識はボロボロだ」
「世の中そんなものだぞ?」
言いつつ崩れ落ちる馬場蛮に呟いて、改めて佐々木沙希に視線を合わせる。
「さて、それで、魔法少女さん?」
「わっ、私は魔法少女なんて代物じゃ……」
「いや、俺の前で手を光らせておいて今さらそれは無理だろう」
「うっ……」
何か言いよどむ佐々木沙希。社会常識はボロボロとか言ってたくせに、中々いいツッコミをする馬場蛮。
「佐々木沙希。君はどうする? あえてあの戦場に突っ込むか?」
「まさか! なんで私がそんな事しなくちゃいけないのよ!! っていうか、フルネーム繋げて呼ぶな! 沙希でいいわよ」
実際、この状況なら私でも同じように判断するだろう。原作における彼女が、魔法少女としてマギリングピースに立ち向かったのは、あくまで彼女以外にマギリングピースに立ち向かえる人材が他に存在せず、彼女がやらねば誰がやる、というような状況にあったからこそ、彼女は戦場へと立ち向かっていったのだとか。
然し現状彼女の目の前に在るのは、マギリングピースの災厄だけではなく、ソレと立ち向かう数多くの魔法少女が居る戦場だ。しかも、如何見ても戦闘向けの魔法少女が多々居る戦場だ。
そんなところに、態々素人が死にに行く必要など、今の彼女は感じもしないだろう。
「ならばいい。嗚呼いう事に係わり合いに成っても、幸せに成れる要素なんて滅多にない」
「まぁ、私も自分から死にに行くような自虐的な趣味は無いわね」
その彼女の返答に満足げに頷いた。
「――ふむ、どうやら向うの戦いもそろそろ決着のようだ」
言って視線を元来た方向へと飛ばす。視線の先、南公園。其処には、静かに高まる魔力の気配を感じる。多分、最後の必殺技でもかます心算なのだろう。
……なんだろうか、数人分の必殺技で南公園が更地になるような予感を感じるのだが。まぁ、私には関係ないし。
「……ねぇ、良いのアレ」
「関わるな。ほうっておけ。私たちまであれの関係者にされるぞ!」
「……そうね。私は何も見てないし、何も聞いてない! アンタもそういう事でいいわね!」
「お、おう」
馬場蛮の答えに満足気に頷いて。とりあえず寮に戻るべく二人と共に夜の学園内を歩き出したのだった。



「ところで、二人はこんな時間になんであんな場所に? 逢引?」
「違うわよっ! 私は魔法の練習!!」
「俺は……寝てた」
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22 忍び寄る手

2012.10.24 (Wed)
麻帆良に入って早半年。最初に訪れたイベントは麻帆良祭。
アスナやエヴァが地味に食券を荒稼ぎし、千雨がコスプレイベントで最優秀賞をとったり。
UHBの面々も二度目の人生を満喫する最中、俺が何をしていたかと言うと、リインとお祭りを楽しみつつ、その背後で進行しつつある現実世界、国連を中心とした企みごと。
残すところ一年を切ったこの計画成就の為、最後の仕込みの為、ほどほどに遊んだ俺とリインは、来るべき年に備える為、早々に麻帆良の土地に対する小細工を開始した。

設置するのは、缶ジュース程度のサイズの小さな筒。
麻帆良全域、余すところ無く設置されたこの筒は、麻帆良と言う土地の魔力の層や分布を計測する為の計測装置だ。
此処から吸い上げられたデータを元に、来るべきイベントの足掛りとなるのだ。

「リイン」
「――はい。十分な量のデータ収集が完了しました」
「うん」

何故この時季にこんな計測を行うのか。それは、本番の時期を想定し、尚且つ麻帆良でこうした活動をするには、麻帆良と言う閉鎖環境が開かれ、尚且つ本番に近い条件での計測が必要な為。
要するに、本番――来年の麻帆良祭の時を想定している為だ。
この麻帆良を祭壇とした大規模儀式。
俺達UHBの計画第一段階にして根本。コレの成否こそがすべての鍵を握っているのだから。
「――それじゃ、そろそろ行くか」
「はい、我が主」
リインと手を繋いで、雑踏の中へと足を踏み出し、二人揃って静かに姿を消したのだった。


Side Lingyin

麻帆良最強の頭脳と呼ばれる彼女、超鈴音は、この半年でチェックした世界情勢のあまりの差異に、思わず頭を抱えて項垂れていた。
彼女にとっての21世紀とは、未だ魔法が秘匿され、その上で英雄・ネギスプリングフィールドがその「奇跡の軌跡を描き始めた時代」だった。

この時代のデータは十分に存在していた。
世界情勢、平均的な技術レベル、この先起こりうる大きな出来事。
更にネギ・スプリングフィールドの転機となった3-Aのクラス構成や、其々の簡単な背景など。

幾ら歴史に振れ幅があるとはいえ、それを考慮しても十分なレベルの技術と情報を持ち、この時代へと訪れた。
――その、筈だったのだが。

「……どうなってるネ、この世界」

彼女がこの世界に訪れて、まず最初に行ったのは戸籍の偽造。戸籍は麻帆良に潜入する為には必須の物であるし、偽造の容易い彼の国の国籍を取得した。
事前情報の通り、あの国は情報に対する処理がかなりザルだった。片手間に組んだ電脳侵攻プログラムでも、障壁突破を気付かれず、丸ごとごっそりと情報を書き換え、翌日には完成した国籍を手に入れられたほどだ。
そうして国籍を手に入れ、ある程度の地盤を築きつつ麻帆良へ訪れて。そこで更に地盤を強化し、漸く周囲に目を向けられる状況になって、先ず最初に気付いたのがUHBと呼ばれる大手企業の存在。
この時代、日本に名を残すグループといえば、雪広と那波の二つ。その筈だ。だと言うのに、何故かさまざまな分野で存在するUHBと呼ばれる企業。
そのときは気に掛けなかったのだが、次いで魔法業界側に目を向けて、目を剥いた。

『スプリングフィールドの五つ子』

「なんネソレは」
思わずそんな言葉を彼女が漏らしたのも仕方あるまい。何せ彼女の知識が正しければ、本来スプリングフィールドの子は一人、ネギ・スプリングフィールドのみ。
だというのに、五つ子? 歴史のブレだとかで、双子くらいまでなら理解できなくも無いのだが、五つ子?!
ご先祖様偉くがんばったネ、と思わず零しつつ、超鈴音は更に情報を調べた。

結果手に入ったのは、五つ子のうち2人が行方不明、残る3人はメルディアナで順調に飛び級を繰り返しているらしい。
細かい評価は自分の目で行うとして、手に入れた教師の評価(メルディアナからMMへ送られたものの電子情報)をチェックしたところ、何かご先祖様の評価は相当微妙な事に成っているらしい。

ネギ・スプリングフィールド。
彼こそが我がご先祖様であり、スプリングフィールド兄妹の長男である存在。
本来の歴史では、その胸のうちに大きな闇を抱え、それでも光を目指して歩いたとされる英雄だ。
だが、この教師からの評価を見ると、何か相当怪しいことになっている。
どうやらご先祖様は、スレネギになってしまっているらしい。
両親に対する尊敬は無く、知識こそ求めるが、周囲との関わりは殆ど求めず。
ただ己の未を守るために、魔法使い見習いの度を越えた魔法修練を行っているのだとか。

――これは……どう考えるべきカ……
彼女にとって、ネギ・スプリングフィールドは越えるべき壁である。
そんな彼が強くあるのは、ある一面では好ましいことだ。壁が大きければ大きいほど、ソレを乗り越える為に尽力する。それは彼女にとって望むべき事なのだ。

然しだ。歴史において、ネギ・スプリングフィールドの最も大きな特徴と言うのは、その単体戦力などではなく、周囲の――彼を支えたとされる、彼の生徒達との絆の力だったと語られている。
単体戦力の向上は望ましいのだが、人間関係を捨てているというのは……。

更に次の記述を見ていく。

ニーギ・スプリングフィールド。
病弱なピアニスト。男女問わずに人気があり、また反動さえ考えなければ魔法の才能も十分にあるのだとか。
なんでもメルディアナを襲った魔法生物襲撃事件――コレも彼女の知る歴史には存在しない――の祭、彼は血を吐きながら燃える天空を20連発。その大半を見事に薙ぎ払って見せたのだとか。
超は思う。燃える天空20連発して生きていられる人間と言うのは、果たして本当に病弱と言うのだろうか、と。
少なくとも自分は其処まで燃える天空を連発すれば、間違いなく反動で死に絶える。

ヌーク・スプリングフィールド。
子供ながら好色な少年で、常に女の子を周囲に侍らせているのだとか。この時代既にピンクい魔法具は結構有るし、多分常用者なのだろう。然し英雄色を好むとは言うが、英雄未満が色を好むのはどうにも好きになれない。
此方は戦闘スタイルなどがナギ・スプリングフィールドにとても類似していて、偶像としてはとても利用しやすいのではないか。女を宛がえばある程度操る事もできそうな、駒としてはかなり使い勝手の良さそうな存在、として評価されていた。
この教師MMの草(スパイ)カ、などと考えつつ、超は思わず頭を抱えた。

いや、コレは良い。ご先祖様に関しては、多少の性格の差くらいは麻帆良に来てから修正してやれば良い。
正しい教育を与えてやれば、人間と言うのは正しく成長する。というものらしい。

さて、そうして魔法世界の情報をある程度仕入れた超は、今度は麻帆良での戦争の準備を整える為、此方の世界での資金稼ぎを行うことに。
彼女にもまほネットを使うことは出来るのだが、下手にマホネットをつかって資材を集めた場合、如何足掻いても魔法使い側にその不審な物流を感知されてしまう可能性が高い。
であれば、魔法を可能な限り排除した、科学による戦力作成。これが今現在最も安定した戦力の補充になると、彼女はそう考えていたのだ。

……ところがだ。

量子力学研究会や情報制御開発団やらを巻き込んで開発した超高性能演算装置スーパーチャオりんを使った経済操作による資金捻出。
コレを使っての資金作成は、当初順調に資金を生み出していたかのように思われた。
ところが、システムの稼動が順調と見、超が少し管理画面から目を離したその隙。超の経済操作システムに抵抗するように世界が鳴動を開始し、気付いた頃には超の資産は元々の物からかろうじて若干増えたか、程度の物にまで戻ってしまっていたのだ。

システムのバグかと超は即座にSチャオりんを検査したが、問題どころかプログラムにミスの一つも存在しない。
一体何がと再び経済操作システムを稼動させるも、再びまるで何者かに妨害されるかのようにそれは失敗に終わる。
何か空恐ろしいものを感じた超は、為らばと為替、先物取引と、様々な手段での資金捻出を目論んだ。……のだが、結果としてそれらの大半は見事に失敗に終わる。

その時点で超は、自らを覆う不可視の手のようなものの存在を感じ、それを探るべく世界に対してハッキングを開始。遮二無二なって探れば、自分の頭脳を持ってすれば敵の痕跡くらい把握は出来るだろう、と。

ところが。何故か世界の現在のネットワーク強度は、彼女が想定していたソレよりも一回り以上強靭なものとなっていた。一般人の使うネットワークでも一回り以上、企業なら数倍。国家に至れば数十倍以上にもそのセキュリティーは予想を上回っていたのだ。
それらを何とかかいくぐり、漸く見つけた国連組織というコトバ。ルートは案の定セキュリティーの甘い、彼女が国籍を偽造した国家のネットワークから。
そうして彼女が侵入したサーバーにあったのは、国際魔法犯罪取締法という文字。
ギョッとしつつ、それら情報を入手する為データを手元にダウンロード。回線を閉じ、改めてそれらデータをチェックしようとしたところで、Sチャオりんが火を噴いた。
「なっ?! ウィルスカっ!!」
慌てて伏せた彼女の背後、Sチャオりんは轟音と共に四散。Sチャオりんの置かれた研究室は派手に吹き飛んだのだった。



コレは間違いなく彼女に対する警告だったのだろうと、彼女は後になってソレを理解した。
理解したが、それでも彼女はとまるわけには行かない。彼女を此処に送り出してくれた、未来の彼女の仲間達の為にも。
――だが、だがどうする?
研究の為、開発の為には資金が必要。だが、資金の捻出は如何足掻いても難しい。
一般的な研究成果の販売では足りないし、目的の時期に間に合わない可能性も高い。
「……ダが、コレしか方法が無いのモ事実カ」
口惜しげに呟いても、彼女は諦めない。
来るべきその日に備え、彼女は再び前へ進むべく、歩みを止めることは無かった。


side Lingyin end



side MAHORA

現在、麻帆良学園は危機的状況に陥っていた。
国家からの税務官の襲来、魔法世界側との連絡の不安定化、下部組織の喪失による収入の低下などなど。
物理的な意味では、麻帆良は平和そのもの。ただ、経済面で言えば麻帆良は既にボロボロの一言に尽きた。
麻帆良と言う土地は、外部に対してとても閉鎖的な土地といわれているが、実際のところ麻帆良ほど外部に依存した土地は存在しない。
その主だった収入源、物流、諸々は外部依存。麻帆良内部での経済流動など、精々資産の減衰に若干の歯止めを掛ける程度の能力しかない。

本来、麻帆良の目的とは、日本と言う土地における魔法業界の統括拠点としての役割が求められていた。
MMの意向を受け、日本に分散するネイティブ魔法使いを統べ、その対価として金銭を得る。
その金銭で麻帆良と言う都市を運営し、其処から得た収益を魔法世界側へと送る。
こうして魔法世界側が外貨を得、本国が潤うというシステムが構築されていたのだ。麻帆良の存在意義としては、他にも魔法世界崩壊後の橋頭堡という意味もあるらしいが、ソレは現在機能していないのでまたおいておく。
つまり麻帆良とは、魔法世界――いや、MMという組織が旧世界側から外貨を奪う為のパイプラインであった、と言うことだ。
何せMM、というか、魔法世界というところは未開にも程がある。人命救助の為という建前で奴隷法を施行するような馬鹿げた世界だ。とてもではないがまともな近代的経済網なぞ育ちはしないだろう。
故の現実世界側からの搾取であったのだが――現在、その搾取の為のラインが完全に破壊されていた。

「何故……」

近衛翁は一人、女子中学校校舎の奥に存在する学園長室で頭を抱えた。
麻帆良学園の運営。其処に発生する使途不明金。MMへ送られたそれらは、当然ながら公的な資料には記載できず、記載された資料は厳重な認識阻害と共に金庫の奥へと封印されていた。
ところがこの危機的状況に訪れた税務官は、非魔法使いであることは間違いないにも拘らず、一瞬でその金庫を見抜き、中から資料を没収していってしまったのだ。
咄嗟に記憶消去でソレを妨害しようとしたのだが、記憶消去は何故か発動する事は無く、近衛翁はただただソレを見送る事しかできなかった。

あの資料が見つかった以上、MMと言う組織がなんであるかは知られずとも、大量の使途不明金を生み出していたと言う事実は周知の事実になるだろう。最早ソレを隠すことは不可能。
であればコレを誰かにかぶってもらい、自らは一刻も早く麻帆良の機能回復に努めなければ――。

そんな事を考えながら、即座に行動すべく手を回す。
――いや、手を回そうとしたところでふと気付く。今、自分の手元に、回せる『手』など存在しない事に。

現在、世界各地に置いたMMの支部、そこが吸収していた土着魔法使い達の組織は、次々と謎の失踪を遂げている。その結果、それまで土着の魔法使いたちが守っていた霊的治安維持がなされず、結果そのしわ寄せが『土地の管理者』を自称するMM系組織へと迫っているのだ。
世界各地で同時に起こったこの現象。最も豊富な人材を抱えていた麻帆良は、この事態に世界各地への職員の派遣を決定。特に嘗ての戦争の英雄と名高い高畑・T・タカミチなどは、本職が教師であったのは嘗ての事かのように、既に年単位で麻帆良に戻ってきていない。
しかもこの土着系の消失現象は着々と進み、徐々にだが麻帆良の人員を以ってしても対応が追いつかなくなってきている。
そんな魔法教師的にも人員が不足している現状、裏帳簿の罪を自分の代わりに被って潰れられる程の重役の魔法先生と言うのは存在しない。
いっその事、一般教師で矢鱈と口うるさい新田教諭辺りを生贄にしてしまうのもいいかもしれないが、残念ながら彼は都市経営部には関わっていない、純然たる教諭職員だ。
内心で小さくしたうちをしつつ、どうしたものかと悩む近衛翁。

この麻帆良と言う都市は、MMの外貨吸収ラインであるが故、そのオコボレを喰らうことで此処まで成長できた。とてもではないが、単一都市としてだけでの成長は見込めるものではない。
此処までこの町を育てたのは己であり、今このような場所でこの立場から降りることはあってはならない。
何とかしなければとは思うが、うまい手がすぐさまは思い浮かばない。
どうした物かとイラつく近衛翁は、そのまま延々と自室の中で管を巻いているのだった。


side MAHORA end







「おい聴いたかよ」
「おぅ。聞いた聞いた。ついに攻撃してきやがったんだろう」

現在、国連軍基地ファウンデーションでは、つい先日起こったサイバーテロの話題で沸騰していた。

「ああ。幸い擬装回線に気付かずにダミーサーバーからウィルスを持ってったらしいが……」
「それでも、つまりコレは……」
「事の始まりが近いって合図……」

そう、超の仕掛けたサイバーアタック。それは実のところ、完全に予期され、見事なまでに回避されてしまっていた。
超は知らないが、彼ら国連地球防衛軍のメインフレーム・マザーコンピューターは集積量子コンピュータ『オモイカネ』『ヤゴコロ』である。従来型のウィルスソフト、魔法による電子精霊問わず、それら全てを圧倒する超越的電脳存在である彼らの前には、その程度の物は最早通用し得ない。
言ってしまえば此処にある技術は300年後の技術相当。たかが100年後程度の技術でそれを知覚するのは到底不可能なのだ。

「――まぁ、それもギリギリだったんだけどな」

何画がかといえば、超の攻撃を受けるまでに最新式の物へグレードアップできるかどうかが、だ。
正直な話、従来型のオモイカネだけでは超の侵攻を防げるかは五分五分であった。嘗てのアレは、ガワこそ頑丈な作りの代物が多いが、中身に関しては俺とリインによって作られている為、偏った技術であったりピーキーであったりとする上に、ソレを改良したのがあのオタ丸出しな転生者達、その中でも頭脳チート持ちだ。
他人に理解させようと言う努力を放棄した元引きオタのような連中だ。他人が使うことなど考えず、何処まで文字分たちに使いやすいように仕上てしまっていたのだ。

便利だからと他人のパソコンの中に用途不明のアプリを仕込みまくるような物である。

で、気付いたときにはメインシステムはスパゲッティコード、操作は凡人お断りシステムという有様。正直コレは拙いかもしれない、何て考えていたところに、名乗りを上げたのは幾人かのUHBの人員。
彼らは自らを「多重トリップ・転生者」と名乗った。
曰く彼らは、このような転生・トリップを各々に何度か経験しており、その中で豊富な研鑽を積んでいるのだという。

先ず最初に問題点を提起したのが高谷理子。
正直何処かで聞いたことあるような名前だなぁ、何て感じつつ、彼女の提起する問題について質問したところ、上述の万人に扱えるかと言うとそうでもないファウンデーションのシステムに関する問題だった。
システムは万全に扱えてこその代物だ。それが万全に使えないというのであれば、この基地は正直な話欠陥機という事に成ってしまう。
そりゃ拙いと、提唱者の理子を主軸に改良計画班を立ち上げたのだが、コレが面子選びに難航。
頭脳チートは何人も存在するものの、その頭脳チートを万全に使いこなせている人間が少ないのだ。
かく言う俺もそうなのだが、回転が速くなりすぎた頭脳を持つと、如何しても「このくらいなら」「この程度なら」とついついオーバースペックに持っていってしまう上、従来の加減というモノが今一つつかめないのだ。

暫く混雑する面々の中で何とかやりくりしつつ、依然として結果の出ないそんな状況。
コレはもしかして拙いんでないか、とそんな不穏な雰囲気が浮き上がってきた最中。3人の人員が手を挙げた。



マサキ、フブキ、ノア、ガイと名乗る4名。――此処に理子を加え、後に武闘派技術班と呼ばれるようになる5人だ。

地味に多重トリッパーであったらしい理子は、ガイナ系世界で研鑽を積んだ『究極の一般人』。一般人として戦い、戦い抜き、その果てに逸般人を超えた一般人に至った凄まじい一般人である理子。
頭脳チートこそ持たないが、その凄まじい研鑽の能力は、『訓練さえ詰めば使える』システムの構築に重要な役割を果たした。

フブキ、本名桜庭吹雪(自称)。外見年齢は20ほどの胡散臭い無表情の女性。
この「ネギま世界の次元世界」に存在していた時点で相当胡散臭い。スカウトしたのは自分なのだが、ソレまで事務仕事において優秀という印象しかなかったのだが、後にこの女をカズのダモーレで調べた所とんでもない存在だという事が理解できた。
三つの特質のうち、二つが制限系・デメリットのみの特質だったのだ。
本人に聞いたところ、今回は転生ではなくトリップで、偶々この世界に訪れたのだとか。
ネギま系世界へのトリップ・転生は何度か経験しており、独自の問題解決法も編み出してはいるが、ソレを口にする心算は無い、との事。
「お前の解決法を楽しみにさせてもらう」とか目に愉悦を浮かべて呟く、なんとも腹立たしい美女である。因みに発言が一々厨二病臭いのは仕様だそうだ。

野亜。本名不明の白い少女。
ノアと呼称されるこの少女。彼女も多重トリッパーらしいのだが、細かいことは分らず、唯一の手がかりが吹雪とこの世界以外での既知だという点。ただ、吹雪が野亜を見た瞬間口元を引きつらせていたので、外見に似合わない怪物である可能性が提起された。
一応カズにダモーレで調べさせたところ、カズは沫を吹いて倒れた。
俺でもそのステータスを聞いた時点で引きつった笑みしか出なかった。うん、アレは忘れるべきだ。
頭脳系チートどころか、コイツもフブキと同じく特質の二つがデメリット・封印系であったのだが、その経験は間違いなく優れたものであるのは十分に予想が出来た為、彼女にも開発に参戦してもらった。

ガイ。紫藤劾。
彼は多重トリッパーではあるが、現在二つ目の世界としてこの世界にたどり着いたらしく、なんと前の世界は宇宙世紀。名前的に派コズミックイラ出身っぽいのだが。連邦軍で技術者兼MSパイロットをやっていたらしい。
カズがダモーレで調べた所、確かに頭脳・開発系の特質を保有していることを確認した。
前述二人に比べ、とてもまともなステータス画面だった為、ぞれを見ていた全員が安堵の息を吐いたのは愛嬌だろう。
MSはとにかく汎用性が重要となる為、彼の能力はとても有用であるだろう事が予想され、実際彼はこの技術班の中核的存在へとなっていった。

そして、最後に。多重転生でこそ無いものの、今すぐにでもトリッパーに成れると多重転生・トリップ組から太鼓判を押された男。――木原雅樹。
そう、木原マサキだ。
彼の特質、その一つに次元連結能力があったりして、更に頭脳チートまで持っているのだからもう手に負えない。
中身が厨二病と言うことも在り、奴と相対・敵対したときは、さすがに俺も死ぬかもしれないと腹を括ったものだ(まぁ、その直後ノアらに力尽くで押さえ込まれて、世界の広さを実感したが)。
しかもこの男、ふざけたことに研究者一族『木原一族』の出身らしく、実家は独自に超能力開発をしているのだとか。木原違いだろう! と思わず突っ込みを入れた俺は間違ってない。
そんな彼は、自らの一族をUHB社に誘い、表のUHBを一気に活性化させることに成功。一定の貢献を残してしまう。故に、後のことを叱れなくなってしまった。

――何を言おうか、この男、UHBの資材を勝手に使って天のゼオライマーを完成させてしまったのだ。
俺が気付いたときには何時の間にかセカンドベースに増設されたドッグの中、そこに佇む50メートル級の巨大ロボットが鎮座していたのだからもう。

ブチキレ掛けたものの、まぁ後々の働きで対価を払うというので、まぁ俺も嫌いでは無いと見逃すことに。
さすがにこれをグレート・ゼオライマーに改造すると抜かした時には殴ったが。
結局GZの開発資金を対価にシステムの改造計画に参加することを承諾させたのだが。


彼ら五人、武闘派技術班が、後にとんでもない成果を生み出すことになるのだが、この当時原作まで一年をきっていた現状、慌しく動いていた俺がその事に気付いたのは、また大分後になってからのことだった。
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